IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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一夏「変身!がしゃがしゃっ、ぎゅるーん!ぼぉぉぉ、で、ばーん!参上!」
戦兎「いきなり馬鹿じゃないと分からない怪文章やめてくれないかな?ちゃーんと説明しなさいよ、世界唯一のIS育成機関に入ったんでしょ?」
一夏「あ?なんでわかんねーんだよ。分かるだろノリで。戦いだってそうだ、大事なのはノリだ。ノリのいい方が勝つんだよ」
戦兎「何そのライヴ感!?ないからね、主人公補正とかが物理法則凌駕することなんて一切ないからね!ねー箒ちゃん、頼む!一夏に言ってやってよちゃんと前書きであらすじ紹介してって!」
箒「ふむ?何を言っているのだ因幡野先生は、ちゃんと前回のことが簡潔に伝わったではないか」
戦兎「え?うっそ……すっ、鈴ちゃーん!?」
鈴「へ?いや、分かりやすかったんですけど?」
戦兎「え、ぇえ…?マジかよ…?あ、織斑先生ちーせんせいチッピー先生!?」
千冬「…スマン。今の出理解できた」
戦兎「なんでだぁぁぁぁぁぁぁ!?」
セシリア・簪「「…テンションに身を任せたらわかっちゃった…」」


第三十五話 『新たな火種へのエボリューション』

【ビートクローザー!】

 

 ベルトから電子音声と共にランナーが空中を巡り、一本の剣を形成する。

 

「っしゃぁ!行くぞゴラァ!」

『フン……』

 

 一夏……今や仮面ライダークローズは剣身にイコライザーメーターがついたブレード『ビートクローザー』を手に持ち、ナイトローグに斬りかかる。

 

「でやっ!ハァ!ぜりゃァァァ‼」

『……、ッ!流石ブリュンヒルデの弟、か!』

 

 自然体から疾風のように繰り出される斬撃。それをナイトローグは紙一重で避けるものの、今までは感じさせなかった焦り等の感情が見え隠れする。

 

「戦兎さん、一夏……変身するの初めてなんですか?あの太刀筋、どう見ても使い慣れているようにしか見えないのですが……」

 

 箒は倒れていた代表候補生たちを安全地帯へ肩を貸して移動させている途中、おぼつかない足取りで隣についてきた戦兎に尋ねる。

 

「過去に一夏がISのブレード『葵』を使って戦ったデータもクローズドラゴンにインプットされているからね…。それが反映されているのかも……あ、いたたたた…~ッ!」

 

 一旦間をおいて箒は言葉を続ける。

 

「……もしかして、あれは最初から一夏の為に……?」

「えぇ?違うヨー、ドラゴンフルボトルは体に負担がかかるからその為に造ったデバイスで……うん、仮面ライダービルドクローズドラゴンフォームにするはずだったんだヨー」

 

 そっぽを向きつつ棒読みで言う因幡野先生。

 

「……――――そうですか。そういう事にしておきましょう…」

 

――――それでも………………

 

「ありがとうございます」

「…ン。ど、どーも…(やっぱなんでかな、この子には敵わない気がする…)」

 

 箒はニコッ……と花が咲いたように微笑み、混じりっ気無しのお礼を戦兎に言うのだった。

 

 

 

 

 剣戟をナイトローグと繰り広げながら、クローズは剣のグリップエンドを一度引っ張る。

 

【ヒッパレー!】

 

 軽快な待機音と共に、剣の身に蒼炎が噴き出した。

 

【スマッシュヒット!】

 

「ハァ!」

『フン……!』

 

 力強くビートクローザーが蒼炎の軌道を描き、ナイトローグに襲い掛かる。だが、それはナイトローグの腕のカッター部分で受け止められ、逆にスチームブレードがクローズのボディに袈裟懸けに振るわれた。

 

「危な!」

『今のを避けるか……だが、今のお前のハザードレベルでは私に傷一つ付けられない』

「まだだ!」

 

 今度は黄金のフルボトルを中央の穴にセットし、グリップエンドを二度引っ張る。

 

【スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!】

 

 黄金と青の炎が剣身に纏わりつき、クローズの身体を照らし出す。

 

【ミリオンスラッシュ!】

 

「ハァァ‼」

『ロックフルボトルか。だが、それが分かっていれば……!』

 

【アイススチーム!】

 

 ナイトローグはバルブをひねり、ブレードでそれを受け止めようとする。だが……。

 

「甘い」

 

――――ギャリンッ!

 

『……!?』

 

 気が付けば、ナイトローグの体にビートクローザーが当たり、胸の装甲から眩い火花が噴き出した。

 

『今のは……』

 

 攻撃を避けたと思っていたらしいナイトローグは驚愕で自分の胸を眺める。

 

『……何をした!』

 

 怒り交じりに彼女の背後で残心するクローズに尋ねる。

 

「……篠ノ之流、『鍔迫返し』……」

 

 クローズはビートクローザーを正眼に構え直し、幼い頃に習った剣術の名を誰ともなく呟いた。そして体の動きを止め、重心を丹田に集めると……。

 

「……ハッ!」

『クッ……!』

 

 スチームブレードとビートクローザーが激しい音を立てて火花を散らす。今の状態のナイトローグは防御システムが停止している為に、極力攻撃を受けるわけにはいかないのだ。それ故、彼女はペースを乱され、イラつきながら言葉を吐き出す。

 

『忌々しい……!よりにもよって“篠ノ之”だと!?どこまで私の邪魔をすれば気が済むのだ、篠ノ之ォ‼』

「どーやら、何か因縁があるみてぇだな……。けどな」

 

――――ギャリン!

 

 力強くナイトローグの装甲を斬るクローズ。血が噴き出すように、眩い火花が散る。

 

『ムゥ!?』

「お前さ、どの口が言ってる?アンタが篠ノ之束だろうがなかろうが関係ねぇ……箒を傷つけたお前が……!ファウストが!俺の女の(その)名前をそんな理由でほざいてんじゃねぇよ‼」

 

――――ズバァンッ!

 

『グオォォ!?』

 

 箒を傷つけた、それだけで一夏がナイトローグと戦う理由としては十分だった。

 

「一夏……――――」

「うへぇ、甘いねぇ…どんだけよあの箒バカ」

 

 その言葉を聞いて箒の顔が赤くなる。火傷を負ったわけでもないのに頬が熱に苛まれる……。だが、悪い気はしない。むしろ大嫌いな女の顔を見て冷めていた心が温かい……。

 

『ヴゥ……!』

「しゃぁっ!攻撃が通じる。畳みかけ……、ん?」

 

 

 突然アリーナの一か所に煙が立ち込め、ワインレッドのパワードスーツの人物がガーディアン達と共に現れる。

 

『おっとと……、どいつもこいつもノってるねぇ』

「ブラッドスタークじゃねーか。このタイミングで、か……」

 

 スタークの行動の読めなさから、クローズはさらに警戒心を高める。丁度スタークが出現した地点の近くにいた戦兎は、スタークが片腕に担ぐように持っていたモノに目を剝く。

 

「……!それは……パンドラボックス!そんな、地下施設に収容したはずなのに……!」

『ただのパスワード施錠だろ……?不用心すぎるぜ、お前等。ロックフルボトルでも使えよ』

 

 へらへらと腕を振るスタークだったが……。

 

――――チャキッ……

 

『ん?』

 

 ナイトローグがトランスチームガンをスタークに向かって構えていた。

 

『スターク、パンドラボックスを持って……どこに行くつもりだ?』

『オイオイ、殺気立つなよ……、追い詰められてるからってさぁ……?』

『黙れェッ‼とっとと答えろッ‼』

『決まってるだろ、俺たちの帰る場所は一つだ』

 

 心配すんなよ~、と言ってフレンドリーにナイトローグの肩を叩く。

 

『そう言うものの、逃走ルートが予定と違うな……!』

『見ての通りだ。予定が狂ったんだよ』

 

 その言葉と共に、太陽を背に長髪の戦士がアリーナ内に飛び込んでくる。

 

「待て、スターク‼」

『……っ来たな、ガーディアン達!』

 

 その白刃を防ぐためスタークは腕を水平に薙ぎ、ガーディアンを深紅の壁へと変化させた。しかし声の主は、それすら気にも留めず真一文字にブレードを振るう。

 

「ッはァ‼」

 

 一閃する鋼。裂帛の声と共に吹き飛ぶスタークを守る盾。紙切れ同然にそれを断ち切ったパワードスーツの人物にアリーナにいた人たちの驚愕の視線が集まる。

 

『……成程、理解した。織斑千冬か……』

 

 アリーナに、最強の戦乙女が舞い降りた。体の所々から血を流しているが、未だ戦意は消えていない。犬歯を見せながら息を整え、言葉を投げかける。

 

「スターク……。そして……――――束、なのか…?」

 

 しかしナイトローグに変身した彼女はその質問に一切の反応を示さない。やれやれ、と肩をすくめるようなジェスチャーを織斑千冬への応答とした。

 

『ナイトローグだ……』

「どうでもいいそのパワードスーツの名前など!教えろ……何故惣万の店を襲った!何故妹を傷つけた!何故一夏を襲ったファウストに与している‼」

 

 ナイトローグの名を呼んでもらえなかったからだろうか、彼女の声は目に見えて不機嫌なトーンになる。

 

『私が篠ノ之束だと?本当にそう思うか?』

「何……?」

 

 話題を意味深なセリフで逸らすと、彼女はブラッドスタークに向き直り鈍色の箱を持つ。

 

『では、パンドラボックスを持ち帰るぞ』

『オイオイ、まだ解析データを入手していないんだが?』

 

 ブラッドスタークはチラリと因幡野戦兎に視線を送った。ねっとりした視線を受けて、戦兎は思わず身構えてしまう。これ程気持ち悪かったのは、nascitaで手伝いした際に助兵衛なオッサンにセクハラを受けた時以来である。

 もしかしてスタークの中身って変態なんじゃねーだろうか、などとくだらないことを戦兎は頭のどこかで考えていた。

 

『問題無いだろう、私さえいればパンドラボックスの解析は容易い……核を超えるエネルギーも思いのままだ。それに、この数週間も時間があったのに解析が未だ出来ていない自称てぇん↑さい↓科学者に用はない』

「あ゛?」

「はぁ…もう」

 

 その言葉にカチンときたらしい、箒の隣で戦兎が思わず声を上げた。彼女の頭部に怒りマークが如実に見えている。

 落ち着け、とばかりに箒はトレンチコートの襟首を掴んでいた。うげっ、と変な声が出たがご愛敬。

 

『確かにお前ならすぐに分析できるだろうが……。そういうこっちゃないんだよなぁ……よっと!』

 

 トランスチームガンで近寄ろうとしていた千冬に向かってエネルギー弾を撃つスターク。

 

「ッ!」

「危ねぇ!」

 

 そこに青い影が割り込んだ。

 

「……ッ新しい仮面ライダー!?」

 

 その時になって、ようやく彼女は新たな仮面ライダーの存在に気が付いたようだった。青い龍を模したアイレンズ、片手に持つブレード……。どことなくその姿は白騎士を纏った誰かを思い出し……。

 

「……ッ一夏か!?」

「千冬姉……、あー、その身体……大丈夫か?」

 

 頭をポリポリ掻きながら姉の具合を心配する正義の味方。そして、どこか飄々とした言動に紛れもない(一夏)を感じ、ふっと顔を綻ばせる姉。

 彼女は瞬時に顔を引き締め“織斑先生”に戻すと、安心させようと自分の愛する“生徒”に声をかける。

 

「……問題ない、ただトラックが衝突した程度の怪我だ、すぐ治る」

「そうか、無事で何よりだよ」

 

 そう言って互いに自分の持つブレードを構え、赤と黒の怪人に切っ先を向ける。油断なく光る二振りの剣は、美しい空が写り込んでいる。

 

『…無事じゃねーだろその例え。織斑家ってNEVER?まぁやったの俺だけど』

『スターク、ふざけている場合か、とっとと片付けるぞ』

『へいへい……』

 

 対してトランスチームガン、スチームブレードを持ち、姉弟に立ちはだかるのは二色の害獣。

 

「んじゃ、俺はナイトローグを相手する、箒の為にもな…!」

「では私はブラッドスタークだな。どうにも彼奴は気に食わない」

 

 

 互いに因縁の相手と向かい合うと……。

 

『『「「……ハァ‼」」』』

 

 それぞれ同時に駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 ブリュンヒルデと毒蛇の戦いは熾烈を極める。

 

『全く勘弁しろよな、俺としてはこんなことしたくないんだがなぁ……、おっとぉ!』

「なら、出てくるな!」

『んじゃ、ガーディアンに任せるかね……ほいッと』

 

 トランスチームガンから煙が巻き起こり、数十体のガーディアンが姿を現した。さらにそれぞれが合体し、巨大な二足歩行ロボットに変形すると……――――スタークの力かボディが真紅に染まった。

 

「げ……あれって、研究施設に出たヤツ…」

 

 戦兎は苦々しい表情を浮かべて目の前の巨大なロボットを見る。

 

「千冬姉!使え!」

「……!」

 

 見かねたクローズから一本のボトルが投げ渡された。

 

『おっと、忍者フルボトル、ね……!姉思いの弟だな』

「あぁ、自慢の弟だ!」

『させるか!』

 

 ナイトローグの頭部や肩の煙突から黒煙が噴き出し、ナイトローグの分身がブリュンヒルデの元へ向かおうとするが……。

 

「その技はドイツで既に見た!」

 

 千冬は片手でボトルを振りながら、もう一方の手に持っていたブレードを投げる。すると紫色のエネルギーを纏いブレードは回転。巨大な手裏剣となって千冬の意のままに縦横無尽な軌道を描いた。

 紫電一閃。分身のナイトローグは次々と討ち果たされ、黒煙となって消えていく。

 

『馬鹿な!?』

『オイオイ、お前ニンジャってやつか?スゲェな日本人』

 

 まさかの事態にナイトローグたちは驚きで一瞬固まる。その隙を見逃すはずがない。

 

「どけ!」

『……ッチィ!イチカ・オリムラァ‼』

 

 ナイトローグは身を翻しクローズのビートクローザーを避け、ブラッドスタークの傍に転がり込む。

 彼女が体勢を正して二人の方を見ると、姉弟は赤い要塞兵器に向かい合っていた。

 

「千冬姉。アレ、壊すぞ」

「……織斑先生だ、織斑(夏)」

 

 二人は言葉すくなに交わし、互いの得物をそれぞれ構える。

 そして同時に遥かな上空へと跳躍した。それをさせまいと、ガーディアンは上空に銃弾を連続で放つも、二人の剣戟が飛来する弾丸を打ち掃う。

 

「「ハァァァァァァ!」」

 

 落下と、そして叫びと共に振り下ろされる双刀。青と紫のエネルギーを纏った剣の攻撃が、ガーディアン集合体を頭から真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

 

「……うっそーん…、最強だぁ…」

「もう、一夏が何してもオドロカナイ……」

「織斑姉弟だから、って言えば何とかなる気がしますわ……」

「「「同意」」」

 

 ……それが遠方から見守っていた先生、同級生たちの意見であった。

 

 

 

 

「イェーイ!千冬姉、イエーイ!」

「馬鹿者、後ろを見ろ」

「大丈夫、気付いてる、よ!」

 

――――パァン!ガキン!

 

 トランスチームガンから飛んできたエネルギー弾をノールックで弾き、イラついた様子のナイトローグを見る。

 

『やってくれたな……!』

「おぉ、やってみたら出来たわ」

 

 事も無げに余裕たっぷりに皮肉るのも忘れない。千冬も、こういう時の弟の頼もしさに少し喜ばしくなった。

 

『お見事!』

 

 突如として笑い声、そして拍手が鳴り響く。ナイトローグは眉間をおさえながら、声の主の首を掴む。

 

『敵をほめてどうする、スターク!……ッソ!パンドラボックスは奪取した!逃げるぞ!』

「だからさせるかっての!」

『……ッえぇい!邪魔だ!』

 

 ビートクローザーを構え、ナイトローグたちに斬りかかるクローズ。ナイトローグはブラッドスタークを突き飛ばし避けるも、そこに千冬も加わり、またも混戦になってしまう。

 

 

 

『はぁ……やれやれ。こーいうごちゃごちゃした戦いは好きじゃないんだよね、なんつって』

 

 二体一で戦っているローグを見ながら、ブラッドスタークはライフルにコブラフルボトルをセットし、引き金を引いた。

 

【Cobra…!スチームショット!Cobra…!】

 

 ブラッドスタークの放ったエネルギー弾は、戦い合う三人を巻き込んで爆発を引き起こす。

 

『ッ!』

「おわっと!?」

「くっ!?」

 

 そして宙を舞う鈍色の箱……。

 

「……パンドラボックスが!」

 

 それを受け止めたのはスタークだったのだが……。

 

『そらよっと!』

『スターク!?』

 

 片手で箱の側面を叩き、眩い光と共に戦兎の佇む場所へとトスする。

 

「お、オーライ、オーライ……ッと!」

「ナイスキャッチですわ!」

 

 その時、戦兎が持っていたエンプティボトルの中に眩い光が入って行く。幾何学模様のボトルになった容器がキャッチした時の反動でポケットの中から転がり落ちる。

 

「……っ!?この成分は、パンドラボックスの中の光…?」

 

 偶然(・・)起きた現象に、戦兎は首を捻るしかない。パンドラボックスには、一体どんな秘密があるのだろう。そんなことをふと思っていた。

 一方、敵に塩を送ったスタークにナイトローグが詰め寄っている。彼女はスタークを掴み自分の傍に近づけると、激昂をぶちまけた。

 

『何をしているスターク!パンドラボックスをみすみす相手にやることは無い!我々が所持しておくべきだ!』

『オイオイ、かっかするなよ……それに、悪いことばかりとは限らないぜ?』

 

 その時だった、パンドラボックスが輝きだし……、箱の側面から一枚の板がはじき出される。

 

『よしよし、最後のパンドラパネルが外れたな……』

「パンドラパネル?この板って……?」

 

 戦兎の手に収まった幾何学模様が刻まれた緑の板。それを見て赤い蛇は満足げに頷いた。

 

『……ッ!その板を渡せ!』

「よそ見してる暇があんのか!?お前の相手は俺だ!」

『チィ!』

 

 取り返そうと駆け出すも、青い炎を纏った仮面ライダーに阻まれてしまう。スチームブレードを振るって退けようとするも、クローズの戦闘技術は既にナイトローグとほぼ互角……、勝負は拮抗状態になる。

 

 いいや、よくよく観察してみればそれは違った。どういう訳か戦えば戦うほど、クローズの力が強まっているのだ。徐々にナイトローグは圧されていく……。

 

『こんなバカな…!このハザードレベルの上昇値は異常だ……既に3.4に至るだと……?』

 

 後方へジャンプし、距離を取りながらバイザーを金色に輝かせハザードレベルを測定する蝙蝠のパワードスーツの怪人。

 

「強えだろ?俺だけの力じゃねぇからな……。この剣の振るい方は千冬姉から……」

 

 過去を振り返るような眼差しで剣の身を眺めると、彼はビートクローザーを水平に構える……。

 

「このベルトは戦兎さんから……」

 

 そう言ってクローズはボルテックレバーを握る。

 

「そしてこのボトルは箒から預かった力だ…‼今の俺は……、いいや…俺達は‼負ける気が‼しねぇぇぇっ‼」

『……ちッ!そんな根性論を説明しろなどと誰が言った!』

 

 クローズは力を貯めるように重心を低くし、猛スピードでレバーを回転させる。

 

「オラオラオラオラオラァ‼」

 

【Ready go!】

 

 何処からともなく青い龍、『クローズドラゴン・ブレイズ』が召喚され、主であるクローズの背後に控える。

 

「はぁぁぁぁぁ……!」

 

 クローズは腕を水平に構え、丹田に力を込め……。

 

【ドラゴニックフィニッシュ!】

 

 龍のけたたましい鳴き声と共に吐き出された火炎に乗り、蒼炎と共にナイトローグ目掛け一直線に吹き飛ばされるクローズ。

 

「ドリャァァァァッ‼」

 

 そのまま蒼炎を纏った右足でボレーキックが炸裂する、といったところで……。

 

『!……ならば……コレで!』

 

 とっさにタブレット端末を取り出し、ナイトローグはタッチパネルを操作した。

 

 

――――ドッガァァァァァァン‼

 

 身体から湯気を立てて着地するクローズ。そして難を逃れたナイトローグは爆炎の外に転がり出る。彼は彼女のそのとっさの判断に舌を巻いた。

 

「……ホログラムのスマッシュを身代わりにして逃げたのか」

『チィ……ッ、私の計画が狂ってしまった……!スターク!』

『まぁまぁ、落ち着けよ?そもそもお前が計画を早めたからだろう?その詫びとしてあちらさんを助けてやっても俺に罰は当たらんだろ』

 

 そのブラッドスタークの言葉に彼は噛み付く。飄々とした言動で本心を晒さず、人を傷つけておきながら、その反面人を傷つけたくないと宣う理解しがたい怪人に、彼は怒りが湧いてくる。

 

「てめぇ……!箒を傷つけたと思ったら助けてやると言ったり……一体誰の味方なんだ!」

『言ったはずだ……俺はゲームメーカーだ。俺がこのゲームを支配する。だから俺は誰の指図も受けない』

 

 そうクローズに言い捨てると、彼は足元のおぼつかない仲間に向き直る。

 

『それに、因幡野戦兎ならアレが造れる。そして織斑一夏ならアレが使える……。ゲームがさらに進展するぜ?』

『……まぁ良い…。だが次からは余計なことをするな……』

『はいは~い』

 

 『アレ』という言葉に真っ先に反応した戦兎。科学者の勘だろうか、とてつもなく興味がそそられた。

 

「“アレ”……って?」

『お前が俺達の施設から持っていったメモリ、そこに答えがある……分からないなら次の強襲の時にヒントをやろう』

「……っ、二度と来るな…!」

『つれないねぇ……。そんなこと言うなよ。ま……今日の所はここまでか』

 

 ナイトローグ、ブラッドスタークの両名は、片手にトランスチームガンを出現させた。

 

『……それでは、我々ファウストのデモンストレーション、愉しんでいただろうか、皆様?貴方方の記憶の片隅に爪痕を残せたのであれば幸いだ』

 

 締めくくりの言葉としてナイトローグは観客席にいる各国要人、アリーナ内の様子を学園に届ける監視カメラ、そして仮面ライダーたちに向かって仰々しくお辞儀をする。

 

『ではな、IS学園生徒諸君……。ブリュンヒルデ…、そして仮面ライダー!今後、貴様等のその兵器としての力、存分に戦争の為に振るってもらおう』

『それじゃ、Ciao♪』

『さぁ……戦争の始まりだ……』

 

 そして秘密結社“ファウスト”の先兵二人は影も残さず、煙と共に消え去ったのだった……。世界各国に大きすぎる爪痕を残して……。




 ふぃ~……(某希望の魔法使い)。やっと鈴ちゃんの話が終わった……。いや、ドラゴンはドラゴンだけどほぼほぼ一夏だったな……。そして千冬姉、流石千冬姉略して『さすおね』でしたね。シンフォ〇アのOTONAといい勝負だなコレ……。

※2020/12/16
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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