アメリカのレース業界では日本の中央ウマ娘協会のような1つの組織がトゥインクルレースを運営しているわけではなく、州ごとにウマ娘協会があり独自に運営し、日本の地方ウマ娘協会に近い。
そして地方のようにレース場近くにトレーニング場があり、アメリカの広大な土地故か1つ1つがトレセン学園並の広さを有している。
アメリカは日本と比べ遥かに領地が広く各レース場で行くにせよ、海外遠征並の移動距離と環境の変化が起こる。
環境に馴れるという意味でも早めに現地入りしてトレーニングするのがベストであるが、大半のウマ娘は遠征先では拠点となるような場所もなく、勝手が分からない状態では効率的なトレーニングができず、調整のみになるのが現状だ。
だがゴドルフィンでは主要のレース場に管轄のチームが有り、遠征してきたゴドルフィンのウマ娘を受け入れみっちりとトレーニングできる環境で、アウェイの不利を限りなく少ない。
サラトガレース場近くにあるトレーニング場、数週間後に行われるGIホイットニーハンデに向けて、ゴドルフィンのウマ娘達が集まりレースに向けてトレーニングしていた。
メニューを順調にこなし最後にダートコースで模擬レースを実施する。ゲートには地元のレース場でトレーニングする者やレースに出走するウマ娘が集まる。その中にストリートクライも居た。
ゲートが開き各ウマ娘は一斉にスタートする。出走ウマ娘は9人、ストリートクライは即座に葦毛のウマ娘すぐ後ろのポジションを取る。
このレースでは彼女をマークすることが目的である。マークの仕方としては自分の存在感を相手に伝えプレッシャーを与える方法と、極力存在感を消し出し抜く方法が有る。
今回は後者を選択し、目の前のウマ娘と呼吸を合わせ足音も出来るだけ合わせるように同調する。
葦毛のウマ娘が先頭を進む。彼女の脚質は逃げであり、最初からハイペースで飛ばし力尽きた者から沈んでいくアメリカのレーススタイルを体現している。
第1コーナーに入ると葦毛のウマ娘が僅かにバランスを崩し減速する。その隙を見逃さんと他のウマ娘が抜きにかかるが葦毛のウマ娘もそうはさせないとペースを上げてハナを守る。
第2コーナー第3コーナーでも同じように葦毛のウマ娘は僅かにバランスを崩れ減速し、それでもハナを守ろうとペースを上げる。
そんなレース展開が続けば力が尽きるのは自明の理であり、葦毛のウマ娘は直線に入ってすぐにズルズルと後退していく。
その隙を待っていたかのように、後方6番手の栃栗毛のウマ娘が一気にスパートをかけてストリートクライの横を抜き去ろうとするが、バランスを崩したのか外にヨレてしまう。
即座に態勢立て直し猛追するが先頭を走っていたウマ娘を捉えきれず2着で終わる。葦毛のウマ娘は7着、ストリートクライは9着だった。
模擬レースが終わり各ウマ娘は息を整えるなか、ストリートクライはレースを見ていたトレーナーの元に歩き始める。そしてストリートクライの友人であるキャサリロも同じように近づいていく。
「まず、コーナーを曲がるとき……重心が左にユルユルです……私がやらなくてもやられます」
「えっと、まずアラバマスラムですが、コーナーを曲がる際に重心が左に僅かに寄っているみたいです。クライほどの技術が無くとも突発的な接触で体勢が崩れタイムロスに繋がります」
「そして……仕掛ける時にグワッとなって右肩がバッとなるので分かりやすいです……」
「メテオザッパーは仕掛ける時に息を大きく吸い込む癖があり、右肩が僅かに動くみたいです」
「そうか、あとで分析班と検証しよう。集合!」
トレーナーが声をかけると模擬レースを走っていたウマ娘が駆け寄りレースの講評が始まる。
各ウマ娘達に良かった点と悪かった点を述べていき、最後に葦毛のウマ娘アラバマスラムと栃栗毛のウマ娘にメテオザッパーの講評に移る。
「まずはアラバマスラム、あそこまでペースが乱されれば共倒れになるのは分かるだろう。逃げで押し切りたいのは分かるが状況を考えろ、状況に応じてペースを落とし時には差し切ることも想定しろ」
「はい」
「次にメテオザッパーだが、仕掛けの予備動作が大きい。今までなら問題なかったかもしれないが、上のステージで走れば即座にブロックされるぞ」
「はい」
トレーナーの講評に熱が入る。彼女らは次のホイットニーハンデでも上位人気が予想されるゴドルフィンの期待株である。
ストリートクライ達はトレーナー達の輪から外れ様子を見守っていた。
「お疲れクライ、相変わらずキレキレだな」
「1着を目指さないで崩しに専念にすればあれぐらい……」
ストリートクライはキャサリロから貰ったタオルで汗を拭きながら涼し気に言う。講評が始まると模擬レース2本目が始まり、ストリートクライも準備を始めた。
「今日も疲れたな~ってアタシは走ってないけどな」
「そうだね」
「そこはそんなことないって言えよ」
ストリートクライとキャサリロは冗談交じりの会話をしながらトレーニング場の正門前に向かって行く。これから知人と夕食を食べる約束があった。
トレーニングが終わってもやることが有るので断っても良かったが、わざわざ出向いた相手を無下にできない。それに明日はオフで夕食ついでに少し話す時間はある。
正門に近づくにつれ外で待ち構えている人物の姿が鮮明になっていく。その人物も2人の存在に気づいたのか、手をブンブンと振り存在をアピールする。
「ストリートクライちゃん!キャサリロちゃん!久しぶり元気にしてた!」
「まあまあ……」
「久しぶりだなアグネスデジタル、なんでこっちに来てんだ?」
「里帰り」
デジタルは久しぶりに顔を合わせたのが嬉しいのか、テンション高く親し気に話しかける。
ストリートクライはキャサリロの影に隠れるようにぶっきらぼうに返事し、キャサリロは社交的に応対する。
デジタルはプレストンと今後の人生設計について語り合った後にキャサリロとストリートクライに連絡した。
2人は現役引退した後トレーナーを目指して勉強していると聞いていた。同じ道を志す者として参考になる話が聞けるかもしれない。そして色々と近況を聞いて話したい。
まずキャサリロのツイッターのアカウントに自分のアカウントから会いたいとダイレクトメッセージを送った。ストリートクライはツイッターのアカウントがなく、キャサリロとしか連絡が取れなかった。
そこから連絡を取り合い食事の約束を取り付け、日時を決めると実家のケンタッキーからニューヨーク州に向かっていた。
「それでどこでご飯食べる?一応ピックアップしたけど、2人は行きたい場所ある?」
「アタシ達の行きつけのレストランがある。そこでいいか?」
「ということは、キャサリロちゃんとストリートクライちゃんがいっつも食べているメニューが食べられる!?Yes off course!行く行く!」
デジタルは掛かり気味で返答し2人は若干戸惑いながら了承し目的地に向かう。
「この後はどこに泊るんだ?」
「近くのモーテル」
「翌日はどこか観光するのか?」
「いや、明日には出発する。ちょっとイギリスに行く用事があるから」
「このためにわざわざ来たのか?ご苦労だな、そういえば実家はどこ?」
「ケンタッキー」
デジタルとキャサリロは世間話をし、ストリートクライは2人の後ろで話を聞きながらレストランに向かう。
歩いてから十分程経過するとキャサリロが目的地を指さして誘導する。
そこはアメリカ大衆向けレストランのダイナーで外部にはステンレス製の素材を使用しているせいか銀色で目立っている。中はリノリウムの床に日本のファミレスに近い内装だった
キャサリロ達は迷いのない足取りでテーブル席に座る。2人はメニューを見ずに暗唱で注文し、デジタルは2人と同じもので料金は据え置きでいいので量は半分にしてくれと店員に注文していた。
「なんでそんな注文を?量が多いなら1品だけ頼めば?」
「いや……丁度その2つを食べたい気分でさ、そんな気分の時ない?」
デジタルはストリートクライの質問にアタフタしながら答える。
今の言葉は本音で有るが正確ではない。正確に言えばその料理が食べたいのではなく2人が食べたメニューを食べたいのだ。だがそんなことを言えば気持ち悪がられるのは目に見えていた。
「ない……でもそんな時はキティに頼んでもらって分けてもらう」
デジタルは思わず俯いてストリートクライから目を背ける。
料理を分け合うストリートクライとキャサリロ、お互いに食べあいっこ、妄想が加速して尊い場面が次々に浮かび上がる。恐らく締まりのない顔をしているので、そんな表情を見せるわけにはいかないと俯いていた。
「それで唐突だけどアタシもトレーナー志望で2人の話を聞いて色々参考にしたいんだよね。2人はどうやって勉強してる?あとストリートクライちゃんはランニングパートナーだっけ?どんなことしてんの?」
デジタルは妄想を抑え込み平静を装いながら2人に質問する。調べているうちに2人がゴドルフィンとランニングパートナーとして契約しているのは分かったが、肝心の内容が不明瞭だった。
「まずランニングパートナーは……ボクシングのスパーリングパートナーみたいなもの……」
「模擬レースで一緒に走るってこと?あれって現役の選手同士でやるものじゃなかったっけ?でもストリートクライちゃんは引退してその……」
いくらストリートクライでも現役を引退し、現役選手と同等の力を持っていると思えず調整相手になるとは思えない。
それだったら現役選手同士で走ればいい。デジタルが言葉を濁すなか、キャサリロが心中を察したのか補足の説明を加える。
「模擬レースで本番を想定して本命の相手を徹底的に邪魔して、修正点を指摘するのがクライの役目だ。それで本命は模擬レースを通して妨害に対する対応力を身に着ける。クライには崩しがある。クライ以上にこの役目を全うできるウマ娘は居ないからな」
崩しとはスパートのタイミングで体勢を崩してタイミングを遅らせる。土のキックバックを相手に当てる。反則にならない程度に進路をカットするなど相手の力を削ぐ技の総称である。
ストリートクライは力が衰えて現役を退いた。だが崩しの技術は全く錆びついていなく、仮にアメリカダート最高峰のBCクラシックに出走しても入念な準備し勝利度外視であればどんな相手でも崩せる。
その力に目を付けたゴドルフィンはストリートクライとランニングパートナーとして契約していた。
「それでレースごとに召集されてアメリカ各地のトレーニング場に行って模擬レースを走る。それがクライの仕事。新しい仕事が見つかって助かったよ。まさに芸が身を助けるってやつだな」
「へ~、それでキャサリロちゃんもそのランニングパートナーの仕事をしてるの?」
「いや、アタシはクライのバーターだよ。持つべきものは友達だね」
「違う!」
ストリートクライは声を荒らげ否定する。デジタルはその様子の変わりように思わず目を丸くしながら視線を向ける。
「私の崩しは失敗すれば相手を怪我させる……そうしないようには崩しの精度を高めないといけない……キティが相手の走りをコピーしてくれて実験台になってくれる……だから私は模擬レースで怪我させないで相手を崩せる……それにキティは私が伝えたいことをトレーナー達に伝えてくれる……」
ストリートクライは懸命に言葉を紡ぐ。キャサリロは卑下してバーターと言ったがそれは断じて違う。
自分なら修正点を見つけてもフワッとしているグワッとするなど感覚的な言葉を言ってしまい上手く相手に伝えられない。しかしキャサリロが自分の言葉を翻訳してくれ相手に正しく伝えてくれる。
もしキャサリロが居なければランニングパートナーの仕事は全うできていない。それを自分だけの実力と勘違いされるのは何としても避けたかった。
「なるほど、キャサリロちゃんも頑張っているからレーシングパートナーが出来てるんだね」
「そう……」
ストリートクライはデジタルが理解した様子を見て満足げな表情を見せる。
一方デジタルは表情筋を必死に抑え込みニヤケないようにする。友の名誉のために口下手なウマ娘が必死に弁解する。何てエモい光景なのだ。
「それでランニングパートナーの仕事以外はトレーナーの勉強していると」
「まあそんな感じ、それでランニングパートナー契約のオプションで研修の一環でトレーナーの手伝いをしてる。けど雑用とかで資料整理とかやらされるから机に向かって勉強する時間はそんなにない」
「へえ~、大変そう」
「それにレースごとに色々なレース場に行かないといけないから移動が地味にキツイ」
「そっか、こっちだとそれがあるのか」
デジタルはしみじみと頷く。アメリカの国土の広さは日本の数十倍はある。
レース場から別のレース場に移動するだけで何時間もかけて移動しなければならない。それを繰り返すとなると心身ともに疲弊する。
「それで2人は元々トレーナー志望だったの?」
「いや、特にそんなことはなかった」
「じゃあ何で?」
「私達が……過去現在未来において最強のウマ娘になれなかったから……」
ストリートクライはこぶしを握り締めキャサリロは唇を噛みしめ俯く。
全てのカテゴリーにおいて最高峰の舞台で勝ち続ける。それが2人の描いた途方もない夢だった。だがダートプライドに敗北し、怪我と衰えによって現役を退き夢を叶えることはなかった。
「でも私達の夢は終わっていない……トレーナーになって過去現在未来において最強のウマ娘を育てる。それを達成できれば………私達は過去現在未来において最強のウマ娘」
ストリートクライは力強く宣言する。確かに現役時代では夢を叶えられなかった。
だが現役時代で2人が培ったものを全て注ぎ込み想いを継承したウマ娘が全てのカテゴリーで最高峰の舞台で勝利する。それはある意味2人の夢を叶えたことになる。
一方デジタルは目頭を押さえながら溢れ出る感情を押し込める。
2人の夢破れたかと思われたが終わってはいなかった。2人の意志を引き継いだウマ娘が代わりに夢を叶える。キャサリロとストリートクライの関係だけでも尊いのに、教え子のウマ娘も加えれば尊さは何倍にも膨れ上がる。
何て尊く感動的なのだ。気を緩めると涙が溢れて止まらなくなる。
「その為に今は下積みだ。ランニングパートナーをしながら各地のトレーナーのトレーニング方法や思考を学ぶ。何だかんだでゴドルフィンは世界屈指の組織でトレーナーも優秀だ。ただ働き当然でも学べるのはありがたい。まあゴドルフィンでトレーナーとして研修を受けられれば良かったんだけどな」
キャサリロは肩を竦める。人間のトレーナーとの間にある不思議な絆が信じられており、多くの場合は人間が務める。
これはオカルトではなく数字の上でも物語っており、ウマ娘のトレーナーの元でGIに勝利したウマ娘はいない。
原因は分かっていないがウマ娘のトレーナーでは強いウマ娘を育てられないことは事実として扱われている。
その事実が有る以上、ゴドルフィンはウマ娘に研修などを受けさせトレーナーにするのは時間とコストの無駄であると判断していた。
本来ならばキャサリロとストリートクライはゴドルフィンの元でトレーナーの手伝いすらできなかった。だがストリートクライの力とキャサリロの交渉によって何とか研修を受けられていた。
「アグネスデジタルは何でトレーナーになりたいの?」
「それは……ウマ娘の皆と関われる仕事がしたいし、現役時代の経験を生かせるかなって」
ストリートクライの質問にデジタルは若干詰まりながら答える。
今の言葉は本心の一部ではあるが全てではない。もし本心であるウマ娘のハーレムを作りたいと言えば間違いなく面接試験で落とされ、他の人も引いてしまう。その為に一般用の受け答えを既に考えておいた。
「アグネスデジタルはトレーナーになれない……」
ストリートクライは突如否定的な言葉を言い放ち、デジタルは思わず視線を向ける。
「参考までに理由を訊いていい、アタシは頭いい方じゃないけど、トレーナーになりたいって気持ちは2人に負けないつもりだし、これからメッチャ勉強するつもりだよ」
デジタルの語気は無意識に荒らげる。唐突に目標を達成できないと言われ僅かに腹が立っていた。
「トレーナーになってからの目標が有るか?」
口を開いたのはストリートクライではなくキャサリロだった。
デジタルは質問に対して言葉が詰まる。プレストンと考えた将来の人生設計ではトレーナーになる為のプランは大雑把に決めたが、トレーナーになってからのプランは決めていなかった。
「目標はゴールより遠い場所に置くもんだ。大概の人はゴールを目標にすると失速する。トレーナーになることを目標にしていたらトレーナーになれないって言いたかったんだろ」
「そう……」
「相変わらず言葉が足りないな、気を悪くしないでくれ、これでもアグネスデジタルを気に入ってるんだ」
キャサリロはストリートクライの首に腕を回しながら茶化し、ストリートクライは誤魔化すように視線を逸らす。
アグネスデジタルはダートプライドで己の全てを賭けて競い合った相手であり、ストリートクライにとってもダートプライドは特別である。破れて多くを失ったが恨みはなく、情すら抱いていた。
そしてウマ娘でありながらトレーナーを目指すという困難な道を歩む同志でもある。
だがこのままではトレーナーにはなれない。なれたとしても現状に満足しいずれクビになると思っていた。
「うぅ~感激!ストリートクライちゃんがそこまでアタシを気にかけてくれるなんて!いや、申し訳なさ過ぎてこの場から消えたい!」
デジタルは予想外の反応に喜び動揺し挙動不審になる。ストリートクライは他のウマ娘にあまり関心を向けていないと思っただけであり、自分に対する助言はとても嬉しかった。
「大げさだな、それより料理が来たぞ」
ウェイターが料理を置いていき3人は食事を開始する。
食事を楽しみながら様々な話題を話した。主にトレーナーについての話題であり、勉強方法や各トレーナーのトレーニング方法などで、デジタルも自分のトレーナーのメニューの作成法やレースでの指示の出し方など知る限りの情報を全て伝えた。
「あ~楽しかった。今日は来てくれてありがとうね。2人も頑張ってトレーナーになって過去現在未来において最強のウマ娘ちゃんを育ててね。もし日本に来ることがあれば出来るだけ手伝うから」
「ああ、日本のジャパンカップに勝ってやる」
デジタルは笑顔で手を差し伸ばしキャサリロは不敵な笑みを浮かべながら握り返す。そして今度はストリートクライに手を差し伸ばす。
「アグネスデジタル……トレーナーになって」
「ありがとうストリートクライちゃん!必ずなるから!」
「そして私達が育てたウマ娘が……貴女が育てたウマ娘に勝つ。そうでないと夢は果たせない……」
ストリートクライはデジタルの手を強く握る。サキーとティズナウや自分を破ったデジタルは間違いなく強くダート世界最強に相応しかった。
そのデジタルの想いを継いだウマ娘を倒す。その時初めて自分が育てたウマ娘は過去現在未来において最強になる。
デジタルは2人を見送りモーテルに向かいながら、ストリートクライの手の感触を思い出す。
随分と過大な評価を受けてしまった。だが自分の育てたウマ娘を倒すことが夢に繋がるならばできる限りの努力しよう。
デジタルはモーテルに着くと荷物を置きベッドに飛び込む。そして天井を眺めながら改めて先程の会話を思い出す。
トレーナーになることをゴールにするのではなく、トレーナーなってから何をしたいのか考えなければならない。
デジタルは暫く思考するが答えは浮かばなかった。焦ることはない、色々な人の話を聞いて答えを導き出せばいい。
将来についての思考をいったん打ち切り、次なる目的地と出会う人物に想いを馳せながら眠りについた。