IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
惣万「俺、何か目が合ったんだけど」
一夏「へー、どんな人だったかわかる?」
惣万「不器用そうで、苦労人気質で、後始末を押し付けられて、最後に全部裏切られそうな感じの人だった」
一夏「なにそれ、物凄い幸薄な女の人じゃん…。束さんにそんな知り合いいたかな…」
千冬「ま、まぁ何がともあれ運命が動き出したな。これを機に束もマシになってくれればいいんだが……」
惣万「あのハザードラビットが他人の意見を求めると思うか?俺らがわきから口出してどうにかなるのなら世話ないぜ」
千冬・一夏「「…………あー」」
箒「これには一同納得」
原作の通り、白騎士事件は大々的に報道され、早四年。インフィニット・ストラトスは一躍『武力』として有名に……そして徐々に世界は捻じれ始めていた。世間ではふんぞり返って偉ぶる女が現れだし、俺の周囲では……。
「箒ちゃん、体に気を付けてな」
「……ハイ……あの、また来れるなら……ここに来ても良いですか……?」
「あぁ、待ってるよ」
「ほらほら、千冬ちゃんに一夏君も!惣万君と一緒に箒ちゃんとお話しなさい?」
身体が弱くなり、杖をつきながらも、義母さんは後ろの方でもじもじしてる姉弟の背中を押す。
一夏が足踏みをしながら幼馴染の前に立つ。
「あー……、箒……」
「一夏……」
お互いが一瞬、目を合わせると……またそっぽを向く。そっぽを向いたことに罪悪感が湧き、また正面を見て、気まずくなったらその繰り返し。
最初に口を開いたのは箒だった。
「一夏……これで……お別れだな……」
「っ!…………そうなるな……」
「……私がいなくなると……寂しいか……?」
「………………あぁ」
「……そうか……」
そして一夏は、正史では言わない様な、信じられない言葉をその後に続ける。
「お前は俺の中で特別な人の一人だ……その事に今更気付くなんて……俺、本当に馬鹿だよなぁ……」
その言葉は、お互いがお互いの感情を吐露するには十分なもので……。
「ッ……!…………私知ってるよ……これから言うことがただの我儘だってことくらい……」
彼らの感情を爆発させるには十分で……。
「……、……ッ、ゃだよ……っ!」
ぐしゃぐしゃになった頭で箒は有らん限り叫ぶ。
「……嫌だよ!私、まだみんなと一緒にいたい!お父さんと千冬さんと一緒に剣道して、お母さんと石動さんたちと料理をしたいよ!一夏と一緒に想い出をいっぱいつくりたいよ!やだよ!私、この街から出ていきたくないっ!」
「……箒……」
非常に素直に、子供らしく感情を表に出す箒。その姿はあまりにも痛々しくて、だがとても眩しくて……一夏は思わず彼女の肩をとっていた。涙腺が崩壊したように泣きじゃくる箒は、彼の胸に顔を埋める。
「ゃだよぉ…ッ!まだ行きたくない……でも、でもッ……どうしようもなくてっ。だから……、だからぁ……ッ‼」
一夏は服が涙で濡れるのにも関わらず、優しく、だが強く箒を抱き寄せる。
俺は一夏と箒……二人の道がまた交わる未来を知っている……だが、それも俺たちの異分子がいる時点で確定ではない。本当にこれが最後になるのかもしれない。……千冬を見る。いつも通りにも見えるが、長い付き合いである俺には分かる。顔色が悪く、握った拳は自身の無力さにブルブルと震えている。
どうして天災は、自分がしでかしたことを理解できないのだろうか?どうしてこのことが理解できないのだろうか?人間は、脆く、醜く、それでいて一瞬一瞬が眩く輝いていることに……。
「ッ、箒…」
「一夏……っ、い゛ち゛か゛…」
涙でぐしゃぐしゃになった箒は、思い人に酷い顔を見られるのを構わず、真っ直ぐ正面を向いて一夏に願う。
「お願い……っ、いつもみたいに、『またな』って……っ言ってくれないか……っ!『また明日な』って、……っ!」
叶わぬ希望なのかもしれない。二度と重なり合うことのない出会いなのかもしれない。だが、それでも、箒は一夏と一緒にいる明日にいたい。
「ッ、箒…“何時かの”明日……また会おうな…‼」
一夏も応える。必ず会える何時かを思い。
「ッ、……っ!」
「また…、逢おうな。今度、桜を一緒に見に行こうぜ…約束する……」
「うんっ‼」
「今度会ったら、ちゃんと迎えるから…――――『おかえり』って言うからな!」
「私も、『ただいま』って言えるように、頑張るから…!」
彼らは抱き合う。その別れの時が近づくまで。
彼らの上に広がる蒼穹は、いつもよりも高く、清く澄み切っているようだった……。
箒が去ったカフェは、少し寂しい。
そして、俺の身の上にも、新たな別れが訪れる。
身体が悪くなった義母さんが、床に臥せるようになったのは箒が去ってからすぐ後だった。しばらくカフェを開けない、そう千冬と一夏に告げると承知してくれた。
調べてみれば、彼女は戦地にて大量の放射線を浴びていた。彼女が生き急ぐ理由は、ここにあったのかとようやく思い至る。秘密裏に使われた原水爆は、どれも亡国機業と繋がりのあるテロ組織が用いたもの。
予想通りというか、やはりと言おうか。我が義母はどうやら亡国機業と縁深い裏社会の存在であったらしい。
だが、俺は詳しくは聞かなかった。彼女が俺にしてくれたように、俺も彼女と同じことをする。
俺は今日も、白いカーネーションを持って二階に上がる。ベットでエノク書を読み、うつらうつらしている義母さんの傍に花を生ける。その時、ふと義母さんが口を開いた。
「私ね、昔、夢があったのよ」
「あった、って……諦めたのか?」
こうして彼女が俺に昔のことを話してくるとは珍しい。お互いに過去のことには触れないという暗黙の了解があったからだ。彼女はぼんやりとした口調で続ける。
「そうねぇ……そうかもしれないわね……あの夢は私が見るには明るすぎて……私の心の限界を超えて私の全てを燃やしていったわ。それで、私の身体は灰の様になっちゃった。あの太陽の様な夢には届かなかったわ……でも、それでもね、とても暖かくて、麗らかな余生を送ることもできた……」
どこか苦しみから逃れたような安堵の表情で昔を懐かしむ義母さん。気になったので聞いてみた。
「もう夢は無いのか、義母さん?」
そんなこと無いわ、と言うように薄く笑い、首を横に振る。
「そうねぇ……、月並みな事しか言えないけれど、今の心配事は馬鹿息子とその恋仲の子かしら……」
ベットの横にある机の上の写真を見る。そこには別れる前の箒を含めた俺達とnascitaが写った写真が飾ってある。
「ほら、貴方、自分のこと、“人間らしく”って言うでしょ?まるで、自分が人間じゃないみたいに。まぁ人でないとかは関係なくて……それでも愛してくれる人は、必ずどこかにいるはずよ。だから……、“人”になってもいいんじゃない?」
……それは経験から言っているのか……俺の心の中にすとんと納まった。だが、薄暗い過去の俺が、本当にそれでいいのか思ってしまう。
「でも……俺は、どうしても…逆さまな愛しか与えられないんだよ」
そんなことを言うと、義母さんは……、いいや、“母さん”は俺の頭に手を置き、優しくゆっくりと撫でる。
「今の私の夢は……、貴方たちの心が健やかで、空の様に澄み切っていますようにって……、私……願って、いるから……」
次第に途切れ途切れになっていく声。
「だから……」
一瞬、安堵した表情になる母さん。
「死にぞこないの私がここまでこれた……、惣万……、貴方も本当の“愛”を知れたらいいわね……」
そう母さんは笑顔で言うと、彼女はこの世から最初からいなかったかの様に、温もりはあっという間に消え去っていった……。
「分かってるよ……母さん……」
風に乗り、俺の周囲に漂う真っ白な花弁が、開けられた窓から外に流れていく。俺の頬を撫でる息吹が、一瞬母さんの手と重なる。
「……ありがとう……」
その日の蒼穹も、明日の地球を讃えるように美しく、その吸い込まれるような青に、花弁は踊るように舞い散っていったのだった……。
これほど純粋な「モッピー知ってるよ」があっただろうか……。前話の冒頭に少しあらましを足そうかな……。
※2020/12/25
一部修正
蒼穹さんの病状がえげつないことになった……。
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部