IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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真耶「織斑先生、彼、大丈夫でしょうか…?篠ノ之さんと仲良さそうだっただけに、この仕打ちは……」
千冬「――――、ぁ?」
真耶「ひぃっ!」
千冬「おっと、すまん。ファウストをどうやって壊滅させるか考えていた。焼き討ち……いや生温い。悪行を世界に曝け出して、……いや私にその技術は無い、あれは――――いやこれは――――」
真耶「お、おおお織斑先生落ち着いて!?」
千冬「安心してくれ、怒りで寧ろ頭が冴え返ってる。一夏と箒を不幸にしたのだ、その罪は償ってもらおう…」
真耶「と、とにかく二十四話どうぞ!」



第二十四話 『星雲(ネビュラ)の煙のテクノロジー』

 人のうわさも七十五日。昔の人間は上手い言葉を造った物だ。あっという間に過去の出来事は時間の波に流されていく。先の怪物騒ぎは、最新のアンドロイドによる暴走ということで処理されたらしい。そして箒の重度の火傷と失明という事故は、それが引き起こした火災に巻き込まれた、ということになった。

 

 

 そしていつも通りに戻ったIS学園のホームルーム。

 

「はい、ということで、クラス代表は織斑節無君に決まりました~。よろしくお願いしますね~?」

「え……?」

 

 俺は箒の看護で寝不足の目をこすりながら朝のホームルームを聞く。

 

「僕が?……その、負けたのにですか?」

「それはな……」

 

 千冬姉はこちらに視線を向ける。俺に話せと?

 

「……はぁ、それは俺が辞退したからだよ。節無」

 

 ため息交じりに従弟に告げる。

 

「俺にはそんなことしてる暇はねーの。同室の箒の看護をしなくちゃなんない。だからクラス代表の仕事をお前に譲るわ」

 

 ま、こいつが試合中に口走ったことを許したわけじゃないが。……、あぁ、また腹が立ってきた……。

 

「……そう。――――それじゃ、皆、よろしく!」

 

 さっきの不機嫌な顔から一転。クラスメイトに人懐っこいさわやかな笑顔を向ける節無。それを見てクラスの女子はキャーッと黄色い歓声を上げる。

 まぁこいつが箒を侮辱したのは俺しか知らないからな。……泣き寝入りするわけじゃない。こいつのせいで箒に泣いてほしくないだけだ。それに、これで責任感とか色々と学んでくれれば、俺も千冬姉も付き合いやすくなるんだが。

 

「それでは授業を始めるが……。まだお前たちには紹介していなかったな、入ってください。因幡野先生」

「はいはーい」

 

 ……!

 

 トレンチコートを翻し、ヨレヨレなジーンズで歩を進める女性。色が白い肌に短く切りそろえた黒髪が映えるが、後頭部にはぴょこんとウサギの耳の様な寝癖がついているため台無しだ。顔は整い、普通にしていれば可愛らしいだろうが……。

 

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!」

 

 ……ん?

 

「悪を倒せと人が呼ぶ!」

 

 ビシィッ、と効果音が入りそうな勢いでポーズをとる箒の恩人。

 

「オレは因幡野戦兎!一学年のISの整備を受け持ち……数学、科学、物理学etc.を教えることになったてぇぇっっん↑さい↓科学者だ!」

 

 台無しだ。ウゼェ……あのドヤ顔超ウゼェ。ぴょこっと出た八重歯があざとい感じで何かウゼェ。

 

「因幡野先生……」

「おっと失礼。ちょっとテンション上がっちゃって」

 

 クラスの連中はキョトンだよ。千冬姉がすかさずフォローを入れる。

 

「あー、と言うワケで新たにこのクラスの科目を担当することになった『超美人な』先生だ……敬意を持って『天才科学者様と語頭につけて』接するように……ってオイコラァ!」

「はっはっはーっ!緊急脱出!それじゃ皆、一年間よろしくね~!それじゃオレISの改造してるからなんかあったら呼んでね!遊びに来てもいいよ!それではシーユー!」

「…どうしてこうも天才を自称する馬鹿兎は扱いが面倒なんだぁッ!待てやゴラァァ‼」

 

 赤いボトルを振りながら教室を出ていくてぇん↑さい↓科学者(笑)を、世界最強(笑)は本気走りで追跡を開始した。

 

「それと織斑(夏)!放課後になったら寮長室に来い!分かったな!」

 

 千冬姉ェ、(夏)って……。どんどん起きてるキャラ崩壊でクラスメイトからほっこりした目で見られてるの、教えたら怒るかな。

 

 それとセシリアがキラキラした目であのナルシスト先生を見ていたのは不思議だったんだが。

 

 

 

 その日全ての授業が終わり、寮長室に集まったのは俺と因幡野先生、そして千冬姉と山田先生だった。

 

「あのー織斑先生?一体何故俺らが集められたんでしょ」

「先生と呼ばないでいいぞ、一夏。ここからはお前の姉として話がある。さて、その前に、戦兎。…――先のアレは何だ?」

「あぁ、仮面ライダーのことか」

「仮面、ライダー?それって、ライダーシステムと呼ばれるものですか?」

「ッ!……君、何処でそれを!?」

 

 初めて動揺した表情を見せる因幡野先生。今にも掴みかからんとした鬼気迫る表情に、山田先生はうひゃあ!と言いつつホールドアップした。

 

「以前ナイトローグが少しな……。ひとまず場所を移そう。ここでは話を聞かれたら厄介だ」

「……そうだね、それじゃ、学園と生徒会室に借りているオレの部屋でにしよう」

 

 寮長室から移動する俺達。だが、後ろからぴょこぴょこついてくる二人組には千冬姉さえも気が付いていなかった……。

 

 

―らびっとはっち―

 

 そんな丸文字の立て札がかかった屋上のプレハブ小屋。

 

「学園にこんな所が……って千冬姉?何で先生の二人が驚いてんの?」

「……戦兎、お前勝手に改造したな?」

「ちょっと弄っただけだよ?あとこのホワイトボードは自前で付けた」

「こんなに必要ですか?」

 

 壁一面に設置された数々の単語が書かれたホワイトボード。訳の分からん数式がびっしり書き込まれているんだが……。

 ところどころにライオン、だの掃除機、だのの文字が書かれているのはどういう事だろうか?

 

「情報をまとめるのに必要なんだよ」

 

 因幡野先生はキャスター付きの椅子をゴロゴロと転がして俺達に座るように促す。千冬姉と山田先生、俺は腰を下ろした。

 

「さて、んじゃここにいるのはライダーシステムとファウストの存在を幾らか知っている人間だ、それはあっているね?」

 

 俺達は無言で頷く。

 

「それじゃ……そうだね。始めにオレが知っている情報を言おう。まず、俺は記憶喪失だ」

 

 気軽に重大な情報をさらっと言う天才科学者。どうやら千冬姉たちは知っていたらしいが『それを気軽に言うのはどうなんだ?』というふうに微妙な顔をする。

 

「俺が覚えていること言えば……ガスマスクをつけた科学者たちに人体実験を受けたことと、蝙蝠みたいな怪人がそれを見ていたことだ」

 

 因幡野先生は、自分の気持ちを落ち着かせるようにホワイトボードの前に移動して計算式を書き連ねる。

 

「それって……」

「あぁ。先日のクラス委員選出戦でやってきた、自称『ナイトローグ』だと思う」

 

 その言葉に、自分の記憶の奥に引っ掛かりを覚える。

 

「その後、ナイトローグの魔の手を掻い潜ったオレは……右も左も分からないまま、雨の中で目を覚ました。そっからは喫茶料理店のマスターに世話んなって食いつないできたってワケ」

 

 喫茶料理店のマスター?もしかして……。

 

「惣万にぃ?」

「お?あぁ、そうそう。IS学園の教師になれたのも、マスターが千冬センセとコネを持っていたって言うのが大きいよな」

 

 (∀`*ゞ)テヘッ、っとホワイトボードに顔文字を書く因幡野先生。

 

「ところでお前が変身した、アレは何だ?ナイトローグやらと同じものか?」

「アレは……『ビルド』だ」

 

 すると突然小屋のドアが開かれる。

 

「ビルド!?」

「うわびっくりした!?」

 

 バーンッ!と効果音付きで登場したのは変人パツキン。それともう片方、水色髪をした女子生徒は確か日本代表候補生の……。

 

「更識簪、か」

「オ、オルコットさんもですか!?」

「申し訳ございませんわ先生方……。因幡野先生を見たら追う、とこの方が言って聞かなくて……。それに、わたくしも気になったもので」

 

 見てて分かったけど、オルコットって結構野次馬根性あるよな。いや、頭を突っ込まずにはいられないのか?だから自販機に頭…――――いや関係ないわ、うん。

 

「お、何かな?もしかしてオレのファン?いやー照れるなー!人気者はつらいなー!」

「ハイッ!貴女のファンです!」

「へっ!?」

「あ、サイン!サイン下さい!」

「……いや、マジな方か……」

 

 そう言ってさらさらとウサギと戦車を模したサインを仕上げる因幡野先生。馴れてるなオイ。

 

「あー……更識簪、何故知っているんだ?ビルドのこと」

「ビルドは今、都市伝説として語られている謎の仮面のバイク乗り(ライダー)……怪物と戦う正義のヒーロー。知らない方がどうかしている……」

 

「「「……」」」

 

 知らなかった俺たちは黙るしかない。え、何。そんな一般常識になってんの?それとも簪の情報収集能力が凄いの?

 

「ってアレ?あぁ!君スマッシュに襲われてたメガネちゃん!」

「あ、ハイッ!その節は命を救ってくださりありがとうございました!」

「それで…――――んーと、ね。ゴメン、金髪の君は全く分からないんだけど」

「無理もありませんわ、恐らくわたくしと会ったのは記憶を失う前の貴女様なのでしょうし……一言二言話しただけでしたしね?」

「……!そう、か。もしよかったら後で話を聞かせてもらってもいいかな?」

「ハイ、わたくしの話がお役に立てれば」

 

 へぇ。そういうこと。

 

「二人とも関係者ってことか……。んじゃ話を聞く権利があると思うんだが、そこんとこどうよ?織斑センセ?」

「……、構わん。ただし口外は許さん」

「「はーい!」」

 

(その頃、生徒会室「ハッ!?簪ちゃん取られる!?」「何言ってるんですか仕事してクダサイ」)

 

 

「それじゃ、まずオレが戦っている組織。これがファウストだ、名称以外は不明だから詳しくは話せないんだけど…。そのファウストが生み出し、街にはなっているのがスマッシュだ」

「スマッシュって……箒が」

 

 ……思わず唇を噛む俺に、肩に手が置かれる。見ると……――――。

 

「あぁ、ナイトローグが言っていた通り、スマッシュは体になんらかの物質を入れられた人間だ。都市伝説じゃ……何だったっけ?人工生命体の成れの果てとか言う書き込みがあったよねぇ……言い得て妙だな」

 

 因幡野先生が俺を落ち着かせるように何度かポンポンと肩を叩き、優しい顔を向けていた。

 

「ついでに言えばまとめサイトには“IS学園周辺の地域から約数十キロ圏内に出現する”ってことになっている……」

「ま、人目についてなかったのはオレが治安維持活動をしていたからなんだけどね?」

 

 そう言ってハンドルレバーが付いたベルトを見せてくる。

 

「んで、人間に戻すには戦って、解放されたその成分を……コレ。このエンプティボトルに入れなければならない」

 

 ポケットから空の容器を俺達に見せてくれる先生。

 

「そしてそれだけでは安全面で不十分。エンプティからスマッシュボトルになったものを浄化しなければ処理が終わったとは言えない」

 

 ま、それは企業秘密だけど~、と誤魔化していたが、その時ふと思い出したように俺の方を向く。

 

「あぁそうだ、コレ、渡しとく」

「っと!?……、コレ?」

 

 青い何かを投げ渡してくる因幡野先生。

 

「それは、お前たちのモノだ」

 

 見ると、因幡野先生が持っているようなフルボトル……?と言うモノらしい。

 

「それは差し詰め『ドラゴンフルボトル』。箒ちゃんが君に託した力だ。お守りとして持っていると良い」

 

 その言葉でピンときた。どうやら箒から採取した物質を浄化したモノだという。そう思うと、箒が受けた辛さや苦しさ、そして自分の身を犠牲にして俺を傷つけまいとしてくれた思いがボトルを握る手を通して心に届いてくる……。

 

「……分かったよ、ありがとな、箒」

 

 

 

 

 

「質問だ。ライダーシステム、と言ったか。それは私でも使えるのか?」

 

 千冬姉はそう聞くが、因幡野先生はにべもない。

 

「多分無理だね、ライダーシステムは変身者がどう選出されているのかはまだ分からない。サンプルが足りないんだ。IS適性が高い人間で試しても無理だった。そもそもオレのIS適性調べたら最低レベルでほぼ使えないしなぁ……」

 

 片手で青いデバイスを弄りながら話をまとめる。

 

「ま、兎も角……オレは自分の記憶を思い出す為に、あいつ等との接点となったであろうフルボトルの研究をしているんだ。このベルトはその時マスターに貰った」

 

 

No side

 

『コレはビルドドライバー……コレでスマッシュを倒せる』

 

 そう言って因幡野戦兎にドライバーを渡す惣万。

 

『俺達に力を貸してくれ……』

 

 場面が暗転する。

 

 目の前にはファングスマッシュ。

 

『うわぁ!?』

 

 その攻撃で吹き飛ばされる戦兎。そして転がり落ちた赤と青のボトルが目に映る。

 

『っ、確か……コレで!』

 

 震える手でそのボトルを掴むと、その刺激で中の成分が活性化し、周囲に数式を具現化させる。

 

『あ、確かこうやって、こうだったっけ……?』

 

 レバーを回し、スナップライドビルダーを展開させまたもや驚きの声を上げる。

 

【Are you ready?】

 

『え……?あ、へ、変身?』

 

 そして、戸惑いつつそんな声を出し、彼女は初めて変身した。

 

『……?お……、おぉ?……これなら』

 

 少し戸惑いの声を上げ、スマッシュへ立ち向かう。それがこの世界の二色のヒーローの、初めての初陣だった。

 

『おりゃーァッ!』

 

 

 激しい戦いが終わった後……。

 

 ボロボロになりながら喫茶料理店に戻ってきた戦兎に、惣万は優しく声をかけるのだった……。

 

『お帰り』

『ただいま……、えへ』

 

 

 

 

「成程、道理だ……つながったな。だから惣万はIS学園(ここ)に戦兎を連れてきたのか」

 

 その話を聞いていた千冬姉たちは、頷き合うと戦兎に手招きをする。

 

「ついて来い、お前の記憶に関係があるかもしれん……。それに、アレについて調べられる技術を持つ者がいなかった。お前なら、もしかすると……」

 

 

 場所は更に移動して学校の地下施設。俺までここに入って大丈夫か?何か、奥にISがあるんだけど、てかもしかしてあれって暮桜…――――。

 

「コレは?」

 

 因幡野先生の前にあるのは金属光沢を放つ立方体。

 

「入手経路は秘させてもらうが、惣万がファウストの襲撃にあった原因になったものだ。名称は“パンドラの箱”、若しくは“パンドラボックス”と呼称されていた。その構造はさっぱり分からん、ISのコア以上に文字通りのブラックボックスと化している」

「――――あれ?これ……この側面、どこかで」

「……?」

「あ、何でもない。分かったよ……。自分の記憶に関わることだ、やってみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、そろそろパンドラボックスの解析を始めたところかな?いよし、んじゃまぁ……一夏に揺さぶりをかけに行くとしますかね」

 

 彼は片手にロケットのレリーフがある水色のボトルを握りながら、そう呟いた。




 二十四時間テレビの石ノ森章太郎物語……ビルドの最終回と違うベクトルで面白かった……。

※2020/12/12
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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