ちゅーか、俺様がこんなとこにいるのは間違ってる絶対   作:ビーム

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小説検索 → 検索ワード入力「海堂直也」→ 一件ヒット「ちゅーか、俺様がこんなところ…」 (当作)

ううっ! もっと流行ってくれーい!!


俺様、働き始める。

おはようございます。海堂、直也、です。

 

俺様は今豊穣の女主人ってなとこで働いている。しかも店員はほとんど女ばっかだ。

だがその女が一癖も二癖もありやがる!

特にリューというヤツ! あいつなんか俺に厳しい!

ハッ! これが、愛というヤツか…?

愛のムチってやつかぁ〜ッ?

 

「掃除は終わりましたかカイドウ」

 

「終わった」

 

「あそこがまだ綺麗では無いように見えますが」

 

「あぁ?お前いびり姑かなんかか? あんなん誤差だよ誤差いぇデデデデイッテェ! 靴靴クツクツッ!ふむなっちゅーの!」

 

あーあ、やっぱ働くってのは性に合わねぇ。

俺様はかつて働くなんざ冗談じゃなかった。誰かの下につくってのは俺様の気風に合わなかったのさ。

だがこの社会をグバーッと生き抜くには働かなくちゃいけねぇってことくらい、わかってた。

けどよ。

 

俺様にはちゃんとこの社会を生き抜くだけの夢を持っていた。

俺様は全て賄えるはずであろう才能を持っていた。

 

俺は、天才だった。

 

けど、その夢はもう捨てた。

捨てたというより、託したという方が聞こえは良いか。

 

俺様は古い(呪い)を手放すことができた。

後輩に、託すことが出来たからな。

だからもう、いつまでも縛られているっちゅーことはない。

働くのはいまだにめんどくせぇが、なんだってそつなくこなしちまうってのが天才の矜持ってか…ハッハッハッ!

 

 

アイツの理想は、なかなか俺様でも厳しいもんだが。

 

 

……ンな湿っぽい話はいい加減やめにしてよォ!

俺様まーたまた新しい才能を開花させちまった……!見てろよ?

 

「ナオヤさん! これはどうですか?」

 

「ンーー、クンクン、おし、問題なし!行ってよし!」

 

「なおやん、これはどうかニャ?」

 

「んーんーンンンーンー、クン、ちょい怪しいな、やめとけやめとけぃ」

 

俺様の超人的な鼻の良さを活かして腐ってるか見極めることができる!

 

カァーッ、やっぱり俺様ってどこ行っても天才だあ…。

 

「なんニャ?アイツさっきまで『俺様は犬じゃあねぇんだよ!』とかなんとか言ってたニャ」

 

「天才だ必要だ何だかんだ煽てたら、その気になっていましたよ。単純ですね」

 

黒猫吉とリューが俺様を見てコソコソ何やら言ってるが、よせやい!尊敬の念を送るのは!

確かに俺様カッチョいいがッッッッッッ。

 

「ナオヤさん、これはどうです?」

 

「……くっさ!うわっ!腐ってやがる!! シル嬢! おめえ人が斜め45度カッコつけてるところを…!」

 

「シル、ナイスです」

 

ーーーーーーーー

 

その男がやってきたのは約一週間ほど前の朝。

 

第一印象は"だらしがない"の体現者だった。ボサついた髪は黒い帽子から大きくはみ出し、ボロボロの服装であちこち汚れていた。

そんな浮浪者を連れて来たのは私の同僚、シルだった。

 

「シル、なんですかそれは」

 

「あっ、リュー。この人、裏口前の近くで倒れちゃっててさ。なんだかほっとけなくて」

 

シルの優しさは美徳ですが、このオラリオには浮浪者だって珍しくない。そんな誰でも助けるようであればいつしかパンクしてしまうだろう。

 

「まあ、店の近くで倒れているなら助けないわけにもいきませんから。死なれたら、後味が悪いものを残します」

 

「ありがとう! さっそくお湯とタオルを用意してくれる? 私は着替えと食事を用意しておくから!」

 

「わかりました」

 

あったかいコーンスープも頼む

 

「シル、今すぐ元の場所に返して来なさい」

 

ーーーーーーー

 

図々しい浮浪者は今までの衰弱が嘘のように食事を摂り始めた。

かなりの量を平らげていく姿にミアさんは満足気に笑っていた。

浮浪者は食事を全て胃袋に納めるとあっという間に寝てしまった。

熱も出ており、汗で服が濡れている。

 

ミアさんはシルに寝床の用意と冷却用の濡れタオル、着替えを持ってくるよう頼み、いつもの店の準備が始まった。

 

そうして昼頃、店内の掃除が一通り済み、朝の浮浪者の様子を見にいくこととなった。

ミアさんがドアをノックして浮浪者に語りかける。

 

「入ってもいいかい?」

 

「……あぁ」

 

ミアさんはドアを開けるなり、浮浪者の額のタオルを外し、熱を確かめる。

 

「ふむ、だいぶ熱が引いてきたね? どうだい調子は」

 

「う…んんぁ、ちゅーか…あなたら誰ですか」

 

「アタシらは豊穣の女主人っていう酒場の店員さ」

 

「どーりで。アンタらから酒とメシと石けんの匂いがするからな」

 

そういうと浮浪者は寝床にドッと倒れこむ。まだ起きていたくないようだ。

ミアさんはため息を吐くと浮浪者が被っていた毛布を剥がしに行った。

 

「ホラ早く起きるんだよ! アンタには聞きたいことがあんだからね!」

 

「やめっ、やめろよっ。布団剥がすな!おいっ」

 

浮浪者の抵抗は虚しくあっという間に毛布は取り上げられ、浮浪者は質問に応じるほかなかった。

 

「アタシの名前はミア、ここの酒場の主人さ。そしてウチの大事な店員のリュー、アーニャ、クロエ、ルノア。そして、アンタを助けてくれた恩人がこの子、シルさ」

 

「なんで紹介したのか知らんが…俺は海堂直也だ」

 

「カイドウ・ナオヤね。なーに、今にわかるさ。それよりアンタ助けてくれた恩人に何か一言無いのかい?」

 

「ああ、シルって言ったな……。 どーもあんがとさん」

 

「いえ、お気になさらず…」

 

ミアさんは、でだ、と本題に切り替えると、

 

「アンタ、ヒューマンっぽいがこれから行くあてはあるのかい?」

 

「あぁ? どういうこった。行くあてって別にバイクさえありゃあどこへだって…… あ? バイクどこ行った?」

 

「ばいく? アンタ妙なこと言うねぇ。シルが最初に見たときはアンタと大きな鞄しか周りになかったが。アーニャ、ちょっと持ってっといで」

 

「はーいニャ」

 

アーニャが部屋をでて、彼の鞄を取りに行く。

 

「一応中身は確認させてもらったが、着替えとかアンタの大切そうな絵が入ってるだけだったよ。勝手にすまないね、危ないもんが入ってたらアタシはアンタを追い出さなくちゃならないからねぇ」

 

「ミア母さんお待たせニャ」

 

「ありがとさん、アーニャ」

 

鞄を受け取ると、彼に鞄を投げる。

おふっ、と間抜けた声を上げて彼の胴体に直撃する。

 

「で、アンタの言うばいくってのはそん中に入ってるのかい?」

 

「はぁあ? バイクがこん中に入るわきゃねぇだろばっきゃろーい。常識的に考えろ常識的にぃ」

 

私は彼の物言いに不機嫌になるが、シルに止められる。

彼は鞄を漁り、自分の着替えが無くなってるのに気づいた。

 

「着替えがねぇ! おまっ、どうした俺の着替えっ。アレ大事な俺の」

 

「アンタの着替えなら洗って干したトコだよ。まるごと汚れていたからね」

 

「そーッゆーッ問題じゃねぇ! あん中には!」

 

「ああ、あの一枚の絵のことかい? アンタと男と女が描かれたまるで本物みたいな絵。アンタが描いたのかい?」

 

そう言ってミアさんは一枚の紙を差し出す。まるで空間をそのまま切り取って一枚の紙に貼り付けたような絵。紙には、同じような服装の彼と優しげな雰囲気の青年、大人しそうな女性が描かれていた。

 

「そうか、無事か。 んならいい」

 

そういって写真をテーブルの上に置く。

 

「ちゅーか、絵ってなんだよ? これは写真だぞ? しゃーしーんー。俺様写真も知らない国まで旅した覚えないんだが」

 

「しゃしんねぇ〜、知らない言葉を話すとはアンタ、旅人らしいね? どうやってここまで来たんだい?」

 

「それは俺様も知らんトコだ。俺様も知りたい。というよりここはどこだ?」

 

こうして彼へと説明会が始まった。

 

ーーーーーー

 

「オラリオぉ? 迷宮? 冒険者ァ? 何言って……、そうかわかった! お前らバカなんだな!?」

 

「残念だけど、これが現実ってやつさ」

 

彼は私たちにとっては当たり前の情報をまるで信じられないようだ。

どうやら本当に旅人らしい。一言余計な旅人ですが。

 

「おい、着替え寄越せ寄越せ」

 

「どこいく気だい?」

 

「そらおめえ、外でてオラリオちゅーの確かめにいくんだよ」

 

そう言って、彼は着替えを要求するがミアさんは動かない。

 

「アンタ、あんだけ食わしてもらっといてそのままさようならなんてするつもりかい?」

 

ミアさんが獰猛な笑みを浮かべ、少し後ずさりする浮浪者。

ミアさんは笑いながら続けた。

 

「アンタには選択権がある。このオラリオ、浮浪者が出る幕は少しもないよ。ならここで恩を返す代わりに働いて、ある程度金を貯めたら冒険者になるってのはどうだい?」

 

「ふざけんな! 俺様働くのはお断りだ!断固反対! だが、食っちゃ寝食っちゃ寝でもいいなら…… 居てやっても良いぜ?」

 

「アンタがふざけんじゃないよッ!! ココは宿屋じゃないんだ酒場なんだよッ! アンタにはもう働くか、どこかで野垂れ死ぬしか道は無いんだ!!! ホラ! 働くのか! 死ぬのか! さっさと答えな!!」

 

働く

 

「よし!さっさと着替えな! 全員!持ち場にお戻り!」

 

ミアさんはこうして1人の労働力を手に入れた。 本当にこの人は豪快で優しい人だ。

シルが彼に着替えを渡す。

 

「じゃあ着替えたら厨房に来てくださいね」

 

シルは微笑むと小走りで部屋を出て行った。

部屋には呆然としたままの彼ひとり、着替えを握って取り残されていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

厨房にて談笑を交わしていると着替え終わった彼がやってきた。

あまり使われなかったウェイター服がココで役に立つとは。

 

「着替えるって聞いてたけどよ… なんじゃこの格好はぁ」

 

「お似合いですよ! ナオヤさん!」

 

「おっ、そうか? そうだな!? そうだよな!! 俺様何を着てもカッチョ良いから罪な男だぜぃ」

 

シルに乗せられ調子に乗り出すこの男。確か名前は… カイドウ・ナオヤと名乗っていたような。

 

「改めて自己紹介を…だな。俺様は海堂直也ってもんだ。俺様のことは海堂様、もしくは直様、もしくは天才様と呼んでくれ皆の衆!」

 

「わかりました!ナオヤさん!」

 

「さん付けか…… んまあ良し!」

 

「よろしくニャー、なおやーん」

 

「なおやん!? バッキャラ!可愛いすぎるだろ!おめえもっと他にあんだろ猫吉(ネコキチ)ィ!」

 

「猫吉じゃないニャ! アタシはアーニャだニャ!!」

 

「うっせぇ! 俺の中ではもう決まってんの!諦めろぃ!」

 

「じゃークロエはどうなのニャ!」

 

「あー、黒猫吉(クロネコキチ)

 

「単純すぎるニャ! 断固反対ニャ!」

 

アーニャとクロエがギャーギャー騒いでカイドウさんに突っかかる。あっという間に打ち解ける2人の態度には舌を巻くばかりだ。

 

「私はルノアって言います。よろしくお願いしますカイドウさん」

 

「おう、ルノっち」

 

「ルノっち…」

 

「でー? お前は確かー?」

 

カイドウさんの視線がこちらに向く。皆が自己紹介をしたのだ。自分もしなくては。

 

「リュー・リオン、と申します」

 

「ほーん… リューで良いか 俺様は天才海堂様とよn」

「カイドウさんですね、よろしくお願いいたします」

「………おう」

 

自己紹介が一通り終えた後、カイドウさんは何が得意か聞いても「俺様は休むのが得意」など意味不明な妄言を飛ばしており、とりあえず色々やらせてみることになった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

海堂の修行は接客から始まった。

客とのコミュニケーションが重要なスキルである。

 

「まずは接客ですね! 私たち、しっかり教えますから!」

 

「ビシバシ行くニャー!」

 

「……ぅーっす」

 

 

 

30分後

 

 

 

しゃあせぇー

 

「んー、もう一声!」

 

「しゃあっせぇーっ」

 

「まだ足りないニャ」

 

「いらッッッしゃあせぇーッい!!」

 

「おお!とっても良い声です! さあもう一度!」

 

いらっッッッしゃいッッッまッッッせーッッッ!!!

 

「これただのヤケクソニャ」

 

 

 

 

 

次の修行は食器洗いに移った。

迅速なる行動と細心な注意が求められるスキルである。

 

 

 

 

「食器洗いだニャ、接客と違うから丁寧にやるんだニャー」

 

「でも、速さも求められますから、どうか割らないように注意してくださいね」

 

「……ぅーっす」

 

 

 

30分後

 

 

 

「だいぶ慣れてきましたね カイドウさん?」

 

「俺様天才だからな!飲み込みが早いのも天才の務めってやつよぉ」

 

「ルノっちの説明が良かっただけだと思うニャ」

 

「アンタまでルノっち呼ばわり…?」

 

 

 

そして最後の修行、掃除にはいった。

海堂にとってここが1番の鬼門であった。

何しろ相手が…。

 

 

「掃除です。お客様に提供する環境ですので自分の思う以上に丁寧に掃除してください」

 

「……」

 

「返事は」

 

「…っす……」

 

 

 

30分後

 

 

 

 

「おーッし!掃除終わり! きゅうけい!!」

 

「いいえ、まだ足りません」

 

「はぁ!?」

 

 

 

2時間後

 

 

 

「よぉーッし!! もう良いだろ!

綺麗さっぱりだ!!」

 

「ここ、埃がたまってますが」

 

「はぁあ!?!?!?!?!?!?」

 

 

 

 

4時間後

 

 

 

 

「もう十分だ! もう十分だろがぃ! 誰か来ても文句言わせねぇぞっ!!」

 

「ふむ、まあまあですね」

 

「よし来たァ!」

 

「あ、ここの床が「はい休憩入ります!お疲れ様でしたーッ!」

 

ーーーーーーー

 

 

 

結果は掃除、皿洗いなどは特に問題はなくなった。しかし、彼の性格なのかどうも接客に問題点がある。細かいところをいちいち指摘するとキリがないので伏せておくが。

ミアさんにカイドウさんの報告をしておかないと。

 

「で、どうなんだい?ナオヤの働きっぷりは?」

 

「接客については無視できない問題がありますが、それ以外は特に問題は無さそうです」

 

ミアさんは満足気に頷く。

 

「そうかいそうかい! それだけできりゃあ十分店に貢献出来るね! 特にリュー、アンタ結構熱心に教えてやってたじゃないか!」

 

「それは… 彼が人並みの掃除が出来るまで鍛え上げただけです。彼、最初は全くと言っていいほど掃除に疎かったので」

 

実際そうだ。彼は印象通りのだらしなさだった。普通人が目につくようなゴミやホコリも、ほっといている。私が矯正しなければいけないほど酷い有様だった。

 

「それだけ鍛え上げられたんなら、アイツにはまず掃除をやってもらおうかね」

 

ミアさんは私を軽く労ってくれた。

だが、ここは豊穣の女主人。酔った冒険者のイザコザはたまにしか起きないが私たちはそれを止める役割もある。止めるだけの技量も持ち合わせていなければ務まらない。

 

しかし、彼にそれを止めるだけの力はあるのだろうか? もしも私たちが不在のとき、争いが起きてしまったら。

彼の身が少々心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おいシル嬢、猫吉。俺様オリジナルドリンクって奴を思いついちまった。お前らの意見を仰ごうと思ってな」

 

「? なんですかそれ?」

 

「面白い話なら乗るニャ!」

 

 

 

ーーーーーーー

 

ナオヤさんがここに入ってから3日ほど経ちました!

 

ナオヤさんは掃除を特に頑張ってくれています。リューの熱心な指導もあって、私たちはとってもお掃除が楽になりました!

 

たまに皿洗いとかも手伝ってくれます! その時は大体残業代をミア母さんに請求していますが、断られてしまっています。

 

買い出しは私たちが行っていますが、ナオヤさんはリューに止められています。なんでも、接客の態度からして外に出ると絶対問題を起こすって……。私は大丈夫だと思うんだけどな〜。

 

「シル! パスタあそこに持ってって!」

 

「はい!」

 

ナオヤさんも業務にかなり慣れてきたようでよかったです!

私たちも先輩として頑張らないと!

 

でも今日、ちょっとした問題が起きちゃったんです。

 

 

「テメェ! ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!」

 

「なんだぁ!やんのかレベル2風情が!」

 

酔ってしまったお客様のケンカです…

 

ミア母さんとリューは急遽足りなくなった食材を買いに行ってしまって、アーニャもクロエもルノアもまだ手が離せなさそう…。

ここは私が!

 

「はいはいどーもぉおつかれさん。いっちょ、俺様のオリジナルドリンクでも飲んで落ち着けって〜」

 

「なんだァ、テメェ…?」

 

って、ナオヤさん!?

突然ナオヤさんが現れてお客様の腕を掴んで……って!あまりにも無茶です!

仮にも神様の恩恵を受けた冒険者の力は普通の人とは段違いです!

止めないと大変なことに…!

 

「ナオヤさんっ…! 危険です…!ここは私に任せてください…!」

 

「震えてるじゃねーか。まあまあいいから、見とけシル嬢」

 

ナオヤさんはそう笑うとお客様に向かってしまいます。

ああ、今のうちにアーニャかクロエを呼んでおかないと…!

 

「ちゅーわけで、お前ら。どうどう」

 

「人を動物扱いするんじゃねぇ!テメェ新入りかァ?」

 

「新米天才ウェイター、海堂様だ。

おいシル嬢、毛布持ってこい! 頭に被せたら大人しくなるかもしんねぇ」

 

「丸々野生動物への対処法だろがソレ!客舐めるのも大概にしろや!」

 

お客様がとうとうナオヤさんの胸ぐらを掴みにかかってしまった。

ナオヤさんは平然としてるけど…

レベル2の冒険者に…敵うわけが…。

 

「……わんなよ」

 

「あぁん?」

 

「今日はおっそろしいウェイトレスもご不在のもようだしよぉ? お前の謝罪を見たら気が治るかもしれ

 

さわんなっつってんだよッ!

 

「!? うおぉッ!! グワッ!!」

 

それから一瞬の事だった。

ナオヤさんがお客様の腕を掴み返すと軽く捻り上げ、背負い投げでテーブルに叩きつけられた。

テーブルがミシリとヒビが入り、男性は起き上がる気配がない。

 

「てっ、テメェは!?」

 

「ふざけんじゃーねぇーぞッ! 大事なもんにシワ付いたらどうすんだァーッ!」

 

ナオヤさんはもう1人の方に向かっていって胸ぐらを掴んでガクガク揺さぶっている。

 

「わ、わかった! すまなかった…! 許して…くれ…!!」

 

「おしゃ!そんじゃあ俺様特製のオリジナルドリンクを飲んで酔い覚ませぃ!!」

 

「ウッ! 何だこれ!? 甘…!!! うおお"ぉえ"ぇ"」

 

ナオヤさんのオリジナルドリンクを

喉に流し込まれ、あっという間に顔を真っ青にさせて倒れてしまった。

 

ナオヤさんは?服の胸ポケットを急いで確認し、ホッとため息をついている。

 

「あの、何か入ってらっしゃったんですか…?」

 

「ん? あっぁ〜 違う!! これは服がシワになっていないかどうかのチェックだ! 」

 

そういって口笛を吹きながら服を伸ばし始めた。

でも、私にはわかる。

 

きっとあの中にはナオヤさんの言っていた、「写真」っていうものが入ってる。その写真にナオヤさんと、優しそうな男性と綺麗な女性が。

ナオヤさんはその人達のことを本当に大切に思っていたんだろうな。

 

私はナオヤさんのそんな一面を見て嬉しくなるのでした!

 

でも……

 

 

 

「デカイ音が聞こえてきて急いで帰れば… なんだいこりゃ」

 

「……皆さんに聞きます。この状況を作り出したのは誰ですか?」

 

「「「「コイツです、リューさん」」」」

 

「あっ!? なんっ なんなんなん、なんだぁお前らッ!? 俺様はコイツら止めようとイダデデデッ!! 髪!引っ張ら痛いっ!痛いですリューさん!!」

 

「テーブルの修理法と限度ってものを教えます。奥に来てください」

 

 

髪を引っ張られ、悲痛の叫びを上げるナオヤさん。

私はミア母さんにナオヤさんが発端ではないことを説明したけど…。

 

「こりゃあアイツの給料を差し引くしかないねぇ…」

 

頑張れ!ナオヤさん!!

 

 




頑張れナオヤさん!
次回、兎君と再会します。
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