幼い主人公が美女に惚れて悪に堕ちるお話です。
エッチな描写はありません。期待された方には申し訳ないです。
※「僕のヒーローアカデミア」の世界線で作りましたが、オールマイトしか登場しません。
拙い文章ですが、一読していただければと思います。
初めての投稿ですので、ドキドキしています。
全く笑いどころのない、始終暗いお話なので苦手な方もいらっしゃると思いますが、どうか最後までお付き合いください。
僕はずっと1人ぼっちだった。
元々片親であった僕は5歳の時に母を亡くした。それからは、祖父母もおらず、親戚の家をたらい回しにされていた。
転々としていたので、家によっては暴力を受けたこともあった。小さな僕は反抗できなくて、いつもやられてばかりだった。今から思えば、自分の家に他人が当たり前のようにいるのだ、ストレスも溜まるだろう。
まぁ、別に望んでいたわけでもないのに、その捌け口にされた僕としてはたまったもんじゃない。
毎日毎日、色のない日々を送っていた。あの頃の僕はただ生きているから生きていた。
そんな孤独だった僕をある人が救ってくれた。
僕にとってあの日は白黒だった世界が変わった日。
*
その日は、吹雪のとても寒い日だった。
辺り一面真っ白で、つけた足跡もすぐに上書きされてしまうような、豪雪だ。
僕はその日、家から追い出されて薄着のまま公園で蹲っていた。
公園の遊具の中で1人膝を抱えて暖を取っていた。
何も温めてくれる物はなく、侵入してくる吹雪は僕の体を徐々に雪で覆っていく。
寒くて寒くて幼いながらに死を覚悟したが、大した感情を抱く事もなく。淡々と自分の命を尽きるのを待っていた。
だんだん眠たくなってしまい、僕は冷える体を横たえて目を閉じた。
意識を手放しそうになったその時、誰もいなかったはずなのに声をかけられたのだ。
「__やあ、おチビさん。」
驚いて目を開けると、端正な顔立ちのとても綺麗な人が僕を覗いていた。口から白い息を吐きながら、僕の横に腰を下ろした。
その時既に、僕の口から白い息が出る事はなかった。
その女性は僕をじっと見つめた。
微笑むように目は細められているが、黒曜石のような瞳は怪しい印象を受けた。きっと日本人ではない血が混じっているのだろう、彫りが深く鼻が高い。唇は少し黒っぽい赤の口紅が塗られており、それが彼女の妖艶さをより際立たせていた。
鮮やかな瑠璃色の髪の毛が、長くサラリと腰まで流れていた。誰でも触れたくなるような、しなやかな髪で、少し雪が積もっているようだった。
「誰?」
僕が不思議そうに聞くと、彼女は笑った。とても綺麗な笑い方だった。
口を開けずに喉を震わせて、鈴が鳴るような心地の良い声音である。
「私は悪い人です。仕事でヘマしちゃって、ほらこの通り。」
彼女はそう言いながら、服の袖を捲り上げて腹を見せた。
そこにはまるで何かに貫かれたように直径3センチ程の穴が空いていて、血はとめどなく流れ出ていた。
それなのに、彼女は顔色1つ変えずに笑っている。
彼女があまりに普通に笑うので、僕も別段慌てずに痛そうだね。と言った。
「痛いけど、我慢できます。慣れました。それより貴方の方が死んじゃいそうです。寒いですか?」
彼女は僕に付いた雪を細い指ではらう。流れるようなその動作は撫でるように優しかった。
「うん…。僕たぶんこのまま死んじゃうんだよ。」
「迷子ですか?」
「ううん、僕が嫌いなんだって。僕がいない方がいいみたい。」
「そうですか、それは仕方がないですね。この世界に優しさはありませんから。」
彼女はニッコリと笑ってそう言った。
正直にそういう彼女がおかしくて、僕も笑ってしまった。
寒いのになんだか温かく感じたのは、彼女が隣に居て笑ってくれたからだ。こんなに近くで人の笑顔を見たのはいつぶりだっただろう。
「ああ、私の余命も残り少しだけ。このままだと正義のヒーローに捕まってしまいます。捕まったら自分でこの命を消します。」
「ヒーロー?お姉さん悪いことしたの?」
「そうですよ。もうすぐヒーローが来るでしょう。貴方は助かるかもしれませんね。」
彼女は僕の頭を血に濡れた手で撫でた。優しい手つきで、僕を撫でた。
嬉しかった。とても。優しく撫でられたのはいつぶりだろう。覚えていなかった。本当の父と母も知らず、愛を知らずに育ってきた。
彼女がお母さんかもしれないと、思いたくなるほどに嬉しかった。
どうせヒーローに助けてもらっても、きっとあの居場所のない家に戻されるのだと子供ながらに分かっていた。
死ぬのなら、彼女と死にたい。僕の心は彼女の虜だった。
「一緒に死ぬよ。お姉さんと。」
「うふふ、嬉しいです。1人は寂しいですから。」
お姉さんはそういうと、僕の腕を掴んで引き寄せた。
僕を抱きしめると、僕らが隠れていた場所から飛び出た。
その刹那、その遊具が粉々に砕け散る。遊具のあった場所に爆風が起きて、周囲にも風が吹き荒れた。
吹き荒れる雪が、その暴風に押されて吹き飛ばされる。地面に降り積もっていたはずの雪は渦を描くように砂埃と一緒に舞い上がった。
そして、それが晴れた先、僕らが隠れていた遊具の中心に、1人の男が立っていた。
「ふふ、随分と速いご到着です。」
「貴様から出る血を辿ってきた!!もう逃さん!!!!!」
彼女は僕を片手で抱えながら、凛と立った。まるで腹に穴など空いていないかのように。
風で揺れる髪が美しくて、僕は彼女に見惚れた。
しかし彼女は僕に目を向けず、目の前の敵をその怪しい目で見つめていた。
「ふふふ、こちらには人質がいます。」
「下劣な!そこまで地に堕ちたかっ!!!」
「ひとじちって僕のこと?」
「そうです。捕まるまではあがきます。人間は綺麗になんて死んじゃダメなんです。」
彼女は僕に諭すようにそう言った。その時の顔は揺れる髪のせいで見えなかったけれど、綺麗だったに違いない。
「わかった。僕も手伝うよ。1度だけ、1度だけ、僕がアレの力を抑えてあげる。」
「なるほど、十分です。」
僕はその時初めて、敵を見た。
筋骨隆々とした体は堂々とした出で立ちで、最高のヒーローとして存在していた。
眩しい金色の髪と青いマントをなびかせ、滅多に見せない義憤の顔が彼女を睨みつけていた。
「…本物のオールマイトだ。初めて見た。」
「大丈夫だ少年よ!私が来た!!!」
自信と正義に溢れた声とともに、オールマイトは僕達へ直進した。
そして、一瞬で詰め寄ったオールマイトは、僕の首根っこを掴むと、握られた拳を彼女に向かって振り下ろさんとする。
しかし、彼女もどこから出したのかわからないカッターで応戦しようと下から振り上げた。
___そして僕の両手の平が左右に交差した。
その瞬間、僕の全身へと悪寒が走り、僕は心臓を握られ血が絞られていくような感覚に襲われる。
そうして同時に、オールマイトの腕から放たれていたはずの光が無くなり、勢いも消える。
オールマイトの顔色が変わった。
「僕はあんたが嫌いだ。」
彼女の握るカッターが、右腹から左肩にかけてオールマイトを斬り上げた。あわせて、オールマイトは血を吹き出す。
まるで刀で斬られたように、カッターではあり得ない程の深い傷をオールマイトに与えたのだ。
そして、怯んだ隙に彼女は僕の首根っこを掴むオールマイトの手をつま先で蹴り上げる。蹴り上げられたオールマイトの腕は嫌な音を立てて本来と真逆の方向へと曲がった。
「ぐあああっ!!!???」
オールマイトはすぐさま後退したが、あまりの深手に膝をつく。自分が力を込めたはずの腕を見た。
あるはずの力が出なかったのだ。
彼女は焦燥するオールマイトを笑った。オールマイトが膝をついている事がそんなに嬉しかったのだろうか。
「“個性”をっ消したのかっ!!なぜ君が!!??」
「うふふ、あはは、あはははは!!!!形勢逆転ですオールマイト!!」
彼女は心底愉快そうに笑った。初めて大口を開けて笑っているが、それでも彼女の美しさが欠如する事はない。
まるで、遊戯を楽しむ女王がそこにいるかのようだ。
それは、もしかしたらこの世界は彼女が楽しむためにあるのかもしれない、そう盲目的になっていた僕に錯覚させた。
「くっ!!!私は、諦めんぞ!!!!!」
「いいえ、もうお別れです。貴方にトドメは刺しません。この子もあれが限界らしいですから。いくら貴方が手負いでも、この子を抱きかかえ、お腹に穴が開いたまま、貴方に勝てるなどという慢心はしていません。」
「待て!!!その子を!その子を置いていけ!!!」
「いいえ、この子は私が貰います。」
彼女は僕を一層強く抱きしめた。僕も彼女の服を掴み返した。
オールマイトの顔が、ヴィランよりも恐ろしい怒りを露わにした。
悔しそうなオールマイトの声が、あたりに響く。
「貴様を決して許さん!!!!
彼女はその声を背に、雪に紛れてオールマイトの目の前から消えた。
そして、僕の視界が暗転する。
暗闇の中で、また鈴の音が鳴った。
「世界が貴方に優しくないのなら、私が貴方に優しさをあげましょう。」
読んでいただきありがとうございました。
どうでしたでしょうか。楽しんでいただけたなら幸いです。
よろしければ、評価、コメント等していただければとっても嬉しいです。
そして、続くような終わり方ですが、続きません。
わりと設定は好きなのですが、練習用で書いたので、このくらいにしておきます。
それから、なんだかオールマイトが弱いような内容になってしまいましたが、オールマイトは弱くありません。ご存知の通りめちゃつよです!対戦相手が悪かったという事でお許しください。
ここらはちょっとだけ、オリジナルキャラクターの説明をさせていただきます。
まず主人公ですね。彼は小学2年生くらいを設定しています。
謎の美女に惚れて闇堕ち。という事ですが、彼は恋は愚か愛を知りませんので、なかなか盲目的になってしまいます。
彼の個性は相手の個性に干渉し操作できる、という個性です。ワンフォーオールの力が一時的に消えてしまったのは、そういう事です。
名前は特に考えていませんが、私自身が考えたわけではなく、とあるヒーロー漫画の登場人物を参考にした能力です。
次に、美女、オールマイトに断頭台と呼ばれていたヴィランですが、彼女の年齢はご想像にお任せします。
なかなかお上品な感じの女性で、口調も比較的丁寧ですが、淡白な性格をしています。
彼女の個性にも名前は付いていませんが、断頭台と呼ばれるだけあって、刃物にまつわる個性です。彼女はカッターやフルーツナイフであっても、刀のような威力を発揮する事ができます。ですから、刀などの武器を使用した場合はもっと威力が増すということです。
この個性もとある小説、漫画から借りています。
頭の中ではもっと設定は作ってあるのですが、この1話で終わってしまう話ですのでこれくらいにしようかと思います。
ですが、ちょっと完全に無くしてしまうのは寂しいので、次回作に盛り込もうかなと考え中です。
以上で「優しさの理由。」は終わりです。
くどいようですが、評価、コメント、よろしくお願いします。
誤字脱字などもありましたらご連絡ください。質問などもご気軽にどうぞ。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!
ではまたのご機会があれば、よろしくお願いします。