ちゅーか、俺様がこんなとこにいるのは間違ってる絶対   作:ビーム

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お待たせしました。


俺様、街に繰り出す。

おはようございます! シルです!

 

ナオヤさん、すっかり豊穣の女主人のメンバーです。

メンバーというより、大きな弟って感じかな?

私もみんな、ナオヤさんの接客や皿洗いを一生懸命教えたら、ナオヤさんすっかりできるようになっちゃって!

 

「あっ、皿が落ち…」

 

うぉぉおぁおおおりゃぁぁいっ! ギリギリキャッチィィィイイ!!!

 

「あっ! 凄いです!カイドウさん! ついに割れる前にキャッチできるようになりましたね!!」

 

「落とさない努力をしろニャ」

 

出来るようになったのは嬉しいですけど…… なんだか独り立ちされるみたいでちょっぴり寂しいですね。

 

 

しかも、今日はご報告があります!

なんとなんと! ミア母さんがナオヤさんに外出の許可を降ろしてくれました!

 

「そろそろナオヤには外への見聞を広めるのも兼ねて買い出しに行ってもらおうかねぇ」

 

「え、なんちゅー罠ですかコレ?」

 

「ビビりすぎニャ! ようやく外出許可が降りたんだからもっと喜ぶべきニャ!」

 

「ちゅーことはアレか。とうとう一人前に認められてもっとでかい世界で羽ばたいてけってか」

 

「飛躍しすぎニャ!」

 

アーニャとクロエが一気に詰め寄る。前々からナオヤさんはアーニャ達に外はどんな感じかと色々聞いていたみたいです。

アーニャもオススメの魚屋さんを紹介するニャ!って言ってたなぁ〜。

 

「ま、嫌だと言っても行ってもらうからね! そろそろ外の空気を吸いにいかないと体がまいっちまうからねぇ」

 

「確かに、カイドウさんは接客のお仕事を経て誰かと接するという能力に長けてきたんではないでしょうか?」

 

ルノアはしっかりとナオヤさんを見てるみたい。皿洗いをしてる時も遠目から見守っているのを私は知ってます!

 

「私はまだ反対です。なにかと揉め事を起こす可能性は大いにあります。それによる被害の被りは避けなければ」

 

リューはまだまだナオヤさんが心配みたい。

掃除の時もリューがあれだけ一生懸命教えてたのはナオヤさんだけでした!

やっぱりちゃんとナオヤさんのことを思ってるんだなぁ〜。

 

「おめえちょっと俺様のこと信用しなさすぎだろぉ! 見てみろよ俺様を!! どっからどう見ても!」

 

「喧嘩っ早くて」

 

「だらしがニャくて」

 

「まだまだヒヨッコで」

 

「ちょっと、おっちょこちょい…?」

 

「子供っぽいニャ」

 

「元気いっぱいなステキな方です!」

 

「な、な、な、なんなん、なんだお前ら…」

 

ナオヤさんちょっと落ち込んじゃいました。

でもでも! 今までも笑顔がお店に溢れていたけど、ナオヤさんが入ってからは常にそれ以上です!!

ナオヤさんはムードメーカーとして最高の店員さんです!

これからもずっと一緒に働いていけたらなぁ。

 

「皆が言う通りナオヤはまだまだヒヨッコさ。 だから案内役も兼ねて二人ほどついてってもらおうかね」

 

「なっ、んなガキみてーな。余計なことすんなよぉ!」

 

「道すらわからないっていうのにどうやって行く気だい? とにかく、シル! アンタついてっておやり」

 

「はい!お任せください!」

 

ついにこの時が来ました!

街の案内!

ナオヤさんにぴったりの服屋さんも探しに行こうっと!

 

「それとリュー! アンタもお行き!」

 

「っ……私ですか」

 

「アンタには適役じゃあないかい? アンタが見張ってくれりゃあナオヤも問題を起こせやしないだろうね」

 

「ですが」

 

リューがまごついていると、ナオヤさんが突然割り込んで来ました!

 

「じっ、冗談じゃないぜ! あんなアンチキショウウェイトレ」

 

「……チッ

 

「……リュー………さん、を! 連れて行くのは俺様も賛成だ賛成。うん」

 

ナオヤさんもリューと一緒に行きたいようです! みんなで行った方が楽しいですもんね!

 

「気が変わりました。私も同行します」

 

「マジかよ…… せめてルノっちあたりであればトンズラこけたモンを…」

 

なんですか?

 

なんでもないです

 

ミアさんが決まった!と言うように手をパシッと叩くと、私に買い物のメモを渡しました。

それとミアさんが何かをナオヤさんに渡します。

 

「ナオヤ、持ってお行き」

 

「あん? これって……」

 

それは2000ヴァリスほどのお金でした。

 

「気に入ったものがあれば買っておいで。ここんとこアンタ頑張っているからねぇ! ちょっとしたご褒美だよ」

 

「女将……」

 

ナオヤさんがお金を握ってプルプル震えてます。

ちょっと… 私も感動してます…!

やっぱりミア母さんは気遣いがうまいなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

「これって給料の前倒しとか言わねーよな?」

 

「おっ、よくわかったねぇ。そうだよ」

 

「やっぱりそうかよぉぉぉぉーーッ!!」

 

さぁ!いざ出発です!

 

 

ーーーーーーー

 

どーもどーも、海堂直也でございます。

 

さて、俺様は今どこにいるでしょーか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラリオです。

 

 

 

どこじゃそりゃ。

 

 

 

どこじゃその……。

 

なんじゃこのどデケェのはァァァァアーーッ!!?

 

「はい! バベルです!」

 

「バベルだかバブルだか知んねぇけど建築法に違反してませんかコレ!?」

 

シル嬢から話は聞いている。

確か冒険者はここの地下にあるダンジョンを探検に行くらしい。

しかも塔内部には施設が揃いまくっており、めっちゃ上に行くと神々が集まる場所があるという。

 

「は? 神?」

 

ちょっと待て、俺様今なんつった?

神? 髪? 紙?

がいらっせると?

なんだここはどでかい神社だったのか。

 

「はい!神様がたまに集まっては宴会したり、めざましい活躍をする冒険者に二つ名を考えたり!」

 

「いやだから、神さま神さまってそんなそこらにいるようなヤツらじゃあ」

 

「あそこでジャガ丸くんを売っているのも神さまですよ!」

 

「北のメインストリートの露店がなぜココに? 出張販売でしょうか」

 

「いらっしゃいいらっしゃいー! お熱い内に召し上がらないと物足りなくって泣いちゃうぜ!」

 

「アレが神なら俺様だって神みたいなモンだろ」

 

えらくコスプレみてーな格好してるしよ。なんだあの胸の紐。ハサミで切っちゃろうか。

 

「見物もいいですが、目的をお忘れなく」

 

「そ、そうだね。 まずは調味料を買いに行かないと」

 

「カイドウは見て場所を覚えることです」

 

「うっま… ジャガイモってこんなに美味かったっけ…」

 

「何勝手に行動してるんですか

。もうお金を使って…」

 

「なんだよリューおめえも欲しいのか? 余分に買ってあるぞ」

 

「……いりません」

 

んだよつれねーやつだな。

いやしかし美味いなコレ…。

それにしてもマジで見たことねーものが並んでんな。うっま…。

あの液体が入った、うっま…。ビンとか、うますぎる…。なんかよくわからん本とか…。

 

よっし、あと一個だけお代りするか。

 

「おっ! また来たねキミ!」

 

ーーーーーーーー

 

ようやくメモの通りに買い終えた。

大体の場所はちゃーんと覚えてきた。特にジャガ丸くんの屋台とかな。俺様気に入ったぜアレ。安いし早いし美味いし。

安さのおかげでまだまだ1880位は残ってる。

俺様にお似合いの服もシル嬢が見繕ってくれるそうだ。まっ! 俺様なんでも似合っちまうから特に時間もかからねぇだろうよぉ!

 

しっかしなんだかよくガキを見かけるな。ガキのくせして重くせー装備をつけてたりなんでか武器を背負ったりな。

冒険者ってやつに憧れてんのか?

 

ってうおぃ、えらく筋肉質なやつだな。ありゃ絶対冒険者だろ。まぁ俺様も鍛えればあれだけ行けるだろうよ多分。

 

今度はなんだ? 猫耳つけているぞアイツ。 犬の耳まで…っておいおい!もうここまで来ちまったのか東京!?

メイドがキャラ付けのためにわざわざ猫耳とかカチューシャ付けてるアレか!?

言わせてもらうけどなぁ!!

お前らそれ耳4つってことになんだぞ!!

おかしいことに気づけぃ!!

 

「なぁ、ここってもしかしてアキバかよ? そういうイベントがやってんのか? 今?」

 

「アキバ…? ここはオラリオだとなんども言っていますが」

 

「いやそういう設定今いらないから。見ろよ! 俺気づいてんだぞ! アイツら! 耳のカチューシャつけてんだろがっ! よぉ!」

 

「キャットピープルを知らないと?」

 

「なん、なん、なんだっ? キュット?」

 

「カイドウ… 貴方は」

 

なん、なんだその疑いの目はぁ。

キャットだからピープルだか知んねぇけど茶番に付き合わされんのはもううんざりだぜ!

 

「どうかしましたか? ナオヤさん!」

 

「おいシル嬢コイツマジでおかしいって、働きすぎだろ休ませてやれ」

 

「シル、そいつの話を聞いてはいけません。 そいつはキャットピープルやシアンスロープ、獣人のことを一切知らない様です」

 

「えーっ!? 知らないんですかナオヤさん!!」

 

なにこれ俺様が悪者みたいになってんじゃん。

大体スロープだかピープルだかパープルだかハッキリしやがれってんだ。

 

「そうだ! そうだよ! 俺はシアンキャットスロープペープルなんざ知らねぇんだよ!! 見たことも聞いたこともねぇ!」

 

「いえ、カイドウ。貴方は何ども獣人と見たこともありますし、会話までしています」

 

「よーく思い出してください!」

 

ンなわけねぇだろバッキャロ!

カチューシャつけてる奴らと毎度毎度会話なんざやってらんね……ね…、ね、ね。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー『できたニャ! アーニャ特製オリジニャルドリンク! なおやーん! 味見してニャー!』

 

『地獄だ』ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

……アイツ。

アイツアイツアイツアイツゥゥウ!?!?

 

「猫吉!? 猫吉カチューシャじゃねーの!? 偽物の耳じゃねーの!?」

 

「生粋のキャットピープルですが」

 

「マジ?」

 

「そうですよ。当たり前じゃないですか……って、カイドウ!?どこ行く気ですかッ!?」

 

くそ! 確かめてみねーと確証は得られねぇ! 善は急げだッ!

 

「そこのアンタ!犬耳の… えーっ、ワンちゃんスロープのアンタ!」

 

「は? 俺?」

 

「そう、アンタ。 アンタ耳どこ?」

 

「なに言って……。 ここだけど」

 

………うーわー。

完璧犬耳指してますわ。

これダメだ。

俺の負けだ。

 

「はい… お疲れさん。どーも、もういいよ帰って」

 

「なんだアイツ…」

 

……わーい尻尾までついてやがる。

 

ハイ戻りましたよと。

そんなに険しくならないでリューさん。

 

「俺様ただいま」

 

「はぁ…。 本当に唐突に動き出しますね貴方は。大事にならなかったから良かったものを」

 

「まあまあナオヤさん旅人だったみたいだし! オラリオを知らないのも無理はないんじゃないかな?」

 

「そうでしたね…。そういえばそんな話をしていたような」

 

シル嬢たちが安堵してる中、俺様はあることに気づく。

 

もし、犬族猫族がマジモンだとしたら、俺様が今まで見た奴らも……奴らも? もしや?

 

「シル嬢」

 

「あっ、はい?」

 

「アレ猫族?」

 

「いえ! あの人はドワーフさんですよ!」

 

また知らねえ族を…! 犬か猫でまとめろぃ!

 

「あっ、ミア母さんもドワーフなんですよ」

 

女将ドワーフなの?

なんか妙に力強ぇなぁと思ったら人間じゃないのか。

 

「褐色の子はアマゾネスって言うんです!」

 

そういやワンコロが店に来た時にちょっぴりゃ話したな。

元気が溢れてそうな奴だった。

 

「あそこの子供みたいな人はパルゥム族と言いまして! 中身は結構お年を行ってる方だったりもするんですよ」

 

ガキじゃねーの!?

あっ、中身おっさんなのか。 おばさんなのか。 心配しちまっ……、紛らわしいマネしやがって。

 

「そういくとシル嬢、お前何族なんだ? 色々ありすぎて人間かどうかも怪しくなっちまう」

 

「私はヒューマンですよー!れっきとしたヒューマン!」

 

あぁ…。

なんか安心した……。そうかちゃんと人間どもがいるんだな! こんな人知超えた野郎どもがいる世界に…。

俺様がいた世界とは大違いだ…!

 

「リュー、おめえも大変だろうが人間として頑張れよ…」

 

「私はヒューマンではありませんが」

 

「………」

 

「……………」

 

「あっ、ドワーフかおまええゲェェェァェェエッッッ!!? 首!首ぃ! すんません! すんませんったら!」

 

ーーーーーーーー

 

てなわけでブラブラしてます、北のメインストリート。ここら辺は商店街としてかーなーりー賑わっていて、さっきシル嬢達はココで買い出しの用を済ませてきたというわけだ。

 

いやしっかし、いろんな種族がいやがるなココは。

正直まだ信じらんねぇけどもう考えるのはいい加減やめにした。

俺様はもう何があっても驚かねぇぞ!

 

 

 

 

 

だが、気になることがある。

 

 

 

「シル嬢、ココには色んな種族の奴らがいるよな」

 

「はい!皆さん個性があっていい人がたくさんいて!」

 

「怖くねーのか?」

 

「…え?」

 

普通、怖いだろ。

 

自分より力の強ぇー奴がそこら辺をうろついてんだぞ。

剣を持ってる奴がそこらにもいるんだぞ?

思わねーのか?

 

殺されるんじゃないかって。

 

「いや、いやな? もし、もしだぞ! 周りの剣持った力強ぇー奴が突然人間を襲い出したらどうすんだ?」

 

「それはあり得ませんね。問題のあるファミリアや冒険者はいるにはいますが、殆どの冒険者はそうではありません」

 

……オラリオってマジで色んな種族が共存してるとこなんだな。

 

人間以外の種族が一緒に暮らしていける世界…。 共存できる世界。それって。

 

 

 

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俺が、心の底からずっと憧れ続けて、尊敬し続けてきた生き方。

 

叶うはずのない夢を追い続けるのは本当に辛い呪いのはずなのに。

アイツはそれでも願い続けてたんだ。

 

俺様はそんな生き方を継いじまった。

 

夢が呪いになるってのは、もう経験済みだ。

だが、覚悟の上で俺はその生き方を背負った。

 

 

 

しかし、こんな簡単に出会えちまうとはなぁ……。

 

「カイドウ? どうかしたんですか?」

 

「いや、なんでもねぇ。ちょっと、重い荷物が軽くなっただけだ」

 

そうだ、ここで立ち止まってどうすんだ海堂直也!

 

なぜこの理想が成り立ってんのか!

その理由を聞かねえと、またふりだしだ。

どうして!

人間と別種族が共存していけるのか!?

 

「リュー、どうして人間と別の種族が共存していけっか。おめえわかるか?」

 

「共存? 共存もなにもずっと前からそういうふうでしたよ」

 

「いや、だからぁ! なんで!怖がらずにさも一緒にいるのが当たり前みてーにいられるんだ! 明らかに人間より力強ぇーだろが! 人間より姿形が違うだろが!」

 

「カイドウ…?」

 

「どうしちゃったんですかナオヤさん……?」

 

「人間は! 怖くねーのかよッッ!! ーーーー!? しまっ……」

 

「!?」

 

「今、顔になにか…」

 

慌てて顔を覆う。

出ちまった。

俺のもう一面が。

 

顔にちょっと浮かび上がっただけだ。多分バレてねぇ。

 

熱くなりすぎちまったか…。

 

「あー、すまん。ちょっと熱くなった」

 

「い、いえ! 気にしてませんから!」

 

「……」

 

「で、なんで人間とスロープだかキャットだかドワーフが一緒に、いることに、恐怖を感じねぇんだ?」

 

猫吉達の身体能力の高さは知っている。ありゃ人間以上だ。まるで猫みてーにしなかやかすぎる。

女将の力強さもそうだ。

 

「私の意見からですと、神様のおかげって感じですかね!」

 

「…なぜ人間にこだわるのか知りませんが、神の存在は一理ありますね」

 

また神か。 いい加減信じちまいそうだぜ。

さっきのジャガ丸くんを売ってたやつのおかげで? こんな世界が成り立つと?

へっ、ばかばかしい。

だいたいマジで神だったとして、一体なにができるってんだよ?

 

「一体神がなにしたおかげでそんなのが成り立つんだ? 」

 

「恩恵ですね」

 

……音形? んだそりゃ!?

 

「……音形をすることでこんな世界ができるってのかよ」

 

「カイドウは冒険者の事情にも疎いようですね。わかりやすく説明しますと」

 

 

ーーーーーー

 

冒険者は、恩恵というあらゆる事象から経験値を引き上げて、力を発現させたりするらしい。

レベルが上がれば上がるほど、人外じみた力が……それをやるにはファミリーアートってとこに入らなくちゃいけねぇらしくて、そこで血とか背中にたらして

、たらして、たらし…。

 

「つまり?」

 

「つまりと言いますと?」

 

「いや、もう恩恵だとか神の存在はいいんだよ。俺様が悪かった。わかりやすく説明お願いします」

 

 

「……そうですね。 カイドウにもわかりやすく説明すると」

 

 

 

 

 

ーーー()()()()()()()()()

 

 

ーーーーーーーー

 

アイツが求めてた夢。

実現させたい世界。

 

その世界は、そこにいる全員が強くねーといけねーのか?

人間がオルフェノク並みに強くならねぇと、共存できねぇのか?

 

たしかにオルフェノクは人間をたやすくひねっちまう。

オルフェノクが人間以上の力を持ってることは明確だ。

 

だからといって、人間が同じくらい強くなれば……?

 

 

それはなんとなく、違う気がする。

なんでかわからんが、絶対に違う気がする。

 

言ってたじゃねえか、三原の奴が。

 

本当に怖いのはオルフェノクの力ではなく、力に溺れる人間の弱さだってな。

 

過ぎた力は、確実に心に影をつくる。

 

ンなモン持っても、ロクなことはねぇ。

 

ま、いずれ分かるのかもしれん。

夢ってのはすぐ叶うわけじゃあねぇ。

旅人が旅をするように、夢を追い続けて、叶えるモンだ。

そういうモンだ。

 

とりあえずだな! 気分を入れ替えて商店街をぶらついてっぞ!

シル嬢が言うにはそこにオススメの店があるらしい!

俺様の眼鏡にかなうかどうか…?

 

 

ーーーーーーーー

 

さっきのカイドウの様子は少し妙だった。

さまざまな種族が共存していけていることになぜか執着している。

 

彼の元いたところでは一体なにがあったのだろうか。

 

あまり詮索すべきではないだろう。

きっとそれは彼にとっても重い話だ。

 

それにしてもこの店は…。

 

「どうですか?ナオヤさん!ここのお店は面白いものがたくさんあるんですよ! あっ!これ可愛い!」

 

「ちゅーか、シル嬢の可愛い基準はどうなってやがんだ」

 

なにやら生活には役立たなそうなものがたくさん置いてある。

どれもとても安いのだが、使い方が一切わからない。

これに至ってはもう無料だ。

全く売れなさすぎて、店員もヤケになったのだろう。

 

「シル、そろそろ服を見に行きましょう。早いとこ決めて帰らなければミアさんのお叱りが飛びますよ」

 

「あっ、そうだね〜。 ナオヤさん! そろそろ行きましょ……ってアレ? どこへ?」

? なぜかカイドウの姿が見当たらない。

また勝手にどこかへ行ってしまったのか?

……ため息が出る。

すると、店員が彼の行方を教えてくれた。

 

「その客なら奥に入ったよ」

 

「えっ、ナオヤさん気になるものでもあったかな?」

 

「なにやら呟きながら入ってったな。ありえねぇ、とかなんとかな」

 

ありえない?

ありえないとはどういうことだろうか。

とにかく私たちは店の奥に進んでいく。

 

そこにはなにかを凝視するカイドウの姿があった。

シルが心配そうにカイドウのとなりに並び立つ。

 

「ナオヤさん…? どうかしたんですか?」

 

「……」

 

様子が変だ。

いったい彼はなにを見つめているのだろうか。

体が少々強張る。

彼が発する気が私の体に緊張を走らせる。

シルも後ずさりをしている。

 

「なんで……。 なんでここに」

 

「カイドウ…?」

 

「ありえねぇ…、 絶対ありえねぇ…!」

 

おそるおそる彼の見つめる先を覗く。

 

 

 

 

そこには木製の弦楽器が置かれていた。




なんと再会とは、捨てたはずの夢との再会でした。

狼とか期待していた皆様。すみません…!

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