IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「仮面ライダービルドでありてぇん↑さい↓科学者の因幡野戦兎は、前回全くの出番なし!仮面ライダー部の生徒たちはISのタッグマッチトーナメントに向けて自主トレを積み重ねるのだった……」
千冬「今年の私の担当クラスは楽でいいな。自主性に満ちていて指導も簡単だ。だがこうもすんなりいってしまうと、逆に不安になってくる…。まだ私にできていない部分があるのではないか、とか思ってしまうよ…」
惣万「良いんじゃねーか?先生って仕事は“嫌われる”ことが根底だろ。良い教師というやつが幻想に過ぎないことだってある。でもそう思えるってのは、今のお前はちゃんと良い先生だよ」
戦兎「ばっさり言うなーマスターってば…、まぁ分からんでもない。教職って正義の味方と同じで報われないことの方が多いし、ね?」
千冬「ふむ、何か湿っぽくなってしまったな。すまない。さてさてどうなる第四十八話!」


第四十八話 『レッドな騎士、ブラッドの涙』

『10』

 

 アリーナのモニター画面に数字が浮かび上がる。

 

『5、4、3、2、1……試合開始!』

 

「ハァ!参るッ‼」

「ほぉォォォ……わたァァァァァァァァッ‼」

 

 そしてカウントダウンの放送直後、箒と鈴音が互いに上空へ飛び去り剣と拳で迎撃し始めた。

 一方のラウラはクローズに向けて大口径リボルバーカノンを発射。続けざまに瞬時加速を用いてクローズの背後に回り込む。

 対峙するのはISとはかけ離れた『ライダーシステム』の一つ……。故にISとの戦闘以上に用意周到な戦術が求められてくる、と考えたラウラの判断は間違っていなかった。

 

「フッ!」

 

 蒼炎を纏わせたビートクローザーが砲弾を真っ二つに両断した。

 

「そう来ると思っていたぞ、織斑一夏!」

 

 だが既にラウラはクローズに十分に接近し、ワイヤーブレードを用いて攻撃の手数を減らそうと企む。黒いエネルギーをまとったワイヤーがビートクローザーに絡まる。

 

「接近戦は貴様等の方が有利だ……ならば!」

「おっと!確かに剣を奪われたらリーチが短くなるな……だがよ!」

 

【ヒッパレー!ヒッパレー!】

 

「何……!?」

 

 クローズはラウラに向けて躊躇いなくビートクローザーを投げつける。エネルギーが充填された剣が避けられなかったラウラのシールドエネルギーを削る。

 

「とっさの機転も驚異的だな……!」

「現役軍人のお褒めに預かり光栄だよッ!」

 

 クローズは全身から蒼炎を噴き上げ『ブレイズアップモード』に移行すると、空中に退避しようとしたラウラに向けて空中を駆けるように上昇、正拳突きを放つ。しかし……。

 

「止まれ!」

 

 ラウラが右手を上げ、クローズの身体を停止させた。

 

「なろっ……!それがAICってやつか…!」

「ふんッ!」

 

 そしてラウラのプラズマを帯びた手刀が抵抗できないクローズに迫る。直撃コースだった。避けられない。

 

「させん!」

「やはり、そう来るか…!」

 

 突然ラウラが地上へ急降下、先程まで彼女がいた所に銀の刃が通過する。

 

「サンキュー……箒」

 

 傍にやって来た改造型の打鉄の少女が、蒼炎を用いて空中に留まるクローズを見ていた。並び立つ紅蓮と紺碧。その姿は正しく相棒と言えるもの。

 

「AICのことはグリスの時に見ていたはずだが」

「うっ、面目ない……」

「……まぁタイミングの取り方も絶妙だった、流石はドイツの代表候補生だ」

 

 着地したラウラを追うため、言葉を交わしながらも一夏と箒も降下する。だが、その挙動は隙だらけだった。それは油断か、はたまたわざとか。

 

「アタシのことを忘れんじゃないわよ!」

「そこだ…!」

 

 地上と上空からカノン砲と龍咆の連続攻撃が二人を襲う。

 

「ッ!」

「……ッそう、来るよな!」

 

――――ドッガァァァァァンッ‼

 

 アリーナに鳴り響く轟音。二人はラウラと鈴の連携攻撃を受け、黒煙に包まれた。だというのに、ラウラたちは警戒しながら黒煙の周りを旋回する。これで終わるはずも無いというように。

 

「……ッ、来るわね!」

「下がれ!」

 

 ラウラが鈴の機体の前方へ出てAICを展開させる。刹那、慣性が歪められた空間に衝突する巨大な物体。眼帯に覆われた目すら見開き、彼女は驚く。

 

「レーゲンの砲弾だと……!」

「ははあ…そゆこと。大方こっちからの攻撃の慣性を相殺して投げ返してきたって訳ね」

 

 鈴音の考察は間違っていない。

 やがて無明の黒煙が晴れ、暗闇に囚われていた二人の姿が露わになった。濛々と放たれる青き光に、ラウラが端正な眉をひそめる。

 

「それが、停止結界の真似事か?」

「やるぅ…♪」

 

 蒼い炎で自分たちを包み、AICモドキの技をとっさに編み出した一夏に鈴は口笛を吹く。どうやら彼女も生粋のバトルジャンキーだったらしい。シャルル・デュノアと同じ様に、闘争心が昂ぶり始めている。

 

「はぁ…あーしんどい!だが、まだ終わらねぇぞ、ボーデヴィッヒ」

「それでこそだ……!やはり…!この戦いで、私は何かを手にできる気がする……!」

「だからって、こっちも負けるつもりはねぇんだよ!ハァ!」

「来ぉいッッッ‼」

 

 そして、またも二人の戦いは継続された。一人は新たな自分を始めるため。もう一人は自分の原点となった思いを貫くために…――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「来てみなさい箒ぃ!」

「負けられない!一夏の隣で支えになる為に……!」

 

 龍咆の不可視の攻撃を研ぎ澄まされた聴覚で躱しながら、箒は鈴音と鍔迫り合いを繰り広げる。

 

「へぇ……でも、アタシなんかに手こずって、それで一夏を助けられると思ってる訳?もしそうなら、ちゃんちゃらおかしいわね」

「何…?」

 

 乱暴に蹴りを入れ、箒から距離を置く鈴音。そして手に持っていた斬馬刀の様な武装を放り投げ、対戦相手の大和撫子に指を突きつける。

 

「守られるだけじゃ、何にもなんないのよ!どんなことがあっても、一夏の傍を離れない!アンタにその覚悟はあんのかって聞いてるの!」

 

 その言葉に片目を失った時一夏に口走った光景が思い返される。だが、それでも……“一夏は私を求めてくれた……”!

 

「…………私は不器用でな、言葉では伝えるのは不得手だ……故に!」

「……そうね……。口先だけってのが嫌いなのはアタシもよ!」

 

 ここで……自らの信念を、箒/鈴(彼女)に見せつける……!

 

「篠ノ之流、改め『荒巾木流』八ノ型…」

「ほぉぉぉォォォ……ッ!赤心少林拳、黒沼流……っ!」

 

 箒は正眼の構えを解き『葵』をだらりと下げた。一方の鈴は複雑な構えをとった後に手刀を振り抜かんとする。

 

「……『花宴』」

「『桜花』‼」

 

 少女二人が互いに全霊の力を以って激突する。一人の男を思う決意を乗せた剣と拳が交錯する。

 

 観客たちは一瞬錯覚する。その場所だけ音が無くなったような……そんな感覚が過ぎ去った。

 無窮とも思えた攻撃が止む。その場には、シールドエネルギーがゼロになった少女が倒れ込んでいた。

 

 

 

 

 

 

「………――――私の、勝ちだ……」

「………――――あーぁ、本当に負けちゃった」

 

――――二人にね……

 

 そう呟き彼女は天を仰ぐ。そして吹っ切れたように笑顔を見せる。

 

「……アンタの勝ちよ、箒」

 

 鈴音は腕組みをして箒を讃えた、が、箒は鈴に問う。

 

「なぁ鈴、何故私と一対一で戦った?ペアと連携が取れていなかった、というわけでは無かった。ラウラと二人がかりで戦われたら私たちに勝ち目はなかったはずだが……」

「さぁ……――――しいて言えば、アタシとラウラの乙女の意地ってヤツね」

 

 のらりくらりとはぐらかされた気がする箒だが、鈴の一言がさらに続く。

 

「ほら。負けたアタシのことを構うより、一夏の傍に行ってやりなさい?」

 

 その声音に……箒は自分と似た思いが乗せられていることに気が付いた。気が付かずにはいられなかった。

 

「鈴、もしかしてお前は………」

 

 だが、途中で出かかった言葉を飲み込んだ。噤まなければならない、と思った。箒には箒の矜持があるように、彼女にも守るべきものが確かにある。

 

「…――――、いや、愚問だった。忘れてくれ」

 

 顔を伏せた鈴音の隣を、箒は無言で通り過ぎる。その時である。ころりと、鈴を転がすような小気味の良い声がひそかに、だが確かに耳に届く。

 

「………………頑張んなさいよ」

 

 互いに別の方向を向き顔も見えないはずなのに、その時の鈴の気持ちが箒には痛い程伝わってきた。

 

「……ッ、あぁ」

 

 だから、箒は思わずにはいられない。私が選ばれたのは幸運と偶然が重なった結果だと。驚くほどの確率で一夏と出会い、那由他ほどのチャンスで得難い友の後押しを貰った。これを奇跡と言わずしてなんと言おうか。

 様々な人間の想いを引き継いで、箒が愚直な青年の傍に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方の一夏とラウラの戦いは佳境に至る。ついに勝負が動こうとしていた。

 

「分かったぜ、そのAICの弱点」

「やはり、か……。凄まじい観察眼だ」

 

 空中戦を繰り広げていた際に一夏は閃き、ラウラに向かって推論を口にした。

 

「意識を集中させなければ使えないんだろ?だったら……!」

 

【Ready go!ドラゴニックフィニッシュ!】

 

 電子音と共に召喚され、シュヴァルツェア・レーゲンに火球を撃ち出す蒼い龍。BT兵器の様に独立支援する炎のクローズドラゴンは、勇猛果敢に吼え盛る。

 

「ふん……だがAICだけがレーゲンの力だとでも思ったか!」

 

 クローズドラゴン・ブレイズの吐いた蒼炎をレールカノンで撃墜するラウラ・ボーデヴィッヒ。変身していた彼はマスクの中で舌を巻くほかない。精密射撃にかけてはトップクラスの実力があろうセシリアと、遜色ない腕前だった。

 

「これで、決着をつける…!」

 

 ライダーキックを放とうとするクローズに向かい、ラウラはプラズマを帯びた手刀を構え急接近する。

 

「うおぉぉぉぉぉぉッ‼」

「織斑……一夏ァァァァァァァァァァッ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっと、いい雰囲気だが……食らえ♡』

 

【時計!フルボトル!スチームアタック!】

 

 だが、戦いは突然第三者の手で瓦解する。赤い蛇がアリーナに出現し、灰色の光弾を地面に撃ち出した。

 

「ッ?……何だよ、これ……ッ!?」

「身体が……動かない?いや、時間の流れが変わったような……ッ!?」

 

 クローズとラウラの足元には時計の文字盤模様が出現し、それに伴い身体の自由が奪われる。事実、周囲を舞い散る砂埃の空中停滞時間が間延びしていた。

 

「一夏…!?」

「またアンタなの、スタークッ!?」

 

 遠方から駆け付けようとする箒や、怒りに満ちた鈴音の声を無視してブラッドスタークはラウラのISに触れた。

 

『ハイハイちょっとごめんよぉ?』

「スターク!何を……っ!」

 

 チラリと身動きの取れないラウラを一瞥すると、嘲るわけでもなく、淡々と言葉を漏らす。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒか。可哀そうにな……』

「何……!」

『お前は俺と同じだ……戦う事でしか生きていけなかった。だが、お前は人を殺したことがあるか?兵器として……本当に生きてたかァ?』

 

 その時のスタークの心境を誰も伺いすることが出来なかった。しかし、なぜか一夏には……――――場違いな感想だったが、スタークが血の涙を流しているようにも見えた。

 

「……?どういう事だ。お前の言うことは、理解できない…、…ッ!?」

『そうだ、理解する必要は…ない』

 

 その時、四人は目を疑った。液体にものを突っ込むように、スタークの手がISの表面にのめり込んだのだ。そして何かを探すようにこねくり回し、ずぽっと一本のボトルを握りながら手を抜いた。

 

『いよっし、摘出完了っと。もう動いていいぞ』

 

 スタークが指を鳴らすと、今まで身体の自由が利かなかった二人の身体は勢いよく地面に転がった。自分の機体に何かをされたラウラは、憎々し気にスタークを見る。

 

「レーゲンから……何をとった!?」

『怒るな怒るな……VTシステムって知ってるか?』

 

 フルボトルとは違う白い容器を二人に見せ、重大発言をかますスターク。その言葉によってラウラの顔は青ざめる。

 

「……ッ!?ヴァルキリー・トレース・システム……ッだと!?」

「それって、…千冬姉の!?」

『そうだぁ……。ま、詳しいことはドイツのお偉いさんに聞いてみたらどうだ?』

 

 ボトルをいじりながら興味なさげに言うと、何処からか半透明な結晶体を取り出した。

 

「ISコアか……?」

『惜しいっ。正確にはロストISコア。ネビュラガスで変質させた俺達オリジナルのテクノロジーだ。丁度良く宇佐美が作ってくれてな。差し詰め……ブリュンヒルデエボルボトルを、こうしてっと!』

 

 言うが早いか、キャップを正面に揃えコアに突き刺すスターク。そして突然ISコアが血の様に赤く染まり出した。

 赤い光はアリーナ内を満たす。

 

「……ッ、眩し……」

「目を塞げ、織斑一夏!」

「くっ……」

「うっ……」

 

 やがて、強烈な光は消えた。だが、視界が元に戻れば、そこに信じられない光景が広がっている。

 

「……む?ここは……?」

 

 そう言って辺りを見回す赤い髪の全裸の女性。その顔は……――――。

 

「え……千冬姉……!?」

「教官……!?」

 

 『ブリュンヒルデ』その人だった。

 

『違うなァ。これは、言うなれば人型のISって言ったところか?で、気分はどうだ、“赤騎士”?』

 

 祝うように、親し気に彼女に近づくブラッドスターク。

 

「『赤騎士』……成程。私はチフユ・オリムラのコピーと言う事か……」

『あー、生み出した俺が言うのも何だがな、服着ろ?』

「む、これは失敬」

 

 無表情ながらも恥じらうように身体の局部を腕などで隠しながら、ISスーツを思わせる格好になると“彼女”は一夏たちに向き直った。

 彼らに突き刺さる明確な敵意が、爆発する。

 

「コピーとは言え……教官と戦うというのか…!」

IS()がすべきことなど決まっている……。主の命令を聞くことだ」

 

 彼女の身体が赤黒く光りだし、頭部や肩部、腕や足を赤い装甲が覆いかぶさる。その姿は、ISの先駆けとなったあの機体……。

 

「白、騎士…?」

「かかって来い、この私が……『赤騎士』が貴様等に引導を渡してやろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、セシリアと簪が控えるピットにも、招かれざる客が訪れていた。

 

「…貴女、なに…!在り得ないコアの反応があるんだけど…!?」

「な……貴女は……わたくし……?」

 

 赤黒い装甲、どす黒いアンダーアーマー、そして金髪の間から見える赤い瞳……。

 

「初めまして……“わたくし”。わたくしは『血の雫(ブラッド・ティアーズ)』と申しますわ……さぁ踊りましょう?わたくしが奏でる狂想曲(カプリチオ)で!」




エボルボトル(仮)に適応するロストISコア作り
宇佐美「ヴェハハハハァ!ヴェーハハハハァ‼ヴェーーハハハハァ‼」
惣万「え、出来た!?出来たのか!?出来た!?」
宇佐美「ダメだァァァァァァァァッ‼」
惣万「だァァァァァァァァッ!?」

三日後……。
宇佐美幻神「遂に完成した……やぁはぁりぃ私は……くわぁみだァァァァァァァァッ‼ッッッはぉぅ!?」

―GAME OVER……―

惣万「えっ!?何で!?バグスターじゃねぇだろ!?」
ブリッツ「安心して~、只のSE~。ほらマボローグ~。過労なんだからおねんねするよ~」
宇佐美「宇佐美幻神だァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼」
シュトルム「うるっさいわボケェェェェェェェッ‼」
宇佐美「(・8・)」


※2020/12/21
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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