B.A.D. 短編集   作:白雪さんお幸せに

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B.A.D.原作の話がハーメルンには少ないので投下。

あさゆうは良いぞ。


そして短い。


黒猫と、狐と、少年

───にゃあ

その時、猫が鳴いた。

 

雑踏に消えてしまう程に小さな声だったが、確かに、聞こえた。

車線を挟んで道の向こう側に居る、黒い猫の鳴き声だろう。静かに佇む姿は、誰かを待っている様にも見える。

 

──────にゃあっ

猫が、また鳴いた。

 

赤いリボンが結ばれた、綺麗な毛並みの猫だ。

何処かの飼い猫だろうか。脱走してきたなら、飼い主はさぞ心配している事だろう。首輪が無いのが、気掛かりだが。

 

信号が青に代わり、交差点で足止めされていた群衆が再び歩き出した。とは言え、此処は千葉の街。東京程の人数は居ないので、その黒猫に近づくのは意外と簡単だった。

猫は、小さな公園に居た。自転車を停め、降りる。

動物に特別好かれる訳でも、部長サマのような猫フリークでもない俺は、適当に撫でるくらいしか出来ない。何処の猫かも分からないのに餌付けなんて出来ないのだ。

 

そのまま、無心でムツゴロウしていると、ふと視界が暗くなった。

すわ夕立かと慌てて空を見上げると、そこに居たのは、一人の少年。身長は俺とほとんど同じくらいか。たが決定的に違うのは、やはり髪色か。

なんでもないような表情に、少しだけ安堵の色を混ぜた少年は、金髪だった。

 

「ゆうり。勝手に居なくなるのは止めろと、何度も言っているだろう・・・・・君も、うちのバカ猫が済まなかったね」

 

────にゃあっ!

また、猫が鳴いた。バカ呼ばわりに抗議しているようにも見える。

 

どうにも不思議な猫だ。人の言葉が分かるのか、何なのか。

()()()()()()()()()()()()。そんな印象を受ける。まあ、猫に人の言葉が分かる筈も無いので、ただの妄想にしかならないのだが。

 

「いえ。別に、迷惑かけられた訳でも無いんで。その、飼い主が見つかって良かった」

 

飼い主らしき少年は、ああと返すだけで、こちらへの興味を失ったようだ。どうにも、この少年も猫っぽい。

 

「ねえ、君」

「はい?」

 

猫を抱き上げ、面倒くさそうに撫でていた少年が、ちらりとこちらに視線を向けた。

 

「身の回りで、訳の分からない出来事があったりしないかい?」

 

心底面倒くさそうに、少年は俺にそんな事を聴いてきた。その顔は、妹にお使いを頼まれた俺の顔に似ていた。

 

「・・・・・いえ。特には」

 

というか、この質問は何なのだろうか。強いて言うなら今年の春、ある部活に強制加入させられた事だろうか。

 

「そう、か・・・・・なら、その日常を出来るだけ長く、続けるといい。後悔の、無いようにね」

「・・・・・はあ」

 

少年は、それだけ告げると、黒猫を連れて去っていった。

何だったのだろうか。質問も、その答えに対する反応も、無駄に意味深だ。自称俺の大親友なんかが好きそうな匂いもしたが。

 

気にしない事にして、公園の自販機で千葉県民のソウルドリンクを買う。

 

 

今日も、暴力的な甘さだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・なんだい。これは。これがコーヒー?頭がおかしいんじゃないのか?」

 

少年は、どうもお気に召さなかったらしい。




「にゃあっ」
───やあ、少年
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