IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
一夏「え、マジで?いつもの虚言癖じゃねーのそれ?」
箒「なら、戦ってみればいいのではないか?と言う訳で千冬さーん」
千冬「呼ばれたので来たぞ」
戦兎「げぇ、関羽‼」
一夏「なら、戦兎さんは周瑜かな…」
箒「それだったら、惣万さん呂布になるんだが…」
鈴「?アンタらなんの話してんの?」
一夏「え?ちょ……お前三国志知らないの!?」
鈴「え、あぁ…日本のゲームの話じゃない。何、それがどうしたの?」
惣万「えー、無駄知識として中国人でも地域によっては三国志知らない人いたりする。特に若い世代は顕著になってきてるとかいないとか」
鈴「日本人が戦国武将あんま興味がないのと同じよ、同じ」
戦兎「そこーっ!オレ死にかけてんのに雑学大会してんじゃないよ!ってわぁァァァァァ!?」
千冬「ちっ、外したか…次は当てる…!」
箒「うわぁ国士無双…」
一夏「よく耐えられてるよ戦兎さん、伊達に戦闘経験培ってねーな」
「あー……、っのグリスの野郎、思いっきりやりやがって……」
「いや、回復早くないですか一夏さん?」
仮面ライダー部として活動している空き教室にやって来た俺達にセシリアが言う。因みに箒は反省室にしばらく通い、反省文書きであるらしい。まぁ自己犠牲精神は褒められたものじゃないから、もうあんなこと二度としてほしくは無いんだが。
「ん?いや、別に平気だぞ?包帯もう少しで外せるし、何だか回復力が異常だとか校医に言われたけどな」
「それは全てネビュラガスの影響だろうね」
そう言って戦兎さんはパソコンを叩き映像資料を俺達に見せる。そこには戦兎さんそっくりな人物がパンドラボックスを見せながら話をしている。
『パンドラボックス内に充満している気体……驚くべきことにコレは我々のような人間や意識体を別の生命体に変化させてしまう特徴がある。我々はコレをネビュラガスと呼称することにした』
映像の続きが流れる。チューブが繋がったガラスケースの中に兎を入れ、緑色の気体が入っていく。
『まだ解析の途中だが、適合すれば身体能力の強化、体の持つ治癒速度の向上などの変化が見られた。だが、ネビュラガス適合率“ハザードレベル”が個別の限界値を超えると……――――』
突如、ガラスケース内の兎がぱたりと倒れた。そして体から赤い粒子を撒き散らし、煙となって……――――消えた。
それを見て冷淡に説明する科学者。
『体に負荷がかかりすぎ、消滅する』
そこで映像を一旦止めると、俺達に向き直る戦兎さん。その時の俺の顔は戦慄していたことだろう。箒や鈴の身体にそんなモノが入っていたなんて……――――。
「……そんな危ねぇもんなのかよ」
「……さて、解決しなきゃいけない問題はまだまだある。先の襲撃でやって来た『仮面ライダーグリス』のことだ、オレの知らないライダーシステムを使っていたわけなんだけど……例のUSBを調べてみたらちゃんと載ってたんだ」
パソコンの検索画面、『Enter Keywords to Search』と書かれた空欄にスクラッシュと入力し決定する戦兎さん。
『エクセレント!遂にプロジェクト・ビルドの第二計画にアクセスしたね!』
「うわうるっさ!?テンションおかしくない?」
うん鈴、俺も同意。やっぱこの忍って人、戦兎さんとこういう所も似てるよな……。叫び声に耳を押さえた俺達に構わず、映像の人は片手にゼリー飲料のようなパックとレンチの付いたベルトを取り出す。
『コレはボトルの成分をゲル状にすることで更なる進化を遂げた、もう一つのライダーシステム“スクラッシュドライバー”だ。コレを使えばボトルの成分をさらに引き出して戦うことができる。開発はこれを見た君に任せるとしよう……。正義のために使うか、悪のために使うかは君次第だ。頑張ってくれたまえ』
そして設計図のようなデータがパソコン画面に映り、映像がぷっつり途切れる。
「……そして出来上がったのが、あいつが使っているグリスってことか。ちっくしょー、あの金髪……一体どこ行ったんだか」
「今ネットの噂を漁っている。目撃情報からIS学園付近にいることは確定。もう少し待って」
くるりと持っていたタブレットを回転させ、こちらに向ける簪氏。そこには金色のライダー目撃情報まとめサイト(彼女作)というモノが…………いや、手が早くねぇか?
「……お、おう。んで、対抗できる手段はあるのか?戦兎さん」
「そのスクラッシュドライバー、と言うのも製作中だし、ホラコレ」
戦兎さんの手にあるソレ。見れば奇妙な模様が入ったボトルだった。スマッシュボトルにしては模様が幾何学模様と言うか……?
「……それは?」
「スタークがパンドラボックスに触れた時に出た残留物質だ。コレを使って強化アイテムを開発する」
あぁ、
「そしてもう一つ、データや分析で分かったことがある。ナイトローグも言っていたパンドラボックスの中身だ。パンドラボックスとパンドラパネル、フルボトルが揃うとこの箱が開く」
俺が思考の海に潜っていた所で戦兎さんから声がかかった。パンドラボックスの、中身……?
「そうすると……どうなるんだ?」
「核を超えたエネルギーが生成可能になるらしい。それこそ、条件さえそろえば宇宙を創り出す程のエネルギーだ。……――――つまり、ファウストなんかの手に渡ったら、この世界は……滅ぶ」
……おいおい?
「そんな馬鹿な……」
「最悪な事態のことを考えて行動するのがオレという科学者だ。ま、信じなくても良いケドね……」
「……」
口調は軽かったが、彼女が纏う雰囲気は重かった……。
「……っ、あーやめ!この話やめ!他になんか質問無い?」
「それじゃ、因幡野先生?このデータに映ってる人、先生に似てない?誰よ?」
……鈴が核心に迫る質問をする。俺は前に聞いていたが、やっぱり言い辛いことではあるらしい。戦兎さんの口調が淀む。
「……。彼女は葛城忍。ライダーシステムの開発者にして、ファウストの創設者であるらしい」
「「「!?」」」
「……みんなはこう思ったんだろ?オレが記憶を失う前は葛城忍だったんじゃないかって。そんで、学園を強襲した集団のリーダーだったんじゃないか、って」
戦兎さんは一瞬悲しそうな眼差しになると、顔を歪めるように笑顔をつくった。
「もしもオレが……――――本当に葛城忍だったら、オレの過去が消えたのは当然の報いなのかもしれないな……はは」
「っ、戦兎さん!」
「……――――あぁ一夏、オレは大丈夫。続けるよ」
そうなの、か……?オルコットたちに目を合わせても首を横に振られた。やっぱり、誰がどう見ても無理をしているふうにしか見えないんだが。
どうやら心配されるのは気に入らなかったらしい。彼女はヤダヤダ、と言いながら手を広げる。そして急に表情を引き締める戦兎さん。
「それに勘違いしないで欲しい、彼女はライダーシステムのことを『究極の防衛システム』と言っていた……。だから今の『ファウスト』との行動理念とは違う思いを持っていたはずだ」
続いて告げられた言葉は今までのような不安に押しつぶされそうな雰囲気は無くなっていた。
「弁解だと思わないでくれ……オレは人々が笑って暮らせる為に科学を発展させたいと思ってるんだ。葛城忍だってそうだったはずだ」
……――――。あぁ、なんだかんだ言って、この人は悪い人じゃないんだろうな。何よりも、科学者として、責任と扱い方を弁えている立派な人だ……。
「科学の発展には犠牲がついて回っている……。それがオレの記憶だったり、ISの女尊男卑の風潮だったり色々だ」
そこで言葉を区切り、俺達に頭を下げ、彼女は自分の願いを言う。それはまるで“科学”に代わって言葉を俺達に伝えたように感じた。
「でも忘れないでくれ。誰も他人の不幸を思って科学を発展させたりしないってことを……他でもない犠牲者であるオレからのお願いだ……」
「世界をこんなふうにしたあの女の肩入れをするのか……」
ぞっとするほど冷淡な声が聞こえてきた。
「……今の世界の始まりは白騎士事件だ。あの時点で、篠ノ之束の夢は妄想と化した。そしてこんな歪んだ世界を創ってしまった……。あの女がそんなことを考えていたと?」
その声の主は非常にゆっくりと……だが威圧感たっぷりに教室に入ってくる。
「……ほ、箒さん……?」
「ちょっと、……実の姉をそう言うのは…、…?」
「……姉……、姉……?あの女が?ハ、ハハハ……あはははあはははハハハハハハハハハハ!?」
セシリアと鈴が座っていた机の上に、ばさりとスクラップブックを投げ捨てる箒。その数、十冊。俺はその本を広げて見た。
「……ッ!」
見ればISが原因の、またはISに関連した事件の記事だった。引き起こされた戦闘、テロ、反女尊男卑社会によるデモによる死傷者……。それ全てが切り抜かれ、ページにきっちりと貼り付けられていた。
……俺はぞっとした。箒はコレをどんな思いで見ていたんだろうか。シワ一つ無く、ズレなく丁寧に糊付けされたソレに、箒の狂気を感じてしまった。
「もう一度聞きます、因幡野先生……。世界をこんなふうにした天災の肩を持つのですか……⁉」
「……もう一度言おう。箒ちゃん、言ったはずだよ。科学を軍事利用しようとするのは周囲の思惑なんだって」
「違う‼」
教室の空気を震わせるように声を発する箒。目を血走らせてスクラップブックを怨敵のように睨む。
「今戦争が起ころうとしているのも、男女平等の世界が崩れたのも全て!……あの天災が引き起こしたことだ……!篠ノ之束の罪への当然の報い、自業自得だ……ッ!」
「篠ノ之束だって科学者だ……。だから彼女も自分の発明がこうなることを望んでいなかったはずだ!」
箒の姉のことを擁護する戦兎さんだったが、箒が言ったことですべてが崩れる。
「なら……、何故篠ノ之束は白騎士事件を起こした!!!!」
「「「!?」」」
教室に戦慄が走った……。俺がいち早く反応する。
「おい!?箒、どういう事だ!?あれはテロリストにミサイルがハッキングされて、それを束さんが発明したISで事故を防いだ出来事じゃ……」
そこでハッと気づく……、信じたくない真実に。
「……――――オイちょっと待て、まさか……」
「……そうだ一夏、あれはただのマッチポンプだ。篠ノ之束が自分で各国サーバをハッキング、ミサイルを発射させた」
あまりの事実に愕然となるIS代表候補生たち。まさか今の自分たちの地位が、ただ一人の手の平で転がされていたとは、露にも思っていなかったゆえの衝撃だった。
「そして……それを何も知らなかった白騎士の搭乗者に伝え、防ぐように頼んだ出来事……、それが白騎士事件の真実だ……!」
般若のような表情をした箒は……急に顔を伏せた。
「……その所為で、私は帰る場所を失った……。父親は行方知れず……!そして母親は旅客機の事故で死亡……!その姉と思しき人間は記憶を失い世界の裏側で暗躍している……!」
簪がハッと口を押えた。楯無会長と簪が一緒にいた時の“姉妹仲良く”というあの言葉……。それは自分の姉への感情の裏返しだったと思い至ったのだろうか……。
「……そんな……」
「確かですの?」
「……こんなふざけた嘘を吐く理由があるか?」
「……」
俺は、何ができるんだろう?長髪を振り乱し戦兎さんを見る箒。俺には分からない……姉に裏切られた気持ちなんて……、そんな俺に何ができるんだろう?
「これでもまだ篠ノ之束が科学者だと言えるのか‼」
「……ッ、それは……」
言葉に詰まる戦兎さん。
妙に薄暗い教室で対峙する二人。片や科学の所為で孤独から人生が始まった女性、片や科学の犠牲として今まで孤独を味わった少女。
「癇癪でISを兵器として世界に知らしめた無責任なガキが!?私の血の繋がった姉だと!?ふざけるな、アレは私を……友人や家族との仲を引き裂いた人でなしだ‼」
ハァ……ハァ……ハァ……、と激情を有らん限り叫ぶ箒。そして言い切った後、自分が何を言ったか気が付き、青ざめる。
「……――――っ!……っ済まない……お前たちに言っても、何もならないのに……」
箒は戦兎さんが自分とは違う孤独を抱えているのを知っている。それなのに感情を抑えきれなかったことに、自己嫌悪を感じてしまったのだろう。今にも泣きそうになってくるりと出口に向かって足を速めた。
「……何て今の私は醜いんだ…。因幡野先生……、ごめんなさい……そんなつもりじゃ、なかったんだ……」
「ッ、おい箒!待て……!」
んだよ、その顔。今のお前、見てらんねぇんだよ…――――!
三人称side
一夏が箒を追って出ていった後の教室。がたん、と戦兎が椅子に倒れ込むように座った。その顔は青白い。
「因幡野先生……大丈夫ですか?まだ身体の具合が宜しくないのでは……?」
「あぁ……大丈夫、オルコットちゃん。ただ疲れただけだから」
だが、その言葉には張りが無い。同じ科学者として思う所があったのだろうか。
「科学者、か。篠ノ之束……――――葛城忍、そしてオレ……。もしかしたら、オレのやってることって、不安と自己弁護と贖罪が入り混じった、キレイごとなのかもしれないな……」
「…――――キレイごと…、ですわね」
「え……?」
セシリアはバッサリと戦兎の言葉を肯定する。だが、否定的な声音ではなく、優し気に微笑んでいた。
「だからこそ、現実にしなきゃなんじゃない?小さな犠牲も、大きな犠牲も出しちゃ……誰かが泣くわよ」
「本当はキレイごとが一番いい……。私たちは正義の味方の、その綺麗事に救われた……」
「だから、因幡野先生。わたくし達力を持たない者にはこのくらいしかできませんが……――――」
セシリアは酷い顔の戦兎に優しく近寄り、華奢な彼女の手をぎゅっと握った。
「大変な時は、わたくし達が手を掴みますわ」
「……ッ、気付いて……?」
「はい?」
「いや……だって……」
それを見て、“はぁ、やれやれ”と首を振る中国と日本の代表候補生。
「誰かのために戦い、傷つくのがオカシイとは言わないわよ。でもね……」
「自己犠牲精神は綺麗な事……私もそう思うけれど、行き過ぎれば醜い事。因幡野先生……、貴女はちゃんと『ビルド』としてクシャっと笑っていて欲しい……」
その言葉と共に、今までため込んでいたものがあふれ出す。
「君たち……、……ッ」
教師としての仮面が外れ、人間としての因幡野戦兎が露わになる。
「オレは……本当は、辛くて……怖かったんだ」
セシリアと手を繋ぎながらぽつりぽつりと心の中にたまっていたモノを外に出す。
「一夏をライダーにしたのも、箒ちゃんにやけどを負わせたのも、オレの所為だったらどうしよう………ナイトローグやブラッドスタークが人を襲っている理由が記憶を無くす前のオレの実験の所為だったらどうしよう……」
セシリアの手の甲に温かい液体が落ちる。
「そもそもオレが誰なのかさえまだ分からない!なのに急にファウストの創立者なんて言われたって納得できるわけねぇだろ……!」
そこから戦兎は声を押し殺して泣いていた。人前で泣いたことなんて初めてだった。“因幡野戦兎”が生まれて初めての涙。それを三人は、黙って支えるように傍に居てやったのだった……。
「……――――っ、あ゛ー。すまなかったね、忘れてくれ。こんな大人の泣きごと聞いても面白くなかっただろ。それに、箒ちゃんの言ったことも……」
「ん?おかしなことを聞きますね、因幡野先生」
「?」
戦兎の言葉を遮り、鈴が二人とアイコンタクトをする。
「わたくしたちは何も聞きませんでしたわよ、因幡野先生?」
「そんなことより……グリスの情報が足りない。もっと強固なネットワークが必要……」
「あー、……さて、アタシらは一夏たちを迎えに行くとしますかね~っと。それと因幡野先生、多分アタシたちの方が人生経験豊富ですよ~、なんつって」
そう言って三人はそれぞれ空き教室から出ていく。夕日のさす教室は、戦兎ただ独り……、手にはさっきの温もりが残っていた。
「……最悪だ、あんな年下の子供たちに慰められるなんて……でも、うん。一夏に、マスターに……生徒たち。仲間がいるってのは……
そう言って、三人を追うように教室を出た戦兎の顔は、憑き物が取れたようにさわやかだった。若干泣きはらし朱く充血していたが、それでも不器用な美しさが見て取れる、そんな純粋な笑顔だった。
一夏side
「……っ、アホウキ、一体どこ行った?……ってメール?」
【簪(‘ω’):箒はGPSによれば学生寮の近くの木の根元。ガンバ】
……――――いろいろ言いてぇが今は感謝しとこうか。後で説教(姉にモフモフされる刑)だが。
……――――いた。泣きはらした目でボーっと夕焼け空を見ている長髪の少女……箒だ。
「一夏……、一夏……。幻滅しただろう……?」
「……」
俺が近寄るとひとりでに喋り出す。俺は箒の隣に腰を下ろした。
「醜い姿を見せた……憂さ晴らしのように喚き散らすなど……。やはりまだまだ未熟なんだ、私は……」
「そんなワケねぇだろ……!」
まだ言うか……!
「怒るのが、悲しむのがダメなわけあるかよ……お前は、辛かったんだろ……!それを何年も、自分で抱え込んで生きてきたんだろ!もっと怒れよ!もっと泣けよ!?何かにぶつけたって良いだろうが!我慢しすぎなんだろアホウキ!」
「駄目だ!」
「どうして……!」
「私だけは……忘れてはならないんだ!どいつもこいつも小娘の言葉を信用しない!いや、予想がついてても真実を隠蔽しようとする!この世界は、都合の悪いこと全てを消し去ろうとする!」
嗚呼…箒は人の嫌な部分ばかり見てきたんだろう。誰もが自分勝手だと理解してしまったのだろう。
「篠ノ之束は記憶を失い、今はこの世にいない!だから白騎士事件の秘密を知るのは私しかいない!あの女がしでかしたことを来るべき時まで……私が心の中に留めておかなければ、ダメなんだ!ダメなんだよ‼私はずっと理解されないんだ‼」
「ふざけんな!」
「!?」
肩を掴み、箒の涙にぬれた顔を見る。
「人間はな、泣きながら怒ることができるんだよ……喜びながら笑うこともできるんだよ!だから箒!お前は泣きながらも笑える人間になれ!怒りながらも、それでも笑える人間になれ!」
唇を噛むように苦渋の表情をする箒……。まだ心は揺れ動いているのか……頑固な所は変わらないな……。
「でも……」
「……迷ってるなら俺も一緒に抱えてやるよ。二人でなら、分け合えるだろ。それに、空いた手には……オルコットが言うように、他の人間と手を繋げるだろうしな」
箒は泣きそうな顔で歯を食いしばる……、そして、苦しそうに嗚咽を漏らし……声を上げて泣き出した……。
「一夏……、私はな……怖かったんだ」
しばらくして、箒が口を開いた。
「今まで私は、ずっと白騎士事件の秘密を抱えて生きてきた……そして篠ノ之束という人間がどれほど罪深いことをしでかしたのか、それを自分の身を以て知っていた。それでも姉なのだから、アレもどこかで…何らかの形で家族を見てくれているんじゃないかと、ほんの少しは彼女の良心を信じていた」
いつしか箒の顔から涙の跡は消えていた。
「前に……こんなことがあった……」
箒side
『私はIS委員会の御堂正代と言う者です』
ある日のことだった。若い女性のIS委員会職員が訪ねてきた。
『君のお姉さんから預かっている研究データは何処ですか?彼女は貴女への想いをこの手紙にしたためていました。もし教えていただければ……これを差し上げます』
私はその誘惑に負けた……。本当はそこに書かれているモノなど、分かっていたはずなのに……。
預かっていたメモリを手渡し、姉が書いたという手紙を開いた……――――。だが。
『……ッ!騙したな!』
白紙の紙。そこには何も書かれていなかったのだ。
『騙した?人聞きの悪いことを言わないでください。彼女が……“篠ノ之束”が家族に感謝する人間だと……、本気で思っていたのか?だとしたら、能天気にもほどがある。冷静に考えると分かるのではないか?家族をバラバラにしたかの天災に……何を期待していた?』
『……っ‼』
一夏side
「……その言葉に反論できなかった」
地面をその華奢な拳で叩く。またボロボロと目から涙がこぼれ、包帯を濡らす……。
「だから、もうあの人を信用できなくなっていた。またあの人が私の周りにいる人を奪っていくんじゃないかって……!」
手を目の前に持っていき、零れる涙を気にせず顔を上げる箒。俺はお前の心の痛みを感じることはできない……、だけど、それは……辛いことくらいは分かる……。
「まぁ……そうかもな、俺だってそんなことされたら無理だ。でもさ。信じられるものもあるんじゃねぇか?」
俺はIS学園の校舎を眺めた。箒もこしこしと袖で目を擦り、俺の視線の方を向く。
「戦兎さんは科学の力を信じている。だからこそ束さ……篠ノ之束を責めるんじゃなくて、正しいことにそれが使えなかった現実を何とかしたかったんじゃないか」
遠くから生徒たちの声が聞こえてくる……賑やかで、純粋な綺麗な声が。
「お前は、そうだな…――――。まずはお前が信じた人間を信じろ。オルコットに鈴に簪、生徒会長……は微妙だけど、ほらな。結構いるだろ?」
箒は自分の手をじっと見つめる。そして……。
「………――――あぁ、そうだな。まずはそうさせてもらう。……なぁ、一夏?」
「……ッ。……おう」
箒は、ゆっくりと、だがしっかりと俺の手に指を絡ませてきた。やっぱ、ちょっと恥ずかしいな、これ。
「……そばに誰かがいてくれるとは、こんなに暖かなものなのだな。ずっと忘れていた…。オルコットや、鈴も簪も。それに……因幡野先生も。皆、私と一緒にいてくれるだろうか…?」
「……っと、噂をすれば影、だな」
……照れくさくなったわけじゃないぞ、本当に聞こえてきたんだよ……ほんとだぞ?
『一夏さーん……、どちらに行きましてー?』
『一夏~、箒とデートするのは良いけどメール入れて~』
『いや、簪氏。アンタオカン?』
「いらんこと言いふらしてるあいつ等には説教が必要だ……。コレで箒と気まずい空気のままだったらどうなってたか……」
「はは……、一夏」
「ん?……――――ッ!?」
頬に何か柔らかいものが触れて、その後箒の顔が見えるようになった……――――。え?
「……――――ありがとう」
頬を染め、優しい笑みを浮かべ、唇をそっとなぞる箒。
「こんな……過去と決別できていない半端な女だが……。これからも、傍にいてくれるか?」
……彼女が自分の姉に並々ならぬ怒りを持っているのは分かる。それこそ手に取るように。それでも……、あの日約束した思い出も、何気ない幼い頃の日常も、この学校に入って出来た仲間と微笑む箒も。俺は全部含めて……箒のことが大切だ。
「……――――、あぁ。いるよ」
握っていた手に少し力を入れた。
「ずっと傍にいる。困った時は俺が支えてやる。俺だけで抱えきれない時はあいつ等もいる……だからもう二度と、奪わせない」
俺の言葉で目を潤ませる箒。それを見て…――――。
「…――――え?」
「ふぁ、ファーストキスだ…――――悪いか?」
こっぱずかしいし、色気もない。でも、なぁ…――――。向こうでオルコットたちが騒ぐ声が聞こえてくる。
見れば、頬に手を添え微笑むオルコット、鼻血を出して(*´Д`)ハァハァしながらシャッターを切る簪氏、茹でダコのようになった鈴。そして正気になり、制服に顔を押し付けて泣き笑いする箒。遠くから戦兎さんが走って来る。
「おーいやっと追いついた…って何この雰囲気?一夏と箒ちゃんってばなんか甘ったるい感じー…」
「あ、それがですねぇ……」
「もしかして、ベストマッチ?」
「「っ…」」
あぁ……戦兎さんが言う『顔がクシャってなる』ってこういう事なのかな。こうやってバカ騒ぎできる時間を、仲間達を、…――――。
…――――そして大切な人を守りたいと、俺は改めて思ったし、ここに誓った。
ここは亡国機業。影の者共が身を置く世界……。そこに紫色の髪の女が歩いてくる。
「フフフ……助かったよ御堂。あのデータがIS学園に渡ってしまえば今後の計画に支障が出る所だった。それに、世界各国を巡って篠ノ之束の痕跡の一切を回収するとは、中々だな」
「宇佐美さん、ありがとうございます。一度は偽物を掴まされましたが、スタークに協力を仰ぎようやく回収に成功しました……そしてもう間も無くIS委員会は財団Xの元に入ります」
やって来た彼女に首を垂れ、報告するIS委員会の幹部……そしてファウストの一人でもある御堂と呼ばれた女性。だが、宇佐美は鼻を鳴らす。
「で、その仮装はいつになったら止めるんだ?…――――『スターク』」
「『…――――はぁ、ノリが悪いな』」
突如として、黒髪の女性から煙が噴き出す。
「篠ノ之箒とその姉と軋轢を生ませることは必須条件だった。まぁ先に天災本人に処置を施せたのは上々で、布石を打つまでも無かったが、せっかく作った御堂とかいう戸籍だ。使わなきゃ損だしな」
「フン。ならばいい、くれぐれも
「分かっているとも」
アッシュグレイの髪を持つ人間は、紫色の髪の女に別れを告げ、足音を鳴らしてどこかへ去っていく。
「あぁ、…――――あとありがとう、M。君のお陰で篠ノ之束製のISコアが手に入った……」
宇佐美幻は思い出したように振り返る。そこにいたのは一人の少女。壁にもたれ、マントを羽織った彼女に宇佐美は感謝の言葉を伝えた。その少女は織斑千冬そっくりの顔を歪ませると、ハッ、と吐き捨てる。
「宇佐美、といったか。貴様で造れば良かったのではないか?」
「……何だと?」
宇佐美が顔を歪めた時点で、図星だな……と確信すると、Mは言葉を続ける。
「貴様は私と同じ匂いがする。………――――いいや、私よりもっと脆弱だ。自分の存在証明の為に篠ノ之束、篠ノ之束と言っているが……本当は恐れているだけなのではないか。蝙蝠女」
「……――――。恐れている……だと?この私が?」
自分の手を見る宇佐美。その手は小刻みに震えている。それを見てあぁ……なるほどと思い、亡国機業のMに向き直り笑みを浮かべた。
「……あぁ、確かに恐ろしいよ……」
だが、彼女の返答はMの予想していたものと違った。
「自分自身の才能がなァ……‼」
「何……?」
小刻みに震える手を額に当て、天を仰ぐように反り返ったのである。そして自己陶酔した言葉を紡ぐ。
「私のコアは特別製でな、篠ノ之束の造った物より性能もグレードも高くなってしまう……、何処をどう造ればあんな劣化品になるのか理解しがたいィ………」
「…――――は?」
「ククク、やはり既に私は篠ノ之束を超えている……。恐ろしいだろう?唯一無二の頭脳を持つ私はァ………………この世界の神に等しいィィ‼ギヒヒヒヒィ!ダーヒャッヒャッヒャッヒャァァァァ‼」
今まで悪人をたくさん見てきたMでさえ、宇佐美 幻と言う狂人は底知れない悪意と実力を持ち合わせているように見え、………………久方ぶりに冷や汗が垂れた。
「さて……では新たな新兵器のお披露目と行こう……行け、“インフィニット・スマッシュ”よ。世界に篠ノ之束の夢の残骸を届けに行くが良い。見ているかァ……、篠ノ之ォ……!貴様の希望を何もかも、奪ってやろう……!ウェヒァウゥ……!」
キャラ崩壊させるのも大変でした。正当な理由……ではないかもしれませんが、箒のやるせない怒りを感じていただければ幸いです。さて、次回……ようやく……。
※2021/01/05
一部修正
長い……、そして後半が書いていてやっぱり甘ったるい。
今後の進め方の優先事項
-
瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
-
夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
-
ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
-
全部