IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「仮面ライダービルドでありてぇん↑さい↓科学者の因幡野戦兎は、遂に仮面ライダーグリスに対する対抗策として新たなドライバーを完成させる!やっぱりオレの発明は最高(さいっこー)だな!」
宇佐美「やはり今後カギとなるのはスクラッシュドライバーだな……恐ろしい、私の神の才能が‼」
一夏「お前ら何なんだよ‼つーかまた出たな宇佐美ぃ‼」
戦兎「って、何で宇佐美がスクラッシュドライバーの事言ってんだよ?まさかネタバレ……」
宇佐美「じゃあ言わない♬」
一夏「誤魔化し方下手クソか‼さてさてどうなる第四十五話!」



第四十五話 『兵器とヒーロー』

一夏side

 

「ただいまー……あースマッシュ退治つっかれたー。で?鈴ちゃん、言いたいことって?」

 

 スマッシュボトルを机の上に置き、携帯に電話してきた教え子に向き直る戦兎さん。最近気合入ってるなー。スマッシュ発生したら即撃退して、今週もう4体倒してるとか。吹っ切れてから身体のキレもいいし。

 そりゃそうか。『細胞レベルでオーバースペック』を自称するあの人の身体が遺伝子組み換えされた、ある意味で上位互換な代物だもんな…。

 

「む、何か変なこと思われてる?」

「あー、戦兎さんもう説明していいですか」

 

 

 

――――少女説明中。

 

 

「新しいハードスマッシュ?」

「そ、一応撃退できたけど……どうにも戦いに慣れてない感じだったわ。三羽烏とか言うのと関係があるかも知れないから、簪。ハックして調べて」

「り(‘’◇’’)ゞ」

 

 パソコン(それも戦兎さんがチューンした凄い奴)をおいている席が定位置になった簪氏がパチパチとタイピングする音が聞こえてくる。もはや俺らの放課後の見慣れた風景になって来たよな……。

 

「……あ、グリスがIS学園の門前にいる」

「あっそう……え?」

 

 へー、グリスが……は?『グリス』って、シャルル・デュノアの変身するあの仮面ライダー?

 

「「えぇぇぇぇっ!?」」

「さらっと言うモンじゃないでしょうが!」

 

 慌ててドライバーを持って校門へ向かう俺達。

 

「って一夏、言ってる傍から……」

 

 俺が持った水色のドライバーを見て、戦兎さんは眉をひそめる。

 

「持っとくだけだ。それに万が一の時、コレ使わなきゃ……あいつらには勝てねーだろ」

 

 だが、誰もその時気が付いていなかった。空き部屋となったライダー部に、こっそりと侵入する小柄な銀髪の人物がいたことを……。

 

 

 


 

 

 

「来たか……」

「何が目的だ。フルボトルを寄越せってか?」

 

 俺達の目の前には、既に仮面ライダーになったシャルル・デュノアと、ハードスマッシュの三馬鹿ラスが揃っていた。

 

「それもある、が」

 

 たっぷり間をとってグリスが俺達の方に近づいてきた。

 

「お前に聞きたいことがあったんだ……」

 

――――(;゚д゚)ゴクリ…

 

 簪氏や鈴が息をのみ、箒やオルコットが臨戦態勢に入るほどの殺気を放つシャルル・デュノア。そして……。

 

 

 

 

 

「……くーたんとはどー言う関係だぁ‼」

「「「「「え゛えぇェェェェェェェェェェッッッ!?」」」」」

 

 

 

 俺達仮面ライダー部の面々だけでなく、配下の三馬鹿もズッコけていた。いや、言うに事欠いてそれか!?

 

「くーたんって……あー、クロエの事だよな!?なんでおま…、えぇッ、それ!?」

「そーだァ!何で眼帯付けてIS学園にいるんだよォ‼あの子はどっかのカフェでアルバイトしてるってプロフィールにあったぞ!」

 

 何かこいつのキャラが俺の中で崩れてく。それにしてもクロエとラウラ・ボーデヴィッヒ、ねぇ……。

 

「うん、確かに姉妹かってくらい特徴が似てるわな……」

「あいつは……ラウラ・ボーデヴィッヒという別人だ。よく間違えられる」

 

 後ろで控えていた箒がとっさに言い訳を口にした。……信じるかなコイツ?

 

「………――――、マジ?」

「……マジだ」

 

 あっ信じた。

 

「んだよ、びっくりさせんなよコラァ……、お前ら!万歳三唱!」

「「「くーたんっ!(へーいっ!)くーたんっ!(へーいっ!)くーたんっ!(へーいっ!)」」」

 

(何でオレ/俺、こんなバカな連中と戦ってんだろうなー……)

 

 その時俺と戦兎さんの心の中はシンクロしていたとか……。

 

「「…………ハァ……、変身」」

「んぉ?」

 

【ラビットタンクスパークリング!イェイ!イェーイ!】

【Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!】

 

 戦兎さんはビルドに、俺はクローズに変身して奴らの前に立った。

 

「おぉ、やる気だな」

「その前にオレらもお前等に聞きたいことがあったんだ。お前等三羽烏だろ?四人目のハードスマッシュっていないよな?」

「いないけど?それがどうした」

「……そうか、ならいいや」

 

 そいつらの言葉を素直に信じるのは愚かかもしれないが、どーにも策略を巡らせるってタイプじゃなさそうだし、嘘じゃなさそうだし…。鈴を襲ったのは、こいつら以外の……いや、IS学園内の人間ってことか?

 

「さぁて、互いに疑問も消えたみてぇだし。殺し合いの祭りを始めようか……!」

「言っておくが、オレたちは戦争の道具にはならない」

「あ……?」

 

 戦兎さんはきっぱりと兵器であることを否定する。それに金色の仮面ライダーは食って掛かる。

 

「逃げているだけじゃないのか?こうなった世界でそれがどれだけの綺麗事か……分かって言ってんのか?」

「……自分の言ってることがどれだけ偽善と欺瞞に満ちているかなんて、自分が一番分かってる!」

 

 篠ノ之束であった正義のヒーローは、過去の自分を思い声を張り上げる。

 

「それでも、だからこそ!オレたち科学者が現実にしなきゃならないんだよ……!ISもライダーシステムも兵器なんかじゃない……オレが証明して見せる!」

「お前独りで何ができるんだ?」

 

 唸るように呟くグリス。………――――まぁ、傍から聞けば綺麗事だわな、でも。

 

「独りじゃねぇ……俺もいる。いや、ここは……“俺達が”、が正しいか?」

 

 思わず傍に立ち、俺も声を発していた。俺も随分と正義のヒーローっぽくなったもんだ。始めは、モンド・グロッソで誘拐された自分のエゴの為だったのになぁ?

 それに、箒だけじゃない。戦兎さんの過去を知ったセシリアも、鈴も、笑顔で戦兎さんに夢を受け入れてくれた。もう、戦兎さんは独りなんかじゃない。

 ……あと、俺の言葉になんか簪はガッツポーズしてた。どうやら正義の味方の頭数に入れてもらったことが嬉しかったらしい。

 

「青クセェなァ……。だが、嫌いじゃねぇ。いいぜ、見せてみろ。心の火……心火だ。心火を燃やして……ぶっ潰す!」

「行こうか、一夏!さぁ、実験を始めようか!」

「しゃあ‼行くぞオラァ‼ドルヲタに負けたら末代までの恥だし‼」

「…んだと?ドルヲタ…、なめんじゃねぇぞォォ!」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

三人称side

 

 

「お前の相手はウチらか?」

「よりにもよってビルド、ですか。コレは都合がいい。フルボトルを渡してもらいましょう」

「うばうぞーw」

「ふっふっふ……君たちのチームワークは素晴らしいよ。だけどね、オレも団体戦ができるようになったんだ!皆、カモン!ボッチ卒業イェーイ‼」

「…なんか、抉ってくるよね戦兎さんって…」

「それを言っちゃあ…」

「それよりも戦闘準備ですわ皆さん!」

 

 校庭近くでは三馬鹿とビルドの戦いが始まってる。IS持ち達も援護に回っているため、戦力はIS学園が優勢ですらある。だが、黄金のライダーと戦っているクローズにとってそんなものは些事。シャルル・デュノアという人間が、油断してはならない存在であるがゆえに。

 

「うぉおぉぉぉッ‼」

「だぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼」

 

 グリスのサバットによる蹴りとクローズのパンチが衝突し、青と金の衝撃波を周囲に振り撒く。

 

「(――――隙ありィッ)!」

「ねぇわ、バカ‼」

「な、何でバレた!?特に心の声‼」

「そういうの、結構鋭いんだよ俺ァ、そらよ!」

 

【ツインブレイカー!】

 

 目まぐるしく火花を散らす両者の戦いは加速する。音速を超えたパイルバンカーの一撃がクローズに迫る…――――。

 

「それは前に見た、ッ!」

「お!?」

 

 だが、一夏の成長速度は凄まじい。一度見た行動には、即座に対処することができるようになっていた。

 

【ミリオンスラッシュ!】

 

 蒼炎が周囲を一閃する。眩き剣戟が千の翼の如く羽搏き、光の羽根を大地へと舞い散らせる。

 

「くひ、ヤルなぁ…!」

 

【ロック!】

 

 燃え滾る闘志を見せたグリスに構わず、一夏はビートクローザーに金色のフルボトルを装填した。

 

【ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガスラッシュ!】

 

 絡めとる黄金の鎖。錠縛の斬撃がグリスを襲う。黄金のライダーは翼を奪われた烏の如く、身体の自由を奪われた。

 一夏の変身したクローズは、剣を釣竿のように扱うと地面で藻搔くシャルルを空中へと放り投げた。

 

「ッぐくっ、はは…!中々だよなぁ、お前も……だが!」

「がはぁっ!?」

 

 物理現象を超えた、不思議なことが起こる。シャルルを捕えていたロックフルボトルで封印エネルギーがはじけ飛んだ。それだけではない、彼は空中で軸足を組み替えて無理矢理身体を動かす。

 その反動で、グリスはクローズに痛烈な踵落としをお見舞いした。

 

「全ッ然……微塵も‼これっぽっちも満たされねぇなァ‼もっと俺を笑顔にしろよ‼おっるぁぁぁッ‼」

「おぉぉッ!?」

 

 流れる動作でアッパーカット。さらにニードロップ、そしてエルボーと、喧嘩殺法を交えたサバットでクローズにダメージを与えていく。

 

「焦燥!灼熱‼激闘‼俺を満たしてくれる奴はいねぇのかぁぁぁぁぁッ‼」

 

【スクラップフィニッシュ!】

 

 黄金の身体に、黒翼が広がった。力強い音声と共に、鋼の大地をも穿つ一撃が蒼龍の戦士の身体を射抜く。

 

「うぐッ、あァァァァァッッ!?」

 

 周囲の地形すら蹂躙する爆発と共に一瞬で変身が解除され、一夏は大地を転がった。勢いは殺されることなく、箒達の元まで吹き飛ばされる。

 懐から落ちた一本のボトルが、グリスの手に渡った。

 

「ふん、このボトルは…ライオンか」

「くそッ…、!」

「だ、大丈夫か一夏!?」

 

 正しく圧倒的という他にない。戦争を渡る死神の異名に偽りなし、と言ったところか。一夏は自分の肋骨が数本骨折していることに気が付いた。このままでは、負けてしまう。つまり、箒のことが守れない……。そんな焦燥に駆られていく。

 その時、彼の目の前に…――――水色のレンチ付きドライバーが転がり落ちた。まるで使えと言っているように、タイミングよく。

 

「一夏?それは…、ッ使ったら!」

「ほぉ?お前もか……」

「あぁ、俺もだよ…!」

 

 彼らの前で鈍く光るドライバー。彼は、その巡り合わせに賭けてみることにした。

 

 

スクラッシュドライバー!

 

 

 凄まじく力強い声が丹田から鳴る。一夏は切れた唇を拭うと、懐から龍の横顔がプリントされているパウチ容器を取り出した。

 

「一夏っ!駄目だ…!」

「悪い、借りるぞ」

 

 スマッシュたちと戦っていた戦兎からの声が届く。だがそれでも、彼は戦う。戦うことを途中で投げ出すことはできない。

 

「……――――こいつに勝つには、これしかねぇんだよ!」

 

 

ドラゴンゼリー!

 

 

 それは、拒絶か試練か。ドライバーへゼリーをセットした瞬間、彼の身体は青い電撃に包まれる。

 

「がっ…ぐっ、ガァァァァッ!?」

「一夏!」

「心配……ッ、すんなよ……、箒……こんなもん…!」

 

 虚勢であっても、彼が貫き通す思いに揺るぎは無かった。

 

「戦兎さんは……過去の自分と戦ってるんだ……!その苦しみに比べれば……、俺ができなくてどうすんだ……‼」

 

 思わず零れた言葉と共に、彼はドライバーのレンチを殴るように叩きつけた。その動作によって、ベルトの機構がゼリーを潰す。

 

「変っ……、身……ッ!」

 

 さらに厳しくなる痛み。身を裂く稲妻の刃が彼を襲い、苦悶の声がさらに響き渡る。

 

「フン…」

「ッ、駄目か!」

「一夏もういい、外せ!」

 

 誰もが変身失敗か……と思った時だった。

 

 

 

 

潰れる!流れる!溢れ出る!

 

 

 

「う、おおオォォォォォォォォォォォォッッッ‼」

 

 彼の周囲にビーカーの様な装置が生まれ、その中が水色のゲルで満たされていく。それと共に沸き起こる……高揚した雄叫び。

 

 

 

ドラゴンインクローズチャージ!

 

 

 

「……ハァ……ハァ…、ふぅー……」

 

ブルゥァァァァ‼

 

 変身が完了する。

 青のゼリーが身体から吹き飛び、その場には白銀に青を纏う仮面の戦士が立っていた。クローズとは異なる銀色の素体、胸に付いた龍の横顔。水色の頭部の中に光る、オレンジの瞳…。

 

「……う……」

「一夏!大丈夫か?」

 

 彼の胸の沸き起こる感情の奔流。目の前に、金色の仮面ライダーが映り込む。

 

「……っおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ‼」

「うわぉう!?」

「……何だよこの力…。……負ける気が、しねぇ‼」

 

 途轍もない高揚感に襲われるも、叫び声を上げ何とか思考を冷静に保とうとする一夏。想像以上に闘争心が刺激されており、理性の維持が厳しいらしい。早々に決着を付けねばならないと、彼の本能が警鐘を鳴らしている。

 だが、如何に強化された力を使ったところで、今の一夏では付け焼き刃だということがグリスにも、彼自身にも分かっていた。敵も然るもの、すんなり勝たせてくれるほど甘くはない。

 

「衣替えか、良いだろう。ここからが祭りのメイン、精々踊るが良い…」

 

【フェニックス!】

【ライオン!】

 

 ツインブレイカーに赤いボトルを装填したグリス。それは永遠を宿す万死の黒炎。翼を得た黄金のフェネクスは大空を翔る。

 

【ツインブレイク!】

 

「喰らえ」

「ぐッ…!オォォォォォォォォ‼」

 

 鏖の凱歌が、白い躯体に襲い来る。しかし黙って燃やされるつもりはない。気合と共に放った裂帛の声が、永久の滅火を吹き飛ばす。だが、それでも…――――。

 

「…スクラッシュを使ったところで、俺との差は埋まらん」

 

【ユニコーン!】

 

 嘲るようにそう言って、彼はもう一つのボトルを取り出しドライバーへとセットする。

 

【チャージボトル!潰れな~い!チャージクラッシュ!】

 

 レンチを下げ、パイルバンカー型の武装に円錐の様なエネルギーを溜め始める。一角獣の力を得た刺突が、唸りを上げる。

 

「んなもん……やってみなきゃ分かんねぇだろ‼」

 

 白銀の戦士クローズチャージも拳を握る。彼の手元に出現したツインブレイカーへ、箒の肩に止まっていたクローズドラゴンが自ら納まった。

 

【アタックモード!】

【Ready go!】

【レッツブレイク!】

 

「「おぉらぁぁァァァァッ‼」」

 

 金と銀の戦士の拳は、お互いの身体に砲弾のようにぶつかった。

 

 

 超新星の誕生が如き、煌めく爆発が大地を焼く。せめぎ合う二人。だが、その拳に篭ったエネルギーの波動は、突如として均衡が崩された。

 金色の戦士の拳が振り抜かれた。

 

「ぐぅ……、ああっ!?」

「っつつ……。だが、どーやら俺の方に分があったらしいな……ん?」

 

 流星のように吹き飛ばされたクローズチャージは、這いつくばり、うつむきながらも穏やかな声で笑っていた。仮面の下では、満足げな表情をしていることだろう。

 

「言っただろ、俺は……独りじゃねぇ、って!戦兎さん!使え‼」

「お、ありがと!……飲まれない様にくれぐれも気を付けろよ!」

 

 遠方のビルドへ投げ渡される、赤と灰銀の二本のボトル。それらをドライバーへと装填した彼女は、ハンドルレバーを高速回転させていた。

 

【フェニックス!ロボット!ベストマッチ!Are you ready?】

 

「ビルドアップ!」

 

【不死身の兵器!フェニックスロボ!イェーイ!】

 

「ハァ!」

 

 赤と鋼鉄の色の変化したビルド。左腕のロボットアームに、背面から垂れるクジャクや金鶏のような尾羽。その姿、正しく…――――。

 

「……焼き鳥?」

「ちょっと簪ちゃーんッ!急に弱そうに言うの止めてくれるかな!?火の鳥だがら!不死鳥だから‼」

「うぉぉッ!?」

 

 そんなふざけたやり取りをしながらも、ビルドに油断は欠片もない。火の鳥の状態になるとクローズチャージの目の前を通り過ぎ、グリスを遠方へ突き飛ばした。さらに空中を飛ぶフクロウのハードスマッシュを火だるまにする。

 

「あ、うぇ?……うわぁ!」

 

 連続攻撃によって地面に叩きつけられたジョーヌは、スマッシュから人間へと戻された。

 

「うわぁぁん!負ぁ~けぇ~たぁ~っ!」

 

 戦兎の抜け目なさはそれだけではない。黄色い女が落としたフルボトルを拾い、ビルドは新たな姿へとフォームチェンジした。

 

【ウルフ!スマホ!ベストマッチ!Are you ready?】

 

「ビルドアップ!」

 

【つながる一匹狼!スマホウルフ!イェーイ!】

 

 白と青の二色のベストマッチが現れた。白狼の鉤爪と、巨大なスマートフォン型武装が特徴的な装甲をしたビルド。彼女はスマホのシールドを構えながら、残り二人へ突撃を開始するのだった。

 

「さぁ……どんどんいっくぞ!」

「舐めやがって、ウチらのボトルを…!」

「返しなさい!」

 

 その様子に呆気にとられたらしい黄金のライダー。銀色のライダーは手に持った獅子のボトルを振り、満足げに笑いを溢す。

 

「……へっ、どうだ?これでも分があったって言えるか?俺達は、“一人じゃなかった”んだぜ?お前らと同じでな」

「…――――。成程な、はなっから俺の持ってるフルボトルが狙いだったってわけか」

 

 静かにクローズチャージへと向き直るグリス。静かだが、その落ち着き様は嵐の前の静けさと言うにふさわしい。

 

「……舐めてたわけじゃない。が、悪ぃ。甘いことしか言えない奴らだと思ってたのかもなぁ……」

 

 すると、尋常ではない殺気がグリスの周りを覆いつくした。

 

「覚悟しろ。ここからは死の舞踏……、死神のパーティタイムだ……!」

 

 アイレンズを輝かせ、金色の仮面ライダーはツインブレイカーを構える。先程とは段違いの気迫に、一夏や箒は鳥肌が立った。

 

「……上等だ、やってやるよ」

 

 …――――その時だった。黒い影が、雨の様に地面を濡らす。

 

「……って、おい!?お前、何で…!」

「あぁん……。何だ?パーティに水差したのは?…――――お前か、銀髪」

「何でだ、何でお前がそれを持ってるッ!」

 

 白い龍の叫びに、銀色の髪が棚引いた…――――。

 

 

 

 

 


 

 

 

 一方、ビルドたちの戦いは危なげなく進んでいる。人知を超越した生命体であるスマッシュであっても、ISが束になって攻撃をしてくる上に、対峙する人間は遺伝子レベルでオーバースペックな因幡野戦兎。

 はっきり言えば、ビルドが負ける確率の方が少ないだろう。

 

「ぐぅぅ……!ッ!しまった!」

「お、ラッキー!」

 

 ビルドはスタッグハードスマッシュを変身解除させ、新たなフルボトルを手に入れていた。

 

「それを返せ‼」

 

 そう言って殴りかかって来るキャッスルハードスマッシュ。

 

「ヤダよッ!それっと!……ん?うわぁ!?」

 

 やすやすと避けるビルドだったが、その背後から迫ってきていたもう一人の襲撃者には気が付いていなかった。キャッスルハードスマッシュの後ろから急に伸ばされる華奢な手。

 病的なまでに白い指の中には、ビルドがブルから奪取した黄色と白のボトルが握られている。

 

「ちょっ……あいつ何やってんのよ!」

 

 キャッスルハードスマッシュの防御の牙城を崩さんと戦っていた鈴が、思わず素っ頓狂な声を上げた。

 IS操縦者の前には、銀髪をなびかせ、じっとフルボトルを見る眼帯の少女がいた。紅い瞳は、憎々し気にそれを見つめている。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒさん…?貴女がどうして…」

「こら!それ返しなさい!良い子だから、ねっ?」

 

 だが彼女は戦兎の言葉にも耳を貸さない。そして、制服の胸元から一本の“丸いボトル”を取り出した。

 

「…お前たちは、どうして…私の価値を歪めるんだ…」

 

 ビルドが使っているものとは違う、それ。

 

「スマッシュボトル!?なんで!ッ、まさか……」

 

 戦兎の脳裏に部室内の様子がよぎる。机の上に置いたままにしたスマッシュボトル。余りにも迂闊な可能性に、彼女ははたと思い至る。

 

「私は……“できそこない”なんかじゃない……。誰にも……、そんな事言わせない……ッ‼」

 

 無意識にそんなことを口走るラウラ・ボーデヴィッヒ。鎖された心の少女は慈母の如き安息を求め続けていた。

 自分の価値が見出せない彼女。力こそが絶対の意義だと思い込む幼子。それだけが彼女を昂らせ、貶めるもの。だからだろう。外界に触れて急激に揺さぶられた反動に耐え切れなくなった。

 …――――彼女は思う。

 再び力を得れば…このような苦しみから解き放たれるかもしれない。また、あの頃の教官に褒めていただけるかもしれない。そうすれば、きっとまた認めてもらえる…――――。

 そう思い、彼女はボトルの中の成分を開放した。

 

「う、あああ、あああああぁぁぁぁぁぁぁッッ‼」

 

 瞬間、周囲が冷気に満たされた。思わず顔を覆うスマッシュやIS専用機持ちたち。

 やがて、霧が晴れる。雨上がりの後の空の様に、冷涼な風が通っていく。だが、その空気は陰鬱だ。

 ラウラ・ボーデヴィッヒが立っていたはずの場所には、クラゲと消防士を掛け合わせたような怪物…――――『アイススマッシュ』がいた。

 

「ラウラ‼何やってんだよ……‼スマッシュに……なりやがって……」

「……ッルージュ!お前等もだ!一旦休戦しろ!戦うんじゃねぇ!」

 

 クローズチャージとグリスが遠くで声を張り上げる。

 

「くっ……!しょうがないなぁもう!えぇい!」

 

【ニンニンコミック!イェーイ!】

【火遁の術!火炎斬り!】

 

「やぁ‼」

 

 四コマ忍法刀に炎を発生させ、横一文字に振るうビルド。だが、アイススマッシュは手を目の前にかざし、水を空中に発生させる。

 

「え、うっそ消されたーっ!?」

 

 放たれた火球が水で包み込まれた。さらにアイススマッシュがその水を地面にたたきつけると、巨大な氷塊が出現する。

 

「くぬっ、よっくも!」

 

 自身の発明品に絶対の自信を持っていたビルドは思わず興奮してしまい、それを割って砕こうとする。…――――だが、しかし。

 

「だぁッ!?かった、硬ぁぁっ!?モース硬度的に10以上…?結晶の分子間力から変化させているの!?」

『ゥゥゥ…!』

「え、あ、ちょ…ッ!?」

 

 気付いたがもう遅い。アイススマッシュは片手で氷塊をを粉砕し、ビルドに礫として弾丸のようにぶつける。

 

「あ痛っ!?いった!?いだだだだ!?ちょっ、タンマ!お願い待って‼」

「あぁ、もうしょうがねぇなオイ!」

 

 劣勢を強いられるビルドを見かねて、そこに割って入る銀色の仮面ライダー。

 

「ラウラ!この馬鹿!落ち着け‼」

 

 一夏はラウラの握っていた片手を掴み、二本のフルボトルを奪い取った。そしてそのまま戦兎に向かって投げつける。

 

「……!一夏!そろそろ限界だ!暴走しかけてるよ!」

「この状態で解除したらヤベーだろ!?」

「あぁもう!こっちはこっちで…!」

 

【クマ!テレビ!ベストマッチ!Are you ready?】

 

「ビルドアップ!」

 

【ハチミツハイビジョン!クマテレビ!イエーイ!】

 

 戦兎はラウラと一夏を引き離すように戦闘に割り込むと、アイススマッシュから放たれるパンチを左手で受け止めた。

 

『AAAAAAAA‼』

「クッ……!パワーもなかなか……、ん?」

 

 突然、肩に設置されているテレビの装甲が輝きだす。そして、そこに銀色のアイドルが天使のウインクと共に映り込んだ。

 

『ハーイ!みーんなのアイドルっ、くーたんだよっ!ぷんっぷんっ!』

「「いや、何でこのタイミングゥゥゥッ!?」」

 

 液晶画面で営業アイドルスマイルを浮かべているのは誰あろう件のクロエ、もといネットアイドル『くーたん』。

 この状況にずっこけざるを得ない一夏。戦兎はパンチを受け止めてる最中なので何とか踏みとどまっていた。だがツッコミだけでも入れているのは、中々に芸人根性が旺盛である。

 

『いや知らないですよ!寝てたら急に変なスタジオに移動してたんですよ!?しかもなんか勝手に原稿が手元に来るし!わけわかんないし!』

「……くーたんだっ‼生きててよかったぁぁぁぁぁ~っっっ‼」

 

 こっちはこっちで人目もはばからずにメロメロになっているシャルル・デュノア。先程までの強キャラ感はどこへやら。高低差があり過ぎて耳が痛い。そしてIS専用機持ちからの視線も痛かった。

 

「お前ェ……」

 

 ドライバーのせいで暴走気味だった一夏でさえ脱力してしまう。一気にシリアスが台無しである。

 

「どーやらクロエの意識のみがこのテレビ内のスタジオに送られてきたみたいだね…」

『え~っと……ピンチなそこのてぇん↑さい↓科学者(笑)。“IQ600本郷猛を目指せ、クイズビルドネア”のコーナ~』

「いやなんで急に!?あと今(笑)って入れたね!?」

 

 ツッコミを無視してクロエは続ける。

 

『戦兎サンにクイズで~す……氷に不純物が混じるとどうなるでしょうか~…』

「え?そりゃ、氷の強度が弱く……あぁ、成程!ハイヤッ!」

 

 クロエからの問題に、即座に閃く戦兎。彼女はクマサイドのアームでアイススマッシュをひっぱたくと、彼女はラウラと距離を置く。

 距離を取られたスマッシュは、先程と同じように氷弾で攻撃しようとする。だが、それは悪手でしかない。

 

「ところがどっこい!」

 

 クマの手から“琥珀色の粘度の高い物質”を生み出し、怪人が生成した水に投げ入れるビルド。スマッシュは何も知らずに水を氷結させるも、その氷の色はハチミツ色。

 

「蜂蜜氷、一丁お待ち!美味しいよ~。でゃァァァァ‼」

『GAAAAAAAA!?』

 

 ビルドは脆くなった氷をクマの手のパンチで砕く。その剛腕から繰り出される一撃がアイススマッシュにダメージを与えた。それだけでは終わらない。彼女はボルテックレバーを回転させ、ラウラを救う法則を模索する。

 

「…――――勝利の法則は、決まった!」

 

【Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!】

 

 電子音が再生されると、ビルドの胸のクマ出没注意のマークが発光、光のゲートとなり通り過ぎたビルドの姿を校舎よりも大きくする。

 

「ちょ…コレ大丈夫か!?騒ぎにならないか!?」

「巨大化しちゃったよ……」

 

 箒や一夏のツッコミもそこそこに、戦兎は迷い子を鎖された氷の中から救い出す。

 

『ハイヤー‼』

 

――――ざっばぁぁん‼

 

 鮭を捕るクマのようにクローで一掻き。すると、彼女の心の氷が砕かれる。後は、彼女が空に向かって手を伸ばすのみ…――――。

 アイススマッシュは緑炎を上げて爆散したのだった。

 

「いよっし!戻った!」

「ボーデヴィッヒさんのことはわたくしたちに任せてください、一夏さん!」

「ったく、世話焼けるわねこの子!じゃ運ぶわよ…」

 

 戦闘の必要が無くなった生徒たちが、ラウラの周りに集まっていた。その顔にはありありと心配の表情が読み取れた。なんだかんだで性格の良い少女たちである。

 

「(でも対戦相手に作戦丸見えじゃないかこのフォーム……)んじゃ、ラウラちゃんが何故こんなことをしたのかは後で聞くとして、まだ問題は山積みだね……?」

 

 彼女が振り返ると、グリスとキャッスルハードスマッシュがビルドとクローズチャージと向かい合っていた。

 

「……んじゃカシラ。死合、再開ってことでいいっすね?ハァ!」

 

 その言葉と共に殴りかかって来るキャッスルハードスマッシュ。

 

「うぉっと!?」

「戦兎さん!」

 

 紙一重で避ける戦兎のフォローをするため、一夏が駆け寄ろうとする。だが、そうは問屋が卸さない。

 

「よそ見してて良いのかゴラ!」

「うぐぉッ…!?にゃろう…!」

 

 グリスと殴り合うクローズチャージ。だが、一夏はシャルルにモノ申さずにはいられない。

 

「…いや、つーかてめぇもさっきまでくーたんにメロメロだったじゃねーか!どの口が言ってんだ!」

「……(図星)うるせー頭にエビフライついてんぞ」

「あ?黙れフランス産コロッケ」

「 ク ロ ケ ッ ト っ て 言 う ん だ よ エ ビ 」

「 ん だ と イ モ 」

「お前等戦闘中でしょうが!何してんだ、っとに!交代っ!」

 

 見ていられなくなったのだろうか。クローズチャージを押しのけ、ビルドがグリスの前に立つ。

 

「お、今度はお前か」

「そーだ、オレはビルド!創る、形成するって意味の…【ばきゅん】ぉおおおおぉぉぉ!?ちょ、名乗ってる最中に攻撃しないでよ‼」

「うるせぇ、なめてんじゃねーぞ……っと?」

 

 ふざけた態度から一転、ビルドは身体の各部位にあるテレビからクマの手が飛び出しグリスを攻める。

 

「……ッ、奇想天外な攻撃しやがって…」

「こんのっ…、…!?」

 

 ジリ貧前に少しでも体力を奪っておこうとしたビルドの脚が、どういう訳か突然動かなくなった。

 

「ちょっとラウラ!?ホント何してんのよ‼」

「銀髪……お前……」

 

 鈴音の声で足元を見てみれば、さっきまで意識を失っていたラウラが必死の形相で足にしがみついていた。

 IS専用機持ちの腕力での静止を振り切って来たのだろう、息も絶え絶えになっていた。鈴は殴られたらしい、頬が赤くなっていた。だが、それでも銀髪の少女のことを思うのは、ひとえに心配してのことだった。

 

「ふざけるな、仮面ライダー……!また…、お前たちもISと同じように、私の場所を奪っていくのか……!」

「あぁもう……離しなさいよ!っもう!」

「またお前か、銀髪…」

 

 グリスは呆れ、頭を振る。彼女の口からは恨み言が漏れている。戦兎の脚は彼女の強靭な筋力で押さえつけられていた。ビルドのスーツ越しでも動かしづらいとは、凄まじいの一言に尽きる。

 

「いかせない!絶対に……!私は……私は!今度こそ認めてもらうんだぁぁぁぁぁ!」

 

 彼女のその思いに応えるように、フルボトルが反応する。またもビルドの胸のテレビが映った。

 

「今度は何!?今結構ピンチなんだけど!?」

『え……何?まだ出番あるの?』

 

 混乱状態で言う戦兎と、やれやれと原稿用紙を持つクロエ。

 

『えーっと?続いては、注目の人の素顔に迫る、仮面の向こう側のコーナーです?……って、え……?』

 

 その原稿用紙を目で追って話すクロエの視線が、突然淀む。あまりの衝撃に口をつぐもうとするも、どうにもフルボトルの力が働いているのか、この役割を降りることはできない。

 

『ドイツ軍黒ウサギ隊隊長のラウラ・ボーデヴィッヒ……彼女の正体は試験管ベビーである……』

 

 テレビ画面がラウラの記憶とシンクロし、彼女の過去を映す。そこに映っていたのは、羊水に漬かっている銀髪の少女たち……。

 

「「「………――――え?」」」

 

 その言葉と映像に、周囲にいた全ての人物が固まった。そんな非人道的な研究が行われていたと言う事実が、信じられない様子だった。

 

『彼女の元々の識別名は遺伝子強化試験体C-0037。彼女はただ、戦いのために造られ、生まれ、育てられ、鍛えられた……。その遺伝子強化体の中でも完全な成績を維持していた。しかし、その兵器人形としての役割もISの台頭によって終わりを告げた。直ちにIS適合率向上の為、肉眼へのナノマシン移植手術が行われた……』

 

 息を顰め、仮面ライダーやIS学園の生徒は聞き入ってしまう。

 

『結果は失敗だった……』

 

 足元のラウラは忌々し気に顔を歪める。過去の汚点が思い出されたのだろうか……、今にも泣き出しそうな表情になっていた。

 

『ある時血の様に赤いパワードスーツの人物がラウラに向かってこう言った……“できそこない”と……』

 

――――その人物は……『ブラッドスターク』

 

(またあいつか……!)

 

 一夏は心の中で舌打ちをする。人の秘密を抉り晒し、せせら笑う赤い蛇……。その醜い性分が許せなかった。

 

『その人物が言った通り、ラウラ・ボーデヴィッヒは周囲から“できそこない”の烙印を押されていた……そんな折だった、彼女は織斑千冬に出会った。織斑千冬の手によってIS専門部隊最強に返り咲いた彼女は、教官に尋ねた』

 

 そこでIS学園生徒たちは、ラウラと織斑千冬との関係を知る……。

 

『【どうしてそんなに強いのですか?】【どうしたらそんなに強くなれるのですか?】と』

 

 そして、クロエは続ける。どうしてラウラがこんなバカげた行動をしたのか、その理由を。

 

『【私には、帰りを待っていてくれる(一夏)がいる。コーヒーを淹れてくれている幼馴染(惣万)がいる。“おかえりと言ってくれる”…――――守りたいと思う人間がいる】』

 

 その言葉に一夏はハッとなり顔を上げた。

 

『いつも冷徹な表情しか見せない彼女の教官は優しく笑っていた。…――――だが、彼女はそれが我慢ならなかった。彼女が憧れる教官の強さを変えてしまう……そんな存在がいることが許せなかった』

 

 ラウラの理論はねじ曲がってはいた。だが、頼るものをそれだけしか知らない幼子である彼女にそれを改めろと言うのは酷だと、全員は思った……。

 

『さらに、ファウストの出現によって世界に新たなテクノロジー、ライダーシステムが知らしめられた。それは、ISに勝るとも劣らない力を秘めたるもの……』

 

 仮面ライダーたちは自分の力を思う……。その力の在り方を改めて自らの胸に問う。

 

『彼女にとって強さこそが自らの証明だった。自分として、人間として認められるにはそれしかない……。そして、その居場所を奪おうとする仮面ライダーが許せない……。そんな思いから、ラウラ・ボーデヴィッヒはビルドの持っていた未浄化のスマッシュボトルを使い、スマッシュになった。すべては……力を手に入れるために……』

 

 ラウラの過去が、映像と共に皆に伝わった。誰もが何も言えずに口を閉ざす。閉ざさざるを得ない。

 

『……あれ?急に……意識が……ゴメン戦兎。以上、仮面の向こう側、のコーナーでした……』

 

 テレビの映像が消え周囲に静寂が訪れた。誰も、何も言わない。だが、それを断ち切るように、つかつかと銀髪の少女に近づく金色のソルジャー……グリスの変身者、シャルル・デュノア。

 

「お前……ネビュラガスを浴びたよな……」

 

 ビルドの脚につかまったままの、空虚な目をした少女を乱暴に持ち上げる。慌てて止めようとする戦兎と一夏だったが……。

 

 

 

「何しでかしたか分かってんのかバカ野郎‼」

 

 

 

 グリスは激怒していた。……しかし、それは理不尽なものではなかった。

 

「ネビュラガスはな……浴びれば死んじまうかもしれねぇ危険な代物なんだよ!力を手に入れるのに、命懸けんな‼」

 

 銀髪の少女のことを思いやっているかのように……いいや、実際思って言っているのだろう。その震える拳は自分自身を危険に晒したという行為に怒りを抱かずにはいられない。

 

「…――――ぇ、に…お前に、何が分かる!そもそも、お前たちだって同じだろう!」

「同じじゃねぇ!お前が死んだらてめぇの隊員(仲間)はどうなる!」

「…――――?仲間……だと……」

 

 シャルルが言った言葉で、空虚だったラウラの目に光が灯る。

 

 

 

「……お前、ドイツ軍の隊長なんだろ……!?お前の下にはお前についてくる人間がいるんだろ。お前がそこにいるのは他でもねぇ……お前は認められてんだよ!それを一番知らなきゃなんねぇ……“カシラ”のお前がそんなんでどうすんだァ‼」

 

 

 

 そう捲し立てて襟を掴んでいた手を放し、小柄な彼女を放り投げるように下ろすグリス。戦兎や一夏にはその在り方がどこか、…――――自分たちに似たようなものに見えていた。

 

「戦兎さん……」

 

 二人は頷き合うと変身を解除し、奪ったボトルをグリスに差し出す。

 

「……、あん?」

「これ、返すよ」

 

 グリスの手に乗せ、握らせる戦兎。

 

「……、っち。そんなので俺たちが引くと思ってんのか?」

「そうだそうだ!勝負しろビルド!」

「あ゛ぁ~、消化不良でイライラするぜ……お前ら、行くぞ」

「ってえぇ!?カシラ文脈おかしくねぇ!?」

「え……何ですかその自分ルール……」

「ったりめーだろ、折角の祭りが白けちまった。それに、くーたんじゃなかったと分かっただけで目標は達成だ……オラ、さっさとしやがれ」

「お、覚えてろよ~。次は僕たちが勝つぞ~」

 

 踵を返す四人はワイワイ騒ぎながら来た道をゆっくりと歩き始める。だが、変身を解除したシャルルだけは違った。歩みを少しばかり止めると、振り向きもせずにこう言った。

 

「オイ、ラウラとか言ったな?俺から言うべきことはなんもねぇ……。けどまぁ、気持ちは分かる……。誰かを憎まなきゃ……やってられないよなぁ」

 

 

 

 自分の事を『兵器』と言った金色の仮面ライダー。その時、ラウラは初めて誰かから必要とされているように錯覚した。本当にそうなのかはまだ分からない。ただ、銀色の少女の目には、その在り方がどこか英雄然としたものに映り、視線を捉えて離さなかった。

 忌々しい憎しみの対象だった兵器、仮面ライダー。兵器に身をゆだねた者同士なはずなのに、どうしてそうまで違うのか……――――ラウラにはまるで分からなかった。




一夏「えぇっ!?ここで終わりかよ!?俺の活躍は!?クローズチャージの大活躍は!?」
戦兎「そんなのあるわけないでしょ?オレのヒーロー感が薄れるでしょうがぁ」
鈴音「いや、どう考えても後半グリスがヒーロー感あったわよ……」
一夏「はぁ……クローズチャージ、初登場なのに……」
箒「よしよしヾ(・ω・`)後で好きなもの食べさせてあげるから泣くなよ一夏」
一夏「うん……うん……(´・ω・`)」
セシリア「姐さん女房ですわねー…」
簪「…若干子供っぽい一夏にはちょうどいいかも…」

※2020/12/21
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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