ルイズと無重力巫女さん   作:1-UP-code

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第五話

 一週間後――

       虚無の曜日の朝。

 

 

 ほんの少し開けられた窓の外から小鳥の声が聞こえてくる。

 朝日が窓の側に設置されているベッドを照らし、そこで寝ている少女の自慢であるピンクブロンドを輝かせる。

 そして後一人、色々とワケがありこの部屋で一緒に暮らしている黒髪の少女は椅子に座り頭に付けた大きな赤いリボンを両手で弄くっていた。

 「うぅーん…これで良いか。」

 黒髪の少女――霊夢はリボンの上部を掴んでいた両手を離してそう言った。

 綺麗に整えられたソレを見て満足そうに頷くと『この世界』に自分を呼んだピンクブロンドの少女、ルイズの方を見る。

 相変わらずルイズは気持ちよさそうに寝ている、多分昨日飲み過ぎたワインが原因だろう。

 

 自分が起きるのはもう少し遅くても良かったかしら? と霊夢がそんな事を考えているとふとルイズが眠りながら何かブツブツと言っている。

 「う~ん、私のクックベリーパイがぁ…。」

 ルイズの頭の中で何が起こってる全然わからないがどうやら夢の中でパイを食べてるらしい。

 

 「見た目に反して案外大食いなのかしら。」

 

 

 とりあえずそろそろ起こしてあげようと思い霊夢はルイズの隣に立つと彼女の体を揺すった。

 

 

 

 「朝よ、起きなさい。」

 軽く揺するが起きない。こんどはさっきより大きく揺らす。まだ起きない。

 

 

 

 「さっさと起きなさいよ…。」

 今度は激しく揺すると、ルイズがもそもそと起きた。

 「うぅぅん、このかぜっぴきめぇ…。」

 ルイズは何かぶつぶつと寝言を言い、棚の上に置いている杖を手に取った。

 杖の先は窓の前に立っている霊夢である

 

 「ちょっと、あんた寝ぼけ…」

 「よくもこのあたしの服にクリームを…『ファイアー・ボー……」

 

 ルイズが呪文を唱えているのだと知った霊夢は僅か三秒でそれを阻止した。

 一秒目、霊夢は針を一本取り出すと杖目掛けて投げた。

 二秒目、針が刺さった杖はルイズの手を離れ、物凄い早さで壁に刺さった。

 三秒目、刺さった部分から亀裂が生まれ、ポキッと杖の先が二つに分かれた。

 その間、わずか三秒。

 

 「んぅ?……ああ、おはよう…。」

 杖を壊されたルイズはまるで何事もなかったかのように目を覚ますと霊夢に朝の挨拶をした。

 一方の霊夢はそんなルイズにただ呆れることしかできなかった。

 

 

 

 

 コルベールは学院の本塔と火の塔の間に建てられている掘っ立て小屋である箱をいじくっていた。

 

 

 

 「うむ、ふいごを踏んで点火すれば…。」

 

 

 

 そう言ってコルベールはしゅごっ しゅごっ とふいごを足で踏み。次に箱についている円筒の横に開いた小さな穴に、杖の先端を差し込んだ。

 そして呪文を唱えると、断続的な発火音が聞こえた。しかし、ただ発火音が聞こえるだけで何も起こらない。

 

 

 

 「………ふぅむ、まだだな。まだなにか足りないぞこれは。」

 そういってコルベールは小さな穴に差し込んでいた杖を抜くと窓の外を見た。

 既に日が顔を出しており、コルベールの視界を遮る。

 コルベールは研究家である。そして彼が行っているのは「魔法をもっと人の役に立たせる」研究である。

 水や土などは補助呪文が多く人の役に立っているが火や風はどちらかというと攻撃的な呪文が多い。

 そこでコルベールはそんな魔法をさらに人の役に立てようと頑張っているのだ。

 

 

 

 たとえば今彼が夢中になっている装置は火の呪文を使ったある種のカラクリである。

 小さい穴に杖を差し込み、発火させるとカラクリが作動し箱に付いた扉から小さいヘビが出てくるのである。(さっきは出てこなかったが…)

 さらにこれが発展すればいずれ風石が無くとも船は飛べ、馬がいなくとも馬車が走るだろうとコルベールは推測している。

 しかし、現実は非情である。

 

 

 

 今コルベールには研究費が不足している、研究費がなければ満足な研究が出来ないのだ。

 オールド・オスマンにも掛け合っているのだが金のことになるといつもドロンと何処かへ行ってしまう。

 「外の空気でも吸いに行くとするか…。」

 コルベールは一人呟くとドアを開けて外に出て行った。

 

 

 

 

 外に出たコルベールは大きく息を吸い込むとゆっくりと息を吐いた。

 「あぁ、朝日と空気が気持ちいい…。」

 研究に没頭していて、コルベールは昨日の夕食後から一度も寝ていないし、外にも出ていない。

 しかしこれも一度だけではない。もう彼には慣れっこであった。

 ふとコルベールは研究材料の残りが少なくなってきたことを思い出した。

 「さてと、そろそろ研究材料もなくなってきたし…朝食の後にあの森へ取りに行くとするか。」

 本来なら既に加工済みの物が欲しいが材料費を出してくれるオールド・オスマンは渋ってるいるし自費では少々きつい。

 

 

 

 (あれが完成したら次に作るのは金貨製造機かな…ハハハ。)

 コルベールは心の中で冗談をぼやくと外出の準備をしに自分の部屋へと向かった。

 

 

 

 ルイズは先が二つに分かれた杖をじっと見ながら霊夢と一緒に廊下を歩いていた。

 「まぁ仕方ないじゃない…。正当防衛というものよ。」

 「…これの何処が正当防衛よ!過剰防衛だわ!貴族にとって命と誇りの次に大事な杖を壊すなんて!」

 大声で霊夢に叫ぶと周りを歩いていた数人かの生徒達が視線を向けた。

 「いいじゃないのルイズ。どうせあなた魔法は全部失敗するんだし、杖が無くても同じじゃない?」

 ふと後ろから『微熱』のキュルケがそんな事を言いながらルイズの右肩に手を置いた。

 「同じじゃないわよ!!杖がなければ貴族じゃないわ!」

 

 ルイズは物凄い剣幕で怒鳴るとキュルケの手を振り払った。

 「うふふ、怒ると美容に悪いわよルイズ。じゃあね♪」

 その様子に薄い笑みを浮かべたキュルケはそう言うと手を振って使い魔のフレイムと共に食堂へと進んでいった。

 ルイズはその場で地団駄を踏むと後ろにいる霊夢に愚痴の一つでもこぼしてやろうと振り返ったがそこにあの紅白娘はいない。

 「なにしてんのよ?置いていくわよ。」

 前から声がしたので見てみると霊夢がいつの間にか自分の前方にいたのだ。

 ルイズはムッとしながらも先に進む霊夢に食堂に着いたら愚痴を思いっきりこぼしてやろうと思った。

 

 

 

 朝食の時ルイズが積もった愚痴を床で紅茶を飲んでいる相方にこぼしながらクックベリーパイを食べていた。

 愚痴を言うときはちゃんと口に入れている物を胃に流し込んでから言うのは流石貴族と言ったところだ。

 霊夢はそんな愚痴を素っ気なく答えながら左手の甲をボーッと見つめていた。

 あの時ギーシュとか言う奴に内心腹を立てたら、微かに左手が暖かくなった。

 そして次にあいつを挑発した。今になって思い返せば不思議である。

 

 

 今霊夢の左手の甲には何も刻まれていない。至って普通である。

 

 

 

 今日は虚無の曜日で授業が無く、生徒達の休日である。

 学院の近くにある森に探検と洒落込む男子生徒達がいれば、街へアクセサリーや秘薬の材料を買いに行く女子生徒達がいる。

 そんな中自室で本を静かに読んでいる青い髪の女子生徒がいた。

 彼女にとっての休日は読書に利用するのに限る。

 本は良い。様々なことを文字で教えてくれる。

 

 タバサはずれた眼鏡を指で元の位置に戻すと読み終わったページを捲りあたらしいページを読む。これの繰り返しである。

 やがて読み始めた本が終盤になりかけた頃、誰かがノックもせずに入ってきた。

 チラッとだけ見て、相手がキュルケだと分かるとすぐに手元に置いていた杖を取り、『サイレント』の呪文を唱える。

 「――――――…、――――!?」

 部屋に入ってきたキュルケが魔法に気づいたのかタバサの肩を掴んで捲し立てている。

 このままだと安心して読書が出来ないため、仕方なしにもう一度杖を振り、呪文を解除した。

 「―――ゃんと私の話を聞いてよタバサ!」

 キュルケが耳元で叫んだため、驚いたタバサの目が少しだけ丸くなった。

 

 「今解除した。」

 素っ気なくタバサはそう言うとキュルケは安心したような顔になり肩を離す。

 今日の彼女はいつにも増してウキウキとしている。多分これが青春というものだろう。

 「どうしたの?」

 タバサは顔を向けずキュルケに用件を尋ねた。

 大抵こういう時は無理矢理何処かへ連れて行かされることが多い。

 以前はこういう事は一度もなかったが、最近多くなってきた。

 「あのねタバサ……あなた今新しい本とかいる?」

 キュルケが少し嬉しそうになりながら彼女に聞いてきた。

 彼女がそんな事を言ってくる時は、絶対に何か面倒ごとに巻き込まれるのだ。

 

 

 しかし、陰では「本の虫」とか呼ばれている程の本好きなタバサ。

 「……いる。」

 思わずそう言ってしまい、それを聞いたキュルケは自分の両手を叩いた。

 「良かったわ!実は今日街に行きたいんだけど買いたい物をリストに書いたら予想外の数になって…。」

 キュルケはそう良いながら懐に入れていたメモ帳を取り出しタバサに差し出す。

 タバサはソレを手に取り、ペラペラと捲っていく。そこには約5ページ分に渡るほどの書物や日用品の名前が書かれていた。

 

 一体これだけ買って何に使うのだろうか?唯一の友人の考えはあまり理解できない。

 

 と、タバサがそんな事を考えていると。キュルケが再び口を開いた。

 「だからね、あなたを誘う事にしたのよ!ホラ、あなたが呼び出した風龍の名前、だっけ?し…シェフィールド…だったかしら?」

 「シルフィード。それにこれなら馬車で事足りるはず。」

 タバサは自身の使い魔の名前を教えるのと同時にその提案を出した。

 「イヤよ!だって私馬を扱うのは結構上手いけど、馬車は苦手なのよ!御願いタバサ!」

 キュルケはそう叫び、タバサに抱きついてきた。

 息苦しい感じと、何やら胸の柔らかい感触が同時にタバサに襲いかかってきた。

 多分自分が頷くまで彼女はずっとこうしているだろう。

 

 

 「…わかった。」

 それは流石に困るので、少し嫌々ながらも了承した。

 

 

 

 一方のルイズも霊夢に壊された杖を直しに行くため、街に行こうと考えていた。

 ルイズは読んでいた本にしおりを入れテーブルに置くとベッドに腰掛けていた霊夢に話しかける。

 「レイム、今から街に行くわよ。」

 突然のことに霊夢がキョトンとした顔で口を開いた。

 「…別にいいけど、どうしたのよいきなり?」

 まるで朝の出来事は自分が悪くないかのような言い方である。

 「どうしたもこうしたも…今からアンタに壊された杖の修理に行くからよ。」

 ルイズはそう言いながら小さな鞄を取り出し、財布やら壊れた杖を鞄の中に入れていく。

 「はぁ、だからアレは正当防衛だって言ってるでしょ?まだそれを根に持ってるわけ?」

 霊夢はため息を吐くと呆れた目でルイズを見ながらそう言った。

 ルイズはそんな彼女の悪気が一切ない態度にイラッと来てしまい、声を荒げて叫ぶ。

 

 「大体なんで杖を壊すのよ!他のやり方があったでしょう!?」

 「他のやり方を見つけるほどの時間なんてなかったのよ。」

 

 やがて準備をし終えたルイズは霊夢と共に街へと続く街道を移動していた。

 ルイズは馬に乗っており、霊夢はいつものようにスイスイと空を飛んでルイズの前を先行している。

 それどころか段々と距離が開き始めているのにルイズは気が付いた。

 「ちょ、ちょっと…もう少しスピードをあわせてよ!」

 「むしろ馬の方が遅いんじゃないの?」

 前を飛んでいる霊夢に向けて、ルイズはそう言ったが霊夢にそう言い返されてしまった。

 だったらとルイズは鞭を叩き馬の速度上げて追いつこうとするがただただ霊夢の後ろを付いていくだけである。

 

 おかげで街には割と早く着くことが出来たのだが。

 

 

 乗ってきた馬を街の門の側に設けられた駅に預けると、ある事に気が付いた。

 「あれ…?レイムの奴は何処へ行ったのかしら?」

 先程まで自分の先頭を飛んでいて、一足先に街の入り口で待っていた筈の霊夢の姿が見えなかったのだ。

 自分が馬を駅に預けている間に何処かへ行ってしまったのだろうか?

 ふとそんな事ほ考えていると鼻に嗅いだことのない匂いが入り込んできた。

 「これって…。」

 

 

 それは何処かお茶の匂いに似てはいるが似て非なるモノだった。

 ルイズはその匂いに頭を傾げながらながら街の中にはいると、すぐ目の前に広がる露天市場の中でかなりの人だかりが出来ているのに気が付いた。

 同時に、漂ってくる匂いもそこから出てくるのと言うのに気づいた。

 (これは何かしら…紅茶とはまた違って独特ね…。)

 そのときルイズは、見覚えがある人物一が番後ろに立っていた事に気が付いた。

 それは列の一番後ろに立っており、黒い髪に付けられた紅い大きなリボンがよく目立つ少女であった。

 服もまた特徴的で袖がない紅白の服であり、通りゆく人々からは珍しそうな目で見られている。

 つぶらな瞳からは『喜』の感情が出ており、顔は年齢に似合った笑顔である。

 (れ、霊夢じゃないの…一体どうしたのかしら?……笑顔も結構似合ってるじゃない。)

 ルイズはそんなこと考えながら霊夢に声を掛けようとしたが彼女の横にある看板にふと目をとめた。

 

 

 

 『東方の地。ロバ・アル・カリイエから持ってきた『緑茶』。『紅茶』とはまた違った味と香りは斬新!』

 

 

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