IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

72 / 97
戦兎「日常に潜むハザードレベルを計ってみようと思う。で、測定器を作ってみて完成したのがこれ」
一夏「唐突だな、オイ」
戦兎「何か試しに言ってみなよ」
一夏「じゃあ、外食で苦手な物が出てきた時」
戦兎「ハザードレベル0.1だな」
一夏「低ッ‼」
戦兎「もっと面し…もとい、ヤバイものはないのか?」
一夏「じゃあクロエを見て興奮するシャルルン」
戦兎「お、いいぞ。ハザードレベル3だ」
一夏「そういうのならとっておきのがある!惣万にぃに襲いかかる千冬姉」
戦兎「おぉ!ハザードレベル6だ‼」
一夏「あれを見たときは惣万にぃが本当にヤバイと思ったからなぁ……」
戦兎「じゃあ、次の…」
千冬「お前達、楽しそうだなぁ…」【マッスル!フィーバー!】
戦兎・一夏「「ヤベェェェェェェェイ!!」」


夏休み閑話 『リストランテ・イン・織斑(オォラァァ!キャァァァァァ‼)』

 えーと、おはようございます。わたくし石動惣万二十四歳。花の独身レストランオーナー、悠々自適な毎日を送っておりました。…――――何か悪いことしたかな?今結構ピンチです。

 では、今の俺の状況を確認してみましょう……。右向け右。

 

「えへへー……しょうりのほうそくー……さいっこーれしょー……」

 

 無造作だが艶のある黒髪、赤ん坊みたいなぽわぽわした産毛が生える白い肌が俺の目の前にあった。そして薬品の匂いに混じった甘い匂いが嫌でも鼻に入って来る。

 トレンチコートを着た美人が俺を抱き枕にして寝こけていた。しかも馬鹿でかい胸部に腕挟まれて、動くに動けねぇ。

 

「……。……んぅ……」

 

 しかもそれだけじゃねぇんだよなぁ。何でなんだよ、本当に、泣いて良いかなぁ?

 ……、左向け、左。

 

「……いちか……、はんこうき…きちゃった…、そうま、どぉしよぉ…うぅ……」

 

 どうにも悪夢を見ていらっしゃる黒髪の麗人。眉間にシワが寄り、うーんうーんと寝息も苦しそうである。つーかうん、ブラコンめ。それ以外に言うべきことがありませんわ。

 

「ぅうん…」

「ふぇるまーのさいしゅーてーりー…」

「…――――黙ってりゃ二人とも美人なのになぁ…」

 

 いや、そーじゃねぇ。落ち着け。

 つかこいつら何で身体密着させてきてるだ。抱き枕じゃねぇんだが。え、羨ましい?これ見て言えるか、下向け下。

 

「……きざみますよ……あっ……グリス……そんなのだめ……無理矢理は……」

 

 俺の股座で頬を染めてモジモジする我が愛娘(血の繋がりはない)。変な寝言言ってるが、何の夢を見てるのか分からん。…――――つか考えたら駄目な気がする。俺はそっとそのパンドラの箱を閉じた。

 と言うか何でお前そこだ。色々と倫理的に問題あるだろ、だっこちゃんじゃねぇんだぞ。自分の布団で寝ろよ、いやリビングのソファーで寝てる俺が言えたことじゃねーけどさぁ。

 

「…――――っ。はぁ、これどうすりゃいいの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故こんなことになったのか、それは一日前にさかのぼる。

 

「つーわけで、nascitaの天井に穴空いてな。部屋貸してくれ」

「シャルル、お前……」

「…………わりぃ。だが反省はしてる。それにくーたんの可愛さに易々と気絶してしまった事に恥じ入るばかりだ……」

「天井突き抜けて星になって気絶、じゃねぇのかよ……」

 

 俺ら(と荷物持ちのシャルル)が大荷物で織斑家へ。騒がしい一団に一夏や千冬は眉をひそめていた。

 いやまぁそうだわな。俺だって急に来られたら困るもん。でも何だかんだ招き入れてくれるって流石一夏だ。千冬は原作とは違い数日間休みを取ったらしく、俺らが夕方押しかけても家にいた。

 

「……と言うか惣万、今日泊るのか?」

「あぁ、丁度nascitaの改修工事を始めてるんだわ。数週間厄介になる……」

「それとオレも泊るよ~」

「は!?」

 

 ギョッとした目で戦兎を見る千冬。

 

「いや~、最近人肌恋しいお年頃でさぁ。あの日みたいにベッドに連れてってよ~ぅ、ね?マスター?」

「……………………(スン……)」

「……――――どうしろと?千冬さん?そんな据わった目で見られても俺にどうしろと?(;・ω・)」

 

 ハイライトが消えた目で見つめて来やがる千冬。コイツの目、俺の生存本能が『ヤベーイ!』と警鐘を鳴らしている。直視したくはないが、ここで目をそらすと悲惨なことになりかねない。それこそ隣のホテルで朝まで語り明かす(ただの説教である、意味深ではない)ことに無きにしも非ず。

 

「……ってか違うからね!?戦兎を初めて見た日の事だからね!?雨に濡れてた子犬…じゃねぇ戦兎の体力消費が激しかったら肩貸しただけだからね!?」

「お前等二人、ちょっとそこにナオレ。少々話し合いをだな……」

 

 あぁ本当に能面みたいな面構えになってやがる。ほんと女性の直感って恐ろしいんですけど、超能力者の感覚以上だよ。

 

「あぁ分かったよ、付き合ってやるから荷物置いて良い?俺の部屋あったよな確か……」

「えっ、や……ちょっと待て?そんな事より先に説教をだな……」

 

 伊達に何年も幼馴染をやっているわけではない。こうなった際の対処法も色々と熟知している。ひとまずこいつは座らせてお茶を出してやれば落ち着く場合が多い。さって……。

 

「……。おい、何でお前は俺の部屋の前で扉を押さえているワケ?」

 

 俺の借り部屋の前で身体を盾に、ドアを開かせまいと阻んでくる幼馴染。俺が手を動かせば、サッ、サッと機敏な動きでドアへの空間を絶つ。……世界最強の無駄遣いだ。

 

「……おーい、この部屋俺が借りた部屋だよな?毎月三千円払ってるよな?」

「えぇい喧しい、貴様は私の母親か!あ、おい惣万!余計な事をするな!」

「別にお前の中二時代のアルバムを見せようなんて欠片も思っちゃ……へぶぁ!?」

 

 丁度その時である……。ドアが千冬の服に引っ掛かり、部屋に隙間が開く……。それと同時に。

 

―どんがらがっしゃーん‼―

 

 ……。……――――うん。お気付きかと思いますが、千冬さん、家事駄目だったっけね。

 何が言いたいのかと言えば、つまり。

 

「千冬……。俺の部屋を物置にしやがって……昔モノの整理清掃後片付けのいろはにほへとを教えたよなぁ?」

「……」

 

 どっさり、その言葉が相応しい。こけしとかヤカンとか木彫りのクマとかと一緒に抱き合う形で埋もれる俺ら。いや、色気もクソも無いんだが。

 取り敢えずどいた方が良いのでは?その、明らかに密着し過ぎなんだけど。

 

「ってそうじゃねぇ、とっととどけ。重いんだよ……!」

「っだと……?これでも臨海学校の時体重は絞った‼」

「…――――口は軽くなったと思うぞ千冬姉。それに最近顔色悪いじゃん」

「……、ストレスかもな…」

「…ちゃんとした栄養摂ってるか?いつも何食ってる?」

「…『プロテインラーメン』……カップヌードルの」

「…――――女子力(物理)」

「お前……‼教師舐めるなよ…、自由時間なんてほとんどガキ共の世話に注意に板挟みに…ぅう」

 

 頭を抑える千冬。ここ最近は俺のせいで頭を抱える回数が増えたもんなぁ……――――色んな意味で。

 よし、キッチン借りよう、ひと夏の思い出作りの一環として。

 

「なら今夜は俺が久々に料理を作ってやろう、ありがたく思え」

「誰が感謝など……む、ビール買ってきた?上物?本当なら店で出す用?…それなら、美味い軽めのイタリアンをだな……」

 

 ………変なところで意外にチョロいんだよな、織斑家の人たちって。

 

 

 

 そして夕食。

 

「…………ソレにだな。飲みに誘っても真耶なんかぐらいなんだよ、一緒に行ってくれるの。遠慮しますか機会があれば是非の二通りでなぁ、……それにみんな私が結婚に興味ないとか思ってるみたいでさぁ……、私の前では合コンとかの話題がタブーになっているっぽくて…、いや、別に良いんだぞ?でも、それが周りの人間に負担を強いているような気がしてちょっとしんどい時があったり…。仲良くしたいのに強面が悪いのかみんなみぃんな委縮してくるんだ。この顔か、この顔が悪いのか?それとも口調がだめなのか…」

「おーそうか…大変だったな。(一夏、水持ってこい水!)」

「言わんこっちゃ(ねぇ)

 

 上手いこと言ったな一夏。座布団一枚やるから飲兵衛共に布団敷け。

 

「あー、チッピーセンセってば甘えてるー!」

「そんなわけないだろ…む。いちかぁ、料理が足りないぞぅ」

「いや、千冬姉。もうその辺にしとけって…?」

「むぅ…最近生意気になったなー、このぉ」

 

 一夏の頬にぷすっと指を押し付ける千冬。いい気分なのか血色が良い顔でふんわり笑うのを学園の連中に見せたら驚愕の嵐だろう。これ程のんびりしてる顔は昔でも数回見た程度だ。ぶっちゃけSSレア。

 

「…やばいぞ、本格的に泥酔してる。どーしよう、惣万にぃ?」

「そろそろお開きだなぁ…ちょっと目を離した隙に何杯飲んだんだこいつら?」

 

 惨状を示すように瓶がゴロゴロ床に転がっている。これだけあったら買いっぱなしになった模型と合わせて結構な量のボトルシップ作れるな…。

 

「アッハハハ!オレよんんじゅーしゃんびーんっ♪よるはやきにくっしょぉぉぉぉ、いぃゃっほぉぉ♪ほーら一夏も食べろ食べろー」

「戦兎ォ!おまっ……それだけ飲むの危険だ馬鹿!つか睡眠薬とか効かない体質とか言ってなかったっけ⁉」

「…ぐすっ……」

「え、ちょ…千冬?あの、千冬さん?…――――泣いてない?」

「泣いていない…、強いて言えば少し涙腺が緩く……一夏がこんなに大きく逞しくなって…」

「あーはいはい、もう大きいですよー、そろそろ寝る支度してくれー?」

「おとまりだーっ!ねね、チッピー、修学旅行でコイバナとかしたー!?あはははは!」

「戦兎も、こんなに変わって…私は、わたしはぁ…っ」

 

 あっちは笑い上戸でこっちで泣き上戸、つーかカオス理論が展開されててどう突っ込めばいいのか分からない。勝利の法則をご教授願いたいんだが、誰か知ってるかなぁ…。

 

「…ぐすっ、いい子に育ってくれたなぁ。一夏…ありがとうなぁ…」

「千冬姉その言葉もうちょっと素面の時聞きたかったな。とりあえず、結構恥ずかしいからやめくれ。…うん頭撫でようとするのもやめて、キャラ崩壊だって」

「…――――ぅう…、いちかが、反抗期…」

「ちょ、お前ほらハンカチ使えよ?…いや俺の服使うんじゃねーよ伸びる、伸びッ…伸びちゃうでしょーが!」

 

 まるでダメなオンナ(マダオ)状態の二人をあやしているうちに、千冬が服を鷲掴みにして、タオルがわりに自分の涙や何やらの液体を拭く。ずずっ、だとかぐすぐすだとかビリ、だとか言う音が聞こえて飯が食えねぇんだが……。って『ビリ?』

 

「…………あぁーっお前、おっま…!コレ高かったんだぞ、もーこの世界最強(笑)‼」

「って戦兎さんヤメルォ!冷蔵庫開けっ放しにするんじゃねぇ電気代かかるじゃねぇか‼」

「……。……大人ってたいへーん……」

 

 クロエはぬいぐるみを抱えながらカナッペを食っていました、まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……回想終了。そんなこんなで酔いどれ女共はリビングにてオッサンも真っ青な酒瓶を大量に開け夕食中に寝こけやがったんだ。

 それで俺も自分の部屋が千冬の所為で魔窟と化してたのでここで寝るしかなかったんだが……、何時潜り込んできやがった。

 

「はぁ、最ッ悪だ……。何だこの状態。回想してもわけわからん」

 

 おい誰だ両手に花とか言った奴。片方が元天災兎、片方が世界最強だぞ。下手すりゃ花は花でもキレーな血肉飛沫の徒花が咲くんだよ、そこんとこ分かって言ってる?材料は100%俺ね。若しくは二人ともロケットランチャーで打ち上がる花火だわ。

 んな爆弾抱えたくねーよ。しかもさっきから両方の美人たちの力、万力みたいに締め付けがキツクナッテあだだだだ。

 

「……うーん、これ起こしたら修羅場突入だけど今のままだと確実に圧死するわー」

 

 特に両の胸で。社会的な意味で。しこたま酒飲ませて一夜を過ごしたとか言われたら、なんも言い換えが必要ないから。訴えられたらこっちが悪いと言われかねないかもだしこのご時世。まぁこいつらがそんなことするわけないけどさ、線引きはきちっとしとこう。

 

「……つか一夏はまだ起きねぇのか、それとも理解してこねぇのか」

 

 …――――後者の気がしてならねぇ。こーゆーイチャイチャイベントは主人公がやるべきなんだよ(実姉妹含む、頑張れ一夏)。俺優柔不断ノナンパヤロー!クローズエボル!とかじゃねーし、生前から女の子の扱い慣れてねぇし。ちょっとモテてたくらいで、一夏とかアイドルとか『漫画かよ』な方々に比べたら普通にあるアレだし。

 

「……あーもう、覚悟決めろ、俺。よし…――――起きてくれー。あっさだよー?」

 

 まず一番純粋なクロエから起こそうっと。

 にしても綺麗な銀髪だよな。上物のシルクでも触っている気分になる。……我ながら両腕をバカスペック共にホールドされた状態でよく手が動かせたと思う。普通の人の身体だったら酸欠で指壊死するんじゃね?

 

「……んぁ……?」

 

 お、意外に素直に目が覚めてくれたな…。

 

「……おとーさん……。だっこ……」

「……いや待って、ちょっと待とうか」

 

 寝ぼけてる?ハイハイして俺の顔に一直線に来るんですが……、ちょ、シャルルどーにかしろ……―――

 

「……ぉとーさんだーいすっ『へもぁ‼』」

 

 ………うん。何があったのか分からんが、俺の胸当たりで一回転でんぐり返ったクロエ。しかもよりにもよって開脚前転だった。そうしたらネグリジェが巻きあがるのは当たり前であって……そしてその両脚が開かれているとはつまり。

 

―ごすんっ―

 

「……ん?」

「……………………、ぁ?」

 

 俺の両脇にいた天災と最強の頭にクリーンヒットして起きちゃった。

 

「「……………………えっ?」」

 

 そして寝ていた状態で俺の方を向いていたっつーことは、つまり俺の今の状況が寝起きの目に入って来るってぇことで……。

 

「……むにゅ……ぐ……あ゛ー……」

 

 クロエの両脚に挟まれソファーに押し付けられる俺の顔……。しかもしかもさらに悪い事に、左側に顔の正面が逝っちゃってるんだよね……(誤字にあらず)。

 

「…………………………、…………(じー……)」

「あー……、オハヨーサン?」

 

 寝ぼけた目が徐々に覚醒してくる我が幼馴染。焦点が合わないぼんやりお目々……――――だったのが俺の格好を見て据わり出す。

 

「……………………えー、っと。チフユ・サン……?」

「……………、…………?……………ッ!………っっ⁉……!!?………⁈……っッッ!!!!」

 

 あ、これ大噴火三秒前だ、俺知ってる。だって、幼馴染に『義娘が顔の上に乗っかっていて』、『片手に抱き着き巨乳科学者が寝てる』状況で『自分も一緒だった』って、とんでもねーシュチュだもん。しかも記憶飛んでそうだから驚き倍増だろうし。怒られても文句言えまい俺。

 

 

 

 

―………ッッッッドッガシャァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッ!!!!―

 

「わっ!何々!?ガス爆発ですか!?」

「へぶっ!?…ちょーッ、クロエどいてよ‼何で空中から落ちてきたの!?オレ餓鬼のパンツに顔埋めるシュミ無いんだけど!」

「はぁ⁉私19歳なんですけど!」

 

 ギャグ補正が追加されたパワーで窓ガラスを突き破り、織斑家のブロック塀に激突する俺。クロエを放り投げたのはグッジョブとしか言えないだろう。

 千冬を見たら真っ赤になった顔で『あ、やっちまった』と顔を青くし、チアノーゼっぽくなっちゃってる。いや、顔青くしたいのはこっちなんだが。すげーなお前マジで。ギャグとはいえハザードレベルが7.5まで急に引き上がったぞ。ヤベーよ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「あーいってー……頭割れるかと思った…。細胞レベルでオーバースペックで助かったけど……」

「……………――――申し訳ない」

「いや、俺も悪いしアレは…」

「いや私が…」

「いやいや俺が…」

「オレも頭痛いー……昨日酒飲み過ぎたのかな……ウッ、ごめっ一夏、ちょっとトイッ、れ゛ぇぁあッ」

「あぁもう戦兎さんビニール袋持って行けよ!」

「お義父さん、はいあーん」

「お、あんがとクロエ。千冬もおかゆいる?鯛の霰粥」

「…あ、あぁ」

 

 俺の声にビクッと肩を揺らす面目丸つぶれ感がある千冬。二日酔いで頭がやられて吐きそうになる戦兎。それを目撃して甲斐甲斐しく介護をする一夏。酔い覚ましのお粥を作って俺に食べさせてくれるクロエ……いやぁ、平和だわ。

 

「……ところでお前達、いつもそんなことをしているのか…?」

「……いやそんな訳ムグッ?」

 

 否定しようとしたら口塞がれた。

 

「いやあ、親子ですし?」

「……義理のだろう」

 

 クロエの常識ってアニメとか人の話とかに偏ってるんだが、……まぁ戦兎が言うには『可愛いから良いじゃん!』ってことになってる。俺はちゃんと正しい常識を教えてはいるよ?だからだろう、世間知らずなふりして結構したたかで愉快犯的なところがある。フッ、と勝ち誇った顔してこの一言。

 

「……嫉妬?」

「…………――――おい惣万、このガキちょっと調子に乗らせ過ぎでは?」

「あー、そうか?」

「そうだろう、見てみろこの腹立つ笑顔!」

「えー?くーたんわかんなーい!」

「こっいつ…」

「うん。言いたいことは分かる。でも俺に似て人を揶揄うのが好きになっちゃっただけなんだよ、許してやってくれこの通りだー」

「許さん」

「待て待て待て千冬姉、それしまえ!」

 

 忍者フルボトルを握りしめてる千冬を見て慌てて止る一夏。うーん、いつもの調子だな。

 

「…どったの惣万にぃ、千冬姉となにしたの」

「あー、朝ちょっと色々あってな」

「え、何があっ―――」

「……(ボフン)」

「あ、おk把握」

 

 顔が即座にトマトみたいになる世界最強。耳の穴から煙が蒸気機関のように噴出しているんだが……、脳が沸騰しない様にな。

 

「……何故私があんなことを……いいやそもそも酒に酔っていたからだ、昨日はつい自制が効かず魔が差してしまって……つまり惣万や一夏の作ったツマミが私好みの……」

 

 頭ん中、昨晩の記憶思い出し中↓

 

(いちかはいーこだなー、いーこいーこ…)

 

「……………ーっ、ーーーーーーっっっ‼」

 

―ごろごろごろ―

 

「何してんです?」

「聞いてやるなクロエ。盛大に自爆死したんだよ」

「?銃火器の類はないけど……………」

「うんそーだけど、こー言うのを自爆って言うんだぜ」

 

 

 

 

 そんな弟に素直になれない姉(ブラコン)のことは放っておいて、朝食を摂り終わった俺達は各々自分がすべきことをして暑さをしのぐことにした。

 

「あーにしても極楽極楽……。やっぱりお前んち涼しいよなぁ、風通しもなかなか……」

「惣万にぃ、ダレてないで昼食の用意してくれよ」

 

 皿洗いをしながら一夏は呟く。千冬……はまだウンウン唸ってるし、戦兎は嘔吐し終えたすっきり顔でフローリングに寝そべっている。……自分含めて大人組ェ。

 

「そう言うと思ったから出来あいのモンタッパーに詰めて持って来た。クロエの食欲が落ちてそうだったからアボカドの冷製スープとか……」

「流石。千冬姉も見習って欲しいよ…」

 

―ピーンポーン―

 

「ん?何か来たかな、ちょっと見てくる」

「いったらっさいちか……ってクロエどした?」

「……スゲーやな予感」

 

 ウゲェ、とでもいいそうな顔をしているクロエ。その反応から大方のアタリを付けた一夏はベルを鳴らした人物を追っ払おうかどうか思案し始めた。……あぁ、うん。俺も分かった。

 意を決してインターフォンを押す一夏。

 

「はいどなたでしょう……」

『くーたぁぁぁん!来ちゃっ「帰れよクロケット」ァア?てめーにゃ言ってねーよエビフライ』

 

 変態紳士、降臨。満を持して無いから帰ってほしい、一夏やクロエはそんな顔だった。俺、意外にこういう騒がしい子好きなんだがな…。

 

『……あーじゃしょうがねー、ここにくーたん用のプレゼントを置いておくから、えーっとツギハギシロウサギのうーたんに欲しがってたなぜTシャ…「だーもう分かった入ればいいでしょグリス!」良いのかくーたん!』

「ゴリ押しじゃねーかどの口が言ってんだ……」

 

 一夏の目がチベットスナギツネみたいになっている。

 

「…――――因みになぜTシャツとは『橘さん‼なぜ見てるんです‼橘さん…!オンドゥルルラギッタンディスカ‼アンタと俺は仲間じゃなかったんでウェ(以下略)ナズェダァァァッ‼』と書かれたいつ着るべきかよく分らんTシャツ。そんな見た目に反して愛用者は多くて、『ブリュンヒルデ(笑)』とか『それに似たちっこい子』とか『のほほんとした人』が購入するのが目撃され密かな人気になってるとか、なっていないとか」

「何言ってんの惣万にぃ?」

 

 仮面ライダー剣15周年記念Tシャツ紹介。

 

「あくーたんアイスいる?迷惑かけちゃってゴメンねー!」

「ほんっと迷惑……。あ、でもアイス寄越せー」

 

 シャルルの持っていたクーラーボックスに集るクロエ。はむはむ言いながらアイスを食う、ネットアイドルの中の人(くーたん)の姿を見るシャルルは、何とかジャンプしない様に耐えている。ここで天井突破ジャンプすんなよ。千冬に真っ二つにされるぞ。

 

―ピーンポーン―

 

 ……ん?また……?

 

「あー、一夏。惣万さんが泊っていると聞いて差し入れを持って来たのだが」

「アタシもー、最近お父さんの癌が治って今日厨房に久々に立ったんだけど、その時作った麻婆。持っていきなさいってお母さんが」

 

 うわー、IS学園の生徒が続々と……。

 

「どうだ嫁、急に来てやったぞ嬉しいか!」

「頗るどうでも良い」

「がはっ!」

 

 口からショックで血の様な何かを吐く。…って、この匂いケチャップ?何でそんな古典的な手を。

 

「副官に教わった!」

「食いもんで遊ぶな銀髪!」

「あーラウラァ…騒がんでくれぇ、頭痛ぁい…」

「……イツメンねぇ。ってことは?」

 

―ガラッ―

 

「一夏さん、惣万さん、庭の草むしり終わりましたわ。あとガラス窓の修理も終わったので確認をば…」

「おーそうかい、ごくろーさん。麦茶あるが飲むか?」

「頂きますわ!」

「……セシリアアンタ何してんの?」

「見て分かりません?草むしりその他諸々のバイトですわ。この町内、かなりアルバイトの広告が出てて丁度良いんですのよ」

「イギリス貴族ゥ‼」

 

 鈴はブチ切れながらセシリアと揉め始めていた。なんでも代表候補生として恥じない行いをしなけりゃお国がどうとか……。本当にどーしてセシリアこうなったんだろうか。

 色々と変わったな…。それとこれからも、色々と変わって行くんだろうな…。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「あー…、アルコールで頭ガンガンする…。ハザードフォームの暴走制御案が固まり始めてんだけどなぁ…。全然頭働かないや」

 

 篠ノ之束時代はアルコールで一切酔わない体質だったらしいのに、と頭のどこかで考える。しかし過去は過去のこと……むしろ失って初めて得るものもある。こうして『大宴会の馬鹿騒ぎの後、ダラダラと友人宅で昼間まで惰眠を貪る』という穏やかな休日を楽しむことを初めて体験する戦兎。その顔は頭痛に悩まされながらも、どこか嬉し気だった。

 

「程々にな戦兎ー」

「はーいマスター。……、その前に武器にしてシステムの試運転をした方が良いか。丁度戦力アップも必要だし。一夏もシャルルンも近接特化だから、……ブラスナックル型かな。となるとここはボース・アインシュタイン凝縮の…。いや待てよ、コンセプトは別にしてどっちが効率的か調べといた方が良いかも…」

「あぇー、程々にねって言ってんのに……散らかさないでくださいよー戦兎ー、こっちが片付けないといけなくなるでしょー」

 

 チューペットをぽきりと折り、だらしなくしゃぶるクロエ(19歳)。夏休みに入ってからというもの、接客サービスが無いのを良いことに、常時パジャマですごしていて生地がもうヨレヨレである。午前11時で(知り合いとはいえ)来客者の前でだらけまくってる。こんなのがケミカルライトの光とファンからの歓声を浴びているとか、現実は非情ではないだろうか。

 

「あー……、気分転換におやつでも貰おっと。マスター、何かないー?」

「モスタルダなら冷蔵庫に入ってるぞ……。おーい、シャルルンだっけ?お前もなんか食べる?」

「いえッ、ご馳走になるくらいならボクがご馳走します!シャルロット・オ・フランボワーズなら今作れますがッ!」

「あーなら、レディ・フィンガーあるしシャルロット・リュスでも。……あと一夏はどうする?」

「千冬姉がこーなるの目に見えてたから、アルコール抜くのに丁度良いのを昨日下拵えしてた。こっち気にしないで始めてくれ」

「んー、じゃ俺は冷蔵庫の中身と相談して…っと」

「…駄目だコレ。絶対長くなるパターンだよ、これだから料理男子は…。なら自分で何か作ろっと…」

 

 

 

ぐれているのかまど(かずみん「…ん?」)

 

レアチーズケーキもどき

自家製生クリーム200ml

砂糖お好みで

自家製ワインヴィネガー大さじ2

 

を全部混ぜます。以上で完成。砂糖のかわりに溶かしたマシュマロを入れて固めたり、ラム酒をお好みでいれてみたりしても美味しい。酢の種類を変えたりしてみても面白いかも。

市販のものや、クッキーを砕いて作ったタルト生地に入れてお召し上がりください。

 

「マシュマロは砂糖とゼラチンの代わりになるから手抜きスイーツには重宝するんだよな」

「プリンにもパンナ・コッタにも使うよな惣万にぃ」

「ま、店で出す料理は手抜きにできないから使わないけど。お、もう一つ作れるな…」

 

手抜きプディング

自家製マシュマロ240g

卵3個

牛乳600ml

を全部混ぜます(マシュマロはレンジで溶かしておきましょう)、泡立てずに丁寧に。器に注いで冷蔵庫で冷やします。ついでに余ったマシュマロでカラメルソースを作ります。

以上で完成。

 

 

 んで、数時間後。おやつの時間。

 

 

 

「心火を燃やして……――――シャルロット・リュス完成!くーたんどーぞッ!」

「よーし盛り付けてっと、できたぞ千冬姉。アボカドのジェラート。キウイフルーツとバナナはお好みでつまんでくれ」

「俺の方は余ってた食材でスイーツもどきをな。手抜き料理だがまぁ食えるレベルには仕上がってる。…何、本気の料理が食いたい?金払えば食わせてやる」

 

 女子たちの前には、明らかにクオリティがオカシイスイーツの数々が並んでいた。

 

「…これ、自家製の域を超えてますわよね」

「ん?俺のは誰でもできるヤツだぞ?」

「いや惣万さん、自家製素材を文字通り一から作れる人中々いませんって。ワインビネガーって材料の葡萄からお手製でしょう?卵とか牛乳とかも契約農家と相談して飼料から選び抜いたヤツですし…」

「あぁうん、俺凝り性だし…でも誰だってできるだろ?理論上は」

「机上の空論です!」

 

 一夏やシャルルなどの料理男子はさらっと流したが、箒が的確なツッコミを入れてくれた。

 

「……――――男連中のほうが女子力高いとかヤになるわね。一人女子力どころの話じゃなくなってるけど」

「えぇ本当に…かつてのわたくしと雲泥の差すら生温いですわ…」

「一夏も惣万さんも昔からこうだった…。だから料理するのが凄まじいプレッシャーで…」

「えー、私は別に気にしませんが。さすがマスターってだけですし、美味しいもの食べられてラッキー」

「流石、嫁だ…」

「ボーデヴィッヒが『嫁、ヨメ』と連呼するからか、こいつらを『主婦』というのが正しいと思えてきたぞ、私は…――――よっと、先ずこれを貰うとするか」

 

 そんな小娘たちの嘆きもそこそこに、早速だらけながらアボカドジェラートを掬い、口に運んでいる千冬。目じりの鋭さも解れており、若干気安さも感じられる。教師というより友人のお姉さん要素が色濃く出ていた。ひょいパクとレアチーズのカップケーキを頬張りつつ、別の菓子を手に取ろうとする千冬を見て、ようやく我に返る生徒たち。おやつを口に運ぶため、我先にと小皿に手を伸ばすのだった。

 

「…で、お前は何作ってんの?」

 

 その女子対抗おやつ争奪戦の輪に入らないものが一人。さっきからずっと気になっていたシャルルは、キッチンの隅でフラスコやらシャーレやら片手に工作してた戦兎の肩を叩いた。

 

「ふっふっふ……――――これを見よ!」

 

 ゆっくりと男子メンツの方を振り返る天才科学者。その手には、シュワシュワと音のするビーカーが握られている。

 

「うわ、何したのこれ」

「名付けてRTスパークリングソーダ!どう、すごいでしょ、てんっさいでしょ、さいっこーでしょっ!」

 

 ビーカーに注がれた赤と青の液体が混ざり合うことなく、不思議な光を放っている。ぶっちゃけ蛍光塗料と同じ様にブラックライトに光っている。突き刺さった二股ストローは可愛らしいが、逆にそれだけが異彩を放ち、飲むのが億劫になること請け合いだった。

 

「……ラビットタンクスパークリングの中身を直接コップに移した、とかねぇよな?」

「そこまでマッドな訳ないじゃん⁉」

「「「「「「「……――――」」」」」」」

「何でみんなそこで黙るの!?大丈夫だから!身体に害になるようなものは一切入ってないから‼」

 

 ……お前行けよ、いやだよ、とばかりに目線で牽制し合うポテトとエビフライ。次第に目が潤み泣き出しそうになってしまう戦兎。あぁしょうがないとばかりにコップをもぎ取ったのは惣万だった。なんだかんだで優しい損な性格をしている。

 彼は意を決してストローの片方からその溶液を吸い込んだ。

 

「(ちぅー……)」

「……、…マスター?どう?」

「……うん、成程。これブルーハワイシロップを混ぜて固めたパインゼリーだな、ラムネパウダーが入ってるから食感が面白い。それとこの赤いジュース、トニックウォーターとクランベリージュースをステアしたのか?」

「わ、一発で分かったの?マスター凄い!」

「まあ、伊達に料理店(リストランテ)してねぇからな」

「マスターのエスプレッソ・トニックが美味しかったから参考にしてみたんだ、どうどう?」

「店に出しても問題なさそうだよ、……お前もちゃんとすればできるんだな」

「料理は科学だよ?公式にあてはめれば然るべき反応が起きるのは当然だよ!……――――でも褒められて嫌な気はしないね~、えへっ!」

 

 彼女は気分良さそうに跳ねる。ついでに言えば後頭部の髪の毛も跳ねる。スキップ混じりに鼻歌を歌い、どこかに飛んでいきそうだった。

 

 

 

 さて、面白くないのは女子連中、特に料理上手で通っている面々だった。

 

「なーんかこんな料理見せられて、あたしの中の女子力対抗意識がメラメラしてきたわよ…」

「そうだな、丁度夕食時になる…。これだけの人数だ、バイキング形式にするか」

「バイキング?…あぁ、ビュッフェスタイルのことですわね」

「それなら好きな量を取れて無駄もでないだろう。私も箒の意見に賛成だ。嫁にいい所を見せて振り向かせてやろうではないか」

 

 

 少女たちの心に火が付いたらしい。買い物から帰ってきたら一時間後にここで料理開始、ということになった。

 

 

 

 

 

「……で、なんで私が織斑家にお呼ばれしなきゃらなねぇんだ?」

「んなこと言うなよ巻紙、大勢で食った方が楽しいだろーが」

「いや初対面の連中ばかりのところに放り込まれてみろ、こっちも向こうも困るだろうが!」

 

 夕方になって、再び活気づく織斑家。また一人、また一人と人が集う。そして、その中には新しい顔がいた。茶髪に目付きの鋭い美人さんが、織斑家の片隅でどこか居心地悪そうにしている。

 

「何?お前人見知りなほうだったか?…いや、そういえばあんま人と接しないタイプだったな」

「おかげさまで。つーか私らの中でお前が異質なんだろ」

「否定はしない。が、平和な国では平和な国なりの人との関係性ってやつがある。なによりこれから多分色々と接点できると思うし顔合わせも兼ねててさぁ?お前は新しく入ったアルバイトとしてかなり重宝する予定だから、そのつもりで」

「えぇ……マジかよ…」

 

 そんな二人の前に、出来上がった料理が差し出された。

 紅葉おろしと和えられた白身魚のカルパッチョ、…――――その趣向は一夏のものとよく似ているが、繊細な飾り付けは彼とは些か異なっているのが惣万には見て取れた。

 

「…――――これを作ったのは君かな、箒ちゃん」

「えぇ。お待たせしました、『真鯒(マゴチ)の和風カルパッチョ』です。それとこちらが『ウチワエビのトマトスープ』で…あれ、惣万さん。そちらの方は?」

 

 ようやく気が付いたのだろう。彼の隣にいる赤毛の女性に対し、訝し気だが無防備な表情で尋ねる箒。その信用に惣万は些か苦笑する。

 

「あぁ、こいつはnascitaに新しく入る予定のバイト。巻紙、ほら挨拶」

「うっせ、お前は私の保護者か?…いや、そんな感じだったなお前は昔っから。あー…、篠ノ之箒だったか?巻紙礼子だ、この腐れ縁の野郎と暫く世話になる。よろしくしたくなきゃそれでいいが、まぁ初めましてだ」

「これはどうもご丁寧に。そうですか、惣万さんの…。あぁどうぞ召し上がってください」

 

 ほんの少し螺子くれた自己紹介に困ったように笑うも、箒は穏やかな顔で彼女に料理を勧めるのだった。

 

「ん、ども……――――え、うっま。ちょっとびっくりしたんだが?」

「あ、ありがとうございます。それはお粗末さまでした。それでは私は次の料理がありますので」

「末恐ろしい餓鬼だなあいつら…」

 

 実は巻紙、色々な場所に仕事へ行く都合上、自然とグルメになってたりする。そんな彼女の舌を唸らせる箒は、そんじょそこらの女子とは比べ物にならない料理の腕。

 箒はちらりと含みのある視線をキッチンへ向けると、『よろしくお願いします』と声をかけて料理の配膳へ戻って行った。

 

「調子はどうだお前たち?」

「…あぁ箒さん。エスニック三色ガパオ、そしてニョッキのラビオリトマトソースの完成ですわ。ラウラさん、そちらの鍋は大丈夫ですか?」

「問題無い。しかしセシリアも伊達という医者に料理を教わったのか。どうりで味付けが似ていると思った」

「まぁ。色々とお世話になりましたからね…昔のわたくしの料理、それはもう酷い有り様で…、香水とかシャンプーとか隠し味に入れていましたから……」

「さ、流石にそれは酷いな……――――お、よしDr.伊達特製おでんの完成だ」

「あたしは庭にあった茄子を麻婆にしてみた。隠し味はブドウ酢と黒酢を合わせたんだけど、中々良い感じよ。問題は…」

「うむ、あれだな…」

 

 箒と鈴が見た先に、中々に珍しい組み合わせの二人組が立っていた。

 

「はい大葉刻んでー、茄子も輪切りにしてー。ほいちゃっちゃとやる!」

「待て待て待て、早い早い…」

「大丈夫かしら、アレ…」

 

 日本が誇る世界最強とフランスが生んだ過剰戦力天然素材が、キッチンの一画で素材を相手にてんやわんや。なんでもシャルルが千冬に『暇なら食ってるだけじゃなくて手伝え』とか言ったらしい。

 

「嫁は教官と何を作っているのだ?」

「フランス料理のフルコース作ろうと思ったんだが、くーたんに止められた」

「そりゃそーでしょーよ。アンタさ、クロエの前になるとアクセルべた踏みすんのどーにかしないとヤベーわよ?てか、作れるのねフルコース一式…」

 

 鈴のツッコミも最もである。そのうち100万円単位でクロエに金をつぎ込みそうで、末恐ろしい気配がしてならない。なるべく無理のない範囲で課金してくださいと、彼女は思わずにはいられなかった。

 

「まぁくーたんはジャンキーなもんが食いたいって言ってたからな。こんなんどーよ」

「……なんだこのエビフライ?」

「エビフライの何が悪いんだよ、ソースぶっかけんぞこの野郎」

「いや悪くねぇけどでかすぎねぇか、何使ったシャルル?」

「イセエビ」

 

 箒は一夏とシャルルの会話にデジャヴュを感じざるを得ない。このやり取りばっちり聞いた覚えがある。そして安定のシャルル、既にクロエに貢いで(課金して)ました。

 

「それと…名付けて『心火を燃やしてぶっ潰すポテサラ』、『俺達のくーたんファーム温野菜』だ。どーだこら」

「くーたんファームって…、待て。確かIS学園でそんな単語聞いたぞ。お前まさか…」

「IS学園の事務員仕事が暇でよぉ。学校の一画借りて畑作った」

「…、ぁ? つ く っ た ? …、大丈夫かそれ」

「あぁ、轡田って人もキュウリとかトマトとか買いに来てっし、それに食堂のマダムらにも好評でな」

「マダムって…、おばちゃん連中のことかよ…」

「馬鹿野郎、女性はいくつになっても女神なんだよ。お前そーゆーところ配慮ないよな」

「お前はそーゆーとこ前面に出せよ、ドルヲタ一辺倒じゃなくてさぁ!」

 

 シャルルと一夏のツッコミ合戦は終わらない。なんだかんだで良いコンビである。そして、惣万は今まで出てきた料理に既視感があり、記憶の糸を手繰り寄せていた。そしてやっと気づく。

 あぁこれ、どっかで見たことあると思ったら。

 

「(全く、何時からここ仮面ラ●ダー・ザ・ダイナーになったんだよ)……――――なら俺も作るか。巻紙、俺のことは良いから楽しんでろよ」

「え、ぁ、おう?」

 

 テーブルに並べられる数々の料理。そして次々に座って今か今かと食指を動かす代表候補生たち。

 巻紙礼子とあいさつを交わし、料理を勧めてくる。それが巻紙にはむず痒い。どうにもこうにも生温くて、吐き気がして、それで…――――。

 

「よーしシャルルンプロデューススペシャルパスタの完成だッ、Bon Appétit!」

「……おぉ、やるじゃないですかグリス」

「ん、私にもか?…礼は言っとくぞ、織斑千冬?」

「客人には礼儀を施すのは当然のことだ。おまちどおさまです」

 

 丁度目の前に差し出されたパスタの皿。それを挟んで、何処か抜け目なく互いを監視し合う二人の戦女、その背後では静かに火花が散らされていた。

 

(あれ、箒?何でこの二人バチバチなワケ?)

(巻紙礼子さんはどうやら昔の惣万さんの知り合いらしくてな…)

(オレが見た限りじゃ数日前もなんかあったっぽいよ)

(成程、把握)

 

 振舞われたスパゲッティを、フォークを使って器用に口に運ぶ巻紙。一方クロエは豪快に口の中に半分近くを放り込んだ。

 ……――――だが、空気がひび割れたかが如く、平穏が砕け散る。突如として時が止まったかのように動かなくなる二人。

 

「……ッはあ゛ぁ⁉」

「ん゛ん゛⁉」

「…。ん?え、どした?」

「「う゛ぅう゛…ッ‼」」

 

 巻紙は机の上に突っ伏し悶絶する。クロエは慌ててオレンジジュースを手に取った。もはや外面など繕ってはいられない。

 何が起こっているのか把握できないのはシャルルである。どうして彼女らがこのようなリアクションを取るのか理解し切れていない様子。一体どうしたことだと首を捻った。自分の料理に不手際があったとは考えられない。

 

「……いやいやいや、そういうのいらないから」

「……、ん゛!」

「え?食えって…?」

 

 シャルルは涙目になっている巻紙からフォークを無理矢理握らされ、乱暴に皿を突っ返される。激しく皿に乗った料理を指さしてくる彼女の形相に圧された彼は、恐る恐る彩の良い茄子を突き刺し、口へと入れた。

 

 ……――――その瞬間、舌の上で壊滅的な味覚兵器が爆発する。

 

 

「ん゛だこれまっっっず‼…おいダメ教師お前何やってんだよ手本みせただろ!?」

「何…⁉レシピが無いからそうなったんだろう!」

「そー言うのはな、目で見て覚えるんだよ!?」

「覚えられるか!」

「よーし俺が鍛え直してやる。それまでキッチンに立つな」

「おい貴様、この仕打ちは酷くないか!おい、おーいっ⁉」

「千冬姉ェ……」

 

 シャルルの手によって、千冬姉はボッシュート……もとい家の外へと追い出されてしまった。

 

「(がちゃっ)…みんなごめ~ん!今新しいの作るから!……はぁ。同じ材料、同じ分量でやれば同じ味になるはずなのによ…なんでできねぇかな…」

「千冬姉、カップヌードルにお湯注いだだけでマズくなるからな」

「…――――それ、もう概念的なレベルで呪われてんだろあのセンコー。やべぇ、無理な約束したかも…」

「俺はおろか惣万にぃでも改善が無理だったからなぁ…」

「お前も大変だな…って、んな不味いモンいつまで食ってんだ」

「残すならこれ食っても良いかな?」

「惣万さんも⁉ホントに美味いんですか!?」

 

 シャルルンプロデュース千冬姉パスタを黙々と食い続ける一夏と惣万。なんだかんだ言っていながら、巻紙礼子も眉を顰めてフォークを一心不乱に動かしている。橘さんもビックリだろう。

 

「いや、千冬姉が作ったもんだし……」

「私は食い物粗末にすんの罪悪感があるんだよ…―――」

「だよな。分析かけたら栄養素は変わらねぇし、料理に大切なのは愛情だよ愛情。香水入りのカレーでも芳香剤入りの唐揚げでも腹に入れば何らかの栄養になるわ。俺を気絶させたいならその三倍でも四倍でも持ってこい。全部吞み込んでやる」

「あの、そんなもの食べたら良くて嘔吐で悪くて死亡だと思いますわよ…?」

 

 セシリアはそう突っ込んだものの、過去似たようなことをしでかしているので強くは言えなかったりした。

 ちょうど、その時だった。

 

「…――――、ちょ、今なんて言った?」

「え?いえ、だからそんなもの食べたら吐くか死ぬか…」

「いやセシリアじゃなくてマスター!」

 

 戦兎が立ち上がり惣万に詰め寄る。あと少しで頭がぶつかる息のかかる距離で、目を爛々と輝かせて手掛かりを掴もうと必死に迫る。

 

「おい、ちょッ、いや…だから三倍でも四倍でもって…!」

「『四倍』…――――?成分を濃縮、倍化…そーだよクローズドラゴンあったじゃん、ドラゴンフルボトルもキードラゴンだと暴走状態になってた、でもその対処法として一本を……ユリーカヘウレカ閃いたぁッッ‼」

「戦兎さん!?今食事中なんだけど‼」

「ごめんちょっと抜けるね‼まずは試験用武器にそのシステムを組み込んでのデータ取りだァァァァ‼いやっふゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」

 

 彼女は転がるように駆けていく。食事中ということも忘れて、知識欲やら実験という贅沢な欲求に身を任せた。天才的馬鹿につける薬は無い。もうああなった戦兎はアンコントロールスイッチなラビットISハザードである。

 

「あー……戦兎さん行っちゃった…。どうしようかしらね、あの人の分の料理…」

「心配すんな。むしろ食い意地張ってる娘がいるからこれだけじゃ足りないと思うぜ」

「え?」

「ほれ」

 

 鈴が見た先では、ガパオやらラビオリやら麻婆茄子やおでんや、イセエビフライにポテサラ、温野菜を次から次へと空にするネットアイドルがいた。

 

「グリスおかわり。あ、ラウラのおでん美味しいですね」

「はいただいまーっ‼」

「む、そうか?ふふ、姉さんに褒められると嬉しいな…」

 

 驚いたことに、クロエは健啖家だったようだ。あれほどあった自分たちの料理がきれいさっぱり無くなっている。

 

「ちょ…わたくしたちの分はどこに⁉」

「セシリア、現実見ましょ…もうないわ」

「そんなぁ…」

「安心しろ、鈴、セシリア。大本命の一夏と惣万さんの料理がまだ残っている。それにシャルルの作り直したパスタもあるしな…――――むぅ、旨いな本当に」

「さらっと要領いいわよね箒って!」

 

 ちゃっかり全ての料理を小皿に取っていた箒は、それぞれの人柄を思わせる味付けに舌鼓をうっていた。

 どれも甲乙つけがたいが、際立っていたのはシャルルのパスタである。一夏や惣万にも並びうる技術を持っているのを窺い知れると共に、一体シャルルは何ができないんだと空恐ろしくなる箒。こいつが女では無くて本当に良かったと思ってしまう。

 その時である。ガラス窓を開け、外から一夏が入って来た。

 

「よーし俺も完成っ!フリッタータとそれとピッツァだ。自信作はマルゲリータ・エクストラ。あとクアトロ・フォルマッジもボスカイオラも…うん、中々上手くできたぞ」

「ぬ、外から?どういうことだ戦友よ」

「惣万にぃと趣味で作った石窯が外にあってな、そこで焼いてきた」

「しゅ、趣味、って…――――?」

「ほらキョトンとすんな鈴、焼きたてだぞ。熱いうちが一番美味いんだからほら食え。あぁ千冬姉、窯の中にあるマリナーラもついでに持って来てくれ。そうそれ、皿に移すの気を付けてな」

「大丈夫だ。そのくらいはできる、安心しろ」

 

 さらっととんでもないことを言った主夫見習い。というか『既に料理人としていい所まで行っているだろう』、と外から一緒に戻ってきた千冬は思っていたりする。

 

「おぉ、和風ピザまであるのか。これは私だな…ん、どうしたのだ鈴」

「うわぁ…一夏がもう本職料理人の域にまで…」

「そういう鈴も実家が料理店だろう?」

「んなこと言ったってね箒、それでも大衆食堂なのよウチ?でも、こうしてみればやっぱり本格的な路線にシフトすべきかしらね…あぁ美味しい!無駄に悔しいんだけどすっごい美味しい!」

 

 何故か敗北感を感じながらも一夏のクアットロ・スタジョーニの味を噛み締めながら、次々平らげていく鈴。セシリアやラウラもマルゲリータに感嘆の声を上げていた。

 

「これは、イタリアにいった時に食べた本場のものと遜色がありませんわね…――――」

「むぅ、美味いッ美味いぞ!」

「へぇ…やるじゃねぇか一夏、まぁ俺には及ばねえが」

「なんだとシャルルお前?それだけ言うならどんなもんか見てやる…、…――――パスタウメェなおい。いやマジで美味いな?え、これどうやったんだ?」

「なに、ちょっと隠し味にこれをだな…」

「あぁー、そういう味付けか!フランス料理っぽいと思ったら、成程な!」

「お、解るのか。伊達にアルバイトしてねぇんだな」

 

 シャルルと一夏が食事そっちのけで料理のスパイスの意見交換を始めてしまったが、女子はそんなことも構わず料理をおいしいおいしいと言いながら腹の中へ納めていく。

 そこには友達と一緒に食卓を囲むという、おだやかであたたかなものが確かにあった。

 皆それぞれに哀しい過去を抱えているが、それでもなお今この瞬間だけは年相応の少女として…――――。

 

 

 

「なんだこいつら、ホントにIS代表候補生か?こりゃまるで…――――」

「ただのこどもみたい、か?」

 

 ぽつりと零れた呟きに、世界最強が反応する。

 

「…――――聞いてたのか?」

「いや何、お前も惣万の小さい頃の知り合いだ。だから、かどうかは分からんが…どうにも平和に生きれない雰囲気があるのはすぐわかった」

「…――――」

 

 トマトジュースとタバスコをステアしたカクテルをチビチビ啜る巻紙。スパイシーな酸味と苦み、そして辛味が喉に絡まって仕方がない。だが、彼女は(つか)えていたものを炎のようなアルコールで無理矢理腹の底へ押し込んでいく。

 水面から飛び出た唐辛子や野菜スティックが蜘蛛の脚のように彼女の口に触れ蠢く。それが妙に不愉快だった。

 

「私が言えたことじゃないのは分かってるんだが、小さいときの自分は自分の運命を選べない。子どもは学ぶ場所を選べないんだよな…。目の前の連中がああするだけでも、奇跡みたいな確立で…」

「へっ…――――あぁ、そうだな。それだけは同意してやる、織斑千冬」

 

 虚無、やるせなさ、そして少しの妬みが混ぜこぜになった色が瞳に映る。

 

((そうだ、そうだったから…――――織斑千冬/オータムである『この私』は世界を…。この世界の全てを…――――))

 

 

 

 

 

――――守ってやる/破壊してやる

 

 

 

 

 

 

 

「よーし俺も完成したぞー!」

 

 宴もたけなわになり、あとは最後に向かって駆け抜けていくだけとなる。トリを務めるのは誰あろう彼の料理だった。

 

「へぇ、どんな感じになった?『こういう時は本気を出さない』、だろ惣万にぃは?」

「まぁな。でも前々からこんなのどうよと思ってたけどお披露目の機会がなくて。こういう時じゃないと作れないしな。ってわけでじゃんじゃじゃーん!」

 

 用意されたのは塩がまぶされた真っ白な握り飯と、香ばしい肉の焼ける匂いのする漢らしい大盛の皿だった。

 

「…――――おぉ、コレはお前のところの賄いか。ホルモンだな?」

「そ、改修中は冷蔵庫の中身が危なそうだったからな。手っ取り早く消費しちまおうと思って」

 

 惣万が作ったのはキムチとホルモンを炒めたスタミナ料理。しかし男の料理と侮るなかれ、作ったのは一夏に料理を教えた星持ちのシェフ。垂れる肉汁と爽やかな辛味が繊細な調和を醸し出し、しかしながらそれぞれの味を際立たせている。

 

「むぐ…――――うん。店には出さないからだろうが、味が中々に刺激的だな。だがこれはこれで旨い」

「夏で食欲がないと感じていましたが、コレならいくらでも食べられますね惣万さん」

「エスニック風にも中華風な味付けにもなってますね…、もしやわたくしたちが使った材料を丁度使い切る形で?だとしたら、お見事です…」

「かーっ、マジ?これマジ?一夏の師匠ってば伊達じゃないわよねぇ」

「おぉ、悪くねぇな。お行儀の良い料理じゃねぇ、旨さだけを突き詰めた感じだな」

「ううむ、クラリッサたちにも食べさせてやりたいものだ…今日の料理は全て素晴らしい…」

「ふぅー、もう食べられません…」

「あ゛ぁー…こーゆうので良いんだよ、私はこーいうので。ハハ、懐かしいなぁ。ウメェ…!」

「やっぱり日本人は米だよなぁ…それにこれがまた合うなぁ、間違いねぇ」

 

 中々に評価が良いようだ。万人に受け入れられる料理ほど難しいものはないが、彼にとっては容易いことだったらしい。なによりがっついていたのは箒だったりする。戦兎の分も一通りキープしてあるため、彼女は後で届けてやろうと決意していた。

 

「ふふ、名前つけるなら……『さっきまでキムチだった物がお皿一面に転がる料理』ってか」

「いやネーミングセンスどうした?」

 

 『慟哭でホルモンも喰らい尽くせ!』と俺の中の俺がシャウトしてきそうな、そんな名前だった。

 

「どうでもいいところは適当なんだよな、惣万にぃって…。あ、でもこれホントうめぇ。丼にしたらもっと美味そうだなー、温玉乗っけたりとかして…」

 

 豚が漲る、キムチが燃える、俺の卵が迸る!そんなマグマな料理がダイナーにあった気がする。

 

「どうした惣万にぃ?」

「いや、変な電波受信した。それはともかくデザートもあるぞ~」

 

 〆だとばかりに冷蔵庫から取り出したのは、黒い皿に乗ったキイチゴのケーキ。だが、どこか不穏な雰囲気を漂わせる陰鬱なスイーツだった。添えられた目玉型の物体と飛沫のように皿に描かれたラズベリーのソースが人体を思わせて、ぶっちゃけ怖い。

 

「……――――なんだこれ」

「イユ~呼び覚まされた痛みと記憶~」

「…凄い名前のケーキなんですけど」

「ハロウィンで出す予定だったりするのか、これ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 一方、こちらは亡国機業。とある一室でエムは目覚めた。どうやら眼が冴えてしまったらしい。ゼリー飲料でも摂取してその空腹を紛らわせようとする彼女だったが、…――――その前に天災が襲来する。

 

「……ん?」

「ヴェハハハハ!完成したぞエムゥゥゥゥゥ‼」

 

 ドガァとドアが蹴破られ、紫色の髪の変態が狂声を上げていた。うげぇとばかりにチベットスナギツネの顔になるエム。

 うんざりした死んだ目で宇佐美幻のことを見る彼女の様子を気にも留めることなく、彼女は片手にクローシュを被せたトレイを持ち部屋の中へとずかずか入り込んでくる。

 

「……何の用だ、宇佐美幻」

「神の恵みをォォ、ありがたく受け取れェェェ‼」

 

 一瞬何か毒物かと思い身構える。腕で顔を覆い何らかの攻撃に耐えようとするも…何も無い。むしろいい香りが鼻の中へと漂ってきた。

 腕の隙間から匂いの元は何なのかと見てみれば…――――。

 

「……ハンバーグ?」

「その通りだァ!……――――『【プライムバーグ】良く刻まれた緑色の野菜と挽肉を主原料としており、肉体疲労を解消すると共に免疫力を高め、未知の生命体による憑依・侵食攻撃をも防ぐ効果を持つ。\880(税込)』…さぁ、何度でも言おうゥゥゥ…、神の才能をありがたく受け取れェ‼」

 

 見下げ過ぎて逆に見上げてるイナバウアー姿勢になる天災的馬鹿。この時点でとんでもないものを開発してくれやがった宇佐美であった。冷静に考えて、食うだけでブラッド族対策になる発明とか、スゲーイモノスゲーイマッドなジーニアス以外の何物でもない。

 

「……とりあえず言わせろ。食べて大丈夫なのか?というか金とるのか。そして何故説明口調」

「安心しろォ……ピーマンで地球外生命体の脅威を無効化するだけの、ただの料理法だァ!惣万の料理の才能にはまだまだ届かないが…初めての作品で新たな技術を開発するとは、やはり私の才能は素晴らしいィィ‼」

 

 宇佐美はただ料理が成功したというだけでご満悦らしかった。シュトルムか誰かがこの場にいれば『いや、それ以上に人類にとって有益過ぎる技術なんですが…』とツッコミを入れたことだろう。

 しかし、そんなことより。マドカには聞き逃せない単語があった。ある意味でISと戦うよりも手ごわい…というか絶対に相手取りたくはないソレ。

 

「……ピ、ピ、ピーマン?」

「……あん?」

「ぴーまん……――――、……」

 

 それを、自分に…この織斑マドカである自分に食べさせようというのか?そんなことは、認められない!そう、断じてっ!

 

「……おい、まさか貴様…」

「ピーマンッ‼」

「…――――マジか、貴様」

 

 マドカは宇佐美でさえ呆気にとられるスピードで、亡国機業内の支給されていた部屋から逃走したのだった。

 

 …――――スコール・ミューゼル(オカン)の蠍の尻尾でとらえられて、プライムバーグを無理矢理食わされたのは、エムにとってトラウマになりそうだったのを追記しておく。




20代男性「いやさ、何かに恐怖する顔で俺の店に逃げ込んで来たのよ。『また何かやらかした』そう思ったね。それならいつものようにさっさと引き渡すつもりだったんだけど、追ってきたやつと目があった時に『アレは捕食者の目だ』って、思った瞬間逃げたね。追ってきたアレの姿をチラッと見たけど、アレは人の動きじゃない。アレの渾名の通り神話時代の生物だと確信したよ。まぁ、友人のおかげで助かったけど」
神(自称)「友人ではない!神だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼そして自称でもないッ!!!!」


あらすじ提供元:祇園様、どうもありがとうございます!

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。