IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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鈴「蘭?アンタ、大丈夫?」
蘭「あ、鈴さん…その節は御迷惑をおかけしました。どうやらISに乗って皆様に多大なるご迷惑を…」
セシリア「いえ、お気になさらず。どうやら過失はないようですし。あ、始めまして。わたくしセシリア・オルコットと申します。イギリスで貴族の方を少々やっておりますが、どうぞよろしく」
鈴「いや、初めて聞いたわよそんな自己紹介…」
蘭「え、あ。イギリス代表候補生のセシリアさん!?は、始めまして!私、IS学園に入ろうかなとか考えていまして…!代表候補生の皆さんのことは調べてて…!」
楯無「鈴ちゃん、友達が目が覚めたってホント?だいじょーぶ?」
簪「…あ、お邪魔だった…?一応ISのデータ解析終わったよって報告に来た…んだけど…」
蘭「う、うわーっッ!うわぁぁぁぁッッ!何でこんなに有名人の皆さんがぁぁぁぁ!?もしかして私、とんでもないことしちゃってたんじゃぁぁぁぁ!?」
セシリア「有名人ですって…。え、えぇ?代表候補生でもそこそこあるもんですわね…エリートって訳じゃないですのに」
鈴「いや、アンタは代表候補生前の活動とかで有名でしょうが…。調べたら『とんでもないこと』やってたわね…」
簪「…私、簪。よろしく、鈴からいい子だって聞いてる。妹同士仲良くやろう…」
楯無「抜け駆け!?簪ちゃん強か!」
蘭「きょっ、恐縮ですぅぅぅぅ…、一夏さん助けてぇぇぇぇ!」


第三十六話 『受け取ったレガシー』

『財団Xが報告する。IS学園に侵入し、世界各国に新たな脅威を知らしめた秘密結社“ファウスト”。各々の国はその軍事力に対抗するため、また戦力増強の為、軍籍IS候補生さえもIS学園に送り込むこととなった。しかしISのコアには限りがある。故に訓練生がIS学園に行くということは逆に使用できるISが減るということを表している。特に困ったのはヨーロッパ諸国である。急進的に第三世代機、そして第四世代機を開発したデュノア社によってISコアはヨーロッパではさらに希少なものとなった。さらに現在、ISコアの製作が可能な科学者、『篠ノ之束』も行方不明。それ故ヨーロッパ各国は頭を抱えた。我々には力が必要だ、ISを超える力が……、と。

 

 そこで我々財団は彼らヨーロッパ連合に一つの新たな力を提供した……。

 

―資料映像―

 

【ロボットゼリー……!】

 

 ISの前に立ちはだかる金色の戦士。楽し気に笑いながらISの攻撃を避けていく。VTシステムが内蔵された第四世代機を次々に撃ち落としていく。

 その黄金の疾風にも似た一撃は、災害とも称される神威さえ討ち果たす。光速度で飛来するビーム攻撃、1ナノ秒で振るわれる剣、触れれば核爆発さえ生温い衝撃を受ける打撃、それら全てを以ってしても彼は一切意に介さない。易とも容易くそれらを避ける。

 世界最強と互角以上に戦うであろう彼は、細胞レベルで人の限界を卓越した、まさに『超人』と言うにふさわしい。

 

「ハハハ……ハハハハハ!コレが俺の求めていた……祭りだぁぁぁぁぁっ‼」

 

 そしてその戦士は勢いよく左手を振りかぶり、ISに正拳突きを食らわせた。

 

―映像終了―

 

 

そして我々はヨーロッパ連合にその見返りとして、日本……――――いや、IS学園にあるフルボトルの秘密裏の回収という指示を出したのだった』

 

 財団Xヨーロッパ支部長 ナンバー・チルドレン オットー

 

 

 

 

 

 繁華街の一角、三階建ての洋館を改造したレストランカフェ『nascita』。美人な……いや失礼、整った顔立ちの店主が経営するこのレストランカフェは連日大賑わい。故に店主、石動惣万の朝は店で出す食材の買い出しから始まる。今日はお買い得商品が買えたらしい、ご機嫌で鼻歌まじりに店内に入ってきた。

 

「ふふふふん♪へいえ~いぇ~…、…?」

 

――――ガンッガンッガンッ!

 

「え、な…ちょッ!」

 

 けたたましい音が地下から響いてくる。慌てて業務用冷蔵庫のタッチパネルを操作し秘密基地へと降りる惣万。

 慌てて地下室に飛び込むと、彼の目に入ってきたのは……。

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと!?何してんの戦兎ちゃん!?」

「マスター……、それが学園から帰ってきてからあんな調子で……このままじゃおちおち眠れません……」

 

 戦兎はセメントで塗り固められた壁、そこから露出する緑色のホルダーの周囲をハンマーで壊している。クロエが止めようとしているも、彼女は黙々と作業を繰り返す。

 

――――…がらん

 

 緑色の板が外れた。一瞬、妙な静けさが地下室を覆う。ようやく取り出されたそれを持って、戦兎はカフェのマスターに近づいた。

 

「マスター…、これはファウストの連中が言っていたパンドラボックスの側面……。パンドラパネルだ」

 

 ファウスト、その名が戦兎の口から出て、思わず身をすくませるクロエ。

 

「何故アンタがコレを持ってる?答えろ‼」

 

 いつになく真剣な表情で育ての親にも等しい惣万に詰め寄る。

 

「マスター…、アンタはファウストのメンバーなのか……?」

「俺が、ファウストのメンバーか……ね?」

 

 惣万は、疑惑の目線を向ける記憶を失った二人。それを見て、惣万は決意したように戦兎と真っ直ぐに向き合ったのだった。

 

 

 

 

 

 まだ開店していないnascitaに良いコーヒーの匂いが漂う。戦兎とクロエの座ったテーブルにコーヒーカップが置かれ、二人に対面する席に惣万が座る。

 

「確かにお前等が俺を疑うのは当然だな……。だけど大丈夫だ。俺はファウストのメンバーじゃない」

「じゃ、何でコレがある?」

 

 戦兎は傍らに置いておいた緑色の板を惣万の目の前に差し出す。IS学園でパンドラボックスから外れたもの、そして秘密基地にあったもの……その両方を机の上に広げた。それはそっくりそのまま同じだった。

 

「……お前も知ってるだろう?クロエのバングルにはスマッシュの成分を浄化する能力がある。だから昔、クロエはファウストに捕まっていた」

 

 二人は戦兎の隣でカフェラテをすするクロエを見る。

 

「うん……だからオレはクロエの力を引き出すためのボトル浄化装置を造った……」

「そう、クロエは生身でボトルを浄化する際、身体にかなりの負荷がかかる。ファウストではその状態のままボトルの浄化を強制されていたらしい」

 

 クロエがファウストで受けてきた扱いを戦兎は拳を握り締めて顔を歪ませる。

 

「その助け出す最中に俺達はそのビルドドライバーとボトル、パネル……そしてパンドラボックスを奪った。でも、クロエはその時以前の記憶は無くなっていた……。そしてファウストはスマッシュの成分を浄化できるクロエの力を狙って、今もクロエをつけ狙っている」

 

 ハイハイ質問、と手を挙げるてぇん↑さい↓科学者。

 

「ちょっと待って、どうしてマスターはクロエを助けようと考えたんだ?」

「それはな……、俺の昔の知り合いがクロエの養母をしていたんだ……だが、そいつもファウストに関わった所為で死んだ……」

「!?」

 

 昔を思い出すように、とても哀し気に虚空を眺める石動惣万。今にも泣き出しそうな表情になり、目元には光るものがあった。

 

「死んだあいつの遺言が『クロエを助けてやって……』という言葉だった……。だから助けた」

 

 そう言って愛娘を撫でるようにクロエの銀髪を撫でる。それにクロエは頬を桃色に染め、くすぐったそうに顔を綻ばせる。

 

「言わなかったのは悪いと思っている……でも記憶のないお前にそんなことを言っても、さらに混乱させるだけだと思って……言えなかった」

 

――――言えなくて済まなかった……、そしてごめんなさい……

 

 誠実な声色で謝罪の言葉を心から言い、パナマ帽を外して深々と机に首を垂れる彼女にとっての恩人。

 

「……――――大丈夫です、それに、今の家族は……――――マスターと戦兎ですから」

 

 クロエはうっすらと微笑み、彼女の育ての親(石動惣万)の握りしめた手を優しくそっと触れた。

 

「……クロエぇ~、オレのことママって呼んでいいよ~!」

 

 それに同調して潤んだ目で銀髪の少女に抱き着くトレンチコート。だが戦兎が持つ豊満なモノがクロエの顔にぐりぐり当たっている。それが気に食わないらしく、彼女は苦虫を嚙み潰したような顔になっていた。

 

「お断りします。どっちかというと貴女は手のかかる妹のように思えますし」

「ピドイ!?」

 

 グハァ……、グハァ…グハァ、と自分で効果音を入れ(セルフエコー付き)、力なく床にへたり込む戦兎。

 ……余裕あんだろ、と惣万は思ってみたりした。

 

 

 

 

 

 

「んんっ、さて、続けてもいいか?」

 

 床に『の』の字を描きイジケていた戦兎がようやく回復して会話が再開される。人気メニューのモーニングセットを無料で出したら手の平返してすぐさま笑顔になった。お手軽な女だなぁ…。

 

「んぐっ…うん。それでマスター……何で、騙すような事を?」

「全てを隠していたのは……、戦兎、お前がボトルの力を正しく使ってファウストを倒してくれると信じたからだ」

 

 戦兎が手に持っていたラビットフルボトルに視線を落とし、済まなそうに言葉を紡ぐ惣万。

 

「IS学園に向かわせて仕事に就かせたのも、極秘のパンドラボックスの事やパネルの存在をお前自身の手で気付いてもらって、俺が全ての事実を告白するチャンスを作ってもらいたかったからだ……」

 

 目の前のパンドラパネル二枚を撫で、戦兎の目の前に持っていく。

 

「俺さ、ファウストからお前等を助ける為にちょっと薄ら暗いコトやったし、言い辛かったんだよ。それに、お前にばかり戦わせて、後ろめたかったし……」

「そんなこと……」

 

 戦兎が何か言いきる前にもう一度頭を下げる惣万。

 

「言わなくてすまなかった。……ごめんよ」

 

 彼は誠心誠意伏して、静かで悲し気な声で二人に向かって謝罪する。

 

「だけどコレだけは信じてくれ……」

 

 ゆっくりと顔を上げ、決意を固めた精悍な顔で二人を見据える。

 

「ファウストは俺の知り合いを殺し、お前の記憶を奪い、クロエの身体を酷使した。いいや、それだけじゃない。あいつ等は一夏を誘拐し、箒ちゃんに火傷を負わせた…。そんなことあっちゃならない。俺は、人の尊厳を踏みにじるファウストの事が……」

 

 そこで一旦言葉を切り、血が滲みそうなほど拳を強く握り、言った。

 

「虫けらみたいに人を殺すファウストの事が許せない」

 

 

 

 

 ほんの少し……だが、悠久のように感じる時間の中で三人は互いに逡巡する。そして、真っ先に口を開いたのは戦兎だった。

 

「分かった。……信じるよ、マスター」

 

 口元を緩め、笑顔を見せる戦兎。その目からは疑惑の想いは消えていた。

 

「……本当か?」

 

 心底意外そうな、驚いた顔で聞き返す惣万。

 

「だってアンタはオレの育ての親だもん」

 

 そう言って彼女は屈託なく笑う。今までの彼の信頼と信用に足る行動……戦兎は惣万の人柄を信じたのだ。彼は優しく、他人にも親身になってくれる人情深い暖かさを持っている。それは今までの仲間達に対する気遣いからも明らかだった。

 

「……っ!ありがとな……戦兎。俺は本当に良い娘を持ったよ」

「むー……、年同じくらいじゃん。どっちかって言えばー、マスターの妻?ポジ?」

「ふっざけんなお前!?誰がお前みたいな自意識過剰でナルシストな扱いに困る女貰うか!タイプじゃないんだよ二万年はえーよ!」

「いーのいーの、何より大切な家族でしょーが、そんなこと些細な問題だって!」

「お前なぁ……」

「マスターも困ってますよ、それに戦兎。貴女が一番ガキっぽいのは明らかですよ。マスターは父親だと言うのが妥当でしょ……」

「なぁに~!クロエぇ~!」

 

 途端に和気あいあいとした姉妹喧嘩が勃発し、先程までのムードから一転、和やかな家族の団らんの様子に変化した。それを和やかな目で見る惣万。

 血は繋がってはいないが、それでも家族が笑い合うのは良いものだ。そんなふうに人間を尊ぶ彼。

 

(でもな……。俺はそんな良い育ての親じゃ、無いんだよな)

 

 

 

 

 

 戦兎はパンドラパネルとUSBメモリを学園へ持ち帰ると、すぐさま情報収集を開始した。

 

「うーん?……ドライバー、ムーンサルト…?ベストマッチ…。違うなぁ?」

「む、因幡野先生?何を調べている?」

「おや織斑先生。いやぁ、ちょっとある研究所から探し出したメモリのデータの解析を……プロジェクト・ビルドっと……あ゛‼開いた‼」

「……これパスワードの意味あったか?」

 

 織斑先生は半眼でUSBを眺める。でかでかとPROJECT BUILDとラベリングされている。セキュリティーガバガバじゃねぇか……。

 

 

「……これは、映像データ?ん!?」

『やぁ、私は“葛城忍”。ファウストの創設者にしてプロジェクト・ビルドの計画者だ』

 

 そこに映り込んだのは青紫色の髪を持つ女性。年の頃は分からないが、非常に整った目鼻立ち。腰まで伸びた長い射干玉の髪に隠れたその顔は……。

 

「オレに、似ている?」

「…ファウストの創設者、だと!」

『フム、どうやら画面の向こうの君は、私の言動に怒りを抱いていることだろうね?だが私は謝らない、……まぁそんなことはどうでも良い』

「どうでも良いわけが…っ!……っ因幡野先生!?」

「……今はこの人の話を聞こう」

 

 苛立って声を荒げる千冬の肩を戦兎が掴み、静かにさせる。

 

『……うんうん、如何やら私の声が届いているということは、暴力的で馬鹿な人間の傍らに理知的な人間が傍に居るようだね?宜しい、ではプロジェクト・ビルドについて説明しよう』

 

 まるでリアルタイムで会話しているかのようなふざけた口調で茶化すと、『葛城忍』と名乗った研究者は言葉を続ける。

 

「……こっ、いつ…!」

『馬鹿は放っておこう。さて、プロジェクト・ビルドとはビルドドライバーとフルボトル等の通称“ライダーシステム”を用いた究極の防衛システムだ』

 

 そして説明する彼女の背後にホログラフィックな演出で赤と青の戦士が出現した。デモンストレーションとばかりにガーディアン数体が仮面ライダービルドに襲い掛かる。しかし、それを二色装甲の戦士はいなし、叩き、破壊する。

 

『ライダーシステム第一号“ビルド”は二本のフルボトルを用いて変身するという特徴から、様々な能力を発揮することができる。例えば……』

 

 そう言って葛城忍は片手に取り出したデータカードを空中に出現したビルドのマークにかざす。

 

【ウルフ!スマホ!】

 

 彼女の背後に佇むビルドは、身体の装甲を銀とターコイズブルーに変化させていた。

 

『ウルフとスマホのボトルを用いてフォームチェンジが可能だ』

「ウルフと…、スマホ?そんなボトルはオレの所には無い。ということは…――――今オレ達が回収しているものの他に…、もしかすると」

 

 考察に入ってしまった戦兎は周りの声など聞こえていなかった。

 その後、戦兎はプロジェクト・ビルドの内容を調べ上げ、データカードにそれぞれの映像を記録したのだが、一方の千冬はと言うと……。

 

(……それにしても、この『葛城忍』という女。戦兎に似た顔立ちとはいえ……私とどこかで……?)

 

 

 

 

 

 休日のレゾナンス。一夏は箒と共に買い物に来ていた。だがしかし、街にはいつもの様な活気がない。その理由は明らかだった。

 

「どこもかしこも……戦争反対とかのポスターだらけだな……」

 

 ファウストがIS学園にて、現代社会へ反逆の意志を表明した時のこと。彼らはネットワークをハッキングし、IS企業への攻撃を全世界に公開していたらしい。

 彼らの暴走はそれだけに止まらない。初めは中東にいたテロ組織だった。紛争を絶えず続けるそれら宗教過激派組織と内紛状態にあるその国は、ISを抑止力として使用していたのだが、ファウストはその戦いに介入した。

 結果、その国からは全てのISを奪われ、テロリストの一団は皆殺しになったという。だが、この行いは断じて正義ではない。新たに諍いの種が蒔かれた時、その国に人を守る力はなくなったのだ。

 全てをISに頼ろうとした、社会情勢の側面が浮き彫りになった。

 

「因果なものだ……、まぁ?あの女が初めにしでかしたことを鑑みれば、こうなるのも納得だな」

「箒……?」

 

 冷淡な口調で実の姉のことを責める妹。その軽蔑の眼差しは、一夏にはどこか悲し気に見えた。

 

「……初めにしでかしたこと?」

 

 一夏が箒にその含みを持った言葉の意味を聞こうとした時だった。

 

――――キャアァァァァァァァァァ‼

 

 どこからか大勢の人の悲鳴が聞こえてきた。ハッと顔を上げて、躊躇うことなく声の発生源へと駆け出す箒と一夏。

 

「いたぞ、一夏!」

「……ッスマッシュ!?」

 

 そこでは鈍色の体をしたスマッシュ『ストロングスマッシュハザード』が壁や柱を破壊していた。

 甲高い声で悲鳴を上げ、店内から逃げ出す客たち。それを見て一夏はドラゴンフルボトルを振り、システマ特有の構えをとる。

 

 

 

 …――――その時だった。

 

 

「ここかァ?祭りの場所はァ……」

「「ぇ!?」」

 

 突如として場違いなセリフが聞こえてきた。一夏と箒は、声が聞こえてきた上方を仰ぎ見る。

 吹き抜けになったショッピングモール。その二階の柵に体重を預けていた一つの人影。モッズコートを羽織り、ファーの付いたフードを頭にかぶった人間がぼやく。

 

「違うなぁ…。こんなの俺が求める祭りじゃねぇ……」

 

 その人物はジャンプで一夏たちの目の前に降り立った。少なくとも5mはあろうかという高さから落ちたというのに、痛みの素振りも見せずに歩き出す。

 

「心の火……心火だ」

 

 フードの人間はなんらかの儀式のようにその言葉を呟くと、ポケットに入れていた手を胸へと重ねた。

 

「心火を燃やして……、ぶっ潰す……っ!」

 

 片手をプラプラと振ると、闘気が目に見えるように膨らみ、爆発した。そして、怪物に向かって勢いよく駆け出すその人物。

 

「……フッ、オォルァァァァッッッ‼」

 

 右手が勢いよくストロングスマッシュハザードに突き刺さる。その時、一夏は見た。スマッシュに当たった拳には青緑色の炎が宿っていたことを。

 

 

「「え……!?」」

 

 

 閃光が瞬き、爆裂音がその場にいた人間たちの脳裏を揺らす。

 

 

 その一撃は鍛えられた鋼さえ砕くのだろう。厳めしい外見のスマッシュをはるか遠方まで吹き飛ばし、キノコ雲型の爆発が巻き起こる。その衝撃の余波で、周囲の商店の窓ガラスが粉微塵になっていた。怪人の身体からは鮮やかな緑炎が噴き上がっている。

 

「スマッシュを、一撃で……?」

 

 驚きのあまり口が半開きになっている箒。一夏もその場の光景を食い入るように見ていたが、その人物の立ち振る舞いに驚愕を隠せなかった。その人物には、一切の隙が無かったのだから。彼の本能と理性がこれ程警鐘を鳴らすのは、今まで自分の姉以外にいなかった。

 

 フードの人物は、フッと口元を緩める。そして……――――。

 

「あっ痛ってぇ!絶対(ぜぇぇって)ぇ骨折れた……!」

 

 突如としてスマッシュを殴った手を押さえて蹲ってしまった。あまりのギャップに一夏や箒はずっこける。

 先程までの戦闘狂の姿が嘘のよう。泣き言と共に、汗だか涙だか分からん液体が道路に零れた。

 

 

「ちっきしょおぉぉ~……。これからコメット姉妹のライブだったのにキャンセルか……?ってアレ?今何時!?もう会場開いてるじゃねーか!あの三馬鹿電話入れろよ俺方向音痴なんだから!マッテローヨ!ファニールちゃ~ん、オニールちゃ~ん♪」

 

 その言葉と共にフードが外れ、綺麗な金髪が露わになる。痛みに潤んでいた紫色の瞳を乱暴に拭ったその人物は、どうやら外国人のようだ。

 どういう訳かドルヲタの如く早口捲し立てると、砂嵐を巻き上げて混迷するその場から立ち去っていった。

 

 ……台無しである、色々と。

 

「……。ほんと何だったんだ?今の……」

「あぁ、何なんだろうな?……――――ところで一夏、今戦おうとしただろう?」

「ん?あぁ、そーだけど」

「お前というやつは…。戦うなとは言わないが、まだファウストに受けた怪我完治していないのだろう?もう少し自分を大切にしろ」

 

 空のボトルをスマッシュに向け、成分を取った箒は一夏に気を付けるように声をかける。

 

「あぁ分かってるさ。無茶はしない……けど」

「?」

 

 さっきの金髪が去って行った方向を見て一夏は自分の予感を声に出す。

 

「ンでだろーな。……あいつとは、すぐにまた出会いそうな気がする。それに…――――」

 

 

 

 もしかしたら、戦うかもしれねぇ…。




 最後に出てきた金髪の人……さて、誰なんでしょうね(すっとぼけ)。


※2020/12/16
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部
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