IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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箒「篠ノ之箒だ。前書きコーナーにはちょくちょく出ているが、今回のように一堂に会するのは中々ないな…」
セシリア「はい、皆様御機嫌よう、セシリア・オルコットでございますわ。座右の銘は『明日の下着があれば何とかなる』、ですわ」
鈴「凰鈴音よ。……そこ、酢豚とか言わない。どっちかっていうと麻婆豆腐の方が好きなのよね」
簪「更識簪……、趣味はアニメ鑑賞とゲーム……さて、ようやく仮面ライダー部の四人娘がここに来れたところで……部活の活動内容を紹介する……」
鈴「ちょっと待ちなさい?ここあらすじ紹介よ?クロエも何か言ってやってりなさいよ」
クロエ「ちょっと今マジで待って、グリスの……っ、対処っ、してるからっ……!」
シャルル「くーたん!ぜひとも水着のツーショット写真をォォォ……!」
ラウラ「嫁よ、私の水着はどうだ!」
シャルル「スクミズは止めといたんだな……まぁ妥当だ。……待ってくれよくーたぁん!」
惣万「あ、一緒に写真撮るなら十万円な……お、毎度」
一夏「ボるのかよ……そして出すなや!」
戦兎「はいはいはい皆集合!徹夜明けで眠いのに……臨海学校行くよ!」
一年生全員「「「はーい!」」」
千冬「……頭が痛い、先が思いやられる……」



第五十五話 『フルフルメンバーな海水浴』

惣万side

 

「ふーん、あいつ等は臨海学校か……」

 

 俺はカレンダーを見てポツリと呟く。確か……原作だと篠ノ之束登場回だったけど、もうすでにそのイベントはないんだよなぁ……。

 

「臨海学校!?」

「ん?どうしたクロエ……?言っとくが俺達は多分行けねぇよ?」

「えー……やだー。行ーきーたーいー」

 

 ウサギのぬいぐるみ『うーたん』と『ツギハギシロウサギ』を抱きしめて膨れっ面になるクロエ……。変だな、いつもはそんなこと気にしないのに……。

 

「……ヒッキーのお前がどうして……ん?」

 

 クロエが見ているタブレット……。

 

「……夏限定キャラが海岸に出現、『バガモンGO』……?クロエェ……」

 

 ……現代っ子め……。

 

「む……ま、まぁそれだけじゃないですよ?くーたんネットで夏限定PVの撮影とかっ!」

「お前別に人気とかいらないとか言ってなかったっけ……?」

「みっ、水着のお披露目とか……」

「買ったっけ?」

「……ぅうー」

 

 あ、ちょっとからかい過ぎたかな?

 

「行きたい行きたい行きたぁいっ!皆ばっかりずるいぃ!私だってイベントに参加したい‼みんなのこと見てニヤニヤしたいッ‼」

「論点ズレてんぞ……」

 

 まぁ、クロエも前の一夏たちとの外出に触発されて彼&彼女たちの人間性の面白さに惹かれたらしい。まぁ楽しみ方が遠巻きに見てニヤニヤする……っていう俺のスタンスそっくりになった訳だが。え、俺の教育の所為?そんなー。

 

「はぁ、まぁ千冬に連絡してみるか……?いや、アレ……花月荘って確か、ウチの商店街と……」

 

 

三人称side

 

 明日は一年生の臨海学校、という夜。更識簪は持っていく水着やら防水ポータブルやらお気に入りアニメやらをカバンの中に詰めていた……。そこに、来客を知らせるベルが鳴る。

 

「……ん……。今開ける……」

 

 そして、そこに立っていたのは……。

 

「……。お姉ちゃん……?」

「あ、あはは……」

 

 IS学園生徒会長、更識楯無だった。

 

 

 お茶を入れ、姉妹互いに向かい合う……。姉妹仲の拗れは無くなっていたが、未だぎくしゃくとしてしまう二人……。何時の間にやら部屋の前には二人の付き人の布仏姉妹が侍っていた。

 

「ねぇ簪ちゃん……」

 

 初めに、姉が口を開いた。

 

「……。何?」

「今まで、姉妹らしい事していなかったじゃない?」

「……。ん、……」

「夏休みになったら……一緒にどこかに出かけましょう?」

「……」

 

 それは、普通の姉妹では当たり前で何気ない言葉だったが、彼女らの場合は違っていた。その言葉に目を見開く妹……。

 

「え、あ……やっぱりヤだった?なら無理に頷かなくていいのよ!?なにこの馬鹿な姉気取りの人、勝手に盛り上がってとか言って流してくれて……『行く』……え?」

 

 ヘタレにも慌てふためきマンガの様に目を回していた頼りない姉に、淡々と言う妹。

 

「だから……遊びに行く、お姉ちゃんと一緒に……」

「……」

 

 呆気にとられる楯無の前で、簪はうっすらと微笑んだ。だが、すぐ無表情に戻ると、トランクに荷物を放り込みチャックを閉めた。

 

「じゃ、お姉ちゃん。私、明日から臨海学校だし……。それと、タイミングは見計らった方が良いと思う、こんな夜に叩き起こされて眠れなくなったらどうするの」

「だ、だって……虚ちゃんが……」

 

 親に悪い点のテストが見つかったように指をくっつけては離し、視線を泳がせるIS学園最強の少女……。だが、悪い気はしなかった。

 

「…………………………おやすみお姉ちゃん、……楽しみにしてる……」

 

 彼女にとってこれ以上ない言葉と共に、楯無は廊下に送り出された。そして……布仏虚がハリセンを持って近づくのにも気が付かずに……。

 

「………………………………ぃぃぃやっほおおおおおおおおおおォォォォォうぅぅぅっッッッ!!!」

 

 あらん限りシャウティング!

 

―スッッッッパァァァァーンッ‼―

 

「お嬢様うるっさいッッ‼」

「(・8・)」

 

 

 

 

一夏side

 

「夏だ!海だ!目を開ければ海が目の前十一時(オーシャンズイレブン)‼」

「目を開ければ……?」

「徹夜の実験でバスで寝てた!」

「職務怠慢⁉仕事しろ戦兎さん!」

「してるよ、グリスのドライバーの修理ぃ……フヒヒ、八徹で・只今結構・いい気分……」

「重症だ……深夜テンションのこの人何するか分かんねぇぞ……?」

 

 前から二番目の座席を占領し、ハンダゴテやら基盤やらが散乱する席に寝ころびながら奇声を上げる戦兎さん。信じられるか、こいつ先生なんだぜ……?

 

「でさぁ……何でお前等までついてくんだよ!?」

「あぁ?んだよ男の俺がいちゃ悪いか?あ、UN〇」

「ぬぐぅ……嫁よ、強いな……」

 

 ちゃっかり箒とオルコット、ボーデヴィッヒとUN〇をしてるシャルル・デュノア……。

 

「いやまぁ……俺が言えたことじゃねぇが臨海学校で親密になった女生徒と不健全なコトを…………ん?」

 

―シャルルについての回想っ!―

 

(くーたんだッ!)

(くーたんとはどー言う関係だァ‼)

(くぅ~たぁァァァァァァァァんッ‼)

 

「………………しそうも無いな、うん」

「?」

 

 ……まぁドルオタはほっとくとして……。三羽烏も同乗しているのだが、それぞれがまぁ酷い。

 

「サクサクポリポリ……」

「パリパリザクザク……」

 

 ジョーヌはのほほんさんとスナック菓子を無心で食い荒らしてる……似てるなぁ、雰囲気が。持って来ていいお菓子は三百円まででしょうが……。

 

「zzz……」

 

 ルージュってヤーさん気質な姉御はよだれを垂らしながらがっつり寝てる。見た目気にしろよ……。

 

「……ぅぶえ……」

「だっ、大丈夫ですかブルさん!?」

「真耶さんすいません出来ればエチケット袋をろろろろろ……」

 

 体は名を表す……と言うのだろうか、最後の三羽烏のブルはその通り顔を真っ青にして教員席を千冬姉に譲ってもらっていた。

 

「…………」

「?、心なしか千冬姉が微妙そうな顔だな……なんかあったのか?」

 

 まぁ、戦兎のお守りが原因だろうが、それだけじゃなさそうな…。まぁ、その理由はすぐに解けることになった。

 ……いつも通りの、ひでぇ感じで。

 

 

 

 

 

「ハーイッ!みーんなのアイドルッ、くーたんだよっ!プンプンッ♡……って……」

 

 目の前では眩い砂浜でカメラ相手に、俺から見れば120%作り笑顔なクロエが……。

 

「くーたんだァァァァァァァァん‼」

 

 怪盗(変態)紳士の三世のように顔面からイッたシャルル。

 

「……ぬぁんでぇぇ!?何でいるのグリスぅぅぅっ!?来ないって聞いてたのにぃぃぃ!?」

「急遽戦兎に誘われたんだ♡一緒に来ないかって……へぁぶぃ!」

 

 まぁクロエに制裁されてやがったが。あーぁ、水着に着替えていないというのに海にドボン……、上がってこなきゃいいのに(無慈悲)。

 

「やっほいクロエぇひひひ……あーやっべ、何がオカシイか分かんないのに可っ笑しいぃっ!」

「戦兎ォォォォォォォォォォッッッ‼」

 

 ネットアイドルの外っツラをかなぐり捨て八徹慣行中のてぇん↑さい↓科学者に掴みかかるクロエ。

 

「何でグリス誘ってんですか!?貴女前聞いた時事務員は同行できないとか言ってませんでしたぁ⁉」

「あっはそうだっけ⁉えーっとえーっと、あぁドライバーの生体データを入力しなきゃだから特別に許可してもらったんだ、ふゃほほほほいっ!」

 

 もうテンションとキャラが定まっちゃいねぇ戦兎さん。寝ろ……。

 

「あぁ、完っ全に盲点でした…。この人発明になるとこうなっちゃうんでしたね……学園の教師になってそんなこと無くなったと考えていた私が馬鹿でした……ハァ」

 

 どよーんと黒い霧をまとったように暗くいじけるクロエ……、と言うか……。

 

「いや、こっちにとっちゃ予想外だったのはお前がいた事なんだけど……」

 

 すると、クロエが目線を俺達の方向へ動かした。

 

「あ、いやぁ……一夏の魅力にかけられて?」

「……おい一夏ぁ?」

「待て箒!これは違う!字面で分かりにくいけど『ひとなつ』だからね!?俺じゃねぇから!大体俺ロリコンじゃねぇし!」

 

 箒が結構ヤヴァイ座った目で見てきやがる……!

 

「(ムカッ)そうですね~……どっちかって言うとあっちの気があるんじゃ、と。それと私貴方より年上なんですがお分かり?」

 

 そして口を滑らせて済まなかったクロエ、だから火にガソリン注ぐのやめてください。

 

「……そう言えばそうだな、最近シャルルと仲良く喧嘩(トムジェリ)する光景ばかりしか見ていない……。こうなると一夏の男性機能に疑問を抱かずにいられないな……」

「ほもじゃないです……(´・ω・`)」

 

 ヤバいから!ここで言ったらホラ!水を得た魚みたいに腐な同級生の目が爛々と‼

 

「あぁそれアタシも思った、……言葉に説得力無いわよね、童貞(一夏)

童貞(一夏)さん、これ以上突っかかるとさらに地雷踏みますから黙っていたほうが良いと思いますよ」

「……。待てよお前等、何にルビふった!?」

「「童貞」」

「女の子がそんなこと言っちゃいけませんっ!?」

「……餓鬼ども、いちゃつくのもいい加減にしろ。それと童貞、少し騒がしいぞ。黙れ…。こっちはこっちで戦兎のお守りで寝不足なんだ…」

 

 駄目だ、皆夏の暑さにやられてる!

 

「処女も黙ってなよ、織斑センセー♪」

「うぐゴホッ!」

 

 吐血っておい。やっぱり気にしてるよね千冬姉?

 

「…………私は好きで行き遅れているわけじゃないんだ。そこのところをよーく考えてから発言するように…」

 

 静かにじりじりと戦兎さんに掴みかかる千冬姉。だが戦兎さんは黙ったままである……何考えてんだろ。

 

「………………」

「おい、何か言ったらどうなんだ因幡野先生……」

「……因みにオレも清い身体だから黙ってみた!」

 

―_(┐「ε:)_ズコーッ!―

 

 こけた、全員が。

 

「ちょっ、おまっ…何でそんなこっ恥ずかしいこと言っている!記憶喪失なのにそんなこと言うな!?記憶戻った時赤っ恥だろうが!」

「大事な個人情報だからね、自分の身体は色々調べておくものだよ?」

「そんなわけあるか!?お前一旦寝ろ‼」

「へぶぁ!?」

「織斑先生それ寝かせたんじゃなくて落とした……」

「千冬姉と呼べ‼…ん?」

「逆だよ!?」

 

 もうみんな混乱してて駄目だ……大丈夫か色々と。そこに、親しい兄貴分の声が聞こえてきた。

 

「おぅお前等、来たな」

「……んで、惣万にぃは何してんの?」

「ん、ホラコレ」

 

 そう言って惣万にぃが指さした方向には……、えナニコレ。海の家ナスビ?……愉快な名前に反して本格的なレンガ造りの家になってる。……コレ確実に惣万にぃが魔改造したな……。

 

「レストランカフェ『nascita』夏限定第二号店をな。えーシチリアレモンを使ったグラニータはいかがですか~」

「「「くださーい!」」」

 

 さすが年頃の女の子、シャレオツなものに目がない。

 

「……コレ花月荘の営業妨害にならない?」

「安心しろ、商店街のコネ……んんッ、今回限りの業務提携で売り上げの六割あっちにやることで許可とったから」

「それ大赤字じゃ……」

「まぁ食材の大半はあっち持ちだし、採算度外視だ、喜べ。えー、パンナコッタ、ジェラート、マチェドニア……いろいろあるよ~」

 

 そんなことを皮切りに、俺達の臨海学校が始まった。

 

「大丈夫か?これ…」

「…水着回なのにね…」

「かんちゃーん?何急に言ってるの~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『nascita』夏限定店の店内にて。

 

「むー……」

「……?オルコット、何悩んでんだ?」

「あぁ一夏さん。海に持っていく浮き輪なのですが……」

 

【シャチ!】【ウナギ!】【タコ!】

【シャシャシャウタ♪シャシャシャウタ♪】

 

「……のどれを買えば良いと思いますか?」

「何だ今の歌……?」

「歌は気にしないでくださいまし……あちらでクロエさんがIS学園の生徒たちをエキストラにMV撮影してるのでそれでしょう」

「別人みたいな声だったぞ?」

「一夏、聞いたか?くーたん新曲出すらしいぞ!」

 

 キラキラした目で俺に報告してくる箒。あぁ、そうだった、こいつもくーたんのファンだったな。

 いや、それにしても……。

 

「…あー、うん。そうだな」

「?どうした一夏。……――――あぁこれか。肌を出すのは憚られたので、こんなのにしてみたのだが…やっぱり変か?」

 

 不安げにこちらを見てくる箒。まぁ、他の生徒と違う水着(?)というのは中々に勇気がいることだろう。でも違うんだよなぁ…。

 

「…そーじゃねぇ。つか逆」

「?」

「『ウェットスーツ』ってさ、ボディラインが強調されてて、こう……ISスーツよりアレなんだよな」

 

 箒が着用していたのはサーフィン用ウェットスーツだった。弾力のある素材のみで身体を締め付けるように着用するソレ。色々身体の発育が良い箒が着ると、その…なんとなく蠱惑的になるのは当然というか…。

 惣万にぃも昔言っていた。見えない部分は創造するからより掻き立てられるとか(その後俺共々千冬姉のゲンコツ落ちたが)。

 

「…アレでは分からんが?」

「ゴメン。察してくれ」

「?…まぁ、悪い印象ではないことは分かったから良いか、ふふ」

 

 スキップ混じりでかき氷を持ち、箒は海へ遊びに出ていった。

 

「…ヘタレたわね」

「そーだよ、ゴメン鈴」

 

 

 ……………………ん?お客が……あぁ。

 

「アッフォガート・アル・カッフェ」

「へいへい、いつもはコーヒーリキュールだけど勤務中だからエスプレッソにしとくぞ」

「あぁ」

 

 以心伝心、とでも言えば良いのか、手慣れた会話でコーヒーとバニラアイスを用意する惣万にぃ。千冬姉は生徒たちの手前クールぶっているが、頬が若干緩くになっている。

 

「ねぇねぇ一夏君、あの人と織斑先生親し気だよね?知り合い?」

「あー……まぁ幼馴染だな、千冬姉も俺も長い間世話になってる」

「へー、綺麗な人だねー」

 

 ……………………やっぱり勘違いされてる、か。

 

「……あの人男だぞ?」

「……え?またまた……え?」

「石動惣万、千冬姉とタメのマジな男だから」

「「「……えぇェェェェェェェッ!?」」」

 

 惣万にぃ、絶対男に見られないんだよな……。

 

「千冬様に男が!?」

「男の娘が好みなの千冬様!」

「千冬様×男の娘……いや男の娘×千冬様!?悪くないわね……、作画班!ネタは上がったわよ!」

 

 何処かからかハゲタカの様に集る女子連中……。その千冬様とやらに折檻されても知らんぞ……。つかレズっ気が多めな一派だな。クラスにいると分かったのはBL派閥、百合派閥、ノーマル派閥……。うん、やっぱこの女子高ノリってなれないわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

三人称side

 

 

「……――――ふー、歌った歌ったー」

「あ、くーたんお水ですご苦労様です!流石と言いましょうか何と申しましょうか!」

「ぅえ、グリスぅ…。まぁいいや、貰いますよ…」

「……ッ、しゃァッ!」

「(うーん、そーゆーとこがなければ…)ん?」

 

 一通りMV撮影が終わったらしいクロエ。

 実は潜在的なファンがかなりいたらしい、IS学園一年生生徒のほぼ大半が、何らかの形で彼女の曲に参加するという結果となった。

 これには千冬先生も苦笑い。確かにIS国家代表とかはアイドル的な広告塔だが、まさかネットアイドルのPVに生徒たちが出るとは欠片も思っておらなんだ。

 丁度その時、クロエの携帯に通知が届く。

 

「お……、レアモン発見。いったん休憩!」

「え、ちょ…――――、くーたん⁉」

「みーんなー!その機材使ってカラオケでもしててー!」

 

 ネットアイドルの仮面を躊躇うことなく剥ぎ取り、ニート感丸出しなフリーダムな挙動でその場から立ち去っていくクロエ。

 後にはプロ仕様の収音器と音響設備が残されていた。…――――これを使えとくーたんは言っている。ならば当然やらざるを得ない。

 

「えー…それでは僭越ながらシャルル・デュノア、歌わせていただきます」

「…いや、何故だ?」

「よりにもよってお前かよ!ひっこめ!」

「うるせーモッピーにエビフライ!あぁもう始まっちゃったじゃねぇか!」

「始めなきゃいいだろクロケット!」

「モッピーって私か!?なんでお前私のラジオネーム知ってる⁉」

 

 幼馴染恋人コンビからキレのいいツッコミが入るも、シャルルのハートは動じない。そのまま自然な流れでマイク片手に口を開き、選択した曲を高らかに歌う。

 

「んッ…『Brush Up‼ユウキ今日も わーたしのハートきらめくー♪ Next Future はーじまってーるねー!』」

「「「「「!!?」」」」」

 

 ……――――女子の声で。

 

「ちょ、…!シャルル⁉」

「ぁん?なんだよ素っ頓狂な声出しやがって」

「そりゃ出すわ!今の声なに⁉」

「『ただの声帯模写』」

「ただの!?」

「『誰にも譲れないよー それぞれのプライド 認め合ってるって 言わなくてもッ♩』」

「……歌い続けられるのか、これ?」

 

 

 結果。……シャルルは丸々一曲歌いきりました。しかも惚れ惚れするような女性の声で、クロエの挙動を完全再現していました。箒はクロエガチ勢に冷や汗が流れた。

 

 

「…今の声…、AI声優の香菜澤セイネにも似てた…でもどっちかっていうと……花z『……鈴さん、化粧品か何か、あります?』アレちょっと、まだ私の台詞…」

「んー、アタシ持ってないけど、海の家ナスビに置いてあったような……、何するの?」

「いえ、ちょっと試してみたいことが」

「奇遇ね、アタシも丁度こんなワンピース持ってるのよ…」

「さぁシャルル・デュノアさん、こちらへ」

「ん、何オルコット。つか凰、そんなもんもってにじり寄ってくるってうぉい銀髪ヤメロ離せ何するつもりだヤメロォォォォォォォォォォ‼」

 

 専用機持ち三人のフルパワーによって、水着のシャルルは引きずられていく。……――――世界最強と互角に戦えるシャルルを拘束できるとか、お前ら相当だぞ?

 

 ……そして時間が経過し数十秒、その場に驚きと笑いと、少しの憐憫が渦巻いた。

 

「あやっぱりー、カシラ似合うと思ってたw」

「~~~ッッッはは!やべぇウチ腹いてぇ!カwシwラw」

「ぶふ……似合ってますよカシラ…」

「……お前らさぁ…、こんなことして満足?」

「「「「うん!」」」」

 

 その場には、白いワンピースと麦わら帽子を身に着けさせられた、一人の女性の姿があった。長い髪がキラキラ日光を浴びて金色の輝きを放っている。

 

「畜生…、顔向けできねぇよ母さん……」

「うわ、どうしたんだお前ら。こんなところで……あー金髪のワンピースのお嬢ちゃん、そこどいてもらって良ぃぃいいいっ⁉……――――え、『シャルロット・デュノア』?」

 

 身長が180㎝位あったり、紫色の目がどんよりしてたりするが、その外見はまごうことなきシャルロット。セシリアが化粧を施したことによって、彼の野性味を帯びた男臭さが消え、柔和な美麗な面立ちのみが際立っている。

 そもそもシャルルの整った顔立ちはカッコイイ系というより美しい系である。こうなるのも当然の帰結……だったのかなあ。

 

「あ、惣万さんそれ頂き。良いわねー、今度から女装したシャルルのことこう言いましょ」

「しゃるるん、似合ってるよ~」

「嬉しくねぇ…。つか絶対に女装なんてしねぇし!」

「ふっふっふ、流石嫁だな!」

「この状況で嫁言うなや銀髪!」

 

 テノールの声が、哀し気に青い空に吸い込まれていった……。シャルル、南無。

 

「何言ってんだ。お前が声帯模写なんかしなけりゃ良かったのに…」

「くーたんの歌を男の声で歌ったりしたら、全国にいるくーたん王国民が喧喧囂囂だろうが!」

「いや別に良いだろうそんな拘りは…」

 

 それでできてしまうシャルルの技量が凄いのか?と思わざるを得ない箒であった。

 




戦兎「ところで何でオレたち走ってるの?」
千冬「さぁ…?」
クロエ「なんか、疎外感がありますね…『この歌』を背景に走ると」
本音「エンディングで走るアニメは良作って~かんちゃん言ってた~」
真耶「待ってくださいよぉ…」
惣万「(これIS一期目のEDに呼ばれなかった非攻略ヒロイン組なんじゃ…)」

※2021/02/13
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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