IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「鋼のムーンサルト!ラビットタンク!いぇーーーい‼どうどう!変身シーン良かったでしょ!数式も動いてたでしょ、最高でしょ‼」
真耶「前にナイトローグが供述してたライダーシステムってコレのことなんですね~……何というか、ハイセンス?」
千冬「やかましいわ。音声切っておけないのか」
戦兎「山田先生は優しいねぇ……ホロリ。よし君のためにISの追加パッケージでも創ってあげよう!確かラファール使うんだよね?」
真耶「ふぇっ?いや、それは嬉しいのですけど、流石に駄目なのでは!?」
戦兎「なぁに、抜け道は幾らでもあるのさ……ふっふふふぅ…!」
千冬「駄目だコイツ、まるで反省してない……――――あー、わたしはなーにもきかなかったー!では第二十三話、どうぞ」


第二十三話 『現れる仮面のライダー』

「あ、あの方は……色は違いますが、間違いありません!あの時の!」

 

 観客席でセシリアは驚く。両親を救い出し、自分が正義の味方になるきっかけを創ってくれたパワードスーツの戦士(仮面ライダー)。彼がアリーナに降り立ったのだから。

 

 

 

 一方、こちらは整備室。そこに設置された特大スクリーンで試合を鑑賞していた更識簪は、同時進行していた整備の手を止める。

 

「アレは……、『ビルド』!?」

 

 いまや都市伝説として名高い赤と青のツートンカラーの謎のヒーロー。あの夜に怪物から守ってくれた正義のヒーローに、彼女は憧憬の眼差しを向けていた。

 

 

 

 

「因幡野先生が!?織斑先生、あ、あれって……」

「……ナイトローグとどうやら関係があるらしいな。惣万め、後で説明してもらわねば。――――だが」

(あのベルトにセットしているのは、確かフルボトル。あの日の経験が確かならナイトローグに対抗できるのはあいつだけだろうな。……今は因幡野戦兎に頼むしかないか。)

 

 千冬はそう考えると、全てを変身した因幡野戦兎……――――否、仮面ライダービルドに委ねたのだった。

 

 

 

 

「ア゛……アァァァァァァァァァ……」

「う~ん、その気がない人と戦うのは気が進まないけど、今から体の中からガスを抜くから……ちょっと待ってね、っと!」

 

 バーンスマッシュが繰り出す火球攻撃を、ビルドはラビットハーフボディの機動性を活かして縦横無尽に避ける。彼女はアリーナを駆け、アクロバティックな動きで翻弄する。

 

「流石にボーイフレンドの目の前で傷つけるわけにもいかないか。それじゃっ……これだ」

 

【ラビット!】

【掃除機!】

 

【Are you ready?】

 

「ビルドアップ」

 

 掛け声と共に組み上がる外装。その外見は一風変わっていた。

 

「……え?ウサギと……掃除機?」

 

 ビルドが変身したのはトライアルフォーム(ラビット掃除機)。そして左腕についた『ロングレンジクリーナー』でバーンスマッシュから放たれる炎を集め、吸い込まずに頭上につくり出した竜巻に放り込む。

 

「ううう……ウウ……ッ!」

「そんでっ!次の方程式は!」

 

【ゴリラ!】

【ダイヤモンド!】

 

 ベルトに別のフルボトルをセットするとG/Dというマークが浮かび上がる。

 

【ベストマッチ!Are you ready?】

 

「お、おぉぉ!ベストマッチ、来たぁーーーっ!ビルドアップ!」

 

 スナップライドビルダーに茶色と水色の液体が巡り、赤と緑の身体を前後から挟み込む。

 

【輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!】

 

 茶色と水色の厳めしい外見のツートンになったビルド。ゴリラとダイヤモンドを模した複眼がバーンスマッシュをきりりと見据える。

 

「はっ!」

 

 彼女は上空の竜巻に漂う火球を、左手を覆うグローブ『BLDプリズムグローブ』でダイヤモンドに変換する。

 

【Ready go!】

 

 レバーハンドルを回し、ダイヤモンドの竜巻をバーンスマッシュに纏わせるビルド。

 

【ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

 

「そりゃっ!」

「■■■■■■■■■……、あ、あぁ……」

 

 風が舞い、結晶が優しく怪物の硬化した皮膚を削っていく。瞬く間に変化が起きた。意識を失った篠ノ之箒がバーンスマッシュから分離する。

 

「よし、パス!」

 

 一夏に向かって箒を投げ渡すビルド。

 

「箒っ⁉大丈夫か……、え……?」

 

 一夏が身を挺して箒を受け止めたのを見て、ビルドは既にネビュラガスで構成されただけのスマッシュに必殺の一撃を食らわせる。

 

「はァァァァッ‼」

 

【ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

 

 ビルドは箒と分離したバーンスマッシュを右腕『サドンデストロイヤー』による一撃で撃破した。彼女はエンプティボトルをバーンスマッシュに向け、成分を収集する。

 

―パチパチ……―

 

 称賛する気の無い拍手がアリーナに響く。

 

『お見事、と言っておこうか、被験体(モルモット)

「……次はお前だ、コウモリ野郎」

 

 フッ、と鼻で笑うナイトローグ。

 

『君は天才科学者と名乗っている割に物覚えが悪い様だ……』

「オレのことをモルモット呼ばわりしているお前に言われたくは無いっつーの」

『当たり前だ、わざわざ実験動物の顔を覚えておく科学者が何処にいる』

 

 ナイトローグの嘲笑とビルドの闇雲な怒りがアリーナ内に蔓延しつつあった。のだが……――――。

 

「箒!?オイ箒!返事しろよ、おい!?」

 

 その悲痛な叫びを聞き、思わずビルドは振り返る。見てみれば、一夏が項垂れながら箒を見ていた。訝しんだビルドは彼らに近寄り、一夏と彼が抱きかかえる少女の様子を見る。

 そして……――――戦兎は思わずマスクの下で顔を顰める。

 

「……外傷が酷い。すぐに医務室に運ぶぞ……」

 

 彼女は箒の命を守るため、即座に行動を開始した。彼女の容態は深刻そのもの、医学知識を活用し一夏に的確に指示を出す。

 だが、その隙を敵であるナイトローグは見逃さない。

 

『……ではな、また会おう』

 

 夜の悪党はトランスチームガンから黒煙を噴き出して、その姿をくらませた。

 

「あ、おいちょっと!ッあぁもうっ!さいっっあくだ……!消えた記憶の手がかり、逃した!」

 

 変身を解除し、一瞬ナイトローグがいた所に手を伸ばすも、時すでに遅し。影も形も残っていない。

 

「……ってそんな場合じゃないな……。この娘はオレが運んでおく。事態は急を要するからね!」

 

 しかしながら、戦兎は地頭の良さから冷静になると、思考を切り替え今の事態の対処にあたろうとする。彼女は片手にウサギのレリーフがある容器を持ち、箒を抱きかかえるとボトルを振った。

 

 目にもとまらぬ速さで赤い残像を残しながらその場から消え去った戦兎と箒。そこに残されたのは、茫然自失した少年だった。

 

 

 

一夏side

 

 箒が目覚めたのは、節無とのクラス代表戦の三日後だった。

 

「……箒、入るぞ」

 

 先頃言われた言葉が頭の中を反響し続けている。

 

―織斑君、大変言い辛いことですが、箒さんは……―

 

「あ……一夏。いらっしゃい」

 

 そう言って俺を病室に招き入れる箒。

 

「すまない、一夏……色々迷惑かけたみたいで」

「……んな事ねぇよ」

 

 俺はベッドの横でリンゴを剝く。箒の要望でウサギにだけはしない。

 

「それに……、酷い有様だろう?私の顔の右側……」

 

 そう言って俺に顔を向けてくる箒。その顔を見て、医務室から出てきたばかりの千冬姉と山田先生の言葉がよみがえる。

 

―箒さんは自分で自分に放った炎による火傷で、右目を失明しています……。ナノマシンによる治療も、おそらくは……―

 

 箒は弱々しく俺に笑いかける。

 

 彼女の包帯を巻いた右目に胸が抉られる。もう箒の片目には、光が灯ることがないという事実が俺を苛む。包帯からはみ出た火傷の後が痛々しい……。思わず握りしめた両手から、血が滲む……。

 

「……っ」

「気にしないでほしい」

 

 ……何だと?

 

「コレは私がやったこと……私が一夏を傷つけないようにした跡だ。言い換えるなら勲章。なら、悪い気もしないな。……だから……ッ!?」

 

 労しい、痛ましい、忍びない、そして……あまりにも愛おしい。

 

「い、ちか……?」

「……ふざけんなよ……何でお前がこんなことにならなきゃいけなかったんだ……」

 

 箒を抱きしめながら呟く……。

 

 

 

「……一夏。この際だから言っておこうと思う。一夏は私のことが好きか?」

 

 思わず俺は箒の顔をじっと見つめる。

 

「私は好きだ……。お前のことが昔からずっとずっと好きだった。愛してると言ってもいい」

 

 空虚な顔で愛の告白を淡々と言う箒。

 

「だから……」

 

 だから……?

 

「だから、私は大切なお前の負担になりたくないんだ……。こんな身体が傷だらけで、篠ノ之束の妹で……。そんな重い女より、もっと一夏を幸せにしてくれる人を……」

「ふざけんな!」

 

ガタンと机を叩きつける。

 

 聞きたくなかった。何故箒が詫びる必要があるんだ……!お前に何の落ち度があった……!?それにお前は俺のことを何もわかってない……!

 

「お前以上の人間がいてたまるかよ!俺はお前に出会えてから……最高に幸せだった……っ‼」

 

 俺は箒に思いの丈を思いっきりぶつける。

 

「お前の笑った顔で、泣いた顔で、拗ねた顔で……!子供の頃の毎日が楽しかった!」

 

 毎日こんな日常が続くと信じて疑わなかった頃。

 

「お前と別れる時……本当に辛かった…………だけど約束した!“また会おう”って!それでお帰りって言えたじゃねぇか…」

 

 失って初めて気が付いた、俺はその頃から箒のことが大切な人だと思っていたことに。

 

「ここでまたお前と会えて……俺は本当に分かった。俺はお前のことを、誰よりも守りたいと思ったんだ、隣に一緒にいたいと思ったんだよ」

 

 心に留めていた思いを、真っ直ぐ箒に伝える。

 

 

 

「約束する。もうこれ以上、悲しませない。…――――絶対に」

 

 

 

 箒は感情を押し殺したさっきの顔から一転、完全に思考が停止した顔になった。

 そして一拍の後、表情がすとんと抜けた箒の顔から、ボロボロボロと大粒の涙が流れて行く……、次第に眉や口が感情に追いつかずにプルプルと歪み、お世辞にも人前に出せない顔になる。あーぁ、世話が焼ける…。

 

「一夏……」

 

 在りし日の様に、泣きながら俺の胸に倒れ込む箒。ただ箒が流す涙の意味は、きっと違っているはずだ。箒を抱きかかえた俺の腕は……昔よりも伸ばせるようになっているはずだ……。そう、信じたい。

 ん?

 

「……え、箒…」

 

 呼びかけた俺の声に反応し箒が顔を上げ、潤んだ片目でゆっくりと顔を近づけてくる。少しささくれた箒の唇が視界に入って来る。

 

 

 

 そして――――箒の唇が俺に触れようかという時に。

 

 

 

―ガタンッ―

 

 

(あ゛っ馬鹿!?今鳴らしたの誰!?)

(え、えへへ~……ごめんなさ~い……)

(布仏さん、このタイミングですの!?)

(あぁ~……シャッターチャンスが……)

(い、いいから早くずらかるわよっ!?ってあぁ足痺れ……ッ!?)

 

 

「……」

「……」

「「……――――」」

 

「箒、ちょっと待ってろ外の連中シバいてくる」

「………………ウン」(顔真っ赤)

 

 ガラッと扉を開けると、一組の女子連中が勢揃いしていやがりました。

 

「……何時からだ?」

「い、一夏さんすいません……箒さんのお見舞いに来たのですが一夏さ『御託は良い、もう一回聞くぞ。何時からだ(・・・・・)?』あーっとそれは……」

「はいは~い、もっぴ~が愛してるって言ったあたりだよ~」

「布仏さん?貴女自殺願望でもありまして?」

 

 病室の箒を見る。真っ赤になった顔を手で覆っている。ハイギルティ。

 

「……おんどれりゃァァァァァァァァッ‼」

「わ~おりむ~怒った~」

「あたりまえでしょうに、って一夏さん待って下さい流石に自販機を投げるの……わぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

No side

 

「織斑一夏、か。全く、この学校の生徒って馬鹿ばっか……――――。でも……、最高(さいっこー)だな」

 

 屋上から彼……クラスメイト達を追いかけている一夏を眺め、因幡野戦兎は片手に持ったボトルを振る。

 

「……今度君に渡そう、クロエに浄化してもらった――――君の愛する人の思いが詰まったこのボトルを」

 

 その一夏と同じ髪色の蒼いフルボトルには、勇ましい龍の顔のレリーフが刻まれていた……。




 箒はハザードレベル2.4かつ香澄さんみたいに病弱ではないので消滅“は”しませんでした。メインヒロインが死亡と言うのは避けたかったので、こんな所が落としどころでした……うん、純愛っぽくできたかな?あと描写してませんでしたが、IS学園に入学してから一夏は頭部に万丈みたいな三つの編み込み(エビフライ)があります。……そういう事です。分かってた人、挙sy(ry

※2020/12/25
 一部修正。モッピーが小倉香澄ポジだと思ったら新世界で馬渕由衣が出てきて火傷要素も…。この時まだVシネマ出てなかったんだよなぁ…凄い偶然。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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