笑えない少女とニュクスとワガハイ猫と。   作:サボテンダーイオウ

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栞・お気に入り等ありがとうございます。

只今アトリエオンラインの罠にはまり更新停滞中です。同時にストック切れを起こしておりますのでもっと遅いです。
課金するかしないかのぎりぎりの瀬戸際で生きてます。タンドリオン引いたけどすばやさ遅すぎて使えねぇ。


彼が彼たらしめるものは

『お前、ブッサイクだな』

 

初恋だった幼馴染の男の子からそんな事を言われてしまった頬にそばかすのある少女は目に大きな涙を溜めて男の子の腹に盛大な蹴りをかまして草原から逃げた。

 

『げぼ!』

『アホンダラ~!』

 

何度も何度も砂利だらけの道で転びながらお屋敷に帰った少女は優しいおばあ様のお膝でずっと泣いた。

 

『おばあ様、わたしってブサイクなの?』

『そんなことはないわ、私の可愛い小さな天使。お前は誰よりも素直で元気な子よ』

 

おばあ様は優しく少女の髪を撫でた。おばあ様は足を弱くしていていつも杖をついて歩いている。少女はおばあ様が大好きでたまらなかった。自分の知らないお話を訊かせてくれるから。だからいつもおばあ様の足が良くなりますようにと趣味の一環である発明ともいえない奇抜な機械ばかり作ってはおばあ様の役に立ちたいと願っていた。

けれどおばあ様は体調を崩してあっさりと亡くなってしまった。

おばあ様が亡くなってから、少女は元気を失くしてしまった。いつもおばあ様が座っていた椅子に縋って泣いていた。

 

『うぅ、おばあ様……約束していたのに。いつか、いつか一緒に遊びに行こうって』

 

けどずっと泣いてばかりの少女を心配した両親がある有名な魔女にある頼み事をした。

 

どうか、娘にいつもの溌剌とした元気(暴れん坊)を取り戻して欲しい。

 

魔女は滅多に研究所(ラボ)から出ることはなく、いつも代理のぽやっとした美人の秘書が対応していた。だがその秘書もまるで頓珍漢な事ばかりいうのでその補佐として秘書の息子が幼いながらに大人相手に応対し、金勘定までこなしていた。支払いは後払いでも可能だったが大抵金を渋る奴ばかりなのでそういう奴には美人秘書が密かに取り立てに行っていた。周囲の人間はあの美人秘書には無理だろうと心配していたが、まるでそんな心配などよそに美人秘書は一切乱れた様子もなくいつも通りのぽやっとした様子でしっかりとお金の回収に勤しんでいた。

 

さてそんな魅力もない依頼に魔女がすぐ飛びついたかと言えばそうでもない。なぜなら魔女はそれはそれは高額な客でなければ相手にしないと噂されていたからだ。がめついというかなんというか。ブランドというものを大切にしていて馴染みの客からの紹介で渋々内容だけは聞く(無論出張費はもらう)という条件で少女の御屋敷を訪れた。だが少女は先回りして父が所有する高い塔のてっぺんに逃げた。魔女は呆れながら父親自らの手でそこへ案内される。

 

高い塔には階段があるが少女の発明道具によってトラップが張られており階段を使うことができない。仕方ないので声が拡声する薬を具備ッと飲んで魔女は下から叫ぶことにした。

 

「情けない」

 

魔女は泣きすぎて兎のように目を真っ赤にさせているであろう少女に向けて大きな声で言い放った。

 

「?」

「泣くだけで死人が生き返るなら誰だってそうしているだろう。お前は悲劇のヒロインぶって現実から目を背けているだけの弱者だ。道端の石ころにも満たん!所詮お前の発明など一時の道楽にすぎない」

「……っ、ちがうわ!」

 

少女は思わず叫び返していた。

 

「わたしはおばあ様の為にこの綺麗な眺めをみせてあげたいと思っていたのよ!わたしが作った発明で!決してあきらめたりしないわ!こんなところでずっと泣いてるわけじゃない!」

「だったら作ればいいだろう」

「!?」

「作ると決めたのなら作ればだけのいい話だ。何を落ち込むことがある」

「……」

 

ストン、と少女の中で何かが落ち着いた。色々とごちゃごちゃしていたものが綺麗におさまって行ったのだ。魔女の言葉一つで。

 

少女は高い塔の窓から下を覗き見た。そこには若い女の魔女がいた。

綺麗で鋭利な刃物のような印象を受けた少女は、

「あの、貴方は……」

 

と魔女の名を尋ねた。魔女は少女を見上げて名乗った。

 

「ヴァレリだ」

「ヴァレリ……さん」

「さっさと降りて来い。父君と母君に余計な心配を掛けさせるな」

 

そう言い残して魔女は身を翻してさっさと屋敷へと歩き出していく。少女は慌てて部屋を飛び出て階段を降りようとした。けど自分で作ったトラップに嵌ってしまい情けなくも恥ずかしい姿で助けを呼ぶ羽目になってしまう。少女が助けられている間に魔女はさっさと報酬を受け取って帰ってしまった。

 

「ヴァレリ師匠……、素敵!」

 

少女は頬をピンク色に染めて勝手に魔女を師匠と決めてしまった。それから少女は魔女に弟子入りを志願するが蹴とばされてしまうがそれでも粘り強く諦めようとはしなかった。

 

それから少女はメキメキと才能を開花させていき、後に機械仕掛け人の魔女として有名になるのである。

 

【高い塔の上の少女】

 

※※※

 

荒垣真次郎は初対面を果たした佐倉朔の瞳に宿る復讐の色を感じ取ってから、この脆い少女をお節介人物listに加えた。それもトップ上位に入るくらいに。かつての復讐に身を燃やす天田を見ているようで放っておけなかった。復讐を果たした人間が幸せになることはないと知っているからだ。

 

ペルソナ、【カストール】を制御する為に服用していたペルソナ制御薬にて副作用により一度死の縁を体験しその身をもって知った【生きる】という意味を少女に教えたかった。だから佐倉朔は荒垣にとって目の離せない者。

そんな朔がペルソナを暴走させてしまったと美鶴経由から話を受けた荒垣は急遽仕事である寮母から普段着に着替えて朔の居候先へと車を走らせてやってきた。

 

元々一匹狼の荒垣は美鶴がリーダーを務める『シャドウワーカー』とは一線を引いているとは言え彼も現役ペルソナ使いである。昔よりその威力は衰えたとは言え経験は豊富だ。精神的に不安的な朔が少しでも心休まるならと頻繁ではないものの佐倉家への訪問は多い方である。なので比較的友好的に惣治郎は迎えてくれる。事前に電話をして見舞いしたい旨を伝えれば快く了承してくれた。

 

目が覚めた朔にとお見舞い用のちょっとした花とお菓子を持参して荒垣は佐倉家へ。少し疲れた様子の惣治郎に挨拶をして朔の部屋へと上がる。途中で明らかに誰かのねちっこい視線を感じたものの、例の娘かと納得してスルー。朔の部屋に一応ノックして入るとそこにはベッドに向かうように椅子に座っている綾時が荒垣を迎えた。

 

「綾時」

 

「やぁ、元気にしてたかい」

 

「何があった」

 

荒垣は驚いた様子もなく静かにドアを閉めてベッドに眠る朔に近づきベッドサイドへと腰かける。

 

「色々とね。話せば長くなりそうだ」

 

「………」

 

荒垣はそっと眠り続ける朔の髪に手を伸ばし、軽く触れそっと手を戻した。

静かに眠り続ける少女の胸はしっかりと上下を繰り返し、生きている証を証明し少しだけほっとした。綾時は目を細め静かに荒垣の様子を見守っていた。

 

「君に協力してもらおうと思っているんだ。共犯者になってくれ」

 

「共犯者?」

 

「実はね―――、美鶴から今回の件について説明してくれと言われているんだ。でも僕は教えるつもりはない」

 

「……なんだか厄介な山抱えてそうだな」

 

普段、温厚そうでありながら一番のジョーカー『道化師』はいつもコイツだという認識は荒垣の中である。綾時は友人ではあるが仲間ではないからだ。

 

荒垣はポケットから買っておいた缶コーヒーを二本取り出し、一本を綾時へ差し出す。綾時は「ありがとう」と礼を言って人肌に温められた缶コーヒーを受け取った。

さっそくプルトップを開けて、微糖のコーヒーを口付ける。荒垣も同じようにした。

 

少し間をあけて、綾時がとんでもない発言を口にした。まるで他人事のように。

 

「――――ああ。その通り。一国どころか世界に影響を与えるだろうさ。これから世界は変化していくと思うよ」

 

「………そんな展開を見過ごしている癖に言わねぇだと?」

 

「うん。朔の為に」

 

あっさりと綾時は言った。それは朔の為に世界が壊れても構わないと断言しているのも同じこと。

 

「……分かってるさ。オメェが朔以外に動く理由がねぇことぐらいはな」

 

「なら話は早い。僕たちの協力者になってくれるかい。君は唯一シャドウワーカーとは一線引いている存在だ。だからこそ連絡も取りやすい。あちらの動向を探ってくれないかな。きっと美鶴は今回の件で僕を信用してはくれないだろうからね」

 

「………」

 

とんでもない無茶なお願いである。あの美鶴相手に一芝居うてというのだから。これには荒垣も目を丸くして驚いた。それは引いて言えば桐条グループでさえ敵に回すと言っているようなものなのだから。

だが綾時なりに事情はあるらしい。荒垣に対しては胸の内を少しだけ吐露した。手にしていた缶コーヒーを机に静かに置いてからベッド脇に膝をついて朔の手を両手で取り包み込むように優しく握りしめた。

 

「朔の世界はとても小さい。小さい中で懸命に呼吸をして彼女は生きようとしているんだ。たとえそれが許されない理由であってもね。僕は出来ることなら朔の願いを叶えたげたいと思っている。でもそれは朔の小さな世界を壊してしまう結果に繋がる。そうすれば朔は死を選ぶだろう。この世に未練が無くなるんだから」

 

脆く危うい少女は生と死の丁度真ん中を跨いで生きている。いつ、どのように転がるか分からない。誰も予想できないのだ。どちらにせよ、最終的に朔は死を選ぶ。

だから綾時は少しでも暗闇の中にいる少女に光を与えたかった。どんな手段を使ったとしても。最終的に選ぶのは朔だと受け止めてはいるのだ。

 

「……今はお前がいるから生きてるってことか」

 

「それもあるね。……僕は、朔の世界(視野)をもっと広げてあげたい。一握りの人間しか信じられなくなってしまった朔を。あの頃の無邪気な子供の頃の朔に戻してあげたいんだ」

 

今でも綾時は忘れられない。

湊と綾時と朔でいたあの輝かしい過去を。その頃の朔は本当によく笑う子だった。

喜怒哀楽が激しく見ていて飽きないほどだった。それが今では無表情一つ。綾時には朔の様子は手に取るように分かるが、さすがに心内までは理解できない。だからこそ、朔が少しでも光を得ようと望めるように場を整えるのだ。邪魔者を出来るだけ排除する。

それが綾時が朔の為にしてあげられる兄心だ。

 

「その為に俺を利用するってか?」

 

「そう。僕はね、真次郎」

 

朔以外は、どうでもいいんだ。

 

朗らかに綾時は笑ってみせた。その言葉に嘘偽りはないんだろうと荒垣は呆れながら思う。

 

コイツなら、朔が望めばあっさりと世界を壊しにかかるだろうと。

友人ではあるが腹の底が読めない。

 

「でも君や順平は好いているよ。分かりやすいからね」

 

「……気持ち悪ぃいい方するな」

 

途端に荒垣は顔を顰めた。そんな荒垣に対して綾時はぐいぐいと攻めに入った。

 

「あ、そうだ。この機会に僕も携帯持とうと思うんだ。真次郎のセンスで選んでくれるかい」

 

「なんで俺が!」

 

「だって下見するには丁度いいだろ。それに召喚機持ってきてるみたいだし?」

 

「………いつもの癖で持ってきただけだよ」

 

そう言ってそっぽ向く荒垣だったが、しっかりとその後綾時に付き合ってタルタロス以来のダンジョン、メメントスに足を踏み入れるのであった。

 

(紹介しよう。彼がモナ、僕達と同じ個性的なペルソナ使いだよ。……真次郎?どうしたんだい)

 

(……おい、触っても、いいか?)

 

(サクと同じ反応してやがる!?)

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