笑えない少女とニュクスとワガハイ猫と。   作:サボテンダーイオウ

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少女がそうである理由

もし、7人の小人のうち一人が呪いを受けた皇子様だったとしたら?

誰だって小人が呪いを受けた皇子だなんて考えないだろう。彼らは小人で白き姫【自宅警備員】を養う存在。全ての我儘に『嫌』とは言えず全ての命令に『はい』と答える。忠実なる僕。

実際、白き姫は顎で小人たちをこき使いまくった。森の中という閉鎖的な場所で馬車馬のようにこき使われて時に虐げられ喜ぶ小人たちが果たしているだろうか?

 

否。

 

七人の内、六人は白き姫を見限ろうとした。我慢の限界だったのだ。だがそれでも小人Cだけは懸命に白き姫の為に他の仲間たちを説得して回った。

 

「お願いだ。どうか恋する僕の為にあの腐ったれ女に傅いて欲しいんだ。お願いだよ!小便臭い女だけどあれでも姫なんだ!きっと僕たちが世話をしなければあっという間に獣の餌になり果てるかもしれない。僕は白き姫のそんな笑える姿なんて見たくないんだよ……」

 

明らかに中傷している言葉を使っているというのに小人Cは白き姫に恋をしているとアピールしている。違和感を覚えた仲間たちは本当に恋をしているのか?と疑問をぶつけた。すると小人Cは朗らかに笑った。醜い顔がもっと醜くなった。

 

「ああ、僕は彼女に恋をしているよ!彼女を見ると動悸が激しくなって感情が高まってしまってあのほっそりとした首をへし折りたくなるほどに恋をしているよ!あの小生意気な瞳を恐怖で染め上げ甲高い声をしゃがれた老婆のような声にしてあげたい。まだまだぶつけてやりたいことは沢山あるんだ。でも理性で押さえているよ。僕の想いは彼女を壊してしまうからね。それではダメなんだ。まだ駄目なんだ」

 

薄ら笑いを浮かべ、喉を鳴らし「クックック」と笑い声をもらす姿は陰気臭く近寄りがたかった。

彼が言う、恋とは一体どんなものなのか。

 

少なくとも仲間たちが知る『恋』とは違うと漠然と感じた。

 

【恋の違い】

 

※※※

 

猫のモルガナから怪盗のノウハウを学んでいるけどさっぱりさっぱり。

リュックに詰め込んだモルガナに急かされておじさんに見送られルブラを出発した私は、ゆったりとした足取りで駅へと向かい超満員電車に嫌々乗り込む。いつものことなので慣れっこ。リュックを胸に抱いて大体ドア付近に身を縮こませている私。

 

「……あー、暑苦しい」

 

「そう言わないで。僕がいるんだから」

 

苦笑しながらも実体化した綾兄が暑苦しい人から私を守るために壁に手をついてガードしてくれている。これもいつものこと。電車代?そんなの払ってない。途中でばれないように実体化してもらってるから。タダ乗りという奴。これも立派な社会に対する反逆の一つであると言える。

 

「あー、そうだね。綾兄という盾がいるからまだいい方だわ」

 

「……盾、ね。だったらテトラカーンでも唱えたら楽じゃないかい」

 

「それもいいかもね。今度試してみる」

 

「……害がない程度に、ね」

 

綾兄は冗談のつもりで言ったつもりだろうけど私に冗談は通じない。

使えるものはなんであれ全部使う。どんな手段でも。

 

そう、あのメメントスでさえ。上手く使えば証拠すら残さずに消せる。

 

私は人間の集団ジャングルに囲まれ電車に揺られながらあの時のことをふと、思い出す。

 

モルガナと初めて会った時のことを。

 

 

私達の出会いはイゴールのおじさんに貰った異世界ナビで初めてメメントスに侵入した時だった。まさかスマホから出入りできるなんてなんて画期的と驚いたよ。しかしシャドウがたくさん蠢ている場所は初体験なのでちょっと胸がどきどきしてた。影時間にしか現れないタルタロスの話は耳にしていたけどここ、メメントスも似たようなものなのかな。

 

「さて、行こうか」

 

「うん」

 

私と実体化した綾兄は、メメントス内部を探索することにした。こういうところはお宝があるのと、シャドウを倒すとお金ももらえるという一石二鳥の場所らしいので、まさに理想ともいうべきダンジョンだ。しかも長時間うろうろしてると刈り取る者が出るのでさらにガッポリ稼げる。

 

「うわ、出た」

 

話に聞いてたけど、ホントに鎖の音鳴らしながら近づいてくるんだね。

でもこっちの方がレベル高いのに気づいたら冷や汗出してる。

 

「朔、稼ぎ時だよ」

 

「だね」

 

普通は死ぬ。けど綾兄も強いし何よりエリ姉に鍛えられた最強のペルソナが揃っているので怖いものはない。最終的にメギドラオン叩き込めって教えられたから。そのやり方で余裕で倒した。

 

テレッテッテー、朔は刈り取る者を倒したー。

 

湊兄がつけていた特別課外活動部の腕章を腕に着けるとなんと金額が倍になる。

どうしてかわからないけどこれも湊兄の力と考えておこう。

さて、モルガナとどこで会ったかだったけ。

 

そうそう、下まで降りたけど扉が開かなくてとりあえず稼ぐものは稼いだから一旦帰るって時になったときだ。線路の上を二人で並んで歩いていると突如、車のヘッドライトらしきものがまぶしく私達を照らした。私達は当然迎撃態勢を取ったけど、それはなぜか喋る車だった。

 

「人間!?こんなところにか」

 

ボフンと煙に巻かれて現れたのは喋って二本足で立つ黄色のスカーフが特徴的な黒猫。シャドウと一瞬構えてしまったけどその予想外の姿に、胸を打たれ一瞬にして固まってしまった。警戒態勢のまま、ギランと睨み付けられ、

 

「お前ら、何者だ?シャドウ、……ではなさそうだな」

 

と私たちの身なりを判断してそう問うてきた。けど私にはその問いすら耳に入ってこなかった。

 

猫さん、二本足の猫さん。しかも喋ったのだ。

 

「……猫さん……もふもふ」

 

動悸、息切れ、眩暈、禁断症状を抑えられない。私はもう一人の自分に素直になりなさいと囁かれ、そうよね、いいよね素直になってもいいよねと言われるまま、衝動的に手をワキワキとさせてしまった。もふもふ、大好き。

 

「は?」

 

呆ける猫さんが一瞬警戒が緩ませた。

 

「……ぶふふ!」

 

「綾兄!」

 

私の後ろで噴き出した綾兄に振り返り笑うなという意味で睨み付けると、綾兄は肩を震わせて笑いを抑えるのに必死だった。腹を抑えて片手で制しながら、

 

「ゴメンゴメン!あんまり可愛くて思わず」

 

と言い訳にならないことを言った。私は付き合ってられないと綾兄を無視してわざとらしい咳を挟んで調子を戻し、猫さんと対峙した。

 

「もう!……コホン!私達はこのメメントスに用事があってきた。そっちは……、猫の縄張り争い「じゃねーよ!」……失礼。じゃあここが大衆のパレスと知って今ここにいるということだね」

 

律儀に突っ込んでくれる猫さんは「……ああ」と間をおいて返事を返した。

 

「そっちは敵、と認識してる?私達のこと」

 

返答しだいじゃ戦うことも選択肢にあった。けど猫さんは迷った素振りを見せたけど結局は首を振った。

 

「……いや…。だが妙な気配だな。そっちの男は」

 

「ふぅん、気づいてはいるんだ。……僕側に近いってことかな?」

 

綾兄は何か気付いたみたいだ。けど私には教えるつもりはないようで、にっこりと微笑んでそれ以上は語ることはなかった。

胡散臭い笑みだなと思いつつ、一応どうすればいいか尋ねてみた。

 

「綾兄……どうする?」

 

「朔の好きにして構わないよ」

 

言うと思ってたよ。大体、綾兄は私の好きにしていいと言ってくれる。

本気でダメっていう時は有無を言わさずにさっさとその場から連れ出されてるはずだからね。

 

「……私、ちょっとね。試してみたい……」

 

「そうするといいよ。朔の思ったまま行動するといいさ」

 

「うん」

 

綾兄の力強い言葉に促され私は前へと進み出た。

 

「あの」

 

「……なんだよ」

 

「お願いですからモフモフさせてください!」

 

両手を組んで真摯にお願いしてみた。

 

「そっちか!?」

 

てっきり攻撃されるかと思ったらしい猫さん。条件反射でツッコンできた。

もうずっとモフモフしたくて仕方がなかった。とりあえず自己紹介して場所を移動した私は思う存分モフモフさせてもらった。猫さん、モルガナと名前を教えてもらった彼は複雑そうな顔してたけど嫌がる素振りはなかった。

 

出会いはこんなとこ。

一旦は別れたけど、またメメントスでちょうど刈り取る者を倒し終わった直後、再会したのでこれはもう運命だと思った私はまたモフモフさせてと拝み倒した。モルガナは嫌そうな顔してたけど、何か思いついたように目をきらっと光らせて、

 

「だったら条件だ!ワガハイと怪盗をしてくれっ」

 

と耳を疑う条件を突き付けてきた。

怪盗ってなんですか?とはてな状態な私にモルガナは自分もペルソナ使いだと教えてくれて、このメメントスで手に入れたいものがあると強く訴えてきた。

自分だけじゃ最下層まで行くことはできないから一緒に来てほしいと。

 

私は当然嫌だと即答したけど、だったらモフモフさせてやらん!と言われたので仕方なく、怪盗ごっこなら付き合うと言った。

モルガナはしばし悩んでたけど仕方ないと私の提案を受け入れ、モルガナは師匠、私は怪盗の弟子という役付けが決まった。綾兄はサポート役。何かあったら対処役に回ってもらうこともできるし。

 

ここに怪盗ごっこがスタートした瞬間だった。

 

その後探索を終えた私達は現実世界に帰るとモルガナに伝えると、ワガハイも一緒に行くぞと言われ驚いたものの、まぁいっかとあっさり了承した私に綾兄はいいの?と戸惑ってたけど何か困ることあったっけ?と逆に尋ねると、いや別にと曖昧に終わらせた。

現実世界に戻るとモルガナはやっぱり黒猫に変身したので遠慮なく私のリュックサックに無理やり突っ込んでルブランに帰った。他人にはニャーニャーと猫が鳴いているように聞こえるらしいが、私にはもっと丁寧に扱え!と抗議の叫びにしか聞こえなかった。

 

黙ってるのもアレなんでそそくさと自室に向かい、そこでモルガナをリュックから出して好きなようにさせた。意外と綺麗だなとお褒めの言葉をもらった。

お店を閉める時間帯になる頃を見計らって一階に降りていきおじさんに率直に猫飼っていいかとストレートに尋ねた。勿論、おじさんは目を見開いて驚いて飲食店なんだから駄目だと言ったけど、あの可愛さならおじさんも落とせると考え、モルガナの名前を呼ぶとニャーと鳴きながら下に降りてきたモルガナをひょいっと持ち上げておじさんの目の前で見せた。私の読みは当たった。おじさんはモルガナのキュートさに胸打たれたおじさんは渋々、いや結構ノリノリでちゃんと面倒見ること、下に客がいるときはモルガナを降りさせないことを条件に飼うことを許してくれた。

モルガナは猫じゃねえ!と鳴いてたけどおじさんにはニャーとしか聞こえてないので意味がない。おじさん、顔緩んでたよ。

 

同居人が増えた日の夕飯はちょっと豪勢な夕飯だった。

夜、就寝前にモルガナは怪盗ならコードネームが必要だよなとウキウキしていた。でも私はメメントスで狩るに狩りまくったので疲れモード。さっさと寝ると言ってモルガナを胸に抱き込んで夢の中へ飛び込んだ。

 

珍しく、その日はあの悪夢にうなされることなく眠ることができた。

 

【モフモフのお陰】




電車内。

朔「ねむ…」

綾「そろそろだね」

モルガナ「ニ゛ャ~」(苦じぃ~)

朔「!?馬鹿、出てこないで!」

バコ。

モルガナ「ニャ!?」(いでぇ!?)

綾「思いっきりやったね」

朔「モルガナが悪い」

モルガナ「……」(覚えてろ!)

学校に着くまでリュック越しにモルガナがゴンゴンと頭突きしつづけていた。
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