IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「どうもー!ここじゃ初めましてかな!オレはてぇっっんさい科学者、因幡野戦兎だ!」
一夏「おぉっと、これまたキャラが濃いのが来たな……てか天才は自分で自分のこと天才とか言わねぇんだよ。傍から見りゃスゲェダセェぞ」
千冬「これには織斑(夏)の意見に同意だな」
一夏「あれ、千冬姉どったの」
千冬「いやなに、ISの備品が幾つか足りないという報告があったのでな。因幡野先生は何か知らないか聞きに来た……、のだが」
戦兎「ん?なに?」
千冬「その背後に控えているどう考えてもISな魔改造品はなんだ?」
戦兎「――――てへっ!」
千冬「よーしちょっとそこ動くなよぉっ!」
戦兎「ほっ?…あびゃァアアアアアアアア‼」
一夏「うわーなんか懐かしいなこのやり取り。あ、第二十二話、どぞ」


第二十二話 『怒りのキードラゴン』

「うぅ、形態移行(フォームシフト)もしていないのに…。なんで一夏ばかりが……こんなの不平等だよ、卑怯じゃない?」

「あぁ?何言ってんだよ……正攻法で勝てないなら、裏技を使うだろ?俺、卑怯もラッキョウも大好きでな!ハァッ!」

「うわぁ!」

 

 アリーナの上空では、目まぐるしく攻防が展開されていた。ただし、大半の人間の予想を覆す内容だったが……。

 

 初めは誰しも、専用機を持ちIS適性が『S』という結果を叩きだした織斑節無に軍配が上がると思っていた。が、試合開始と同時に先制攻撃を与えたのは一夏の方だった。近づいたら剣で薙ぎ払われ、距離をとれば左手のライフルで狙い撃たれる。おまけに白式はブレードが一本だという装備である為、距離を取ると言うのは悪手である。故に節無は接近戦にしか持ち込めないのだが……。

 

「うぅーっ!何で当たらないんだ……っ!?」

「そりゃ……。今まで剣を振るってなかったとはいえ、人の戦う動き、クセってヤツ、大体は把握しているモンでな」

 

 がむしゃらにブレードを振るう節無に対し、一夏は最短距離で動き、隙無く回避しすれ違いざまに一撃を加えていく。

 

 その時だ。節無のISが白く輝きだし……。

 

「ちッ、初期設定から移行したか……。さっきので決めておきたかったんだが」

「フフ、アハハハハ!どーやら風向きはこっちに来たらしいね!えーいッ!」

「……!?んなろッ!」

 

 青白い光を纏った刀身で斬りかかって来る節無。それを見て一夏は気が付く。

 

「オイオイ、それって雪片……?ってことは、零落白夜か……?なんつーもん専用機にしてんだ、お前……!」

「っあ、羨ましい?いいでしょ、これ!」

 

 無邪気に、そして蔑むように一夏を見る節無。その表情に力の扱い方を弁えていないことに気付き、一夏は彼を諫める。

 

「ちげぇよ!それはな!扱いを間違えたら人を殺せる武器なんだ!お前みたいなふわふわしたヤツが軽々しく扱っていいもんじゃねぇんだよ!」

「あはっ、怖い?『ママ』でもないのに昔から説教臭いね、一夏は!でも力ってのはさ、振るわなきゃ意味無いでしょ!」

「このアホっ!……、けどなっ!」

 

 大振りで叩き落とすように一夏に振り下ろされた『雪片弐型』を『葵』で難なく受け止める。

 

「な、え……はぁっ!?」

「確かにそれはバリアやらエネルギー攻撃には強いだろうよ……けど俺が使ってる『葵』(コレ)、ただの金属製のブレードだからな!俺にとっちゃ、ただ触れなきゃいいだけなんだよ!」

 

 そう言いながら節無の顔を、足でバク宙の様に蹴り上げる。

 

「ぐぶぅ!?……、け、け…蹴られた、蹴られた……っ!い、ぃぃいぃ、一夏ぁぁッ!」

「コレで、終わりだぁぁぁッ!」

 

 

 

 その時だった。

 

『やれやれ、随分とつまらないゲームだ……』

 

―――――ドガァァァァンッ‼

 

 壁の一部が壊れると共にアリーナ内に煙が漂い、一つにまとまると、煙の合間に見えた排気孔に煙が吸い込まれる。煙が晴れると、そこには……。

 

【Bat…B-Bat…Fire…!】

 

 黄金の蝙蝠のバイザーが輝き、肩に工業用のパイプが付いた装甲が光を照り返す。漆黒のパワードスーツの怪人がアリーナに立っていた。

 それを見て、一夏の顔色が変わる。その姿には、どことなく見覚えがあった。

 

「お前まさか、ブラッドスタークの……?」

『スターク、か。まぁ言いたいことは分かる。確かに私はスタークが所属する組織の幹部の一人だ』

 

 

 顔色が変わったのは一夏だけでは無かった。

 

「お、織斑先生っ!あれっ!」

「奴め、学園にまで……!」

 

 

 しかし教師二人は動けない。避難指示を出しつつ事態を収拾しなければならないからだ。

 

『私はローグ。ナイトローグ』

 

 翼を生やし、ひらりと一夏の目線の高さまで上昇すると、慇懃に自己紹介とお辞儀をする。

 一夏や千冬、山田真耶は警戒を強めるが……。ここに一人、その脅威を知らない人間がいた。

 

「ん?何?……全身装甲(フルスキン)の第一世代?……取り敢えずさぁ、邪魔しないでよ!君の『ママ』にやっちゃいけないこととか教わってないの!?」

『生憎そんな恵まれた境遇では無くてな、っと』

 

 節無は忌々し気に言って、その怪人に突撃した。

 

「オイ!?……ッあいつ!」

『フン』

 

 ナイトローグは白剣を腕のカッターで受け止め、体を煙に紛れさせ彼の後ろに回り込み、そしてドロップキックで一撃を加える。

 

「んぐ……!?そんな!?ッ、零落白夜!」

『ハァ……、トランスチームシステム(これ)をISだと思っているのか?そしてその判断は悪手でしか無いな……こういう風に!』

 

【エレキスチーム!】

 

 バルブをひねったナイトローグはブレードの噴気孔から出た閃光を纏った煙を白式に向ける。

 

「フふふッ!白式の単一使用能力(ワンオフアビリティー)は、エネルギー攻撃にメタが張れるんだ……って何で!?」

 

 ナイトローグに焦った印象はない。逆に顔色が悪くなったのは節無だ。徐々に貴重なシールドエネルギーが減少している。

 

『あきれたな。それは第一回モンド・グロッソでチフユ・オリムラが使っていたものと同じ。ならば対処法も知れ渡っていると言うモノ!』

 

 若干テンション高く饒舌に説明口調になる怪人。

 

『こんなことはただの力技だ、シールドエネルギーがゼロになるまでエネルギー攻撃を続ければ良いだけだァ!このグズがァ‼ヴェハハハハァ‼』

「うそッ!?そんな馬鹿なッ!?僕が負ける……!?在り得ない!どうしてだ!どうして弱い者虐めをするんだお前らは……っ‼」

 

 黒も白も二人とも空中で喧しく喚く。

 

『クッ、クククックハハッ、キヒヒヒッギヒヒッヴェハハハハァッ!?その顔が見たかったァ……私にマヌケを晒した、その顔がぁはははははッ!?イヒヒヒヒッ!ウィヒッッ、ウェヒヒヒヒハハハハハハハッ‼』

 

 そんな滑稽な節無がツボに入ったのだろうか。ナイトローグは片手でバイザーを押さえ、海老反りになりながら狂ったように笑う。

 

『おっと。失礼、取り乱した。では改めて…ゲームメーカーの我々に逆らうな!花火の様に散るが良い!』

 

 空いた手にトランスチームガンを呼び出し、彼は躊躇いなく引き金を引く。

 

【スチームブレイク!Bat…!】

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁァァあぁぁぁあぁっ‼」

 

 節無はあまりにも無様な声を上げ、後方へと吹き飛ばされていった。

 

 

『……さて、イチカ・オリムラ。君に一つ面白いものを見せてやろう』

「何…?」

 

 ナイトローグの興味は既に別の存在に移る。その切り替えの薄気味悪さに、一夏はどこかの誰かを思い浮かべた。まさか、この人は……。

 そんな一夏の内心も慮らずに彼は行動を起こす。フィンガースナップを一つ響かせると、アリーナに煙が集まり出す。

 

「なんだ、ありゃ……」

 

 煙と共に現れたそれは、まるで潜水服を着たようなオレンジ色の球体の頭部を持つ怪人。手からは炎が立ち上っている……。

 

『あれはスマッシュという怪物でな……人体に特殊なガスを入れた人間が変化した成れの果てだ』

 

 それを見て武器を構える一夏。――――だが。

 

『……あぁ、一つ忠告だ。下手に戦わない方が良い。でなければ、恋人が死ぬかもしれないからな』

 

 ナイトローグの残酷な言葉が、彼の心に突き刺さる。

 

「……恋人?」

『彼女も喜んでいるだろう……恋人のISでの戦いを、こんな傍で見られるなんてな?』

「………………え」

 

 その言葉が頭の中に入り、意味を理解するのに永い一瞬が経過した。

 

「ヴウ゛ヴ……ウゥゥウ……ッ!」

 

 その怪物が鳴く。その奥にいる女の子が泣く。

 

「………………………………箒?」

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!」

 

 

 

「嘘だろ……!?」

 

 

 バーンスマッシュが咆哮を響かせて、四方八方に火球を飛ばす。獄炎はアリーナ席のバリアに当たり、警報を鳴り響かせた。

 突然の乱入者に観客は固っていたものの、その警報が鳴ると正気に戻り、叫び声を上げながら我先に出口へと向かっていた。我先にと、命を惜しむ凡庸な命の一つとして。

 

 

「……一夏さん……箒さん」

 

 ……いいや、ただ独り、セシリア・オルコットは打鉄とバーンスマッシュの様子を伺っていた。

 

「……。また、わたくしは、手を伸ばせないのですか……っ」

 

 

 

 

 スチームブレイクを食らい、のびていた節無は目が覚めたらしく、目の前に迫っていた怪物に情けない叫びを上げる。

 

「ひっ……ヒィッ!」

 

「なっ!?あいつ‼」

 

 目の前に迫るバーンスマッシュに向けて、雪片弐型を振り回す節無。その刃が箒に当たろうか、というときに……。

 

―ガキンッ!―

 

「節無、箒に何しようとしてんだ……。アレは箒なんだ!お前は人を殺そうとしたんだぞ!」

「ば、馬鹿言わないでよ……あんな化け物が人間(ママ)なわけないだろ!いい加減にしてよ!」

 

 一人は怒りを、一人は恐怖を顔に湛えながらギリギリ……と鍔迫り合いになる。

 

「こんな化け物、とっとと殺した方が良い……い、一夏はそう思わないの!?バカバカしい正義の味方になるんでしょ?(アレ)のために力を持ったんでしょ!じゃあ一夏が楽にしてあげろよ!無理矢理甘えて乳繰り合ってた一夏なら、(アレ)だって…!」

 

 その一言が鍵だった。

 

「ぎひぃっ!?」

 

 それは一夏の逆鱗を触れるには十分だった。近接用ブレード『葵』もアサルトライフル『焔備』も用いずに、卑屈な自意識と恐怖で凝り固まった彼の顔面を打鉄の拳で殴りつけた。

 絶対防御が発動し、大幅に消える白式のシールドエネルギー。……そのままIS白式は節無から解除させられた。さらに搭乗者にまでダメージが入ったらしく、ぐぷぅっ、とカエルが潰れたような声を出し転がっていく節無。

 

「ね、ねえッ!?何してるんだよ!?こんなとこで解除されたら……ッヒィッ!?」

 

 節無が何か言っているが一夏の耳には聞こえない……聞きたくも知りたくもない。

 

「……とっとと失せろ」

 

 そして鋭く、『もう黙れ』と一瞥する一夏。頬をおさえた彼は情けない声を上げながらしりもちをつき、腰を抜かした状態でアリーナから這う這うの体で消えた。

 

『茶番は終わったか?ンン?』

 

 ナイトローグはそれを横目で見ながら、一夏を嘲った。何もできない彼はISの武装である『葵』と『焔備』を捨て、ゆっくりと箒に近づいていく。

 

「ウ……ウゥ……ッ!ウ……ッ」

 

 バーンスマッシュは――――いや『箒』は、誰も傷つけまいとしているようだった。手から放たれる火球を地面、果ては自分に撃ち込み何とか被害を抑えようとしている。

 無情にも自分(バーンスマッシュ)が放った炎が自分()の身体を焼き焦がす……。

 

「ゥ……ウゥゥウ……ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ッ!」

「箒…」

 

 一夏には、怪物の喚き声が……炎で焼かれる箒が苦悶の声を漏らしているように聞こえた。

 

「……ィチ………カ………ッ!」

『ほう、驚いたな……スマッシュになれば自我が消え意思疎通は困難となるはずが……見上げた強い精神力だ』

 

 もう見ていられなかった。思い人がこんな姿に変えられ、苦しんでいるというのに、自分は何も出来ない……。それはまた彼の心の中にある“第二回モンド・グロッソ”を思い出させた。

 

「ウァゥゥゥァァァッッ‼」

「なっ、うぐッ!?」

 

 バーンスマッシュが制御を失ったように腕を振り回す。手から放たれた火炎放射が打鉄に当たり、一夏のシールドエネルギーをゼロにする。

 

「うっ……!」

 

 一夏はアリーナの乾いた地面に放り出され、身体中に擦り傷を負った。

 

「……誰か」

 

 だが、そんなことになっているのも構わずに、声を振り絞り、この状況を覆してくれる“誰か”にあらん限り思いを叫ぶ――――。

 

「誰か……っ!箒を元の姿に戻してやってくれっ‼頼むよ……お願いだ、誰か……誰かぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

 その時、突如として……――――一夏の耳によく響く足音が聞こえてくる。

 

――――カツン……カツン……カツン!

 

 そして――――一夏の這いつくばった視線の前に、ヨレヨレなジーンズ地のズボンが見えた。

 

「ごめん、遅れた」

 

 

 そこに立っていたのは黒い短髪の、トレンチコートの女だった。日の光を浴びて、彼女の赤と青のオッドアイが輝く。

 その突如として現れた女を見て、蝙蝠の意匠を持つパワードスーツの怪人は笑い出す。

 

『よぉやく来たかァ……因幡野戦兎(モルモット)ぉ!』

「足止めなんてやってくれたな……コウモリ野郎」

 

 その女の人はスマッシュの後方に佇む黒いその姿を睨みつける。

 

「因幡野、先生?何で……ここに?」

 

 思いがけない人物に、一夏は目を丸くし、驚くしかできなかった。

 

「オレ?オレが来たのは……オレがナルシストで自意識過剰な、正義のヒーローだからだよ!」

 

 因幡野戦兎は、片手にいつの間にか持っていた黒いゴテゴテしたデバイスを腰に当てる。すると黄色のベルト部分が展開され、デバイスが腰に固定される。

 

 

 

1010^0=1

F_−n=(−1)^n+1F_n,F_−3=2

2143/π^4

1+2+4+7+14=28

 

 

「 さ ぁ 、 実 験 を 始 め よ う か 」

 

 

#{crystal class}=32

f(x)=x^2+x+41

F_2=2^2^2 +1

Magic hexagon=38

 

 

 

 その掛け声と共に、右手に青の、左手に赤の容器を持ちながら、左右バラバラにスナップを効かせながら振る。その腕の動きと共に周囲に数式が実体化し、一夏やアリーナの様子を見ていた何人かの人物の目を奪っていく。

 だが、戦兎はそんなことを気にもかけず、そのまま容器をベルトに挿し込んだ。

 

【ラビット!】【タンク!】

 

 そんな音声と共に、彼女のベルトの前方の空中にR/Tというマークが浮かぶ。

 

【ベストマッチ!】

 

 戦兎は、ベルトの右側に付いたハンドルを何回もぐるぐると回すと……ベルトから透明な管がプラモデルの様なランナーを造り、その中を赤と青の液体で満たされて行く。

 

【Are you ready?】

 

 戦兎はファイティングポーズをとると、様々な世界で正義の為に戦う者へと変わる、力を持つ“あの言葉”を告げた。

 

「変身!」

 

 その言葉が響いた途端、前後の赤と青のランナーが合わさり、戦士の姿を形成(ビルド)する!

 

【鋼のムーンサルト!】

 

 体からは蒸気が噴き出し、頭部に斜めに付いたシグナルと二色の複眼が輝きを放つ。

 

【ラビットタンク!イェーイ!】

 

 そこに立っていたのは……。

 

「オレはビルド。『造る』『形成する』って意味の、『Build』だ」

 

 フレミングの法則の様な決めポーズをとり、スマッシュとナイトローグに向かい合う仮面のライダー。

 

「勝利の法則は……決まった!」




 戦兎ちゃんの変身シークエンス、初めて書いたことになるんだよなぁ……引っ張りすぎ?

※2020/12/15
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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