IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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???『今回はお前と、か?』
戦兎「げ、ナイトローグ…。お前の声聞きとり辛いんだよ、ノイズキャンセリングしてやろうか?そうしたらオレ特製の声紋認証で即座に指名手配だけどね!」
???『無駄だ。お前の発明品など私の足元にも及ばない。ジャミングは絶対に敗れんよ。何より、指名手配されたとしても何ら問題がないしな』
戦兎「…お前、すっげぇウゼェんだけど。何、自分が一番じゃないとダメなワケ?そういうやつって嫌われるよ?」
???『少なくとも、貴様よりは頭脳、戦闘技能、身体能力は上回っている。事実を客観的に述べただけに過ぎない』
戦兎「じゃあそのデータに追加しといてくんない?人格に大いに問題ありとか、若干キモイとか…いや何いつもみたいに駄弁ってんだオレ…」
???『む、確かに……――――この前書きでは闘争本能などが抑制されるのか?興味深い…』
戦兎「つーか何で名前の部分???なんだよ、ナイトローグで良くない?」
???「あ、今回で私の正体バレだからだな。と言う訳で、全国七十万の王国民諸君、神を…崇めよぉぉぉぉぉ!いやっふぅぅぅっっっ‼」
戦兎「え、ちょ……おまっ‼」


第三十三話 『善と悪のサイエンティストたち』

 織斑節無はアリーナから追い出され、待合室で膝を抱えて爪を噛む。がりがり、がりがりと不規則で耳障りな音が不気味に響いていた。

 

(……仲間外れにされた。『ママ』ならきっと一緒に遊びましょうって言ってくれるのに、あんなに『ママ』になってくれそうなモノばっかりだったのに、どうして僕を褒めてくれないんだ。こんなに良い子で愛されるべき子どもなのに。何も悪いことしてない弱い人間なのに、寄ってたかっていないもの扱いされなきゃならないんだ?間違ってる、こんなこと絶対間違ってる。どうして『ママ』に分かってもらえないんだ。僕の『ママ』なんだから分かって然るべきなのに。優しいことと分かり合うことが良い子が守るべきルールなんだよ?それをできないなんて……あぁかわいそう、『ママ』に教わってないんだ。僕は習ったよ、千冬姉さんよりも前の『ママ』がしっかり……――――)

 

「…『…あら』」

 

 思考の坩堝に、甘美な美しい声。節無がはっと顔を上げて周囲を見てみれば、誰かがいる。遠くから足音が聞こえてきた。

 

「あ、ぁ…あ?」

「『かわいそうにね、節無。大丈夫?』」

 

 そこには、アタッシュケースを持った白衣の女性が立っていた。その顔立ちはきりりとしており、どこか世界最強のIS操縦者を思わせる……。

 

「『……もしかして、覚えて、ない?ごめんなさい、あなたを千冬の所に届けたのはまだ小さい頃だったものね』」

「ぅ、ううん!?大丈夫!覚えてる、覚えてるよっ、『ママ』ぁ!」

 

 転がるように走り出し、その豊かな胸に顔をうずめる節無。それに嫌悪感を抱かず、慈母の如き眼差しで受け入れる一人の女性。

 

「『ふふっ、甘えん坊さんなんだから……』」

「うふふっ、『ママ』、『ママ』ぁ…」

 

 彼女は節無の黒髪を愛おし気に撫でて、再会を喜んでいるらしい。

 

「『寂しくなかった?』」

「ううん!大丈夫だった!みんな僕を虐めたり、褒めてくれなかったりだったけど、僕頑張った!頑張ったよ『ママ』!」

「『そう、良い子ね……』」

「『ママ』はどうして?どうしてここに来たの?」

 

 彼女の長い黒髪が、風もないのに揺れる。蛇のように、てらてらと艶やかな光を放っている。

 

「『あなたにやってもらいたいことがあったのよ…貴女じゃないとダメだと思って顔を出したんだけど、頼めるかしら?引き受けてくれたら……』」

「そうしたら?」

 

 小首を傾げた年不相応な少年の頭に、暖かな手が置かれた。

 

「『……もっと褒めてあげる。やってくれる?』」

「!……やるっ!」

 

 

 

 

 一方、アリーナ内では、正体不明機が身を捩りながら叫び声を上げていた。

 

「さてさて、暴走してるねぇ……あのIS」

 

 それを見て傍から見れば不用心に近寄るツートンカラーの仮面ライダー。彼女は変身を解除し、トレンチコートの女教員の姿に戻る。

 

「危険です!因幡野先生、ここは私達が何とか…――――」

「え?何。あの暴走を止めればいいんでしょ?出来るよ、オレ」

「――――……え?」

「だって、てぇぇっん↑さい↓科学者ですから!こんな状況でも覆して見せよーじゃないか!」

「「「「え、ぇぇぇぇェッ!?」」」」

「……だったらもっと早く来て欲しかった…」

 

 いとも容易く言い切る因幡野先生に、IS学園のメンバーは呆れるやらビックリするやら。更識簪のツッコミが虚しく響くのだった。

 

 

 

 

 彼女が何故こうも傲岸不遜な言動ができるのか、根拠となる理由はもちろんある。遡ること少し前……。

 

「うーん、戦闘中のISのデータは不明だけどどう見てもコレ暴走中だねぇ……」

「どうするんだ?戦兎さん」

 

 一夏が尋ねると、戦兎は懐から金色のボトルを取り出した。そのボトルには錠前のレリーフが刻まれている。

 

「……、それって」

 

 第六感にビビッと来たらしい。一夏は拳に握っていた青いフルボトルに視線を向けた。

 

「あのISを有効に対処するには、オレのてぇぇっっんさい的な計算によるとぉ、ドラゴンのフルボトルが必要なんだよねー!…――――つーわけで一夏、貸して?」

「ベストマッチのことか?それハリネズミと海賊とは反応しなかったんだろ?ただの消去法じゃねぇか。てんさい(笑)とか」

「ぅっさいよぉ……いじけるよぉ……?」

 

 最近の戦兎の様子からどうにも辛らつな一夏の言葉に、彼女は膝を抱えて右手で廊下に『の』の字を書く。しかし欺かれることなかれ、嘘泣きとそういうパフォーマンスである。

 だが、付き合っていると無駄に時間がかかることを一夏は知っていた。

 

「……――――っ、失くすなよ!」

「お、ありがとー!ふっふーん、このてぇん↑さい↓科学者様が失くすと思う?」

「日頃の言動を考えろ馬鹿。色々危なっかしいんだよアンタ」

「ば、バカ?言うに事欠いて馬鹿!?ど、どう考えても一夏の方がばかじゃんっ!」

「俺は筋肉バカ、アンタは頭良いけど馬鹿。ほら、バカと天災は紙一重っていうじゃん」

「んなわけねーだろ!んなわ…んにゃわ、け…?」

「あれ?ガチ凹み?」

 

 意外にもその一言で自称てぇん↑さい↓科学者は完璧にいじけたのだった…。何とか一夏の子守り技術で事無きを得たが、それは完全なる余談である。

 

 

 

 

 

「(んんっ、まぁそれはともかく!)さぁ……実験を始めようか」

 

 彼女はいつものキメ台詞を口にすると、ポケットから青と金のフルボトルを取り出し、シャカシャカ音をたてて振る。

 その腕の動きと共にアリーナ内に数多くの数式、公式が実体化し飛び交う。その不思議な光景はISの常識をはるかに超えた現象であり、IS技術者や政府要人たちは開いた口が塞がらなかった。

 

【ドラゴン!ロック!ベストマッチ!】

 

「ぃよっし!予想通り!」

 

 ベルトにセットした瞬間、D/Rのマークが空中に投影された。戦兎は機嫌よくレバーを何度も回転させ、スナップライドビルダーを展開させる。

 

【Are you ready?】

 

「変身!」

 

 その言葉が合図となり、青と金色の装甲に挟まれる戦兎。

 

【封印のファンタジスタ!キードラゴン!イェーイ!】

 

 変身が完了した戦兎……いいや、仮面ライダービルドは龍と南京錠のアイレンズで暴走するISを見て、指で顔のアンテナをなぞり、言い放つ。

 

「勝利の法則は……決まった!」

『AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 

 彼女は吠え立てる漆黒のISに向かって駆け出した。

 

「……っ、気を付けてください!おそらくですが、あのISから立ち上る煙が搭乗者の身体強化と理性を奪っていると思われます!このまま戦闘不能にしても……後遺症が残る場合も……」

「問題ない、マヤマヤ!」

「マヤマヤ!?変なあだ名付けるの止めてくださいよぅ!」

 

 マヤマヤへの軽口を忘れず、戦兎はアクロバティックな挙動で翻弄していく。

 バーサーカーⅣが振り回す黒く変色した雪片弐型を、フットワーク軽く地面を滑るように無駄なく避けるビルド。そして蒼炎を纏った正拳突きやニードロップでダメージを与えていく。

 

『AAAAAAッ‼』

 

 じれったく思ったのだろうか、バーサーカーⅣは雪片弐型の『零落白夜』を発動させた。

 黒と白の一閃が蒼炎を切り裂き、ビルドに迫る。

 

「おっと……それが噂に聞く零落白夜!でもね?」

 

 ビルドは金色の左腕『インターラプターアーム』でその一撃を容易く受け止めた。

 

 その装甲には、敵のエネルギー攻撃を遮断し、さらに左手『BLDセキュリティグローブ』で雪片弐型に組み込まれている安全装置を強制作動させた。

 

「これ、ISじゃないんだよね?残念でした!」

「…うそぉ。あれ、ただのパワードスーツなの?それにしては、ISと互角に戦えて…」

「…分析開始…。間違いない、ISコアは存在しない…。因幡野先生の身体能力が織斑先生レベルに高いってのもあるけど、パワードスーツにしては桁が違う…」

 

 アリーナの様子を見ていたISの関係者の中には驚愕の声を上げた者もいた。ISにおいてシールドエネルギーを無効化させる零落白夜は絶対的な優位性を持っている。だがしかし、今目の前にいるパワードスーツの人物には、その能力が通じなかった。

 

 ……――――それが意味する事とは、最悪『白騎士事件』の二の舞。彼らにとってはISの絶対神話ともいうべきパワーバランスの崩壊が始まったとも言える。

 

「でも、流石に武器を持たれているとリーチが違う。フェアプレイと行こうか!ハァ!」

 

 そんな思惑を知ってか知らずか、戦兎は戦う。目の前の正義を守るため。

 彼女は左腕から黄金のエネルギー状の鎖を射出し、雪片弐型を絡め捕った。すると黒かった外見が真っ白になったかと思うと、粒子状になって元の持ち主の元へと還って行く。

 

『AAA……あああ……aaaaaa!』

「それじゃ、問題は搭乗者の安全だね。確かこのフォームの右足は……、ッ!閃いた!」

 

 呟くと手早くグルグルとレバーを回転させ、右足に金と青のエネルギーを充填させるビルド。

 

【Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

「ハァァァァァッ!」

 

 黄金の鎖がのたうち、バーサーカーⅣの身体が雁字搦めになる。バーサーカーⅣは体を激しく動かし、キックが炸裂する直前に鎖を振りほどくが、最早遅かった。

 

 ビルドの蒼龍纏う一撃は、漆黒のISに到達する。

 

『AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!?』

 

 黄金のエネルギーが宿る右足が煌めく。

 ライダーキックは両腕をクロスしガードしたバーサーカーⅣの絶対防御を作動させる。さらにバトルシューズ『ロックアップシューズ』の効果はそれだけにはとどまらない。封印のファンタジスタの名の通り、正義のヒーローの一撃は搭乗者の理性を蝕む『疑似プログレスヴェイパー』の発生を停止させた。

 

「U…Uuuuuuuu…」

 

 バーサーカーⅣの外観に変化が生じる。黒い煙を放出していた身体は徐々に本来の白と紫のツートンカラー『ランスロット』のものへと変化していく。

 

「……あ、あれ……――――ここ、って…どこ…――――?うぅ……?」

 

 ランスロットが量子還元されていく。そのせいでISを操縦していた小柄な少女がアリーナ内に転がり落ちた。

 

「……!危ないですわ!」

「セッシリアナイス!蘭!?アタシよ、分かる!?」

「山田先生!」

「ハイ!直ちにバイタルチェックを!運びましょう!」

 

 IS学園のメンバーたちに囲まれ、搭乗者は保護された。小柄な体躯が震えている。彼女の身体が、如実に危機が迫っていることを告げる。焦る鈴が周囲への警戒を解いた…のが拙かった。

 急激に高まる殺気に真っ先に気付いたのはセシリアだった。

 

「…ッ!皆様!危な…ッ!」

『遅い』

 

【アイススチーム!】

 

「キャァァ‼」

「うぐぁ!うっそ、でしょ…!」

 

 冷気がセシリアと鈴音を襲う。続いて周囲に暗雲が巻き起こり紫電さえ轟きだした。

 

【エレキスチーム!】

 

「は、はや……!うわぁ!?」

「簪ちゃん⁉だいじょ……うぅ!」

 

 更識姉妹が吹き飛ばされる。とっさに保護した少女を背に隠し、傷つけなかったことは彼女らの阿吽の呼吸の為せる技か。

 

【スチームブレイク!Bat…!】

 

「皆さん!?……うわぁっ!」

 

――――ドガガガガンッッッ‼

 

 高速移動したナイトローグの通り過ぎざま、振り返りざま、そしてゼロ距離での攻撃を受け、ISを纏っていた人間たちは行動不能に陥ってしまう。

 

「……!ハァァッ‼」

『フン!』

 

 ビルドは瞬時に身体中に蒼炎を纏わせ、強化状態『ブレイズアップモード』に移行し、接近してくるナイトローグに強力なパンチを放つ。それを体を回転させ、ドリルの様な錐揉み回転キックで迎え撃つナイトローグ。

 

――――ドッガァァァァァァンッッッ‼

 

 土煙を上げ二人のパワードスーツの人物が視界から消える。

 大量に立ち昇る煙が如く、生徒たちの心にも靄がかかったよう。さすがにこれだけのパワーでは、どちらも無事では済まないのではないか…そんな不安が蔓延し始める。

 

 ……――――やがて土埃が治まるとアリーナに残った人間の目に老若男女問わず目を疑う光景が広がっていた。

 

『お見事お見事、いやぁ、無理な改造を重ねたスクラップ同然の役立たずのISだったが、最後の最後に隙を作ってくれたことには感謝だな……。世界に仮面ライダーの恐ろしさを良く知らしめてくれたよ……』

「何?」

『この惨状を見て分からないか?ライダーシステムが、如何に殺傷能力がある兵器かということを、お前は今ここで示してしまったのだよ!』

 

 

 アリーナ内には、ナイトローグとビルドを中心に、半径二十m近いクレーターができあがっていた。

 そのなかで、二人は剣で鍔迫り合いを続けている。

 

 

「…――――ふざけんな…!コレはそんな力じゃない…ッ!」

 

 ビルドは人間を道具扱いするナイトローグが、ファウストが許せなかった。そして恐らく目の前にいる人物とは絶対に相容れることは無いということにも気が付いた。

 

「やっぱり…、お前とは何時か決着をつけたいと思っていた…!」

『ふん……、実験動物(ウサギ)風情が』

 

 ビルドはキックボクシングの様な構えをとり、ナイトローグは片手にバルブがついたブレードを出現させる。

 そしてお互いの足が砂利を鳴らすと、火花が散る。

 

『「はぁっッ!」』

 

 ナイトローグはスチームブレードを、ビルドは左腕の『バインドマスターキー』を振るい、再び鍔迫り合いを開始した。

 

「なぁ、何故世界に武力行使を行う?何が目的なんだ……ッ!」

『何故か……、か』

 

 その時のナイトローグはどういう訳か、今までの様な狂人の気配は感じられず…ただただ悲し気だった。

 だが、それも刹那の間。すぐに今までの狂気を纏い、ビルドから距離をとる。

 

『目的ならば教えよう……。お前が正義の為に使っている“科学の力(ライダーシステム)”と!“はた迷惑な人間の夢の残骸(インフィニット・ストラトス)”が多くの人間を傷つけ、殺し!この世界を崩壊させる……。もう間も無くその第一段階が完了する‼もうすぐだ、もうすぐで、新世界の到来だ…‼』

 

 両手を天に掲げ、神からの啓示を受けた狂信者の様にうっとりと歩む悪党。それを見て一段と激しく身体の蒼炎を燃え滾らせるビルド。

 

「ふざけるな……!科学はそんな為にあるんじゃない‼」

『む?』

【Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

 

 レバーを回転させ、右手に龍のエネルギーを宿らせ、ナイトローグに殴り掛かる。

 

「ハァァァァァァア‼」

『ぐ、ぬ……ぅん……ハァ!』

 

 拮抗したかに見えた力。

 だが、それでも……――――。ナイトローグには通じなかった。クロスした腕でビルドの右腕を上に跳ね上げ、ナイトローグは掌底でビルドの腹部に凄まじい一撃を加える。

 

「うぁッ…!」

 

 その衝撃で、地面に何本かのボトルが転がり落ちてしまう。

 

「まだだ……、まだ……うぅっ!?」

 

 腹ばいになったビルドは立ち上がろうとするも、突如として変身が解除された。アリーナ内には、口や頭から血を流している痛々しい女性が倒れているのみ。

 正義のヒーローは、いなかった。

 

『……それは体に負担がかかるフォームらしいな。時間切れか。さて、ダイヤモンドフルボトルと……』

 

 呆れたようにビルドに近づくナイトローグ。そして一本、また一本とボトルを回収しながら言葉を続ける。

 

『残念だったな。貴様のハザードレベルではチューンアップした私のナイトローグにダメージを与えることはほぼ不可能だ……ム?』

 

 余裕綽々だったナイトローグは、突然言葉を切った。突如として腕に痛み、そして蒼いスパークが発生している。

 

『!……フム、先程の攻撃のレベルは一時的だが……3.9を超えようか、といったところか。……中々だな』

 

 ナイトローグは一瞬、自分にダメージを与えたビルドに興味を覚えたようだったが、無情にも思考を切り替える。そしてトランスチームガンを虚空から取り出しバットロストフルボトルをセットした。

 

【Bat…!】

 

『だが、ひとまずは自分の無力に泣くが良い』

 

【スチームブレイク!Bat…!】

 

「うわぁぁぁぁッ!?」

 

 傷だらけになった戦兎に、紫色のエネルギーを纏った巨大な光弾が放たれる……。それを地に臥したIS学園の生徒たちは、見ていることしかできなかった。如何に叫びを上げようと、その攻撃を防ぐ手段は……――――彼女たちには無かった。

 

 

 

 

 

 一瞬の閃光。そして、鼓膜を破るが如き轟音。人間に向かって飛ぶ巨大な光弾が、ひどくゆっくりに思えた。爆発が起こったというのに、妙に静かな……――――おかしな空間だった。

 

 

 

 

 

 

 アリーナ内は無音に包まれていた。まずその静寂を切り裂いたのは代表候補生たち。目の前で立ち昇る黒煙に、ようやく脳裏が追い付いた。

 

「……ッ!そんな…――――?因幡野先生……?ッ因幡野先生!?」

「うそ…?」

「……、ファウストォォォォォッッッ!」

 

 あるものは怒り、あるものは否定し、あるものは叫んだ。その悲痛な心の声を受け、悪党は嗤う。

 

『ハハハハハハハハハァ‼なぁんだ、この程度かァ‼』

 

 そして顔をアリーナ席に向け、ぐるりと見渡す。バイザーに映るのは、生徒の、技術者の政府要人の恐怖に歪む貌、顔、かお……。 

 

『哀れで……無様で……惨めなものだ、正義のヒーローと言うのはなぁ?ただの無駄死にだったじゃないか⁉コレが、世界だ‼』

 

 その場にいた者には分からないが、ナイトローグは心の内をさらけ出す。

 

『“もしお前がその力を我々に向けたら?”“その時は我々はISで戦えるのか?”“そして生き残れるのか?”そう怯えられ、恐れられ……その結果がこれだ‼馬鹿だろう‼称賛もなく、名誉も見返りもなく、機械の様に使い潰される‼それがお前の望む正義の味方とやらか‼バカげている‼…………ふざけてる、ふざけているふざけるなふざけるなァァあぁぁぁあぁぁァァァァァァ‼』

 

 それは誰に言ったかは分からない、絶望に満ちた言葉だった……。

 

「…?ナイト…ローグ?……、っ‼」

 

――――そんなことは無い……!

 

 その時、アリーナ内にいた人間たちは気が付く。

 土煙の中から声が聞こえる。正義の味方の……ボロボロになっても諦めない、力強い彼女の声が。

 

「たとえ報われなかったとしても……たとえどんなに孤独であろうと……オレは見返りなんて期待しない!」

『何……?』

 

【ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?】

 

 煙の中から、足音が聞こえる。

 

「誰かに手を差し伸べて、誰にも知られることがなく、それが自分を犠牲にしただけだったとしても……オレは皆の明日を創る!それがオレが望む理想の、“仮面ライダー”だ!」

 

【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!】

 

 

 希望を遮るが如き煙の中から……――――正義の味方(仮面ライダービルド)が現れた。

 

 

『……フハッ!それが貴様の(こたえ)か!?嗤わせてくれる……――――、笑わせるなぁ!はっきり申し上げよう、貴様などに正しさなど無ァい‼イヒャハハハハハッ‼ヴァハハハハハァ‼』

 

 ナイトローグはひとしきり笑うも、やがて痛々しいものを見るかの様に目線を反らした。

 

『認めろよ……。所詮、お前の使っているライダーシステムも、あのインフィニット・ストラトスも!世界中の人間には軍事兵器としか認識されない!科学が創る未来は……破滅だぁぁぁぁぁッ‼』

「そんなことはない!結果はどうあれ篠ノ之束は科学を発展させた……それは称賛に値する!」

『ほう……?自己肯定か?それとも世界をこんなことにした篠ノ之束(天災)に肩入れをするのか?』

「科学自体に善悪は無い!科学を軍事利用しようとするのは周囲の思惑だ‼」

『ならば世界に善など存在しない!人間はどこまでも悪であり、愚かであり、科学の力で軽々しく命を弄ぶ‼』

 

 片手で眉間をおさえる様なポーズをとり、ビルドを嘲笑う夜の悪党(ナイトローグ)。しかし、天才科学者(ビルド)は決してその信念を曲げようとはしなかった。

 

「……――――やっぱり、平行線だな……」

『その様だ……、分かっていたはずだろう』

 

【Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

【Bat…!スチームブレイク!Bat…!】

 

 ならば言葉は不要。互いにお互いの信念を乗せた一撃を。

 

 ビルドはジャンプし、回し蹴りの様にナイトローグへ足を振り抜いた。

 

 ナイトローグは空中に黒煙を放ち、それに向かって翼を広げ得た推進力で強烈な両脚蹴りをビルドに放たんとした。

 

『ハァァ!』

「ハァァァァァッ‼」

 

 そして、赤と青、黒と黄色の二つの閃光が縦横無尽に空へと放たれる。激突した二人の両脚。ずっと続くのではないかという長い拮抗状態は一瞬。激しい稲光と共に、善と悪の科学者の乾坤一擲の攻防に……――――決着がついた。

 

「うぉぉぉぉぉっっっ‼ハァァぁぁぁぁぁ‼」

『何……っ‼うぐあぁァァァァ‼』

 

 赤と青のヒーローが、漆黒の怪人を吹き飛ばす。彼女はよろけつつ、大地を滑りながらも無事着地した。役目を果たし終えたとでも言うかのように、赤と青の装甲は雲散霧消。

 傷だらけになりながらも、因幡野戦兎が勝利を掴んだ。

 

「……や、った…」

「………、待ってっ!?」

 

 代表候補生たちは安堵の表情を浮かべたものの……まだ戦いは終わっていなかった。

 

「……如何やら、先のキードラゴンフォームで、防御機能がロックされていたらしいな」

 

 土埃の中から一人の人物が現れた。長髪をたなびかせ、パンツスーツの上に白衣を着る女性。彼女こそが、ナイトローグの変身者。

 

「お前……っ‼まさか……っ‼」

 

 目の前に立った人物を見て、因幡野戦兎は驚愕の表情を浮かべる。彼女の顔には覚えがあった。何故ならば……。

 

――――篠ノ之束に気を付けろ……

 

 スタークに言われた言葉が頭の中で反復する。そう、目の前にいる人物こそは……――――。

 

「篠ノ之……束…――――!?」




 やっぱこのナイトローグ変身者……強すぎた?戦兎+数の優位があるIS代表候補生たち、それにチッピーが一目置く山田先生までも瞬殺って……。一体ナカノヒトダレナンダロウナー。(そしてキャラもかっとび過ぎた……。神の才能の弊害か……)

※2020/12/16
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部
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