IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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惣万「Σ(゚Д゚)」
宇佐美「………………どうしたスターク。前回の話の原稿握りしめて?」
惣万「いやっ……ちょ、おまっ……、これ……ッ、だってこれ、もろゴッドマキシマム……」
宇佐美「だから何だ?お前はヒノキの棒で魔王の城に乗り込むのかね?そんなことをするのは只の馬鹿だよ。舐めプなんかして新世界のエネルギーなんかになるなんて目も当てられないね」
惣万「……お前ウルトラ〇ンは初手でスペシウム光線撃てば良いとか思ってるタチだろ……」
宇佐美「当たり前だ、遊びでも仕事でも全力で。と言うのが私のモットーの一つでな。実験でも観察でも本気で取り組まなければ良いデータは期待できん!だいたいお前は何だスターク!料理やコーヒーは本気なくせに戦いとなるとすぐに手を抜く!そう言う所がなドウタラコウタラ(以下略)……」


惣万「………………ガチで説教された……取り敢えず第八十五話、どぞ……」



第六十五話 『ゴッド&天狐招来』

【יהוה(YHWH)】(神は言われた。)若しくは(「光あれ。」)【Τετραγράμματον(Logos)】(こうして、光があった)

 

 劇の開演の言葉を告げた宇佐美は、今回の観客(千冬)舞台(宇宙)へと連れてきた。

 

「何故だ……。何故一瞬でこんなところに……!」

「ん?この程度で驚くとは……今後心臓がもたないのではないかね?」

 

 ISを纏ったボディースーツの女性と、光輪を背負った白衣の女性が宇宙空間で会話する。仰ぎ見るべき月にて、地球を眺める宇佐美は事も無げに千冬へ声を投げかけた。

 

「?……待て、何故宇宙空間で音が聞こえる?何故会話ができる?ヤツからプライベートチャネルなど……ISの存在自体を感知できていないのに……!」

 

 戸惑いの中にいる千冬に優しげに怪しく笑う宇佐美。彼女は手を舞台俳優の様に動かしながら、立つ舞台の仕組みを教え始めた(人知を超えている能力を告げた)

 

「それは、私が宇宙の法則を書き換えたからだ。限定的に、だがね」

「………………は?」

「言わば、心優しい私の慈悲だ。さぁ……神の恵みを有難く受け取れ」

 

 手の平を前にゆっくりと押し出す科学者。自己陶酔した様に、ウットリと目を潤ませ自分の才能を祈る様に誇示をする。

 

「私の開発したゲームエリアを応用し、疑似酸素や人の生命活動に必要な要素を満たした疑似空間を……宇宙法則を無視して制作させてもらった。つまり、ISがあろうと無かろうと、今の地球上空域の宇宙空間では人間は地球と同じように活動できる」

 

 綺麗な手の平を差し出しながら彼女は嗤う(語る)。全ては神の才能を形にせんが為。宇宙すら凌駕し始める女神は、何者も追い越すことは不可能な次元に到達し始めていた。それは、如何な宇宙生命体すらも……。

 

「疑似空間内では呼吸も、体感温度も、圧力も、肉体感覚も地球上の一気圧の地点と全く同じ。違う事は、酸素がない事と重力が無い事、か。特殊中の特殊な事案だが、そんな貴重な戦闘データを期待させてもらおう」

 

 言葉を切った彼女は指を鳴らし、劇の役者の出番が千冬へと移った。

 

「出鱈目か……!」

「驚いている暇があるのか?空を仰げ、矮小な人間が及ぶ事無き遍く天の意思を聞け」

 

 千冬はふと何かの気配を肌で感じ、動物的な本能で周囲を探る。目を凝らすと、腕を広げた宇佐美の背後にて何かが煌めいた。

 

「……ッ!」

 

 彼女は慌てて手に持った葵改メを握りしめた。いかに世界最強であったとしても、迫りくるその脅威と対峙することは初めてであったのだから。

 

「ッ、流星群(・・・)だと!?」

「その腕……試させてもらおうか、ブリュンヒルデ」

 

 暗黒の天から雨の様に降り注ぎだす何十もの黒金の鉄塊。それら全てが、月面にいる戦乙女目掛けて吸い寄せられる。

 

「………………、ふん。舐めるなよ‼」

 

 

 だが。

 

 

―ギャリン‼―

 

 彼女は誰だ?力なき幼子か?誰かを思うしかできない弱者だったか?

 

 否。否である。彼女はこう言うだろう。私は世界最強だと。

 

 その名に一分の間違いなど無い。愛おしいものを守る為に力を求め、戦い続けた誰よりも強き、そして報われる(・・・・)事が無い、余りに強く儚い『天を舞う戦女(ブリュンヒルデ)』。

 

 そんな彼女は、頭上に迫った十メートル程の落下物を斬捨てられない女ではない。その全てを躱した。残り全てを両断した。彼女が通った場所にオレンジの軌跡が描かれる。

 

―ガラガラガラッ……‼―

 

 落石の様な音を立て、月面の景観を荒んだ者にする岩や礫。その合間を縫って青い機体が軽やかに着地した。目を細めて宇佐美は目の前の青い騎士を見つめている。

 

「…………、その気になれば斬れるものだな……こんな機会を与えてくれて感謝する」

「ふむ……地上の六分の一の重力下だとさらに身軽だな。では」

 

 彼女は再び指を鳴らした後、その手を真下に突き出すと………、月の重力(1/6)の分母と分子が(×36=)反転状態(6/1)になった。

 

「ッ……!」

「地上の六倍ならばどうだ。今の君には、さっきまでの三十六倍の負荷がかかっているはずだよ?」

「ぐぅ……」

 

 白衣のポケットに手を突っ込み、ふわふわと宇宙空間を遊泳する宇佐美。彼女のその眼は、本当に面白そうに眼下の観察対象(モルモット)を見つめていた。

 

「君の身体はなんてことは無さそうだが、ISにも致命的なダメージが蓄積しているのではないかな?君の事だ、分かっているとは思うが一応言っておこう。これも一種の攻撃だ、シールド・エネルギーをこんなところで消費するのは得策かな?」

「……。ちっ、気に食わん手を打つ女だ……束以上にイラつかせる……!」

 

 月面にめり込んだISの脚部、それを忌々し気な口調で引き抜くと、天を舞う禍つな蝙蝠を見据えて刀を構えた。未だ衰えぬ剣気を纏い、彼女は神が定めた重圧に抗い続ける。

 

「ふふ……、そうでなければな。身動きが取れない、など言ってくれるなよ。天を舞う戦乙女が羽根を捥がれた程度で戦えないなど、在ってはならんだろう?」

「……、私に翼が無くなろうと……」

 

 重力が裏返った場所。シールド・エネルギーを温存させる為にISの機能をほぼ全て停止させ、翼を捥がれた戦乙女。だが身体は定めに抗い続け、ようやく彼女は立ち上がる。筋繊維が弾け、末端の血管も何本か破裂した様だ。爪や片目から血の筋が流れ出す。だが、それでも……。

 

「飛ぶことができぬとしても、跳ぶことはできる‼」

 

 彼女の常人離れした肉体が悲鳴を上げても、その狂ったデウス・エクス・マキナへと刃を向ける。

 

「ハァァァァァァッッッッッ‼」

「……集え、束ね。日輪の神威を照覧あれ」

 

 突然、空間が歪む。まるで蜃気楼の様に視線の先が狂いだす。ガラス状に光が一点にて曲がりだす。その先を千冬は見た。何があった?

 ………………眩いばかりの太陽があった。

 

「……ッッ!」

「ぐぉっ?」

 

 空間を漂っていた宇佐美を踏みつけ、無理矢理その攻撃を躱しその場から『跳び』去った。刹那の後に、彼女の背後を極光が通り過ぎていく……。そして、慌てて下方を見れば、月面に大きなクレーターが発生していた。

 

「ISを停止させてもそれだけの力を……。身体能力だけでこの環境下を活動することにしたか……だがそれでは限界も近いぞ」

 

 月面でにやにやと笑い続ける宇佐美。次々と襲い来る太陽光線を上空で避ける千冬を、本当に喜ばし気に見上げていた。

 

「さぁ、対応しろ。適応しろ、世界最強。あらゆる世界の貴様を超え、さらにその先へ至るが良い……!」

 

 彼女はその様子を見て気持ちが高ぶり始めたのか、指を指揮者の様に掲げ千冬を指し示す。まるで、『彼女をより崇高な存在』へと至らせる様に……彼女の教師になったかの様に。

 

「もうお前の様な顔の人間に指図されるのはうんざりだ……‼」

「連れないな……まぁ良い。では一つ私の実験に付き合ってもらおうか。お前の返答は求めんが」

 

 何本もの光柱を避けきった青い騎士が月面へと戻って来る。もう既に重力が六倍になった環境下に慣れたらしい。動きも随分と機敏になっている。『予想通りだ』、とほくそ笑みながら、宇佐美は彼女に指を突きつけた。

 赤黒い極太の破壊光線が、音を超える速さで織斑千冬へと近づいていく。空間が歪むほどの閃光の一撃が、世界最強へと向かっていく。

 

 

 

「……ッ『零落白夜・終ノ構エ』!」

 

 

 

 だが、その光は斬り裂かれる。まき散らされる月の粉塵。周囲へと離散する毒々しい赤光。その奥から現れたのは………………全盛期を彷彿とさせる姿の『ブリュンヒルデ』だった。右手には先の戦闘で振るった『葵改メ』はすでに無く、夕焼け色の光を放つ脇差、『雪片・終ノ型』が握られていた。

 

「フフフ……フハハ……ヴァハハハハハハハハハハ‼面白い……、面白いなブリュンヒルデェ‼」

「………………」

 

 だがそれすらも、狂人の思想の中。悪夢という名前の迷宮。その出口の光すら見えない闇……まだそこに千冬は立っている。

 

「『武力』と『智力』……。身体から生まれる技術と頭から生まれる技術……。才能と才能がぶつかり合い、戦い合い、どちらが優れているか決着を即ける……。ガラでもないがこう言わせてもらおうか」

 

 ぎょろり、と目を動かして、口が裂けたかの様な笑みを浮かべた彼女は発狂する(叫ぶ)

 

「お前とのゲームは……面白いィ!!!!」

「ゲーム、だと……?ふざけるな……、お前は狂っている……‼この世界はお前の玩具ではない‼」

 

 激昂した千冬の怒りを見て、宇佐美は言っていることがおかしいと言うように真実を嗤いだす(突きつける)

 

「何を言っている。私達は圧倒的な『力』を持つ同類だ。『力』のベクトルは確かに違う。だが……狂っているのは正真正銘お前もだよ(・・・・・)、織斑千冬‼」

「ッッッ!?」

 

 両手を大きく広げ、その場を一回転した後に、彼女は千冬に指を突きつけた。

 

「愉しいだろうが、玩具()を創るのが‼玩具()で遊ぶのが‼強くなった気がして、誰かになれた気がしてなァ‼その証拠に……、何故そうも嬉しそうなんだ、ェエ!?笑っているじゃないか!!!!」

「!!!?……私が、笑っている…!!?」

 

 そう言って顔に手を当てると、感触が変だった……口角が弧を描いていた(信じたくなかった)

 

「何だ、気付いていなかったのかぁ?」

 

 宇佐美は同類を見て笑う。月面での戦いの最中、彼女はずっと千冬の顔を見続けていた。そう、織斑千冬は初めから笑っていたのだ。口角を上げ、獰猛な光を宿した瞳でどうやって宇佐美を『倒そうか(コロソウカ)』考え続けていた。命のやり取りを肌で感じ、そして互角に戦い合った彼女には分かっていたのだ。

 

―織斑千冬は……こちら側だと―

 

 千冬は、頭の中が白紙の様に漂白された。脳髄が引っこ抜かれて、冷水に浸された様な感覚さえし始める。

 

「ば……かな……。こんな事………………」

「初めてなんだろう?篠ノ之束よりも強い人間と戦うのは?……違う違うと言っても、剣を振るスピードも以前の戦闘データの比ではない。人の感情に敏い方では無いのだが、私から見てもとても楽しそうだよ?」

 

 冷製に分析を続ける宇佐美……。その時、彼女の見解の言葉を浴びていた人影が、突然消えた。

 

「………………!ごはっ……!?」

「ッッッ‼黙れ……ダマレ……‼」

「良いね。その力……。いや実に良い。……ゴフッ」

 

―ぼたぼたっ……びちょッ……!―

 

 青い機体が通り過ぎた後には、肩から腰に掛けてぱっくりと斬られた宇佐美の姿があった。辛うじて繋がってはいるが、右肩は月面に垂れ、右腕はピクリともせず砂の上の血の池に浮かんでいた。

 

「痛い……痛いなぁ……ハハハァ?袈裟懸けに切られると困るんだが。ほうら……胸が出てしまう」

 

 だが、彼女は痛みすら『苦痛』と感じていないようである。突如として宇佐美の身体が紫色に包まれた。光が集まり、びろんと垂れた半身を重力に逆らわせ持ち上げると、ボコボコと気持ちの悪い音を立て細胞が分裂し、接着する……。

 

―ゴキッ……みちみち……―

 

「ふぅ……」

 

 そしてすぐにいつもと変わらない狂った悪の科学者が立っていた。白衣やスーツは斬れたままだが、逆にそれにより、一層背徳さや淫卑さが際立っている。

 

「一瞬で再生した……だと?白騎士の生体再生能力の比でない……バケモノか?」

「うぅぅ~……っ、……やはり痛い。私は戦闘には向いていないよ。この痛みには慣れないな。死が近づくこの感覚…………。あはぁ……」

 

 そして突然両頬を染め、悶えるように顔を覆う目の前の狂った科学者。

 

「脳髄が蕩けそうだァァ……♡君は実に私の才能を刺激してくれる。フハハ……ッヴェハハハハァァァ……♡あぁ、発想が、インスピレーションが絞り出るゥゥォォ……。戦闘どころではなくなってしまうぅぅ……」

 

 内股で身体を淫卑に動かす宇佐美……涎を垂らしながら濁った眼で、千冬の姿を弛緩した顔で見続ける。傍から見れば気持ち悪い事この上無い。

 

 しかし、本人は気付いているのだろうか……織斑千冬は、その彼女を確実に殺そうとした。千冬はそれを恐ろしいとは感じなかった……、狂っているとも思えなかった。

 

 何故か?(タノシイ)どうして(タノシイ)……彼女(タノシイ)と同じよ(タノシイ)うに興奮(タノシイ)している(タノシイ)?この私(タノシイ)が…………?(タノシイ……)

 

(大丈夫だ……私はまともだ……。私は……コイツヲコロソウトシタダケダ……)

「あぁっ……ダメだ、興味が湧いてしまいそうだよ。……。だが、まだその時ではないんだ、残念ながらね」

 

 恍惚の顔をどうにか抑えた宇佐美。荒い息を抑えながら、白衣の切れた部分を整え肩に引っ掛ける。

 

「一先ず……。君を捻り潰すよ、ブリュンヒルデ。話はそれからだ」

「大人しくやられるほど、素直ではない……、ッ!」

 

 ただ、千冬は気が付かない。その決意は自分が再び戦える(殺しあえる)事に喜んでいるかのように沸き立っており……理性が本能によって快楽に犯されている事に。その言葉が再び琴線に触れたのか、宇佐美の顔も再び歪む。

 

「ヴァヒャハハハハハァッッッ‼」

「……、………………ッッッッはぁぁぁぁぁぁぁぁあああッッッッッ‼」

 

―ドォォォォォォォォォォン‼―

 

 二人の人外の戦いが再び始まった。それによって、月の裏側が半分程抉れたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 物語は佳境だが、時は少し巻き戻って……。

 

「せんちゃん?本当にこんなもの貰って良かったの~?」

 

 IS学園主催のコスプレ大会が終わった時の事、戦兎と布仏本音、そして付き添いでついてきた更識刀奈は屋上の戦兎の研究室(プレハブ小屋)『らびっとはっち』に集合していた。本音はこの後刀奈に学園内を案内し、少しでも何かを思い出してもらおうと思っていたのだ。

 

「あぁ、ファウスト対策としてIS学園で専用機製造計画が通ってね、オレが腕を振るいました!」

「お~…ありがとーせんちゃん~!」

「本音ちゃん……先生にニックネームって……」

「だって~、先生って感じ、しないし~。私生活ダメダメそうだし~」

「うぐっ……」

「メンタルも豆腐以下っぽいし~」

「がはぁ‼げぶるぁぁぁぁ‼」

 

 その言葉でトドメを刺されてたメンタル豆腐以下で私生活ダメダメな自称先生の大人の女性。スクラッシュドライバーみたいな声を出して地に臥せる。その身体から光の粒子の様なものが飛んでいくのが見えた……。

 

「……何この茶番……」

 

 売店でタピオカミルクティーを買った刀奈さんは、ちうちうとタピオカが詰まったストローを吸いながら冷めた目で二人を見つめていた。……記憶が無くなっても楽しくやってそうである。

 

「ほらー刀奈ちゃんあきれちゃったよ、……っ」

 

 その時だった。

 

―ドッガァァァァァァァァァァァン‼―

 

『『『キャァァァァァァ!?』』』

 

 女子生徒の悲鳴が響き、一目散にその場から離れていく。瓦礫が降り注ぎ、学校の廊下の天井が真っ青な大空と様変わりする。

 

「二人とも……大丈夫か!」

「うっうん、せんちゃんありがとー!」

「こちらも……大丈夫です……!」

 

 ホークガトリンガーで瓦礫を砕いた戦兎が安全を確認していた時……上空から聞いたことのある声が響いてきた。

 

「はぁい初めまして、更識刀奈(オリジナル)?そして可愛いお付きのかわいこちゃん♡おねーさんと、良いことしな~い?」

「「……!」」

 

 その人物の姿を見て言葉を失う刀奈と本音。なぜなら上空には、鏡で見たかのような顔を持つ女の子が佇んでいたのだから。

 

 ……、いや、それは別に構わない。いや構わないわけでは無いんだけど、何より絶句するに至った要因は別にある。その人物が着物姿で空中に浮かんでいるという事はつまり……下から中の様子が見えちゃうわけである。そして本音と刀奈達の眼には……その……、ノーパンの中身がモロ見えていたのである。女の子の小宇宙(コスモ)が【ブラックホールブレイク‼】(ふぅアブナイ。あ、続きドゾーbyスターク)

 

「「ナジェミセテェルンデェスッ!」」

 

 オンドゥル語になってしまった二人は悪くないと思う。特に刀奈なんて……自分の顔をした輩が露出狂(疑惑?)なので叫ばない方がおかしい。……この部分の記憶だけ喪失しないかな、と口走りそうになっていた。

 

「初めまして、因幡野戦兎。ほんっとおっぱいおっきいわね……スタークの趣味?」

 

 だが、見えているのにも構わずに『更識刀奈』と同じ外見の少女は言葉を続ける。にっこり笑った目の色は、深くて暗い地の様な赤い色をしていた。

 

「ブラッド・ストラトス……」

 

 戦兎は一瞬でその正体を察し、その種族の名前を口にした…………興奮による鼻血を出しながら。

 

「……あれ~……?せんちゃん~……?女の子もイけるクチなの……?ちょーっと待って両刀……?」

「……そんなあからさまにに距離取らないで……ちょっとだけ、ちょっとだけだから!先っちょだけくらいだからぁ!」

「言い方ぁ‼」

「たっちゃん記憶喪失だとツッコミ役似合うんだね!?」

 

 美男×美女もいいけど美男×美男もいいよね。美女×美女も。(いや、知らんbyスターク)

 

「あー、礼儀として……自己紹介から、かしら?」

 

 戦兎達のいつものペースで、登場のインパクトが薄れた『血の成層圏』のニューナンバー。『あ、どうぞどうぞ』、と言う風に腕を差し出す三人を見て、ほっと溜息をつくと、咳払いと共に不敵な笑みを浮かべて扇子を取る。そして、水気の多い唇とそっと開いた……。

 

 

 

「おっほん。私は七体いるブラッド・ストラトス、そのNo.06。個体名で言うならば『淫蕩(ルクスリーア)』の『血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)』よ。以後、よしなに~」

 

 

 

 そう言って【よろしゅう】と扇子に浮かばせる彼女。悉く代表候補生に似せた彼女達の序列に又新たな一騎が加わったのであった。

 

「『ルクスリア』……?」

 

 戦兎はその言葉に引っ掛かりを覚える。

 

「あら?先輩たちは言ってなかったのね?私達ブラッド・ストラトスは『父親』とも言える方から命の原が蒔かれる時、感情の相応しい部分も切り取り与えられるのよ」

 

 『父親』、とまた新しい情報を敵に与える血霧を振り撒く少女。扇子の文字もいつのまにか【出血大サービス!】と電光掲示板の様に文字が流れている。

 

「赤式が『傲り(スペルビア)』、血の雫(ブラッド・ティアーズ)なら『貪欲(アワリティア)』、緋龍(フェイロン)は『激情(イーラ)』……だったかしら?ま、要は『七つの大罪』よ。中々オッサレ~、な名前よねぇ?」

「へっ、中二病かな?」

「否定はしないわ。ぜーんぶラテン語訳ってのがなかなか……ねぇ。パパ様ってば大二病なところあるし」

 

 キセルを吹くようにボソッと言う彼女。

 

「『父親』って……スタークか?」

 

 たまらず問わずにはいられなくなった戦兎。後ろにまわした手の中には、ビルドドライバーがすでに収まっている。

 

「うっふっふ、それを知ってどうするの?」

「お前に聞きたいことが増えた。お前たちが父と……主と崇めるブラッドスターク本人についてだ」

「ふっふーん?」

 

 戦兎の眼には何か生まれつつあるのか、確かな覚悟が宿っていた。決意を持った彼女は更に質問を重ねていく。

 

「姿を自在に変える力、パンドラボックスの中身についても知っている。ヤツは一体何なのか……まぁ、話さないだろうな、お前は」

「分かってるじゃ~ん、流石腐ってもあのおっぱいウサギねぇ。……いやこの場合、『新鮮になった~』、とか言うのかしら?『生まれたばかり』で良く分からないのよ、人の言葉って」

 

 扇子の文字が、彼女の内心と繋がっているように【難解〜】と変化する。ふざけた態度によってその言葉が本当なのか怪しく感じるが……そんなことはどうでもよかった。戦兎の心は、決まった。

 

「なら無理矢理にでも聞き出させてもらうかな?」

 

 戦兎は丹田に黒いバックルを押し付ける。そして、片手に炭酸飲料の様な缶を握りしめた。だが、『赤い更識刀奈』はどこ吹く風。

 

「できるものなら、ねぇ?見たところ……そっちの隣の……布仏本音ちゃんだっけ?彼女も専用機、持ってるんでしょ?見せてよ」

 

 そう言って扇子を裏返して色っぽく顔の下半分を隠す。

 

「「!」」

「ほら~、お姉さんが二対一で良いって言ってるのよ。はっやくっ、はっやくっ♡」

 

 その言葉が琴線に触れたのか、布仏本音の目にも決意が宿る。狐の様にこいこいと手招きする自分の主の姉の紛い物。その様子を見て、いつもののんびりした仮面が剝がれる。不快感を抑えられるほど、我慢強い人間ではなかったようだ……と自嘲気味に溜息を吐く。

 

「……おいで、『九尾ノ魂・天狐』!」

 

 その瞬間、本音の背後から九本の黄金のビットが尾の様に生えだした。頭部には耳の様なヘッドギアが装着され、身体には一風変わったアーマーが装着されている。ISスーツを覆いつくすそれは狩衣や水干の様で、一風変わった布状の金属繊維であるらしい。伸縮性に富み、ダブダブとISのアームパーツを覆い尽くしている。全体的に金と白で彩られたそのISは、狐を……それも妖の王『九尾の狐』を思わせる外見であった。

 

 これぞ戦兎が箒と千冬の打鉄と同時に創り上げた第三世代機、『九尾ノ魂』。そして、『最適化が終わった瞬間に“天狐”へと三次移行した』使用者の事を第一に考えすぎたISである。

 

「んじゃ……オレも!変身!」

 

【ラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!】

 

 狐の隣に兎の科学者が並び立つ。その様子をただただ無言で見つめる『二人の刀奈』。その時だった。

 

「たっちゃん……」

「何……?」

 

 刀奈を楯無と呼んだ本音。そして、それを自分だと自覚しつつある『楯無(刀奈)』。主従関係は薄いが、大切な家族であることに、変わりはなかった。

 

「今のうちに逃げて……ゴメンね。こんな事になるなんて……」

「……大丈夫。私も記憶を取り戻してみせるから。絶対にね」

 

 本音が刀奈を庇いながら『血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)』と対峙する。今のブラッド・ストラトス(彼女)の興味は、オリジナルから眼前のISへと完全に移っていた。

 

「……中々面白いISじゃない?でも、使い手はまだまだこれから、かしら」

「……知ってるよ?だって専用機持ち初心者だもん。かんちゃんに比べれば、まだまだだよ~」

 

 そう言って流し目で横を眺めるブラッド・ストラトス。そしてその皮肉を弾き笑う狐の少女。

 

「うーん、じゃ。ハンデとして十分間、攻撃もしないでア・ゲ・ル♡」

「ふぇ?」

「んぇ?」

 

 男を淫らに誘うするような口調で彼女はそう提案する。思わず間抜けな声を上げざるを得ない狐とウサギ。

 

「頑張って攻撃一発でも当てられたら貴女達の勝ち、私は尻尾撒いて逃げるとしますっ」

 

 そう宣言して、【万歳】と書かれた扇子を天へと突き上げた。

 

「……舐めてるのか?」

「ちーがうわよ?私、頑張っている子、見ると応援したくなっちゃうのよ。あっでも素直には攻撃受けてあげないから、そこんところよろしくね?」

「………………無抵抗のたっちゃん顔した人と戦うの、罪悪感スゴイよ~……」

 

 ボソッと呟いたのほほんの発言を聞いて、顔をしかめる兵器の彼女。

 

「やれやれ、甘いのね~?」

 

 そう言った『血纏いの淑女(ブラッディ・レイディ)』は淫卑に胸元を(はだ)けさせる。左の乳房に、一匹の動物……色欲を司る『兎』のタトゥと共に、一つの数字が描きこまれていた。

 

「……、『7』?なんだその数字……」

「コレは宇佐美が決めた基準を参考に私達を序列させた番号よ。『枢要悪数』って言ってね?数字が小さいほど人間に対して優位に立てるらしいわよ?」

 

 ブラッド・ストラトスの数は現在判明しているだけで七体。それはつまりいやでもわかってしまう……。

 

「………………って、ことは……‼」

「私の殺戮兵力としての序列は『七』。つまり全体の最下位だからね?私に勝てないなら、この先厳しいわよ~?」

「っ………………」

 

 その言葉に今までBSと戦ったことが無い彼女は、戦慄を……そして不安を感じることになった。目の前のブラッド・ストラトスを倒すことができなければ、この先の戦いに、主の簪についていくことができないという事実を。

 

 そして、分かっていた。学園の一角の校舎をいとも簡単に吹き飛ばし、飄々としている彼女は『更識楯無』そのものであると。

 

「それじゃ、追いかけっこの始まりよ?攻撃を当ててごらんなさい?」

 

 ビルドと九尾ノ魂・天狐を見つめたまま、彼女は身体が変質する。着物は黒いボディースーツに、手に持っていた扇子は赤い槍に、風邪を受けて捲れていた着物は血の様な赤い飛沫に変わっていく……。

 

「転身、かんりょー!」

 

 布仏本音は息をのむ。その姿は更識刀奈が持つ専用機、それが血みどろになった禍々しいものだったのだから……。

 

「恐れるな本音ちゃん!……尻尾、使って奴を叩くよ!」

「っ、はーい‼」

 

 その返事と共に、何本かの尾のビットが変形しだす。

 

「三尾の太刀『錆釘』!五尾の大筒『春雷』!」

 

 更識刀奈の専用機『ミステリアス・レイディ』の蛇腹剣と、更識簪の専用機『打鉄・弐式』の荷電粒子砲の攻撃が、偽りの更識へと迫る。

 

 

 

 

 だが。

 

「………………………………単一仕様能力、発動。『馭者の山羊、(クローフィ・)沈まぬ星よ、(クローフィ・)極光を指せ(クローフィ)』」

 

 

「「!!?」」

 

 血塗れの淑女は、その姿を(・・・・)突如として(・・・・・)血飛沫に変えた(・・・・・・・)……。

 

 

『言ったわよね、素直に攻撃を受ける気は無いってさ?うふふ……うふふふふっ!』




戦兎製IS学園所属機図鑑

九尾ノ魂・天狐

 本音がデザインし、因幡野戦兎が組み上げたIS学園製の三大機体の一つ。待機状態は髪留め。本音との相性が良かったのか、最適化(パーソナライズ)が終了した瞬間に三次移行した規格外の機体。
 九つの尾に別々の武装が内蔵され、それらには主である更識姉妹の武装データが流用されている。何よりの特徴はその拡張領域(パススロット)の膨大さ。雪片弐型を格納しても十本は量子化させることができ、武装やパッケージ収納量も量産機随一のデュノア社製IS『コスモス』を凌駕する。その人海戦術ともいえるような手数の多さで最強クラスのISの一つ……なのだが使い手が未だ不慣れな為に強さは聊か落ちている。

武装
・貫けビット
 背部のバックパックに搭載された、狐の尾を模した刃の有線型ビット。九尾全てにディフォルトで装備されている。
・おみくじ
 みくじ筒型の武器であり、中から出た棒が「吉」と出るものであれば爆弾代わりとなって攻撃できる。吉~大吉と段階が上がるごとに攻撃力が増していく。凶ならばミス。

 以下九つの尾に基本装備される武装。それぞれを交換し、別の武装やパッケージを取り付けることも可能。
・一尾の要石『岩清水』
 ミステリアス・レイディの『アクア・クリスタル』の流用。これによって水を操る。ナノマシン出力は劣るものの、操作性が簡易的になり使いやすくなっている。なぜか最後に金ダライが落ちてくる。
・二尾の鉄扇『更科』
 主に防御に使用される鉄扇。しかし、布仏が整備科出身だからか戦兎の悪ノリか、ISの分解能力を持ち、条件さえそろえば敵ISをコアにまで戻すことが可能。表面の電子金属紙に刺激を加えることで好きな文字を表示することもできる。【妾の魅力でメロメロねん♡】【バリバリ呪うゾ!】【やっちゃえバーサーカー♪】とか書きやがった。その時箒と刀奈の頭が痛くなった。
・三尾の太刀『錆釘』
 データ元はミステリアス・レイディの蛇腹剣『ラスティー・ネイル』。
・四尾の槍『蒼流旋』
 槍と言うよりはドリルのような溝を掘った馬上槍。槍を突き刺すと、ナノマシン制御下の水を生み出しながら回転によって敵装甲を削り取る。二門のガトリングガンも装備されている。
・五尾の大筒『春雷』
 一門の連射型小型荷電粒子砲。
・六尾の薙刀『夢現』
 ナノマシン対応型超振動薙刀。槍内部の水を気化させることで高熱の刃を出現させ、対象を焼き切る。また、沸騰した水を放出することで周囲の大気を急速的に変化させ、蜃気楼を発生させることも可能。
・七尾の火矢『山嵐』
 八門の発射口からなるミサイルポッドから独立稼働型誘導ミサイルを発射する。データは簪が寄贈した。
・八尾の屏風『不動岩山』
 六本のポールから広範囲防壁を展開させる兵装。ポールとポールの間にバリアを展開してガードする。距離が伸びれば伸びるほどエネルギーを消費するらしい。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部
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