IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
※2020/12/05内容の変更を行いました。
プロローグ フェーズ1
――――蒼穹に、翼が舞う
それは、無限に続く宇宙。または縮退する零と虚数の狭間。色彩なき世界にて、あらゆる色が“彼”の周囲に漂っていた。
そして、濁流のような感覚が、あらゆる視覚が、聴覚が、嗅覚が、痛覚が、彼に殺到する。
――――紅い宙に、翼が舞い散る
混沌という他なき全能が彼を苛み打ちのめし、その場から消え去ればまた再び活かす、無限の自死。尾を飲み込む蛇の解脱が、彼という迷い込んだ存在を壊さんと襲い来る。
やがて“彼”は悟る。今、自分が接しているものは世界を正そうとする死と再生、永劫回帰。即ち無限に重なり合い相違しあう無量の宇宙であることを。
思案を一つする刹那の間に、一体どれほどの世界を詰め込まれ壊されたのだろう。崩れては蘇る“彼”の精神は、神秘の銀河を飛翔する。只人が触れれば発狂と覚醒、そして自壊を久遠に繰り返すソレを、何故か“彼”はものともせずに眺めていた。
本来有り得るはずのないその場所にて漂う“滅びたはずの俗人”を形容するならば、凡庸ならざる狂気的な普通と言うのが相応しかろう。それ故、他者に共感し、悲しみ、嘆き、怒り、そして慈しむことができる才能を持っていた。ただ一点、自らが己へ向ける愛に不感であることを覗けば、凡庸であることができただろう。
“凡庸ならざる普通”であることは、あらゆる価値観と繋がり、ひいてはその背後に控える世界との橋渡し役となり得る、稀有な力であった。現実世界で肉の器を失った“彼”は、その暗黒にして明瞭な天を漂いながら、荒れ狂う世界の光景を、穏やかな目で見つめていた。あらゆる世界の衆生の流れに、輝かしい暖かなものが映っている。
――――蒼穹に、白い翼が瞬く
その世界は、かつての“彼”が見たことのある光景だった。少女たちと共に、騒々しくも清々しい青春を駆け抜けたヒーローの話だった。
――――無限の空に、縮退星の扉が開く
その姿は、かつての“彼”が見たことのある悪辣なる者だった。宇宙において強大な力を持つが故に下等種と人間を侮り、そして正義を誓った英雄たちに討たれた侵略者の末路だった。
幾つもの、幾億もの世界が身体の中を駆け抜けた。それは人が生み出した物語、そして人の手から解き放たれ、永劫に続いていく人知を超えた思いの力。“彼”は、それらの世界に思いを馳せ、敬服の意を示して笑みを溢す。
其れは誰かが思い描いた夢。其れは誰かが乞い願った夢。其れは悲劇を変えた有り得ざる夢。其れは英雄譚を壊す悲愴なる夢。
――――其れは
――――其れは…
――――其れは……
――――其れは………
不意に、風景が変わった。
――――蒼穹に、蛇が嗤う
“彼”は“それ”を生前見たことがなかった。いいや、今後も
“それ”は嗤いながら訪ねてきた。お前はあらゆるものの中間に位置する中庸なものだと。どうしてそうなったのだと。
“彼”は答えた。わからないと。生前からこうなのだ、と。
――――蒼穹に、運命が嗤う
“それ”は再び訪ねてきた。お前は“知性体から脱した心”という才を手に入れている。お前はその力をどう使う、と。
“彼”は、答えなかった。“彼”には“それ”の思惑が分からない。存在が無くなっている自分に“それ”は何を望んでいるというのか。“彼”をどこに誘おうとしているのか。
――――蒼穹に、絶望と希望が溢れる
“それ”は餞別だと言うかの如く、一つの箱を取り出し、“彼”に言った。お前は蒼穹の果てを目指すか、はたまた世界の礎を望むのか、と。そして、どちらにせよ、私は可能性をお前に示そう、とも付け加えた。
“それ”と“彼”の間に浮かぶ、前世で見た小瓶と子供向けの玩具。しかし、周囲に散らばる無数の世界が破滅の箱の中に収束していく。紛い物が力を得ていく姿は、中々に滑稽であった。
“彼”は呆れながらも“それ”に聞いた。何故これなのか、と。
――――蒼穹に、兎が天高く跳ぶ
“それ”は嗤った。“それ”にとって“彼”が児戯の駒であることを知らせる声だった。そして見守るものとしての責務からか、淡泊で単純な理由を述べる。
兎を喰らうのは蛇の仕業だと。
不意に、あらゆる感覚が消え去った。“彼”は三千世界を刹那に押し流され、那由他の宇宙に沈められ、“それ”が選んだどこかの世界へと到達する――――。
“彼”は己を滅ぼし、世界を創るのか。はたまた、世界を滅ぼし、己を創るのか。己への愛なき怪物が鏡に映ったLOVEの文字を知る時、無限の成層圏はその天災の誕生を受け入れるのか。
『……――――、あ』
そして其の星で、無限の成層圏を渡る縮退星の蛇が、永い眠りからようやく目醒める。
もう何話か更新したいな……。
※2020/12/05内容の変更を行いました。
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部