IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
ナイトローグ『なんだかんだと聞かれたらァ!』
千冬「……ん?」
ブラッドスターク『答えてあげるが世の情け』
千冬「いやちょっと待て」
ナイトローグ『世界の破壊を防ぐためェ!』
ブラッドスターク『世界の平和を守るため』
ナイトローグ『愛と真実の愛を貫くゥ!』
ブラッドスターク『ラブリーチャーミーな仇役』
ナイトローグ『銀河を駆けるファウスト団の二人にはァ!』
ブラッドスターク『ブラックホール!黒い明日が待ってるぜ』
ナイトローグ『なーんてなァ!』
ブラッドスターク『チャ~オゥ♪』
カイザーリバース『ずる~い、私もやりた~い…』
カイザー『マジですか?』
千冬「……コント集団かこいつら?」
―少し時は遡る―
「も、もしもーし?誰かいませんかぁ?」
千冬と分かれた真耶は店の裏口に周り、安全の確保の確認等を行っていた……だが、そこに。
「……?……どこからか、声が?っそこですか!」
裏口のすぐ近く、食糧庫と書かれた部屋のドアを開ける……すると。
「う……うん……?誰だ……?千冬……?」
「……っ!酷い怪我です!は、早くここから出ましょう!織斑先生も貴方のことを探してますから!」
頭部から血を流し、片腕は恐らく折れているだろう中性的な外見の人物が、鈍色の箱と銀髪の少女を守るように抱えていた。慌てて駆け寄り、声をかける真耶。
「千冬が……来ているのか――――?ッ!マズい!?千冬の所に連れて行ってくれ!」
息をするのも絶え絶えだった彼の顔に焦りが浮かぶ。
「えっ?えっ?」
「早くっ、してくれ…!相手はISと互角に戦えるパワードスーツの怪人なんだ…!生身じゃどうあっても相手が悪すぎる…!」
真耶は悩む、突拍子の無いことを言ってはいるが、その言葉に噓は無いのだろうと。だが、この大怪我だ。下手に動かせばどうなるか……。
「ですが……、っ!?」
「頼むっ……、俺を、千冬を見殺しにさせないでくれ……ッ!」
彼に肩を掴まれた真耶は、その真っ直ぐな彼の瞳に、吸い込まれるような錯覚を覚え……そして。
「……分かりました……では肩に捕まって下さい。なるべく急ぎます!」
『さて、貴女はどうなるのかな……?では……実験を始めよう……!』
「さ、せるか……ッ!」
「!?」
ブレードを振り上げた瞬間、ナイトローグに何処からともなく机が飛んでくる。それを身を翻して躱す黒いパワードスーツの怪人。
『ム……、やれやれ。やっと出てきたか』
「惣万……、っ無事だったんだ、な……!」
頭だけを机が吹き飛んできた方向に向けて、安堵の表情をする千冬。
「せ、先輩!?大丈夫ですか⁉」
真耶と惣万がよたよたと千冬の傍による。
「ボロボロだな、千冬……」
「……お前のせいだろう」
「おっと、確かに……原因は俺だな、すまん」
二人ともボロボロだが、まだ軽口を叩きあえる余裕があった。そこに聞き取り辛いノイジーな声が響く。
『丁度良い、パンドラボックスを返してもらおう。それはこの世界を改変するのに必要なものだ……ハザードレベルが追い付かない貴様等では使いこなせない……』
ナイトローグの言葉に千冬は反応する。
「ハザードレベル……?何のことだ」
「如何やらこの中にある容器……フルボトルの力を引き出す為の人間の水準を示したものらしい……、俺も詳しくは知らない、が……コレを置いていった少年兵時代の知り合いがそんなことを言っていた……」
惣万がナイトローグの言葉を息も絶え絶えに付け足した。そうか、と千冬もぼそり、と呟く。
「え……少年兵?」
「……真耶、そのことはオフレコで頼む。さて、ナイトローグ。今、世界を改変……、とか言ったな?何をするつもりだ……?」
『………………』
ナイトローグは答えない。……いいや違った。
『クッ、クフフ……フハハ……キハハハハハァ‼』
肩を震わせ、嗤っていた。
『決まっている!インフィニット・ストラトス全467機と、軍事兵器“ライダーシステム”による戦争を起こす!この世界は混沌の坩堝と化し、武力による世界の変革が訪れる‼我らファウストがァ……この世界を壊すんだァ‼フハハハハハ……キャハハハハハァ‼』
悪党は嗤う。哄笑を漏らし、次第にその笑い声は大きく、狂ったモノになって行く。
「……なんだと⁉」
「……、ふざけるな……世界を……あんな地獄にするつもりかぁっ‼」
「ライダー、システム……?」
その目の前にいる三人はその計画に狂気を垣間見る。だが、本当に出来てしまう。そんな気迫をナイトローグから感じた。
『フム、だが。レベルの到達していない君達に利用価値は無い。ここで消去させてもらおう』
【ライフルモード……!】
『まずは、ソウマ・イスルギ。貴様だァ……!』
【Bat……!】
『シィネェェェェェェェェェェェェェェェッ‼』
奇声を上げながら、ナイトローグは引き金を引く。
【スチームショット!Bat……!】
三人は目の前に迫る紫色の閃光がスローモーションで動いているように思えた。その中で千冬だけが足元に視線が動く……その目に映ったのは鈍色の箱……その近くに転がっている半透明な容器……。
(フルボトル……!コレがあれば……イチかバチか!)
その直後……。
―ドォォォンッ‼―
レストランカフェを揺るがすほどの爆音が轟き、巨大な青白いエネルギーは着弾した……。
濛々と立ち込める煙……ナイトローグはそれを見て満足げに笑う。
『フフ……、……!何⁉』
煙の中から透明な結晶体が何個もナイトローグに向け飛来する。
『くぅ……⁉』
煙の中にぼんやりと人影が写る……。
「……気が付いたことがある。惣万、私は……今までお前に守られてばかりだった……。子供の頃、私と友達になってくれたこと……一夏の面倒を見てくれたこと、そして私が一夏を守れず自分を責めているとき、傍でその悩みを笑い飛ばしてくれたこと!確かに私は世界最強になれるだけの力は持ってはいただろうさ。だが、誰かを守る力は――――お前には遠く及ばなかった。でも……だからこそ……ッ!」
ゆっくりと、だが力強く足音を響かせ、片手に宝石のレリーフを持つボトルを握って、世界最強が立ちはだかる。
「今だけで良い……私にお前を、守らせてくれ……」
そして後ろで見ている掛け替えのない幼馴染に言葉を紡ぐ。
「だから、これが終わった後も、私の友として…………私の心を守ってくれ……私の支えになってくれ!」
「千冬……」
「先輩……」
そして、颯爽とナイトローグに千冬は立ち向かってゆく。
『フン、フルボトルを振ったくらいで……。何⁉』
一瞬にしてナイトローグに肉薄し、一度に三発のストレートを叩き込む。その拳は金剛の様なエネルギーに覆われ、ナイトローグの装甲から火花が上がる。ローグは思わずスチームブレードを取り落とす。
『馬鹿な……チューンしたナイトローグはハザードレベル3.9以下の攻撃には耐えられるはず……⁉まさか……そこまで……⁉』
「何をごちゃごちゃ言っている!ナイトローグ、貴様と私の決定的な違いを教えてやる!私はなぁ!守らなければならない家族の為に!」
『うぐっ!?』
青い光を纏った蹴りを放つ。
「果たさなければいけない責任の為に!」
『グガッ!?』
赤い光を放つ拳を突き出す。
「そしてずっとそばにいてくれた、人間たちの為に!力というものを!」
『ぐぅ……っ!』
「大切なモノを守るために、使うんだぁぁぁぁっ‼」
足元に落ちていたブレードを構え、袈裟懸けに振り下ろす!
『グアァァァァァァァァァッ‼』
窓を突き破って地面をバウンドしながら転がっていくナイトローグ。
「……ッ、やった……!」
「すげぇ……」
壊れた窓から差し込む月明かりと街灯が、傷だらけの千冬を優しく照らしていた。
『……っ、クヒヒヒヒ……!いや、全く。思わぬ収穫だ、何かを守りたいという思いでハザードレベルが上昇するとは……!お前の様な人間は“怒り”によっての成長がベストマッチだと思っていたのだが……計画変更だ』
「……ッ!ナイトローグ!」
薄気味悪い笑い声をあげると、ナイトローグは背に蝙蝠の羽を生やし、空中に浮かぶ。
『お前の大切な者たちは、殺さない様にしてやろう……!そして精々その綺麗事でハザードレベルを上げると良い!キハハハハハァ‼』
そう言い残すと頭のセントラルチムニーから白煙を振りまき、その場から消えたのだった……。
「説明してくれ……何故お前がファウストのことを知っていた?」
ナイトローグが去った後、惣万と千冬、それに真耶は、未だ気絶している銀髪の少女をベッドに寝かせ、お互いに情報を共有することにした。千冬はモンド・グロッソからドイツ軍にいた頃に起こった一連の事件を惣万に話し、次は惣万の番になった。
「……昔、餓鬼の頃だ……。少年兵だったころ知り合った女の子がいてなぁ……。そいつが数年前俺に連絡を取ってきた。それからちょくちょく昔の知識を活用して相談に乗ってた。そして、つい先日だ……裏に踏み込み過ぎて死んだって聞いたのは……」
聞いた二人は顔をしかめる。
「んで、そいつから預かったのが、この気を失っている銀髪の女の子と、パンドラボックスってヤツだった」
銀髪の少女を三人は見やる。真っ白な肌に銀色の髪、そして一番目を引くのはISの待機状態であろう金色のバングルである。だが、このバングル、真耶がどう調べても、機体情報すら分からず、ISコアも篠ノ之束が造った物と構造が違っているような……そんな違和感があるものだった。故に正体不明のISを持つ彼女をIS学園の庇護下に入れようとするも、惣万に拒否された。
「もしこのISコアを造ったのが篠ノ之束ではない誰かだったら?それに気が付いた委員会がこの子をどうするか予想できるか……?だから……この女の子は俺が預かる……だからお前はパンドラボックスを秘密裏にIS学園に持って行ってくれないか……?どうにもコレが一番怪しい……」
千冬は……惣万が信頼できるかとIS委員会の動向を自身の心の天秤にかけ、そして………………。
「分かった……学園長にはこの箱は未知の技術で出来たコア紛いのもの……とでも言っておこう、書面の製作は任せたぞ、真耶」
「え、えぇ⁉私ですかぁ⁉」
「私はしつこいんだ……学校で言われたこと、まだ許したわけでは無いんだぞ、あ゛ぁん?」
「……スミマセンデシタ」
「ん?何言ったんだ?」
「惣万は気にしなくていい」
パンドラボックスはIS学園の特別区画に入れられることとなったのだった。
「んーじゃ……折角だ。店内はしばらく改装工事が必要だが……今日は野外のテーブルで御馳走してやるよ」
「……本当か?」
「あぁ、腕が折れてるが、まぁ大丈夫だろう」
「いや、病院行ってください?」
「ダイジョブダイジョブ~マヤマヤ。ゼンゼン、イタク、ナ~イ……」
「脂汗出てますよ」
その夜……。千冬たちが家に帰った後、レストランカフェnascitaの三階、惣万の部屋では……。
「あー、痛……しばらくは包帯つけなきゃか……」
『自演自作とはよくやるな……自分の店を犠牲にして、織斑千冬の同情と信頼を同時に得るとは』
ベッドに痛々しい姿で横になる惣万と、いすに腰掛け本を読むナイトローグがいた。ベッドで寝返りをうつ惣万。
「あいつは粗暴に見えて、意外に義理堅いからなぁ……伊達に天災と友人では無いんだろう」
『……、しかし本当に良かったのか、スターク。IS学園側にパンドラボックスを渡してしまって』
「構わねぇよ、お前はさ、あー、例えば何でもいい、そうだな……自分の身体の中のこと、百パー完全に理解してる?」
ナイトローグは読んでいた本を閉じ、目線を惣万に向ける。
『……成程、その機能や力を理解してはいるが、万一の為の解析データが欲しいのか』
「ま、そーいうこと。それに、世界を壊す為に、向こう側にも同じ力があった方が世界の崩落は早くなる……」
儚げに微笑む惣万を見て、ナイトローグは一つ、疑問に思ったことを聞く。
『……後悔しないのか?』
「……気遣っているのか?だったらそれをお前が知る必要はない」
少し、むっとした顔をした惣万は、感慨深げに自分の手を見る。
「……さっきさ、俺、千冬に『お前は私が守る』的なこと言われただろ?」
『……』
「……俺、全然、何も感じられなくなっていた」
彼は静かに声を絞り出す。
「あいつへの想いも、思い出もたくさんあるのに、千冬のこと……。ただのキャラクターの様にしか、見ることができなくなってきているんだ」
悲し気に顔を歪める惣万。
「だから、こんな俺が千冬にできることは……千冬が笑顔で過ごせる新世界の為に、世界の敵になることだ。な?馬鹿だろ俺」
『……そうか』
それは確かに歪んでいる、だがとても純真無垢な感情に思え、ナイトローグはそれ以上追及することはしなかった。
『では私はISの開発に戻る、全く、次はデュノア社に
「おう、じゃーなー」
そう言って変身を解除したナイトローグは紫色の長髪をたなびかせながら去って行った……。
今回の惣万の行動は社長時代の檀黎斗(「檀黎斗神だァァァァァァァァ‼」←アナザーエンディング前)の行動をオマージュしました。
因みにナイトローグ(一回目)が去った後のnascitaにて
「……んみゅ?……あれ?」
「あ、目が覚めましたか?……おーい、惣万さ~ん!クロエちゃん起きましたよ~」
「ホラ、コーヒーだ……飲むと良い」
「あ、ありがとうござ………………ブホォッ!?」
「え、何!?どうした!?」
「………………。もしかして……ア゛ァッ‼先輩このコーヒー自分で淹れましたね!?」
「うっそだろオイ!?頼むよ起きてくれよクロエ!?初登場してからエボルテックフィニッシュでCiao♪しちゃったら出オチ要員になっちまうから!?今後の君のポジション危うくなるからぁ‼」
「何の話だ!?」
そんな一幕もあったりで………………。
※2020/12/09
一部修正
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部