IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「仮面ライダービルドであり、てぇん↑さい↓科学者である因幡野戦兎は教え子である織斑一夏の恋人、篠ノ之箒がナイトローグに誘拐されたことを知る。そこで心優しいオレは、先方の要求を呑みパンドラボックスを持って一夏を追いかけるのでありました……」
一夏「おい明後日の方向見ながら何言ってんの!?前見ろよ前!?バイク運転してんだろ!……ってアレ?目の前にいるの、戦兎さんじゃね?」
戦兎「え?何言ってんだ一夏?オレあんなに髪長くねーよ?」
???『残念、俺だ』
戦兎「その声……あー!最近影が薄い主人公じゃ……」
???『はーいメタ発言はやめましょうね~』
【スチームアタック!】
一夏「あぶっ!あぶっなッ!?あーもうどうなる第四十二話!」



第四十二話 『ヴェールを脱ぐ彼女』☆

「……ッ駄目だ。宇佐美とか言うのと箒の足取りがここで途絶えた……」

「でも、噓は言っていなかったみたいだね……」

 

 ナイトローグが提示してきた倉庫街。降りしきる雨の中で二人は傘もささずに道路に降り立つ。

 

「んでどうする?虱潰しに片っ端から入るか?」

「いや……そんなことしていても……、!」

 

 突然、濛々と黒煙が巻き起こる。そしてその中から足音が響く。彼女らの視界に赤い人影が入り込んだ。

 

『よぉ、お困りのようだな』

「……ッ、スターク?」

 

 ナイトローグと異なり、真意が全く見えないファウストの幹部、ブラッドスターク。彼は親し気に二人の傍へ歩み寄る。

 

「何しに来た……」

『何、ちょっとした手助けだ。俺だってお前等の悲しむ顔は見たくないんでね』

「……とっとと言え、箒は何処だ」

 

 箒のことを第一に考えた一夏は怒りを抑えスタークに聞く。

 

『宇佐美と篠ノ之箒は別の場所にいる。宇佐美の場所へは俺が案内することになっているが……。箒嬢はホレ、ここの倉庫街の13番の中だ……そして気を付けろよ。敵は宇佐美だけじゃない、宇佐美特製の新兵器があるからな』

 

 スタークは二人に対し、宇佐美の保有する兵力に注意を促す。未だ真意を測りかねる赤い蛇に、正義の味方は苦い顔。参考程度にその言葉を聞く戦兎は、一夏の方へと振り返った。

 

「じゃあ一夏。お前は箒ちゃんを……ってもう居ない!?あの箒馬鹿……」

『もう行ったぞ。いやーすげぇスピード。じゃ因幡野戦兎、お前はこっちだ。ついて来い』

「あぁ……、分かったよ」

 

 スタークとビルド。奇妙な組み合わせの二人組が雨の中を歩きだした……。

 

 

 

 

「なぁブラッドスターク。アンタは一体誰なんだ?」

『さぁ、誰だと思う?』

 

 雨の中、傘もささずに歩む戦兎。彼女は今まで聞けなかった質問をブラッドスタークにぶつけた。

 

「……アンタは、葛城忍なのか?」

『………――――そうか、そう思ったのか』

 

 その途端、ブラッドスタークの装甲は紫色の煙となって消える……――――そこに立っていたのは、黒髪を伸ばした童顔の女性。

 

「……!……葛城忍…――――いや、オレ……!?」

 

 それは長髪であるものの、因幡野戦兎に瓜二つの『女性』だった。茶色のジャケットを整え、戦兎に傘を差しだすスタークの変身者。戦兎の肩に付いた水滴を払うと、彼女と同じ声で話題を変える。

 

「俺が誰か、なんてどうでも良いことだろう?それと因幡野戦兎」

「……何?」

 

 警戒しながら傘の中に入り、スタークと共に歩を進める。

 

「お前と宇佐美は似ているな……」

「……何を言っている?オレと、あいつが?」

 

 戦兎は険しい表情になり、自分とそっくりな“彼女(スターク)”を睨む。それをどこ吹く風で言葉を続ける“彼女”。

 

「お前は過去が消え、その過去に怯え必死に足掻き続けている。宇佐美は過去を疎み、人を恨み、自分が存在する未来を掴もうと突き進み続ける……」

 

 静かに長髪を揺らしながら歩くスタークは突然立ち止まり合わせ鏡のように戦兎を見た。

 

「お前と宇佐美は、どちらも自分の心に従い未来を切り開く。それの結果が他人の為か、自分の為かと言うだけの違いだ。だがどちらもその枷を外せば……全く同じなんだよなぁ」

 

 その含みを持った言葉は戦兎の心の奥底に黒い泥のようになって溜まる。厭なものが、胸をせり上がってくるような、気持ち悪さに似た感覚。

 

「つまり、何が言いたい……?」

「いずれ分かる、因幡野戦兎。お前がいるべき場所は、IS学園(ソコ)じゃないって事がな。それじゃ俺はここまでだ」

 

 スタークは戦兎の手に傘を持たせると雨の中に身を躍らせた。長い髪を降りしきる雨に濡らし、スキップ混じりに離れていく。

 

「あ、傘あげるから助言貰ったことは黙っててくれよ?じゃ、Ciao♪」

「あ、おい!」

 

 茶目っ気たっぷりにウインクと共にそう告げる。そして兎のように勢いよく跳躍し、朱い蛇は倉庫の向こう側へと消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 寂れた薄暗い倉庫の中。紫色の長髪を持つ人物、宇佐美 幻。その目線の先には開け放たれた扉があった。閉じていたその戸が開いたのは、片手に鈍色の箱を持った記憶喪失の天才科学者。

 

「さぁ、パンドラボックスを渡してもらいましょうか。……なぁ因幡野戦兎先生」

「……そのつもりは無い」

「何?では篠ノ之箒がどうなっても……」

「箒ちゃんがどうしたって?」

 

 すかさずスマホを見せる戦兎。

 

「……!何……?」

 

 それを宇佐美が見ると、箒をつなぐ鎖をビートクローザーで断ち切るクローズの姿が。

 

『……一夏、お姫様抱っこは、ちょっと……』

『今そんなこと言ってる場合かよ……、っと!』

 

「おーぉ、甘ったるぃ……一生やってなさいそしてリア充爆発しろ」

 

 だが、ラブコメを鑑賞するのもそこそこに、スマホをポケットに入れると片手にビルドドライバーを持つ。

 

「と、いう事だ。分かった?」

「……、交渉は決裂ということですか……。ならばァ、答えは一つだなァ!」

 

【ラビット!タンク!ベストマッチ!】

【Bat…!】

 

「変身」

「蒸血」

 

 雨が降りしきる音にその他の音がかき消され、しばらく経つと二人の姿は変わっていた。

 

『「………………ハァッ‼」』

 

 そして互いに拳を振りかぶり、攻撃を繰り広げる。

 

「ッ……聞いたよ、篠ノ之束がしでかした、あの事件を」

『ほう、それで?』

 

 戦いながら戦兎は問う、宇佐美の……――――篠ノ之束として正しい心がまだ生きているのかを。

 

「お前は記憶がないと言っていたな!……でも、お前が篠ノ之束であるならば…何か感じることがあったはずだ!それすら感じていないのか?」

『当然だ、謝罪することをした覚えなど無い』

 

 だが、宇佐美は悪びれずに答える。何故自分に怒りを向けられているのか?それすら理解できないと言うふうに。

 

『逆に聞こう。科学の発展に犠牲は無くてはならない。それとも何か?お前はモルモットを解体せずに動物の体内構造を理解できるというのか?科学者には……他の生命を不幸にしてでも科学を発展させる責任がある!』

「ふざけるな!科学を侮辱しておいて、何が科学者だ!」

 

 だが、戦兎の怒りを鼻で笑う宇佐美。

 

『……、フン。コレを篠ノ之束が聞いていると思うと、滑稽だな』

「?」

 

 疑問に思った戦兎が尋ねる間も無く、宇佐美はビルドの腹部を蹴り、距離をとる。

 

『お前の偽善は叶うまい。その証明を見せてやろう……科学の造る未来の姿を!』

 

 そしてトランスチームガンから黒煙を噴き出し……、三体の巨大なスマッシュを出現させた。

 

「な、何この怪物……?これもスマッシュなのか?」

『これこそは篠ノ之束のISコアと人工細胞を組み合わせ、ネビュラガスを注入し造り出した殲滅兵器型スマッシュ……インフィニット・スマッシュ。略して…………あぁ、偶然にもISだな?』

「何だと……お前……っ!」

 

 痛烈な皮肉と侮蔑のこもった口調で怪物の名を紹介する宇佐美。

 

『面白いだろう?コレが天災の夢の末路だァ……まぁ所詮天災ごとき、神の才能を持つ私の足元にも及ばない……。どうせISを造ったところで、ゴミみたいなガラクタなんだがなァ‼』

 

 

 

 

 

 

「インフィニット・スマッシュ……ねぇ。アーキタイプ・ブレイカーに出てくる絶対天敵(イマージュ・オリジス)のロストスマッシュカラーver.だよなぁ……」

 

 倉庫の窓の外では、ビルドとナイトローグ、そしてISの怪物を見る人影があった。因幡野戦兎の顔をした人物は、腕組みをして不敵に笑みを浮かべる。

 

「さて、ISを汚されたお前はどうする……――――篠ノ之束?」

 

 長い髪を弄りながらどこかで見ている篠ノ之束に尋ねる……『お前の()は、崩れるぞ』と……。

 

「……、……ところでこいつホンット胸でけぇな。運動に邪魔過ぎる……肩凝るっての、納得かも」

 

 ………――――最後の最後で、やっぱり締まらないスタークの変身者なのだった。

 

 

 

 

 

 

 窮地を脱した箒と共に、波頭の倉庫へやって来る青い仮面ライダー。因幡野戦兎を心配して猛スピードで来たらしい。箒をお姫様抱っこしたままだった。

 

「戦兎さん!助けてきたぞ、って……――――なんだコレ!?」

「か、怪物……?スマッシュ……なのか?」

 

 クローズや箒の前には怪獣のように咆哮を上げる怪物たち。そのインフィニット・スマッシュを見て、戦兎は何故か無性に腹が立った。いや、理由は分からないが激怒していた。

 

「……ISには潜在的な意識があるはずだ。こいつらは本当に戦いたがってるのか?」

『ハッ、兵器に感情など必要ない……篠ノ之束は何故こいつらから意識を奪わなかったのか、甚だ疑問だな』

 

 ISの存在意志すら否定し、嘲るナイトローグ。

 

「……!」

『そもそもお前たちが使っているビルドドライバーは兵器として不完全だ。その点で言えばスクラッシュドライバーは素晴らしい。アレを使い続けていれば生体兵器になり下がるからな。シャルル・デュノアと言ったか?今は人間らしいが、何時殺戮マシーンになるのやら、ククク……』

 

 対してビルドは激昂するかと思いきや……むしろ冴え返った頭で冷静にナイトローグの言葉を切り刻む。

 

「そうか……、分かったよ。お前が篠ノ之束よりも劣っているということが」

『何?』

「篠ノ之束は確かに天災だったのかもしれない……でも自分の発明だけは……ISの自由を奪うことだけはしていなかった!ISも……人間の尊厳すら踏みにじる、お前はそれ以下の存在だ‼」

『黙れェ‼』

 

 両腕を広げ全身で怒りを表現する宇佐美。叫ぶ言葉には憎しみと……悲しみが混じっているようだった。

 

『貴様には分からないさァ……、人間は皆、醜い悪魔だということがぁぁぁぁぁっっっ‼』

「人間であっても!ISであっても!この世界に生まれた意志を持つ命だ!それを弄ぶお前こそが、悪魔だ‼」

『ハッハハハハ!?可笑しな奴だ!道具にそこまで入れ込むか!いや……当然と言えば当然だなァ!なぁ、てぇぇぇっんさい科学者ぁぁぁぁぁ‼やれ、化け物共‼』

 

 腕を振るい、虫や食虫植物のようなインフィニット・スマッシュに命令をだす。対してビルドは、細やかなスナップで二色のボトルを振っていた。

 

「とっとと終わらせる……!ビルドアップ!」

 

【ニンニンコミック!イエーイ!】

【分身の術!】

 

 ニンニンコミックフォームとなったビルドは、刀型デバイスである『四コマ忍法刀』を用いてさらに二体の分身を創り出す。

 

「「そんでもって!」」

 

【海賊レッシャー!イエーイ!】

【ホークガトリング!イエーイ!】

 

 その分身も別のベストマッチフォームにビルドアップした。各々専用武器を構え、ボルテックレバーを回転させる。

 

【【【Ready go!ボルテックフィニッシュ!イエーイ!】】】

 

「「「ハァァァァァッ‼」」」

 

 それは一瞬の出来事。巨大な手裏剣や海賊船、列車に鷹の様々なエネルギー体が倉庫の内を駆け巡った。

 

――――Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッ‼

 

 カマキリ、ウツボカズラ、タコのような怪物ISは叫び声を上げ、緑の炎を噴き上げ爆散する。その叫びはどこか、苦しみから解き放たれた歓喜にも思えた。

 

「どうだ!」

 

 基本フォームのラビットタンクに戻ったビルドは、ISの怪物を視ずにすむと喜ばずにはいられなかった。……――――その理由が分からないまま。

 

『どうということは無いな……と言うよりも、感謝する。こいつらに重要なのは倒されることだ……』

「何……?」

 

 ナイトローグはインフィニット・スマッシュが消えた場所に近づき、転がっていた三つの“濁った黒い結晶体”を持ち上げる。

 

『……クク、計画通りだ……!ロストタイムクリスタルの精錬が終わった。これでロストISコアが完成する。インフィニット・スマッシュにしたコアは二百程……。残り、半分近く……』

「ロスト、タイムクリスタル……?」

 

 ビルドの声には答えずにナイトローグは首を傾げ、正義の味方たちへと向き直る。

 

『さて、消化不良だろう?ついでだ、因幡野戦兎、貴様の持っているボトルと……――――命をもらおうか』

 

 そう言って片手に水色のフルボトルを出現させる。それはクラスリーグマッチの時、戦兎の目の前で奪われたもの。

 

「ダイヤモンドフルボトル…」

『懐かしいなァ。このボトルで篠ノ之箒をスマッシュから人間に戻したんだったな?ならば今度は、このボトルで篠ノ之箒を……』

 

 彼女は、不気味に首を直角近くに曲げ、トランスチームガンを構えた。

 

『殺してやろう』

 

【フルボトル!スチームアタック!】

 

 横に腕を振るうと、倉庫内はダイヤモンドの結晶が宙を舞い散った。その光景は不気味なほど場違いにも美しい。

 

「何……?周囲にダイヤモンドを……」

 

【ライト!】

 

 さらにナイトローグは戦兎の知らないボトルを取り出し、キャップを合わせる。

 

「光……?っマズイ!」

 

 何をしようとしたのか理解した戦兎は、とっさに周囲にあるダイヤモンドの屈折率を暗算し、目的の場所に駆け出した。

 

【フルボトル!スチームアタック!】

 

 宇佐美が躊躇いなくトリガーを引く。銃口から迸る瞬く光。

 ダイヤモンドにレーザー光を射出すると、一本だった光の筋は拡散し、また金剛の結晶に当たり分散、そして集合していく。

 人間に認知できたのはそれまで。その刹那の後、箒の眼前には殺意に満ちた光が迫る。

 

「……――――え?」

「ッうぐぁぁぁぁッ‼」

 

 ところが、箒に当たる寸前でその光が遮られた。床に転がるのは因幡野戦兎。

 

「戦兎さん!?」

「因幡野先生!」

 

 箒の防御には間に合ったらしいビルドだったが、その装甲に大ダメージを与えたらしい。そのままビルドは崩れ落ち、変身が解除されてしまった。

 

「がはっ……」

『どうした、脆弱だなァ。今のお前では、私を倒すことは不可能だ。さて……』

 

【デビルスチーム!】

【Bat…!スチームショット!Bat…!】

 

『……死ね、篠ノ之箒』

「なっ……この野郎……!」

 

 強烈なエネルギー弾がクローズもろとも箒を吹き飛ばそうとする。エネルギー収束率を見て、間違いなく致命傷を与えるつもりだ。超高温の巨大な光弾が、トランスチームライフルの銃口に集い、放たれる。

 

 

 眩い流星が、その場にいた人間を溶かさんと迫りくる。

 

「……――――ッ」

「おっと、あっぶねぇな」

 

 だが、そうはならなかった。

 

『「「!?」」』

 

 突然どこからともなく深紅の炎が飛来した。それはナイトローグの放った膨張エネルギーを絡め捕り、消滅させてしまったのだ。

 全員が飛んできた方向を振り向いた。

 

「……ッ!?戦兎さんが……二人?」

 

 そこにいたのは、トランスチームガンをクルクル回し、雨露に濡れた長髪をかき上げる因幡野戦兎そっくりの人物。

 

「違う、そいつは……」

 

 戦兎は一目でわかった。『彼女』はここの倉庫に来るまで話をしていた人間……。

 

『……!スタークか……のぞき見か?そして、趣味の悪いことだ』

「「えぇ!?」」

 

 ナイトローグの言葉に驚く一夏と箒。男だと思っていたスタークの中身が、戦兎にそっくりな美人だったというのに驚きを隠せない。

 

「趣味が悪いのはお前だろ?人質を殺してどうする?価値がなくなるだろうが……」

 

 憎々し気に顔を歪め、箒のことを思う素振りで宇佐美に詰め寄るスタークの変身者。

 

『趣味が悪いと言ったのはその格好なのだが、……まあいい。だが、この女だけは気に入らない。私の手で殺さなければ気が済まない!』

「……だってよ、クローズ?お前は目の前で“恋人を殺します”宣言されて、黙っていられるか?男が廃るよなぁ?」

 

 急にくるりと振り向くと、“彼女(スターク)”は雨水をぽたぽたこぼしながら仮面ライダークローズに近寄り、肩を叩いた。

 その行動を白い目で見ながらも、クローズはビートクローザーの切っ先をナイトローグに向けた。

 

「……――――スターク、勘違いすんなよ。お前も何時かモンド・グロッソの落とし前は付けさせてもらう」

「おぉこわ……」

「だが、今は……ナイトローグ。お前は俺が倒す……!」

 

 ゆっくりと倉庫の中まで歩みを進める青い戦士。これに苛立ったのはナイトローグである。

 

『スターク、貴様一体何をやっている?何故クローズを煽った……?邪魔をするな……!』

「邪魔するよぉ。こんなかわいい子が死んだら流石に後味が悪いじゃん?俺豆腐メンタルだからさぁ、目の前でスプラッタになったら夜も寝られねぇんだよ、分かる?」

 

 倉庫の壁に寄りかかりジャケットを雑巾のように絞り、どうでも良さげに言う『彼女』。あまりの身勝手な言い分に宇佐美の我慢は限界になった。

 

『……――――ざけるなよ、スタァァァァァクッッ‼』

「ハッハッハ、俺は大まじめだ。んじゃ、任せるぜ、織斑一夏?」

 

 一通り笑った後、“彼女(スターク)”は大ジャンプで二階の回廊に着地した。そして、金網が鈍く音を響かせるのと、ほぼ同時。

 

「ハァァァァァ‼」

 

 ナイトローグにクローズが斬りかかって来る。慌ててスチームブレードを分離させビートクローザーを受け止める宇佐美。

 

『チィッ!』

「もう箒や戦兎さんを傷つけさせるか!アンタが何者であっても関係ねぇ!もうその顔で……その口で!そんな事ほざかせねぇ……!二度とだぁ‼」

 

【ヒッパレー!ヒッパレー!】

 

『黙れェ!実験動物(モルモット)風情が‼ヴウウ……ヴィハァァァァァ!』

 

 しかし夜の悪党も然るもの。彼女は背後に巨大な翼を広げ、倉庫内を縦横無尽に飛び回る。

 その黒翼に当たったドラム缶やクレーンは触れた途端に爆発し、周囲は炎で包まれた。

 

「くっ……!しまった!何処だ…!?」

『馬鹿め!』

「うわぁっ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼」

 

 クローズは高速で近づいてきたナイトローグに激突される。そして、その慣性も凄まじい。彼は倉庫の壁を突き抜けて弾き飛ばされ、箒の近くで変身が解除された。

 ベルトやボトルが周囲に無惨に散らばる。狩られた小動物の臓物のように。

 

「一夏!?大丈夫か!?」

「うぅ……!?……こいつ、まだ本気を出していなかったのか……!」

『当たり前だ。私以下の貴様らごときに本気を出す理由がどこにある?』

 

 傲岸不遜にも一夏や戦兎を見下しているナイトローグ。彼女は一夏の手をそのままバトルシューズで踏みつける。

 

「うっぐぅぅぅぅッ!?」

「一夏!?一夏!」

『ハハハ……うん?』

 

 ナイトローグの装甲に銃弾が飛来していた。見れば、倉庫の奥ではホークガトリンガーを構えた女戦士が立っている。

 頬から血を流しながらも立ち、ベルトを装着している因幡野戦兎。彼女は宇佐美 幻、否……――――篠ノ之束の良心に問いかける。

 

「…………何故箒ちゃんをスマッシュにした、あの子は泣いていたんだぞ。アンタの所為で一家離散の目に遭わされて、挙句の果てにスマッシュにされたんだ……。お前の心は痛まないのか!?」

『痛まんな!篠ノ之箒は織斑一夏を目覚めさせる為の駒だ!そこに親愛など……ましてや私に家族愛などあるわけがない!』

 

 それを聞いて、怒りを抱かぬ人はいない。手を踏まれながらも一夏は憤怒の顔となり、箒は諦めたような空虚な表情を浮かべた。

 ナイトローグはやれやれだとばかりに頭を振る。まるで最初から勘違いをしている、と言うふうに。

 

『お前たちが勝手に篠ノ之束と言う人物の虚像を思い描き、私をそれに重ね合わせただけだろう!?何も知らないクセに……私に“姉”だの“家族愛”だのと言うとは、馬鹿馬鹿しいなァ!?』

「ふざけるな……!お前は、箒ちゃんに消えない傷を残し……一夏を苦しめ、科学を侮辱し、そしてISさえも兵器として扱った!」

 

 唇から垂れる血を拭い、眉を吊り上げる戦兎。

 

「そしてそれが原因で今なお数多くの人間を傷つけている…。お前だけは……、科学を悪用するお前だけは許せない……!」

『ハッ!そんな状態のお前に、一体何ができる?』

 

 嘲り、一夏の傍らから離れ戦兎に向かい合うナイトローグ。その時、戦兎の足元にプルトップ缶が高い音をたてて転がり落ちる。

 

『……?』

「……戦兎さんよ、しょうがねぇからコレ渡してやる…!」

「……一夏にしちゃ気が利いてるじゃないか……!」

「うるせぇよ……。そっちは任せた……!」

 

 そして戦兎はその缶を拾い上げ、シャカシャカと振る。缶の中からは炭酸が激しく弾ける音が聞こえてきた。

 

『何?それは……』

「お前は……正しく“天災”、悪魔の科学者だ……」

 

 構わず戦兎は言葉を続ける。

 

「オレは自分が信じる正義の為に……“天災”、お前を倒す!」

 

 そう決意を固め、赤と青の缶、『ラビットタンクスパークリング』の『シールディングタブ』をプルトップのように開けた。

 

 

【ラビットタンクスパークリング!】

 

 

 缶が開く音が倉庫の中に反響し、炭酸の弾ける音がより鮮明に聞こえる。そして戦兎はドライバーにセットし、レバーを回転させる。ビルドのライダーズクレストのような工房が出来上がると、ハイテンションな電子音が響いた。

 

【 Are you ready? 】

 

「変身!」

 

 戦兎は交差させた腕を左右に垂らし、前後からやって来る装甲を受け入れる。赤と青、そして白のトリコロールカラーの装甲が合体すると、激しく炭酸のような泡が発生し、ビルドの新たな姿を露わにする。

 

 

【シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!】

 

【イェイ!イェーイ!】

 

 

「……勝利の法則は……決まった!」

 

 そこに立っていたビルドは……従来の姿を残しつつも刺々しいデザインとなっていた。身体の各所に泡を模した白い部分が目立つ、『仮面ライダービルドラビットタンクスパークリングフォーム』である。

 

『な、何だ……それは?』

「決まってんだろ、フルボトルに頼った姿じゃない。これはオレ自身の正義の姿……科学の力、誰かを助ける為の力だ‼ハァ!」

 

 一瞬でナイトローグに近寄ると、片手にはカイゾクハッシャーを、もう片手にはドリルクラッシャーを握り連続攻撃を仕掛けるビルド。

 

『がぁッ!?今までの高速移動の比では……!?』

 

 さらにホークガトリンガーを取り出し、後退ったナイトローグに追撃を加える。

 

『ぐぅ……!何故だ……?科学の発展には多少の犠牲はやむを得ないはずだ。人間はそれに目をつぶり、醜いものに蓋をして科学を発展させてきた……それがこの世界だ!それによって生まれた命があるということも知らないクセに……、それが偽善だという事が何故分からない‼』

「分からないな!お前とオレの決定的な違いを教えてやる!科学ってのは……そんな為にあるんじゃないんだよ‼平和の為に……人類の平和の為に!正義の為にオレはこの力を使ってるんだ!」

 

 そう堂々と言い切るビルドに、一瞬ナイトローグは魅入られたように固まるも、頭を振り考えを改める。

 

『なら……これならどうだァ!』

 

 胸の蝙蝠のマークが輝き、ナイトローグの指示の下巨大な黄金の蝙蝠が二匹宙を羽ばたいた。蝙蝠たちはビルドに向かってソニックムーブを飛ばして、彼女の動きを拘束する。耳障りな羽音と鳴き声が倉庫内に充満しだした。

 

「……ほー、まさかあんなギミックも搭載していたのか……(つーかアレ、龍騎の『ダークウイング』だよな……)」

 

 二階から観戦していたスタークはビルドの攻撃手段を観察していたものの、ナイトローグの新たに追加された技にも関心を示す。新たな力に興味が出たのか、はたまた懐かしさからか、頬を綻ばせる。だが、それでも…――――。

 

「……――――ここまでだな、宇佐美(う~さ~みぃ)?」

 

 

 

 ナイトローグはその正義のヒーローとしてのビルドの姿に、自分の怒りや憎しみと言った思いをぶつける。

 

『正義の為だと?馬鹿馬鹿しい!甦れ、お前の本当の姿を!お前の狂気を、野心を!全てを思い出すんだ!』

「なんのこったよ!オレにあるのは……皆の笑顔を守ることだけだ!」

 

 そう言って蝙蝠たちの拘束を、身に纏う泡と共に弾き飛ばした。

 

『何……!?』

 

 さらに蝙蝠たちを蹴り上げると、天井を突き破り飛んでいく二匹を追うように大ジャンプ。空中で体を回転させながらベルトへと手を伸ばす。

 

【Ready go!】

 

 電子音と共に蝙蝠たちの背後にワームホールのようなグラフが出現し二匹を拘束、そしてビルドは片足を前方へ突き出した。

 

【スパークリングフィニッシュ!】

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

 無数の泡がビルドの体から発生し、渾身の叫びと共にライダーキックを叩き込んだ。必死に抵抗する二匹をものともせずに撃破し、その勢いのまま飛んでくる

 ……そして。

 

『ぬッ……グゥ……うぉォォォォォ!?』

 

 さらにビルドは下にいたナイトローグを彼女の防御ごと吹き飛ばす。赤と青と白、トリコロールの波動が周囲に伝播し、その光景はよもや自由を勝ち取る革命の凱歌か。

 人間の自由を守る正義のヒーローが、大地に立つ。

 

「……オレの……勝ちだ!」

 

 ビルドは後方宙返りして着地する。周囲にはナイトローグが持っていたダイヤモンド、ライトフルボトルが散らばっていた。

 激しい雨が降り注ぐ波頭では、ナイトローグ変身が解除された宇佐美がうずくまっている。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……馬鹿なぁ……ッ!」

「フルボトルを返してもらうぞ。コレはオレ達のモノだ」

 

 戦兎は奪われていたゴリラとダイヤモンド、さらにライトフルボトルをトレンチコートのポケットに突っ込んだ。勝利の女神がどちらに微笑んだのか……それは語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 ……――――だが、一夏に肩を貸す箒がやって来たところで、彼女は真実に繋がる扉を開いてしまう。それは運命の女神の悪戯か。

 

「因幡野先生。あの女、何か妙なことを言ってませんでしたか?“本当の姿”……とか」

 

 箒は戦兎に聞く。どうにもあの言葉に違和感を覚えてならなかったのだ。

 

「そうだ……何か知っているのか、オレのこと……」

 

 

 それを聞いて、宇佐美は眼を見開くと、逡巡し……――――邪悪に笑みを浮かべた。

 

「?」

 

 そして、肩を振るわせる。耐え難い愉悦だというように。

 

「キ……ハハハハハ、キハハハハ……!ヴェハハハハハハハハ‼まだ分からないのか‼」

 

 狂ったように笑い出した蝙蝠の魔女。その変貌ぶりに、一歩たじろいでしまう三人。だが、彼女の哄笑は終わらない。ようやっと笑い終えると、宇佐美はぎょろりと目を剝いた。冷徹な能面のような顔をして戦兎を見る。

 

「なぁ……疑問に思わなかったのか?」

 

 ゆっくりと胸をおさえて立ち上がり、一歩、また一歩と戦兎に近寄る宇佐美……。その様子はゾンビのようにぎこちない。それがより一層の恐怖を煽る。

 

「何故貴様が誰からも教わらずにISの理論を理解できたのか」

 

 突然戦兎は心臓を掴まれた様な感覚に陥る。まるで、“因幡野戦兎”と言う人格が話を聞くことを拒否しているかのような……そんな感覚だった。

 

「何故そんなにも身体能力が高いのか、何故ISに対して親身になったのか……」

 

 宇佐美の顔は既に目の前にあった。篠ノ之束にそっくりな顔が目の前にある……。

 

「その答えはただ一つ……篠ノ之束は私ではない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前だよ、因幡野戦兎……!お前がISを造った天災…――――、『篠ノ之束』だ……‼」

 

 

 

――――時が、止まった気がした。

 

 

 

「………、……?……――――!?」

 

 宇佐美は口元に、引き攣った三日月を浮かべる。蝙蝠が血を求め、兎の周囲を舞う。既に陽は墜ち、天は暗黒に包まれる。

 

「アーハハハ!アーハハハハハハハハハ‼アーハハハハハハハハハ!!!」

 

 気持ちの悪い狂笑は残響を繰り返し、篠ノ之束の顔を持った別人は夜霧と共に消えていった。

 そこに残っていたのは、一人の『天才/天災(てんさい)』。

 

「……――――オレが………篠ノ之……、束……――――?」

 

 

【挿絵表示】

 




次回 『因幡野戦兎をジャッジしろ』

「この人が篠ノ之束なんだぞ!?」
「オレが箒ちゃんを……大勢の人間を傷つけた!」
「因幡野戦兎は……正義のヒーローだろう」
「戦ってきたんだろ……それができるのは、因幡野戦兎だけだろうが!」




AM I TABANE SINONONO?→NO.I AM SENTO INABANO.


※2020/12/22
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部
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