ちゅーか、俺様がこんなとこにいるのは間違ってる絶対   作:ビーム

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遅れてごめんなさい


俺様、また神様に出会う。

いよおっ、俺様だ。海堂直也様だ。

 

 

なんちゅーかね、知り合いと偶然出くわすと何話しゃあいいのか困る時ってあるよな。おん。

話題つってもなぁ、いい天気ですね、とか俺様のキャラじゃあねえ。そうだろ?

 

 

しかもその知り合いちゅーのがガキのくせしてなんか色々抱えてて、無口で強さというものに執着して剣とかぶん回す少女だったとしたらなおさらだ。話すことなんかなーんも、なーんも!思い浮かばねぇ。そうだろっ!?

 

 

 

 

え?そんな知り合い居るわけねーって?

 

 

 

「久しぶり、ナオヤ」

 

 

「居るんですわこれがぁ…… えー、あん。うっす」

 

 

軽く手のひらを挙げて挨拶に応える。俺様の目の前に佇む少女。

そう、アイズ・バレンシュタイナーだ。俺様がちょっぴり気にかかるガキンチョだ。

 

…ほんとにちょっぴりだからな!?

そんな、俺様何でもかんでも優しいってわけじゃっ、無えからなっ!?

えー、ジャガ丸くんの同好の士として!気にかけてやってるだけだ勘違いすんじゃ……。

 

 

「……」

 

「…」

 

「……あむ」

 

あ、ジャガ丸食いだした。

ほんのりまなじりがや〜らかく下がってんのがよくわかる。

俺も食お。

 

ちゅーか、なんも喋らねえガキだなあっ?なんとか言えないのかね!

 

 

「ウ-、バウッ」

 

 

「?」

 

 

顔を近づけて、犬の吠え真似をしてみたが、ジャガ丸を咥えたまんま首をかしげるだけだった。

へへっ、ダメだこりゃ。諦めて俺様もジャガ丸くんを食べるとしよう。

アチッアチチ。

 

 

「や、ホントうまいな…こりゃ。庶民的っちゅーか、THE・B級っちゅーか…」

 

 

親しみやすさに溢れた味だ。

これだけを食べて生きてる動物がいてもおかしく無ェーくれーだ。

 

 

「なあ、俺様考えたんだけどよ」

 

「…」

 

 

アイスは食べるのに夢中で俺様の話を聞いてるのか聞いていないのかよくわからん。まっ、そのまま続ける俺様なのであった。

 

 

「ジャガ丸くんの新たな味の開発をだな…、俺様今ちょっと考えたのよ」

 

「どんな?」

 

「へ?」

 

「例えば、どんな?」

 

 

えっ。あ、なんと聞いてたんスか

 

 

「あ、あぁ、その。チョココーティングなんてどうだ?」

 

「…ある時期にチョコをかけたジャガ丸くんが流行ったよ」

 

「なに!?既に商品展開されていたんか…」

 

 

ここにもバレンタインなる催しモンがあるみてーだな…

どうやら俺様の発想のスケールは未熟ということらしい。

 

 

「んじゃあ例えば、オメーだったらどんなんが一番美味ェーんだ?」

 

「あずきクリーム味」

 

「あずっ…どぇえ!?ンな味開発してんのかよ!結構進んでンなオラリオってのは!」

 

 

あずきクリーム…、まるで日本で売られてるみてーな味付けだな。

いやね?俺様、長い間おんなじものを食い続けていると飽きるんだよなぁ〜。

美味いもん大国の日本で肥えに肥えた俺様の舌、異世界の食いもんに嫌気さすかと思ったが。

割と上手いことやっていけそうだな!

 

 

おっと、寄り道してっと女将に目玉くらっちまう。もうぶっ飛ばされんのはごめんだぜ。

 

 

「ちゅうわけで、アイズ」

 

「?」

 

「さらばっ!」

 

 

俺様はアイズに軽く別れを告げて先を急いだ。

 

 

 

 

「黄昏の〜♪黄昏の〜♪ やぁかぁたぁ〜♪黄昏たいのは〜おぉれぇさぁまぁ〜♪っと。モグモグ」

 

 

はぁ〜あ…、しっかしよぉ!タソガレの館っちゅーのはいつまでに届けりゃいいのかね。ジャガ丸くんを頬張りながら目的地へとのんびり歩く。

持ってる荷物とも早くおさらばしてぇもんだ。

 

 

俺様の記憶だとこのまま適当に向かっても館っちゅーのが判別つくはずだ。かなり特徴的って聞いてるからな。ほら見ろ俺様一人でも行けんだよ俺様のマッピング能力ナメんなコラ。へん!

 

 

「ナオヤ、そこ段差があるよ」

 

 

「おっ、とっとっと。ナイスナイス」

 

 

あぶねぇあぶねぇ。コケるところだったぜ。カッチョいい俺様がコケるなんざあっちゃなんねぇ。とんでもないイメージダウンカルチャーショックだ。

 

 

あん?

 

 

バッと勢いよく振り向く。

そこに居るのはアイス、バレン…シュタ……?

 

 

「……ひぇあの、なんでついてきてるんですか?」

 

 

「えっと、黄昏の館に行きたいんだよね」

 

 

「…おお!? うん、ん、そうだっ、そうだぞぉ?そうだけど…」

 

 

「ついてきて」

 

 

「お、おう。 …ぇ、えっ?」

 

 

スタコラと歩き始めるアイス。

いきなりのお言葉に俺様は黙ってついていくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

スタスタと歩くアイス。その横を戸惑いながらも同行する俺様。

側から見りゃ美少女とイケメンの大名行列だ。衆民の視線が熱いぜ。

 

ふと、俺様は隣のコイツとでも世間話でもしようかという気にでもなった。未だガキであるコイツに大人の経験ってやつを教えてやるか!

 

 

「なあ、アイスよ」

 

 

「アイズ」

 

 

「…アイズ。お前さ〜、好きな……」

 

 

「好きな?」

 

 

ってバァカ!見合いでもしてる気か!?俺様の経験話してんやんだろ!好きな…ってなんだよ!?

 

ダメだな、俺様世間話下手だ。

ここから先の言葉が全く思いつかない。

 

好きなスポーツとか、音楽とか、聞こうにもここじゃ話が別だ!

異世界でも…通用するトーク…

考えろ!考えろ俺様!行け天才!

俺様脳みそフル回転フル回転…

 

 

「好きな、好きな人とかは…いるのか?」

 

「…え?」

 

「恋だよ!恋!落ちたことはございますかー!」

 

 

うむ、恋愛。万国共通の話題を選んだ俺様、グッジョブ。俺様苦い経験しかしてないし嫌いなんだけど、背に腹はかえられねぇ。

それに、経験話すっつったらこれしかねえもんな。

 

 

「…ないかな」

 

「あ、そうすか」

 

 

会話終了。

クソっ!予想外だぞこんな終わり方!なんちゅーか、修学旅行でウブ学生どもが夜の見回り先公の目をかいくぐって頰を赤らめながら話し合うもんだってのに…!

アイスは名前の如く冷たい雰囲気で片付けやがった。

 

 

「あー……。は、はん!なかなか聡明だな!冷ややっ子アイス!」

 

「ひややっ…?」

 

「そうさ!そのとーり!恋なんかな!ろくなもんじゃねーぞ!うん!俺様痛い目見てっからな!」

 

 

ここで俺様の持論展開。

異論は認めん。

 

 

「俺様!聞いて驚くなよ〜?前に一度恋をしたことがあるのだ!」

 

「…そうなんだ」

 

「おぉん!真里って名前の女の子でよぉ!コイツがすんげー悪いやっちゃ!」

 

「悪い?」

 

「悪いんだこれが!また!」

 

 

俺様はありとあらゆるジェスチャーを使って魔性の女の恐ろしさを伝える。忙しなく動く俺様と対照的にアイスは静かに、たまに頷いたりして話を聞いていた。

 

 

「せっかく結婚までしてやろうと思ったのによ!断りやがる俺様の気持ちも知らないで!」

 

「でも、ナオヤもマリさんのことよく知らなかったみたいだけど」

 

「……それは!一目惚れっちゅーヤツの大きなリスクなんだよ!たとえよく知らずともね、俺様ガンガン行くタイプなんで」

 

 

会話が弾んでいる。

あの気まずかった雰囲気がまるでない。いい調子だ。

 

 

「てなもんで、俺様もう恋はしないってことに決めててよぉ〜。男ってのは辛いなぁ…」

 

「でも、ナオヤ」

 

 

おっと?あまり口を開かなかった少女から質問が飛んできたぞ。

 

 

「あーん?なんだどうした」

 

「なんでそんなに諦めなかったの?」

 

 

少女は純粋な目で俺様を見つめる。

たしかに、一回フラれたらもうそれっきりかもしんねぇが。

 

 

「あ?あー、それはァ」

 

 

ぎこちなく頭を掻いて、ゆっくりと話し始める。

 

 

「俺様、恋をした理由がさ。もう1つあるんだわ」

 

「…」

 

「恋ってのは、人間らしく生きることだと思ってた」

 

「それって」

 

「おま!勘違いすんなよ!別に俺様狼に育てられたとかそんなんじゃねえからな!」

 

 

「俺様、恋とかじゃなくて、えーとなんだ、そういう、らしさに執着してたんだわ」

 

 

数々の情景が浮かぶ。それはどれも冷たくあしらわれる俺様の姿があった。

 

 

「でも、やっとわかった気がすんだよな〜。恋のおかげで!」

 

「それって?」

 

 

俺様は天を仰ぎながら。

 

 

「俺様は、俺様らしく生きるのさ」

 

 

ゆっくりと、そう答えた。

 

 

「俺様…らしく」

 

「そ」

 

 

考え込むアイスを横目に目的地が近いことを察した。

そろそろこの話も切り上げだな。

 

 

「恋って、結構こういうとこ気づかせてくれっからな。ふーむ、意外とした方がいいかもしんねぇ」

 

 

甘酸っぱい人生経験としてな!

 

 

「なんだったら、気になる人でも探しゃいいじゃねーか」

 

 

「気になる人…」

 

 

「いいヤツ紹介するぜ?」

 

 

そんなこんなで、俺様とアイスの恋バナは目的地への到着をもって花を咲かせ切った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

いやぁ大したもんだな黄昏ハウス!城みてーに馬鹿デケーっ!

仰々しい門の前には屈強な門番が立ちはだかる…

しかし!しかしだ!

 

 

ここにおらっせられるのを誰だと思ってらっしゃる! おめーの目に映るその男こそ!世界の中心!異世界でも中心!海堂様だぞっっ!?

道を開けろぉーーーい!

 

 

門番どもは、「ーーー様、おかえりなさいませ」と言って門を開く。

門番が何を言ってたかよく聞こえなかったが…わかってんだぞぉ?俺様の名前だろ!?

 

"海堂様、おかえりなさいませ"

 

ほんとは俺様に敬服してんだな!ハハハーッッ!

さすが俺様の人望…眩しいねーっ!

光輝いてるねーっ!へっへっへっひひひひひひ!

 

 

心の中で大爆笑を爆発させながら門を大股で通る。中に入ると荘厳な景色が眼前にしぱーっと広がる。

外装とデカけりゃ内装も豪華だな…

贅を尽くしたこの雰囲気に…

ちょっとビビった。

 

いや!なにを恐れることがあんだ!

ビビるな景色に!

呑まれるな雰囲気に!

思い返すな!庶民の空気を!って…

 

 

「っておぉーーーーーい!」

 

 

気づけばアイズが悠々と先に進んでいる。あの雰囲気に侵されねぇのかあいつ!? 俺様は声を上げてアイツに追いつく。

コラ!先走っちゃいけません!先生の言うこと聞きなさい!

 

 

「どうしたの?」

 

 

「おまっ、おまえなかなか肝すわってんじゃねーか。俺様未だ庶民感覚が抜けてなくてだな…」

 

 

いやいや、そーじゃねーだろ。

首を振りながら調子を取り戻す。

もっとこう…、俺様の尊厳を汚さない物言いを。

 

 

「んんっ。じゃなくてだな?あんまりガキみてーにウロチョロすんなよ?あんまり俺様より先に行ってはいけません!」

 

 

「…」

 

 

な、な、なんだよ。すげー何言ってんだコイツ?感を無表情で出してきやがる。わかりにくいようでわかりやすいようで…

 

 

「えん…ちゅーわけで!おめーは小ガモみてーに俺様の後ろについてこりゃ…」

 

 

アレ?

 

なんでここまでついてきてんだ?

なんでコイツも入ってきてるんだ?

 

 

「あの、アイズさん?」

 

 

「なに?」

 

 

「どうしてこんなところに入ってきちまってんでしょうか…?」

 

 

「ここ、私の住んでるところだから」

 

 

住んでる?

コイツ実はもしかしてスゴイ…その、なんちゅーか。階級?だったりして?

 

 

「えーと、おまえ、貴族だったりするんですか?」

 

 

「冒険者だよ」

 

 

なんだ、冒険者か。

ベル坊とおんなじ。

 

 

 

あぁっ!? でも家がベル坊んとこと違いアリすぎるだろ!なんだこの格差は!?

 

 

ハッとして見上げるとそこにはキンキラ煌めく光が目に入る。

 

 

うわ見てみろよオイあのシャンデリア…骨董品…、ヘステーとこで見たのは古っっりぃソファだぞ!?

資本主義っちゅーのはこんなとこまで影響されてんのか!ちくしょうっ!

 

 

「その荷物は?」

 

 

アイズの声で我に帰る俺様。

そうだ、俺様荷物を届けにきたんだった。中身はよく知らないが、とりあえず届けりゃいーんだろ?

 

 

「あ。あっー、そうだったそうだった。おらよ」

 

 

背負った荷物をドサっとアイズの前に置いてやる。

アイズは何かわかっていないような表情をしてるが、住人に届きゃ問題ねーはずだ。

 

 

「海堂様からの素敵な贈り物でぇ〜ございまァ〜す…」

 

 

帽子を取って恭しく一礼をする。やっぱキマってんな俺様ってば。

 

 

 

「何?コレ」

 

 

「俺様にもわからん」

 

 

んじゃ、そういうことでっちゅーわけで、手をひらつかせながら出口に向かう。あばよアイス!

 

 

「待って」

 

 

待ちませぇ〜ん。俺様は風なんだ。

誰にも止められねんだっっ!?!?

な、な、な、んだっ!? 前方から何か飛んでくるっ!?イテえッ!!

 

 

「おっっっかえりぃぃぃぃぃぃぃ!アイズたぁぁぁぁぁぁあああああん!!!」

 

「うげあぁ!?な、なんっなんっなんだっ!?ミサイルか!?ミサイルなのか!?これはァっ!?」

 

「危ない」

 

 

俺様の思考は唐突に向こうから飛んできた飛来物によって打ち切られた。

俺様はソイツをモロに食らってしまい後方に飛ぶ。壁に激突するかと思ったが、アイズがどうやら受け止めてくれたみてーだ。助かった…!

 

 

飛んできた物体はミサイル…、ではなく人だ。

コイツも冒険者ってやつなのか…!?女…みてーだが、これまたちんまいヤツだ。

 

 

「くんくん…、なんやこれ…アイズたんの香りやない…!」

 

 

んん〜いやそうだとも、俺様大人だぜぇ?気品あるフローラルでリッチな香りが充満してだな…

 

 

「おっさんやないかい!」

 

誰がおっさんだクラァ!!俺様まだ20代のピチピチヤングだっちゅーの!」

 

 

ガキに突っ込まれ、アイズに支えられながら俺様は大人の怒りを顕現させてやった。

今の状況のせいで物の見事に効果無しだがな!

 

 

自分、すごく情けねぇっす…

 

 

コイツ…、見た目はまだガキンチョみてーだが何か妙ちきりんだ。

品定めするみてーな細っせぇ眼と俺様の美眼がぶつかりあう。なんか、ヘステーと同じ感じが、だな。

まてよ、この赤髪のガキ…

どっかでみたな。

 

 

「あッ!オメー店にいた奴!犬コロの連れだ!…よな?」

 

「あー、キミ、確かカイドウとかいう子やんか」

 

 

やっぱりコイツはあの連中の仲間だったんだ。ちゅーことはロキファミリアの冒険者ってとこか。

 

 

「ナオヤは私たちに何か用事があるみたい」

 

 

届け物なんだって、とアイズは俺様が持ってきた荷物を指差した。

そうそうそれそれ、それが用事なんだよ。もう置いたからいいか?

 

 

「まあ、女将から頼まれてわざわざ俺様がやってきたってわけだ。ありがたく思えよ〜?」

 

「な」

 

 

なんだコイツ。いきなり震え出してそんなに俺様と会えて嬉しかったのか。へへっ、サインでも書いてやるからそんな感動すんな…よせよせ照れる。

 

 

「まあ、サインぐらいなら書いてやっても…グエェッ!!にゃ、にゃんだぁっ!?」

 

 

いきなり!赤髪のガキは俺様の頬をぎゅっと鷲掴みにしやがった!や、やめっ!やめろぉ!顔が、ちゅぶれる!

 

 

「な…」

 

「ぬぁ?」

 

「名前呼びやとぉ……?」

 

 

うわ、すっげえ険しい顔。

そして、すっげえちゅぶれる俺様。

 

 

「お前ェーっっ!ウチのアイズたんとどんな関係やァーーーッッッ!?」

 

「にゃにぃおーっっ!?おれちゃまべちゅにしょんな……はなしぇ!!」

 

「認めへん!認めへんでぇ!親であるウチはお前みたいなどこにおるかも知らん馬の骨のカスなんかぜぇーったい許さへんわ!」

 

「アイズーっ!おいアイズーっっ!どうにかしてーっっ!」

 

「クラァァ!!気安くアイズたんの名を呼ぶなやァ!!馬の骨ェ!」

 

 

なんだコイツ!?ふざけた真似しやがるっ!!勘違い甚だしいんだよテメー!なんとかひっぺがそうとしてみるが、頰が思い切り引っ張られてイテテテテ!

こーなったら第三者に誤解を解いてもらうしかねーだろ!!

 

 

「アイズっ!」

 

 

俺様はアイズに目配せする。頼む伝わってくれ!俺の言いたいこと!わかんだろ!?

 

 

「ロキ、ストップ」

 

「な、なんやアイズたん…?ウチはこのものぐさ男に鉄槌を…」

 

「ナオヤはいい人だから」

 

「そうですとも!」

 

 

ここぞとばかりに俺様も大きく頷いておく。さすがアイズだぜ!

赤髪もオロオロしだしていい感じだ。

ようやく手が離されたもんで俺様の自慢の顔が崩れてねーかチェックするとしよう。

 

 

「ま、まあアイズたんが言うなら…、悪かったわ」

 

「いやもうほんとに、俺様っていっつもこーなんだよねぇ〜…誤解されてばっかでよぉ〜!」

 

「ほんま悪かったわ…」

 

「まぁまぁまぁ!別に気にするなよな!うん、ほんとに…」

 

「うっ…、なんやええ子やんか…!」

 

 

ふっ…、俺様ってばマジでビッグだよな…。まあ元々?そんな素質持ってたわけだしぃ!?ガキンチョの過ちなんざ許すくれーの大人の気概がねーとなぁ!?

 

 

「せや!カイドウくん!ここに来たっちゅーことはウチになにか用でもあるんやろ?」

 

 

ようやく目的達成っちゅーわけだ!いやぁ、なんだかぁ長い道のりでしたねぇ…

しっかし、なんだろな。この赤髪のガキ、さっきからずっと俺様のこと怪しんでんな。口ではフレンドリーでも、目が違う。さっきからずっとそうだ。

ちゅーか、コイツなんで関西弁喋ってんだ?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「まあ知ってると思うけど、ウチがロキファミリアの主神!ロキや!」

 

「ロキファミリアって凄いとこなのかぁ?もぐもぐ」

 

「ってそこからかい!世間知らずやなぁ〜!」

 

 

俺様は立ち話もなんだということで応接間に通された。さっきの痴態のお詫びとのことでうまそうな菓子まで用意されていた。全く!結構おもてなしが行き届いてるじゃあねえか!モグモグ。

 

アイズにはとりあえず礼を言って別れた。どうやらアイツも用事があるらしい。またね、とアイツは部屋から出て行った。

つまりは今この場には俺様とロキだけ。

 

 

「んー…ロキファミリア、そして、おめーが、ロキ」

 

「せや」

 

「んじゃあオメー神じゃねーか」

 

「せやけど、なんや…思ってたん反応とちゃうで」

 

 

なんだ、神ってのはヘステーやコイツみてーにガキの姿ばっかしてんのか?もうちっと、ナイスバディな神さんとかいねーのかな。

 

 

「ちゅーか、マジで豪華な内装だな!ヘステーんとことは大違いだわ」

 

「ヘステー…、カイドウくん。それ、どこのどいつのこと言うとるん?」

 

 

急に眉間が険しくなったぞ。

 

 

「えぁあ、へ、ヘスティアって神だ」

 

 

俺様がその言葉を発した瞬間、すげぇ剣幕で怒鳴り始めた。

 

 

「当たり前や!ウチはあんな貧乏神と比べものにならんねん!話にならんねん!!ウチの方が豪華で豊かや!せやろ!?」

 

「あ、あぁうん。そうだけど。んでもまあ!アイツ結構いいトコあるしぃ、おっぱいデケェしぃ」

 

「いっ、言うなやーッッ!それをッッ!」

 

「うわ!なんだオメー!」

 

 

また掴みかかってきたぞ!やめてくれホントにもう!

 

 

「もうアイツの話はやめぇや!気分悪ゥなる!んで!届け物やて!?」

 

「お、お、おう。これだ。女将から、です。はぁいはいはい」

 

 

そういえば中身ってなんなんだろな?ぜーんぜん聞かされてねーんだがこっちゃ。

 

とりあえず渡すと、ロキはスルスルと荷物の紐を解いていく。

箱の中身はなんだろな?

 

 

「おおっ!」

 

 

ロキが何やら目を輝かせてはいるが…

 

ん?目?細いからやっぱよくわかんねぇな。

 

とにかく、驚き半分嬉しさ半分って表情で箱の中身を覗いていた。

俺様も気になったので傍からスッと見たが…、なんてこたぁねえ、ありゃただの酒だ。

何がそんなに嬉しいんだぁ?

だが、匂いは大したもんだな。かなりの上物ってやつじゃあねえか!?

うーわ、俺様ちょびっとつまんどけば良かったぜぇ。

 

だがロキはまたじっと細い目をさらに細めている。感情の起伏が激しいやつだな。嬉しーのか怒ってんのかどっちかにしてくださいよ。

 

なんか考え込んでるみてーだが。

すると、向こうから扉が開く音がした。

 

 

「ロキ」

 

「おー、アイズにティオナ。ちょうどええな」

 

「ロキ〜、なんか変なヤツらがさ〜」

 

 

ドアが開く音。そこにはアイズが1人と…褐色の女がもう1人。なんだぁ、またどっかで見た顔だな。

ロキは……、酒から目を離さずに2人に何やら妙なことを言い出した。

 

 

「あぁ、適当に歓迎したれ。やり方は任せるわ」

 

「りょーかい」

 

「うん」

 

 

まあなんのやり取りかは知らねーが、どっか行っちまった。

閉まった扉の向こうでは

(でも、なーんでウチに来るんだろ…)的な声が聞こえてくる。

 

なんか、変なことに巻き込まれそーだ。さっさと退散させてもらうか!

んじゃまあそういうことで立ち上がった俺様。

 

 

「話は終わっ…たよな?そんじゃあそろそろ俺様お暇させてもらうっちゅーことで」

 

「まあ待ちぃやカイドウくん」

 

「えっ」

 

 

空気が冷たくなっていくのを感じる。コイツ…急に雰囲気が変わりやがった。

 

 

「ウチな?カイドウくんがどんな子なのかぁ…興味があんねん」

 

 

座ったままのロキは顔だけゆっくりとこちらに向ける。

絶えない笑みからは何か恐ろしいものを感じとれる。

威圧感。こんなガキから。

 

 

「もちっと、お話せぇへん?」

 

 

「……はい」

 

 

俺様は座らざるを得なかった。




親知らずを二本抜いてました

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