IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎?「さーて、前回までのビルドは仮面ライダーグリスであるシャルル・デュノア……おーい、原稿取り替えたのだれだ?美空?万丈?」
シャルル?「シャルルって誰だよ…グリスは俺だぞ」
一夏?「もーどーでもいいから、とっととあらすじ紹介しろよ戦兎」
戦兎?「分かったよ…シャルル・デュノアは自分の事を嫁と言って聞かないラウラ・ボーディッヒとデートを『なんでグリスがみーたん以外のやつとデートしてんだゴラァッ‼︎』うっさいよカズミン」
一夏?→万丈「ん?てかこの台本のタイトル『IS A EVOL KAMEN RAIDER?』……違う台本じゃねーかッ‼︎戦兎ちゃんと確認しろよッ‼︎」
戦兎(原作)「うわ、マジだ、うそーん……もういいやとりあえず五十二話どーぞ」



第五十三話 『“災”強たちのデート・ア・ライブ―ときめきレボリューション―』

 ここはレストランカフェ『nascita』。休日は開店していないのだが、予約さえ入れればお客の要望で二組限定のモーニングセットを提供してくれるという、一部の人間にしか知られていない裏システムがある。今日のお客は……。

 

「おっしお前等、食べ終わったか?んじゃ行くぞ……ん、オイ銀髪、食い逃げは良くねぇぞ」

「ムフー、心配するな、嫁よ!お前がトイレに行っていた時に既に払っておいた!」

「何だこのイケメン力は……」

 

 そう言って席を立つ金銀ペアと三色カラス。そこに中性的なレストランカフェのオーナーがやって来た。

 

「あーデート中すいません、お客さん方。ウチチップは必要無いので……コレ、お返しします」

「なんと!日本人は慎ましやかだとは聞いていたが、その通りなのだな!」

 

 ドイツやフランスでのクセで余計に払ったお金を返してくれる、日本人の文化に感動するラウラ。

 

「ありがとうございました……ん?」

 

 ラウラたちが店を出た丁度その時、マスターのポケットから第九のメロディが流れ出した。

 

「おっと……もしもし?何だ千冬か……何?水着を選んで欲しい?何で俺が……はぁ?山田ちゃんがいただろ。はぁ、ゲーセンに出かけちゃった?何?『決定事項だ、異論は認めん』だぁ?いや知らんよ……『レゾナンスに来い』って。え、おいちょっと……おーい……」

 

 ドア越しの店内でそんな会話が交わされるのを耳を傍出てて聞く教官命な黒ウサ。

 

「……むぅ、今の電話は教官からのようだな……確かあのマスターは教官の幼馴染だと言っていた……良し、私たちもレゾナンスに行くぞ!」

「えぇ、デートじゃないの……?それでいいんですかカシラ?」

「いや、何かレゾナンスにくーたんがいそうだから異論はねぇよ?」

「マジで何言ってんだこいつ……」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 さて、一方でレゾナンスに到着した一夏一行なのだが……。

 

「デート……。一体どんなことなんだろう……(ワクワク)」

「一夏とデートか……フフフ(照れ顔)」

 

 一夏や箒はまだ良い。私服に着替えただけなのだから。しかしクロエが問題だった。

 

「(…ところで一夏?アレ、良いのか…?)」

「(仕方ねーだろ、バレると騒ぎになるだろうし。あいつ顔だけは良いし、若干ダサいくらいで丁度良いんだよ)」

「(いや、それにしても瓶底メガネとか三つ編みとか…――――、どうしよう絶妙な出ダサさで突っ込みづらい)」

 

 二人がひそひそ話ているのも知らず、初めてと言って良いお外での遊びに胸を高鳴らせるクロエ。なお、このセーラー服一式は戦兎のチョイスなのだが、一体どこから持ってきたのやら。

 

「よし、んじゃクロエ行くぞ……の前に、そこで尾行してるお前等、出てこい」

「「え?」」

「あー、やっぱり気づくわよね……」

 

 そしてぞろぞろと柱の影から出てくる仮面ライダー部員たち……。

 

「いやぁ、心配でしたので、つい尾行を……」

「……って、いやお前ら待て、何だよその格好⁉」

 

 思わず叫び声を上げてしまった一夏は悪くないと思う。

 

「まずオルコット!目出し帽に黒タイツって何⁉」

「……?ジャパニーズマンガで調べたところこれが一番しっくりきたもので」

「オルコット、お前もか!?脱いどけぇ‼」

 

 ここに日本文化を勘違いしていらっしゃる外国人その三が。しかしファッションセンスは良いようだ。無地の黒タイツは彼女の美的センスに合わなかったようで。全身タイツには背骨がデザインされ、腹部にでかい鷲のバックルがアクセントになっている。

 つーかただの●ョッカー戦闘員である。オエージでも流石にそんなカッコしないわ(映画撮影以外で)。

 

「そんで鈴……、お前、うん。お前が一番マトモだな。でもグラサンに黒服ってエージェント過ぎ。逆に目立つわ、不法滞在宇宙人を取り締まる気か?」

「別に良いじゃない、アタシあの映画好きよ?」

「知らねーよ……、着替えなおせ。んで簪氏は……」

「…おらおらー…、嬢ちゃん、オレとプロテインしなーい…」

 

 短ラン、リーゼント、サングラス。しかしヤンキーには見えない垂れ目の少女がだぶだぶのボンタンを引きずって現れた。

 

「簪に至っては何それ⁉せめてお茶に誘え‼」

「…せっかく恋愛イベント起こして手助けしてやろーと思ったのに…」

「余計なお世話過ぎるわ!つかなに⁉それで箒とクロエが引っかかると思ってんの!?」

「…いや、一夏が引っかかるかなと…」

「標的こっちかよォォォ⁉」

 

 荒ぶる一夏。ご苦労様です。

 

「はぁ……、まぁいいや。『『良いの(か・ですか)!?』』ツッコミ疲れたんだよ、察してくれよ……、シャルルを探すぞ……」

「ついでに臨海学校の水着も買いたかったのよね~。水鉄砲も買おうかしら」

 

 そう言って近くの玩具屋さんの店先にあった銀色の銃を手に取る鈴。

 

「黒ずくめのお前がそれ持つとあの黒服連中に見えるからやめてくれよ……」

「〇レクトロバイオメカニカルニュートラルトランスミッティングゼロシナプスレポジショナーいる?宇宙人の記憶を一発消去……」

「よく覚えてるわね?」

 

 一昔前の不良と化した簪氏がピカッとするやつを取り出したのを見ながら、一夏はため息を吐くのだった。

 

「これじゃ俺……デート相手じゃなくて引率の先生だな……。ん?アレは……千冬姉?私服でどこ行くんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その話題に意図せず上がった不法滞在宇宙人はというと……。

 

「うっは!めちゃくちゃ美人ジャン!らっきー」

「おねーさん、ねぇ暇?お茶しない?」

「あ、ははははは……(早く来てくれぇ……!)」

 

 絶賛ナンパにあっていた。(注、彼は男です)そこに、凛とした麗しい声が響く。

 

「おい貴様ら」

「あぁ?誰だよ……、ブッ、ブリュンヒルデッッッ⁉」

 

 鋭い眼光を光らせ、ナンパ男たちを睨む織斑千冬が。

 

「私の連れに手を出さないでもらおうか」

「「はっはいィ‼大変申し訳ありませんでしたァ‼」」

 

 スタコラサッサと逃げ出す尻の穴が小さい男たち。まぁしょうがないけどネ。

 

「やぁ、助かったよ?でも遅いお付きで?」

「う、すまんな……それにしても、男に誘われるとはな……」

「いやぁ、モテて困るよ?たはは……」

 

 眉間をおさえながら、ずり下がった白いジャケットを整える千冬。頭を掻きながら情けなく笑う惣万。……その二人の様子はとても様になっており、彼らの周囲からの視線を集めていた。

 

「全く、しょうがない奴だ。ならば……せめてもっと男らしい服装をしろ」

 

 今の彼はマルシュハットにチェック地のブラウス、華奢な首にかかる金色の細かな細工のネックレス。だが、何よりもそのファッションは彼の中性的な外見をさらに女性らしく見せていた。白いボトムスが映えるほっそりした長い脚を組み、惣万はため息をつく。

 

「えー、それお前が言えるか?全然女っ気がない女子力(物理)のお前が?」

 

 一挙一動が様になる惣万。男装の麗人のようだと周囲の男女は頬を染め彼を見る……。(いや、男性なんだからねby惣万)

 

「む、……別に良いだろう。専業主夫と結婚すれば。相手ぐらい私が養ってやる」

 

 言葉は冷静だが、行動が伴わない。焦っているのか、当社比10.00%ほど身振り手振りが激しくなっている千冬。自己弁護のように思えて仕方がない、と惣万は思う。

 しかしまぁ、幼馴染がこうして行動を共にしてくれるだけでうれしいものだ。お互いに素の自分でいられる唯一の時間だった。

 

「ところで、お前の買い物につき合うんだ。ついでに俺も欲しいものあってな、時間少しいいか?」

「…問題無い。それで、何を買うんだ?」

「あぁ、頼んで仕入れてもらったコーヒー豆と、…あとこれを機会に色々とな。試しに淹れたヤツ今度御馳走してやる。3割引きでいいぜ?」

「試しというのに金とるのか。まぁ、お前らしいが…」

 

 ふざけた身振りで軽口を叩きながら、天真爛漫な笑顔で歩く惣万。呆れた顔をしながらも、柔らかい表情で彼を諫めつつ会話を楽しむ千冬。

 そこにいたのは世界最強ではなく、人間『織斑千冬』のありのままの姿だった。

 

「…――――よしついた、ここだ」

「ほー、…趣のある店だな」

 

 何とか古惚けた店の外観を言い換えた千冬に、惣万は思わず苦笑い。珈琲豆焙煎工房と看板のあるその店の扉を手にかける。

 

「いやいや、店主もボロいって自覚あるみたいだし…おじゃましまーすっと」

「あ、おい。…お邪魔します」

 

 鼻歌まじりに入店する惣万に、気後れしながらも扉をくぐる千冬。瓶の中に収められたコーヒー豆がずらりと並び、扉の傍にはケトルやコーヒーミルが厳かに揃っていた。

 

「ここの品ぞろえは馬鹿にできないんだ。カフェ・●ル・ダムールのマスターも、光写●館の店主も、アーネ●エルベのナマモノどもも時たま見かけるんだよな…」

「あぁ、アー●ンエルベってアレだろう、よくわからない猫みたいなのがいる店…。あれ大丈夫なのか?色々」

「ん、一体何が(鉄の意志)?…そういえばお前もコーヒー淹れてるんだったよな。ちゃんとした道具使ってる?」

「いや、家にあったヤカンとマグカップを使ってやり繰りしてるだけだが」

「…――――よし、丁度良い。俺が選んでやる。プレゼントだ、ありがたく思えよ~」

「え、ちょっ…おい?」

 

 聞くや否や彼は店の片隅を物色し始める。イブリックやパーコレーターがぶつかり、乾いた音を響かせた。

 

「確かお前、ミルで挽いた時ドリッパーからコーヒーが全然落ちてこねぇとか言ってなかった?」

「あ、あぁ…それがどうした?」

「大体そういう場合って挽き目が細かすぎる場合が多いんだよ。お前、結構馬鹿力だし」

「む…」

 

 自覚があるのか目を逸らす千冬。やや極まりが悪いようだ。

 前々からコーヒーを楽しめないのを気にしてたのを思い出したのだろう。惣万は慌ててフォローを入れる。

 

「あ、ま…まあ荒く挽き過ぎてもコーヒーの攪拌ができねぇし、まぁ何事も丁度良いところがなきゃなんねーってこったよ、うん!」

「悪かったな、強と弱くらいしか力の切り替えができなくて」

「いや、一昔前の扇風機じゃねぇんだから…」

 

 どこか拗ねた雰囲気の千冬だったが、口元はどこか柔らかい。ISから離れたこんな日常がどこか懐かしく、安心できると思っているような、そんな態度で惣万を見ている。

 

「全く…――――お、ジャコウネココーヒー(カペ・アラミド)。それにジャクーコーヒーにインドゾウコーヒー(ブラックアイボリー)に、動物系いっぱいあるな…。あ、カップ・オブ・エクセレンスの一位のヤツ!それに…、へぇーブルボン・ポワントゥ入れたんだ…!」

 

 先程のアワアワした雰囲気はどこへやら。惣万は瓶の前で目をキラッキラさせて、財布の中身と相談している。彼にしてみれば全て購入したいのだろうが、千冬にプレゼントを約束した手前、泣く泣く購入を諦めざるを得ないだろう。それでも欲しいものを目の前にして顔を輝かせているのは、本当に純粋で見ていてとても面白い。

 

「…こう言うところは子供みたいだよな、惣万」

「サイフォンも欲しいし…――――ん?何か言った?」

「いや、…――――可愛い気があると思ってな」

「…ん。ふふ、何せ美形だからな、俺?」

 

 若干頬を染めながらもドヤ顔となる惣万。実は彼、千冬から面と向かって褒められることが滅多に無かったりする。例え言葉にからかいが混じっていたとしても、それはそれで嬉しいのだ。

 

「…戦兎がああなったのも幾らかお前の影響があると思うぞ、私」

「…――――なんか、理由は分かんねーけど心外だな…」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 珈琲道具専門店である『モノポリーノヴァ』から出てきた千冬の腕には、一つの箱が抱えられていた。

 

「本当に良かったのか、こんな結構なものを貰って…」

「なーに『フレンチプレス』は初心者でも使いやすいし、なによりそれはデュノア社の下請けだったメーカーが作った高性能かつお手頃価格なヤツだからな」

「ふむ、…私も貰いっぱなしというのは性に合わんな。奢ってやろう、そうだな…――――まずはその服か」

「え、ちょ…無理しなくていいんだぞ?いや、ホントにさ?」

 

 

 

 その結果がこれである。

 

「…えーっとね」

 

 一着目。黄色いスーツに緑のワイシャツ、赤い蝶ネクタイ……ぶっちゃけゲッツ!にしか思えない。

 

「…………おいおいおいおいー?(全力で首ブンブン)」

「…むぅ?」

 

 二着目。千冬はえんじ色のチャイナ服に漢族の帽子、黄色いスカーフを持ってきた。

 

「……(酸欠になったように口パクパク)」

「ふむ…、何故…?」

 

 三着目。マタドール風なベストの下に白いTシャツ。

 

「……なぁ千冬、これホントにマジで選んでる?」

「……」

 

 中心にでかでかと【小五とロリで悟り】と書かれた、ヒゲが見たら喜んで買いそうなTシャツを持って来てくれやがった世界最強をジト目で見る惣万。至って真剣に選んでいた千冬はさっと目線を逸らす。

 

「何故だ…どうしてか分からないが、気になった服を手に取ったら『こう』なってしまうんだ…。どう考えてもダサいのに…」

「え、あ…そうなの?なら自覚あるだけ髭よりマシじゃねぇかな…。つかお前今までどうやって服買ってたんだ?」

「い、一夏に…」

「マジかよ」

 

 惣万は知りたくもない真実をまた一つ知ってしまったのだった。5963です一夏。

 

 

 

 その様子を柱の影から見る実弟と、その教え子たち……。

 

「何であんなもんが売ってんだよ……、つかあっても選ぶなよ千冬姉ェ……」

「ハイセンスナンセンスレゾナンス……」

「セシリア、どうしたのだ?」

「ほっときなさい、てかアタシらの目的違ってきてるわね……」

「織斑先生と会話してる人、秘密基地の惣万さん……?」

「マスターは織斑千冬と幼馴染だと言っていましたよ」

 

 各々が勝手なことを言いながら、その様子から目をそらさない。まるっきりデートをしているのを……行き遅れな彼女に対しての老婆心から『頑張れ!』と応援する教え子たちなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この後お前の水着選びだが…――――、一人で選びたくないのが良く分かった」

「察してもらえると、助かる…」

 

 惣万は変なナマモノが働くレストランでしかめっ面してコーヒーを飲む。千冬も自覚があるのか、何処か申し訳なさそうな表情である。生ハムとルッコラのサラダだけでお腹一杯という顔だ。

 

「…――――心配になったんだが、去年変なの選んでないよな?」

「ん。あぁ、それは問題無い。学校指定の教職員用水着で…」

「問題大あり、大いにアウト」

「な、何故だ…!山田君も似たようなことを言っていたが…」

「お前変なところで常識ないよな…。俺、ちょっとお前が心配だよ?出会った頃のキレたナイフみてーなヤツが嘘みたいだわ」

「…――――黒歴史を穿り返すのはやめてくれ。あれはちょっと、…今思い出すと結構クるな、うむ…」

 

 話題を変えるようにコーヒーを啜る。そのフルーツのようなフレーバーが鼻腔を通り抜けるが、千冬にはそれが少しこそばゆく感じた。

 

「っつってもなぁ…俺水着とか詳しくねぇし?知っててもスリングショットとかそういうのしか?」

「…――――いや、何故それを選ぶ?ふざけてるのか?」

「あ、バレた?」

「…――――フンッ!」

 

 紫電一閃。綴込表紙が虚空を裂いた。

 

「うぁっとォ⁉いやゴメン!マジでゴメンって!でも俺あんな恥かいたんだし⁉こんぐらいの細やかな犯行は許されるよね⁉」

「…確信犯だから駄目だ」

「自覚無けりゃ犯罪やっていいみてーなこと言うなよ!」

「えぇい、じっとしてろ他のお客様に迷惑だろう」

「千冬が学級名簿を振るわなけりゃじっとしてる!」

 

 猫耳が付いた小人みたいな店員たちが止めに入るまで、そのキャットファイトは決着がつかないまま続いたのだった。

 

 

 

 

「……なんか見慣れた光景だ、この街に戻ってきたと実感するなぁ……」

「あ、やっぱり惣万さん、昔からあんな感じだったのね」

「分かるか鈴。本当にあの人たち変わってない…」

 

 その様子をしみじみと眺める箒。天ぷら付きざるそばをつるつる啜っているのは中々様になっている。というか私服の和服のせいで芸妓みたい。

 因みにこの店、頼まれたものは何でも出してくれるので、無茶な注文もそれなりにあったりする。鈴はメニューには存在しない外道麻婆豆腐を注文し、美味しそうにパクついていた。舌スゲェな。

 

「あのー…どう見てもアレ超常現象なのですが?どうして世界最強の攻撃を紙一重でふざけながら躱せるんですの?」

「「「そりゃ……なぁ?(ねぇ?)」」」

 

 一夏、箒、鈴は惣万と千冬の思い出を思い返してみる…。彼ら三人は『うん、ほとんどあんな調子だったよなぁ…』…と遠い目をしていた。

 

「「「惣万(にぃ・さん)だから、としか」」」

「何でですの」

「最早宇宙人……」

 

 頭を抱える常識人二人。いや、黒タイツとツッパリーゼントだったのは忘れてくれ。

 

「あ、織斑さん。マスターが移動するみたいですよ」

「お、あんがとなクロエ。うどんは…食い終わるな。よしお前ら、追跡再開だ」

「すいませーん。ここにお金置いときますわよー」

「…、っ⁉…い、いい一夏⁉恐竜が、今私に声の似た恐竜が…!」

「?何言ってんだ箒?…白無垢着た人とタコ頭にのせた娘さんしかいねーじゃねーか」

「…あれ?」

「それじゃー…おっと、すいませんね神父さん。ってあ゛ーもうセシリア、砂糖とか無料でもらえるものポケットに詰め込むな貧乏くさい!ほら立て行くぞ!」

「「「ご来店ありがとうございましたニャー」」」

 

 

 

 

 

 そして……千冬が惣万と一緒に来たかった店にやって来た。右向けばビキニ、左向けばパレオ……。

 

「ここに俺が入っても、なぁ……そして一番悲しいところは……」

「お客様、何かお探しでしょうか!?」

「あ、……いえ、連れと一緒に来ただけで……」

「いえいえ、ですがお客様も何か選ばれては如何です?スタイルが宜しいですから、きっと似合う水着があると思いますよ!」

「は、ハハハ……そうですよねー似合うでしょうねー…(…男じゃなければ、な!)」

 

 下手な女性よりも美人な為、店員の目に留まりこうなってしまうのだった。

 

「とりあえず今は連れの水着を見てますんで。お、これなんか中々。こっちもいいじゃん……あっ、シンプル……、?」

 

 ふと、気配を感じて顔を上げたのと同時だった。丁度彼に向かって声がかかる。

 

「惣万、これとコレなんてどうだ?」

「…――――、おいおいおいおいー…ちょ、店員さんすいませんまた後でー!」

 

 惣万は千冬をぐいぐい。人目の付かない店の隅っこに追いやった。

 

「……ん?何だ惣万。一応手に取って酷くないヤツ持ってきたんだが」

「何でコレ選ぶ、てかどこにあった⁈」

「いやどこってここに決まってるだろうが」

「無いよ‼ていうか虫じゃん!」

「虫!?どこが虫?」

「全部だよ気持ち悪いなぁ!」

「気持ち悪い?何が気持ち悪い」

「おまえのこれだよぉ!」

 

 千冬の手には、チャドクガのような…何というかまだらに白い毛が生えて、ヨナグニサンの羽根みたいな模様が入った水着があった。オレンジと黒と白の配色が絶妙に気持ち悪い。トビイロトラガの幼虫を真っ先に思い浮かべた惣万。心の中で、何でこんなもん店先に出してるんだよ、とツッコミを入れざるを得なかった。

 

「むぅ…――――ではこの赤とビキニの上と緑のハイレグを合わせて着れば…」

「止めろ止めろ止めろー目がちらちらするー…」

「ああ、お前赤と緑嫌いだったな。…――――ところでなんだその言い方は」

「…なぁーんで酷いアレンジ加えようとするの⁉大人しくアクセント添えるだけじゃ気が済まないわけ⁉」

「今回の組み合わせは自信がある!」

「よーしわかったなら着てみろぉ!」

 

 数分後。試着室から顔だけ出してシャイニングする千冬さんの姿があった。顔は本当に青い。

 

「…すまん」

「だろ!?」

 

 どうしてこんなのを良いと考えていたのか、自分の目利きの悪さをまざまざと思い知らされた顔をしている。今にも絶望して、ひび割れて砕け散りそうだ。そこまで思いつめなくても…。

 

「何で、こうなるんだ…」

「お前着てからじゃないと自分がどーなってるのか分からないのね…(なまじ、普通のセンスはあるばっかりに不憫に見えてきた…こりゃー一夏の朴念仁よりキッツいかも…)」

 

 そんな千冬に、渡りに船。沈んでいた彼女の前に差し出される手。惣万の腕にはハンガーが三つあった。

 

「…――――ほら、お前に似合うのいくつか見繕ってきた」

「…――――、すまない、恩に着る!」

「そこまで言う?」

 

 そこまで言う。

 

「一つ目はハイネック、ハイウェスト、ロングスカートのヤツ。色はいろいろ考えて青めの花柄にしてみた」

「ふむ…成程」

「で、二つ目はビスチェっぽい白い水着。千冬なんて名前だ、雪みたいな白も似合うと思うんだよなー、俺」

「…試しに着てみるか。で、次は?」

「三つ目、これが俺一番好きかな。黒と白のワンショルダービキニ。編み込みの紐とかで品が良い感じに見えるし」

「分かった。……どうもありがとうな」

 

 千冬はさっとそれらをかすめ取ると、試着室の中へ顔を戻した。それも一瞬、外に放り投げられるチャドクガのような水着。…――――その間の惣万は、男としてこれにドギマギすればいいのか、主夫目線として着散らかしたものを片付ければいいのか、悩まずにはいられなかった。まぁ、後者だったんだが。

 

 

 

「…――――決めた、全部買おう」

 

 すぱーんと試着室のカーテンが開く。そこには上機嫌そうな顔でワンショルダービキニを着こなす美人さんが立っていた。腰に半透明な花柄パレオを巻いて、その場でくるりと一回転。

 惣万は滅多に見ることができない千冬のはっちゃけぶりに、幼馴染として喜ばしくなる。だが、それはそれとして、どこか心を噛み締めるようなそんな思いを心の奥底へ追いやると、ふざけた調子で口を開いた。

 

「あ、ご機嫌なところ良い?ちょっと写真撮って良い?」

「うむ…――――うむ?」

 

 パシャリ。

 

「…どーもー。あれ、意外に映り良いな…(え、ちょっとマジかよ、滅茶苦茶可愛く撮れちゃった…)」

 

 ぼそぼそ小声で言った内容が千冬に聞こえたのかは定かではない。しかし、惣万の手の中の携帯に“微笑を浮かべて喜んでいる水着の女性”が映っていたのは確かだった。

 

「オイ待て、消せ。その写真消せ…!」

「え、やだ勿体ない!…んんっ、じゃない。こんな千冬初めて見たし、レアものだし…あ、SNSには上げないからそれだけは安心してくれ」

 

 冷静そうなすまし顔で言う惣万。だが、お願いですこの通り…そんな幻聴が千冬の耳に聞こえてくるようだった。ほんのちょっと、年相応な彼の可愛げが出ていた。

 

「…――――はぁ。まーいいだろう。本当はハッ倒したいところだが、だが今回の所は…――――ツケとく」

「え、何ツケって。怖いんだけど。怖いんですけど千冬さん」

「そうか?私としてはお前がその写真使って何か強請ってきそうで怖いんだが」

「流石にそんなことしねぇよ!?千冬には言うべきことはいずれちゃんと言うから!…、ん?変なこと言っ…」

 

 ぴたりと動きをこわばらせる二人。その場の時間が、止まった。

 

「…」

「いたっ、おま…いたい!パンチ強めだな!」

「…」

「えちょっと、なんでむごーん?おーぃぐふっ!入った、今ボディ入った!ゴメンって、照れさせてゴメンって!」

 

 

 

 

 

 

 水着ショップの近く、望遠鏡を使い様子を伺っていた生徒たちの心は一致していた。

 

「……惣万にぃって天然タラシで、でも朴念仁じゃないから余計タチ悪ーんだよなぁ……」

 

 先程千万ペアが食事していたカフェテリアのドリンクを片手に持ちながら、張り込みを続けるている仮面ライダー部員たち。

 

「あぁ、アレでは千冬さんも可哀そうだ……、あ、抹茶ラテ美味いな」

「しかも見たところ千冬さんだけよね、からかうの……スキンシップってヤツ?ほかの女に見向きもしないし。あ、一夏、アタシ烏龍ジャスミン茶のお代わり買って来る」

「特別扱いと言うことですの?なら何で結婚しないのです?あ、鈴さん。アッサムアップルティーを一緒に……」

「ハッ、爆発しろ」

「簪氏!?いきなり物騒だろ!?まぁ誰しも思ったけどねぇ!?」

「コレがシャレオツ店のキャラメルマキアート……うまし。今度マスターに作ってもらいましょう」

「デートじゃなくなったが楽しんでるな……。でも結局引きこもりに帰結するのかよクロエェ……」

 




戦兎「いや、このエボルト誰だよ!最早別人じゃねぇか!」
惣万「あ、佐藤太郎だ!いやぁ驚かせて悪いね、そーだコーヒー飲む?いやー、有名人に飲んでもらえるなんて鼻が高いな~♩」
万丈「はぁ?そんなモン飲めるか…………(でも飲む万丈)ッッッ!?うめぇ……マジでうめぇぞ……!?」
一海「お前の味覚なんて信じられるわけねぇだろ、ゴラァ……、(ゴクッ)……ッ!?まじだ、え、マジで何コレ!?」
惣万「分かる?豆からこだわってるから、ウチ…!」

 あらすじ提供元:ウルト兎様ありがとうございます!


※2021/02/13
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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