IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
千冬「おい!もっと言え!というか何だあの格闘技術……」
一夏「りゅーいんさん?そーまにぃってそんなにつよいの?だいどころじゃむてきだけど」
柳韻「皆様初めまして、篠ノ之柳韻です。そうだねぇ一夏君、女性は家庭の留守を守る時すさまじく強かなんだよ……。妻も言う事を聞かない娘を剛腕でねじ伏せていた、その拳速は私を以ってしても見えなんだ…」
惣万「いや、俺男だし。つーかすげぇなアンタの嫁さん」
千冬「地震雷火事親父と言うが、お袋も入れるべきなのでは…」
惣万「(つーか、様子見してたとはいえブラッド族に一撃入れてきた柳韻さんがすげぇんだけど……)」
「んお……?ってて……、アー痛って……」
「惣万!?気付いたか!?」
「そーまにぃ‼」
目を開くと心配そうに俺を覗き込む千冬と一夏、それと篠ノ之柳韻の顔があった。
「石動惣万君。済まなかった。如何な理由があっても君に怪我を負わせてしまった」
俺に向かって頭を丁寧に下げてくれた柳韻さん。良い人だな……、上の娘とかに比べて……。
「それにしても惣万君。君は剣を握ったことがあるね?それに……君の振う剣は……」
あー、やっぱりその話になるか……、まぁいつか千冬には言っておこうと思っていたが……。
「……その事を話す前に、その木陰から覗いてるお嬢さんは一体?」
「おっと……、紹介しようとしていて忘れてしまった、箒。おいで」
その言葉を聞いて、とててててっ、と柳韻さんの後ろに隠れる美幼女、モッピーである。手を振ったら涙目で怖がられた。……人見知りの時期カナー(棒読み)?
「あー、やっぱり怖がられるか……オイ一夏。この子と遊んでいてくれないか?俺達は柳韻さんたちと話があるんだ……」
「?……うん、わかったー。いこ、ほーきちゃん」
「……うむ、分かった」
「気を付けてなー」
「……っ」
俺は一夏たちに注意を促すも、チビモッピーにビクられる……。
「……やっぱ怖がられたか?」
「……」
ポン、と優しく肩に置かれた千冬の手に、思わずときめきクライシス……、いや冗談だ。
「取り敢えずお前の話を聞かせてくれ……」
「話って……あー、何が聞きたい?」
「……全部だ」
「分かった」
―第一章 誕生―
「俺が生まれたのは、中東の街クルディスタンだった……。3107gの赤ん坊だったらしい……」
「いや誰が生い立ちから話せといった!と言うかソレ本当か!?惣万、お前、外国人だったのか!?」
「ま、な。あぁ、だけど遺伝子で言えば日系人の家系だからな?」
「……。待ってくれ、惣万君。クルディスタンと言ったか?」
俺の言った言葉に反応する篠ノ之柳韻殿。その顔色はだいぶ悪い。どうやら俺の生まれがどういうモノか分かってしまったようだ。
「はい……篠ノ之さんの思っている通り、私の生まれた国はあのクルディスタンの紛争地帯です。そして、7歳になるまで、少年兵として従軍していました」
「!?」
その言葉を皮切りに、俺の口からあの姿から目覚めたのちのことが紡がれる……。
硝煙の甘い匂いと血の鉄臭い匂い、爆音、誰かの嘆きの叫び。思い出すだけで吐き気を催す、忌まわしい記憶の断片。
俺の休眠期間が終わったのはエボルドライバーやパンドラパネルを二人の科学者に取られてから、数年が経った後だった。丁度その頃、俺が降り立った中東の国、クルディスタンの内政が悪化し、人を見たら悪魔と思え、と言う標語ができるくらいの地獄と化していた。
だが、当時の俺は何も出来なかった。体も無く、エボルトの能力も憑依程度しか使えなかった。ならば、生き抜くためにはどうするべきか……。
躊躇いは、無かった。
部屋に漂う血と硝煙の匂い。部屋には一人の目の死んだ幼児が立ち、髭面の人相の悪い人間たちが眉間を打ち抜かれ死んでいた。手に持った拳銃が、不思議と軽く感じられた。この日から、俺は生きるために他人を■すことができるようになっていた。
何人もの大人を■した。周囲一面に死体が転がる戦場で、少年兵として敵兵を■した。紛争が一区切りしても、■して■して■して………、それで何とか生き延びてきた。
……軽蔑するか?ならやめておけ、お前はこちらに立っていない。
気が付けば、クルディスタンで指名手配され、難民の様に世界各地をフラフラ移動してまわった。そうすることでしか生きられなかった。
同情するのか……?ならやめておけ、お前はこちらに立っていない。
いつの間にか、身体中には銃創が幾つもできていた。パサパサに痛み、伸ばされた髪の毛は腰を越え、黒だった髪色は灰色に変色していた。目には、もう生気が宿っていなかった。
あぁ。そういえば身体を売り物にしたこともあった。男だろうが女だろうが、どいつもこいつも俺を高値で買ってくれたよ。
なにせ、俺は子供ながらに美しかったからな。戦争上がりの孤児だというのに、そいつらは華美な服やドレスを着飾らせてくれた。まぁ、最後にはズタズタにされて襲われるのがお約束だったが。
そして、やはりそういう筋の連中は暗殺やら身内のゴタゴタですぐ死んでしまう。また次の身売りを頼んだり、時には暗殺者紛いな時代に逆戻りしたりした。
そんな幼少期を過ごすこと数年。お金持ちの趣味はいろいろで、手習いとして様々なことをさせられた結果、皮肉にも食つなぐ技術は豊富になっていた。
道徳を是とする人間たちは、俺のことを唾棄するのだろうか。疎ましい生き方だというだろうか。だが、そんなこと自分でもわかっている。死んだほうがマシだと言われるだろう。
だが、そうやってしか生きられなかったが、その程度が特別死ぬ理由にもならなかった。世界の裏側ではありふれた生き方だった。
自分を守るために自分を■そうとする人間を■してきた。……そこに怒りはなかった。自分が別の立ち位置になっただけのこと。ただ、自分と接する人間は決まって不幸になるのがお約束だった。それだけが悲しくて、哀しかった。
それも当然かもしれない。人を害した人間は、永遠に呪われたまま。因果応報の罰が下るのは明白だ。真理という罪過は、平坦で平等にめぐってくる。
ならば、誰からも見捨てられた方が、誰も不幸にしないのではないか、そう考えた。
だが、それでも、他人を傷つけるよりよっぽどいい。
とめどない豪雨が降る日のこと。
俺はどこかの国の、大通りから外れた小道でゴミ箱から漁った切り傷と血だらけの服を纏い、身体を丸めていた。空腹を紛らわす為にコンクリートの道路から露出した土の泥を掬って口に運ぶ。酷い味だ。しかし、子供の頃から慣れ親しんだ安心感のある味でもある。
そんな俺に降り注ぐ雨が、突然止んだ。一体なんだと視線を上げれば、俺に向かって傘を差し出している女が……。
『……泥食べて美味しいの?』
『いや、ンなわけないけど…』
俺は真っ当な人間とは距離を置くべきで、本当は話すべきではなかった。だが何故か、彼女とは近しい雰囲気を感じて、自然と閉じていた口が開いた。
『あら、じゃあそんなもの食べちゃだめよ。私将来カフェ開きたいのよねー……、よし、お客様一人目を記念し、特別に御馳走しましょう!』
そう言って、彼女は俺の前にサンドウィッチを出してきた。見たところ、売り物ではなく自家製だ。しかし、それは大雑把な料理では決してなく、ピクルスの漬かり具合も鶏肉の厚さや焼き具合も、ハーブの種類も厳選されているのが見て取れた。
貰ったものを食べるのは気が引けたが、既に目の前の女は消えていた。
『あ。食べてくれたんだ。良かった~』
夕暮れ、同じ時刻。雨上がりだったのをよく覚えている。俺は手持ち無沙汰にサンドウィッチの包み紙で折り紙をしていた。日本人らしく、鶴を折った。
『……。疑問があるんだが』
『あら、なに?』
嘆息混じりに聞いてみた。まさかこう何度も来るというのなら、無駄骨でしかない。だったら他人を助けるべきだ。
『どうして俺を助けようとした?無駄なことをしているな…』
『あぁ、よく言われるわ。変わり者だーっ、て』
確かに変わっている。だが、それよりも生き急いでいるようにも見える。まるで、自分を犠牲にして何かを救いたいと願っているように。
『でもさ、似た者同士でしょ?だって……――――自分を損得勘定に入れてない所がそっくり』
『…――――』
理解されたいと思ったことはあまりないが、恐らく今の俺の顔には嫌悪感が半分、安堵感が半分あるのだろう。目の前の女の視線は穏やかだがどこか冷たく、そして少しの嫌悪感が含まれていた。
『行くとこないなら、ウチに泊まってく?……あ、そうよ。良いこと考えた。貴方、私の家に来なさい。そうすればいつでも料理の感想聞けるし…』
『……はぁ』
彼女はこの国では見ることがない、柔和な笑みを湛えている。だが、そいつの纏う空気は命が燃え尽きたような、空っぽな印象……言うならば燃えカスの様な女だった。だが、その空っぽさは、何かを求めているようで……。気が付けば俺は、彼女のその手を取っていた。
『貴方、名前は?』
女は俺にコートを着せ、夕暮れの街を歩き始める。
『私はソラ。石動蒼穹よ。貴方は?』
『……ソーマ。ただのソーマだ……名字は無い』
『そ、分かったわソーマ。暫くになるか、長らくになるか…――――よろしくするのはアナタが決めなさい』
雨の中の会合は原作の桐生戦兎とマスターのものをオマージュしてます。何とか主人公の仄暗い過去を書けたらなぁ、と思ったら時間がかかりすぎ(ry
※2021/01/07
一部修正
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部