ちゅーか、俺様がこんなとこにいるのは間違ってる絶対   作:ビーム

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俺様、働く。

 

迷宮都市オラリオ。

 

未知と冒険に満ちた都。

様々な種族であふれ、恐れを知らぬ冒険者が集う大都市であり世界で唯一、数多の階層に分かれる無限の地下迷宮が存在する。地下迷宮とは、冒険者たちの舞台である。モンスターの巣窟、資源の宝庫、新たな出会いの場‥‥といえば聞こえはいいだろうが、実質のところ冒険などもってのほかな地下空間である。面白半分で臨めば、容赦なく餌となり、厳しい現実を思い知らされるだろう。

迷宮に挑む者たちは冒険者と呼ばれ、未知と危険にあふれた迷宮を踏破すべく、または現実的に日銭を稼ぐべく神々の恩恵を受け地下へと繰り出して行く。

 

 

そんな冒険者たちが思い切り羽を伸ばせる場所、「豊穣の女主人」

誰でも笑って酒が飲める人気の酒場だ。名前の通り従業員はすべて女性であり、そのすべてがやはり訳ありなのだ。しかし、そんなこともお構いなしにすべてを受け入れるこの小さな世界は、やはり温かいものである。冒険者たちは踏み込めばやけどしそうな女性たちが働くこの酒場で、日々の疲れを癒すのだ。

 

さて、ここで一つ質問がある。

こんなところに男が一人混じっているのは間違っているだろうか?

 

「それではもう一度いきますよ? さんはい! いらっしゃいませー!」

 

「しゃぁせぇ〜…」

 

「はい不合格ニャ」

 

結論。

 

大間違いだ。ばっきゃろ。

 

せっかちすぎる結論を下したのはそこで教習を受けているウェイターである。誰もがうらやましくもけしからぬと断言する状況に身を置きながら、あまつさえ態度も言葉も悪い。崩し気味の制服に身を包み、愛用していた黒いハンチング帽を外しボサついた髪の毛の気怠げな印象。どこを見つめているのかわからない目の焦点。接客のことを考えているわけではないのは確かだ。

のどかな雰囲気にもなるお昼頃。常識知らずにもほどがある大きな子供を憎々し気に、そしてその面倒をみる二人が気の毒でならないと他の仲間たちはそのやりとりを見つめていた。

二人のウェイトレスに接客の基本中の基本を教え込まれるこの男は。

 

 

どーも、こんにちは。

 

あなたの、海堂直也《かいどう なおや》、です。

 

 

 

「いてっ! 足踏むな!足を!おめえ、リュー!」

 

「でしたらさっさと覚えたほうがよろしいかと」

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

駆け出しの冒険者の僕、ベル・クラネルは店の雰囲気に圧倒されていた。

 

ウェイトレスで様々な種族も勤める夢のような美女の桃源郷に遭遇したからだ。

出会いを求めて冒険者となったのは間違いではなかったと喜びを噛みしめる。

 

───生きててよかった……けど、ちょっと僕には難易度高すぎない…!?

 

なんて頭の中で独りごちてみる。そうでもしないと、あちこちに目を奪われてしまう田舎者の風貌をさらして、変に目立ってしまいそうだった。

 

実際、とっくのとっくに田舎者丸出しの様相であったが、これはもう仕方がない。個人的に待ってくれているウェイトレスさんがいる、なんて事実。そう、待ち人あり!なのだ!しかも可憐な女の子!もう誰であっても、男ならドギマギしないわけないだろう!

 

そんな事実に心が小躍りしていると、向こうから一人のウェイトレスさんがやってくる。

 

「ベルさんっ、お待ちしておりました」

 

「はっ、はい。 来ちゃいました…」

 

「はい、いらっしゃいませ」

 

そのウェイトレスさんの名前はシル・フローヴァさん。

ヒューマンの若い女性で、振りまく笑顔に癒される客は数しれない。

 

「お客様1名入りまーす!」

 

すみずみまで通る声に多少、びっくりした。酒場って、本当にいちいちこういうことを言うんだ。いきなり飛び出た酒場あるあるご案内の声に、僕は体をびくびくと縮こませる。

やっぱりこういったとこで働く人はすごい。小さな体から、遠くまで届く声量が発せられるんだから。澄んだ声で告げる客の到来は忙しい厨房内をさらに賑やかにさせる。

 

僕はシルさんに誘われるがままにカウンター席に座る。

 

「アンタがシルのお客さんかい?」

 

ドワーフの女将さんが僕にジョッキを出しながら興味有りげに笑っている。快活な笑顔とその溢れる豪胆さ。ウェイトレスさん達からは母さん、と呼ばれるほど親しまれているそうだ。

 

「冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ! なんでもものすごい大食感と聞くじゃないか! 」

 

「え“」

 

「じゃんじゃん金を使ってってくれよぉ!」

 

と、カラカラ笑いながら戻って行く。

 

聞き覚えのない噂に顔を青に染めながらシルさんに振り返る。

目を合わさず口笛を吹いている。

涙目がちになりながらシルさんを問い詰めていると。

 

「シル! コレ、あそこのテーブルに持ってって!」

 

「あ、はい!」

 

シルさんは女将さんに呼びかけられて、それではごゆっくり、と席を外す。

手を振るが、注文はどうすれば良いか迷う。頼もうにも周りのウェイトレスさんはみんな忙しそうだし。オロオロする自分を見かねた女将さんは奥に向かって声を張り上げる。

 

「ナオヤ! アンタ注文とんな! シルとアーニャに叩き込んでもらったんだろ!? こっちは手が回らないんだよ!」

 

‥‥ナオヤ?

 

なんだろう。女将さんの発言が急に気になりだし、頭の中で今出た名前みたいなのを反芻する。

 

ナオヤ、ナオヤ、なおや‥‥って

 

どう読んでも男性の名前だよね!?こんな居づらすぎて、今にもバックレたい環境の中に男の人がいるの!?そんな人、気にならないわけがない。こっそり厨房の奥に視線を向けて、どんな人が来るのか思いを巡らせた。

 

女将さんの声のあと、奥からのっそりと男性が現れる。

ウェイトレスさんだらけのこの酒場にウェイターさん1人というのはかなり目立つ。服装もなんだかだらしなさ気だし、髪の毛はぴっちり整えられているようで、微妙にあちらこちらハネている。

 

えっと、思ってたのと全然違う。もっとこう、紳士的なふるまいをかかさないタイプか、言っちゃ失礼かもだけど、女の子にしか見えない男なのかも、って考えてた。まあ、女将さんからあんな言われようだったから、そんなのはあり得ないとうすうす感づいてたけど‥‥

 

彼は注文用のメモを片手にゆっくりと歩く。ほんとにどこからどう見ても…ちょっと。

 

「シャカシャカ歩く!」

 

「ハイっハイハイハイッ 歩きます、歩くからっ」

 

女将さんに背中をはたかれてる。痛そう。背筋が不自然にまで伸びあがり、歩き方も不自然に速い。あんな勢いで打たれたら、しょうがない。

 

痛そうに背中をさする彼は、僕が座るカウンターの前に立つ。

近くでみると、意外と若い?なんというか、ものぐさだった若者をいきなり酒場に連れ込んで、ウェイターの恰好をさせたような、そんな雰囲気を感じる。うん、みたままの情報だけど。

 

「いらっしゃあせぇ、 豊穣の女不信へようこそ」

 

「ぷっ!」

 

実にやる気のない声。読み間違え。おもわず笑ってしまう。このウェイターはいろいろ図太い神経のようだった。なんだか気が楽になる。

 

「今日はどんなモンが食いてぇぇグっ!グぉェェエッ! オメェ首っ!締まる締まるっ… ギブッ」

 

「‥‥えぇー」

 

けだるげな態度に腹を据えかねたのか、とうとう同僚から天罰を食らう。襟を後ろからひっつかまれたようで、じたばたと暴れ、脚で床を引きずることで摩擦のノイズがザリザリと走る。だが、その抵抗も無駄なようで、あっという間に奥へ引き戻された。

 

ちらりとしか見えなかったけど、あれは多分、エルフのウェイトレスだ。あんな綺麗なひとにああいう扱いをされてしまうとは、どうも気の毒になってくる。首元に襟が食い込み、顔がみるみる赤くなっていったのを思い返す。

 

奥に連れ去られてから少々。

先ほどの不貞腐れた態度とはうって変わってにこやかな笑みを浮かべて向かってくる。

ただしその顔はぎこちないものでありやたらと後ろの視線を気にしながら、ボソボソ何かを呟いている。

 

「あンの暴力女…」

 

「あの… 大丈夫ですか?」

 

「いやもうぜーんぜん、全然ね?問題なし、です。ちゅーか何もありませんでした。な?」

 

ウェイターはカウンターに両手をついて僕と後方を交互に見る。

あまりの勢いに頷くしかなかった。

おっしゃ!、と僕の頷きに満足気な頷きを返し、彼はメモをパシパシ叩きながら注文を急かし始めた。

 

「さっ、注文はなんだ。ほれはやく。たくさん言いなさい」

 

「え、えっとそれじゃあ、パスタで」

 

「 はーい、ぱすた。承知いたしまし、パスタだぁ!?おめえパスタ、ンな安もんチビチビ頼んでんじゃねぇぞ! 男ならなぁ!?ドカァっと肉料理野菜魚ユッケ天ぷら肉酢こんぶぐらい頼む意気見せドォバッb」

 

「パスタですね、かしこまりました」

 

な、なんなんだあのキャラは…

 

僕はさっきから圧倒されっぱなしであった。周りの客も光景を見て唖然としている。

いきなりウェイターさんがエルフのウェイトレスさんに頭を掴まれて壁に叩きつけられた。

ウェイトレスさんが奥にオーダーを伝えに行っても、彼は潰れたままだった。

 

「あの、本当に大丈夫ですか?」

 

「‥‥‥‥」

 

「すみませんベルさん、ちょっと忙しくなっちゃって… ってナオヤさん!?」

 

シルさんが戻ってきて、潰れているナオヤさん、だったっけ。 を見てビックリしている。

僕もさっきから起こそうと声をかけたりしたがどうにも動く気配がない。

 

「あのシルさん、この人ってウェイターさんですよね…?」

 

「はい、最近新しく入った店員さんです。力仕事とか注文受付を担当していただいてるんですが、その、結構サボり気味でして…」

 

シルさんはナオヤさんを揺さぶりながら、えへへと苦笑いする。

ナオヤさんは未だ目覚める気配は無い。相当ひどく頭を打ってしまったんだろう。

何か回復薬を持っていれば気が利いていたのだがあいにくだった。

 

「なんだか、雑な扱いされてますよね… ちょっとかわいそうかなって」

 

「そう。この扱いは…えーと人権侵害だ。もっと言え」

 

突然ナオヤさんは顔を壁にうずめたままボソボソつぶやいている。どうやら最初から起きていたみたい。あまり怪我がないようで一安心だ。あの一撃から、どうやって無事なのか、ちょっと気になるけど、こんなところで働いてる精神性だから、体も相当頑丈であると、勝手な結論を下した。

 

「元気そうでよかったです、ナオヤさん」

 

屈託のない笑顔が彼を照らす。僕的には、あんな笑顔を向けられたら、ドギマギする、間違いなくする。けど、全く意に介していない彼がとんでもない。

ナオヤさんは壁から顔面をずらし、目だけをこちらに向ける。その目は怨恨につつまれている。

 

「元気?うん、俺様は元気じゃないの。ちゃんとみて?ほら、顔が痛いよ?」

 

「…鼻血とか、出てないんですね。ホントに頑丈だ」

 

「本当ですねぇ。顔も腫れてないですもんね」

 

「いや痛いことは痛いの!オメーらにはわかんねえだろっけど!」

 

あんな奴、いつかしっぺしてやるしっぺぇ!と壁に顔を再びうずめながら叫ぶ。あの女性に聞こえていたらどうするのか、とも考えたが、周りの歓声が割と大きめなのと、壁に向かって叫んでいる、という条件だからか、内容は僕らにしかわからない…と思う。あの人、耳がいいのかもしれないし。

 

「ちゅーかさぁ、わかんねぇかなぁ?俺様働くのが大の苦手なんです。上に戻ってもいいですか」

 

「だめですよーナオヤさん。そういう約束だったじゃないですか?」

 

「だめ、そうすか」

 

すねたように再び壁とおしゃべりを始めた。

なんというモンスター人材だ。ゴブリンよりたちが悪いぞ。ナオヤさんはあり得ない御託を並べて、業務をサボろうとしている。ウェイターとしてどうかと思ったが、一緒にいて楽しい人だなぁ。店側としては苦労しそうで申し訳ないけど、そんな感想が自分の中で決まった。

 

「それでベルさんの注文はなんでしたか?」

 

「あっ、僕パスタで」

 

「そうそれだ、安いパスタ」

 

「ずいぶん安いを強調してきますね!?僕にとっては結構なお値段なんです!」

 

僕はナオヤさんに突っかかる。僕を大食漢だと噂を流していたシルさんもそうだが、ナオヤさんもどうやら一癖も二癖もある人物らしい。というより、ここで働く全員がそうなんじゃないか…!?嫌な想像がよぎった。

 

「しょうがねぇな。じゃあよ、この俺様がとびっきり美味いパスタを作ってきてやっから、な?出すもの出しなさい」

 

「出すもの‥‥出すものって、えーと、ありがとうございます・・・?」

 

「ちげー!ちげーよ!純朴少年かオメー!チップだよ!チぃップ!」

 

「チップ… あの、僕お金…」

 

「んじゃま、そういうことで」

 

ナオヤさんはそういうとふらふら奥に戻っていき、「山盛りパスタヤサイニンニクマシマシ一丁!」と分かりづらく伝える。

疾風のようなチップ要求。面食らった僕は手持ちをみるが、本当に寂しい懐だ。どう数えても僕の財布に手痛いダメージ。でも、初の酒場だからいくらか奮発してもいいのかな。そう逡巡しながら、目の前を虚ろに眺める。

 

あっ、お盆が飛んでナオヤさんに直撃した。大丈夫なのかなホント…。

 

「ああ見えてナオヤさん、ちゃんとやるときはやってくれるんですよ」

 

シルさんはそうフォローするがとても信じられない。

ナオヤさんは頭を抱えながら、奥にいるエルフさんに物を投げるなと母ちゃんに教わっただろと怒号を飛ばしている。

 

「あの人、ナオヤさんっていうんですか?その、どういう経緯でここに…?」

 

「あ、はい。ナオヤ・カイドウさんです。彼がここに来たのは…」

 

シルさんはそういって、お盆をもったまま周りを眺める。そのあと、奥にいる女将さんに目配せをし、合図にうなずくと、僕の隣に来て椅子に腰かけた。

 

座るってことは…

 

「もしかして、話せば長くなる感じですか。あっ、お仕事がまだ…」

 

「いえいえ、見たところ給仕は間に合ってそうですし、私も少しのんびり話したいな、と。それに」

 

ナオヤさんへのいい修行になります、とほほ笑んだ。

マジか。この子、純朴で優しそうだと思ってたのに、意外とスパルタなんだ。

でもまあ、それぐらいじゃないと彼の教育はむずかしそうではある。それに、彼がどこから来て、どういう経緯でここに至るのか。ちょっと気になるし。

そう考えた僕は、隣に座る彼女の話に聞き入った。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

いつからこんなことになっちまったんだっけか。記憶はあいまいだった。前にすげぇ熱でぶっ倒れた経験があるが、まさか2回目があるとは。これがデジャブってやつかね。

 

そんなことを考えながら、せわしなく出てくる料理や酒を無感情で運ぶ。給仕の仕事、ちゅーか飲食業は前々からブラックだと思っていたが、今日の忙しさの半端なさで確信した。まずそもそも働くのがイヤな俺様にいきなりブラック業から入ることから間違ってると思いませんか?私はそう思います。正論だ。

 

よし決めた。明日辞表を提出しよう。通るかわかんねぇけど。

 

小さくため息をつく。

本当はでっかくついてやりてぇとこだが、同業者の目がめちゃくちゃ痛いのでやめておいた。ちゅーか、本当の痛いが飛んでくるのだ。ブラックを通り越して、もはや闇だ、闇。

 

「何してんだ、俺様はよぉ」

 

顔を両手で大きくこすりながら壁にもたれかかる。ここに来てから長い時間が経った。

 

一週間。

そう、一週間だ。

 

少ないと思った皆さん。ちょっと待て!

俺様にとっては地獄の一週間なんだよ!

 

理由は無論、きつい環境での仕事。これに尽きる。

 

まず、ずぅーっと仕事ばかりしてるのも気が滅入る。性に合わぁん。

んで、注文をとってはぶっ叩かれ、料理を運んでは盆ぶん投げられたり、拳が飛んで来たり、靴踏まれたり、そんなのばっかしだ。まるでパワハラが横行する時代が再びやってきたようだ。しかも、ここは女だらけ。なんかの間違えでセクハラだって疑われるかもしれん。やってらんねぇよ!ばっかばかしい!

 

ったく、だから俺様はな、労働とか嫌いなんだ。仮にパワハラが許されない時代だったとしても嫌いだけど。

 

「‥‥」

 

「わっだぁ!ちょちょちょっ待った!ちょっと休んでただけだ!なっ!?」

 

いつの間にかあの緑女が隣で圧をかけていた。おっそろしい!こいつだよ一番怖ぇのは、ちっくしょ。あ、ためいきこぼした。やめてくれ、効くんだよそういうの。

目の前の女、リュー・リオンは呆れた表情で指示を飛ばした。ちゅーかなんなんだその名前はよ。

 

「背筋を伸ばす」

 

「あ‥‥はい」

 

猫背からゆっくりと良い姿勢に直す。体の中からパキパキといい音が鳴りだした。

 

「料理を持つ」

 

「はいっ」

 

すでに出来上がっていた料理をカウンターから盆にのせる。届ける場所は添えられていたメモにばっちり載っていた。これで迷うことはねえな。

 

「笑顔」

 

「にこっ」

 

言われた通りに笑う。俺様でもわかるが、ひきつってるのがバレバレだ。こんなので良ければいくらでも振りまいてやる。

 

「冷めないうちに配膳」

 

「お待たせいたしましたぁ~!」

 

元気よく返事しながら客へ料理を運ぶ。当のお客はぎこちない返事に、引き気味の顔、なんでか知らねぇ嫉妬の視線を向けるなど、様々で散々だ。えへーごゆるりとぉ、と笑いながら奥に引っ込む。ただでさえ店員仲間がきついのに、客からもあんな調子が続く。ここで働きたいと思ってるそこのお前。泣きをみるぞ。

奥に引っ込んだ俺様は首を回しながら、これでいいんだろ?といわんばかりにリューがいたとこに目をやる。

 

「‥‥いねぇ」

 

見てねぇのかよ!サボってる時だけ目の前に現れて、まともにやったら消えやがる。見とけよ!せっかくだから!

 

握りこんだこぶしを小さく震わせて、混みあがる感情を抑え込み、その後一気に脱力した。

俺様がここで、お尻ぺんぺんを決行したところで、泣きを見るのはこっちだ。意味不明なくらいあいつは強い。本当俺様なんか知らねえけどあいつの言うこと聞いちゃうんだよな。

最初見たときは、クールな性格で、美男美女両方とも見て取れるような女だと思ったのに。強い女ってやつだ。俺様はどうもそれに弱い。

 

いろいろとぼやきながら注文を取りに行く、今度は笑顔なんて撒かねぇよ。仏頂面店員の登場だ。メモとペンを片手に俺様は仕事をゆっくりとこなしだした。

 

ああ、とうとう力に屈して、労働に粛々と従事するようになっちまったと、思いますかね?みなさん。まあこれはフリだ。まともに働く演技を見せて、安心しきったところを突くのだ。

まあ、早い話、逃げ出す機会をうかがってるっちゅーわけだ。そのためにひとまず従順さを演じます。演技派俳優なおちゃんとは俺様のことだったのだ。

なんで、そんな回りくどいこととか、そんなこと言ってはいけません。まず、そうでもしねぇと外出もできやしねぇ。ちゅーか逃げ出す機会がねぇ。前に、外にこっそり出たら、いつの間にか目の前に恐ろしい女どもが待ち構えていた。まるで労働監獄。引きずられて連れ戻されたときは生きた心地がしなかった。

とにもかくにもあんの緑髪のコンチキショウが主な原因だ。俺様が真面目に働かないだとかくだらねぇ理由で縛り付けてきやがる。俺様はもっと大空へ羽ばたくべき人間だ。こんなところでくすぶっている場合じゃねんだ。

 

出された料理を盆にのせる。ホカホカの湯気がたちのぼり鼻孔をくすぐった。うーむ豆のスープか。豆ね、豆。豆といえば鳩。鳩といえば鳥であり、鳥といえば羽ばたくのだ。んでも俺様は囚われの身なのだ。

 

本当にどうでもいいことを頭の中で繰り返しながら、配膳を行う。そうでもしねぇと労働なんざやってられん。頭の中をどうでもいいことで埋め尽くす。これが俺様なりに編み出した仕事中のストレスを軽減する方法だ。

 

ま、こんな苦労も今の内。今は雌伏の時だ。時が来りゃあとっととこんなとこオサラバして俺様にお似合いの服でも買いに行くとしよう。ウェイター服のまんま逃げ出すわけにゃあいかん。

 

「オリジナルドリンクの注文入りましたー!」

 

「おっ!やーっと注文入ったか!よーし、ここは頼んだ猫吉!俺様に任せて行けぇい!」

 

「ニャっ!?」

 

持っていた盆を押し付けて厨房へ駆ける。後ろから抗議の声が聞こえてくるが、知ったこっちゃねぇ!このオリジナルドリンクっちゅーのは俺様の発案だから、俺様が作るのは道理なのだ。文句あっか。

 

コップに半々ほど酒を注ぐ。さてここからが俺様の個性を生かす時だ。とりあえず砂糖を手にとってですねぇっと。

 

意外と料理するのは面白い。料理というより酒に色んなもんをドバドバ入れるオリジナルドリンク作りだ。以前、ピザ屋のバイトを受ける話があったが、風邪でダウンしてた俺様は腕前を披露することなくお流れだった。もし元気だったらこいつで俺様は天下を取っていたことだろう。

 

説明しよう。オリジナルドリンクとは、俺様がメニュー表に勝手に書き加えた独自の商品なのだ。材料費が無駄にならない程度であれば、女将から許しが出ている。お墨付きとくれば、あとは自由に創作活動を行うのだ。シル嬢や猫吉とやんややんや諸案を巡らせて新商品開発に没頭する。時間の過ぎるスピードも配膳、注文受付に比べて断然早い。俺様の唯一のオアシスといったところだ。

 

だが、そのオアシスは今、壊滅の危機に直面してる。次に苦情が入ったら、俺様は開発担当から外されるとの通告が入ってる。そうすりゃ俺様は配膳地獄の到来。こればっかりは失うわけにはいかねぇ。

 

確信した手つきでジョッキに砂糖をドバドバぶち込む。んで、スパイスを少々。刺激のある人生って名前に決定だなこりゃ。今回はなんと隠し味も仕込んじゃいまーす。人生ってそういうのばっかしだからね。深いだろ?

 

「なおやん、まーた激甘ドリンクかニャー。センスニャいって専らのうわさだニャー」

 

「猫よ、黙りなさい。そして味見をしてみなさい」

 

できたばかりのドリンクをずい、と猫吉に突き出す。怪訝そうに匂いを嗅ぐと、たちまち目を見開き、バカみたいに口が大きく開く。きらりと光る八重歯がはっきりわかるほどだ。

 

「ニャ…ニャ…ニャにを入れたんだニャ‥‥」

 

「おう、なんでも冒険者ってのはポーションっつったけか。それが人気そうじゃねぇか?んでここらで一番人気の酒よ!大人気×大人気の掛け算に狂いはねえはずだ!」

 

「‥‥ほんっとにセンスニャい…気分悪ぅ、ニャ…」

 

「ばぁか!まだどうなるかわっかんねぇだろ!ちゅーか後がねぇんだ。賭けるぜ俺様」

 

「さよニャら…なおやん」

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣りあわねぇ」

 

獣人の暴言が痛く刺さったのか、ベルは椅子を蹴飛ばして夜の街へと駆けて行ってしまった。シルは突然の行動に驚き、ベルの名前を呼ぶが止まらない。

突然の出来事に何事かと周りの客も騒がしくなる。

 

「あァん?食い逃げか?」

 

「うっわミア母ちゃんのとこでやらかすなんて、怖いモン知らずやなぁ」

 

少年の抱える激情もつゆ知らず。宴会は元の活気を取り戻そうとしていた。ただひとり、行ってしまった少年を見つめていた少女は、複雑な表情のまま黙り込んでいた。

さて、この酔っ払いの獣人をどう懲らしめてやろうかと、皆が試案しだした中、一人のウェイターがゆっくりと近づいてくる。盆の上に謎色に染まった酒がなみなみ注がれたジョッキがさらにどよめきをよんだ。

 

なんだアレ。

見たこともねぇ色。

まずそう。

そんな容赦のない口コミは聞こえていないのかウェイターはテーブルに恭しく盆を置く。

そこでロキファミリアのメンバーは初めてその男の存在に気づいたのだ。

 

「お待たせいたしました。当店御自慢のスペシャルドリンクでございます」

 

「あァ?んなモン頼んだ覚えはねぇが」

 

「そんなこと、言わないでください。飲んでください」

 

突然現れたウェイターにロキファミリアの興味が移る。あの豊穣の女主人に男が一人。興味が湧くのも当然だ。

 

「なんやなんや? 新入りか?」

 

「はい、私、海堂直也と申します。お気軽に「海堂様」とお呼びくださいませ」

 

「それ、ウェイターがいう?」

 

「アッハハ! おっもしろいやっちゃなぁ〜! ミア母ちゃんもなかなかの変人雇ったわぁ!」

 

ロキファミリアの主神、ロキが直也をバシバシと叩く。どうやら気に入られたようだ。

痛い痛いと小声でつぶやくウェイターは愛想笑いも引きつっていた。

 

「それでそれで、スペシャルドリンクって何? あたしたちにはくれないの?」

 

とドリンクに興味津々のアマゾネスの女性。もう一人アマゾネスがいるが、姉妹である。

 

そんなとき、うつむきがちだった金髪の少女が、あっ、とドリンクに気づく。そう、頼んだのは他ならぬアイズだったのだ。私の、と声を上げようとしていたが、なぜか仲間にさえぎられる。その表情にはあくどい笑み。いかにも、その危なげなドリンクを使ってやろうじゃないかという魂胆であった。

 

「いえ、このお客様がご来店10万人目のお客様で、キリが良い数字にご来店なさった方にはスペシャルドリンクを提供するサービスでございます。 つまり、あなたはめちゃラッキーでございます」

 

ウェイターが並べるのは、もちろん適当な御託。飲んでもらうためにはどんな営業文句も辞さない覚悟の男である。

 

「えー! ベートより先に入ってればよかった〜!」

 

褐色の少女は純粋に悔しがっていた。姉のほうもやれやれと、肩をすくめている。飲めばどうなるか、それがわからないのは純朴な少女ふたりのみであった。

ベートと呼ばれた獣人はつまらなそうに話を聞いている。

 

「いらねぇ」

 

「そう言わずにお客様、超ラッキーですよ? 飲めば恋が実る・か・も」

 

恋、と聞いてアマゾネスの姉の心が多少揺らいだ。

 

「いらねぇっつってんだろが」

 

「あー そらあかんわ、ベートのやつさっきフラれたばっかりやからな」

 

ニヤついた表情でしながら獣人をからかう。それに対して不満げな鼻息を鳴らすと、今一度ウェイターをにらみつける。

 

「では、お客様は本当にいらないと?申されるのですか?」

 

「何度も言わせんな、さっさと下げろ」

 

「‥‥そうですか。では」

 

申し訳なさげにドリンクを手に取る。ベート以外のメンバーや冒険者は、あーあ、日和っちまって、とがっかりした表情を浮かべる。せっかく調子に乗った若者が悶絶する姿のお預けを食らったのだ。ウェイターに非難の目が刺さるのも無理はな…

 

「うわああぁーーーっ。アレは、なんだあっ、アレ。ほら、みんな見てっ!アレ」

 

「「「「!?」」」」

 

突如として響き渡る剛声。ウェイターは出口のほうを指さして驚愕の表情を浮かべていた。

あまりに突然なことだったのでメンバー全員が注目するほかなかった。

 

「…誰もいないんだけど」

 

もぬけの殻。そこには夜の活気や情緒を感じられる街並みが、出口から見えるだけだった。

 

「ねぇ今のどういうこ…あれ!いなくなってる」

 

ウェイターはいつ間にかドリンクと共に姿を消していた。大方、ベートの威圧に委縮して泣く泣く奥に戻ったのを悟られたくないがためにあんな手口をうったのだろう。大胆なのか、大馬鹿なのか。酒場の連中のおおよそはこの一件で豊穣の女主人で働くあの野郎は大馬鹿野郎であると笑って結論付けた。

 

「なんや、ホンマにビビりちらかしとんちゃうかアイツ」

 

「ベートぉ、新顔に対してキツく当たるもんじゃないわい!酒がまずくなるじゃろう!」

 

豪胆なヒゲを蓄えた大男は大きく笑う。ベートは鼻で笑うとジョッキを一気に煽り、テーブルに叩きつける。

 

「ハッ、俺がンなこと知ったことkオボボォロォォォォロロロロロォオ!!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

圧巻の様だった。

獣人の口から、見たこともない色の吐しゃ物がまきちらかされていく。床で放射状にのびていくお夕飯の末路を見て、ようやく悟った。

あれはブラフだったのだと!あの瞬間でウェイターはジョッキとドリンクをすり替えていたのだ。手際に感心しながら、メンバーの大半は大いに笑う。周りの観衆も無遠慮に、獣人ののたうち回る姿をみて、いいぞ、もっとやれ、もっと吐け、など様々なヤジを飛ばす、まさに祭りであった。

 

 

獣人が落ち着いて、しばらくの後。

怒りにあふれた怒声が響き渡る。

 

 

 

「ゴラァッッッ! クソ店員ンッ! 出てこいィ!!」

 

「シル嬢、呼ばれてるぜ。行ってきて?」

 

「えっ!? 私ですか!? 」

 

「シル、行かなくていいニャ」

 

 

まずいことになった。最後のチャンスをどうやら俺様はモノにできなかったみてーだ。

挙動不審気味に体を揺らしながら足を踏み出した。なるべく目を合わせないよう意識する。

ちゅーかさ、直接でのクレーム対応は俺様初めてなんだよ。ああ…面倒くせ。いつもだったら、まず過ぎてぶっ倒れていたっちゅーのに、何でこいつにかぎって元気になるんだよ。

呪いの言葉をつぶやきながら、いざ白髪のヤンキーと対面する。

 

…なんちゅーか、まだ調子悪そうだな。

 

「…ぅぷ、テメェ。ハァ…ナメたマネしてくれたなァ。あァ!?」

 

「どうやら辛味がお気に召さなかったようで…」

 

「クソ甘いンだよッ!!!ボケェ!!」

 

めちゃくちゃブチギレている。気持ちはわかるがやめておきたまえ。経験上それ以上口を開くと怒声とともに別のモンも出てくるだろう。俺様も酒に酔った勢いでいろいろと失敗したものだよ。

 

あ、そうだ。ポーションあるじゃん。ポーション。それでなんとかならんのか。

 

「実はこのドリンクには隠し味として回復薬が混ぜられております。 いかがでしょうか? お体の調子は?」

 

「プククッフッ… よかったじゃん…べ、ベートっ… フフッ 多分今から効くんじゃない?」

 

 

「なおやーん、コレ塗るタイプの回復薬だニャ」

 

「お、お前ッ おまウボォォオォオええああ+6・tmsk%52○?」

 

「アッハッハッハッハ!! ベート! ちょっ 笑い殺す気…アハハハハハッ!!」

 

マジで? 塗るタイプ?飲んじゃった? うわやっちまった。

コイツ引くほど吐いてるし、仲間っぽい褐色女や周りのやつらも引くほど笑ってやがる。

とにかく俺様はセンスがニャイことが分かった。あいつは正しかったっちゅーわけだぁな。ちゅーかさ、読めないんだよ文字がよ。それが悪いんだよ。

 

「うおおぇ、気分悪ィ…」

 

「申し訳ございませんでした、お詫びに当店御自慢のごめんなさいドリンクを」

 

「テメェ… ふざけんのも大概に…」

 

「あっベートっ、ちょっとタンマ…!」

 

 

獣人が俺を睨みつけ、拳を固めた。

仲間の何人かも咎める声を上げるが止まる気配はなかった。

 

「しろやぁッッ!!」

 

「ベートッ! 止せっ!」

 

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店内に静寂が訪れる。

事もあろうに冒険者が店員を殴ったことに皆が押し黙ったのか。

いや、違う。

 

()()()()()()5()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのありえない事実に皆が息を呑んでいる。

 

神の恩恵を受けたレベル5の冒険者は強力なモンスター蔓延るダンジョンを難なく進んで行く命知らずである。中でもベート・ローガは2つ名を持つかなりの実力者。

 

いくら酒に酔い、なおかつ重篤な状態異常を患った状態で繰り出されたとしても、その拳は簡単には受け止められない。

 

この男は一体誰なのか。

どこから来たのか。

ここにいる全員、誰も知らない。

 

 

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「なんっ、なんだ… テメェはっ」

 

「まあ落ち着けよ。俺様もこれ以上の面倒はごめんだ」

 

ドリンクもダメで、店内で暴れたとなりゃ、俺様の身も危ない。目の前にいる犬っころより後ろに控えてるウェイトレス軍団が怖え。

 

俺様の手のひらに収まったこぶしをゆっくりと離す。衝撃で少々ジンジンするが特に問題はねえ、けど。なんだこの静けさは。

 

誰もが、俺様を見つめている。こういう注目のされ方は…ちょっと勘弁してください。

なんちゅーか、その、ギャグが滑ったみてーな雰囲気でどこかに逃げ出してしまいたいようなそんな雰囲気。

 

「ベート」 「カイドウ」

 

そんな雰囲気を瓦解させる底冷えするようなおっそろしい声が互いの背中を撫でる。

 

ゆっくり振り向く俺様と犬コロ。

 

犬コロのトコには吐いた酒がブッかかった褐色女がいた。多分姉の方だ。

 

対して、俺様のとこはアンチキショウウェイトレスが。

 

 

「テメェ表出ろやゴラァッッッッッ!!!! 無事で帰さねぇぞッ!!!!」

 

「グオっ! 離せテメェッ! 元はと言えばあの野郎が」

 

「縛り首じゃぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

 

あーあ、あの犬コロびちゃびちゃ褐色女に縛られてやんの。

全く女って怖ぇなぁ。怒らせないようにしねーと。

 

 

「こちらへ来てください。話があります」

 

「それって、明日にしてもらうとかできますでしょうか‥‥」

 

 

そんな俺様、大ピンチ。

 

 

「イデっ!イデデデダデデ!!アデ! おい髪!引っ張んなって引っ張んなって!! いてっいてっ!」

 

「黙ってください」

 

こうして俺は奥に連れてかれて袋叩きにされ、皿洗いと店内の掃除を命じられた。

しかも皿洗いは他の店員の分まで課せられちまった。掃除は特に犬コロが吐いた場所を重点的に。

 

だが海堂様をなめんなよ。

全部さっさと終わらせてやらぁ!

そして翌日、見違えた店内を見て皆が改めて評価を下す!俺様こそが!掃除マイスターであるとな!

だアッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!

 

 

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「なおやーん、起きろニャー」

 

「ブグッ…、俺様は… 天才だあ」

 

ナオヤさんはどうやら徹夜で皿洗いと掃除をしていたみたい。

私も手伝おうとしたけど、リューに止められちゃった。

ナオヤさんも「一人でやる、だから明日を楽しみにしていなお嬢さん」

と言っていたからあまり心配はしていなかったけど。

 

「全部洗い終わってるね。大したもんだよ」

 

ミア母さんが豪快に笑う。母さんもナオヤさんのことは気に入ってたみたいだし、やるときはやるって見抜いてたみたい。さすがだなぁ。

 

「床も綺麗さっぱり元どおりニャ、あいつやるニャ」

 

クロエがテーブルを指でなぞって埃の具合を確かめている。

たしかに、いつもよりか店内が輝いて見えていた。

 

「でも今日の業務は大丈夫なのかな、カイドウさん」

 

ルノアが心配そうに呟く。

 

「彼にはいい薬です。 接客だけではなく皿洗いもしてもらいましょう」

 

リューはなんだかナオヤさんに厳しい。でも、それがリューなりの優しさなんだろうなぁ。

そんなことを一人考えながら、彼の寝顔に少しだけ微笑んでみた。

 

 

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豊穣の女主人の一日は、始まったばかり。

彼の物語も、同じことだった。

 


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