勇者の記録(完結)   作:白井最強

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勇者とラストダンジョン#5

 ヒシミラクルは草木をかき分けながら進んでいく。草木は人の手入れが全くされておらず、目元の高さまで成長していた。

 そのせいで視界は遮られどこに進んでいるか分からない状態だ。空を見ようにも木々に覆われ空の色は見えず、周囲の明るさで何とか今は晴れているか曇っているか分かる程度だった。頼りになるのは貰った地図と方位磁石だけだ。

 今の日本にこんな秘境のような場所が存在したのか、しかも唯でさえ歩きにくいというのに、今は右足を怪我してさらに歩きにくい。内心で愚痴りながら目的地にたどり着けるかという不安を打ち消していく。

 草木をかき分けながら未開の地を歩くこと30分。視界に変化が訪れる。前方に薄っすらと湯気のようなものが見えていた。景色の変化に高揚し無意識に歩みが速まる。

 

 そして視界に飛び込んできたものは予想しているものとは違っていた。それは抉れた土にただお湯が張ってあるだけ、それは幼い頃に作った水入りの落とし穴を思い出させた。

 ヒシミラクルは恐る恐る人差し指でお湯に触れ温度を確認する。多少熱いが充分に入ることは可能だ。次に指を入れた後は服の袖を捲り腕を入れていく。肘あたりでも底に触れられなかった。

 次に広さを確認する。縦10メートル横5メートルぐらい、身体を縮こまらせながら入ることも想定していたが、これなら体を伸ばしながら入れそうだ。

 リュックを下ろし一瞬逡巡した後に衣服を脱ぎ始め全裸になる。

 流石にこんな秘境のような場所に人は来ないだろう。それにタオルを巻かずに全裸で入るのがマナーだ。いざ入ろうとすると寒気が過り体を震わせる。歩いている時はまるで寒さを感じなかったが、秋が深まった今の時期に外で全裸になれば寒いに決まっている。

 ゆっくりとお湯に入り全身が浸かれるように足を伸ばし、身体を投げ出しながら天を仰ぐ。これで青空でも見られたら、せめて周りに紅葉や銀杏でも咲いていれば良かったのだが、辺りは面白みのない緑の草木に覆われて景色を楽しむ気になれなかった。流石に贅沢だと反省し、意識を切り替えイメージを構築する。

 血液が駆け巡り腱が再生されていく様子を脳内で描く。さらに超常的な存在が力を貸してくれるイメージも同時に描く。肌に伝わる温もりを感じながら目を閉じ無心になってイメージを構築し続けた。

 

 ヒシミラクルの転換期は京都大賞典からだった。レースでは先行策で逃げるタップダンスシチーに挑んだが結果は1と1/4差で2着、ハンデ差は1で約1バ身差の計算になり、初めての先行策でこの差ならまずまずの結果だとトレーナーは満足げな表情を浮かべていたがその表情は険しかった。

 どんなに追っても追いつけないと思わせる嫌な負け方だったがそれだけではない。ゴールした瞬間に何かを奪われたような喪失感を味わっていた。

 何が奪われたかは分からない、だが自分にとって重大な何かだった。このレースはジャパンカップや有マ記念を睨んでの前哨戦だった。だが奪われない為に全力で勝ちにいくべきだった。

 心に後悔の棘が僅かに残る。そして翌日からヒシミラクルの歯車は微妙に狂い始める。

 

 宿題をやっていない日に限って先生に当てられる。出かけた時にやたら信号に引っかかる。ふと食べたくなったお菓子を買いに行くと売り切れている。

 

 他人にとっては気にもならない事かもしれないがナーバスになっていた。

 自分に有利なペースになった。抉れた芝が当らなかった。外れた蹄鉄が飛んでこなかった。レースにおいて不利を被らず有利になる。それが運の良さであり強さだ。

 普段の生活で不運に見舞われてもレースで何もなければ関係ない。しかし運に関わることだけあって気になっていた。

 

 そして事件が起こる。

 

 風が吹けば桶屋が儲かるという言葉がある。それはある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩えであり、時には確率の非常に低い因果関係を無理やりつなぎ合わせ、こじつけつけるような理屈や言いぐさを皮肉に表現する場合もある。

 1つの1つの事象は些細だがそれが影響し合い事が大きくなっていく。それは傍から見れば天文学的に低い確率だが、実際に起こってしまった。

 ヒシミラクルは事故に遭いそうな人を庇った結果、靭帯を痛めてしまい全治1年という怪我を負ってしまった。

 

 日常生活における不運は起こるがレースに関係する不運は起こらないと不安になりながらもどこかで高を括っていた。

 車の運転手が悪いのか?人を庇ったのが悪かったのか?脳内で誰が悪かったと原因を追究する。そして即座に原因が浮かび上がる。原因は至って単純だった。

 自分の運が足りなかった。つまり強さが足りなかった。そして弱くなった前兆が見られたのは京都大賞典以降、つまり奪われたのは運、タップダンスシチーによって運を奪われた。

 その結論を誰かに言えば荒唐無稽の逆恨みと切り捨てられるだろう。だが本人にとっては絶対不変の真実になっていた。

 タップダンスシチーに対する恨みはない。だがいずれ奪われた運を奪い返す。怪我は自分の弱さが招いた結果と受け入れ、リベンジを誓いリハビリを始める。だが運は本人が思っている以上に強かった。

 

 ある日、ヒシミラクルは自分に会いたい人が居るとチームルームに呼び出される。そして中に入るとトレーナーと見知らぬ中年男性がいた。男性はヒシミラクルの存在に気が付くと丁寧に挨拶した。

 

「初めまして、本名を言うよりヒシミラクルおじさんと名乗った方が分かりやすいですね」

 

 その単語を聞いた瞬間に、目の前の男性とヒシミラクルおじさんの単語が結びつく。

 彼はスポーツ振興くじや宝くじが立て続けに当たり巨万の富を得た。その確率は人が壁をすり抜けられる確率より低いらしく、今世紀最高の幸運の持ち主と騒がれていた。

 そしてくじを買う際応援券をお守り代わりにし、数字もレースに勝った時の日付やウマ番を参考にして買ったからヒシミラクルおじさんと呼ばれていた。

 ヒシミラクルは幸運を授ける女神と騒がれていたが、その決定的な要因はヒシミラクルおじさんで、ある意味ヒシミラクルより有名人となっていた。

 

「着て早々ですが提案が有ります。私は医療関係者なのですが、そのコネクションを使って市場にも出回っていないような最新の治療器具を揃え、スポーツ医学の名医と呼ばれる医師の治療を受けられます。一時的に学園から離れてそこで療養しませんか?」

 

 説明ではヒシミラクルおじさんが医師の診療費や諸々の費用は全て賄うと話していた。

 ヒシミラクルは提案を聞きながら記憶を掘り越す。確かワイドショーで医療関係の仕事に就いていると報道されていたがここまで大物だとは思っていなかった。

 そして脳内である疑問が浮かぶ。何故ここまでしようとするのか?その疑問を見透かしたように語る。

 

「私は貴女のお陰で途轍もない幸運に恵まれました。その与えられた幸運を少しでも返したいのです」

 

 その言葉を聞き、お世話になりますと即答した。話を聞く限りでもヒシミラクルおじさんに相当な金額的負担が科せられるのは分かる。普通であれば負い目や遠慮が過るところだが一切の負い目や遠慮はなかった。

 ヒシミラクルおじさんは自分に関連する情報を元にくじを買って当てた。そしてレースに勝たなければご利益を感じず、自分に関連する情報を元にくじを買わなかったかもしれない。つまり自分のお陰であり、こうして恩を返そうと療養を提案してきた。

 このフィクションじみた幸運は全て自分が実力で引き起こした。ならば利用するのは当然である。

 

 ヒシミラクルは怪我をした際は来年タップダンスシチーと走るという目標を立てた。だがそれは理想では無かった。

 タップダンスシチーが来年も現役で走るという保証はどこにもない。怪我するかもしれない。それに現役だとしても海外に長期遠征して一緒のレースに走れないかもしれない。つまり予定が決まり尚且つ怪我していない状況、つまり早ければ早いほど良い。

 何より運を奪い返す為には勝利しなければならない。一応は宝塚記念にも勝てたが本質はステイヤーで、距離が長ければ長いほど良い。そして一緒に走れて最も距離が長いレースは有マ記念だ。走るとしたらこれがベストだ。

 それが理想であったが即座に諦めた。全治約1年のウマ娘が約2ヶ月後のレースに出走し勝利する。それはどう考えても無理だ。しかしヒシミラクルおじさんが現れたことで風向きが変わった。

 その治療器具と名医の治療によって驚異的な回復をみせ、怪我が治り有マ記念に走れるかもしれない。そんな事が起こればまさに奇跡、昨日までには欠片もない可能性だった。だが今は怪我治り有マ記念に走れるという根拠のない自信が体中に湧いていた。

 

 運は奪われたが全て失ってはいない。

 

 それからヒシミラクルは用意された療養所で怪我の治療を開始する。最新の治療器具や名医の治療も受けるにはそれなりの人脈とコネが必要になる。本来ならば決して受けられるものではなかった。だが運という強さが手繰り寄せた。

 そして治療の効果は表れ11月半ばで全治3か月程度まで回復していた。その回復は驚異的で医療業界を大いに湧かせた。

 しかし全治3か月では有マ記念には間に合わない。走るだけなら可能だろうが勝つコンディションにするには時間が足りなかった。だが焦りは無かった。自分は強い。その強さで必ず有マ記念までに間に合うと信じていた。

 その矢先にある情報が届く。療養所の近くに温泉が湧き、その成分は怪我に効果が有るというもので、その情報もヒシミラクルの応援券をお守り代わりにし、幸運を授かった者からだった。医療スタッフと相談し、その温泉に湯治に向かった。

 

───

 ヒシミラクルは温泉からあがり体を拭きながら体の調子を確かめる。湯の成分のせいか体から力が湧き上がるような感覚だ。

 プラシーボ効果というものがあり、医療スタッフも温泉の効果で治りが早まると信じろと思い込むことをアドバイスされた。そのアドバイスに従い信じ込んだ。

 それは温泉の湯の成分ではない。自分のレースによって効果が増した応援券をお守り代わりにし、幸運を得た者に教えられた温泉の効果、つまり自分の運という強さが引き寄せた温泉の効果を信じていた。

 それから治療には最新の治療器具による治療に湯治を混ぜていき、効果はてきめんだった。

 怪我はみるみるうちに治っていき、有マ記念に万全の状態で走るのは決して夢ではないとスタッフの1人が興奮気味に語っていた。

 

 そして治療の日々が続く中、11月の最終週を迎える。日曜日にはジャパンカップが行われ、自然とジャパンカップの話題が耳に届く。

 世間や専門家の大半がシンボリクリスエスの勝利を予想するなか、ヒシミラクルはタップダンスシチーが勝利すると確信していた。

 実力は勿論あるが何より京都大賞典で運を奪った。その運は有利をもたらし、他のウマ娘達に不利を与える。結果ジャパンカップはタップダンスシチーが2着に9バ身差の圧勝で幕を閉じる。

 脚質、枠、バ場状態、全てが有利に運んだ、それらの条件が無ければ勝てなかったという意見もあった。だがヒシミラクルはハナで嗤う。

 それらの好条件は全て運がもたらしたものであり、全ては実力だ。宝塚記念でそれを証明したつもりでいたが、未だに運を軽視する風潮に苛立ちを覚えていた。

 ヒシミラクルは走る予定の有マ記念について考える。最も強力な相手はタップダンスシチーだ。今まで欠けていた運の要素を強化したのであれば当然だ。だがその運の要素はヒシミラクルから奪った借り物に過ぎない。そして勝利すれば運は返ってくる。

 全治1年の怪我を負うという苦境に立たされた事でさらに運が強くなった。その強さは京都大賞典前以上になっているという自負がある。それに預けていた運が上乗せされればさらなる高みに登れる。高みに登った己を想像し心が躍っていた。

 ジャパンカップ翌日、医師から完治したという太鼓判を押され学園に戻る。全治1年の怪我を1カ月半で完治させる。それは現代医療ではあり得ない出来事で奇跡としか形容できなかった。

 

 ヒシミラクルは正門を潜った瞬間、手を名一杯広げ空気を吸いこみ匂いを嗅ぐ。やはり療養所とトレセン学園では空気が違う。空気は療養所のほうが澄んでいるがトレセン学園独特の空気が好きだ。

 正門を通過し真っ先にチームルームに向かう。チームメイト達と顔を合わせるのは約1カ月半だ、療養所に居る間もやり取りはしていたがやはり顔を合わせて話したい。

 

「ただいま!」

 

 ヒシミラクルは嬉しさを抑えきれないと明るい声色で挨拶する。するとチームメイト達は存在に気づき歩み寄ってくる。

 

「おかえりミラクル」

「怪我は大丈夫?」

「最新医療はどうだった?」

 

 質問に答えるかのように脚を天高く上げ勢いよく下ろす。それは相撲の四股だった。床を踏みつけた音がチームルームに響く。

 

「この部屋には邪気が満ちていました。この現人神ヒシミラクルが邪気を払っておきました。安心なさい」

「自分で名乗るな」

「調子に乗りすぎ」

 

 ヒシミラクルの演技がかった言葉にチームメイト達は一斉にツッコみを入れ、全員が耐え切れないと一斉に吹き出した。

 

「その様子だと本当に治ったみたいだね」

「まあね、医者からもお墨付きだから大丈夫」

「全治1年の怪我を1カ月半で治すって本当にウマ娘か?」

「本当に奇跡ですね。ミラクルおじさんも宝くじも奇跡レベルの確率だし、ヒシミラクルさんの恩恵は半端ないっすね」

「神とは言わないですけど、2つ奇跡を起こしたし聖人認定してもらえるんじゃね」

 

 ヒシミラクルを中心に姦しく騒ぐ。その騒がしさに懐かしさを覚えていた。

 

「皆集まったか?そうかヒシミラクルも戻ってきたか」

 

 トレーナーは入室しヒシミラクルの姿を見て平静を装いながら声をかける。今日帰ってくると医者から報告を受けていたが半信半疑で、目の前で見ていても俄かに信じがたかった。

 

「ただいまトレーナー」

「お帰りミラクル、ところで何かデカくなったか?」

 

 トレーナーは思わず尋ねる。制服越しで詳しくは分からないが上半身に厚みが出ているような気がしていた。その言葉にヒシミラクルは自慢げな表情を浮かべる。

 

「よく気づきましたね。あっちで怪我を治しただけじゃありません。見よ、この鍛え抜いた上半身を!」

 

勢いよく制服に手をかけるが、その姿を見てチームメイト達は即座に動き慌てて止める。

 

「止めろ露出狂、トレーナーの前だぞ」

「あっちで羞恥心を捨てたか?」

「あっ、そういえばそうか、秘湯に入る時に裸を見られちゃったから、そこら辺の意識が薄くなってた」

「その話トレーニング後に訊かせて」

 

 トレーナーは姦しく騒ぐヒシミラクル達を見て思わず笑みを浮かべる。ヒシミラクルが居ると雰囲気が和やかになる。改めて帰ってきたのを実感していた。

 

 トレーニングが始まり怪我を治しただけではないという言葉を理解する。その走りに安定感と力強さが増していた。

 その要因は鍛えたと言っていた上半身だろう。筋力アップにより腕の振りが良くなり推進力が増している。元に戻れば御の字だと思っていたが、パワーアップして帰ってきた。

 トレーナーの中で有マ記念勝利が現実味を帯びていた。だがその現実味は翌日には打ち消されてしまう。

 

「失礼します」

 

 ヒシミラクルはノックをした後トレーナー室に入室する。今日の昼過ぎに有マ記念について打ち合わせしたいという連絡があり、トレーニング前に部屋に訪れていた。

 

「急にすまない、座ってくれ」

「失礼します」

 

 トレーナーに促されソファーに座ると同時に顔を見る。その表情は焦りや不安を帯びていた。

 

「ところでスポーツ新聞とは読むか?」

「いえ、読まないです」

「なら、この記事を見てくれ」

 

 ヒシミラクルは机に広げられた記事を手に取る。見出しには『タップダンスシチー切れ味抜群』と書かれ、記事の内容はトレーニングに対する称賛だった。そして注目すべき内容はトレーニングの内容、終い重点で尚且つ好時計だった。

 

「いつの間にこんな瞬発力を身に着けたんですかね」

「だが脅威だ、あの先行力にキレがついたとなれば厄介極まりない」

 

 トレーナーは神妙な表情で肘をテーブルに着けて手を組む。今までは先行力が有ってもキレが無いので、最後の終いが甘くなり、後方のウマ娘から差されるというのが負けパターンだった。そこにキレが加わることで最後の一伸びが増し差し切れなくなる。

 

「これからのメニューだが坂路を中心に瞬発力を鍛えていこうと思う」

「それは欠点を補って、オールラウンダーになれってことですか?」

「いや違う。長所をより生かす為だ」

 

 最大の長所はスタミナを生かしたロングスパート、それを最大限生かす為に苦手分野の瞬発力を鍛えることによってレースの幅を広げる。

 そして今のスタミナは有マ記念を走るには充分すぎる程備わっている。逆に今以上鍛えるとスタミナを持て余す。

 其々の特徴があるにせよレースに勝つためにはスタミナとスピードの比率が重要であり、いくらスタミナを鍛えても最低限のスピードが無ければ勝てない。

 

「トレーナー、私の考えは逆です。これからはトラック中心でスタミナを鍛えましょう」

 

 ヒシミラクルは即座に意見に反対し、トレーナーの眉が僅かに動く。今までトレーニング方針に異議を挟むことは無かった。何より経験によって導き出した答えを否定され、プライドが僅かに傷ついていた。

 

「理由は?」

「ロングスパートで私はGIに勝ってきました。それは最大の武器と同時に運を呼び込んでくれたと思います。そして運は信じる心が呼び寄せると思っています。瞬発力を鍛える行為は私にとって自分の武器を信じてないと同じなんです。レースを勝つためにはトレーナーの方が正しいのでしょう。でも私は自分の武器を信じ抜きたい」

 

 想いをぶつけるように意見を言う。強さとは心技体に運を含めた総合値、仮に瞬発力を鍛え体が鍛えられても運が落ちては弱くなると考えていた。

 この意見は他人から見ればオカルト理論であり何一つ根拠はない。それでも自分の強さを肯定してくれた運の要素を信じたかった。

 トレーナーは腕を組み右人差し指で左の二の腕を叩きながら熟考する。その間部屋の空気は緊迫感が増し、ヒシミラクルも無意識に唾を何度も飲み込む。

 

「分かった。これからはトラック中心でいこう」

「ありがとうございます」

 

 ヒシミラクルの表情は明るくなり何度も頭を下げる。トレーナーの経験からすればどう考えても瞬発力を鍛えた方が良い。だがそれはヒシミラクルというウマ娘の個性を考慮していないともいえた。

 その強さは豊富のスタミナを生かしたロングスパートではない、備えている強運であると彼女自身は思っている。そしてスタミナを鍛えてのロングスパートで走る方が運が強くなると導き出した。

 トレーナーの育成方針は長所を生かす。その考えは変わらない。ただ長所がスタミナから運に変わり、生かすための要素は瞬発力からロングスパートに変っただけだった。

 

 

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