それがまさかあんな事件を起こすとは考えもせずに。
「あぁ・・・まだ色々やりたい事あったんだけどなぁ・・・」
ゆっくりと爪が振り下ろされているかのように感じる、こんな時に浮かび上がるのは・・・あのおせっかいな華楠だ。彼女とは約束があったが、それも果たされないかもしれない。
「ごめんね、私ここまでみたい・・・」
そして、ダガンの爪は振り下ろされた。
――――半日前
いつも通りの変わらないカフェ、変わらない場所でいつもの二人で朝のひと時を過ごしていたある時、向かい側の自称私の姉が口を開いた。
「ねえねえ、ツバキちゃん。今日TA行かない?」
「TA?別にいいけど・・・」
メセタの貯蓄は確かにあるに越したことはない、丁度欲しいものがあったからいいタイミングだ。
「きーまり!じゃあ一時間後にね!」
このやり取りもどれくらいしたんだろう、最初こそめんどくさいと足蹴にしてたが最近はそれも悪くないと思い始めている。・・・思っているだけ、口に出すと恥ずかしいから絶対に言わない。
「はいはい、朝から元気ねほんと。」
――――それから一時間後、キャンプシップにて
「それじゃあいつも通りハルコタンいこう!」
「ほんといつも通りね、まあ楽だからいいけど・・・」
そう、いつも通り、いつも通りTAをこなして帰って夜ご飯の話をしながら帰路につく。そう思っていた・・・が――――。
「Emergency!!Emergency!!」
突如警報が鳴り響く、緊急任務かと思ったが違うようだ。明らかにこのキャンプシップが落ちていっている。
「な、なに!?」
「・・・何かあったのは確かね。でもいったい・・・。」
状況を把握したのもつかの間、おおきな衝撃と共にキャンプシップは墜落した。
「いったぁ・・・ここは・・・?」
「ん。ツバキちゃんも起きたのね。ここ、どう思う?」
ハルコタンやナベリウスといったいつも行く惑星とも違う、ただ漂う空気で感づいてしまった。クエストカウンターの人からは話は聞いていたが・・・。
「ダーカー側の巣窟ってやつかしら・・・冗談かなんかだと思ってたけど。」
「冗談じゃなかったってことみたい、さてどうしようかツバキちゃん。」
「・・・分かってて言ってるでしょ、迷う暇があるなら行動って。」
一先ずは止まってても仕方ないから動くことにしよう、どこかに突破口があると信じて。
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――――数時間後
色々と探索はしたが、あるものと言えば触るだけで痛い赤い水、漂うダーカー因子、よく分からない建築物と大量のダーカー。一体一体は雑魚に変わりないが塵も積もればなんとやら、正直こちらは後がなくなってきた。
「ねえ華楠、そっちのメイトどう。」
「半分もないかな・・・そっちは?」
「・・・トリメイトが3、ちょっと危ないかも。」
最初こそ勢いはあったが向うが限りないとなると厳しいものはある。視界はぼやけてくるしもう左も右も分からなくなってきた。すると―――。
「ツバキちゃん、アタシね。貴女にプレゼントがあるの。」
「・・・どうしたのいきなり。」
「いやぁ・・・なんか今言っとかないとなって。でも予算すこーし足りなくて、だからTAやろうかなっ て思ったの。」
「・・・アンタ、私にプレゼント渡そうってのに予算足りないから私にTA手伝わせたの!?」
「ご、ごめんってば!?そう怒らないでよ!!」
「はぁ・・・あっきれた。まあいいわ、続きは帰ってからでも・・・!?」
失念していた、疲れと会話で周りが見えていなかったとはいえ油断していた。
人一人を飲み込むような渦を華楠を飲み込もうとしていた。
「華楠!!!!」
「え・・・?」
身体が勝手に動いていた、何故なのかは分からない。私に親しくしてくれるから?違う、私を大切にしてくれているから?これも違う・・・これはそうなんだろう。言葉にできないような感情が私を突き動かしていた。
「うっ・・・いったい何が・・・」
目を覚ますと赤い網?に囲まれた何もない平地の端っこだった。考えようとするのもつかの間、周りを大量のダーカーに囲まれていた。
「冗談きついってば・・・あぁ畜生。」
悪態をついても状況は変わらない、ダーカー達はもちろん私を殺しに来てるし、私は奴らを駆逐し脱出しようと試みる。
「こんなとこで死ねないってね・・・!!」
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―――数十分後
駆逐しようとは意気込んだものの、ダーカーの勢いは止まらないし私のメイトも底をついてしまった。
「はぁ・・・くっそ・・・どんだけ来るのよこいつら・・・」
流石に体力も限界に近い、注意力も散漫になり負傷しはじめてきた。どうしようか考えようとした瞬間。
「・・・っあ!?」
注意力が散漫になったことにより後方からのサイクロネーダーの一撃に気付けなかった。
「ゲホッ・・・うっ・・・」
非常にマズイ、今かなり血を吐いたかもしれない、息もできないし軽く数本骨がやられたかもしれない。だけど、相手は待ってくれない。
そしてダガンが私に爪を振り下ろしてこようとしていた。
「あぁ・・・まだ色々やりたい事あったんだけどなぁ・・・」
ゆっくりと爪が振り下ろされているかのように感じる、こんな時に浮かび上がるのは・・・あのおせっかいな華楠だ。彼女とは約束があったが、それも果たされないかもしれない。
「ごめんね、私ここまでみたい・・・」
そして、ダガンの爪は振り下ろされ―――。
てない。
「・・・?」
ダーカー達は上を向いている、聴覚もやられたのか私は事情が察せなかった。すると、上で何かが割れ、私の身体は抱き上げられて連れて行かれた。
ここで私の記憶は一旦途切れる。
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「―――バキちゃん!!ツバキちゃん!!」
誰かの声が聞こえる、知らない人じゃない。よく聞く声だ。
「う・・・か・・・なん・・・?」
目を覚ましたのか眼前の彼女はひどく心配した顔・・・いや怒った顔かな。そんな顔で私に問いかけ続けた。
「なんであんな無茶したの!?アタシ凄く心配したんだよ!!」
「ははっ・・・分からないわよそんなの。身体が勝手に動いたんだから・・・」
「はぁ!?その結果がこの様じゃん!!馬鹿なの!?」
この一言が非常にムカついた、せっかく助けたのに・・・いや結果的には助けられたけど。ともかくこんな反応されたら私が怒るのも無理はないと思う。
「ふ、ふざけないで・・・せっかく助けたのにその反応はないでしょ!!・・・ゲホッ。」
「あぁもう!!傷広がるから騒がないで!!・・・ツバキちゃんはもっと自分を大事にしてよ。」
叫ばせてるのはどこのどいつだ・・・というのは言うまでもないが・・・
「・・・私の命よ。どうしようが私の勝手でしょ。」
「そんな事言わないで。アタシはツバキちゃんにいなくなられたら困るの。」
その発言が何かトリガーを引いたのだろう、急に怒りが込み上げてきた。
「・・・なんでよ。」
「・・・え?」
「なんで私にここまでするの!?私に味方なんていなかった!!家族も誰もいない!!私を拾ってくれたキャストの人も行方が分からなくて結局私は独り・・・この身体のせいで私に絡んでくるやつなんていなかった!!なのにアンタは私に付きまとう!!なんなの!?アンタは私のなんなのよ!!」
なんでこんな事言ったのかは分からない。でも彼女はそれでも落ち着いて返してきた。
「前から言ってるよ。アタシはツバキちゃんを放っておけないって。」
「・・・っ!!ふざけないで!!アンタは私の親かなにか!?違う・・・元々は赤の他人よ!?」
私は怒号をぶつけるが彼女はそれ以上を言おうとはしない。その対応に遂に我慢が出来なくなった。
「なんなのよ!!だったら・・・だったら・・・。」
不安と恐怖と安堵が織り交じり普段なら絶対に口にしないような言葉を私は言った。
「だったら、アンタが私を一生守ってよ!!」
急に涙が出てくる、覚えてる限りずっと涙は流してこなかった。辛くても、悲しくても、周りから氷のように冷えた女と呼ばれた私が初めて涙を流した。力なく華楠を叩く、その叩く力は普段の私から信じられないくらい弱弱しかった。
そんな震える私を華楠はただ抱きしめてくれた。そこで何かが切れたのだろう、私は子供のように泣き喚いた。疲れるまで、泣き止むまで。
「・・・ありがと。」
自分でも驚くくらいに落ち着いている。何か吹っ切れた感じだ。
「うぅん、いいよ。もう大丈夫?」
「・・・うん。」
「よし。それじゃあお姉さんが守ってあげるよ。これからもずっと、ずっと!!」
敵わないなとこの時確信した、そしてもう一つ確信した。あぁ、私はこの人が好きなんだなって。向うがどう思ってるかは分からないけど、こんな気持ちは初めてだから大事にしていきたい。
すると――――
「き―――えま―――か?聞こえますか!!」
いつもクエストカウンターで話す人の声だ、恐らく向うからの救助だろう。
「お。コフィ―さんじゃん!!聞こえるよ~、あ。シップも見えたよ!!こっちこっち!!」
とりあえずは助かったのだろう、もう限界を超えていた私は意識を放棄する。もう心配せずに任せてしまおうとそう思った。
華楠に肩を借り、私達はこのダーカーの巣窟を後にする。人生で一番恐ろしく、一番充実した瞬間だった。
これからどうなるかなんて分からない、それでも私にはお世話好きな相棒がいる。
それが、何より安心していた。この時はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
~続く~