IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
シュトルム「織斑節無がファウストと繋がっていたと言うのは本当ですか?」
戦兎「貴女は……財団Xのシュトルムさん!その様な事実は……ございません……(目逸らし)」
シュトルム「私にそのような嘘が通用すると?これは財団に報告しIS学園への支援予算を削減しなければなりませんね……」
戦兎「わぁぁぁごめんなさいッ!今回の第五十八話で何とかしますからそれだけは何卒ご勘弁を……!」
ラビットタンクハザードフォームに変身したビルドは、ゼブラハザードスマッシュとクローズチャージの間に割って入る。
「あぁ⁉何すんだ!」
「やめろ一夏!もうやめるんだ!」
「うるせぇ!引っ込んでろ‼」
暴走状態に入ってしまった一夏は、ビートクローザーを振り回しながらビルドとスマッシュに攻撃を加える。
「俺は勝つ!箒の笑顔の為に、こいつに勝つ‼邪魔をするなぁ‼」
剣と拳を振るい、ビルドの漆黒のボディから火花を散らさせるクローズチャージ。
「俺を邪魔する奴は!誰であろうと容赦しねぇ‼」
「うわぁ⁉」
【ツインブレイカー!】
さらにビルドをパンチによって廃墟の中へ、壁を突き破って吹き飛ばした後、間髪入れずにエネルギー弾で狙い撃つ。
「落ち着け!一夏…、ッ!?ぁ、頭が………――――ッ」
鋭い頭痛に襲われる戦兎。エネルギー弾が天井の電球を割り、鋭い破裂音が室内に響いた。その音と同時に、突き刺すような痛みは彼女の理性を奪い去る……。
その様子を見ていた宇佐美は、狂気を孕んだ笑みを浮かべた。
「そうだ。その衝動に身を任せろ。お前は天災だものなぁ。……――――この瞬間から、お前は目に映る全てのモノを破壊する……」
ビルドは頭を押さえていた手を、だらりと垂らした。
「……………………」
「あん……?」
急に無言になったビルドを訝し気な目で見るクローズチャージ。その直後、天災が駆逐を開始する。
【マックスハザードオン!】
その挙動は機械そのもの。ハザードトリガーのボタンを押し、レバーを回転させた。
【ガタガタゴットンズッタンズタン!】
レバーから手を放し、黒いエネルギーを引いて高速移動するビルド。
【Ready go!】
「なッ⁉」
【オーバーフロー!】
紫色のエネルギーをまとったパンチが何発もクローズチャージのアゴや鳩尾、こめかみ、喉……、人体の急所にヒットしていく。
「うぐぅ……ッ、ガハァ!?」
最後の一撃と心臓に喰らうクローズチャージ。装甲を貫通する掌底を叩きつけられ、内臓が悲鳴を上げる。
【ヤベーイ!】
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」
彼は音の壁を越えて吹き飛ばされ、戦士としての変身が解除される。
あまりの出来事に一夏は地面に倒れ込んだままビルドを見た。クローズチャージが暴走状態だったとはいえ、一瞬で無力化された。その強さに驚きと受けた苦痛を隠せない様子だった。
「あハはッ、仲間割れかな……?」
「馬鹿か節無‼さっさと逃げろ‼」
「え?何で……、ッ⁉」
【マックスハザードオン!】
殲滅は未だ終わらない。次の標的をゼブラハザードスマッシュに見据えるビルド。
【ガタガタゴットンズッタンズタン!】
「………………」
「あぁ?舐めないで……欲しいねぇぇ‼」
二人同時に駆け出すと、ゼブラハザードスマッシュはケンタウロスのような姿になり、雪片弐型を振り回す。ビルドは体を覆う紫色の強化剤『プログレスヴェイパー』が切り裂かれる。
「あはは…うわぁ!?」
「……――――」
だが、意に介さずにハザードスマッシュの顔に蹴りを入れ、その場に倒す。
【Ready go!】
「な……、離して……離してよねぇ‼」
「………………」
疾走態になったものの、倒され自由が利かなくなったゼブラハードスマッシュの頭部を乱暴につかみ、どす黒いエネルギーをその手に溜め始めるビルド。
【オーバーフロー!】
電子音と共に、掴んだ手から黒い電流が哀れにも、斑な心の狂人に炸裂した。
【ヤベーイ!】
「がァァァァァァァァッ⁉」
だが……――――、それだけでは終わらなかった。
【ガタガタゴットンズッタンズタン!】
「……ッ!もういい‼︎もういいだろォッ⁉︎」
【ガタガタゴットンズッタンズタン!】
【Ready go!】
今のビルドにはそんな言葉は届かない。
「ッ……戦兎ォォォッ‼止めろォォォォォォッッッ‼」
その言葉も空しく、キリングマシーンと化したビルドはゼブラハザードスマッシュのアゴに当たる部分目掛け、キックを放つ。
【ハザードフィニッシュ‼︎】
黒いエネルギーをまとったキックが炸裂し、その後……。
全ての者に、絶望を与えた。
「あ……………………ぁあ……………………」
体中から爆炎を上げるゼブラハザードスマッシュ。彼は身体から煙を上げ、膝から崩れ落ちた。あれほど美しかったISもひび割れ、白い身体は黒く汚れる。
「戦兎さんッッッ……‼」
慌ててビルドの懐に入った一夏がハザードトリガーを抜き取り、戦兎の変身を解除させた。だが、それは非常な現実を突きつけるトリガーでしかない。
その場に倒れ込んだ戦兎は、目の前に広がっている光景を見て……――――愕然とする。
「え……?」
彼女は目を疑うことしか出来なかった。事態を上手く把握できない。
……一体どうして節無の変身したハザードスマッシュが、粒子となって崩れているんだ……?
「……ッ?……あれッ、ねえ、何コレ!?これは何⁉か……身体が……?身体がぁ⁉」
「あぁ、説明してなかったな」
いつの間にかやってきていた宇佐美がゼブラハザードスマッシュの傍に居る。そして、宇佐美はニッコリと笑顔を浮かべ……残酷な真実を告げた。
「倒され変身解除されたハザードスマッシュ被験者は消滅する。たった一つの命を大切になぁ?」
哄笑が漏れる。命を玩ぶ悪党の、狂った思いが溢れ出る。
「……、はっ、はぁッ!?な、何言ってるのッ!?そんな事僕聞いてないよ!『ママ』だって言ってなかったもんッ!?」
「お前の『ママ』とやらは知らんが、私は聞かれなかったから答えなかった、それだけだが?」
一夏はゼブラハザードスマッシュが宇佐美への怒りと死への恐怖、そして絶望に染まったように見えた。一方の宇佐美は首をかしげている。
「全部お前が望んだことだろう?それを私の所為にされても、訳が分からないな」
彼女の目は“本気で理解できない”という思いが映り込んでいる。機械の様に冷淡で、無感情な顔がゼブラハザードスマッシュを見つめている。
節無は宇佐美が冗談を言っているわけでは無いと分かってしまった。つまり、彼は…………。
「………………ゃだ、やだやだやだやだやだやだやだやだぁ‼死にたくないよ!?助けて……ガハァッ!?」
駄々をこねるように宇佐美の足にすがる怪物。だが、宇佐美は首を傾けると、地面に這いつくばったスマッシュの頭をサッカーボールの様に蹴り上げる。そのまま粒子となって崩れ征く頭を掴み三日月の様に裂けた笑い顔でシマウマのスマッシュを見る。
「なあ、織斑の坊ちゃん!ブリュンヒルデに教わらなかったのかい?何故悪い子に育っちゃいけないか、その理由を。嘘つき……、卑怯者……、そういう悪い子供こそ、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ!」
そう嘲笑われた途端、節無のスマッシュの身体の崩壊が激しくなる。
「ひッ!?……ぃ、嫌だ、嫌だぁッ‼おかしいじゃん!良い子だったもん僕!悪いことなんて何もしなかったのに‼死にたくないぃッ、死にたくない死にたくないよォォォォォォォォォォッッッッッッ‼やだ、やだやだやだやだやだーーーーーーーッ‼この人殺しッ!?『ママ』助けて助けてよ!どこにいるの!?ねぇ『ママ』ってばァァァァァ!?」
それでも宇佐美は冷淡に節無を見るだけだった。
「自分のことを棚に上げて変なことを言うなぁ、
優しい聖母のような良い笑みを振りまく宇佐美に、一夏は戦慄するしか出来なかった。よっぽど彼女の方が怪物だ、と。
「やだやだやだ‼死に゛た゛く゛な゛……!あっ、あぁぁぁあぁァァァァァァァァッ!?」
体から噴き出る白と黒の粒子。そして、節無の身体は向こう側が最早透けて見えるまでになっていた。
「死ぬ!死ぬ‼死んじゃうぅぅぅッ‼嫌だ、『ママ』、『ママ』ァ‼助けてぇぇぇぇぇッ!?」
「節無……」
それを顔を歪めながらそれぞれ眺める三人。
「命乞いか……お前と言う人間は、何処までも醜いな……」
呆れかえったように言う夜の悪党。誰も、一秋に手を伸ばせない……。
「…………何で、こうなるんだよぉ……僕は……僕はぁ……………………。ただ、
そんな醜すぎる断末魔を残し…………――――織斑節無は、死を迎えた。その場に命だった者は何一つも落ちていない。粒子となって虚無へと消えた。
「フム。GAME OVER、と言ったところか…。ん?どうした織斑一夏、お前言ったよな?お前のことは許せない、と。許し難い怨敵が死んだんだ、もっと喜んだらどうだ?」
「……殺してくれてありがとう、とか言うと思ってんのか……?」
思わず飛びかかりそうになるも、突然彼の挙動が止まった。弱々しく一夏の服を引っ張る者がいた。
「……ぃ、ちか……?な、んなの、これ……手が、真っ赤っか…?」
ハッとなり振り返ると……ひきつった顔で膝をつき、茫然自失する戦兎の姿があった。目に光が宿っていない。白昼夢を見ているような、茫漠な盲を思わせた。
「戦兎さん…手なんて、何ともなってねぇぞ…」
「ぅそ…、だって…、ほら…。ぁ、ぁぁ、…ぃゃ…ちが…違…――――あ」
突如として引き攣っていた笑みが、恐怖に変わる。
「…ぃ、ぃゃだ、…ぃゃ…、ぃ、ぃちか……ォ、……が……、ォレがゃったのか………ッ⁈」
「……ッ、……それは……」
だが、それに答えたのは一夏ではなかった。
「その通りだ‼お前がスタークからの甘言を真に受け‼織斑節無という“人間”を‼愛と平和を守ると言った手で‼惨たらしく殺したんだァァァァァァァァ‼アーッハハハハハァァァァァッ‼」
「…………ぇ、……ぃ、ゃ…………」
天災兎の誕生を祝うように高笑いすると、宇佐美はトランスチームガンで倒れている楯無や一夏、そして戦意喪失の戦兎を白煙で包んだ……。
「……ッ!?これは……………………!?」
「お姉ちゃん⁉」
転移した先は、花月荘の一室。そこには既に他の専用機持ちが集まっていた。ある人物が眠る布団の周りで、お通夜のようなありさまだった。
布団に寝かされていたのは布仏虚、傍には涙を浮かべた妹の本音が寄り添っていた。各員戦闘を行い、スマッシュから成分を抜いて人命救助活動を行った……までは良かった。残酷なことに、簪が戦ったスマッシュの素体は布仏虚だったのだ。
「さて、久しぶりだな諸君。ガーディアンから送られてきた映像はどうだった?面白い悲劇だっただろう?」
「貴様ぁ……ッ!」
宇佐美にけた外れの殺気を向ける千冬。と言うのも、宇佐美はクローズによって破壊されたXガーディアンのカメラアイを復旧させ、そのデータをリアルタイムで花月荘の一室に送っていたのだ。
つまり、この場にいる全員は因幡野戦兎が織斑節無を手にかけた顛末を見ているということになる。
その元凶である宇佐美には、その場にいる誰しもの視線が集まっていた……。
「あぁ、それと……私に構ってばかりでいいのかい?一つお前たち仮面ライダーにゲームをしてもらおうと思っていたのだが」
「ゲーム……だと?」
そんなことも構わず、天災以上の気狂いは堂々とカリスマ社長の様に身振り手振りを大袈裟に話を切り出す。
「ファウストはハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS
「
片手に持った紫色の拳銃にUSBをかたどったレリーフのボトルをセットし、空間に浮かぶディスプレイにデータを打ち込む宇佐美。するとそこには、インフィニット・スマッシュとなった福音の情報が明記されていた。
「な………、何だよコレ……」
ISに疎い一夏でも分かった。……インフィニット・スマッシュとなった福音。それは現行の第三世代をゆうに超え、以前やって来た第四世代機『バーサーカーⅣ』すら足元に及ばない性能を誇っていたのだから。
「ここにやって来るのは、南北アメリカ大陸の軍事施設を強襲してからだから…――――時間にして二十三時間後だ。さて、戦える人間はどれだけいるかな?」
「何言ってんのよ……!」
「………貴女……っ!」
今にも部分展開し、宇佐美に襲い掛かろうとする鈴、そして姉を怪物にされた簪。激情を押さえられる者は此処にいなかった。
「専用機持ちか……。インフィニット・スマッシュを撃破し、ロストタイムクリスタルを精製してくれてたことには感謝するよ。だが、今回の計画でのお前たちの役目は終わったァ!」
その言葉と同時に、紫色の拳銃『ネビュラスチームガン』の引き金を引く。
「……ッ!ISが、反応しない……?」
その場にいた専用機持ち達のISは、沈黙した。
「“エニグマ”の力だよ。未だ完成してはいないが……この近隣のISの機能を停止させるくらいは出来るとさ」
「“エニグマ”……?」
簪はその言葉を繰り返す。何か、裏の世界の住人の勘に引っかかった。それは危険だ、と。だがそんなことに気を止めず、一夏は焦る。
「クッソ……!どうすれば……!」
「おや、ビルドの……因幡野戦兎の助力を願わないのか?」
そう言って宇佐美が室内を見回すも……戦兎の姿はなかった。
「……あぁ、逃げたか……」
宇佐美は呆れたように肩をすくめる。
「誰のせいだと思っているんだ……っ!」
「んんー?」
一夏の嫌悪感丸出しな言葉に眉間に指をあて考え込む素振りをすると、その場から歩き出す宇佐美。
「因幡野戦兎が逃げたのは人を殺した罪悪感が原因で……」
一夏と箒の目の前で指をさし、ゆっくりと歩く。
「それは織斑節無がハザードスマッシュになったせいだ・か・ら……」
続いて真耶の目の前に立ち、軽いタッチで胸を叩く。
「つまり……ファウストが彼にハザードトリガーによる手術を施したせい……ハッ!」
セシリア、鈴、ラウラの周りを肩を叩きながらフラフラと回り、驚いたような顔で指を突き立てる。
「全部私のせいだ!ハーハハハハハッ!『ちーちゃん』、全部私のせいだ!フフッ」
「……ッ!」
全員の嫌悪の視線が突き刺さる中、千冬は元凶に向かって『葵』を振り下ろしていた。
「おっと、危ない危ない」
宇佐美が神速の抜刀をひらりと躱すも、修羅のような顔をした千冬は唸るように言葉を続ける。
「これ以上言うなら……腕一本失う覚悟で話せ……!」
「やれやれ、野蛮だなぁ……腕を失うのは困るので私はこれで、準備もあるのでね」
彼女は呆れた雰囲気でそう言うと、ネビュラスチームガンを用いその場から去って行くのであった……。
「……………………、俺が……あんなこと言わなければ……」
その場に残された人たちの中で、拳を握り締め自分を責める少年……。腰のベルトを震える手で触れた……。
「戦兎さん……」
「なんでこうなっちゃったのかな、……――――ころすつもりじゃなかった、たすけたかったのに、すたーくにいわれてしかたなかった、いちかがしんじゃうとおもったんだよ……――――ぁ、ぁぁぁぁ、ぁぁぁぁぁちがうちがうちがうちがう……、おれがやったおれがやったおれがやったおれがやったおれがやったおれがやった……――――どうしよう、ころしちゃった、やだ、うそ、ちがうやめて……――――」
現実から目を逸らすように逃げていた戦兎は、ある場所に向かっていた……。フラフラとおぼつかない足取りでそこを目指す傷心の戦兎。彼女は虚ろな目でブツブツと口を動かす。まるで、さっきの事が悪い夢であるとでも言うように必死に否定をし続ける……。
だが、そこにIS学園の制服を着た人物が立ちふさがった。
「……因幡野先生」
「……え……なん、で……?」
濁った目で怯えを見せる戦兎。そこに立っていた人間の名前を言う……。
「せ……つ、な……?」
嘘だ、噓だウソだウソダウソダウソダウソダウソダウソダ…………………………頭の中がその言葉で覆い尽くされる。
「……何故僕を殺したの?」
「ひッ!?」
胸を抉る彼の叫び。それに思わず後退り、しりもちをつく。顔面は蒼白になり、脂汗が流れ出す。気持ちが悪い……今まで我慢してきた何かに触れてしまいそうだった。
「何が愛と平和の為に戦う、だよ………………僕を殺したくせにさ」
「ちっ、違……」
「結局お前は篠ノ之束でしかない…だから簡単に人の命を弄ぶ…違わないでしょ、この天災が」
彼の叫びと共に、口から血が流れだす。目や鼻からも、どろどろと死が彼を蝕んでいく。彼女が先程抱いた死の重み、その本質を突かれた。
「ぃ…ゃ…ぁ……………………ぇろ……」
自分が人の命をゴミの様に扱う篠ノ之束である、その事を否定したくて……、でも手を見れば、先の出来事によって奪った人の命g$aw%om#o@i*d¥……!
「……ぉ…ぇろ消えろ消えろ消えろ消えろやだやだやだやだやだやだぁぁぁぁ!?夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だァァァァァァッ‼」
突然発狂したように頭を抱えて手足を振り回す戦兎。その様子はいつもの天才的な正義の味方などでは無く、痛々しい廃人にしか見えなかった……。
「ひっ……ぅっ……ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ……う゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえん…………っ‼」
嗚咽を漏らす。胃の内容物を道端に吐き出す……、最早彼女に残っているものは何なのだろうか……。
「……………………。『俺だよ戦兎』」
聞きなれた声が頭の中に入って来る。その声音は、周囲にもし人がいれば、彼女を憐れんでいるように聞こえてならなかっただろう。
「ぁひ……ぁ?すたぁく……?」
『あぁ……お前は育ての親である石動惣万に何か言ってもらいたかったようだが……そうだ』
口から血を吐く少年の姿から中性的なスタイルの人の良さそうな男の姿に……。中年男性の声から、女性的な声に……。
「……こっちの方が良いだろう?」
「……………………ぃゃ、ぁぁぁぁぁ……………………」
惣万に姿を変えただけで崩れ落ち、泣き出す戦兎。それを見てスタークは眉をひそめた……。
「おいおい、そんなところで蹲っていて何になる?福音がやって来るぞ?」
「しっ、知らないッ………………もう……、戦いたくないっ……」
「……………………」
静かに彼女を見る惣万の足に縋り付き、わんわんと泣き喚き挫折を口にする。
「オレはもう人を殺したりしないぃっ!戦わないッッッ‼だから、だからぁぁぁァっ‼」
「許してくれってか?……じゃあ、世界は俺達のものになる。全くお前は笑えるな、すぐに『
「……………………ぅ、ぇ……?」
胃液が混じったよだれが口から糸を引き、虚ろな目で惣万を見る戦兎……。
「まだ分かっていないようだな。いいか?消滅した節無もお前もネビュラガスを注入した時点でもう人間じゃないんだよ。だからお前は『兵器を壊した』に過ぎない。それに、ISなんて『兵器』がある時代となった今、遅かれ早かれ味わうことだ。それとも、本気で誰も傷つけないとでも思っていたのか?だとしたら能天気にもほどがある」
「…………………ぅ…」
淡々と事実のみを伝えるが、それがかえって戦兎を追い詰める……。
「……ぃ………………」
戦兎は答えない……。いや、わかっている故に答えたくないのか………。
はぁ……、と一つ溜息を吐いた惣万は無慈悲にこう告げた。
その教え子の名を聞き、先程節無が消えた瞬間の一夏の顔が思い出される……。
「織斑は今回の件でお前に負い目を感じているはずだ。だからお前がやらなきゃ自分から手を挙げるだろう。けど、今のあいつじゃ福音に勝てない。そうなれば世界の連中は寄ってたかってクローズを責める」
惣万はそこで言葉を区切ると、戦兎の肩に手を置き
「……お前が戦うしかないんだよ!お前にも分かっているはずだ。だから何かを期待してここに来たんだろう!」
人通りのないレストランカフェ『nascita』の前で、惣万は戦兎に強く声を放つ。そして、いつの間にか片手に持っていたトランスチームガンの引き金を引く……。
「蒸血……」
【C-C-Cobra…Cobra…Fire…!】
「……………………」
『……、これは俺達ファウストが所持するフルボトルだ……これを使ってお前のハザードレベルを上げる。明日の夕方までにな……』
パカリと傍にあったトランクを開け、赤いパンドラパネルにセットされているボトルを見せ、戦兎に選択を迫るスターク。
「………………」
煮え切らない戦兎にスタークは叱咤激励する。まるで、育ての親の様に……。
「……………………」
戦兎はうなだれ、一夏のことを思い浮かべていた。一夏だけではない……、記憶を失って血縁の関係が無くなり、初めて仲間になれた篠ノ之箒や同僚の織斑千冬……。
「……………………さぃ、ぁくだ……」
つけ込まれているのは分かっている。だが……このままでは……。
「こんなに、ぃたくても…――――くるしくても…――――」
彼女に、贖罪以外の道は存在しない。人を殺してしまった人間は、その罪過からは逃れられない。時は決して巻き戻らないのだから。
「……たたかうしか…………、……ないのか……?」
【フェニックス!】
あの時、彼が死ななければ…――――。
【掃除機!】
この血に汚れた手を綺麗にできるなら…――――。
「…~ゥ、………ぅぅぅッッ!」
弱々しく構えを創り、今にも泣きそうな声でたどたどしくその言葉を紡いだ。
トライアルフォームを身に纏う戦兎。戦意が喪失していたにもかかわらず、変身した。脳裏には、少年の断末魔が反響し続けている。項垂れる正義の味方を見て、ブラッドスタークは重々しく頷いたのだった…。
「…、あ、ァァァァァァァァァァッッ…‼」
手から炎を放ちながらスタークに迫るビルド。が、スタークはただ火を避けるだけ。直情的な攻撃に怒りの声を上げる。
『駄目だ駄目だ、ボトルの特性を活かせてない!』
「うる、っさぁぁぁいッッッ‼」
【ローズ!ヘリコプター!ベストマッチ!Are you ready?】
「ビルド、アップぅッ!」
【情熱の扇風機!ローズコプター!イェーイ!】
ビルドはヤケクソ気味にベストマッチフォームに変身し、薔薇の鞭をスタークに向かって振るった。
『どんだけ赤と緑が好きなんだよ……?俺、赤と緑って苦手なんだよなァ!』
「次は……これだ……っ!」
【オクトパス!ライト!ベストマッチ!】
『良いだろう、来い!戦兎ォ‼』
そして……一昼夜が過ぎ、福音がやって来た……。傍に血塗れの成層圏を侍らせて……。
「こっちも半端な覚悟じゃねぇんだよ……」
『出すしか、無いよなぁ』
「駄目ぇぇぇぇぇぇぇッ‼戦兎ォォォォォッッッ‼」
「よぉ、調子良さそうじゃねぇか」
次回 『仲間とのビクトリー』
※2020/12/23
一部修正
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部