IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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赤式・血羅「第三回質問コーナーだぞ、スターク!最近さぼってばっかじゃん」
惣万「おうリリネッ〇。俺の出番少ないってか、あとでお話な?さてさて、今回のゲストは通りすがりの錬金術師さんの作品『EVOLTEC LYRYCAL 』から……」
香帆「初めまして、高町香帆です!あ、これがお裾分けで……、それとお茶請けの和菓子ですどうぞ」
宇佐美「ふむ……コーヒーといちご大福か……、ガァッは!?ごっふぶっへ!?なっ、何だゴレバぐっふ!?」
香帆「え、えぇ!?宇佐美さん大丈夫ですか!?」
惣万「……やっぱりエボルテックコーヒーか……」
宇佐美「……ちょっと頭を冷やそうか……おげげげ……」
赤式・血羅「それじゃこの人は放っておいて、進めよっか」
香帆「え……あ、はい!それじゃ頂いたお手紙を読ませて頂きます……えぇと『ブラッド・ストラトス達の趣味と特技が知りたいです』とのことです」
赤式・血羅「成程、だから私がここに初登場と言うわけか……では答えるよ。みんなの趣味は一貫して『人間賛歌』だ」
香帆「……っへ?(←ブラッド・ストラトスの所業を読み返した人)」
赤式・血羅「まぁ『這いつくばった人間の諦めない様子』、ってトコロに華怜さを見出す奴がいれば、『自分がその花を摘み取って匂いを嗅ぐ』のが好きって奴もいるけどね……。前者は緋龍(フェイロン)とか血霧の淑女(ブラッディ・レイディ)、後者は朱の疾風(ラファール・ヴァルミオン)赤い雨(ローター・レーゲン)ってところかな」
惣万「……そういうお前はどうなんだ?」
赤式・血羅「さぁ……どうでしょーね、スターク。そして私たちの特技はスタークから引き継がれている。私はコーヒー淹れるのが得意だし、血の雫(ブラッド・ティアーズ)はイタリア料理とかが得意だった……。絵が得意なヤツとか歌が得意なヤツもいて賑やかだぞ?」
香帆「へぇ……楽しそう。あっとそろそろ時間だね!それじゃ……」

惣万&香帆「「さてさてどうなる八十九話‼」」


香帆「……と言うか惣万さんってフェ……」
惣万「人違いです」


第六十九話 『あの日の夢をワンモアチャンス』

 夢を見ていた。

 

 誰か、自分であって自分でない人間の夢を見ていた。

 

 

 

 初めに感じたのは冷たさと淋しさ。常にこの欠落が心の片隅に影を落としていた。

 

 

 

 その少女は孤独であった。この世界に平等などとあるはずがないと、幼いながらも知っていた。何故なら自分が特別であったから。

 

 とある人間は言っていた。一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人であると。故に彼女も躓いた。あの昊に手を伸ばせども…、常に彼女の求める解えは導き出せなかったのだ。そして…彼女は人間の浅ましさを嘆くに至った。故に、この世界はつまらない。人間はどうしてこうも明確な意思がないのだろうかと。

 

 あぁ……何故だろうか。何故(オレ)は…、こんなにも……。

 

 

 場面が切り替わった。新聞には白騎士の再来、大量殺戮兵器BSの事を報道する記事がでかでかと印刷されている。風が巻き起こる。火の粉が散る。一瞬でその紙屑は灰になる…。

 

 

 見れば、空には血の成層圏が広がっていた。イギリスで、中国で、フランスで、ドイツで、ロシアでアメリカで……多くの血が流される。人々は同族たちで恨みあい、罵り合い、嬲り、尊厳を踏みにじり、そしてその兵器を忌み嫌う。

 

 

 金髪を振り乱し、人を叩き潰すモノ。チャイナ服を着て人の頭を柘榴の様に変えるモノ。阿鼻叫喚をうっとりと聞き、その狂声で心を癒すモノ。満たされることのない餓えと渇きのため、次から次へと人を噛み千切るモノ。指一本触れず人間を狂わせていくモノ。人体から血を塵と化させ嗤うモノ。

 

 

 

―次に第二の封印が解かれると、第二の生き物が「来たれ」と叫んだ―

 

―すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互いに殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許された。また、大きな(つるぎ)を与えられた(「ヨハネの黙示録」第6章第4節)―

 

 

 ……、その通りだった。(オレ)が、世界の終わりを始めたんだ……。

 

 

我ら黙示録の赤き騎士が判決を言い渡す。

 

天に憬れた貴様に、天罰などは救いである。

 

天災…、嗤うがいい。貴様が厭った凡人が、その濁った眼に映る白昼夢を裁く。

 

さぁ、『人罰』の始まりだ。

 

 

 

 

 こんなことが、(オレ)が望んだ世界だというのか。ISを造った先の『新しい世界』とでも言うのか?

 

…。…………………。

 

 

 声が聞こえた。……君たちは、(オレ)に何が言いたい…?

 

 

………。

 

 

 

お前を恨む。

 

 

 ……ごめん。

 

お前を蔑む。

 

 

 …ごめん。

 

お前を憎む。

 

 

 …うん、ごめんね…。

 

お前を…………。

 

 

 ……。

 

 

 

……おねーちゃん、どこなのぉ?おかぁさぁん……あついよ…いたいよぅ…。

 

 

 

 

 ッッッ、…ごめん、なさい。みんな、ごめんなさい……。

 

 

お前を決して許さない。

お前が望む世界など決して来ない。

死んでもお前を苦しめる。

 

 

 ……そうだ、オレはそう思われて当然な人間だった。地球をこんな世界にしてしまった。今回の事件だって、(オレ)がISを創らなければ良かったんだ…。ごめんね。ごめんね。ごめんね………。

 

お前は、許されてはならない、たった一人の人間風情が身の程を知れ。罪を償え。罪を贖え。断罪を、贖罪を。世界はお前にそれを望んでいる。

 

 

 

 血の成層圏に『彼ら』の怨嗟が蔓延する。その怨恨が、さらに赤いIS達を強くする……。

 

 

 

星統べる全能の欲(グリード・オブ・レグルス)

『クロノ・サテライト』

心奪う星喰らいの暴略(ペルソナイーター・バテン・カイトス)

三参宿四天降ル(驕レル者終ニ滅ビヌ)

馭者の山羊、(クローフィ・)沈まぬ星よ、(クローフィ・)極光を指せ(クローフィ)

 

 

 世界が戦火に焼かれていく。燎原、見渡す限りの骨灰に覆われた世界…。血まみれの親子が、兄弟が、姉妹が寄り添いあいながら灰になる…。これが、(オレ)が望んでいたことなのか?そして受け入れる事なのか…?

 

 

そうだ。お前はこの『愉しみ』を望んだ。そして自分が最も秀でた存在だと過信した。愚かにも思い上がった。故に「世界(にんげん)」はお前に正しい絶望を与えよう。それこそがこの世界の根底にある、お前が無いと言って切り捨てた『平等』其の物である。

 

 

 

 ……。宇宙と人間の愚かさには、際限がない…、それを直視して、『私』は下等だと切り捨てた。だけど…それでも、『オレ』は……。

 

 

 

貴様のせいで!私は家族を捨てさせられた‼ずっと一人で、頼れる人もいなくて‼ただただ一夏の事だけでしか温もりを感じられなかった‼なんでISなんか造ったんだ‼自分の我儘で家族を引き裂いて良いと思っているのか⁉だとしたら貴様は姉なんかじゃない‼………‼『なんで分かんないかなぁ…』、だと⁉貴様に理解者がいないなど当然だろうが‼そんな癇癪で世界が認められないと言うのなら……貴様がこの世界に生まれてこなければよかったんだ‼

 

よくもまぁあのタイミングでミサイルが日本に飛んできたものだな?……貴様が何を企んでいるかは知らん。だが…私の大切な存在に手を出そうものなら貴様を殺す。私たちの友情…いいや、協力関係もそれまでだと思え。貴様のよく回る頭を左右真っ二つにしてやろう.

 

 

 

 …過去、『私』にそんな事を言った人間がいた。当然だ。それだけのことを『(オレ)』は過去にしてきた…悪魔の科学者だったんだから。でも、記憶がなくなって初めて、みんなの事を…、仲間っていうものを、天災としてではなく人間として『知る』ことができた。だから、『オレ』はみんなを見捨てることができなかったんだ……。

 

 

戦兎さん…。私を助けてくれてありがとうございました。それと……謝罪を。貴女を篠ノ之束だと言って、アレと重ね合わせて、私の汚い所を見せてしまいました……。あの理不尽を一生許すつもりはありませんが……篠ノ之束と因幡野先生は、違います。先生……あなたは、貴女です…そう、『自意識過剰でバカでどうしようもない正義のヒーロー』なんですから。

 

また…。私と友達になってくれるか?…………おいおい、意外な顔をするなよ。こちらだって少し気恥ずかしいんだ。今のお前になら、世界を託せる気がするよ……。……あー、ま何だ、この年になってこんな小学生のような言い方しかできん私だが、まぁ…よろしく頼む。そうだな、今度は惣万の店でコーヒーでも奢ってやろう……。

 

しょーがねぇな!戦兎さんだけに良いカッコさせてたまるかよ!俺も、仮面ライダーだ!

 

………………………………………………………………お帰り、戦兎。

 

 

 だから、みんなと一緒にいたいって思ったんだよ……、ここから因幡野戦兎として、みんなの為に科学を使おうって思ったんだよ……。

 

 

ならば、行けば良い。天才気取りのバカ野郎。バカでどうしようもないてぇんさい科学者。その智恵で、お前の世界を創って見せろ。

 

 

 

 

 声に誘われ、オレは行く。……そうだ、行くんだ。行かなくちゃいけないんだ。オレの創る明日へ、世界へ…未来へ。箒ちゃん達の、皆のところへ………………――――――‼

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅ、……むみゅ?」

 

 コーヒーのいい匂いが漂ってきていた。……あぁそっか。ここ、nascitaだ……。帰ってきて、赤騎士事件の事を考え過ぎて、眠っちゃってたんだ……。

 

「……おう、戦兎。おはよう」

「……ん?……あぁ、おはよう、マスター……、……?ってこんな時間!?ちょ、何で起こしてくれなかったの!?」

「いやぁ……あんまりにも気持ち良く眠ってたからな……あー……よく眠れたか?」

 

 ……マスター……。赤騎士事件で気に病んでいるって心配してくれて、ありがとう……。

 

「うん、大丈夫。ちゃんとわかってる。………………あ、そーだ」

「ん?」

 

 

 ……。ちょっとぐらい、良いよね?

 

 

「いつもありがとう、大好きだよ!」

「ッぶっへぇ!?おまっ…ちょ、そんなフラグ建ててなかった……ぇえ゛!?なんでこのタイミング!?」

 

 ふっは~いい気味!愉快じゃのう♪さて……。

 

「じゃあ、またIS学園だから……クロエにもそう伝えておいて?」

「おう、分かった」

 

 

 

 

 ……行ってきます。

 

 うん、また帰ってくる。それまで待っててよね?いつもみたいに、コーヒー淹れてくれていると嬉しいなぁ……。忘れもしない、あの雨の日みたいにさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のIS学園……。数日前に起きた『赤騎士事件』によって、校内の人間にも不安の波紋が広がっていた。少なからぬ親からは『学園を止めて戻って来て欲しい』と涙ながらに相談の電話がかかってきて、少女たちは自らが乗っていたISが何なのか、改めてその恐ろしさを認識する事となった。各学年の数名の生徒達はその重荷に耐え切れず、学園から去ろうか検討する人間も現れだしていた……。

 

 

 そんな過去最悪のIS事件が起こってからと言うモノ、教職員はもちろん、生徒会にも被害が出ない訳もなく……。

 

「いやぁすまんな嫁。生徒会の手伝いに付き合わせてしまって」

 

 ラウラとセシリアを先頭に、生徒会メンバーとなった一夏、箒……そして何故か用務員のシャルルが職員室までISの資料を運搬していた。

 

「へっ…一気に持とうとするからだ、ヨタヨタ危なっかしいんだよ銀髪……ん?」

「何やら騒がしいな……?あれは……千冬姉と、…!」

 

 焦ったような声と有無を言わせぬ言葉が交わされると、前方の部屋から二人の人間が現れた……。

 

「では、くれぐれもよろしく頼む。キャノンボール・ファストは行ってもらう」

「っ……しかし会長殿……」

「……これはIS委員会の決定だ。何より『ISは兵器利用してよいものでは無い』。そのことをアピールできる重要なイベントだと思うがね」

「……」

「では、織斑先生。また後日……ん?」

 

 数人のSPと共に一室から出てきた金髪に顎鬚の男性。……恰幅の良い長身によって、遥か高みからアメジスト色の瞳が生徒会役員達を見る。すると、同じ色(・・・)のシャルルの目が大きく見開かれた。縮こまった瞳孔がその存在を悪鬼の様に捉えていた。

 

「ッ、てン…めぇ…!」

「お、おい……シャルル?」

 

 シャルルの様子が、どうにも変だ。まるで石像の様に固まっていた……。

 

「……嫁?どうしたというのだ……?」

 

 一夏の声も、ラウラの声も聞こえていない……イイヤ、聞こえていても返事をする余裕が無い。一方の壮年の男性は、シャルルの様子に曖昧な表情を浮かべながら、こう言葉を投げかけた。

 

「……久しぶりだな、シャルル。ところで……はて、嫁……?その()が、か」

「……てめぇには関係ねぇだろ…」

「あ、おい……」

 

 そう言ってラウラと共に隣をすり抜けようとする金髪の少年。だがその男は、その後ろ姿を見てかつて愛した人間を思い受かべる……。

 

「ふむ、大きくなったものだ?」

 

 ぴたり、とシャルルは足を止めた。どんな表情をしているのかは定かではないが、首筋には、遠目からもはっきり見えるほどに青筋が太くなっている。

 

「………」

「よ、嫁…?すごい顔してる、ぞ…?」

 

 ラウラも普段と違うシャルルの様子を見て、かつての自分と重なり合い、錯覚する。そして、初めて彼の声が心に届いた時のことを思い出していた……。

 

「あー……貴方、誰だ?」

「ちょ…っ一夏さん、ご存じないのですか…?」

「おう、知らん」

「この馬一夏!」

「いって!?なにすんだよ箒‼」

 

 やれやれ、と首を振るセシリア。そして、箒は横目で金髪の二人を見ながらも、静かに一夏へ彼の名を教えた……。

 

「アルベール・デュノア。現IS委員会委員長で、フランスに本社を置くISメーカー、デュノア社の……社長だ」

「……!デュノア…、ってそれって……‼」

 

 ようやくハッとした一夏。その言葉には聞き覚えがあった。いいや、仲間の男の名字に入っているのだから忘れようがない。そして五月のクラスリーグマッチで突入してきたIS『バーサーカーⅣ』の原型を造った会社でもあった……。

 

「そうだ、そして付け足して言うならば……私はそこにいるシャルルの、…父親だ」

 

 紹介に与った壮年男性は事も無げにそのことを肯定すると……突然シャルルは右手を上げた。その刹那の後……。

 

―ごすっ!―

 

「…ッが⁉」

 

 鈍い音がした。シャルルは、腕を大きく振りかぶって、アルベールを吹き飛ばしたのだ。

 

「「「「ッッッ!?」」」」

 

 これには代表候補生や世界最強も顔色を変えた。自分達がISと言う権威を持っていたとしても、その頂点に君臨する人物に手を上げるなど、言語道断であることなど馬鹿でも分かる。……だが、シャルルは感情に任せてぶん殴ってしまった。

 

「…貴様!IS委員会委員長に向かって!」

「よさんか」

 

 SP達がシャルルを取り押さえようとするが、それを委員長は手で制し、宥める。

 

「っ、しかし…」

「よせと言っている……そうだ、婚姻関係はもう無いのだったな」

 

 殴られて吹っ飛ばされたアルベールはSPの手を借りつつ立ち上がる。あぁ痛た……と頬をさすってシャルルを見ていた。

 

「婚姻云々じゃねぇ!血縁があろうと関係ねぇんだよ‼てめぇは……、父親なんかじゃねぇ…!」

 

 

 彼は怒号を上げると、廊下に片手を付いた顎鬚の男性へ……軽蔑や憤怒、忌避や嫌悪の視線を向ける。彼のその視線だけで気の弱い人なら殺せるのではないか、と言う程の殺意が滲んでいた……。

 

 

「………………」

「お袋は……アンタを待ってたのに、アンタは金儲けの為に俺達家族を捨てていった……!最後までアンタの名を呟いて、それでも届かなかった……、てめぇに俺達の何が分かる‼」

「……、分かるさ」

 

 アルベールは長い沈黙の後にそう言うと、服の汚れを払う。

 

「…、そう言えば、お前はライダーになったのだったな」

「……それが、なんだ……」

 

 ………アルベールは顔を一層険しくして口を開いた。

 

「アレが…お前の母親が、それを喜ぶと思うか?」

「ッッッ‼」

 

 アルベールは自分も言いたいことがあるかの様に声を強め始める。怒りの感情が少しずつ滲み出す様に…。

 

「俺達、と言ったな……あたかも母親もそう思っていた様な口ぶりだ、だが、お前だって今際の人間の心の声を聴いたわけでは無いだろう?死んだ母親を、自分の逃げの言い訳にするな」

「ッだからてめぇが言ってんじゃねぇよ‼」

 

 売り言葉に買い言葉、今の二人の言葉はお互いの堪忍袋の尾を傷つけあう様な関係でしかなかった………。

 

「っ落ち着けって!」

「……悪ぃ一夏、お前等……俺先行くわ……!」

 

 これ以上話し合うのが無駄と思ったのか、シャルルは歩幅を広くして遠くに行こうとするが…。

 

「って……なんでついてくる!?」

「校門はそっちだ」

 

 シャルルの向かおうとしたその進行方向には玄関があった訳で。よってこの後の予定が控えているアルベールも彼を追いかける形となったのだ……。

 

「ッッあ゛あ゛ぁムッカツくッッ‼」

 

 そう言ってシャルルは窓から跳躍し、木を飛び移りながら校舎の蔭へと姿を消した……。

 

「……、結局血は争えない、か……」

 

―思い出すな…■■■、あいつ、そっくりだ―

 

 すると、アルベール・デュノアもSPを引き連れてIS学園から去って行ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ…………あの人間ができてるシャルルが、ねぇ……?」

「なんでも、父親との間にいろんなごたごたがあったらしい……、まぁ、俺達が口を出すべき問題じゃなさそうだ…」

「あぁ……嫁のあんな顔、初めて見た……」

 

 生徒会室に戻った一行は、生徒会長の鈴にさっきまでの出来事を伝えていた。

 

「それにしても、IS委員会は何を考えているのだ?今やISの評価は先の赤騎士事件、とやらで大暴落。この世界情勢の中で新たな専用機のアピールの場を設けるなど……」

 

 火薬庫にマッチを入れる様なもの…過去の大戦と同じ道を辿っている様に思えた。何より世界の風潮もおかしい。明らかに変わりすぎている。まるで、大きな流れが無理矢理人を動かしているかのような……そんな違和感が拭えない。

 

「『赤騎士事件』が起こってから一週間も経ってないわよ?このままじゃ逆効果よね…」

「IS学園は他国からの干渉を受けないとはいえ…、このままでは要らない煽りを受けそうだな」

 

 候補者は各々のISの待機状態を見つめながら、悪い未来を創造する。

 

「アメリカやロシアは『水爆を撃った赤いIS』の所属について腹の探り合いをしてる上に、暴徒化した国民の鎮圧……敵は国の外にも中にもいる、ってか?疑心暗鬼になるだろうなこりゃ……。もう国家転覆するんじゃないか?」

「…………、間違いなく、ファウストのBS共の暗躍よね…………」

 

 それぞれの候補者の姿に似たBSの姿を見て誤解する可能性に思いつき、鈴は頭を抱えていた。

 

 

 

「…けれど、ひとまず私たちがなさねばならん事は別にある。……一夏、鍛錬に付き合ってもらおうか」

「っとぉ……急に引っ張るなよ?何だ、いつも以上にやる気だな…」

「学友達の偽物に好き勝手させるくらいなら、篠ノ之束が創ったモノでも使ってやるさ」

「……そこは相変わらずなんだな……。まぁ弁護のしようが無いけど……」

「あ、戦兎さんは好きだぞ?うん……うん……ウザいけど」

「戦兎さんェ……」

 

 一夏は戦兎のことを弁護しようとも思ったが……今までの暴走超特急な様子を思い出し、全ッ然意味ないな、と頭を垂れたのであった……。そんな一夏の手を引っ張り、片手に脇差を持ってアリーナへと箒は走る。どこか上機嫌な様子で駆けていく……一夏と戦える事が嬉しい様だ。

 

―パタパタパタ……―

 

「あらあら……行ってしまわれましたわね?仲睦まじいご様子で…」

「えぇ……ただ一点、ここがキナ臭い世の中じゃなければSFラブコメになったのにねぇ……」

「……おっほん、話を戻すよ」

 

 丁度簪が咳払いをして立ち上がった。手には極秘と赤い筆字で書かれた資料がある。……んなもんイツツクッタンディスカカンナジザン(0w0)。

 

「ファウストのメンバーは世界に自分たちの脅威を知らしめるためか、世間の目が集まるIS学園のイベント事を毎回強襲する……」

「かん無の言う通り、恐らく次回のキャノンボール・ファストもそうだろう……。だが、今のままの機体性能では技量が幾ら高かろうと話にならんのではないか……?」

「そうよねぇ…それなのよねぇ……」

 

 

 ……………………。あれ?

 

 

「……どうしよう。アタシ達『この世界で一番ISに精通している人間(天才(笑))』にデリバリー感覚で頼める事気付いちゃった……」

「奇遇ですわね、わたくしもですわ?」

「……と言うか、当たり前っちゃ当たり前な解決方法に帰結したね……」

「ドイツ軍が血眼になって探している天災その人が、なぁ……」

 

 ……………………あったわベストマッチな対策方法。『オレ惨状‼マジサイコーマジスゲーイッ‼』

 

「「「「………。でも頼んだら調子に乗って、あの人大騒ぎしそうな(んですわよねぇ)(のよねぇ)(のだがな)(んだよね…)…」」」」

 

 その時。

 

「ラビットタァァァァンンンンク‼イィィェエェェェェェェェイ‼話は聞かせてもらったぁぁ‼」

「うわぁ出たぁ自称てぇんさい科学者ぁっ!」

 

 屋根裏から天才登場。いや何してんの本当に。

 

「ふっふっふ…この才能を有効活用する時が来たッ!睡眠時間を毎日五時間削っていろんな武装や特殊装置を造ってたんだよ、ほらほらほらぁ‼これと、これに……それにこれもっ‼」(ばっさばっさ‼)

「うわぁ……この部屋に世界のIS事情がひっくり返る情報がゴミみたいに舞っている……詳しくは知らんけど」

「せんちゃんここ最近眠たそうだったけど、そんな事してたの~……?」

 

 てか早死にするよ〜…と、のほほんとしたわりにキツイ声が呆れと共に聞こえてきた。

 

「当たり前じゃないか!今度こそ!……今度こそ……」

 

 戦兎は二回同じ言葉を繰り返した後で……唐突にその言葉を止めた。

 

「……?」

 

 鈴達はその姿に何か違和感を覚えたが、それが何か分かるより先に……天才は言葉を絞り出す。それは、苦しみと決意が入り混じった贖罪の言葉の様だった。

 

 

 

「……そう、今度こそ……誰かを守るISを、創ってみせるよ…」

「……」

 

 その眼に映るのは目の前にいる生徒達。自分が愛すべきものの為に彼女は最新鋭の装備を作ることにしたのだ。

 

「…っでも…ウチの軍部とか融通聞かないし…?ん、何してんのセシリア?」

 

 ごそごそと部屋の隅っこで誰かと電話をしていた貴族サン。彼女は振り返って言イマシタ。

 

「いいえ、許可なら下してくださりましたわよ?」

「「「へっ?」」」

 

 スマホをちらつかせてにこやかに笑うイギリス代表候補生。

 

「イギリスはもとより、ロシア、ドイツ、中国、日本の五か国からIS学園製独自武装の装備する許可をいただいてきましたわ。交渉事は得意なのですわ」

 

 ……その言葉に場の空気がカチーンと凍った。周囲には名状しがたい無の空気が漂う。

 

「……セシリアアンタホント何したの一体今…?」

「それは………………知らないほうが宜しいかと?」

 

 何故か両目にギアスっぽいのが見えたが気にしない……。気にしちゃ負けだ(と言うか電話越しだから使えないと思いますわよbyセシリア)。

 

(((………………こっわぁぁぁぁぁぁ⁉)))

 

 『この人の機嫌を損なわない様にしないと……』と、敵に回してはいけない人間に彼女を追加した一同なのであった。

 

「……。えーっと、うん。……んじゃ希望だけ聞いておくよ。半日ぐらいあれば仕上げられるから。じゃ、セッシーどうぞ」

 

 澄まし顔で戦兎は紙と鉛筆を握った。……冷や汗くらい拭ってくださいシミができます。

 

「わたくしはビットが『ストライク・ガンナー』で使用できなくなってしまうので、BT兵器の増量と近接戦闘用の銃火器があれば、と……。インターセプターでのインファイトでは銃撃特化型ISの長所が生かせないので……」

 

 襲撃者に折られたナイフを思い返して苦い顔をするセシリア。そんな彼女のISの弱点を聞いてから、鈴に掌を向ける記憶喪失のIS開発者。

 

「ほうほう……そっか、君のパッケージはそんなデメリットがあったっけね……よし次」

「んじゃアタシ……。あー、青龍刀も悪くはないんだけどねー……『星震大輪拳』じゃ柳葉刀を使う事が多かったのよ。あとモノ殴る時に気功を使うだけじゃ絶対防御貫通だけしか効果が無いから、炎が出るとかの効果付与……そんなのできます、戦兎先生?」

「ん?そんなのでいいの?……よし、ボーナスでもうちょっとつけちゃおう!そいじゃ次…ラウちゃん」

 

 若干呆れ顔で聞き返すが言葉は返ってこないので、おまけになんかつけることにして次は家族の実妹…言葉にすると変だなこれ。

 

「ふむ……そうだな。セシリアも鈴もかん無も手持ちの武器を持っているな?何故か私にはそれが無いのだ……」

「あー、それ疑問に思ってた……ハンドガンとか色々案があるから選んでみてよ」

「因幡野教諭、感謝する……。それとパッケージの事も……、新造してもらうまでは言わないが……」

「んっ?もう造っちゃったよ?」

「………………ゑ?」

 

 ラウラは自分の口から変な声が出たのだが、そんな事なんぞ比ではない言葉が聞こえてきた。

 

「だーかーらー、最新鋭のモノを作ってみたから試運転を頼みたいんだ?確か軍の副官から借りるんでしょ?だったらテストプレイとしてこっちを使ってほしいなー、なんて!」

 

 アイスショック二回目。そして、生徒達はもう一人の先生の背中を思い出した……。

 

(……せんちゃ~ん……これ大丈夫~……?織斑先生誤魔化しきれるかな~……?)

(……本音、私頭痛くなってきた……)

(かんちゃん!?)

 

 哀愁漂う背中で、疲れ切っている世界最強が幻視される……。そんな教師に哀悼の意を示し、生徒は心の中で涙を流したとさ……まる。

 

「かん無ちゃんとのほほんちゃんは?」

「い、いやぁ……あはは?」

「……流石に本音は専用機を貰ってまだ間もないから……遠慮するよネ……。あ、じゃ私はここをこうして……それで……」

 

 シュトルムの介入があったとはいえ、打鉄弐式を自分で造ったからか、先の戦闘で改良案を既に思いついた彼女は戦兎のメモへと考案していた武装を付け足していく。

 

「ふむふむ……分かった分かりましたよぉ!承ったぁ!んじゃ早速造りましょうかねっ!腕がなるなぁ‼」

 

 ハイテンションボルテージの戦兎さん。彼女はテンション爆走のままに、生徒会室のホワイトボードにガリ〇オみたいに数式をどんどんと書き込んでいく。ヒャホホイとか変な声が漏れ出ているが気にしない。生徒会メンバーはもう慣れたのだ……(トオイメ)。

 

「……何とか新装備とかは問題無さそうね……」

「ただ、『これを創ったのは誰だァァ!?』、とか騒がれそうだけどね……」

 

 ……千冬さん頑張ってください。大人を使い潰すしか生徒達の頭の中には解決策が思いつかなかった。

 

 

 

 

 

 

―ギャリィィン‼―

 

「ハッ!…フム、やるではないか」

 

 一方、こちらはアリーナ。赤と白の機体が空を音に近い速度で飛び回り、火花を散らせて剣戟を繰り返している。

 

「舐めんな。これでも千冬姉に追いつけ追い越せで朝稽古やってんだよ、やれる様になってなきゃどやされるわ……」

「ハハハ、確かに、な!」

「おぉっと……!……、!?」

 

 急激に一夏の目の前が揺らいだ。そして、箒の機体が鈍く輝き出す……。

 

 

「……。おや、どうやらこれは……単一仕様能力(・・・・・・)か」

「このタイミングで発現するのか……?ま、まぁ……キャノンボール・ファスト当日じゃなくて良かったけどさ……」

 

 原作から乖離した世界にて、その大和撫子は呟いた。豪華絢爛な椿の力などではなく、全く別の、鬼の様に苛烈な少女の力。それが、一夏の白式・刹羅に及んでいた……。

 

 

 

「…ところで一夏と箒ちゃんは?」

「模擬戦よ……へっ、随分いちゃついてたからデートと勘違う子もいるでしょうけど」

「どうしたんですの因幡野先生、そんな複雑そうな顔をして?」

「いやぁ……一夏のIS、反転移行(ネガ・シフト)とかいうのしたでしょ?そのついでに身長体重スリーサイズ諸々の再計測をしたんだけどね?」

 

 

 

 …………一夏のIS適性が、AもSも越えて…言うなれば『X(未知数)』の領域に到達していたんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ファウストの研究所。

 

 

 

「幻様、幻様。次はどこに行けばいいの?暇だよー」

「全く、お前は落ち着きがないな……」

 

 宇佐美幻の紫髪をくいくいとひっぱり、モッピーピポパポは不貞腐れたように唇を尖らせた。

 

「仕方がないじゃん、元々子どもみたいなものなんだしー。あ、そうだ。またIS学園に遊びに行ってきていい?」

「駄目だ。お前はまだ完全態のネビュラバグスターではない。存在がこの世に固着するまでもうしばらく待っていろ」

「むぅ……大丈夫だって。怪人態にはもうなれるんだから!ほらっ!」

 

【インフェクション…!】

 

 黄金の粒子が噴き出し、桃色の髪がのたうちまわる。竜巻の中で、彼女はおぞましい姿へ変わる。

 

「……培養完了!『トーテマ』、参上!」

 

 天使の如き、髑髏の怪人。この世の全ての術が通じない化け物が、そこにいた。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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