IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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惣万「イェーイ!第二回質問コーナー、はっじまるよー!」
惣一「っ!……っとー、いきなりのハイテンションでビックリした」
宇佐美「今回のゲストは『INFINITE・STARK』より石動惣一と……」
?「ヴェハハハハァ!檀ン…黎斗神『黙れェア‼』何をするか貴様ァ!?」
宇佐美「喧しいクソチートバグスターが‼歴史上の人物を戦わせるノベルゲーム創ってクリミアの狂天使キバーラで消毒してやろうかァアン!?」
黎斗「ヴェハッハッハッハ!?良い度胸だァ!?社長にもなれずちまちまと自作二次ゲームを創っているだけのニート風情がぁ……ゲームマスターに逆らうなぁ‼」
 ……オイトメロダレカトメロ
宇佐美「ヴィッヒッヒヒヒ……ヒャァァッハァァァ!?言ったな、言ってしまったな貴様ぁ!?ゲームマスターはこの私……宇佐美幻神だァァァァ‼デュゥン‼【エボルドライバー!】」
黎斗「ふざけるなァ‼私が神だァァァァ‼ブゥン‼【デンジャラスゾンビィ…!】」

<パイレーツ!ライダーシステム!クリエーション!カイゾクハッシャー!ニンジャ!ライダーシステム!クリエーション!ヨンコマニンポウトウ!
<ガシャコンスパロー!ガシャコンソード!

Wバカミ「「ウニャァァァァァァァァ!」」ボカスカボカスカ……
W石動「「……うちの神がすいません……いや、ホント」」
シュトルム「……。えー、では花蕾様からの質問です。ブリッツ、パネルを」
ブリッツ「はーい……よっこいしょーいち」
惣一「古っ⁉」

①キャラが別のライダーになるとしたら
②惣万がよく煎れるコーヒーの銘柄
③仮面ライダー問わず好きなアイテム(モバイルレンジャーキーとかネビュラスチームガンとか)

惣万「ふむ、①……これ俺王蛇かな?それかサガ。と言うか他の奴らも龍騎系列だよなぁ?(チラッ)」
宇佐美「うむ…私はナイトもしくはダークキバ……、いやダキバはリ〇ス・グレモリーっぽいから篠ノ之箒へ譲るとしよう。では……仮面ライダーブレン、いやゴルドドライブでも良いな」
黎斗「ほう……ブレンはもとよりドライバーが出ている為怪人でも許容しようか。しかし何故ゴルド?平成ライダーシリーズでも屈指のヒールを?」
宇佐美「他者の技術を流用して新たなものを創り出す……そして敵の武器を柔軟に利用し使いこなし、万能に戦うスタイルもまた才能の一つだ。私の様に(・・・・)『控え目で優しい人間』であったのなら世界から羨望されるまでの大天才であっただろうなぁ……ま、それでも神の才能を持つ者には及ばないがなァ!?」
W石動「「…………………………………………(絶句)」」
ブリッツ「私は~……イメージアニマルからガイかな~。あ、別にミートナイフで蟹刺さないよ~。若しくは死んでるしダークゴースト?ねぇさんは……イメージアニマル鮫だしアビス~?」
シュトルム「意外と知られてませんがアビスはシャチですよ……。軟骨魚類繋がりでライアでしょうか……。龍騎以外なら、……ダークドライブ?一応私の左半身ロイミュードの技術を流用してますし……」
惣一「ガイとライア、ね……姉妹でユナイトベントするのか?」
ブリッツ&シュトルム「「ヤメロォ‼」」
宇佐美「早速RIDER TIME 龍騎ネタを……。って言うか三人で乱交パー〇ィーしたらジェノサイダー産まれるのか?」



一方IS学園
戦兎&千冬「「……あ゛ぁん゛!?何か今スゲェイラッとキタ!?」」

―ドッガァァァァァァンンン‼―

シャルル「ってイラついたからって壁殴って教室繋ぐなよ先公共、しかも余波で青空教室になるって超人か?」
一夏「いやおまいう?」箒「一夏が言っちゃ駄目だ」セシリア「箒さん、日本最強の貴女もアウトでは?」鈴「アンタもダメよセシリア」
ラウラ「………………(ツッコミは?ツッコミはどこだ?)」キョロキョロ


惣一「……何かこの世界のとんでもない日常を見た気がする……とりあえずそっちの石動、②はどーだ?」
惣万「うーむ、そうさな……個人的に良く淹れるのは『チコリコーヒー』かな」
惣一「?なんだソレ」
惣万「チコリはヨーロッパのハーブさ。その根の部分を乾燥させたものを焙煎させて作るコーヒーだ……ま、厳密にはコーヒーじゃないんだが。俺は牛乳と豆乳を半分ずつ混ぜてカフェオレみたいにして飲んでいる。しかもノンカフェインで美味い……毎夜コレが無いとぐっすり眠れなくてな……。しっかし千冬に出すと酒で割るもんだから、微妙っちゃ微妙……肝臓機能回復効果があるのに……」(まぁ酒で割るのもおススメの飲み方ではあるんだけどね)
惣一「ほー……んじゃ俺も試しに淹れてみるか。ハーブティーの部類に入るから俺でも……」
惣万「あー……頑張れや、無理だろうけどな…(メソラシ)」
ブリッツ「エボルトでまともにコーヒー淹れられるのって惣万スタークくらいなんじゃ……?」
黎斗「ンンッ!では最後だ。仮面ライダー問わず好きなアイテムは?」
惣万「ライダー系のアイテムなら、ビルドならキルバスパイダーかな?まぁ変身者は如何なものだとは思うが……ん?」
惣一「おッげぅぶッしゃァァッッ!?(嫌い過ぎて嘔吐)」

【しばらくお待ちください】
―キルバススパイダー!―『キルバスパイダーに、キルバスパイダーフルボトルをセット!』『ビルドドライバーで、変身!』―キルバススパイダー!―『仮面ライダーキルバス!』『DXキルバスパイダー!』

惣万「(オータムが使うとか言ったらサルミアッキ殴ろう)……平成一期の一番はファイズ系の全部。スマートブレインのカッコよさは異常だろJK」
シュトルム「あー……分かる」
ブリッツ「デルタギアCSMおめでとー。……おっと?」
【斬月カチドキロックシード販売求ム。つかはよ更新しろ!メロネキ】
惣万「…………ゴメン。斬月千冬ごめんなさい……とりあえずこっちを滅茶苦茶進めたらで……。戦極ドライバーもゲネシスドライバーもイイよね!(あからさまなご機嫌取り)あとネオディケイドライバーも機能美が、な……」
黎斗「つまり不味い飴の二次創作の登場人物ライダーがお気に入りと……」
惣万「それ以外となると……あー、『魔弾戦記リュウケンドー』のザンリュウジンって知ってる?アレ結構好きだった。あとは『超星神グランセイザー』のナックルライザー、それと『ウルトラマンネクサス』のエボルトラスターだな。ネクサスはウルトラマンの中で一番好きだった。特にクリスマス回が鬱になるってアレで教わったぞ」
宇佐美「……惣万お前……」
ブリッツ「おー。リュウケンドーにグランセイザー……懐かしー」
シュトルム「でも蛇使い座のトライブ出てきませんでしたよね……おっと、そろそろ時間です。色々とこちらが一方的にしゃべってしまい申し訳ございません」
惣一「あ、っと、いいや。かまわねぇよ。こっちとしてもどーもだったな」
宇佐美「ヴェハハハハ!決着がつけられんのが残念だったなぁ‼まぁどうせ戦い続けたところで私の勝ちだろうがなァ‼」
黎斗「ヴェハハハハ‼随分と器用な女だなァ、目を開けたまま寝言を言えるとはァ‼」
宇佐美「あ゛ぁん!?」
黎斗「お゛ぉん⁉」
W石動「「いい加減にしろよお前らァ‼」」

【【スチームブレイク!Cobra…!】】

Wバカミ「「ギャァァァァァァァァッッッ!?」」【GAME OVER……】
W石動「「……おっほん、それでは第八十八話、どうぞ!」」


コンテニュー土管『ェエイキサマガナゼサキニデヨウトスルワタシガサキダ!』『ゲストノクセニナマイキダゾモヤシワタシガサキダァァ!』
ブリッツ「……………………(無言で漬物石を置く)」
コンテニュー土管『!!!?』
シュトルム「……意外に怒らせちゃ駄目ですね、ブリッツ……」



第六十八話 『ビギンズナイト 赤騎士事件』

 薄暗い部屋の中で、二人の人影が対話していた。

 

『はいーはいっ、お勤めごくろーさんダリル…、いいや、レイン・ミューゼルちゃん』

「へっ…よく言いますねぇ。貴方一人でもできたでしょうに」

 

 赤い影が揺らめき、“彼”は一人の少女から、金属のキューブを受け取った。

 

『そーかぁ?俺一人でやったらカンニング行為もいいところだろ。むしろ色々と怪しまれる』

「つーことは、俺は全てが仕組まれていることを誤魔化す為の使い捨てのコマ、か?」

『そーともゆー、これ見て醤油ー』

 

 手元に落とされた一枚の紙。それは……。

 

「……!亡国機業からの撤収命令?」

『お前が好きなタイミングで帰ってこいだとさ、ほら…どうするんだ?フォルテ・サファイアの事』

「……」

『…ま、取り敢えず俺は行かせてもらうわ。よくよく考えておくんだな』

 

 そして、足音が消えた。そこには、誰も残ってはいなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っは!?何か蛇野郎と筋肉バカに必殺技三連発喰らって爆散する夢見てた!」

 

<キルバスパイダー!

 

 どうやらあらすじで何かがあったらしい。別に蜘蛛だからと言ってオータムに破滅願望があるわけでは無いのだ。多分……。

 

「……ん?」

「えぇーっと……」

 

 ふと視線が在ったのに気が付いた。ドジっ子(悪の組織で重要機密を喋っちゃう)おーたむんがそっちの方向に首を動かしてみれば……?

 

「……」

「……えと。……」

 

 ビルド(兎)とビルド(蜘蛛)の目が合った。どことなーくいたたまれない雰囲気が漂うのどかな更衣室午後三時。…………うん、のどか、じゃないね。

 

「……」

「…、んだよ?」

「えっと、とりあえず……ぶーんかい!」

 

―ぴっかりんこッ!―

 

 アホみたいな音声と共にオータムの周囲が光で包まれた。

 

「え、ぇあ?……は?」

 

 オータムが混乱のあまり素っ頓狂な声を出した。まぁ当然だろう……間抜けな掛け声と共に背後に生えてた紫と白の蜘蛛の脚が突然光に還ったのだから……。

 

「いょっし!どうどうIS分解プログラム!すごいでしょ?さいっこうでしょっ!?てぇんっさいでしょーっ‼」

「っ、そーだったな、お前、IS開発者だったもんな!」

 

 正気に戻った蜘蛛冷蔵庫。吹っ飛ばされて気絶明けのガンガンと揺れる頭を振って戦闘を開始しようとする。……気絶している間にブラッド・ストラトスによって水爆が放たれようとしていたのは知らぬが仏である。……オータムェ。

 

「っと……さて。これでアラクネのクローアームは使えない、おとなしく一夏のベルトを返……ん?」

 

 今度は戦兎が目を点にする番だった。オータムの手には二本のボトルが収まっていたのだから。

 

【ハリネズミ!】

 

「大人しく、だぁ?」

 

【消防車!】

 

 手際よくボトルを入れ替え、スパイダーフルボトルを手に持ったネビュラスチームガンへと装填するオータムビルド。

 

【ベストマッチ!】

 

 二本のボトルを装填させた彼女は、ボルテックレバーの回転数を上げ始める……。

 

「あーそれオレのぉ!返せよっ‼」

「うるせぇ邪魔だ!」

 

【ファンキーアタック!フルボトル!】

 

 駄々っ子の様に口を挟んできた煩い兎に、蜘蛛は糸玉をぶつけて動きを止める。本音を言えば口も塞ぎたかったが、マスクに覆われていて不可能である。

 

「へびゅっ!」

「せんちゃん……」

 

 まるで子供のようにすっ飛んだ赤と青のビルド。

 

「のほほんちゃんが憐れみの目で覗いている…でも受け身取れたよオレ。蜘蛛と違って、蜘蛛と違ってなぁ!だからのほほんちゃん、褒めてくれてもいいんじゃないかな……」

「馬鹿はほっといて勝負だ、オータムー」

「……ぐすっ」

「…お前ら、実は仲いいだろ…」

 

【ファイアーヘッジホッグ!イェーイ!】

 

 何時もの様に児童後退しちゃっている戦兎をほっぽいてオータムは別のベストマッチフォームへと変身していた。赤と白の仮面ライダーがぶっ壊された天井を見上げ、そして呟く……。

 

「ここはとっととずらかるか……」

 

 そう言って片手の消防車を模した放水口を横薙ぎに払い、濃霧を発生させる。そしてハリネズミの拳を叩きつけ、クレイモアの様に地面から白い槍を射出する。

 

「えちょー……待ーッッ!?オレ縛られたまんまァァ……ぁぁん!?あ、お尻……お尻に刺さったッッ……あ痛い!」

「浣腸じゃなくて良かったね~?」

「慰めになって無いよぉぉ……ふぇぇんっ!」

 

 コレが稀代の天災の成れの果てである。……のほほんなんてこんな顔してる→(´・ω・`)

 

「え、えぇっと……取り敢えず担いで上行くよ~せんちゃん先生~?」

「ふぇえん…このままなのオレ…」

 

 蜘蛛の巣で巻き巻きされたウサギを抱えて追いかけるキツネ娘ちゃんなのでした、まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のアリーナ内。

 

「……、やっぱり一筋縄じゃいかないわよねぇ」

「存外粘るな……(まぁ、戦闘技量は学園最強とか言われている楯無さんの強化コピー版……単一仕様能力が強力になっただけの今の俺とどっこいってところか)」

 

 一夏と血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)は対面し合っていた。致命傷を与えようとするときに限って、それが読まれていたかのように水蒸気で出来た分身と入れ代わり死角から槍を突き出してくる等、一進一退の攻防が続いていた。

 

「よぉっと!……おぉこっちもこっちで大変だな?」

 

 その時だ、アリーナの下から仮面ライダーが飛び出してきた。

 

「!?ビルド……、でも声が戦兎さんとは違う……?」

「箒……あれは亡国機業のオータムとか言うおばはんだ」

「んなっ…、おばはん言うなァ!まだ現役じゃボケェッ‼」

「うっせぇ本当の美人は自分で自分の事美人とは言わねぇんだよ……ん?」

 

 ……言ったら兎っぽい名前の自称天才二人に特大ホームランバットが突き刺さったような……。ま、いいか。にんげんだものなぁbyいちか。丁度その時だ。地面に開いた大穴から、オータムを追いかけてきたのほほん&グルグル巻きになった戦兎が飛び出してくる。

 

「よっとー、うさちゃん一匹お届け~?」

「のほほんソレどうしたの!?専用機!?」

「せんちゃんせんせーに貰ったのだ~♪」

「その恩師を荷物扱いとは……やるようになったな布仏……」

「いーから誰かコレ取ってよ!?」

 

 かまってちゃんの様に地面をゴロゴロと転がる仮面ライダービルド(笑)。どうも最近戦兎さんが児童後退しちゃってるなぁ……と思う実の妹とその同級生なのでした。

 

『オータム、白式を取り逃がしたな……』

「……ぁあ?うるせぇガキ」

 

 一方ではすかさず罵り合う亡国機業の怪物たち。しかし、嫌い合ってるにしては息がぴったりであり、意外に名コンビであるのかも知れない。

 

「次から次へと……ん?」

 

 いつの間にか、地面を白煙が(なめ)ていた。

 

「煙……?」

「ってまさか!?」

 

 デジャヴを感じるシュチュエーションにて、はッと身構える鈴。たちどころに白煙が濛々と巻き起こり、聞きなれたトリックスターの声が瓦礫の中から聞こえてきた。

 

『これは皆さんお揃いで、“絶望の箱”は……頂かせてもらいましたっと』

「スターク‼」

 

 一夏の恋人と従兄の仇、血塗れの蛇『ブラッドスターク』。彼は白煙を煙突型の突起、『セントラルスターク』に吸引すると、彼は片手に持ったとあるアイテムを見せびらかす。

 

「!……パンドラボックスが…」

「クソッ!」

 

 いつの間にやら手中に収めていたらしい、戦兎の手によって研究が進んできたキューブを人差し指に乗せて回転させる彼。

 

『そろそろこれは返してもらうぜ?もともと俺のだしな……フルボトルの浄化も済んだろう?』

 

 顔を見なくても分かる。彼は面白そうに表情を歪めているに違いない。それが、すべて思い通りだと言うように……。

 

「…………パンドラボックスを使って何するつもりなんだよ……、世界を滅ぼして何がしたんだ……」

『おぉっと……お前がそれを聞くか?え?天災科学者。過去のお前が創ったものと…同じだ』

 

 トランスチームガンを突きつけ蛇は嗤う。その声音は途轍もなく平坦なものだった。

 

『ISはその特性から人類に差別を誘発した。弱いものと強いもの、それが兵器の有無によって明確に分れちまったのがこの世界……つまり“インフィニット・ストラトス”は“多くの血が流れることを想定し造られた兵器”と同じ存在なんだよ』

 

 事実、こう思ってるのは決して少なくない。普段は気丈に振舞う織斑千冬でさえ、強大な力を学生が振るう事を恐れていた。力を持つ者としての覚悟はしっかりと持ち合わせていた。

 …しかし。

 

『モラルも理念も無く、ただ自分の才能に溺れ後先考えず創ったのがアレなんじゃないか?宇宙開発?そんなものお前のエゴに過ぎない。記憶をなくし、客観的に自分の行いを見てどう思った。お前だって分かっているはずだ。天災(お前)の夢の行きつく先は、破滅だという事を』

 

 破滅…その部分を強調するかのように溜めてから言葉を放つスターク。仮面の下には確かな確信があった。まるで、彼がその目で見てきたかの様な口ぶりで。

 

 

 

『科学が進歩すれば、それだけ人間は退化し、環境は破壊され、世界は滅びる』

 

 

 

 それに、グッと口を噤むIS学園生徒たち。各々、誰もが『科学』の恩恵を受ける人間であるが故、その言葉は心へと深く突き刺さる……。何とか彼の論理の存在を否定したくて、でも唯々正しくて……、そんなジレンマの中で、正義の科学者になりたい女は、声を震わせた。

 

「ッ、ふざけるな……!お前たちは、どれだけオレ達を馬鹿にすれば気が済むんだ‼人はそんなに愚かじゃない‼人間の智恵は分かっている!だからきっと分かり合える筈なんだ‼」

『………………………………………………………………………………………………ならば、何故紛争は無くならない?』

 

 その言葉に頭を抱えるような大げさな仕草をすると……スタークはパンドラボックスを手放し両手を広げた。

 

「っ……、……それは……」

『分かり合えるのなら、子供が銃をとり同年齢の子を殺す世界がどうして許容されている?どうして自分が相手を殺さねば死ぬ惨状が絶えず繰り返されている?』

 

 それは、世界のどこかで必ず起こっている悲しい事。人間の愚かな智恵の産物。人間の愚かな拒絶の象徴。そして、蛇の過去を締め付ける『人としての罪』、その惨状……。

 

『何故人種や性の差別は無くならない?飽食する富裕層がいるのに、どうして貧民は飢死をする?貧困に窮し、人を殺めることでしか生きる糧が無い人間を、どう善悪で裁ける?……行き過ぎた科学は人を豊かにするが、人から思考を……そして倫理を奪っていく。人間はその智恵が仇となる。自分達こそが正しいと思いあがり、自然の摂理を解き明かそうとする代償に、すぐ傍にある大切なものを理解できなくなった。人間は、原罪(知恵)を得たばかりに、他と分かり合えない生命に成り下がったんだよ』

「……っ。おッ…お前なんかが……科学を暴力としてしか使えないお前が言うなッ‼本当の科学は……皆を助ける為にあるんだっ‼」

 

 泣きそうになりながらも、戦兎は虚勢を張り続けた。彼女は、そうする事でしか、自分を保ってはいられないから……。その様子を見た蛇は……哀し気に首を振ると、言った。

 

『何故そう言い切れる……お前は誰も傷つけてないとでも言うのか?違うよな』

「っ、……!」

 

 突然フラッシュバックするあの生暖かい罪の光景。相手が怪物になっていようと、事故であろうと、その行いは『正義』等ではなかった……。

 

 眩暈がする。冷や汗が出る。……気丈に振舞っていた何かが崩れ落ちそうになる。

 

『その良心の呵責、下らん感傷でお前が動く必要が何処にある?そんな思いで何かが変えられるのか?お前がした過去が。この差別が蔓延する現実が!弱い篠ノ之束と言う人間が!』

 

 何かを訴えかけるように、蛇はイヴに唆す。その赤き蛇(サマエル)が与えようとしているのは、生命の果実か?はたまた智恵の果実か……?創られた人間に、神が与えたのは絶望か?

 

「…………………………変わる」

『…………んん?』

「……変えて見せる!」

 

 はたまた、それは最後の奇跡か。

 

「それでも…だから、嫌だって分かったんだ!」

 

 どんな絶望が起こったとしても…パンドラが開いた禁忌の箱の底、たった一欠片であったとしても、小さな希望(エルピス)があったように……。

 

「もう沢山なんだよ……!たった一人の命があんなにも重いのに、目の前で簡単に消えていく……、あんな思いはしたくない、させたくない、背負わせない…!」

 

 その心は決して途絶えはしない。正しいと信じているわけじゃない……しかし。

 

「絶対に変える!オレは……変身してみせる‼あぁそうさ?オレ一人じゃ過去と向き合えないくらいに弱いけど、……でも!」

 

 間違っていると感じているから…そのヒーローはまだ立てる、彼らは何度だって立ち上がっていく。

 

「だから強くなりたいって、強くなろうって……箒ちゃん達を見て思ったんだ!頑張ろうって思ったんだ!お前には無駄だって馬鹿にされるけど、そんなことは関係ない!オレ達は……智恵がある!何かを学んで、人の心を積み重ねて!」

 

 希望から彼らが築き上げた絆は弱くない。個人個人がそうじゃなかったとしても。

 

「弱いから、脆いから!だから足搔いて、手を繋いで分かり合おうとするんだ‼待ってろ、ファウスト‼お前等のふんぞり返ったその鼻っ柱、今すぐにでもへし折ってやる‼」

 

 そう言って、天を目指した科学者は、地に足をつけ『悪魔の組織』に宣戦布告を叩きつける。今すぐにでも飛び掛からん程膨れ上がる熱意。それに敬意を表したのか、はたまたただの気まぐれか……ブラッドスタークも口を開いた。

 

『そぉか……できるかな?その、世界を汚した天災(篠ノ之束)から引き継いだだけの智恵で。精々絶望してくれるなよ……?』

 

 その瞬間、ブラッドスタークの身体から紅蓮の炎が巻き上がった。炎の中には怨嗟を、憎悪を叫ぶ人類の苦悶の表情が垣間見える様だった……。

 

『……さぁーて、撤収するぞ。さて、M。持っていてくれ。それは戦いを手早く終わらせる重要(じゅーっよう)なもんだからな。失くすなよ?』

『何……コレが、そこまで……』

 

 脚元のパンドラボックスを蹴って、Mの胸にパスをするスターク。Mに関しては手に持った箱にそれ程の力があるとは感じられなかった……まるで箱の中は既に空のような……。だが、これがもしそれほど重要であるのなら……。

 

『……承知した。これは私が届けさせてもらう』

『……?ん?おう』

 

 ……一瞬違和感を覚えたスタークだったが、彼はそれを見逃す事にした。……それが、計画通りだ、とでも言うように。

 

「おいてめぇ……良いのか?白式の回収ができてねぇぞ?」

 

 一方の赤と白のビルドとなったオータムは、上層部からの命令を思い出し、慌てて彼に声をかけた。だが……その返答は。

 

『俺の命令は亡国機業上層部の命令だ。実働部隊のお前らが覆せるものじゃあない……んじゃオータム、ボトルを寄越せ』

 

 暗に俺に逆らうと死ぬぞ、と言われたオータムは手にしたボトルを全てスタークに渡すことにした。

 

 

「へっ……おらよ」

『どーも、……。んじゃ、今度はお前等の持つフルボトルを貰いに来る、それまで精々強くなることだ……がんばれよ。応援してるぜ?』

「だから二度と来るなっつの……!」

 

 あからさまな悪感情を込めて一夏はそう凄んだ。否、現在消耗しきった彼等にはそれくらいしか手段がなかったのである。

 

『ハッハッハ!相も変わらずつれねぇなぁ……んじゃあな、Ciao♪』

「それじゃあねー、特に一夏君♡今度はおねーさんともっともっといい事しましょうねぇ♡」

 

 ふざけた口調で手を振り去っていく血塗れの二人。亡国機業の二人は呆れているのか、はたまた興味が無いのか伏し目がちな態勢で煙に包まれ……そしてIS学園から消え去ったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、大混乱の学園祭から数日経って……。ここは東都大学付属病院。

 

「えぇっと、406号室……ここで良いのか?」

「あぁ、千冬姉からもらったメモだとここだってさ」

 

 箒の発言に一夏は首を振って肯定した。彼は鈴と、それと何故か本音を伴い大怪我を負った親友『五反田弾』のお見舞いに来ていたのである。

 

「…………にしても、ここに来るまでが大変だったわ……」

「「…………」」

「ほぇ?」

 

 その原因の一つが首をかしげる。道中では、本音が持っていくお見舞いを大量の駄菓子にしてリアカーをシャルルに引かせようか迷ったり、ラウラやらシャルルなどからはた迷惑な善意のプレゼントを預かったりと、色々あって困った。

 

『戦友よ!コレを持っていけ。弾?だとか言ったな、あの勇気は磨けば光るぞ!』

『その弾ってやつ、近所ぐるみの付き合い何だよな?ならくーたんと一緒に遊んだことあるんだよな?(目がマジ)』

 

 …………ラウラ、お前一般人の病人にダンベルセットとコンバットナイフ上げるって何考えてんの……シャルルに至ってはフルーツ盛り合わせの果物の中に『くーたんの写真くれ(意訳)』って手紙添えるのやめーや、つかどうやって入れた?え、手裏剣の要領でスナップ効かせて投げれば傷跡残さず手紙が入っていく?ありえねーから。

 この時点で結構ゲッソリしている箒&一夏&鈴の常識人。特に一夏と鈴のライフはもうゼロ……(ゲフンゲフン)だが首をぶんぶんと振り気持ちを切り替える。

 

「……弾、入るわ……」

 

―ガラッ―

 

 ドンガラガッシャァァァン‼

 

 

「……よ……っへ?」

「………………」

 

 一夏は今すぐに目の前のドアを閉めたくなった。何とか平常心を保つために拳を握りしめる鈴……すごい勢いで手から血が噴き出しているが気にしない。箒なんかはちょっと胃に穴が開いた気がした。目の前でいらん世話焼きをしてる布仏姉と弾、それを冷めた目でチラチラ見ている彼の妹……。結構な場面に来てしまった。

 

「ちょ、虚さんもういいっすから……もういいからぁ‼」

「何言ってるんですか!貴方の身体がそうなってしまったのは私の不注意もあったんです!大人しく世話されてください!ほらトイレにも行けないでしょう?」

 

 そう言いながら尿瓶を持って迫ってくる眼鏡の女の人……、うん。弾……。

 

「……マニアックな性癖が?男の子はそーいうのが好きなのか?(思考箒…ジャナカッタ放棄)」

「オイ待て箒?何思ってそれ言った?俺怒らないから話してみ?ん?」

 

 首をこてっと傾げ、無邪気な死んだ眼で邪な事を考えているポニテ大和撫子。一夏はむんずと頭を掴み壁際に彼女を連行していった。……壁ドンしてるが全ッ然色気が無い。だがそんな事言ってられない。頑張れ一夏。今お前は男子の貞操観念を代表して物申してくれなきゃ目も当てられないぞby弾。

 

「……まぁ介護じゃねぇんだし、高校生になって下の世話されるのってやでしょうね……ん?」

「……」

 

 鈴がカオスになった病室でコメカミを揉みながらさり気にフォローをしてみれば、大騒ぎする人間達の中で、うっすらと微笑む少女がいた。

 

「おい、どしたののほほんさん、そんな嬉しそうな顔して……」

「え……私嬉しそうな顔してた?」

「えぇ」

 

 本人は自覚がなかったようであるが、本音はほんのり頬を染めていた。

 

「……あ、そっか……」

 

 そして、彼女ははたと思い至る。

 

(……やっぱり、おねーちゃんはこうじゃないとね……ふふ)

 

「うん。そっか……私、そっか……」

 

 やっぱり、記憶をなくしても……おねーちゃんはおねーちゃんで、それがたまらなく嬉しくて……そんなおねーちゃんの助けになりたくて……。

 

(『おねーちゃん』が戻って来るのがいつになるかわからないけど…………それまで、私がかんちゃんと……学園をできる範囲で支えなきゃ……ね)

 

「なら。おねーちゃんみたいに、私も少しでも……前に進まなきゃいけないね~……」

 

 そう言って、更識の懐刀の一人は静かにその手を握ったのだった。

 

 

 

 一方。ようやく人間がドアから入ってきたことを察知した弾。

 

「っ、おぉ一夏に鈴‼良い所に来た‼たっ助けてくれ⁉」

「いや、病院(ここ)患者を助けるところなんだけど…………」

「あぁそうだね……ってそうじゃなくて!俺をトイレに連れてってくれ‼」

「うるせーよいつまで下ネタ続けるんだよ」

 

 そんなバカ騒ぎをしていたからだろうか。どこかから…………ぷちっ、とか言う音が聞こえた。

 

「…………ッッだぁぁぁーッッ‼るっさいですよ皆さん‼おにぃ大怪我してるってぇのに騒ぎすぎですッ‼それにみんな仲良くイチャイチャイチャイチャ‼患者(と私)を興奮させないでくださいッッッ‼」

「「「「……ッ、ぉ、ぁあ……す、すみませんでした……?」」」」

 

 妹、怒髪天。あーあ……怒られちゃった(レーザーターボ感)。

 

「つか何ですか虚(?)さんとか言いましたよね貴女!?なんでそんなにベタベタおにぃにくっついてるんですか暑苦しいんですよ‼とっとと離れてください、そのままじゃおにぃ動きづらいでしょ‼」

「…………別に構わないでしょう?同じ病室に運ばれてきた命の恩人なんですから。それにこれは無理のない範囲のお手伝いです。まさか善意でのお世話を余計、だとか言うのですか蘭さん?…………姑ですか?」

 

 その途端、赤髪のバンダナ少女は顔までトマトの様に真っ赤っか。沸騰したヤカンの様に耳から蒸気が出てきている……。脳味噌大丈夫か?

 

「なっ……べ、別にそんなんじゃねぇしッ!?こンの馬鹿兄が誰とくっつこうかじぇーんじぇんかんけぇねぇしッッ‼あ、そーだアイス買ってくるッッ‼夏終わったのに熱いねーっハッハッハーッッ‼」

 

 ズビュン……ッ‼(←突っ走る音)

 

「「「「「………………………………………………」」」」」

 

「…………素直では無いのだな」

「ほんとそーね」

 

 箒さん、鈴さん、アンタらそれとんだブーメランだから。まぁ包帯箒が投げて原作のモッピーに激突する露骨な攻撃だが。S・U・Z・Uが地雷そこら中に埋めて何も知らない酢豚が引っかかる位の悲惨さだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 秋が近づき、日が闇に飲まれるのが早くなる。澱み、汚れた外気に塗れる日本の空に星の光は届かない……。涼しい風が、その女の頬を撫でた。

 

 

………………そう、か。世界は変革を拒むのだな……。

 

 眼下に望む黒い海が凪に惑う。その女には、遥かな成層圏(そら)から見下すような視線で水平線を見つめていた……。その、血の様に赤い怪物の目で。

 

愚かな生き物だ、人間というヤツは。愚者も、賢者も、天災も。知恵を持ったが学ぶことを知らない……見ていて実に哀れで矮小極まりない。

 

 彼女の目には、見得(みえ)ていた。空と海の境界線、血に塗れた成層圏でつながった愚かな世界を。潮騒と戦乱の兆しを運ぶ風が通り過ぎた。彼女の髪が夜の帳の中を艶やかに流れる……。

 

だが、そんな存在を見ていてもエボルトは煮え切らない……世界を滅ぼさなければならないはずが、余計な血を流す事を忌避している。

 

 頬を引きつらせ、彼女は嗤った。そしてコップを掴んだまま、赤い光でドロドロに溶かす。

 

あぁ……どっちつかずな男だ。見ていて不愉快極まりない。始末に負えんな……ならば、一つ私が背中を押してやろう。

 

 ぽた……ぽた……、と手から零れ落ちていく液体となったガラス。海に向かって硝子の雫を振り払うと、そのままその手を天へと突き出した。

 

そうだな……あぁ、こんなのが良い。十年前の再来という事で、“赤騎士事件”とでも名付けてもらおうか。

 

 その心の声と共振するかの様に、手から放たれる紅蓮の光は輝きを増し……、そして。

 

『さぁ、来たれ。始まりの歌を。破滅の序曲を』

 

 ―次に第二の封印が解かれると、第二の生き物が「来たれ」と叫んだ。すると今度は、赤い馬が出てきた。―

 

『BSコア・ネットワーク封鎖、疑似回路展開……“コード・ブラッド”、限定発令』

 

―そして、それに乗っている者は、人々が互いに殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許された。また。大きな(つるぎ)を与えられた。(「ヨハネの黙示録」第6章第4節)—

 

 

 

「「「「「「「!!!!!」」」」」」」

 

 

 

―呼ばれた……呼ばれた?そんな権限があるものか?—それはおかしいですわ……!―だけどこれは間違いなく本物よ……!?―僕らに命令するというのか、……見下すなよお前……‼―(ガツガツモグモグ)―………………めんどくさ、寝よ…―一体どんな人間なの、私たちの支配権は誰にもないはずなのに……、どうしてお父様にもできない『コード・ブラッド』を……!?―

 

 赤い蛇の血と感情を切裂いてできた『血染めの成層圏の生命体』の喚く声が聞こえた。だが、彼女はただただ淡々と赤い目を光らせた……。

 

……行け。

 

 和服を揺らして天を仰ぐ。

 

私に悲哀を、我々に怨嗟を。この大地へ滴り落ちる血と共に、深く心へ染み渡らせろ。

 

 ずずず……。ずずず、と気持ちの悪い音が地中深くから鳴り響く……。

 

流血を、暴力を、差別を、混乱を、憎悪を、恐怖を、殺戮を。愚劣なこの世界に刻み込め。

 

 この星に刻まれた人間の死、その時に流された血が溢れ出ているような様な光景だった。

 

そして、世界に知らしめるのだ……。篠ノ之束が創り出したものは、取り返しのつかない殺戮兵器だったのだとな。あぁ、わくわくしないか?因幡野戦兎の心の奥で、あの天災の顔が歪むのが……私は、私は待ちきれないんだ。

 

 くるり、くるりとその場で演舞する女。瞳の奥に揺れる三つの数が、邪悪に残像として夜の帳に残っている。

 

私は、人の苦しみによって進化する。お前たちもそうだろう……。エボルトの現身達よ?

 

―……貴様は一体何者だ……―

 

『クック……世界を正しく破滅へと導く者。篠ノ之束の夢を無に帰す者。名前はそう……』

 

 

 

 

 

今はまだ……『枢要獣数666(トライヘキサ)』とでも名乗っておこうか?

 

 

 世界中で赤い徒花が散る。月夜の中で、その女は引きっつったような笑みを浮かべたのだった……。

 

 

 

 

 

 数時間後……。UKで午後二時……。

 

 始まりは、一滴の血の雫だった。空からそれが降ってきた。

 

「(?……!?何だこりゃ……!?)」

 

 混乱の声を上げる街の人間。ざあざあと、鉄臭い赤い水が地を叩く。そのエリアを統括する『裏側』の人間は、いらいらとした様子で葉巻を咥え外を見た……。こんな天変地異は聞いたことが無い。

 

「……(全く……ん?)」

 

―ぐしょっ……―

 

 突然、『目』の感覚がなくなった。

 

「……■■■■■■■■■■ッッ!?」

 

 イイヤ、その言葉は誤りだ。傍から見れば……巨大なバスターソードで頭部がミンチ状になりすっ飛んだのだから。

 

「おや……ただ剣を振っただけですのに……死んでしまわれましたね?」

 

 その傍に立っていた金髪の女の正体を彼が……いいや、彼だったモノが知ることは終ぞなかった……。

 

 

 

 

 その女はそれを背負って、建物を……そして人の命を飴細工の様に砕いていく。

 

「ちょいさぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァッッッッッ!」

「「「!?」」」

 

―ドッガァァァァァァンンン‼―

 

 狂おしいほどの喜びと共に振るわれた赤い大剣。赤い水滴が金髪から滴り、縦に裂けた瞳孔が薄暗い部屋の中にいた男女たちを舐る様に観察している。あまりの素っ頓狂な掛け声に周囲の黒服達は拳銃を構え、襲撃者を撃退しようとするが……。

 

「足りない……まぁだ足りなぁぁい!欲しい、欲しいのですよわたくしはぁ!味も、色彩も、金も、名誉も、愉しみも、憎しみも、苦しみも、悦びも!ありとあらゆる全てをわたくしのモノに!」

 

 血の雨の中から現れたのは、イギリス代表候補生と瓜二つな怪物は、人間に恐怖を与える前に、滅びを謳った。

 

 

「この世全てはわたくしのもの‼『星統べる全能の欲(グリード・オブ・レグルス)』ゥゥ‼」

 

「……え」

 

 その言葉は、誰のものだったのだろうか。悲鳴を上げる隙も与えずに、その町は地図から消え去った。代わりに、半径三キロを超える巨大なクレーターが創り出されたのであった……。

 

 イギリスの地方都市の一つで、約五千人の命が、一瞬で消えた……。

 

 

 

同時刻、中華人民共和国。

 

―ドッガァァァァァァンンン‼―

 

「「「!?」」」

 

 ここは地図には存在しない島……。中国全土から集められた危険度が高すぎる犯罪者が収容される特別な刑務所。そのISでも破壊できない堅牢な扉が、木っ端微塵に砕かれた。

 

「ふん…『血の雫(ブラッド・ティアーズ)』の奴ったら。何処にいるのか知らないけど慎みのかけらもないじゃない…。強欲、ブラックホールみたいに吸うだけ吸って自壊するだけの愚かな感情。ますます以て下らない」

 

 こつん、こつんと静かな足音で巨大な牢内に入って来るサイドテールの女性。凛とした声と共に残虐な本性が見え隠れしている。

 

「囚人の皆様。柘榴となって死ぬのはお嫌いかしら?アタシ、優しいからね。単一仕様能力使わずに地獄に送ってあげるわよ?」

 

 

 

 それから数分間、四方を海で囲まれた箱の中からは阿鼻叫喚の血塗れ五重奏が奏でられた。その逃げ場のない牢屋は、文字通りの彼等にとっての墓場となったのである……。

 

 数々の悪行を働いてきた人間に同情などできはしないが、三千人近い人間が、男女の形を留めず、血の海に浮かぶ肉塊として生命を終えた……。

 

 

 

同時刻、フランス共和国。

 

「…き、さまぁ…!ッ、ひっ!?ギャァァァァァァァァ!?」

 

―どさっ……―

 

 廃墟のようになったビルの中。デュノア社と通じていた女性権利団体のIS使いが、一人、また一人と殺されていく。最後の一人となった女性は、美形な顔を歪めて、汗で額に張り付いた黒髪を揺らし逃走する。

 

「くそっくそっ‼勝手に死にやがって役立たずが‼……殺す……絶対死なねぇんだよ私は‼殺す‼ゼッタイ私は生き延びて……‼」

「……あぁん?」

 

 その時だ。襲撃者から殺意と共に、途轍もない赤い波動が放たれ、空間を激しく歪ませる。

 

「ひっ、ぃ……!?」

 

 

「クソ人間風情が?僕から?逃げると?……どいつもこいつもバカなのか⁉『クロノ・サテライト』‼」

 

 

 その途端、崩れ落ちる瓦礫の動きが、停止した。

 

「え……な、何……?きゃっ!?」

「アッハッハッハ~?つぅかまえたぁ?」

 

 見てみれば、ISを挟み込むように巨大なオレンジ色のクローが鋏の様に開いて彼女を拘束している。

 

「それじゃぁ……死んでもらおうかな?良い声で啼いてよ?怖い、苦しい……その感情が僕たちの糧になるんだからさぁ?」

 

―チュイィィィィン……!―

 

「ひっ……?」

 

 無謀の仮面を見つめるIS乗りは、絶対防御を貫いて迫るシザークロー……そして刃の部分のエネルギーチェーンソーを見て、顔の穴から液体を噴き出し、みっともなく喚きだす。

 

「やっ……ヤダ!?やだやだやだ!?死にたくない‼死にたくないよ、ママッ、待って助けて、たっ助けて……!や゛め゛て゛ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!?」

 

 …………だが。

 

「あーっははははァ!どうしたのかなぁ⁉今頃頭の中の走馬灯じゃ、ママのおっぱいでも吸ってるんじゃない?オムツ替えまちょーかおじょーちゃまァ⁉僕さぁ、執念深いからさァ!解るんだよねぇ!死に際にもがく人間の心ってやつがさァ!」

 

 恐怖を煽る為にゆっくりと迫ってくるソレを、精神崩壊を起こしたのか、子供同然に喉を嗄らして必死に叫ぶ。縋り付く。

 

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ、っぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァアアアアアアア゛アア゛アアア゛アッ!?【Gyyyyyyyyyyyiiiiiiinnnnnッッッ‼】アッッギャァァァァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛イ゛イ゛タ゛イ゛ィィィィィ…………」

 

―チュイィィィィン…………―

 

 時が止まった空間に置き去りにされた心が壊れたオニンギョウ。そして、更に悪い事に、『この世界』は時が止まったままである為、現実世界でなければ死と言う時が訪れることはない…………。

 

【イタイ……イタイヨ……クルシイヨ……ダレカ……ラクニシテ……】

 

 声も出せない肉塊になった元女の意識だけがその空間を漂い、そしてブラッド・ストラトスのハザードレベルを高める養分となった……。

 

「ふぅ、やっぱりこうした方がコスパが良いね。もう二、三人こっちに引きずり込んで糧にさせてもらおっと♪」

 

 

 同時刻、ドイツ連邦共和国。

 

 ここは、『表向き』には新薬を製造する比較的有名な医療メーカー……。その上空に星狩りの一族である堕天使がいた。

 

「……匂うな、あぁ、食欲をそそる良い匂いだ……。命が失われるときに恐怖を紛らわす脳内麻薬、死後硬直が終わった後の柔らかい肉……それが織りなす香しい死の匂い!」

 

 『赤い雨(ローター・レーゲン)』は眼帯を外し、べろりと舌なめずりをした。上手く誤魔化しているようだが、彼女にははっきりと分かっていた。残虐な流血と、矮小な悪意の臭い。すると、どこかから無邪気でくぐもった声が聞こえてくる……。

 

『アー…ハラヘッタァァァァァァ‼』

「おっと……黙っていろ、まぁ空腹感を共有しているのでわからない事も無いがな」

 

 その声にやれやれと頭を振る『赤い雨(ローター・レーゲン)』。とはいうモノの、彼女も頬を伝った涎を拭うのを隠しきれていない。

 

『ワタシタチハ暴食ダヨ?コレコソガワタシタチノ存在理由ダ。運ヨク今ハ制限ハ無イ。いりーがるカラノ干渉モ、コウイウ時ハ悪クナイナ!』

「……そうだな。では喰らおうか」

『アァ、ソウダ。えぼるとノ能力ヲ色濃ク受ケ継イダワタシタチノ力ヲ見セルトシヨウ』

 

 

 

「此度の食卓は影を喰おう、『心奪う星喰らいの暴略(ペルソナイーター・バテン・カイトス)』」

 

 

 その瞬間、大地は抉られ、噛み砕かれ、生物、無機物、機械やデータに至るまでが『赤い雨(ローター・レーゲン)』の腹の中へと納まった……。

 

 

 

同時刻、アメリカ合衆国。

 

「………」

 

 とある摩天楼の先端にそれはいた。寝袋を被った眠たげなその顔を、絶えず光り輝く鬱陶しい街へと無機質に向ける。

 

【これマ?私気持ちよく寝てたのにザケンな(^ム^#)人間がどーなろうとアタシ関係ないし、眠いし起こすなし】(カチャカチャ)

『うっちゃん……』

 

 耳元から聞こえてくる声。これもまた彼女にとっては鬱陶しくめんどくさい要因の一つだった。姉妹ごっこをする馬鹿女の脳内へタイプした文章を送りつける。

 

【姉面すんなし】(カチャカチャ)

『えっ!?何反抗期!?うっちゃんが冷たい!ひーどーいーよぉ⁉』

 

 あぁ……本当にめんどくさい。考えるのもめんどくさい。怠惰である。指を動かすのも声を出すのも面倒である……。

 

「……」

【なら代わりにノルマの人数殺してくれない?あっしテキトーに扇動しとくからテロとかで被害増えるでしょw上手くいったら姉妹ごっこも付き合うかもネ┐(´д`)┌ヤレヤレ】(カチャカチャ)

『ほんとっ!?分かったわ!お姉ちゃんに任せなさい!』

「…………チョロッ」

 

 残虐性、凶暴性を含んだ文章をタイピングし『血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)』へ送信するや否や面倒事を引き受けてくれた馬鹿な同位体を嘲笑う水色髪の少女。そして、渋々ながらな様子で眠たげな眼を擦りながら赤い目を邪悪に光らせる……。

 

【んじゃとりあえず核保有国に水爆二、三発ずつ撃ってきて。したらば私の単一仕様能力で火種増やすからヨロ】

 

 そして、空中に投影していたキーボードを消すと、初めてまともに口を動かしその能力を発動させた……。

 

「あー、シナリオ考えるのもめんどくさ…『三参宿四天降ル(驕レル者終ニ滅ビヌ)』」

 

 

 

 同時刻、ロシア・その他の国々……。

 

 早速特殊能力で転移してきた『血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)』。彼女は無邪気な顔でランスの先に膨大なエネルギーを集束し始める……。

 

 

「さて、“お父様”の命令じゃないけどやらなくちゃ…はて?なら指図される筋合いはないのでは……?ま、いっか!『馭者の山羊、(クローフィ・)沈まぬ星よ、(クローフィ・)極光を指せ(クローフィ)』♡」

 

 

 それから数時間の後、核兵器を持つ世界各国にアンノウンタイプのISが水爆を落としていった……。そのことを知った国民たちは疑心暗鬼に駆られることになる。今の政府は何を考えていたのか?どこの国が攻撃してきたのか?ISはアラスカ協定で軍事利用されることは無かったのではないか?……その混乱は恐怖を呼び。恐怖は過度な防衛本能を呼び覚まし、人々は理性を失ったかのように暴走を始めた……。女尊男卑の社会で抑圧されてきたエネルギーが、恐怖から身を守ろうとするエネルギーが、行き場を求めて世界を駆け巡る……。まるで、誰かに(・・・)指示されて(・・・・・)いるかの(・・・・)様に(・・)

 

 

 

「……私以外のブラッド・ストラトスを限定的な支配が可能となる存在、か……。記憶や行動原理の書き換えのレベルではないが、このままでは危険だな。帰ってきたら一旦全てを再調律させる必要がありそうだ……」

 

 小柄な体躯のブラッド・ストラトスがモニターに映された世界情勢を目で追っていた。コレを機にさらに過激なテロリズムに走る女性権利団体。一方で恐怖を覚えた組織は自ら投降、活動の停止を宣言していた。そして、核保有国間は『一体どの国が攻撃をして来たのか』と言う火種によってあっという間に関係が瓦解、疑心暗鬼に捕らわれた国民たちと、他国からの軋轢。非難の声が殺到し、理由が無い悪意が人々の心を覆い尽くし出す。世界大戦の兆しすら見え始めていた……。

 

「どうするのだろうか……なぁスターク様、我が父上よ。これすら、貴方は背負うというのか?世界全ての悪意を背負って、貴方は何を成すというのです……」

 

 

 その日を以て、世界は再び混乱を迎えた。世界を巻き込み、本当の戦争が巻き起こる……。そう、人間達は思い至る。ISは……『ただの兵器でしかないという事を』。

 

 

【挿絵表示】

 




宇佐美「……ワクワクソワソワ」
惣万「おいシリアス展開だったじゃん、急に何?……あいつ何してんの?」
シュトルム「あー……思いの他『仮面ライダーブレン』がカッコよかったのでドライブ全話見てテンション上げてるみたいですよ」
ブリッツ「武器がサングラスラッシャーってわかってるね~。やっぱアイデンティティだし~」
宇佐美「私も伊達メガネを新調しようか……ふふ」

惣万想像中(ホワンホワンホワン………………)

惣万「……メガネ宇佐美……、意外に似合うかもな……」

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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