IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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宇佐美「ヴェハハハハァ!諸君!待たせたなァ!宇佐美幻神だァァァァ‼」
惣万「うわうるっさ!?待ってねェから!?つか何しに来たんだよ!?ここ前回のあらすじコーナーなんだけど!?」
宇佐美「そうだぁ……『フルフルメンバーな海水浴』だというのにファウスト組がいないわけないダルォ!?」
惣万「え゛!?いたの!?」
宇佐美「と言うワケで前回までの夏の思い出盗撮写真、どぞー。えぇっと、これが兎とシャウタの『クウガ系女子』コンビの水着だな。
【挿絵表示】
それでドルオタとネトドルと嫁軍人の三角関係写真、
【挿絵表示】
そしてコレが前回海パンの紐とられた写真だ」
【挿絵表示】

惣万「……最後のヤツ、クリックしなくて良いです……第五十七話どうぞ……」



第五十七話 『災厄のトリガー』☆

惣万side

 

 臨海学校二日目になった。もうすでに俺たちはIS学園の女生徒たちと知り合いになり、廊下で顔を合わせると挨拶してくれたりする子も出てきた。これも全部クロエの知名度と言うのだから恐ろしい……。ネット怖いな……。

 

今は既に朝食をとり終わり、クロエと二人で部屋でゲーム中。因みに宇佐美が趣味で作った『タドルシリーズ』である……。あいつホント檀黎斗じゃねぇんだよな?

 

部屋の眼下では一年生たちが和気あいあいと装備試験とやらをやっている。箒ちゃんに専用機が……、なんてことはなく、(と言うか既に半専用機的な奴持ってるし……)専用機持ち達も専用パーツのテスト中だ……。ん?何で分かるのか、だって?只の読唇術だ。……、そこ、距離が滅茶苦茶離れてんのにとか言わない。

 

「あ、マスター。アランブラが出ました」

「ブレイバーソードを氷属性のヤツに変えれば有利になるぞ」

「ありがとうございます……、何か音楽魔法とか言うスキルが必要なんですけど。エキサイトしながらアロワナノーってどういう事です?」

 

 ……、思わず目を背ける俺。ネタに詰まった宇佐美に生前の迷言を吹き込まなきゃよかった。

 

「……お前は叫ぶんじゃねーぞ。ヴェアアアアとか」

「?」

 

 ………ん?アワアワと粟を食たようにヤマヤが走って来たな……。そうか、そろそろショーが始まるのか……。

 

「クロエ、俺少し外出してくるわ。何か欲しいモノでもあるか?」

「……金色のカラス避け」

「アイツキラキラしたCD吊り下げてても寄ってきそうだぞ?むしろクロエのCDだとか言って近寄りそう……」

「ヤメテー、キキタクナーイ」

 

 ハハハ、クロエも原作のキャラから大分乖離してるよなぁ……。

 

「ところで、どこに行くんです?」

「ちょっと『お掃除』と『プレゼント』にな」

「?……行ってらっしゃい」

 

 

 

三人称side

 

「おっ、おぉッ織斑先生、ぃい因幡野先生、大変ですッ!」

 

 いつも以上に焦った上ずった声で二人の教師に声をかける山田真耶。

 

「何だ山田君……、……っこれは……!」

「……!特命任務レベルAプラス……?」

 

 千冬と戦兎が手話によってやり取りをすると、先生たちは急遽生徒たちに向き直る。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へ移行する。本日のテスト稼働は中止、各班ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること、以上!」

 

 それによってざわつく女生徒たち。そんなことを尻目に戦兎が千冬に声をかける。

 

「んじゃそっちは任せた……、悪いけど専用機持ちの子を借りるね、千冬センセ」

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎さん、一体なんだよ?」

「……またもやファウストだ。宿の周辺地域に複数のスマッシュの反応、それと同時にインフィニット・スマッシュと言うISの怪物が出現したって連絡があった」

 

 インフィニット・スマッシュのことを知る一夏や箒が顔を歪めるのを見て、他の専用機持ちも事態の深刻さをうかがい知る。

 

「IS委員会から近隣地域にいる者たちに出動要請はされた……だが如何せん敵は未知数で人命保護が最優先になる。そのため、緊急的な措置ではあるがスマッシュが発生した場所に最も近い我々IS学園所属の仮面ライダー及びIS専用機持ちに事態終息の協力が要請された」

 

 遅れてやって来た千冬が冷淡に事実だけを告げる。

 

「敵の詳細は……?」

「不明だ……スマッシュにも種類が多々あってね。そしてインフィニット・スマッシュの方はシールドエネルギーと同等の防御機構を備えている……と言う事だけしか」

「そんなものがこの周囲に何体も……?」

 

 ふざけんじゃないわよ、とでも言いたげな表情で吐き捨てる鈴。

 

「幸い遠距離にいる敵性目標はいません」

「「「!?」」」

 

 そこに一人、黒いスーツの女性が現れる。顔の片側のカメラアイマスクは誰もの目を引くため、やや眉をひそめた銀髪の女性。

 

「……アンタは確か……」

「最上さん……」

「久しぶりですね、更識簪、そして織斑一夏。そのほかの皆様は初めまして。最上カイザと申します。倉持技研の専属メカニックです。そして、財団Xのメンバーでもあります」

「!」

 

 ここで財団Xの構成員が現れることなど想定していなかった教師二人は、思わず固まってしまう。

 

「この事態を収拾する為に財団Xから指示を受けましてね、宜しくお願い致しますよ。世界最強(ブリュンヒルデ)、そして仮面ライダービルド」

 

 慇懃に礼をするが、千冬はブリュンヒルデと言われたことに忌避感を抱く。そんなことも構わず言葉を続ける

 

「織斑一夏及び節無は貴重な男性IS操縦者であり、今回のような大規模な市街戦の経験は少なく不慮の事故があっては困ります……。そのため安全を考慮し、ファウストのガーディアンを解析し製作した『Xガーディアン』を複数体護衛に付けた上で出撃させることとしましょう」

「……それが財団Xの意向なら、構うまい。合理的でもあるしな……」

「……?千冬センセ、どしたの?」

「……気にするな」

 

 だが、千冬はカイザと言った女に対して警戒を解くことは無かった……。

 

そして、作戦が決行される。スマッシュたちは別々の地点に出現したため、専用機持ちやライダーはエンプティボトルを持たされ、バラバラに出撃することになった。

 

 しかし、戦兎が一夏より先に出撃してしまったことが事態を急転させることに、今はまだ誰も気が付いていなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「さて……俺の相手は……。あれか」

 

 クローズとXガーディアン達の前には緑色の身体をしたゴムの様な身体のスマッシュがいた。

 

「タコみてぇだな……まぁ、とっとと終わらせる!」

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■‼』

 

【ビートクローザー!】

 

 叫び声をあげて突進してくるスマッシュをヒラリと躱し、剣を片手にそのスマッシュを斬りつける。その後、Xガーディアンたちの銃撃によってたじろいでしまうストレッチスマッシュ。

 

「はぁ‼」

『■■■■■■■■■■■■!?』

 

 既に一夏のハザードレベルは4を上回っている。故に通常のスマッシュをあしらうことなど容易い程強くなっていた。

 

「他の奴らの所にもいかなきゃなんねーんだ……、悪く思うなよ!」

 

【Ready go!ドラゴニックフィニッシュ!】

 

 パンチでストレッチスマッシュを吹き飛ばしたクローズはレバーを回転させ、ライダーキックを放つ。

 

「おっるぁぁぁぁぁぁ‼」

『■■■■■■■■■■■■!?』

 

 直後、爆炎。クローズはベルトにセットされていたエンプティボトルを怪物に向け、成分を採集する。……だが、彼は口をつぐむことになる。その後スマッシュの中から現れた人間に声も出なかったからだ……。そこに倒れていたのは……。

 

「……更識、会長……⁉」

 

 

 

 

一夏side

 

 

 

「何で……更識会長が……?」

 

 俺は彼女を抱き上げようとするも、突然首筋にピリッとした感覚が走る。様子を伺うよりも先に剣を振るった。

 

―キィン!―

 

「⁉これは……」

 

 見れば、Xガーディアンが俺達に銃口を向けていた。全てのガーディアンの頭部のパネルが突然弾け飛んでいたのだ。火花がスパークすると、電子音が流れ出る……。

 

『よぉ、織斑一夏。お前の護衛をしていたガーディアンのプログラムを弄って、こちらの手駒にさせてもらった』

「……!その声……スタークか⁉」

『その通り!それにこれは元々こっちの技術だしなぁ。大した苦労はなかったさ』

 

 ガーディアンはスタークの手で制御を奪われたってのか……!けど……!

 

「はぁ!やぁ!だりゃぁっ‼」

 

 三度剣を振るい、Xガーディアンをスクラップ同然にする。こうすれば更識会長に流れ弾は当たらない。

 

『おぉっと。やっぱり木偶人形如きでは意味がないか……残念残念』

 

 さして落胆の声音も見せずにそう言うスタークの声が癇に障るも、デパートの一件のことを思い出し声が喉に引っ掛かってしまう。黙り込む俺にスタークは続ける。

 

『そんなお前に丁度良い知らせだ。お前のハザードレベルを上げるために特別な相手を用意しておいた。お互い嫌い合って中々話なんてしない仲なんだろう?存分に本音で語り合うといい……んじゃ、Ciao♪』

 

 そこでガーディアンは機能を停止した。

 

「……?一体誰のことだ……」

「やあ、一夏義兄さん」

 

 周囲に気配を凝らしていると、突然聞きなれた声が耳に入る。振り返れば……ISスーツを着た男子生徒……。

 

「お前……ッ!節無⁉どういう事だ!」

「ん?こう言うことだよ?」

「……ッ、まさか……ッお前だったのか……?」

 

 そう言ってあいつが手に取り出したもの。それは三羽烏が持っているような銀色のレリーフのボトル。

 

「その通りだよ一夏義兄さん……僕がレゾナンスで会ったスマッシュだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

三人称side

 

 場面は変わって、とあるビルの屋上に彼女はいた。紫色の髪をたなびかせてタブレットを開く宇佐美。するとそこから赤と青の粒子が噴き出した。

 

「お帰り、ブリッツ」

「やほやほマボローグ~、舞台の進行はど~?」

 

 胡坐をかいて祈禱師の様な恰好の銀髪赤目の女が出現する。

 

「すこぶる順調だ……。セツナ・オリムラに割り当てたインフィニット・スマッシュは相当弱体化させた個体にした為誰よりも早く撃破させることができた……。また私の手によって護衛ガーディアンのカメラ等の情報を擦り替え、未だ戦闘中だと偽装データが指令本部に送られている。不審には思われないさ……お前こそ“エニグマ”の試運転が成功したようだな」

「まだネビュラバグスターが足りないから学園内のISを数時間停止させるだけだったけどね~」

 

 お互いに成果を発表する研究者の様に嬉々として語り合うが、その内容は外道そのものである。

 

「いやーにしても、バグスターは身体も自由に変更できるのいいよねー。潜入が楽だし~」

「あぁ、それでセツナ・オリムラの母性への渇望に付け入ったんだったな?全く、どいつもこいつも趣味が悪い…」

「いやいや~、君ほどじゃないよ~」

「褒め言葉として受け取っておこう。そうだ……。スタークが記憶の『後片付け』の後、ビルドの所に行くらしいぞ……」

「ほ~ほ~、んじゃ、後はビルドがアレを使ってくれれば~?」

「あぁ、この喜劇が悲劇にかわる!さぁ、その痛烈な結末を見せてくれ、ヴェハハハハァ‼」

「うっふっふ~、はっはっは~」

 

 二人が発した哄笑は、不気味なほど青い空に吸い込まれていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、インフィニット・スマッシュを数体撃破した戦兎は一足先に花月荘に戻ってきていた。

 

「……あれ?スクラッシュドライバーが……ない?」

 

 メンテナンス中だったスクラッシュドライバーが消えている。そして、誰がそれを持って行ったのか、彼女はすぐに思い至った。

 

「まさか、ッ一夏……‼」

 

 

 

 

 

一夏side

 

「そうやっていつも突っかかって来たよな……お前は!どうしてだ!?どうしてスマッシュになった!?そこまで俺を憎む理由は何処にある!?」

「当たり前だよ……、いつもいつもいつも、アンタが僕の邪魔をした!」

「一体何時だよ……!」

「お前が生きている限り、いつでもだ……!」

 

 ……?あん?どういうこった?

 

「はぁ?何言ってんだお前……?」

「ふん、知る必要はないよ……それにしても、こうも皆『ママ』になってくれないなんて、アレに…篠ノ之箒に吹き込んだことも無駄になったな」

 

 …………………………?

 

「……何?」

 

 コイツ、今なんつった?箒に、吹き込んだ……?

 

「あぁ、そうだ……。冥途の土産に教えてあげる。僕って優しいでしょう?」

 

 そして、節無の顔が気持ち悪く歪んだ。

 

 

 

 

 

 

「お前の()に『白騎士事件』の真実を教えたのは……、僕だ」

 

 ……………………。……………………?

 

「………――――は?」

 

 箒に……『白騎士事件の真実(絶望)』を教えたのが……節無……………………。

 

「……………………んで……」

「ん?」

 

 

 

 

 気が付けば、俺は節無に掴みかかっていた。

 

 

 

 

「何でそんなことをしたぁ!答えろ節無ァっ‼」

 

 それにすまし顔で唇を歪める目の前の男。

 

「そうすれば、篠ノ之箒が篠ノ之束に抱く印象は最悪になる……………………そして関係が破綻し、背後に誰もいなくなった『あんな阿婆擦れ』は救いを求めるはずだった、一夏義兄さんに後れを取る僕じゃないしね。そのはずだったのに……」

「…………やめろ……」

 

 だが、こいつは止めない……。

 

「アレはどうしても『ママ』にならなかった。ならいらない。それにそもそも何時か知ることになる真実だった。それを少し脚色して匿名で伝えても、僕に何の非も無いもの。僕を捨てた篠ノ之箒というアレが悪い」

 

 止めろよ……お前……箒に何したんだよ……………………。

 

「……もういい黙れ」

「うん?どうしたの……力で解決するの?まぁ僕は暴力なんかに屈しないよ。『ママ』がダメな子を叱ってくれるもの。和解なんてしないけど」

 

 お前、箒がどれだけ苦しんだのか、天災を信じられなくなった時の気持ちを分かって言ってんのか……?

 

「確かにいずれ箒が対面する問題だったのかもしれねぇ……だがな……!」

 

 お前が……お前みてぇな下らねぇ人間が………………‼

 

「そんなつまらねぇ理由で人の心を弄ぶ……お前如きが箒をとやかく言う資格はない‼」

「えー?資格ならあるよ。だって僕は弱いんだもの。『ママ』は弱い僕を構わないと駄目だよね?」

 

 そして、戦兎さんから無断で持ってきたドライバーを腰に巻く。

 

【スクラッシュドライバー!】

 

「お前だけは……!箒に絶望を与え、罪の意識を背負わせた片棒を担いだお前だけは……!俺は絶対に許さない……!」

 

【ドラゴンゼリー!】

 

「はぁ?こっちのセリフだよ……。意味わかんないよ、僕がなにしたって言うんだよォォォォォッッッ‼」

 

【シマウマ!】

【潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァァァ!】

 

「今の俺は……負ける気がしねぇ………………」

「そう言うの、フラグって言うんだよ、知ってる?」

 

 

 

 

 

三人称side

 

 遂に、袂は分かたれた。暴走する心優しき龍は、仲間の為に自分の身を犠牲に……、暴走する心卑しき馬は自分だけの為に全てを犠牲にして願いを叶えるために拳を握り、互いの得物を振り上げ駆け出した……。

 

「「ゼヤアアアアアァァァァァァァァッ‼」」

 

 クローズチャージはビートクローザーを、ゼブラハザードスマッシュは雪片弐型を太刀サイズにして振り回している。クローズチャージが優勢に見える、だが……。

 

「……うぅ、ぐぅ……!まだ……!馴染んでないのかよ……!グゥ!?」

「あはあは、どうしたのさ!勢いが良かったのは威勢だけ!?」

 

 未だクローズチャージは暴走のリスクに悩まされていた。そこに荒い剣筋だがクローズチャージ以上の筋力を誇るハザードスマッシュの攻撃が加えられ、スクラッシュドライバーのシナジーにより闘争心が搔き立てられる一夏。

 

 そこに、一人の科学者がやって来た。トレンチコートが戦風に揺れる。

 

「やっぱり……!アレは白式のブレードってことは……一夏の従弟君!?それに零落白夜がずっと発動している…?」

『そうだ。SEの代わりに自身の生命エネルギーを代価に零落白夜を発動しているのさ。だから自分が生きている限り零落白夜を発動し放題。まぁハイリターンモノだが』

 

 近くの物陰からその声の主が現れた。

 

「スターク……?」

『そう、俺だ。お前さんに一つ、少し悪いニュースと滅茶苦茶良いニュースがあるんだか……、聞きたいか?』

 

 嫌だ、なんて拒否権は無いのによく言う。そんな思いを乗せて睨みつける。怒りを表出させる戦兎を満足そうに見ると、ブラッドスタークは口を開いた。

 

『アレはハザードスマッシュと言ってな……。特殊な強化薬剤を体内にいれた強化型ハードスマッシュだ。あぁ、くれぐれも倒して成分を採取しようなんて思うなよ』

「……どうしてだ。スマッシュは体内からネビュラガスを抜けば……」

『ところがどっこい、強化剤プログレスヴェイパーを注入したあいつのハザードレベルは急上昇していてな、代償として一度倒されれば変身解除と同時に肉体が消滅してしまう』

「なッ……」

 

 思わず絶句してしまう戦兎。つまり……それは彼を元の人間には戻せないことを意味していた。

 

『まぁ、現在のゼブラハザードスマッシュのハザードレベルは4.7を超えている状態だ。倒すよりも先にクローズが倒されるのが先か、さて……それに、クローズチャージもアドレナリンが過剰に分泌され始めている。このままでは暴走した一夏が節無を殺してしまうぞ……、それが少し悪いニュースだ』

「少し!?どこかだ!」

『まぁまぁ、落ち着けって。それを打開することができるものがある、と言ったら?』

「何……?」

 

 あっけに取られる戦兎を見て、スタークはケラケラと心の底から笑う。

 

『そのキョトンとした顔はあの天災(ハザード女)はしなかっただろうよ……。ホレ』

 

 軽口を叩くと、手に持った赤いアイテムを見せびらかす。

 

「それが……?」

『禁断の発明品……、ハザードトリガー』

 

 “禁断”……その言葉にはいそうですか、と流す戦兎ではない。

 

「禁断の発明品……だと?」

『あぁ、これは暗闇に生きる俺達の組織名を決める要因となったアイテムだ。こいつのことを葛城忍は戯曲“ファウスト”の光厭う者(メフィストフェレス)になぞらえていたらしい……。まぁ当然だ。こいつを装着し続ければ、全身にネビュラガスが巡り……自我を失う可能性がある』

 

 そのリスクに憤慨する戦兎。人体に害をなす科学の産物を飄々と無責任に薦めてくるスタークにふつふつと怒りが湧いてくる。

 

「巫山戯んな、誰がそんな発明品を……!」

『いいのか?このままだとあのハザードスマッシュがせっかく出来たお前の新しい居場所も、親しい友人も、そしてお前さんの妹も全て殺すつもりだぞ……殺される前に助けるしかないだろ』

 

 その言葉に、一夏から聞いたレゾナンスの出来事が思い至り、ハッとする戦兎。スタークの真意は不明だが……歪な答えがあるようで、頭がソレを導き出そうとする。

 だが、彼女が答えを掴むより先にスタークの口によって遮られ、逡巡が止まってしまった。

 

『はぁ迷ってるのか?…お前が今すぐ決めなきゃ、二人とも死ぬことになるんだがな。ま、選ばないのは勝手だ、だけどさ…――――“お前は正義の味方だろう”?』

「…――――」

『じゃあなCiao♪』

 

 そう言ってスタークはハザードトリガーを放り投げて消えてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 残されたのは戦う銀の『龍』と黒い『馬』、それを遠くから見る赤と青の『兎』。彼女は足元に落ちている赤いアイテムを見た。そして、その後醜い争いをするスマッシュに目をやった。

 

「……オレが戦いを終わらせる」

 

 苦渋の表情で災厄のアイテムを手に取った。取ってしまった……。

 

「オレがお前たちを止める……この身をかけても……!」

 

 決意と覚悟と共に、戦兎はトリガーのボタンを押し込む。

 

【ハザードオン!】

 

 ベルトの拡張スロットに禁断のアイテムを接続し、ヒーローとしての彼女の仮面を創る二本のボトルを力強く振り、ドライバーに挿す。

 

ラビット!タンク!

 

 いつもであれば戦兎が搭載した音声が鳴るはずだったが、今回は違う。

 

【スーパーベストマッチ!】

 

 ベルト前方に出現したR/Tのマークがブレ、その後歯車のようなマークを形成した。

 

【ドンテンカーン!ドーンテンカン!ドンテンカーン!ドーンテンカン!】

 

 意を決して、戦兎はベルトのハンドル部分を握りしめた。

 

【ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!】

 

 彼女の前後に、鋳型状の『ハザードライドビルダー』が展開される。黄色と黒の警告ラインが入ったそれは、黒いオーラと合わさり不穏そのものといった雰囲気を放っている。

 

【Are you ready?】

 

「変身…!」

 

 いつも通りの言葉と共に、前後からプレスされる戦兎。チン、という小気味良い音の後にゆっくりとフレームが開いていくが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!】

 

 そこに立っていたのは、赤と青のアイレンズ以外が黒一色に変化した……――――汚染された様な姿のビルドだった。

 

【ヤベーイ!】




「禁断のアイテム……」
「ォレが、ゃったのか……………………、っ⁈」
銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)……」
「誰が代わりに出ると思う?」
「お前が戦うしかないんだよ」

次回 『天災(ハザード)は止まれない』

※2020/12/21
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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