IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

5 / 97
稚拙な二次創作ですがどうぞよろしくお願い致します。

 ※2020/12/05内容の変更を行いました。


プロローグ
プロローグ フェーズ1


 

 

 

 

 

――――蒼穹に、翼が舞う

 

 それは、無限に続く宇宙。または縮退する零と虚数の狭間。色彩なき世界にて、あらゆる色が“彼”の周囲に漂っていた。

 そして、濁流のような感覚が、あらゆる視覚が、聴覚が、嗅覚が、痛覚が、彼に殺到する。

 

 

 

――――紅い宙に、翼が舞い散る

 

 

 

 混沌という他なき全能が彼を苛み打ちのめし、その場から消え去ればまた再び活かす、無限の自死。尾を飲み込む蛇の解脱が、彼という迷い込んだ存在を壊さんと襲い来る。

 やがて“彼”は悟る。今、自分が接しているものは世界を正そうとする死と再生、永劫回帰。即ち無限に重なり合い相違しあう無量の宇宙であることを。

 

 思案を一つする刹那の間に、一体どれほどの世界を詰め込まれ壊されたのだろう。崩れては蘇る“彼”の精神は、神秘の銀河を飛翔する。只人が触れれば発狂と覚醒、そして自壊を久遠に繰り返すソレを、何故か“彼”はものともせずに眺めていた。

 

 本来有り得るはずのないその場所にて漂う“滅びたはずの俗人”を形容するならば、凡庸ならざる狂気的な普通と言うのが相応しかろう。それ故、他者に共感し、悲しみ、嘆き、怒り、そして慈しむことができる才能を持っていた。ただ一点、自らが己へ向ける愛に不感であることを覗けば、凡庸であることができただろう。

 

 “凡庸ならざる普通”であることは、あらゆる価値観と繋がり、ひいてはその背後に控える世界との橋渡し役となり得る、稀有な力であった。現実世界で肉の器を失った“彼”は、その暗黒にして明瞭な天を漂いながら、荒れ狂う世界の光景を、穏やかな目で見つめていた。あらゆる世界の衆生の流れに、輝かしい暖かなものが映っている。

 

 

 

――――蒼穹に、白い翼が瞬く

 

 

 

 その世界は、かつての“彼”が見たことのある光景だった。少女たちと共に、騒々しくも清々しい青春を駆け抜けたヒーローの話だった。

 

 

 

――――無限の空に、縮退星の扉が開く

 

 

 

 その姿は、かつての“彼”が見たことのある悪辣なる者だった。宇宙において強大な力を持つが故に下等種と人間を侮り、そして正義を誓った英雄たちに討たれた侵略者の末路だった。

 

 幾つもの、幾億もの世界が身体の中を駆け抜けた。それは人が生み出した物語、そして人の手から解き放たれ、永劫に続いていく人知を超えた思いの力。“彼”は、それらの世界に思いを馳せ、敬服の意を示して笑みを溢す。

 

 其れは誰かが思い描いた夢。其れは誰かが乞い願った夢。其れは悲劇を変えた有り得ざる夢。其れは英雄譚を壊す悲愴なる夢。

 

 

 

――――其れは

 

――――其れは…

 

――――其れは……

 

――――其れは………

 

 

 

 不意に、風景が変わった。

 

 

 

――――蒼穹に、蛇が嗤う

 

 

 

 “彼”は“それ”を生前見たことがなかった。いいや、今後も(まみ)えることはないだろう。目の前にいるものは存在ではない。神、悪魔と簡単に言い繕えるような超常的な存在ですらない。

 “それ”は嗤いながら訪ねてきた。お前はあらゆるものの中間に位置する中庸なものだと。どうしてそうなったのだと。

 “彼”は答えた。わからないと。生前からこうなのだ、と。

 

 

 

――――蒼穹に、運命が嗤う

 

 

 

 “それ”は再び訪ねてきた。お前は“知性体から脱した心”という才を手に入れている。お前はその力をどう使う、と。

 “彼”は、答えなかった。“彼”には“それ”の思惑が分からない。存在が無くなっている自分に“それ”は何を望んでいるというのか。“彼”をどこに誘おうとしているのか。

 

 

 

――――蒼穹に、絶望と希望が溢れる

 

 

 

 “それ”は餞別だと言うかの如く、一つの箱を取り出し、“彼”に言った。お前は蒼穹の果てを目指すか、はたまた世界の礎を望むのか、と。そして、どちらにせよ、私は可能性をお前に示そう、とも付け加えた。

 

 “それ”と“彼”の間に浮かぶ、前世で見た小瓶と子供向けの玩具。しかし、周囲に散らばる無数の世界が破滅の箱の中に収束していく。紛い物が力を得ていく姿は、中々に滑稽であった。

 “彼”は呆れながらも“それ”に聞いた。何故これなのか、と。

 

 

 

――――蒼穹に、兎が天高く跳ぶ

 

 

 

 “それ”は嗤った。“それ”にとって“彼”が児戯の駒であることを知らせる声だった。そして見守るものとしての責務からか、淡泊で単純な理由を述べる。

 

 

 

 兎を喰らうのは蛇の仕業だと。

 

 

 

 不意に、あらゆる感覚が消え去った。“彼”は三千世界を刹那に押し流され、那由他の宇宙に沈められ、“それ”が選んだどこかの世界へと到達する――――。

 

 

 

 全ての世界の永劫回帰(ウロボロス)は、その男の行く先を見守り続けるだけ。“それ”にとっては程度の低い玩具を持たせ、星を滅ぼすか否かの行く末に何を得るのか、その可能性を微睡ながら待ち望む。

 “彼”は己を滅ぼし、世界を創るのか。はたまた、世界を滅ぼし、己を創るのか。己への愛なき怪物が鏡に映ったLOVEの文字を知る時、無限の成層圏はその天災の誕生を受け入れるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……――――、あ』

 

 そして其の星で、無限の成層圏を渡る縮退星の蛇が、永い眠りからようやく目醒める。




 もう何話か更新したいな……。

※2020/12/05内容の変更を行いました。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。