勇者の記録(完結)   作:白井最強

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とりあえず目途がつきましたので、週一を目標に投稿していきます


勇者と隠しダンジョン♯14

 2月2日日曜日府中駅周辺、肌を刺すような冷気が吹き付けるなか、周辺は独特の高揚感と熱気に包まれていた。

 駅のホームから改札を抜ける大学生らしき若者達、走り出す子供と慌てて手を逃げる父親にそれを見て微笑む母親、50代の男性達、中学生ぐらいの年齢のウマ娘達、それらの人々の足取りは興奮を抑えきれないとばかり速まり、どこか浮かれている。改札を抜けた老若男女達の声に耳を傾けると今日行われるレースの話題だった。

 府中レース場で行われるウインタードリームトロフィーターフ、芝2000メートルで行われる下半期芝中距離ナンバーワンを決めるビッグレースである。

 府中レース場に行く人々の大半はホームを出てすぐに目の前の光景に目を見開く。辺りにはまるで府中レース場までの道を案内するようにフラッグが立ち並ぶ。

 

 スペシャルウィーク、グラスワンダー、ナリタブライアン、エアグルーヴ、ビワハヤヒデ

 

 それぞれのフラッグにトロフィーターフに出走するウマ娘の写真とキャッチコピーがプリントされている。それらをじっくり見ようと人々の足並みは自然と遅くなる。あと数時間でドリームレースが見られる。一体誰が勝つ?それぞれが予想と願望を言いながらレース場に向かう。

 その人の波を逆流するようにエイシンプレストンとテイエムオペラオーとメイショウドトウが府中駅に向かう。その表情は対照的に神妙な面持ちだった。

 3人はダートプライドの前々日会見をネット中継で見ていた。世間は勝ち鞍とレイを賭けることに注目していたが、彼女達が注目していたのはそこではなかった。

 勝ち鞍やレイを失うことはそれ迄の努力や情熱の成果を奪われることであり、重要な問題である。だがそれはデジタル以外のウマ娘にとって重要であり、自身には大した問題では無く。精々トレーナーになる際に経歴が無いと不利だな程度の些細な問題だ。

 だがデジタルは思い出を賭けた。デジタルがレースに走るのはレースを通してウマ娘を感じる為、言い換えればウマ娘を感じた記憶を得る為である。もし負ければ大切な物を失い、それはデジタルにとって最も辛いことである。

 3人は口少ないまま改札を通り、新宿行きのホームに向かう。行先は大井レース場前駅、あと数時間後にダート世界一が決まると同時にデジタルの未来が決まる。最高の体験をして思い出を守るのか、それとも全てを失うのか。自然に手に力が入っていた。

 

「すまない。今アグネスデジタルと言わなかったか?」

 

 オペラオーが突如振り返りすれ違った男女2人に声をかける。1人は赤髪のオールバックで長身の男性、1人は金髪のセミロングの女性だった。男女は訝しむようにオペラオー達の方に振り返る。顔たちからして欧米出身のようだった。

 

「ドトウ、頼む」

「分かりました」

 

 オペラオーは日本が通じないと判断しドトウに通訳を頼み、ドトウはオペラオーの言葉を英語に翻訳する。

 

『すみません。今アグネスデジタルと言いましたか?』

『はい、そうですが』

『もしかすると、アグネスデジタルが走るレースを見に来たのですか?』

『はい』

『アグネスデジタルが走るのは大井レース場です。ここにあるのは府中レース場ですので府中レース場では走りません』

 

 男女は目を見開きお互いの顔を見合わせると携帯端末を慌てて操作しながら、改札にある英語表記に交互に視線を送る。オペラオーはその様子を見て安堵の表情を浮かべる。

 

「よく気づきましたね」

「デジタルやランという単語が聞こえたからね。もしかしたらダートプライドを見に来たのではと予想したが、案の定だったよ」

 

 プレストンは感心した素振りを見せ、オペラオーは満更でもないとばかりに胸を張る。世間では東京のレース場と訊けば大半は府中にある東京レース場と口にして、地方の大井レース場のことは知らないという人も珍しくない。外国人なら猶更分からない。

 

『よろしければ、大井レース場まで一緒に行きませんか』

 

 ドトウがオペラオーの言葉を翻訳し男女に伝える。外国人が不慣れな日本で電車に乗り換えて大井レース場まで行くのは難しく、たどり着けない可能性が有る。わざわざ日本まで着てその結末は悲劇だ。何より友人として、レースに携わった身として、レースファンをレース場まで連れて行き観戦させるのは義務である。

 

『本当にありがとうございます。貴女達が居なければレース場に辿り着けなかったかもしれません』

『私達も大井レース場に向かうついでなので、お構いなく』

 

 電車の座席に座った外国人の男女が頭を下げ、プレストン達は吊革に捕まりながら腰低く恐縮そうに応じる。5人は新宿駅に向かう電車に乗りながら世間話をする。会話の中で男女はアメリカ出身でデジタル見当てでレースを見に来た事が分かった。

 

『しかしアメリカの方でデジタルのファンというのも珍しいですね。ティズナウとかサキーなら分かるのですが』

『デジタルは私達の娘なんですよ。ダートプライドは凄いレースになるから是非見に来て欲しいって言われまして』

「デジタルの母君なのかい!?」

 

 金髪の女性の言葉にオペラオーが思わず声を出し、3人は一斉に目を見開き視線を交わし合う。ということは赤髪の男性はデジタルの父親か、こんなところでデジタルの両親と出会うなんて何という偶然だ。

 デジタルの両親はその反応を不思議そうに見ながら、何かを思い出したように手を叩き携帯端末を操作すると画面と3人の顔を見比べる。

 

『もしかしてテイエムオペラオーさんに、メイショウドトウさんに、エイシンプレストンさんですか?』

『私達のご存じなんですか?』

『はい、そちらの栗毛の方がテイエムオペラオーさん、世紀末覇王、不世出の歌劇王、強さもさることながらファンサービスなどの意識の高さについては娘から聞いております。スポーツの世界に身を置いた身として尊敬すると同時に今やファンですよ』

「こちらこそ光栄だよ。特別にサインを贈呈しようじゃないか」

 

 父親は社交辞令を述べながらオペラオーに手を差し伸ばす。ドトウが父親の言葉を翻訳されると上機嫌に握手に応じ、バッグから紙とペンを取り出すと流れるような動作でサインを書き父親に渡す。

 

『そこの鹿毛の方はメイショウドトウさんですね。奥ゆかしくていつも他人を気に掛ける優しさと何度でも立ち上がる不屈の闘志を持つ偉大なるナンバー2。娘から宝塚記念に勝った話を聞いた時は思わず涙ぐんでしまいました』

『そんな。偉大なるナンバー2なんて過大評価です~』

 

 母親が手を差し伸ばすと顔を赤らめて手をブンブンと横に振り、その仕草に母親は思わず微笑む。

 

『そしてエイシンプレストンさん。娘が本当にお世話になっております。娘も貴女が居なければ今の自分は居なかったといつも言っておりました。これからもご迷惑をおかけすると思うかもしれませんがよろしくお願いします』

『こちらこそ、デジタルが居なければ今の自分はいませんでした』

 

 プレストンはデジタルの両親と同様に深々と頭を下げる。

 それから一同は大井レース場までの道中は和やかに会話をしながら向かう。主な話題はデジタルのことで、両親は日本に来る前の話をして、プレストン達はトレセン学園での話をした。

 新宿から大江戸線に乗り換えると大井レース場に向かうと思われる乗客たちが増え始め、大井レース場前駅に向かうモノレールは朝の満員電車のように混雑していた。

 

『大丈夫ですか?』

『これが日本のラッシュアワーか、想像以上だ』

『正確に言えば違いますけど、込み具合は同じぐらいですね』

 

 デジタルの両親はベンチに座るとしんどそうに深く息を吐く。アメリカではレース場に行く際には基本的に車移動で電車の混雑には馴れていなかった。

 プレストン達はデジタルの両親の調子が戻るまでホームのベンチに座り、レース場に向かう乗客たちを眺める。そして眺めているうちに外国人とレース場に初めて訪れると思われる人々が多いことに気づく。

 

「府中に向かう客層とは違いますね」

「ドリームトロフィーターフとダートプライドの違いが出てますね。外国人が多いのはティズナウやサキーが出走するせい、そして新規が多いのはエンタメ色が強いからですかね。ダートプライドの成り立ちから前々日会見のレイと勝ち鞍を賭けるとかショー的な要素が強くて、あたしも他のジャンルでこんなことが有ったら興味がそそられます」

「そのせいかショービズすぎるとか、品が無いという意見も聞かれる。でもオペラだって古典とは違うエンターテインメント色が強い作品も有る。これは娯楽の宿命さ」

 

 オペラオーのいつも演技がかった仕草ではなく真面目な口調で呟く。ダートプライドは日本で行われるレースとは違い、互いに煽り合い刺激的に盛り上げてきた。それを毛嫌いする人も居るが好む人も居る。大事なのは多様性でありファンは好きな方を選べばよい。

 何よりドリームトロフィーターフを見に来た客もダートプライドを見に来た客も同じようにレースに対する期待を膨らませ高揚感に胸を躍らせている。それはレースの世界に身を置いた者にとって嬉しいことであった。

 するとデジタルの両親は気分が良くなったようで、一同はベンチから立ち上がりレース場に向かう。その足取りは向かう人々の高揚感にあてられたように無意識に弾んでいた。

 

 5人は関係者席から入場しレーシングプログラムを受け取る。レーシングプログラムはどのレース開催日にも無料で配られ、その日行われるレースの情報が記載されている。

 GIで配られるレーシングプログラムは内容も豪華になっており、過去のレースの回顧やページの最後には名選手の肖像とレースに所縁のある選手の肖像と詩的な言葉が書かれている。

 

「へえ」

 

 プレストンは思わず感嘆の声を上げる。GIだと内容も豪華になる日本語版と英語版の2つがあった。普通は日本語で書かれたレーシングプログラムしか作らず、海外のウマ娘が多く出走するジャパンカップでも他の言語で書かれたものは存在しない。

 それをグレードレースですらないエキビションレースで用意するとは相当力を入れていることを実感する。そして英語版も日本語版と比べても同じぐらいに減っており、ここでも多くの海外の人が観戦しに来ていることが分かる。デジタルの両親は英語版をとり、プレストン達は日本語版をとる。

 内容は中央ウマ娘協会のレーシングプログラムとは違い、ページの半分はダートプライドの記事だ。プロフィール、インタビュー、数ページのマンガ、そして名選手の肖像をそのまま流用したようなものまである。

プレストンはダートプライドを走る6人の出馬表のページに目を移す。

 

 サキー 主な勝ち鞍 インターナショナルS(GI)凱旋門賞(GI)ドバイワールドカップ(GI)キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GI)レーティング135

 

 ティズナウ 主な勝ち鞍 スーパーダービー(GI)サンタアニタH(GI)クラークハンデH(GI)BCクラシック(GI)2勝 レーティング128

 

 ストリートクライ 主な勝ち鞍 スティーヴンフォスターH(GI)カーペンターH(GI)ジョッキークラブゴールドカップ(GI)BCマラソン(GI)レーティング130

 

 アグネスデジタル 主な勝ち鞍 マイルCS(GI)南部杯(GI)天皇賞秋(GI)香港カップ(GI)フェブラリーステークス(GI) レーティング125

 

 ヒガシノコウテイ 主な勝ち鞍 東京大賞典(GI)南部杯(GI)レーティング122

 

 セイシンフブキ 主な勝ち鞍 ジャパンダートダービー(GI)かしわ記念(GI)レーティング121

 

 改めて凄いメンバーだと実感する。特に世界4大GIの勝者が揃っているのは壮観であり、一緒にレースを走るのは史上初だ。

 そしてこのページではレーティングの要素を強く紹介している。レーティングとは大雑把に言えば選手の強さを数値化したものだ。

 勿論これが絶対的な指標というわけではなく、ヨーロッパ以外のウマ娘の数値が低くなりがちなど様々な問題点があるが一応基準となっている。

 今日初めてレースを見るという観客も多く、専門家があれが凄いこれが凄いと語るより、数値を出したほうが分かりやすいという意味ではレーティングを紹介するのは悪くはない。

 解説にはレーティングについて簡単に解説され、130を超えれば世界的名選手と評価される。他にも歴代レーティング上位者が書かれ、歴代はダンシングブレーヴの141である。

 

 サキーの135は現時点で歴代のトップ10に入っている。世界4大GIのうち3つに勝ち、レース内容も素晴らしく妥当といったところだ。

 ティズナウのレーティングは復帰戦のクラークHの内容がイマイチということでポイントを下げられて128となった。

 映像から見れば一線級ではないウマ娘にハナ差、基本的に着差がつかないとレーティングは上がらないので仕方がないと思われるが、あのレースでは自らハンデを課しており本来ならもっと着差がついていた。本来なら130クラスであるというのがプレストンの私見だった。

 ストリートクライは連勝に加えてBCクラシックの代わりに好メンバーが集まったBCマラソンでは3バ身差で完勝している。サキーとは同等のレーティングを与えられてもおかしくは無いのだが、アメリカのレースということで評価を下げられたのだろう。

 デジタルの125は日本所属としては高い方で有り、ドバイワールドカップでサキーと接戦の2着が評価されて128は貰っていたのだが、南部杯で負けたので下げられた。

 ヒガシノコウテイの122、セイシンフブキの121だが日本のダートウマ娘としてはかなりの評価で、南部杯でデジタルに先着したことでこのポイントを与えられた。

 

 5人はレーシングプログラムを読み終え、軽く大井レース場見学をした後にデジタルに激励の言葉をかけようと控室に足を運ぶ。だがその足は控室前で止まる。

 扉の前にはチームプレアデスのメンバーとOGのダンスパートナーとトレーナーが居た。プレストンが代表するように声をかける。

 

「どうしたんですか?」

「いや~後輩と一緒にデジ子に声をかけようとしたらさ、気色悪い顔で壁を凝視しててさ。思わず悲鳴をあげちゃったよ。とても声をかけられる雰囲気じゃなかった」

「きっと妄想タイムに入ってますね。この時のデジタルは完全に自分の世界に入ってるんでよほど大声で声かけないと反応しないですね」

「らしいね。後輩達からデジタルのお楽しみ時間を邪魔しないほうが良いって言われた」

 

 プレストンは扉の向こうの様子を想像する。完全に弛緩しきった笑みを浮かべているデジタル、初めて見た人が悲鳴をあげるのも無理はない。

 

「一声かけようと思ったがデジタルの至福の時間を邪魔するのも忍びない。ボク達も退散しようか」

「すまんな。何か伝言があれば預かるが」

「ボク達がかける言葉はきっとトレーナーと同じだろう。ついでに伝えてくれ」

 

 オペラオーは踵を返し歩き始め、ドトウとプレストンもお互いの顔を見合わせてオペラオーの後についていく。デジタルにとってレース前にどんな言葉が最良なのか、その答えは3人とも同じで、トレーナーも同じ事を考えていると確信めいた感覚が有った。

 

「じゃあ、私達も行こうか、ぞろぞろ入って喋ってもしょうがないし。パドック前に陣取ってデジ子に大声援を送らないとね。白先生伝言任せた」

「伝言って何や?」

「それは察してよ」

「思いは言葉にせんと伝わらんぞ」

「大丈夫、私とチームプレアデス全員がかけようと思った言葉は白先生が思っている言葉だから」

 

 ダンスパートナーは手をヒラヒラと振りながらチームプレアデスのメンバーを引き連れて踵を返す。

 

「奥さんと旦那さんはどうされますか?折角来たんですから声をかけていかれては?」

 

 デジタルの両親はトレーナーの言葉に柔和な表情を浮かべながら首を横に振る。

 

「いいです。デジタルの楽しみを邪魔したくありませんから」

「それに私達がかけようとする言葉はエイシンプレストンさん達やチームメイトの皆さんと同じですから、トレーナーさんに託します」

 

 ドバイワールドカップ前にお互いが思う言葉をかけたが今思えば適切ではなかった。言うべきは胸中に浮かんでいる言葉だ。それがデジタルにとって最良の言葉であり、友人やチームメイトやトレーナーの胸中にも同じ言葉浮かんでいるだろう。

 デジタルは出会いに恵まれた。2人はその巡り合わせに感謝しながら踵を返し戻っていく。

 

 それからトレーナーはパドック開始を告げる係員が来るギリギリまで控室前で待機した。もし皆がかける言葉と自分がかけようと思った言葉が違ったらどうしよう。そんな不安にかられながら時間を潰す。

 すると係員が控室にやってくる。トレーナーは係員に少し待ってもらうように声をかけたのち、部屋をノックする。案の定反応が無いので最後通告のように声をかけた後部屋に入る。

 部屋に入った瞬間粘着質な悪寒が走る。そこには椅子に座りながら妄想の世界にどっぷり入り込んだデジタルの姿が有った。

 妄想すると周りの人々が嫌悪感を抱くオーラのようなものを放出する。その嫌悪感には馴れたつもりだったが、それでも悪寒を抱いてしまった。

 それはより深く妄想の世界に入り込んでいる証でもあり、調子の良し悪しが分かるある種のバロメーターでもある。勝利中毒から脱してから初めてのレース、調子は絶好調である。

 

「デジタル!パドック始まるぞ!」

 

 トレーナーは大声で呼びかけ肩を掴み大きく体を揺する。すると体をビクリと震わせて振り返る。

 

「白ちゃん!?ビックリした。驚かさないでよ。それにもう少し優しく呼んでよ」

「優しくとったら一生妄想の世界のままや、ずいぶんとお楽しみだったな」

「まあね。様々なシチュで妄想したけど、どれもこれも最高だよ」

「それは良かったな、けどあんまりハードル上げるとがっかりするぞ」

「大丈夫、皆ならアタシの想像なんて軽々と超えるぐらい輝いて煌めいて、最高の姿を見せてくれるから」

 

 デジタルは興奮さめやらぬという具合に鼻息荒くしながら断言する。その表情は今まで見た中で最も喜びに満ち溢れていた。

 レース前にイメージトレーニングをする選手は多い、その日のバ場コンディション、相手がとる作戦、それらをイメージし、どこで仕掛けどのように動くかと勝ち筋を探していく。

 重要なのは正確に情報をイメージすることである。人は自然と自分が都合の良い現実をイメージし、都合の良いレース展開で勝つ姿を想像してしまう。これではイメージトレーニングの効果は弱い。

 だがデジタルがしたのはイメージトレーニングではなく妄想である。

 妄想とは自分が最も都合の良く、気持ちが良いイメージを想像することだ。実際考えられるなかで最も都合の良いイメージを想像した。それでも現実は妄想を軽々と超えると言いのけた。

 

 想像より楽しかった。想像より面白かった。想像より美味しかった。

 

 人は自分が想定した設定を超えることに喜びを覚える。

 例え同じ高さを飛んだとしても低いハードルでも超えれば喜び、高いハードルに設定して下回ればガッカリする。もし自分が考えられる最高値のハードルを越えてくれると確信する出来事があればそれは至上の喜びだろう。

 

「そろそろパドックやし、チームの皆やダンスパートナーやプレストン君やご両親からの伝言をチャチャっと言っとくわ」

「皆来てたの?声かけてくれれば良かったのに」

「お前の妄想タイムを邪魔せんようにって気を使ってくれたんや。感謝せえよ」

「そうなんだ。それで伝言って何?」

 

 トレーナーは問いに答える前に深呼吸する。自分の言葉は皆の総意なのだろうが?様々な不安が浮かび吐く息とともに外に出す。

 

「今を全力で楽しんでこい」

 

 デジタルには様々なものが纏わりついている。金銭、日本の誇り、レイ、勝ち鞍、思い出、ファンの声援、周りへの感謝の念、今後の進路、

 それらをプレッシャーや期待を力にできるウマ娘もおいて、デジタルも同様に力にできるが本来の姿ではない。全てのしかかるハンデにすぎない。

 ただウマ娘を感じて快感を得るという自分の欲の為、過去も未来を考えず我欲を満たすために今に全てを注ぐ。それが最も幸福なことであり、自身を含めた皆の総意である。

 

「もちろん!」

 

 デジタルは歯を見せてニカっと笑う。ドバイではサキーを感じるという欲の為に走ったが、トレーナーの期待、友人の期待、業界の期待、日本中の期待という皆の想いも力に変えた。だが今回はそれらを最初から全て捨て、全て自分の欲の為に走ると決めていた。

 だが決意を固めながらも、自分を理解し支えてくれた人々に感謝の念を捨てるのは流石に自分勝手過ぎると考えていた。だが皆から全て自分の為に走れとお墨付きを得た。ならば迷う必要なし!

 デジタルはスキップ交じりでパドックに向かった。

 

───

 

「見てください。各レース場は超満員です」

 

 スマートフォンの画面にはレポーターとレース場を埋め尽くす観客が映る。画面に映る観客達の顔は祭りの高揚感にあてられたように皆笑顔だ。

 ヒガシノコウテイは画面に映る光景を見て喜びを噛みしめる。

 出走前のウマ娘達は控室で思い思いの時間を過ごす。レースのシミュレーションをする者、音楽を聴いてリラックス、あるいはテンションを高めていく者など様々である。

 そしてヒガシノコウテイはTV番組を見ていた。見ているのはテレビ夕日で放送されているダートプライドの特番である。番組は出走ウマ娘の紹介から始まり、今は地方の各レース場に中継を繋げている。

 今日は全ての地方レース場でダートプライドのパブリックビューイングを行うと同時にレースも開催し、其々新設の地方重賞をするなどして地方レースの祭典JBC以上のビッグイベントにしようと地方一丸となって取り組んでいた。

 よりイベントを盛り上げるために各地方レース場に関りが有るウマ娘達をプレゼンターとして呼んでいた。

 

 川崎レース場には南関東三冠ウマ娘ロジータ。

 

 浦和レース場には浦和から中央に移籍し、GIマイルCSと安田記念を勝利したマイルの雷帝トロットサンダー。

 

 船橋レース場にはアブクマポーロ

 

 盛岡レース場にはトウケイニセイとメイセイオペラ

 

 笠松レース場にはオグリキャップ

 

 園田レース場にはサンバコール

 

 まさに歴代地方ウマ娘レジェンド勢ぞろいといったところだ。

 

 メイセイオペラ達の広告塔としての役割は大きく、その姿を一目見ようと一度離れた地方ファンを呼び寄せた。

 だが世間的に言えば知る人とぞ知る程度だ。今日多くの客を集めたのは偏に各レース場のスタッフが趣向を凝らし、客達を楽しませようとした成果だ。改めて各地方レース場のスタッフに感謝の念を抱く。

 画面には地方のレジェンドウマ娘達がヒガシノコウテイとセイシンフブキへのメッセージが流れる。

 

───応援している。頑張れ。期待している。地方の強さを見せてくれ

 

 メッセージを聞くたびに心臓が高鳴り血潮が湧き上がる。多くの人が自分に期待し夢を見ている。その大きな想いは時には重圧になることもある。だが全て力に変える。

 一つ一つのエールが内に秘めていた火の火種となり、火力を増す。そして最後にメイセイオペラがエールを送る。

 

『ヒガシノコウテイ選手、貴女は地方のウマ娘とそのファンにとって夢です。勝って夢を見させてください。そして地方は素晴らしい、凄いんだと胸を張らせてください。絶対に勝って!』

 

 ヒガシノコウテイの心臓が高鳴る。

 

 絶対に勝て。

 

 メイセイオペラはこのような強い言葉を吐く人では無い、強い言葉を吐くことで相手に過度なプレッシャーを与えてしまうことを恐れる。だが敢えて強い言葉を吐いた。

 それは信頼、ヒガシノコウテイなら強い言葉を吐いても潰されず、想いを力に変えてくれる。何より夢を見させてくれると願いを託した。

 メイセイオペラは姉のような存在であると同時に憧れの存在であった。

 いつか追いつきたいと思いながらも弱音を吐き情けないところを見せてきた。きっと頼りない妹のような存在と思っていただろう。だがエールを聞いて初めて隣に立てたような気がした。内に秘めていた火は炎となった。

 

「絶対に勝つ!地方に育てられたこの体は!この技は!この心は誰にも負けない!私が世界最強だ!」

 

 内気で奥ゆかしい少女が初めて口に出した強い言葉、その強い言葉は控室に反響し続けた。

 

───

 

 セイシンフブキは携帯電話の画面から流れるレース映像を食い入るように見つめる。

 画面では先頭を走る青鹿のウマ娘を2番手の葦毛のウマ娘が猛追する。実況は2人にフォーカスを当て、画面の映像も2人に寄る。その映像を見ながら画面の端に映る他のウマ娘の様子をつぶさに観察する。

 勝敗について興味はない、ならば何の興味を持って見ているかというと大井レース場のダートコンディションだった。

 その日のダートコンディションは本バ場入場である程度確認できるが、ゲート位置の関係でそれはスタンド前のダートしか確認できない。

 ダートプライドは大井レース場を1周しなければならず、各コーナーや向こう正面のダートコンディションを確認することはできない。ならば他人に確認してもらえばいい。

 今日の1レースからの映像を見て他のウマ娘達のコーナーの走り方や直線の伸びを見ればある程度は把握することが出来る。これらの作業は他のウマ娘も行うがその精度は群を抜いていた。

 

 セイシンフブキはダートの走り方を熟知し、世界で最も日本のダートを極めていると言っても過言では無い。

 自分が極めているということは他人がどれだけ極めていないも分かる事である。

 他のウマ娘が走る映像を見て、その走り方とコーナーのスムーズさや直線の伸びを見ればおおよそのダートコンディションを把握できる。

 この芸当はダートについての成熟度と、砂質や天候についての圧倒的な知識量を要しなければできない。文字通りダートプロフェッショナルのみにできる芸当である。

 目を瞑りシミュレーションを開始する。傾斜、雨風による砂の流動、砂の渇き具合、全ての情報を吟味して最も走りやすいコース、ゴールデンレーンを割り出し始める。

 現時点ではバ場コンディションは良だが、一昨日の雨の影響で第1レースの時点では稍重だった。

 ダートの渇き具合を判別するには深い知識が必要である。外国勢はもちろん、アグネスデジタルもゴールデンレーンは見つけられないだろう。見つけられるのは自分とヒガシノコウテイぐらいだ。条件はこちらが有利だ。

 

「師匠、時間……」

 

 アジュディミツオーは言葉を詰まらす。パドックの時間だと呼ぼうと扉を開けた瞬間、汗が吹き出し寒気が襲う。息苦しい、この場の酸素濃度が急激に下がった錯覚に陥る。

 パドック前に呼び出すのはアジュディミツオーの役目でありレース前に何度もしてきた。

 その度に控室でひりつくような空気を発し、緊張を強いらせられていた。だが今までとは比べ物にならないほどの圧力だった。

 今すぐにでもこの場から立ち去りたい。脳は撤退の命令を下すが体が命令に逆らい踏みとどまらせる。アブクマポーロから受け取った伝言も有る。自分自身も伝えたい言葉も有る。それを伝えないままパドックに行かせるわけにはいかない。

 だが言葉は全く出てこない。その間にセイシンフブキは出口に向かって歩き始め、アジュディミツオーの横を通り過ぎようとする。

 

「師匠!頑張ってください!」

 

 アジュディミツオーは振り絞るように声を出す。アブクマポーロの伝言、レース場の客入り、観客の盛り上がり、激励の言葉、託す願い、伝えたいことは山ほど有ったが、考えが全く纏まらず絞り出したのがこの言葉だった。簡潔な言葉だが、山ほどあった伝えたい想いを全て詰め込んでいた。

 セイシンフブキは立ち止まると拳をアジュディミツオーの心臓に当てる。

 その瞬間息苦しさや圧迫感は嘘のように消え失せ、いつもとは別人のように穏やかな顔をしていた。その顔を見て自身が込めた想いを全て汲み取ってくれたと感じていた。そして穏やかな顔から何か覚悟を決めたような神妙な顔を浮かべながら語り掛ける。

 

「アタシが目指す道の先は世間がダートの凄さを認め、芝と同等かそれ以上の立場に立つことだ。その道は果てしなく険しく、様々な障害が立ちふさがるだろう。だがそれは全てアタシが排除する。だからお前は黙ってついてこい」

「はい!」

 

 セイシンフブキはその返事に僅かに口角が上がる。だがそれは一瞬で、すぐさま殺気のようにひりつくような空気を纏い部屋を後にした。

───

 

「マグレガー、次は階級を上げて試合するんだって」

「相手は?」

「ジョンソン、あいつの試合は面白いし楽しみだな」

 

 ストリートクライとキャサリロは肩を寄せ合いながら携帯電話の画面に映る動画を見ていた。

 2人は世紀の一戦に臨む選手とは思えないほど緊張感の欠片も無かった。まるで学校帰りの暇つぶしに家に遊びに行った友人同士のようで、控室に居ながら気の置けない友人の部屋に居るようにリラックスしていた。

 他のアスリートが見れば真剣みが足りないと苦言を呈するかもしれないが、ストリートクライにとって不安や緊張という要素をすべてを取り除いたこの空間は心地よく、レースでベストなパフォーマンスが出せる状態だった。そしてこの空気を作り出せるのは親友のキャサリロただ1人である。

 

「そういえば今年の予定だけど、AコースとBコースとCコースが有るけど、どれがいい?」

 

 キャサリロはついでと言わんばかりに書かれたファイルを渡し、ストリートクライはパラパラとめくり、1枚のファイルを手渡した。

 

「Cコースか、生き急ぎすぎだろ」

 

 キャサリロは思わず苦笑する。前々日会見で全てのカテゴリーの主要GIへの勝利宣言、それを達成する為のローテーションが書かれていた。3つのローテーションの中でCコースは最も過酷な日程だった。

 世界四大4大タイトルに加えて天皇賞春や香港スプリントなど芝長距離、マイル、スプリント、ダートマイル、ダートスプリントのカテゴリーのGIも走り、各国を転戦する厳しいローテーションだ。

 レース数はGI12戦、その数は鋼のウマ娘と称され年間GI6勝の記録を作ったジャイアンツコーズウェイが走ったレース数より多い。

 まさに殺人ローテーション、流石に選ばないだろうと冗談半分に作ったがまさか選ぶとは思わなかった。

 

「早く、私達が凄いってことを証明したい……」

「案外欲張りだな。まあ、あくまでも理想のローテだからな、少しでも調子が悪くなったら止めるからな」

「大丈夫、私達なら耐えられる……」

 

 ストリートクライは自信満々に言い放つ。ジュニア級の時に怪我をして、決して怪我に強いウマ娘ではない。

 だがキャサリロがスタッフに加入してからは全く怪我も無く、コンスタントにレースに出走している。それは体質が強くなったことも有るがキャサリロの存在が大きかった。

 怪我をしたのはキャサリロがゴドルフィンを去ってからのことだった。病は気からという言葉が有るように、キャサリロと一緒になり上がるという目標が出来たことで気力が充実し、身体が強くなっていた。

 

「うん?ここらへんちょっと乱れてるな。ちょっと頭貸して、あとこれ持って」

 

 キャサリロは何かに気づくとバッグから櫛と手鏡を取り出すと、手鏡をストリートクライに渡し、後ろに立つと左右非対称に伸びた左側の横髪を櫛で整える。

 一見無造作に見えるが本人なりのこだわりが有るようだが、本人では上手く整えられないのでいつも代わりに整えていた。

 

「折角の晴れ舞台だ、身だしなみは整えないとな」

「うん……」

「しかし、自分で整えらないなら切っちゃってよ。左右非対称って何かゾワゾワするんだよね」

「それはキティのお願いでもダメ……」

「冗談だよ。ここが唯一のオシャレポイントだもんな。あとこの間さ……」

 

 櫛で髪を整えながら一方的に喋り続け、ストリートクライは黙って聞きながら身をゆだねる。2人の間には穏やかな空気が流れていた。

 

「ストリートクライ選手、パドックの時間です」

「はいはい~、ちょっと待ってください~」

 

 キャサリロは係員の声に返事しながら最後の仕上げとばかりに急いで櫛で髪を整える。

 

「これでどう?」

「うん、問題無い……ありがとう」

「よし、行ってこい」

 

 キャサリロは激励とばかりにストリートクライの背を叩き送り出し、悠然と歩きながら控室を後にする。

 全てのカテゴリーの主要GIに勝利すると言い放った日からキャサリロは信じ続けた。

 クライならやれる。私達に不可能は無い。少しでも疑えば道が途絶えると強迫観念を抱え自己暗示をかけるように信じ続けた。

 そしてその自信に満ち溢れた後ろ姿を見た瞬間、今まで感じてきた強迫観念が嘘のように消え、全てのレースに勝てると確信めいた予感が過っていた。

 

───

 サキーは控室にある椅子に座らず、目を閉じながら胡坐で床に座りイメージトレーニングをしていた。

 イメージトレーニングには様々な種類が有る。成功した場面をイメージし疑似的な成功体験をすることで自信をつけ気分の高揚を促す方法、実際に起りうる出来事をイメージし想定して本番に備える方法などがある。

 大まかに区分すれば前者はアグネスデジタルがおこなったもので、サキーが行っているものは後者である。

 後者のイメージトレーニングは様々情報を加味し、状況に応じて最適な行動を選択し勝利への道筋を模索する方法であるが、そのイメージトレーニングは違っていた。

 イメージするのはどのようにして行動して勝利するのではなく、どのように行動して全ての出走ウマ娘が全力を出させる事だった。

 自分が持っている実力を全て出すのもまた実力である。ペース判断を間違った、コース取りを間違った、集団から抜け出せなかった。明らかに競争能力が高かったウマ娘がそういった要因で負けたレースは星の数ほどある。

 競争能力だけでは無く、ペースを判断する思考力、そしてアクシデントに巻き込まれない運の強さ、そういった全ての要素を競い合うのがレースである。たらればは存在せず、着順掲示板に表示された結果だけが真実である。

 だが全力を出せなければ悔いが残る。それは当事者や関係者にとって不幸な出来事であり、全てのウマ娘の幸福を望むサキーにとって好ましいことではなかった。

 只でさえレースに勝てば敗者の幸福を奪うことになる。ならば少しでも不幸になる要素を取り除くことは当然だと思っていた。

 

 サキーは神ではない、当人達のレース前の準備不足による後悔等を拭い去ることはできない。出来ることはレースにおいて相手の実力を出させないような仕掛けや策を見破り、他のウマ娘達が全力を出させない状態を防ぐことだ。

 相手の実力を出させないのも実力である。その考えを否定するつもりはないがポリシーがそれを許容しない。

 デジタルのように勝利以外を求めているわけではない。他のウマ娘と同じように勝利を最優先事項にしている。だが同等に勝利を得る過程を重視している。

 業界の象徴となり多くの人の目をレースに向けさせ、多くのウマ娘や関係者を幸福にさせる為にレースに勝つだけでは足りない、人の心を揺さぶる名勝負を演じなければならない。

 名勝負とは全てのウマ娘が全力を出し切っての僅差の勝負だ。そのためには相手に全力を出し尽くしてもらわなければならない。

 相手の為と自分の為に形成されたポリシーは強固のものとなる。そのポリシーによってレースに負ければ元も子もなく、手抜きなど舐めプなど罵られるだろう。だがこのポリシーを変えるつもりは欠片もなかった。

 故に相手の研究を怠らない、相手の実力を出させない為では無く、相手に全力を出させ、相手の後悔を脱ぐいさり自分の願望を満たすために。

 目を開けると同時に勢いよく立ち上がる。考える限りのシミュレーションを全てを済ませた。あとはそれぞれが全力を出してくれることを願うのみだ。

 

「サキー選手、パドックの時間です」

 

 係員の呼びかけに応じ部屋を出てパドックに向かった。

 

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『ペイトリオッツがスーパーボウルを制しました!4Qで21点差をひっくり返しました!この勝利は歴史に語り継がれるでしょう!』

 

 携帯タブレットの画面には逆転劇を演じたエースQBのフレイディが喜びを爆発させる姿が映る。

 先日に行われたアメリカスポーツにおいて最大のイベントであるスーパーボウルが行われた。その試合でティズナウと親交があるフレイディが見事に勝利した。

 勝利したことも素晴らしいが特筆すべきは試合内容である。

 相手の守備や試合中にレギュラー選手が怪我で交代するなど劣勢を強いられていた。多くの選手は諦めかけていたがフレイディは決して諦めなかった。強いリーダーシップでチームメイトを鼓舞し、勝利に導いていた。

 以前に出会った時に自分のレースを見て奮起したと言ってくれた。そして自分もまたフレイディの活躍を見てエネルギーを貰う。素晴らしい好循環である。

 その後もアメリカのスポーツ選手が活躍した映像を見て、モチベーションを上げ続ける。これがレース前の過ごし方である。

 ティズナウはレース前のイメージトレーニングは一切行わない。相手がどう動き何を仕掛けてこようが自分のレースに徹すれば、勝利は揺るがないと確信しているからである。

 成功した場面をイメージも一切行わない。このレースに勝つことは確定事項であり、アメリカのウマ娘以外に負けることなど太陽が西から東に登ることのようにあり得ないと確信しているからである。

 圧倒的な自己肯定感と自信、これがティズナウを支える強さで有る。

 

「ティズナウ選手、パドックの時間です」

「OK、すぐ行く」

 

 ティズナウは係員に促されて控室を出てパドックに向かった。

 


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