IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「マスター、ただいま〜」
惣万「おかえり…カレーライスあっためておいたぞ」
クロエ「…………」
戦兎「……マスター、どうしたの?」
惣万「(フリップで)『クイズだなんの真似しているか当ててみろ‼︎』」
クロエ「(携帯で)『前回は筋肉馬鹿と心火ドルオタが協力して赤騎士を倒したよ‼︎そして血の雫は……まぁ、頑張れ』」
戦兎「筋肉馬鹿?心火ドルオタ?……いや、誰だよッ‼︎あーでも一体誰の真似なんダァ〜」
クロエ&惣万『ヒントは戦兎のCV』



第五十一話 『生命のスクラップ』

 イヤーカフスを虚空へとしまったブラッドスターク。その前には、身体から蒼電を走らせるクローズチャージが立ち塞がっていた。

 

「次は……てめぇだ!」

『おーこわ、助けて欲しいな~なんて思ってみたり?』

「ざけんなっ!」

『じゃあ……「待ってくれ、一夏!私と戦うというのか!?」』

 

 そう言うとブラッドスタークは変身を解除した。

 

「一夏、私はお前と……愛するお前と戦いたくはないんだ!」

 

 涙を流しながら一夏に向かって懇願する美少女。その様子を見たIS学園の生徒たちの胸に溢れるのはスタークに対する驚きか、はたまた呆れか。どちらにせよ声も出ない。

 

「ってぇ……めぇぇぇぇぇぇ‼」

「……ッおっと、逆効果か?そうだったな。この箒馬鹿め」

 

 激昂する一夏。その反応も頷ける。何故なら、彼の前には火傷一つ無い素肌をした、『篠ノ之箒』が立っていたのだから。

 思わず拳を振りかぶろうとする一夏に、彼女は一言もの申す。

 

「この箒の柔肌を傷つけるのか?ん?それとも本物と同じく私の顔を炎で焼き焦がすのか?それも良いな。仇が討てる……まぁそんなことをすれば、お前は宇佐美と同じだ。自分の満足のために力を振るうだけの偽物だ」

「ッ、どの口が…!」

 

 箒に擬態したスタークの冷淡な言葉で突然戦闘衝動が萎えてしまう。冷静になった頭で拳を元に戻すも、彼女に化けたスタークに対する怒りは収まらない。

 

「箒に……化けたところで、変わらねぇよ…‼お前は、悪魔だ…!」

「本当にそうか?なら良い、やってみせろ」

 

 箒に擬態したブラッドスタークは、生身の状態でトランスチームガンを操作する。

 

「いざ、尋常に勝負!」

 

【フルボトル!スチームアタック!】

 

 言うが早いか、赤いレリーフの入ったボトルが装填され、細い指によって引き金が引かれた。直後、クローズチャージに向かって灼熱のエネルギーが激突していく。

 

「……ッ野郎、ふざけやがって……ぶっ飛ばしてやる……‼」

 

 それを避けながらも箒に擬態したスタークを睨む。

 

「私は大真面目だ。その程度で心を乱されるな、一夏。男子なら……その程度できなくて何とする‼」

 

 凛として言い切ると片手にスチームブレードを持ち、クローズチャージに斬りかかって来る。

 

「……ッ!何でお前まで『篠ノ之流』が使えるんだよ……!」

「当たり前だろう?私は昔……お前の傍で、お前のことを見てきたのだから」

「それは箒だ!お前じゃない‼」

「なぁ一夏?どうだ、強いだろう?愛する者の為に剣を振るうというのは!」

「スターク……ッ!どこまで箒のことをコケにすれば……ッ!?ぐうぅ……!?」

 

 突然身体の内部から今まで感じたことも無い激痛が走り、一夏はひざを折りそうになる。スタークの箒は、腰の入っていないパンチを易々と片手で受け止めた。

 

「ふむ、ハザードレベル4.2か……全く恐ろしい成長速度だな」

「ガハァ!?」

 

 そして、スタークはクローズチャージの背に一撃を加えると、彼を地面に跪かせ…――――そして抱擁した。

 

「……ッ何しやがる!?」

「やはり、お前は立派だな。直向きに誰かを思うことができる。だから姉にも愛される、…愛おしい。昔からそうだった……、『私』のことで怒ってくれ、『私』の為に泣いてくれた」

 

 そう優しく、歌うように呟く蛇。そっと耳打ちするように、だが心配もするように甘言を吹きかける。

 

「なぁ一夏。もう十分に頑張っただろう?もう投げ出してしまっても良いのだぞ?代わりの人間など幾らでもいる……、お前でなければいけないなど誰も言っていないだろう?」

 

 彼女の目には、本当の慈しみと悲しみが見て取れた。本当に、果てなき空を駆け続けた少年の苦難の道を思いやっているようだった。

 だが、忘れるなかれ。彼が引き起こした悲しみの数々は許されていいはずがない。。そんなもの、一夏には嘘としか思えない。

 

「……うな……」

「ん?」

「……――――お前みたいなやつが、俺を…、篠ノ之箒を…ッ!知ったような口で言うなァッ‼」

 

 白竜の咆哮と共に襲い来る蒼炎を即座に宙返りして避ける『箒』。

 

「何だと?身体はもう限界のはずだ…」

「ボロボロでも……俺は信じたものの為に戦う……!あいつ等の想いを背負って、お前等を倒す‼これが俺の選んだ道だ…!誰にも…!文句は!言わせねぇ‼」

 

【スクラップブレイク‼】

 

 蒼いエネルギーがクローズチャージの身体中を覆う。最期まで命を燃やすが如く。

 

「ハァァァァ……!」

「ちっ……!」

 

 …――――突然、暴発したように閃光が周囲に走る。つんざくような炸裂音が空中を駆け巡った。

 

「がっ…!ガァァァァァァァァッ!?」

「ぉ?……あぁ、それはそうか。三乗攻撃など身体が持つはずがなかった。やはり、限度だったな」

「あ……っあぁ…ぁ」

 

 無念にも、クローズチャージは膝から崩れ落ちる。身体から虚しく白煙が棚引いていた。

 

「一夏ぁ!?」

「あの馬一夏、無茶したわね……っ!」

「……、まず自分の心配をしたらどうだ?」

 

 それを見て箒や鈴は声を上げるが、弱体化しているものの『赤騎士』は未だ健在である。

 

「……ったく、本当に世話の焼けるなぁ!?ハァッ‼」

 

 その掛け声と共にパンチ一発、『赤騎士』の隙を生む金色のライダー。

 

「っ、また貴様か。グリス…」

「へっ……!おいゴラァ、よそ見してんじゃねぇぞ……スタークッ‼」

 

 空中で宙返り、サバット仕込みのキックを放つ黄金の戦士。だが、スタークは見切っていた。箒の姿を真似た顔の前で、その鋭い蹴りが停止する。

 

「ぁん?」

『ヴェハ…ハハハハハ!』

 

 黒い影が箒の姿の怪人の前に立ち塞がっている。蝙蝠のバイザーが金色に輝くと、猛然と煙る暗黒が解き放たれる。

 黒煙から出現した彼女は、掴んでいたグリスの足を捻るようにして遠方へと投げ捨てた。

 

「…お前ェ、ナイトローグってヤツかぁ?俺を満たしてくれんのかァ?」

 

 グリスは落ち着いて立ち上がる。どうやら捻られた方向へ瞬時に身体を回転させ、脚が破壊されるのを避けていたらしい。敵からしてみれば、瞬時の行動が全て最適解となる、恐ろしい男だった。

 

『フン、戦闘狂め。……“キルプロセス”』

「あん?…がぁッ!?」

 

 ナイトローグが取り出したスイッチが押される。それはスクラッシュドライバーの安全装置。突然シャルルが使用していたベルトから火花が飛び散る。グリスの黄金の身体が霧散し、変身が解除されてしまった。

 

「ドライバーが…!」

 

 足元に落ち、煙を上げる壊れたドライバー。止めどなく流れる黒いオイルを見て、冷徹にナイトローグは告げてきた。

 

『シャルル・デュノア。どうやら知らなかったようだな。お前にドライバーを与えたのは財団Xであっても、ドライバーを造ったのは私だ』

「……何?」

『私は財団Xに潜り込み、彼らにライダーシステムを提示し、奴らの資金を使ってそのドライバーを造った。そして丁度良いサンプルとしてお前を選んだ……』

 

 人差し指でシャルルを指すナイトローグ。

 

『つまり、お前たちは私の手の平の上で転がされていたに過ぎない……。あの三馬鹿も無駄足を踏んだな?お前の力になりたいと決意し、自分たちの意思でお前に従い、その先に待っていたのが怪物の体だけだとは……。何と報われない!』

「…、おいてめぇ?」

 

 大袈裟に、嘆くように両手を広げ天を仰ぐ狂人。その言葉はシャルルの心を激しく燃え盛らせた。

 

「……あいつ等の事を馬鹿にしてみろ、ぶっ潰す!」

『今のお前に何ができる?シャルル・デュノア。お前のお陰でスクラッシュドライバーのデータ収集が完了した。どこへでも去るが良い。そうだな……、あぁ、地獄など良いのではないか?』

 

 トランスチームガンを片手に出現させ、煽るようにゆっくりと近づくナイトローグ。だが、そこに三色の閃光が突撃してきた。

 

「「「カシラから……離れろォ‼」」」

 

 ビームと双剣、そして体当たりがナイトローグに殺到する。それを体で受け止めながら、冷静に突進してきた三羽烏を睥睨した。

 

『ふむ、ハザードレベル3.9と3.7、それに3.6か……だが』

 

 バイザーを光らせ測定が完了したナイトローグ。彼女はそれぞれの攻撃を片手でいなし、トランスチームガンの引き金を三回引いた。

 

【Steam Break…!Bat…!】

 

「わぁ!?」

「ぐぇっ!?」

「わひぃ!」

 

 光弾が命中し、スマッシュから人間の姿に戻ってしまう三羽烏。

 

『私には、遠く及ばない。まぁ、トランスチームシステムではハザードレベルは意味の無いことだが』

「お前ら!」

『では、全て殺処分だ…!』

 

 その時だった。天空から、自由と平等、友愛(トリコロール)の一撃が暗黒を裂く。

 

【スパークリングフィニッシュ!】

 

「「ハァァァァッ‼」」

 

 遠方から接近してきた二つの人影。赤と青、そして白のエネルギーをまとったビルドの蹴りと、精密にして強力無比な世界最強(ブリュンヒルデ)の太刀がファウストの二人に向かって放たれた。

 

「おっと…、任せるぞ宇佐美」

『任せろ、その戦闘データは……既に知っている!』

 

 だが、信じがたいことに、ナイトローグはスチームブレードを用いて二人の攻撃を押しとどめる。技術の向上がすさまじい上に、それを易とも容易く使いこなす身体能力も脅威でしかないことを知らしめた。

 

「「何!?」」

『……行け、スターク。赤騎士を使え』

 

 思わず驚きの声を上げた二人をしり目に、ナイトローグはスタークへ撤退を指示していた。代表候補生たちと交戦していた『赤騎士』が箒スタークの脇に侍り、控える。

 織斑千冬を模した人体部分が、光となって消えた。

 

「……待て、私はISを操縦するには初めてなのだが?」

『ノリで出来る。ぎゅわーんとして、ずッ、といった感じだ』

「分かるか。篠ノ之箒ではないのだぞ私は……」

『早くしなければビルドとブリュンヒルデ本人をけしかけるが……』

「それは、恐ろしいな。ではな、私の愛する一夏よ!Ciao♪」

 

 彼女は軽口を叩いた後、通常のISになった『赤騎士』に飛び乗り、大空へ飛び立った。

 

「ま……待て、テメェッ‼」

 

【タカ!】

【チャージボトル!潰れな~い!チャージクラッシュ!】

 

 それを追うため、背後にソレスタルウイングを生やして空へ飛び立つクローズチャージ。箒は彼のボロボロの様子を見て、制止させようとする。

 

「……待て!深追いをするな、一夏!」

「心配、ッすんな!」

 

 どう考えても無理をしている声音で返答するが、一夏の目には倒すべき敵しか見えていない。

 

「一夏!オイッ…!まさかスクラッシュドライバーの副作用で好戦的に…!」

『さて、流石に世界最強格のお前たちの相手をする気はない。私もここらで去るとしよう。ハードスマッシュなど、生かしても殺してもどーでもいいクズだしな』

 

 時間稼ぎを終えたナイトローグは、セントラルチムニーから煙を噴き出す。嘲るように侮蔑を吐き捨てると、現れた時と同じように、闇に包まれ消え去ってしまった。

 

「あぁ!あいつまた……!」

 

 その場に残されたのは、悔し気に拳を握り締めるビルドや世界最強、そして学園の生徒たちのみ。そして勝利とは言いがたい、不愉快なものが取り残された戦闘の跡が、刻銘に邪悪の到来を示していた…――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お前もしつこいな。そんなだと本物の箒に嫌われるぞ?」

「黙ってろ!」

 

 はるか上空、IS『赤騎士』を追うクローズチャージ。だが彼は、突然身体に異常を来たす。

 

「待て…、ぐぶっ……!?」

 

 肺が苦しくなり、全身に青い閃光が走る。次第に強まる激痛と、相反していくように消えていく自分の意識。やがて、背中のタカのソレスタルウイングが消滅する。

 彼は、キラキラと装甲だった粒子を宙に振り撒きながら、上空数百メートル地点より墜落していった…――――。

 

「あーぁ、言わんこっちゃない。スクラッシュドライバーの副作用だな。では行くぞ『赤騎士』。お前をアジトまで送り届けなければ」

(宜しいので?貴方は誤魔化していますが男性でしょう?ずっと遺伝子を篠ノ之箒に変えたままでは元の身体に戻った時のフィードバックが危惧されますが。幸い私は人間態になることができます。自分で十分ですよ?)

「…………そうか、なら。俺をnascitaの近くまで下ろしてくれ。あぁできれば、時間とかバレないように、十分ぐらいかけてくれ」

(タクシー扱いですか、私を…――――)

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ゴホッゴホッ……。ちくしょう……血が……止まらねぇ……」

 

 木が生い茂る雑木林、そこに口から大量の血を吐く少年が倒れている。白い制服は所々が赤く染まっていた。激しい虚脱感により力が手から抜ける。

 どれだけ時間が経っただろう。日が山の向こうへ動き、辺りは闇で覆いつくされ始めている。

 IS学園に連絡も入れられない。連絡手段がない上に、恐らく身体のあちこちが折れている。恐らく、いや確実に脊椎に損傷もあるだろう。半身不随の状態だった。むしろ、上空から生身で落下し、生きている方が奇跡に近い。

 

 そこにガサゴソと、慌ただしい足音をたてて二人組の男女がやって来た。

 

「……、いた!クロエこっちだ!」

 

 心配そうに顔を覗き込む女顔のカフェのマスターと銀髪の居候。

 

「……ッ!織斑さん…!血が口から……全く、こんな時戦兎は何処に…ッ!」

「まだ学園だ……、っおい?お前のそれ……、光ってるぞ……?」

「え…?」

 

 突然眩い黄金の輝きを放つクロエのバングル。一瞬クロエの目が緑色に変化し、腕が一夏の弱々しく動く胸に触れる。

 すると、瞬く間にその光は、織斑一夏の損傷した身体を癒し始める。

 

「一夏の顔色が…。呼吸も落ち着いた。骨折も治っている…?クロエ、お前のそのバングル……」

「……これって?」

 

 あまりの超常現象に、クロエは言葉もない様子だった。死に体だった一夏の表情が、既に元へと戻っている。一体今、自分が何をしたのか、クロエは全く分からなかった。冷や汗が一滴、白磁の肌に垂れる。

 

「取り敢えず……、一夏をIS学園に送ろう……」

 

 惣万はジャケットが血で汚れるのも構わず、呼吸が穏やかになった一夏を背負い、IS学園へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

千冬side

 

『と言うワケだ、一夏をそっちに送る。二人分の入校証を用意してくれないか?』

「分かった……重ね重ねすまんな……」

『気にすんなよ、いつものことだろ?お、そろそろ一夏が起きそうだ……。じゃあまた後でな』

「あぁ……」

 

 電話が切れた。先程の戦闘では、またもやナイトローグは逃げおおせてしまった。あの霧を用いたワープは厄介極まりないな。

 

「一夏は……何と?」

 

 疲労困憊だろう箒が私に一夏の様子を尋ねてきた。夜も更けてきたというのに、事務仕事を手伝ってくれているのは責任感が強いからか、はたまた当事者意識も強いからか。些か心配になってしまう。

 

「喀血したらしいが……クロエのバングルの力で今は何ともないらしい」

 

 まぁ……にわかには信じがたい事態だが、惣万とクロエが証言しているとなるとホラ話では無さそうだ……。

 

「バングルって……あの手に収まっている?」

「あぁ、篠ノ之も知っているのだったな……。どうにもあのバングルは不思議な力を持っている。そこで一夏の看病ついでに戦兎に調べさせることになった」

 

 おや、噂をすれば、愚弟の登場か……。クロエや惣万に付き添われて歩いてきた。

 

「一夏ッ!」

 

 突然駆け出す箒。喜ばしいことだが、何故だろうか。そのことに一抹の不安と寂しさを感じてしまう私がいる。

 

「箒……悪い、心配かけた」

「あぁあ……マスター。ブラックコーヒーくれませんか。ブラックホールみたいな真っ黒い奴」

「クロエ、そんな不味そうなコーヒー淹れてたまるか。そして千冬お前その顔やめろ、しわが増えるぞ……ぁはん!」

 

 殴っておいた。……誰のせいだと思っているんだ。

 

「ん?」

「?どうしたのです、マスター?」

「いや、あそこにいる金髪の挙動が……」

 

 私も彼らの指さす方向を見てみれば……――――あぁ、成程。挙動不審な人間が一人。耳がぴくっと動き、その後立ち上がりマッハでこっちに来た。

 

「でぃひッ……」

 

 うわぁ……。残念人間の私から見てもこれはないと思える。さっきまでの実力者としての面影が欠片もない。こいつは真面目な状態を維持できんのか?

 

「やっぱりそうだ……、くーたんだッ!」

 

 その後ガッツポーズ。うわぁ、典型的なドルヲタも、ここまで酷くはないだろうに。

 

「え、何?」

「え?」

「え」

「えへ」

 

 クロエは絶妙に顔を顰めている。其れはそうだろう、彼女はネットアイドル。週末に会えるアイドル的なものじゃない。彼女の性格からして、対外的に行動するのは苦手だろうしな。

 それに気付いたのだろうか。シャルル・デュノアはニヤニヤ笑いを引っ込め、真面目な顔をしたかと思えば大きく一つ咳払い。

 

「んフン、シャルル・デュノア、15歳中卒、ネットで初めて貴女と出会った時から心火を燃やしてフォーリンラブでした!あ、握手してクダサイ」

 

 ドルオタ何しているのだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。こっち来い、ちょっと。ちょちょちょちょ」

「え、ナンスか」

 

 惣万が溜まらず注意をする。それでこそお前だ。良かったぞ、この場に常識人がいてくれて。

 

「握手するなら……、整理券買ってくれ。ハイ、五万円」

 

 …――――全然違った。

 

「ボるのかよ……」

 

 一夏、私も同意する。惣万、お前はそこそこ安定した収入を得ているだろうに。

 

「安いっすね。あ、十万払えばくーたんとツーショットとか?」

「出すのかよ……」

「ちょッ、カシラぁ!それボクらの生活費⁉」

 

 そして三羽烏と名乗っていた三人組。こいつらはカシラに振り回されてばかりいるな…――――。可哀そうに。

 

「……はぁ、もういいか?」

 

 流石に茶番を長々続けさせるわけにはいかんな。こいつらは“今回は”学園を守ってくれはしたが、以前は学園を強襲し被害を出した敵なのだから。

 

「ん、あぁ…。織斑千冬…だな」

「そうだ……貴様は、シャルル・デュノア……だったな?」

「あぁ、そうだ」

 

 先程までのお茶らけた態度は鳴りをひそめ、私と向かい合う一人の男。……中々どうして様になっているものだ。私と同格の実力を持つと言うのも頷ける。

 

「貴様は以前、IS学園に襲撃を行い、因幡野戦兎や織斑一夏に危害を加えた……。何か言うことはあるか?」

 

 千冬姉……!と愚弟が言葉を漏らすも、黙ってろと目線で告げる。これは必要なことだ。力を振るった人間は、その責任をいずれかの形で取らねばならない。

 

「……なら一つだけある」

 

 ほう?この男は一体何を望む?

 

「都合がいいとは分かってる、だが、どうしてもアンタの力が必要なんだ。俺はどうなっても構わない、だけどその代わり、あいつ等のことだけは……守ってやってくれねぇか?この通りだ……頼む……ッ!」

 

 そう言って、シャルル・デュノアは膝をつき、斬首を待つ罪人のように土下座をした。私の目の前で、この首一つで勘弁してほしい、とばかりに頭を垂れている。

 

「カシラ……」

「そんな……」

「……」

 

 ……――――全く、こうされると私は何も言えないではないか。仕方がない。

 

「分かった、シャルル・デュノア……お前は――――――――」

 

 そして、私は一つ、沙汰を下した。昼間に轡木さんと学園長を交えて決めた、一つの解決策を金髪の少年に告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

 

「えぇーっと……今日はIS学園に新たに入った子を紹介します……まぁ生徒じゃないんですけどね?」

「シャルル・デュノアだ。今日から用務員とか警備員とか雑用係とかとしてここで世話になる。気軽にシャルルンって呼んでくれ」

「お前かよォ!?」

「「「「「キャァァァァァーーーーーッッッ‼」」」」」

 

 女子の叫びに瞬時に耳栓をする一夏。もはや手慣れたものである。

 

「三人目!三人目の男子‼」

「シャルルーンッ‼私と運命(さだめ)の鎖を解き放ってぇッ‼」

「キバッて、行くぜーーーッ‼」

「ハイハイ質問デース‼タイプな子はどんな感じ?」

(((……あっ、やべっ)))

 

 ごく一部の事情を知っている人間は顔を青くする。特に一夏は命がけの死闘を行った彼の、キャラ崩壊も甚だしいアレを見たいとは思わない。自分が何か、情けなくなってしまうからである。

 

「くーたんです」

 

 はい\(^_^)/ヤッタ。/(^o^)\ナンテコッタイ。

 

「あ、くーたんってネットアイドルの子なんですけど、一年前……詳しくは90日7時間前に初めてネットにアップされた『Be The One』が再生回数二億回を超えて……『うっさい』ぁはん‼あざーす‼」

 

 未だバングルの調査によって学園にとどまっていたクロエがドアの向こうからドロップキック(エンペラームーンブレイク)を繰り出していた。

 

「……シャルルンって~、ドルオタ~?」

「あ~……やっちゃったなオイ。新学期早々ボッチになる奴じゃんこれ」

 

 恐る恐る教室内を見回す一夏。冷めきった視線が待ち受けているだろう、合掌……とか思っていたのだが。

 …――――IS学園の女子たちはハートが違った。

 

「好きなものに夢中なのね……嫌いじゃないわ‼」

「はぁ⁉」

 

 思ってもみなかった反応に、彼は素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「ドルオタのイケメンって純朴そうよね!」

「あたしもアイドル好き!一緒に見に行かない!?コメット姉妹のライブとれたの!」

「純愛してるシャルルンをNTR(*´Д`)ハァハァ」

「うん待って、やっぱりこの学園オカシイ」

 

 頭痛がして来た一夏はこめかみをもみほぐす。箒がとっさに頭痛薬を投げてよこしてきた。助かった……。いやマジで。

 

「ま、そう言うことでよろしくな。あ、一夏だったな。また()ろうぜ」

「待て待て待て、字面オカシイ、つかここでそれ言うな危険だから!」

 

 特に今きゃいきゃい言った腐ってるお姉様方とかに、新鮮なネタを提供することになってしまった。被害が大きくなったのは一夏の方であった。

 

「つーかおい!ココにいるからには勝手なマネすんなよ!」

「お前こそ余計な事して足引っ張んじゃねぇぞ」

「余計な事って何だよ?」

「何だ?このエビフライ頭」

「エビフライのどこが悪いんだよ?」

「いや悪くねぇけどタルタルすんぞこの野郎」

「タルタルするって何だよ……」

「ソースぶっかけんぞってことだよ」

 

 不毛な争いが起ころうとしたところでクロエが割って入ってきた。醜態をさらすファンに我慢ならなくなったのだろうか。だとしたらアイドルの鏡である。

 

「ケンカしないでっ!……お願い」(首こてっ)

「もう二度としません(首こてっ)なっ」

 

→クロエこんな顔(・_・)。何でこんなことしてんだ自分、とクロエや一夏は思ってみたり。

 

「あ、そーだ。僕の寝る場所どこですか?」

IS学園(ここ)に住む気かよ⁉聞いた話じゃ下宿先にバーバーイナバーあんだろ!」

「もう散髪台じゃ寝たくねぇんだよ。実を言うとな俺のくーたん枕が散髪台じゃ寝たく……」

「嘘つくなよ!この枕サンドバックにしてやろうかあぁん?」

「おい何してんだやめろ……アーッ、アーアーッ‼」

 

 ボコボコと枕を殴りつけるワンサマー。それを見て必死な形相で枕を天へ掲げるシャルルン。だが、勢い余って手から枕がすっぽ抜けてしまう。

 

「ぉああああああああ!何してんだエビフライ!」

「…――――む?」

 

 飛んだ枕は銀髪の少女の手の元へと着地。埃一つつくことは無かったのだった。

 

「おぉー、サンキュー銀髪それ寄越せ」

「うむ、分かったぞ」

「…――――んぁ?」

 

 ただし、寄越すのは枕だけではなかった。彼との顔の距離さえどんどん近づき……見れば彼女、つま先立ちで肩に手を掛けている。

 

「フンッ‼」

「あいた‼」

 

 とっさに銀髪の少女、ラウラの頭を押さえつけるシャルルン。

 

「……何するつもりだった、ぉおん?」

 

 それに彼女は胸を張って、堂々とこう宣った。

 

「キスだ!」

「何でだァ!?」

 

 そしてさらに腰に手を当て、宣言するように高らかにこう言い放つ。

 

 

「貴様を私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

 

「お前が嫁なわけあるかぁ!俺の嫁はな……くーたんだけなんだよぉ!こっちも異論は認めねぇぇ‼」

 

 

 即座に負けじと声を張り上げたシャルル。その言葉にショックを受けたように固まるラウラちゃん。思わず身震いしたクロエは、即座に教室から撤収した。その後、正気に戻ったクロウサはほっぺを膨らませシャルルに掴みかかってきた。

 

「何だと……貴様ぁ!私の目の前で浮気宣言とは良い度胸だな!亭主関白は許すが浮気だけは許さんぞ絶対に!」

「そもそもお前の言う事が間違ってんだよ!何だよ嫁って、あぁゴラ!?」

 

 シャルルの言葉に、ラウラは小首をかしげて言う。

 

「…?気に入った者のことを『俺の嫁』と言うのが日本のルールではないのか?」

「お前に間違った日本知識与えたヤツ連れてこい!」

「……。いや、シャルルの知識も偏ってると思うんだが……」

 

 一夏の冷静なツッコミは、騒々しい教室の中に漂って空しく消えた……。まぁそんなこんなで、IS学園にもう一人の男子が雑用係として採用されたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……えぇ!?お前とクロエって姉妹なのか……!?」

「そうだ」

「何でお前ら言わなかったんだよ……」

「それは……」

「それは?」

「「誰も聞かなかったからだ」」

「さいですか……」

 

 こんな一幕もありました。

 

「これから仲良くしてほしい、クロエ姉さん。できれば嫁と仲良くなる方法を知りたいのですが、教えてくれませんかこの通り!」

「仲良くします!だからぜひグリス引き取ってくださいお願いします!」




戦兎「…カレーライス。無口。ベストマッチじゃない………もうひとつ足りないのか?……‼︎喫茶店ッ、名前に『惣』が入るマスター!答えはペルソナ5だ‼︎」
惣万「(大きく手を鳴らして)正解ッ‼︎」

【Lupan……♬】
【スカル!】

クロエ「マスター……カレー冷めてしまったので温め直しましょう」
戦兎「てかマスター……イメージCV的に女子高校生モデルなんじゃ……」
惣万「お、見たい俺の生足?」
クロエ&戦兎「「見たくないッ‼︎」」
惣万「えーそんなー(´・ω・`)。自分で言うのもアレだけど、フツーに細くて綺麗なんだがなー(チラチラッ)」
戦兎「それでは皆様サラダバー」
惣万「無視かい!」

 あらすじ提供元:ウルト兎様ありがとうございます!


※2020/12/21
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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