ルイズと無重力巫女さん   作:1-UP-code

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第十二話

 「貴方達!無断で学院を抜け出すなどして!!駄目ではありませんか!」

 

 

 

 ハルケギニア大陸のトリステイン王国。

 その一角にある森の真ん中に出来た空き地でコルベールが正座しているルイズ達に説教していた。

 右から順にルイズ、キュルケ、タバサと並び顔を地面の方に向けてジッとこらえている。

 先ほどコルベールが怒り出して説教を初めてから五分くらい経過していた。

 親からの折檻をまともに受けたことがない貴族の師弟達にはかなり辛い物である。

 

 

 

 その様子を霊夢とシルフィードは小屋の傍でじっと見ていた。

 霊夢は学院の生徒ではないため折檻されることは免れている。タバサの使い魔でもあるシルフィードも同じだ。

 彼女は隣にいるシルフィードを背もたれ代わりにし、じっと説教に耐えるルイズ達を見ていた。

 やがてコルベールの説教は開始から六分経過というところで終了に至った。

 

 

 

 やっと解放された三人は大きく深呼吸をし、肩の力を抜いた。

 「さてと…次にあなたに質問ですが…一体ここで何をしていたのですか?」

 コルベールは霊夢の方に顔を向けると質問を投げかけてきた。

 「私が幻想郷に帰れる手かがりを探しに来たのよ。あぁ、情報を持ってきたのはそこのキュルケだから。」

 霊夢はキュルケを指さしながらそう言うとコルベールはキョトンとした顔になった。

 

 

 「ほぉ~、つまりレイムは情報探しで…で、あなた達は宝探しと?」

 「そ、そうですミスタ・コルベール…」

 小屋の入り口でルイズから詳しい話を聞き、コルベールは暗い小屋の中を見渡す。

 確かにこの様な暗い場所ならちょっとやそっとの場所に隠したら並大抵には見つからないだろう。

 「しかしあなた達の宝探しは見逃せませんな。どうして無断でこんな事をしたのです?」

 「そ、その…この地図に書かれている宝はなんでも凄い力を持っているそうで…。」

 キュルケはそう言うと懐にしまっていた地図を取り出しコルベールに見せた。

 コルベールは地図を受け取るとそれを広げ、詳細を確認する。

 

 

 

 「……ふむぅ、その者が望んだ場所へ行けるマジックアイテムとな。私も少し見てみたい気もする。

 確かに小さい頃にこういう事をしていれば将来のためになるかもしれない。だが、そういうのは休みの日などにしなさい。わかりましたか?」

 

 

 

 

 ルイズ達は「ハイ」と呟き項垂れてしまった。コルベールはそれを見た後小屋の中へと入っていった。

 霊夢はとりあえずもう一度小屋の中に入ろうとしたとき、中からコルベールの叫び声が上がった。

 叫び声を聞いたルイズ達は小屋の中に入った。するとそこには腰を抜かし尻もちをついているコルベールがそこにいた。

 「どうしたの、足に古釘が刺さった?」

 本当なら冗談ではすまない事を霊夢が言うとコルベールは机に置かれているモノを指さした。

 「あ…あ、あ、あなた達…これを何処で?」

 机の上には黒光りする箱が置かれており、言いようのない重厚感を醸し出していた。

 

 

 

 箱を見た霊夢はあぁ、これ?と言い、説明した。

 「さっき床下からそれを見つけたのよ。早速開けようと思った矢先アンタが来て…。」

 霊夢の言葉を聞きコルベールは大きなため息をついた。

 「い、いや…開けていないのですね…良かったぁ~。」

 「一体この中に何が入っているのよ?よっぽど大事そうな物に見えるけど。」

 

 

 

 霊夢が興味深そうにそう言うと机の方に近づき、箱のフタを思いっきり開けた。

 中に入っていたのはこれまた霊夢やルイズ達が見たことのない奇妙な代物であった。

 それは緑色の円柱であった。材質は金属類に見える。

 幻想郷には時折外の世界から流れてくる物もある、以前には白黒のボールなんかもあった。

 しかし今目の前にある筒は霊夢が生まれてこの方見たことがない物である。

 

 

 

 

 「これは一体何なの?」

 霊夢の質問にコルベールは破壊の杖をあちこち調べながら答えた。

 「マジックアイテムの一種で、『破壊の杖』と呼ばれる物です…。でも、まさか私の生徒がとっくに見つけていたなんて…。」

 コルベールはそう言うと安堵の表所を浮かべた。

 それに異常がないことを確認すると、すぐさま蓋を閉め、コルベールは『破壊の杖』が入った箱を腋に抱えた。

 大事そうに抱えているコルベールを見て、入り口の方でジッとしていたキュルケが口を開いた。

 「ミスタ・コルベールはどうしてそんな物を探していたんですか?」

 「これは仕事ですよ?決してサボりではありません。というかまだあなた達はいたんですか?早く帰りなさい!」

 タバサはともかくとしてキュルケとルイズはそれに不満なのか、あう~と呻き、コルベールに食い下がった。

 「あう~、でもレイムが―――イタッ!?。」

 駄々をこねる傍に寄ってきた霊夢がルイズの頭を引っぱたいた。

 「先生が言ってるんだからアンタたちは帰りなさい。後は私一人でやるから地図は置いていってよね。」

 「あ…アンタ、部屋を貸してあげてるのによく私の頭を――――」

 

 

 

 

  ド ゴ ォ ォ ォ ン ! ! ! ! !

 

 

 

 

 突如外の方からもの凄い音が聞こえてきた。

 小屋の外近くにいたルイズ達は思わず声を上げ、コルベールに声を掛けた。

 「み、ミスタ・コルベール!外に巨大な…ゴーレムが!?」

 それを聞いたコルベールは窓から外の様子を見た。

 外には30メイルもの大きさを誇るゴーレムが馬車の荷車部分をまるで玩具のように片手で掴んでいた。

 「なんだと…いかん、あそこはミス・ロングビルがいた場所じゃないか!!」

 コルベールがそう叫ぶとゴーレムがこちらの方に顔を向け、手に持った荷車を投げつけてきた。

 

 

 

 咄嗟に霊夢は近くにいたルイズの腰を掴み、小屋の外へと勢いよく飛び出した。

 コルベールもタバサとキュルケに急いで出るように指示し、自身もマジックアイテムが入った箱を抱え、急いで小屋から出た。

 投げられた荷車は見事小屋に激突、勢いもあってか凄まじい音を立てて小屋は倒壊した。

 咄嗟に身を伏せたコルベール、キュルケ、タバサ達は体の上に材木や泥土が降り積もるだけで済んだ。

 最も悲惨な目にあったのは霊夢に掴まれていたルイズだった。

 空中へと逃げた霊夢はルイズを掴んだまま飛んでくる障害物を華麗にかわした。

 霊夢は平気であったがしかしルイズはそうもいかなかった。

 「ちょっ…!?落ちるっ……てうわぁ!!」

 ルイズがもう少し年をとってれば後日、腰痛と関節痛で悩んでいただろう。それほど激しい動きであった。

 

 

 

 障害物の波が終わった後、霊夢は腰を掴んでいた両手をパッと離した。

 解放されたルイズは地面に横たわった。

 「もう、二度とこんなのは御免だわ…。」

 その後立ち上がったコルベール達が心配そうな顔で二人の方へと近づいた。

 「二人とも、大丈夫か!?」

 「えぇ、全然余裕よ。けど…あっちのデカ物は逃がしてくれそうにないわね。」

 霊夢はそう言うと背負っていた筒を地面に下ろし、左手で懐に入っている札を取りだして後ろを振り返る。

 後ろではあの荷車を投げたゴーレムが大きな地響きをたててこちらに近づいてきていた。

 先程の攻撃から考えればあのゴーレムのパワーは凄まじいであろう。

 

 

 

 「全く…一体誰があんなのを作ったのよ?」

 「あれは恐らく、土くれのフーケの仕業に違いない。」

 霊夢の言葉にコルベールが即座に答えた。

 「フーケぇ…誰それ?」

 聞いた事のない名前を聞き、霊夢はコルベールの方へ顔を向けた。

 「トリステインを騒がせている盗賊さ。風の噂ではかなりの土の使い手だと聞いたが…噂通りとはこういうのを言うのだろうな。」

 「要は物盗りって事?それならあの大きさはどうなのかしらねぇ?」

 霊夢が暢気そうに呟くとコルベールも今まで下げていた杖をゴーレムの方へと向け、手の中に汗が溜まるのを感じた。

 キュルケとタバサも杖を取り出しゴーレムの方へと向けようとするが前にいるコルベールに制止される。

 

 

 

 「ミス・タバサ。君の使い魔でミス・ツェルプストーを連れて学院へ戻りなさい。そしてすぐに学院長に救援をよこしてもらうよう、頼んでくれ。」

 

 

 

 その言葉を聞き、タバサは数秒間考えた後、コクリと頷くと口笛を吹いた。

 口笛を聞き、上空に避難していたシルフィードが鳴き声を上げタバサ達の許へと降りてきた。

 素早く背に跨ったタバサを見て、キュルケはゴーレムとシルフィード両方を見比べ、結果シルフィードの背に跨ることを選んだ。

 それを見たコルベールは頷くと、ゴーレムを鋭い目で凝視している逃げるようにも言った。

 「レイム、君もミス・ヴァリエールと一緒に逃げてください。ゴーレムは私が引きつける。」

 しかし霊夢は首を横に振ると一歩前へと歩み出た。

 「そうしたい所だけど今回はそうもいかないわ、だってそのフーケとやらが…」

 そう呟くと霊夢は絵師路にある潰れてしまっている小屋を頭の中で思い浮かべる。

 

 「折角の手がかりを潰してくれたのよ。」

 霊夢はそう言うとコルベールが制止する前に飛び上がり、ゴーレムの方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 突如前に出てきた霊夢を敵と認識したゴーレムは右の拳を素早く振り下ろした。

 「単純な攻撃だわ、性能はあのギーシュとかいうのが出してたのと大差変わらないわね。」

 その攻撃を横へ飛んで避けた霊夢は余裕満々にそう言うと持っていた札を空振りしたゴーレムの右手へと投げた。

 一直線に飛んでいく札はゴーレムの腕に着弾したと同時に大きく爆ぜ、それが一気に連続して続いた。

 攻撃をまともに食らった右腕はしかし、大したダメージはなかったがまだ霊夢の攻撃は終わっていない。

 次に左手に持った札を扇状に飛ばし、ゴーレムの胴体に直撃させる、がこれもまた大した効果は得られていなかった。

 「でも防御力は並じゃないかぁ……よし。」

 ならばと霊夢はゴーレムの顔付近にまで一気に飛んでいくと一枚のカードを懐から取り出した。

 

 

 

 それは『スペルカード』と呼ばれる物で、幻想郷での決闘ルール「スペルカードルール」に用いる技や契約書の総称である。

 主に『弾幕ごっこ』という人妖同士の決闘で使われる物だ。ちなみに霊夢自身もこのスペルカードには一枚噛んでいる。

 だがそれはあくまで幻想郷の中でのルール、ここハルケギニアではスペルカードは必要のない物だ。

 しかし霊夢は、あくまでスペルカードルールに従いフーケのゴーレムを倒すと心の中で決めた。

 最も霊夢自身、まさかこんな異世界で使う羽目になるとは思ってもいなかったが…。

 

 

 

 ―霊符―

     ―――『夢想妙珠』―

 

 

 

 それを発動したと同時に霊夢の周りに赤、青、緑、黄色といった様々な色をした大きな光弾が現れた。

 地上にいた二人はその光景に目を丸くした。

 「み、ミスタ・コルベール…!あれは一体なんですか!?」

 ルイズは色とりどりの光弾に釘付けになりながらもコルベールに聞いてみた。

 「わからん、あんなのは今まで見たことがない!あれは先住魔法とでも…?」

 コルベール自身もこの様な魔法は見たことが無く、適当にそう答えることしかできなかった。

 そして、今まさに飛ばんとしているシルフィードの背に跨ったタバサとキュルケも目を丸くしていた。

 「た、タバサ…アレ見てみなさいよ。」

 タバサはずれた眼鏡を直すことも忘れ、未知の力に驚愕していた。

 今まで多くの強敵と裏で戦ってきたタバサではあるがあのような力は見たことがなかった。

 

 出現した夢想妙球はふわっとした感じで浮きつつも、素早くゴーレムの所へ突っ込んでいった。

 避ける暇もなく、一発二発と色鮮やかな光弾がゴーレムに直撃し、ものスゴイ砂塵を巻き起こした。

 その砂塵は全てゴーレムの体を構成している岩が光弾によって砕けて出来たモノである。

 霊夢が手に持っていたスペルカードを懐にしまい直した後、砂塵が風に吹かれて空へと舞い上がっていく。しかし――

 

 「ん…――――――っ!?」

 

 突如ボロボロの巨大な右腕が霊夢を掴んだのだ。

 砂塵が完全になくなった後にあったのは、体中がボロボロになったゴーレムが健全として立っている。

 少し足りなかったと霊夢が思っていると、ゴーレムの体が盛り上がり傷つけられた部分が直っていく。

 (コイツ…自己再生とはまた…。)

 自己再生自体は基本珍しくもない、それなりに力のある妖怪なら造作もないことである。

 やがて数秒も経たぬうちにゴーレムの体は無想妙珠を喰らう前の状態になり、霊夢を掴んでいる右手を思いっきり振り上げる。

 その次にこの無機物の塊が何をするのかすぐに断定した霊夢は少しだけ目を丸くする。

 「あちゃ~、ここから思いっきり叩きつけられたら流石にやばいわね。」

 暢気そうにそう呟いた直後、霊夢を掴んでいたゴーレムの右手の甲を巨大な氷の矢が切り裂いた。

 突然の攻撃にゴーレムは咄嗟に右手の力を緩めてしまい、霊夢はすぐに脱出した。

 

 どうやら先程氷の矢を放ったのは、目の前にいるシルフィードの背に乗ったタバサであった。

 彼女は霊夢が脱出したのを確認すると此方の方へ近づいてくるゴーレムの右手に遠慮のない弾幕を浴びせる。

 弾幕と言ってもただ単に氷の矢――ウィンディ・アイシクルを多数出現させて飛ばすだけである。

 ただそれでも効果があり、ゴーレムの右手は氷の矢に切り裂かれ、あっという間にボロボロになってしまった。

 

 だがそれもつかの間であり、ゴーレムの右手はまたもや再生をし始めている。それを見たタバサは顔を微妙に顰めた。

 それを横で見ていた霊夢も同時に顔を顰めている。

 「キリがない…。あの光の弾よりも更に威力の高い攻撃が必要…あなた、もう一度打てる?」

 ふと、タバサがそう呟き霊夢の方へと顔を向けた。

 さしずめ先程のスペルカードよりも威力の高いものを期待しているのだろう。

 「そうねぇ…、確かにまだ強力なのがまだあるけど使うのは少し勿体ないし…ちょっとアレを試しに使ってみようかしら?」

 霊夢が苦笑しつつもそうぼやくと地上に置いてきた黒筒を思い浮かべる。

 

 

 

 

 どうして「アレ」がこんな異世界にあるのかはよく知らないが丁度良い。

 今すぐにでも使えるし、何より神社に置きっぱなしにしているのよりずっと良い物なので持ってきた甲斐があった。

 「ちょっと置いてきた自分の武器を取ってくるから、アンタ達はあれを足止めしてくれない?」

 霊夢はキュルケ達の方へと顔を向け、ゴーレムを指さしながら言った。

 キュルケはあの巨体を見て一瞬だけ嫌そうな顔をするが杖をゴーレムの方に向けた。

 「う~ん、しょうがないわね。一分だけよ?」

 「もう魔力の残りがない、なるべく急いで。」

 続いてタバサも下ろしていた杖をゴーレムの方に向け詠唱を開始する。

 そんな二人に霊夢は軽く手を振ると急いでコルベールとルイズが居る場所へとすっ飛んでいった。

 

 

 

 

 「おぉレイム、良く無事だった!」

 地上へと降りてきた霊夢を見て少し安心しているコルベールを無視し、

 彼女は先程の黒筒の中に入っている「アレ」を取り出そうとして、いまこの場に残っている後一人がいないことに気が付いた。

 「あれ?ルイズは何処言ったの?」

 コルベールも霊夢の言葉でそれに気づき、辺りを見回した。

 そして自分の足下にあった箱の中身が消えているのに気が付き、更にルイズが今どこにいるのか知った。

 「え…?…おぉっ!?大変だ、ミス・ヴァリエールがあんな所に!」

 

 

 

 「ハァー…ちょっとアイツ、何やってるのよ?」

 「何をしているんですか、ミス・ヴァリエール!こっちへ戻ってきなさい!!」

 阿呆としか思えないその行動に霊夢は戦いの場にも拘わらずため息をついて呆れた。

 一方のコルベールは暢気な霊夢とは反対に声を荒げ叫ぶ。

 コルベールが指さした先にいたのは、ゴーレムの足下で学院の財宝である『破壊の杖』をブンブンと振り回しているルイズがいた。

 

 

 

 一方のルイズは、いつ踏みつぶされるかも知れない恐怖をこらえて一生懸命『破壊の杖』を振り回していた。

 「この…この!名前に杖が付いているならちゃんと魔法を出しなさいよコレ!」

 ルイズは先程の霊夢のスペルやタバサ達の戦いを見て、自分も杖を手に戦おうとした。

 しかし、さきほど小屋から脱出した際に何処かへ吹っ飛んでしまったのかルイズの手元には無かった。

 仕方なく、先程コルベールが言っていた『破壊の杖』を無断で拝借し、危険を承知でゴーレムの足下までやってきたのである。

 

 

 

 

 いつもなら魔法の代わりに爆発したりするのだが、今回はそれすら起こらない。

 だがルイズは諦めず、壊れたように詠唱を続け破壊の杖を振り回す。

 「なんで…なんで何も起こらないのよぉ!!」

 やがて堪忍袋の緒が切れたのか、ルイズは涙目になりながら破壊の杖を荒々しく足下に投げ捨てた。

 ルイズは嗚咽を漏らしながら、その場にペタリと座り込んでしまった。

 (結局、私はゼロのルイズなの…?結局は……。)

 

 

 

 

 「もう駄目…魔力が無い。」

 「こっちもそろそろ終わりそうね…たくっ!あの紅白は何やってるの…?」

 タバサとキュルケの力もほぼ無いに等しく、ゴーレムは殆ど無傷であった。

 二人の攻撃は凄まじかったがゴーレムの再生能力はそれらを全て凌駕している。

 当然空中で戦っている為、今ルイズが何処にいるのか知らない。

 魔力が切れるのを待っていたのか、ゴーレムはシルフィードをその手で執拗につかみ取ろうとし始めた。

 「シルフィード、離脱して。」

 主の命令にシルフィードは素直に従い、素早くその場から離脱した。

 やっと安全になったと思い、杖を戻したキュルケは地上にいるゴーレムの足下を見て驚いた。

 なんとそこにあのルイズが杖みたいな物を足下に置いて蹲っていたのだから。

 

 

 

 上空にいる二人もそれに気づいた時、ゴーレムもやっとこさ足下にいたルイズに気づいたのか、片足をゆっくりとあげ始めた。

 だれがどう見てもゴーレムがルイズを踏みつぶそうとしているのは明確である。

 コルベールは杖を向け詠唱しようとする。が、間に合いそうにもない。

 キュルケも残り僅かの魔力を振り絞りなんとかルイズが逃げれる時間を作ろうとしているがゴーレムの動きは速かった。

 ブォン!と風の切る音と共に上げられていた大きな足を地面にいるルイズ目がけて勢いよく下ろした。

 轟音、衝撃と共に大きな土埃が辺りに飛び散り、土埃の所為でコルベールは詠唱を中止し、ローブで己の身をかばった。

 

 

 

 間に合わなかった!!――――彼が強くそう思ったとき、ふと何かが落ちてきた。

 コルベールの頭に直撃したソレは、先程横にいた少女が持っていた『黒筒』だったらしい。

 大した痛みがなかったのはその『筒』に『中身』が入っていなかったからだ。というよりその中身も大して重くはないが。

 そして、その筒を背負っていた少女も何処へと消えていた。

 

 

 

 

 ルイズは、ゴーレムに踏みつぶされる瞬間に閉じていた目をゆっくりと開けた。

 顔を伏せていた所為かまず最初に見えたのは粗い土であった。

 ゴーレムが右の足を上げた時、ルイズはやろうと思えば逃げられていたのではあるが腰が抜けてしまっていた。

 蛇に睨まれた蛙の如く動けなかった彼女は踏みつぶされる直前に目をつぶり、天国に逝けるよう始祖に祈った。

 しかし、自分は生きているようだ。なんせ体は重いし、それに妙に暑いのでどうやら死に神の鎌からは逃げられたらしい。

 ルイズはゆっくりと顔を上げ、自分に背中を見せていた相手を見て驚いた。

 

 

 

 滑らかな黒のロングヘアー、一見すると大きな蝶にも見えてしまう赤リボン。

 脇部分を露出させた大胆な紅白色の異国風の服を着た少女…。それは間違いなく博麗霊夢その人であった。

 

 

 

 「全く、アンタが一番役に立たないんだから先に逃げなさいよ…。おかげで余計なことをする羽目になったわ。」

 前にいる霊夢は面倒くさそうにそう言った。

 ルイズは立ち上がり、辺りを見回してみると青い障壁がゴーレムの足を食い止めていた。

 「あ、有り難う…ってあら?」

 霊夢にお礼を言おうとしたルイズは彼女が左手に何かを持っている事に気が付いた。

 「それって……杖なの?」

 そう、霊夢は左手に「杖」を持っていた。

 しかし、それはルイズが見たこともない一風変わった「杖」だった。

 

 

 

 霊夢の身長よりも長く、細い「杖」は黒一色に塗られ、綺麗な光沢を放っている。そして一番の特徴とも言えるのがその杖の先端部分だった。

 先端には薄い純銀の板の装飾が施されており、太陽の光に反射してキラキラと光り輝いていた。

 それは、このハルケギニアには無い装飾で、「紙垂」と呼ばれる物であった。

 

 

 

 

 ルイズは何故かは知らないが思わずそれに目を奪われてしまった。どこか神聖な雰囲気を漂わせるそれに。

 そんなルイズに気づいた霊夢がその「杖」の柄で彼女の額をトンッ!と勢いよく小突いた。

 「イタッ!」

 脊椎反射でルイズは額を抑えながら後ずさった。

 「何ぼーっとしてるのよ。さっさと逃げてくれない?じゃないとアンタも巻き込むわよ?」

 霊夢は左手に持った杖…否。「御幣」をゴーレムの方に突きつけると、未だに痛がっているルイズにそう言った。

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