ああ~本当にハリポタが描けない。
推敲を重ねるうえでどうしても壁にぶつかるんですよね。キャラを忘れたりとかなんなりで。
というわけで、更新です。
会場から極星寮までの道のりは、通常ならスクーターや自転車などを利用してもいいだろう距離を私は、大きめのスポーツバッグ二つ―よく学生の使うエナメルのものではない―を抱えて駆けていた。まぁその程度の距離ならば、私や城一郎が本気を出せば五分とかからない。だからだろうか、道中何人かの生徒とすれ違ったが、あちらは私を認識するまでもなく、ただ風が通り過ぎたと思っただろう。ただ今後のためにも、せめて自転車ぐらいは用意しておいたほうが良いかもしれん。
しばらく走ると、ようやく地図に示された極星寮に到着した。さて外観だが長年使われて年季があることがうかがえる。壁には所々蔦が這い、色は所々褪せている。まぁそれも仕方がないだろう、この施設は城一郎の学生時代からあったそうだから、少なくとも三十年近くは経過しているということだ。
で、建物を解析してみると成程、見た目に反して基盤や壁などはしっかりしているようだ。加えて床なども丁寧に使われているのだろう、多少の年月による劣化は見受けられるものの、基本的には問題ない。多少居住区らしき場所に丸太や恐らく動物だろうものが確認できるが、些末事だろう。
「さて、入るとするかな」
玄関ドアのノッカーに手をかけ、四回ノックをする。ここで重要なのが、三回ノックをするのはあくまで親しい間柄でのことだ。二回はトイレだから問題ない。四回をくどく感じるようならば、二回二回でやるのも一手だろう。
「はいはい、誰さね」
中から老婆だろう、しかし張りのある威勢のいい声が聞こえた。
「扉の向こうから申し訳ありません。本日よりこの極星寮に入寮しようと志願する、幸平創真といいます」
「ほう? ここに入りたいって?」
その言葉と共に目の前の扉が開かれた。そこから出てきたのは髪を帯で縛る小柄な老婆だった。しかしその鋭い目は、彼女がただならぬものであることを窺わせるには十分だった。
「ふーん? 見たところ高校から入った、てとこかい?」
「ええ。ところであなたは……」
「ああ名乗っていなかったね。あたしは大御堂ふみ緒、ここの寮母さね。まぁとりあえず入んな」
ふみ緒さんに案内され、私は厨房に入った。はて、説明を受けるだけならば厨房に入れられることはないだろう。それに恐らく私が入寮することは城一郎から連絡が逝っているはず。
「さて、あんたの話は書状とここの総帥から聞いている」
「……ふむ」
「でもだからといってなんもなしに入寮させるわけにはいかないね。ここに住む子供らは全員試験を受けて合格したんだ」
「ということは?」
「当然あんたにも受けてもらうよ。あんたも料理人なら、皿で語るのが筋じゃないのかい?」
成程、実に的を射る話だ。私だけ特別扱いというのもおかしな話だろう。となれば話は早い。
私は荷物から調理道具、と言っても包丁だけだが、を取り出し、腰と頭に紅のエプロンと手ぬぐいを巻き付けて調理場に立つ。
「さて、私は何を作ればいいのかね? あるもので挑戦させてもらおう」
「まぁ焦りなさんな。もうすぐ……」
「ふみ緒さーん、ただいまー!!」
「ほれ、あんたの前の合格者たちが帰ってきたよ」
そういうや否や、何人かがこの厨房にはいてきた。髪を頭の上のほうで二つに結った少女に長い髪をストレートに伸ばした少女、眼鏡をかけた少年にガタイの良い少年が二人、最後に左右を三つ編みに結んだ少女と目元が前髪に隠れた少年が入ってきた。この状況、そして先ほどのふみ緒さんの言葉。成程、彼ら彼女ら全員に振る舞えとのことか?
「ほう、察しがいいねぇ」
「あれ? この人さっきの」
「おうおう、スピーチでデカいこと言ったやつじゃねぇか。ここにいるってぇことは」
「もしかして入寮試験か?」
「マジ!? あたしらすごいところに帰ってきた感じ?」
皆が次々に口を開くが、どうやら私の先程の言葉にはさほど嫌悪感は抱いていないらしい。それを知り少しほっとした。当然だ、自分で蒔いた種とはいえ、これから同じ建物で過ごす者と気まずくなりたくはない。
「さて幸平。試験方法は簡単、私を含めたこの人数の半分以上を満足させる料理を作りな。制限時間は一時間、使っていいものはこの場にある食材だけ。バッグにも入っているなら使っていいさね」
「了解した、では少々お待ちいただこう」
開始の合図と同時に厨房内の食品の確認に移る。基本的な調味料は一通り揃い、その他パン粉や小麦粉などのものはある。反対に肉や魚、野菜などの食材が見当たらない。精々水水煮の缶詰が数個あるだけである。まぁ野菜は念のためいくつか持参していたから問題ない。しかし米などがないとなると、少々口寂しい気がしないでもない。
だがそんなことは今はいいだろう。私はエプロンを結び直し、調理に取り掛かった。
◆
調理に取り掛かる幸平の手際は、正直流石としか言いようがない。彼の履歴から、長年現場で働いてきたのが手に取るようにわかる。ああ、確かに遠月の生徒は研磨を積んできたのだろう。だがそれはあくまでも技術上の問題。実際に現場に出てすぐに対応できるものはいったい何人いるのやら。それこそ、この幸平みたいに遠月に入るまで現場で働いていた人間だけだろう。
特に目を奪われるのはその包丁さばき。刃物の切れ味を確かめる方法に「切り戻し」というものがあるが、この子の包丁は、素材が切られても生きているように感じられる。加えてまるで食材が料理されるのを喜んでいるようにも感じられる。
暫く、約一時間ほどで人数分の料理が用意されていたが、何故か皿の上にはジューシーなハンバーグが乗せられていた。しかしこの厨房には肉の類はなかったはず。しかしなんなのだ、この皿に乗るハンバーグは。そしてその横にある卵スープも、ハンバーグに引けを取らぬほど輝いて見える。
「幸平……あんたこれは」
「なに、丁度鯖缶を見つけたものでね。
「ということは、これはさしずめ鯖バーグと言ったところかい」
「ねぇねぇ二人とも、もう食べてもいい? これ見せられたらもう……」
「同感だぜ!! なぁいいだろふみ緒さん」
「そうだね。じゃあ実食!!」
あたしの掛け声で全員が一口運ぶ。途端に私たち全員が腰を抜かしそうになった。いや、事実何人かは座ったまま抜かしている。
正直鯖缶のハンバーグなんて生臭くて食べたものではないと思っていた。しかし現実はどうだ? 肉を使っていると言われたら信じてしまいそうな、そんな肉厚感。だというのにふわりとした食感を醸し出す焼き方。
そして隣の卵スープ。汁物は出汁ですべてが決まるといっても過言ではないが、しかしこの厨房には出汁の基になる食材はなかったはず。なのにどうして、上質な素材から丁寧にとったと言える風味が体に染み渡る。ハンバーグのソースといいスープの出汁と言い、いったいどうやってこれほど物を。
「幸平……だっけ? お前どうやってこのスープを!?」
「ハンバーグも美味しい!!」
「それに何だろう……まるで実家にいる様な安心感があるわ……」
「気に入ってもらえて何よりだ。こちらのソースは鯖汁、缶詰の残り汁にポン酢と水溶き片栗粉を混ぜ、さっぱり風味にしている」
皆が食べる最中に始まる幸平の種明かし。考えもしなかった素材を利用していることに、ただただ驚きを覚えるしかない。特にスルメを出汁に使うなど、いったい誰が考えるだろうか。更には生臭くて殆ど捨てられる鯖汁も、まさかこんなソースに変化するとはだれも思うまい。
ただただあたしたちは、目の前の逸品を平らげていく。これ以上ないというほどの意外な組み合わせに、全身で衝撃を受ける。それと同時にどこか懐かしい感覚のする味。しばらく考えていたが、ようやく思い出すことができた。
今の今まで何故忘れていたのか、この懐かしさは母の味である。無論それぞれの家庭にそれぞれの味があるから、全員がそれを感じることはまずない。しかし現状はどうだろうか。この場にいる皆が皆、故郷に手紙を出そうなどと口々に言っている。
「……合格だよ幸平。まったくなんてガキだい」
「ねぇねぇ、もっと他にない!?」
「すまないが、この場ですぐに出せそうなものはこれが限界でね。もう少し時間を掛けていいのなら、まあ何か作れるが」
「「「是非とも!!(……)」」」
そういうや否や悠姫と涼子、そして意外にも伊武崎峻の三人が立ち上がり、厨房を後にした。やれやれ、それぞれの得意の具材がどう化けるのか、知りたくて仕方がないのかねぇ。
「どう思うんだい、一色?」
「正直、驚かされました。入学式の話は聞きましたが、彼の言葉が力を持つことは、この料理が証明している。僕も考えつきませんでした」
「そうさねぇ。あたしも長生きしているけど、まさかこんな料理があるとは」
いつのまにかいた一色と喋りながら、ワイワイと騒ぐ子供らを見つめる。涼子がお米のジュース、悠姫がジビエ、そして伊武崎がスモークを持ってきた。昨日よりもさらに騒がしくも楽し気な空気が厨房を満たしていく。
こりゃ、今年はすごい子たちが入ってきたねぇ。
そう思いながら、いつの間にか幸平に用意されていた昆布茶で、のどをゆっくりと潤した。
そういえば幸平のやつ、腕があんな二色に分かれていたかねぇ。髪の毛も、心なしか白いのが混じってる気がするけど、まぁ気のせいだろうさ。
はい、ここまでです。
原作ではふみ緒さんしか食べませんでしたが、本作では寮生全員が食したということにしました。尚、品目は原作通りにやっっております。
さて、次回は一色先輩との初バトルにするか、それともすっ飛ばしてシャペル先生の授業にするのか、迷っています。
「芽生えッ!!」をやりたいですけど、文章で表現できる自信がないw
では次回お会いしましょう。