IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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弾「爺さんが言っていた……食事の時に騒ぐやつにはお玉を投げるってな」
一夏「おい弾、いきなり来て何言ってんだよ。それにここはそんなのを言うところじゃねぇぞ」
弾「そして、俺が言っている。リア充な上に水着美少女たちに囲まれてた一夏は爆散しろと。
と言うわけで、一夏よシィィィィネェェェェ!!!」
一夏「だから話を聞けよ⁉」
蘭「【1・2・3】……ライダー、キック……」
弾「うわぁぁぁぁぁぁぁ……!(ウンメイノー)」
一夏「え、おいちょっと⁉俺じゃなくてあっちが爆散したんだけど⁉」
蘭「一夏さんすいません、出番が欲しかったみたいで。乱入したバカ兄にはよく言い聞かせますので……」
一夏「お、おう……気にすんな…………」
弾「……一夏爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ…………」
蘭「お兄うるさい!……それでは第六十話どうぞ!」



第六十話 『リスタートする思い出』

 時間は夜。ぴちゃぴちゃと水がはねる音が海岸に響く。長髪に海水を滴らせ、岩肌に白い四肢を投げ出す一人の少女。

 

「箒……、ここにいたのか」

「ッ……、何だ、一夏か……」

 

 一瞬身体を抱きかかえるように隠すも、その相手を見てこわばった表情を解いた。

 

 今の箒は身体に包帯を巻いていないため、火傷の跡が人目に晒されてしまう。それ故人気が無くなった夜、こっそりと一人で海に来て泳いでいたのだった……。

 

「海、どうだ?」

「む、そうだな……、涼しくはあるぞ」

 

 ……だが、一人で泳いでいても、どこかつまらなかったのも事実だ。思い出は出来たが、一緒に遊んでくれる人はいない……。それは箒が他人に生身を見せない為望んだことではあるが、どうしてもジレンマに苛まれてしまう。

 

「そうか……」

 

 そう呟くと、一夏は服を脱ぎすてる。

 

「ちょ……、一夏⁉」

 

 顔を真っ赤にして慌てる箒だったが……。

 

「あん?何想像した?海パンはいてるに決まってんだろ……。大和撫子っぽいと思ったら……。意外に、なぁ?」

「~~~っっっ⁉」

 

 あうあう、と顔から煙を噴き出して何も言えなくなる。

 

「んじゃー俺も、っと!」

「っえ、待って急に……」

 

―どっぼぉぉん!―

 

「ぶはははっ、夜の海ってつーめてぇーっ!それっと」

「へぶっ、やめ……一夏ぁぁぁっ!」

 

 夜の寂しい入り江に、場違いに楽し気な笑い声が響くのだった……。二人だけの、臨海学校の優しい想い出が出来た……。

 

 

 

「で……聞こうではないか、一夏、何をしに来たんだ?」

「おお……、そうだった。ホラ箒、これ」

 

 一夏は岩陰に座り、脱いだ服のポケットから一つの小箱を取り出した。

 

「…………遅くなっちまったが……、誕生日おめでとう、箒」

 

 それは、和柄な花弁が刺繍された白いリボンと、桜のネックレスだった……。

 

「……、いいのか……?こんな高そうなものを……?」

「当たり前だろ、俺が人生を賭けて守りたいと思ったのは、後にも先にも箒だけだ……あ、結ぶぞ」

 

 そう言ってリボンでポニーテールをつくる一夏。その行動に一瞬呆気にとられるも、『箒だけ』……その言葉の意味がようやく心に届いた箒。

 

「………………ぅえ……」

 

 ―あぁ、最近一夏に泣かされてばかりだ……―

 

 箒は心のどこか冷静な部分で思っていた。

 

「え、あ、……う、うれし泣きだよな!?……ま、まさか嫌だったか!?」

「嫌なわけ……嫌なわけないだろう、馬鹿者ぉぉ……」

「いたっ、いたっ!腹は……腹は止めろよな!?」

 

 照れ隠しに一夏の脇腹を肘で小突き、口元を押さえ破顔させる……、それは火傷の跡すら感じさせない晴れやかな泣き笑いだった。

 

 

 

 

「あぁ……IS学園に来てからと言うモノ、考えさせられることが多いな……」

 

 『冷えるから』という理由で水着の上に一夏の服を羽織らせられた箒。満天の星を見ながらぽつり、と心境を吐露する。

 

「……なぁ、疑問だったんだが……なんで箒はIS学園に来たんだ?束さ……ッ、篠ノ之束が開発したISを嫌ってるんじゃないのか?」

「……、正直に言ってしまえばよく分からないな。無理やり政府関係者に進路を決められ、入学した頃は憎しみも怒りもあった……」

 

 箒はそこで言葉を切ると、……そっと頭を思い人の肩にもたれかけ、きゅっと手を絡ませる。包帯が巻かれていないにもかかわらず、箒は悲壮感の全くない、清々しい笑顔を恋人に見せる。

 

「けれど、ここで大切な人がたくさんできた……失いたくない人も」

 

 すると箒は胸の谷間に手を突っ込む。慌てて顔を逸らす一夏……だったが取り出されたものに目を向けた。

 

「……福音との戦いの前、因幡野先生は……、私にこれを託してきた」

「それが……、お前が言ってたハザードトリガーの自爆装置か」

 

 戦兎が福音討伐に出た後、一夏に装置の事を伝え、ロケットフルボトルを用いさせ戦兎を止めるよう頼んだのは箒だったのである。

 

 『まぁ、明日返すがな』、と言ってスイッチを握り隠す箒。そしてそのままぎゅっと握った手を膝の上に置き、ため息をつく。

 

「あの人は……何でもかんでも抱え込み過ぎだと思わないか?」

「あぁ……ったく、残されるこっちの方が辛いっつの……」

 

 同じく戦兎に振り回され、その都度慰めたりして来た一夏は天を仰ぐ。

 

「でも、一つだけ……信じられるものを見つけた」

 

 安心しきった笑みで胸元に手を当て、愛おし気に手の中のスイッチを握る。

 

「あの人は天災とは違うと改めて分かった……、逃げたかっただろう、辛かっただろう。それでも自分の果たすべき責任を成し遂げようと、弱いながらも目をそらさなかった。必死に、痛々しいほどに罪を償おうとしていた……」

 

 目を伏せ、静かな声で戦兎を思った……。

 

「そして……、あれだけ篠ノ之束のことが憎くてたまらなかった私は、そんな先生のことを殺したくなかった」

 

 ほっと安心した声を絞り出す……。

 

「私は……科学の未来とか、夢だとか、そういうことはよく分からないけれど……、因幡野戦兎なら信じられる」

「そっか、……俺もだよ……、戦兎さんは……危なっかしいけど、俺の……いや、俺達のヒーローだ」

 

 夜の海は、そんな二人を見守るように、静かにキラキラと上空の星々を照らしていた……。

 

 

 

「……ところで一夏、何故ここが分かった?」

「あー、それな……惣万にぃがちょっと……」

「ッ……、はぁ……あの人には敵わないな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……(´Д⊂グスン」

「こんな所でコーヒーか。惣万、戦兎……って何で戦兎は泣いてるんだ?」

「あぁ……コイツ、盗聴で耳に入ってきた内容に感動してるんだ……、お前も飲むか、千冬?」

「いただこう」

 

 夜の浜辺で三人の大人たちがレジャーシートの上でコーヒーを飲む。そこには一言の会話もなかった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 カップを弄っていた一人が唐突に口を開いた。

 

「…………なぁ千冬」

「何だ?」

 

 コーヒーのおかわりをカップに入れ、あおるように中身を胃の中に注ぎ込む惣万。そして一拍開け溜息を吐くと、こう尋ねた。

 

「……お前はこの世界は楽しいか?」

「…………以前の私ならそこそこには、と答えていただろうな。だが……」

 

 真っ黒なコーヒーの水面を見て、目を細めて肩を落とす世界最強……。

 

「腐れ縁の天災、心のどこかで理解を拒んでいたらしい従弟……。失って初めて気が付くことばかり……」

 

 目を伏せて胸ポケットに手を入れる。

 

「まざまざと私の罪が思い知らされる…………」

 

 そう言って千冬は手に持った幼い頃の節無の写真を撫でる。

 

「そうか…………」

 

 だが彼は慰めることはしない。安い同情が欲しくて言っているわけでは無いのが鮮明に分かるからだ。

 またも会話が途切れる二人。戦兎は悲し気な目で二人を見ていた……。

 

「………………」

「俺はな、千冬…………」

 

 唐突に立ち上がり、持ち運びできるコーヒーミルを片付けくるりと旅館の方向を向いて、風にかき消されかねない音量でこう呟く……。

 

――――苦しいよ……そんなお前たちを見るのが……

 

 

「おやすみ、千冬、戦兎……。良い夢をな」

「……」

「……」

 

 後には、彼に人生を創られた女と、彼と共に生きた女が残されていた……。

 

 

 

 

 

 一方こちらは花月荘の一室。

 

「ね、ねぇ……簪、ちゃん……」

「ん、本音……?どうしたの?」

「あ、あのね……おりむーがね、たっちゃんが気が付いたって……」

「「「……ッ‼」」」

 

 その言葉を聞いた簪は慌てた様子で駆けだしていた……。姉が寝ていた部屋に向かい、足音がうるさいのも関わらず乱暴に障子を開けた。

 

「お姉ちゃんっ‼」

「楯無会長!お目覚めになられましたか?」

 

 一緒に駆けてきたセシリア・オルコットや凰鈴音たちがどやどやっと部屋の中に入って来る。それに驚き、包帯の巻かれた頭を入り口に向ける楯無。隣で眠っている虚に迷惑だろうと心の中で謝るも、今の簪には、楯無の意識が戻ったこと、それだけがただ嬉しかったのだから。

 

 しかし、現実は残酷だ……。

 

「…………た……?」

「…………?」

 

 一瞬キョトンとした顔をした楯無、そして一拍開けると……。

 

 

 

「…………楯、無……?…………それが、私の……名前ですか……?」

「……………………え?」

 

 口から零れたその言葉は、とても間抜けな響きをしていた……。

 

 

 

 

「お姉、ちゃん……?うそ……だよね……?」

 

 正気に戻った簪は、よろよろと姉に近づくも、『姉』はビクリ……と身じろぎをしただけだった。

 

「夏休み……一緒に遊びに行くって……言ってくれたよね……?」

「…………、…………?」

 

 簪は、『姉』が焦ったように、必死に思い出そうとしているのが手に取るようにわかる。だが。

 

「……、……ごめん、なさい……」

 

 楯無ではなくなった彼女は申し訳なさそうに首を垂れる。

 

「…ッッ!…………、ごめん……、……――――ちょっと外に出てくる…」

「簪…………」

 

 そこには、泣きそうになっている記憶を失った“更識刀奈”と、仮面ライダー部の面々が残されていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「どういうことだ…――――、ふざけているのか!!!」

「ち、チッピーセンセ!落ち着いて…」

 

 花月荘の縁側に怒号が轟いた。千冬は般若の如き形相で目の前の女性のスーツに掴みかかる。

 

「分かりませんね。IS学園のためを思って財団Xが世界連合と合同で制定したことなのですが?」

「戦兎には殺人罪が適応されない…、その理由が『スマッシュは人間として扱われないから』だと⁉それでは、節無は…――――人間としての死すら許されないと⁉」

 

 それは、あまりに残酷で、効率性を優先した冷淡な判断。世界各国に巡った怪人に対する処分は、化け物となった人間は全人権が剥奪されるというもの。

 

 もう、織斑節無は『人間』として扱われない。それは、織斑千冬にとってタブーとも言える扱いだった。

 

 激昂する世界最強の眼力をものともしない、顔の半分がサイボーグの財団X特派員。嘲るように彼女は眉を寄せた。心底理解ができない、とでも言うように。

 

「えぇ、むしろ当然では?まともな人間はあんな怪しげな力を人体に投与するなど考えませんよ。薬物と同じです。自分に利点が全くないものを服用など…、愚か者のすることではありませんか」

「…――――、最上、カイザァ…!」

「世界各国に出現するスマッシュの被害は甚大です。四の五の言ってはいられないのですよ。現に、捕獲したスマッシュを『焼却処分』する国家もあります。一度化け物になった存在を人間が拒絶するのは今更でしょう」

 

 もはや、世界最強の声は言葉にならない。歯を食いしばるあまり、奥歯がぎしぎしと音を立てている。耳の奥に血が通い煩わしいというのに、頭の中は氷を入れられたように冴え返っている。

 

「それともなんです?記憶喪失、住居不定、戸籍も存在しない人間から罰金でも欲しかったのですか貴女は?」

「違う‼戦兎は自分では背負いきれない罪に苦しんでいる‼だから彼女のために、その苦しみを濯ぐためには…――――」

「それでも仮面ライダービルドが人殺しをした事実は変わりません。罪を犯さなかった正義の味方へ戻すことはできないんですよ」

「ッ…!」

「…――――貴女を取り巻く全ての事実は覆りません。全ては過去のこと。ならば、未来を変えてみれば如何でしょうか、因幡野戦兎」

「…――――?」

 

 最上カイザはスーツを掴んでいた手を乱暴に振り解く。戦兎に一瞬視線を向けると、ふと思い出したように世界情勢の裏側を忌々し気に吐き捨てた。

 

「財団Xが未登録のコアを調査したところ、今世界でISコアを作れるのは篠ノ之束を含めて、最低で五人です。そのうち判明しているのがファウストに所属する宇佐美幻、もう一人は亡国機業(ファントム・タスク)という秘密結社の構成員らしいですよ。なんでも、世界各国に未登録のISコアを振り撒いているのはその亡国機業という組織だとか」

「なっ…」

「それ、ホントなのか…?」

「嘘を言ってどうします。あぁ、では私はこれで。次の出資対象が待っておりますので」

 

 爆弾発言を残して、彼女は銀髪を靡かせ早歩きで消えていく。後には世界最強と罪を犯した天災が残された。

 千冬は戦兎の内心を伺うことができない。今にも壊れてしまいそうな彼女に、何と言ってあげればいいというのか…――――。

 

「戦兎、ごめん。ごめんな…」

 

 月並みな言葉しか、声に出せなかった。俯いた戦兎の顔も、恐ろしくて見ることができない。もしも、狂気に苛まれてしまっては…――――。

 

「…――――償う」

「…――――。え?」

 

 正義の味方を志した天才科学者が顔を上げた。彼女は悲し気な…――――それでいて決意と覚悟の入り交じった表情で、屋根の向こうの無限に広がる青い空を見据えていた。赤と青の瞳が、熱を帯びる。

 

「罰がないなら、オレは償う。スマッシュになった人たちも、戦争で犠牲になる人たちも、オレの力で救ってみせる…――――!」

 

 

 

 

 

 一方……。

 

「どうなっている!学園に派遣した仮面ライダーグリスは任務失敗により虜囚の身に、その上財団Xは我々への援助を打ち切るだとぉ!?」

 

 ここは日本のある料亭。そこにはこの世界の主要な戦力、ISの使い方を取り仕切るIS委員会の主なメンバーが集められていた。

 

「どうしてくれるんだ……!新たに財団から与えられたISを超えるテクノロジー(ライダーシステム)を解析できず、そのまま向こうにやることになってしまったではないか……!」

「うっさいわね、男のくせに……」

 

 ブクブク肥った老人が食べカスを飛ばしながら叫び、それを隣の嫌味っぽい中年女性が半眼視する。

 

「ではどうしろと?学園にいる世界最強に我々が送り込んだ『仮面ライダー』を返してくれ、とでも言えるのか?」

「そして世界各国に在ったISは大半がファウストやそれに与する組織に強奪された!我々が使えるISはもう百台もないのだぞ!」

 

 そこに、どたどたと騒々しい音をたててスーツ姿の女が現れた。

 

「し、失礼します……!」

 

 ずり下がった眼鏡をかけ直し、その部屋に入って来る茶髪でショートボブの女性。

 

「何だね、今我々は今後の対策について考えて……」

「それが、ファウストの幹部と名乗る人間が交渉がしたいと……!」

「何っ⁉ど、何処だ……!一体何処に『それは、此処にいます……ってかぁ?』ッ!?」

 

 IS委員会の役員たちは驚く。目の前にいる眼鏡に茶髪な女性から、中年男性の声が漏れ出たのだから。

 

「貴様……まさか……!」

『あぁ、この姿では分からないか……』

 

 銀色のレリーフのボトルがセットされた拳銃を取り出すと……。

 

【Cobra…!】

 

『蒸血』

 

【Mist match…!C-C-Cobra…!Cobra…!Fire…!】

 

 そして、煙が晴れれば……、這い寄る血管が立っていた。

 

『これは皆さんお揃いで。俺はブラッドスターク、ファウストのゲームメイカーだ。君達に一つ良いコトを教えたくてな』

 

 急に仰々しく腕を広げ、ずかずかとテーブルの上に上がり、彼らが食べていた料理を蹴散らす。

 

「……良い事……だと……?」

『そうだ……、財団Xが出資した金で結構なことをしたらしいな……』

 

 そう言ってスタークはばさりと資料を放り投げる。それに目を通し、見る見るうちに顔色が悪くなる理事たち。

 

「……っ、何故この事を!」

『調べてくれた天災な神様がいてなァ……IS代表候補生に買春紛いなことをさせたもの、IS代表候補生を使っての裏賭博運営、有力な権力者の愛娘をコネで入れ利権をむさぼる……出るわ出るわ』

 

 やれやれと肩をすくめ首をかしげる。

 

『そして、財団Xはお前等に製品価値は無いと判断した……。そんでもって俺が絶版にしに来たという事だ』

「何……?」

 

 疑問の声が上がる。何故テロリスト集団『ファウスト』と財団Xが……?

 

『あぁ……言ってなかったな、冥土の土産に教えてやろう。そもそもの前提が間違っているんだよ。ファウストと財団Xは敵対関係などでは無い……。むしろ逆だ、財団Xはファウストが創り上げた組織なのさ』

「……はっ……?」

 

 間抜け面を晒した役員に、くっくっと喉を震わせたスタークはビシリと指を突きつける。

 

『つまり、お前らは初めから俺達の手の平の上で転がされていただけなんだよ』

「なっ……、信じられるかァ‼」

 

 突然掴みかかられるもオイオイ、というように身振り手振りでホールドアップする赤いパワードスーツの人間。

 

「貴様ぁ……、ッうぅ!?あぁぁぁあぁ!?」

「「「!?」」」

 

 丁度その時だ……マナーも何もなくだらしなく食事を取っていた重役の一人が、突然粒子状になって消滅した。

 

「な、……何をしたんだ……?」

『おっと、最後の晩餐は美味かったか?なら丹精込めて料理()()った甲斐があると言うモノだ』

 

 つまり、食事には毒が盛られていたのだ。そうスタークが言った途端、叫び声を上げて消えゆく何人もの男女……辛うじて食べなかったものは、自分たちの死に様が鮮明に想像でき、正座で痺れた足を必死に動かそうとする……。

 

「わ……我々を殺すのか……っ⁉」

『その通り、君達は用済みというワケだ……』

 

 そう言ってスタークは腕の管『スティングヴァイパー』を伸ばし、何人もの首筋に毒を打ち込む。

 

「がっ……。あぁ……⁉ぁ、ぁああぁッ、馬鹿なァ……私たちがいなくなったらぁぁっ、誰がァこの世界を統率すると言うのだァァァァァァァァッッ!」

『ハッ、よく言うぜ……お前等の手は汚職塗れじゃねぇか……』

 

 消滅する男の断末魔の叫びを部屋の土壁にもたれかかって聞き、胡乱気に彼らに吐き捨てる。

 

『良かったなぁ、これが心優しい俺で。世界最強に知られてたら、苦しみ抜いて地獄に叩き落とされただろうな……』

 

汚いモノを一身に引き受ける血塗れの蛇……、そして決定的な一言を彼らに投げる。

 

『だから安心してくれ、お前等の代わりなんて……この世界にいくらでもいるんだからよ』

 

 その言葉に絶句し、絶望を絵にかいたような顔になる生き残っていた汚職委員……。

 

『Ciao……ってな、んん?』

「かっ金なら…金ならやるッ!! 私の財産は全部やるッ!! だから命だけは助けてくれェッ!?」

 

 しがみついて怯え上がる者……。

 

「やだ! やだぁ!」

 

 子供が駄々をこねるかのように泣き喚く者、それぞれ異なった醜態を晒す重役たち。

 

『……ハァ、こう言う奴らがいるから、勘違いされるんだよ……“人”が愚かだと』

 

 顔のいたるところの穴から液体を垂らす女に近づき、優しく肩に手を置いた……。

 

『クズってのはどこまでも醜いなぁ……最低だよ。俺はお前らのような人間が大嫌いだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 スタークはやれやれと首を回すと誰もいなくなった和室から出る。血塗れの罪人に看取られながら、ナニカ叫んでいた肉塊たちの姿は見当たらない……。ただただそこには散乱した皿や座布団があるだけ……。

 

 それがこの世界での浅ましく、みっともなく、金と権力にとりつかれた人間たちの最期だった……。




(ウンメイノー……)
ブル「……ッゥハァッ⁉……ッハァ、ハァ……なんか『神の速度の愛』的バックミュージックでハザードフィニッシュされる夢を見ました⁉」
シャルル「縁起でもねぇな……」
ジョーヌ「心配だな……カシラ、一人じゃなんもできないから……」
ブル「ん?それ私のセリフじゃ……?」
???「よーし、任せて!僕は時を自由に行き来することができるんだ!」
ルージュ「アンタ誰や」
???「ハ井パー・ゼク『はいストップ(惣万)』【ポーズ……】」

あらすじ提供元:通りすがりの錬金術師様、ありがとうございます!


※2020/12/25
 一部修正

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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