IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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惣万「前回、ようやく始まるキャノンボール・ファスト……。しかし、ファウストの人間達はそれぞれの思惑によって蠢き出しており……」
戦兎「あれ?質問コーナーは……?」
惣万「しばらくシリアス展開が続くからちょいちょい普通のあらすじも挟んでいくってさ」
戦兎「ちぇー……ちゃんと回答も用意したのに……ん?」


前略『ファウスト』並びに『亡国企業』の皆様。

先日『仮面ライダー図鑑』なるサイトがオープンしたのですが、その中の『仮面ライダープライムローグ』のページに以下のような記述がありました。

・セルフェイスクランチャー

仮面ライダープライムローグの頭部に取り付けられた、ワニの顎のようなパーツ。
内部タンクを満たす苦い補給剤は、よく刻まれた緑色の野菜(ピーマン)を主原料としており、肉体疲労を解消すると共に免疫力を高め、未知の生命体による憑依・侵食攻撃をも防ぐ効能を持つ。

『亡国企業』のM様がピーマンが苦手であることは周知の事実ですが、この記述によるとどうやら『ファウスト』の石動 惣万様もピーマンが苦手であるご様子。

というわけで、僕の地元で収穫された新鮮なピーマンを10箱程贈りますので、どうか美味しく頂いてくださいませ。


帝都重工特殊科学開発室 室長“繝槭し繧ォ繝 ”より。
(文字化けしており解読不能)

戦兎「……何コレ?」
惣万「……いや、俺別にピーマン好きだけど?どうもありがとうございますっと……俺が焙煎した珈琲豆でも送ろうかな……ちょっと別世界行ってくる」
戦兎「ふぇっ?」

柳星張様、どうもありがとうございます!



第七十一話 『トータル・リコール最終兵器』

「全くもう、お義父さ…マスターってば自分の分のチケットを貰ってなかったなんてうっかりしてますね……」

 

 サングラスと帽子をかぶり、クロエは指定されていた席へと座っていた。隣には赤青黄のトリコロール女たちが仲良さそうに屯っている。最近、クロエはこの三人とつるむことが多くなっていた。つまりは出番が少ない組である……メタいオ、レディ?

 

「……ところで三羽烏の皆さん。あのドルヲタグリスはいないんですか?」

 

 騒がしいあの男がいない事に首を捻るネトドル。奴がいなくても、これっぽっちも寂しくはないが、いないはいないで少し違和感があった。

 

「……あー、カシラはね……ちょっと親と色々あって……」

「まぁ、子供を捨てた親だとか言ってたもんね……」

「?……それって、どういう……?」

 

 丁度その時だった。レースの火ぶたが切って落とされたのは。

 

「!……始まった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……行きますかぁ!」

「「「うわぁ!?」」」

 

 爆煙とともに加速する白式・刹羅に、山嵐しそこねた生徒会長は白目を剥いた。

 

「ちょ…一夏、何ソレ…⁉」

瞬時烈速(イグニッション・バースト)

「そんなんあったっけ~?」

 

 九尾ノ魂・天狐の鉄扇には【みこっとびっくり!】と文字が点滅している。

 

「今名付けた。つかやってみたらできた」

 

 それを見ていた箒は分析する……今のは正しく瞬時加速が変化したもの。だが、イグニッション・ブーストはスラスターから放出したエネルギーを再び取り込み、二回分のエネルギーで直線加速を行うが、こちらはPICによるもので発動していた。

 

(脚部に重力場を生成し、その流れに乗って高速移動している……だと?しかも軌道も自由に変更でき、タイミングを読まれづらいのか……。但し、身体への負荷は従来の二倍と相当のものだ。これを易々とやってのける一夏とは……)

 

「『織斑』というのはどいつもこいつも……」

「箒さん、織斑先生に聞かれたらどえらい事になりますわよ?……っと!」

 

 セシリアがやれやれと頭を振った瞬間である。彼女に向かって飛ぶ数発の不可視の弾丸。飛んできた圧縮砲撃をシールド型のビットで弾くと同時、彼女はクイックドロウでビームピストル『シューティングスターⅡ』を抜き出し発射する。この間0.04秒であった。

 

「避けられましたわね、残念?」

「……ってかそれ『コバルト・ティアーズ』だっけ?シールドにもなるなんて面倒な……」

 

 背後から声がすると同時に、蒼い雫(ブルー・ティアーズ)に向かってツインテールの影と共に拳と足が百裂と迫る。それを九基のシールドビットで防いでいく金髪の女。傍から見ればコレだけで死闘の様だが、彼女たちの顔にはまだまだ余裕があった。

 

「……協力して一夏さんを倒しませんこと?そちらの方が勝率が高いと思うのですが」

 

 困ったように金髪をなびかせる英国貴族に対し、とても良い笑顔で溜息を吐く中華娘。

 

「お生憎様~、アタシはサシでやり合う方が性に合うの、よっ!」

「全く……」

 

―ギャリィィン‼―

 

 龍の踵落としを、クロスさせた流星の拳銃が受け止めた。

 

「……やるわね」

「そっくりそのままお返しいたしますわ」

 

 そう言って肉弾戦を重ねていく赤と青の機体……。今現在の所は甲龍が若干の優勢だが、少しでも距離を離れればブルー・ティアーズの射撃で撃墜されるだろう。

 

「うわー……かんちゃんあの二人これがレースだって忘れてるよね?」

「……ミサイルブッパはもうちょっと消耗してからにした方が良いかな…?万全の状態じゃ一割被弾するかしないかだろうし……フフフ」

「みんな薄ら暗いよ~この学校どーなっちゃうの……、ってラウちゃん?」

 

 のほほんとした目を見開いて、次の爆弾(てぇん↑さい↓ヤリスギッ)に視線を向けてしまった。頭痛待った無しである……。

 

「ふむ……この形態のままでは機動性能が従来の三割増しと言ったところか……ならば、『黒い鍵(シュヴァルツェア・シュルッセル)』‼」

 

 その瞬間、背面のバックパックに折りたたまれていた翼や機首が展開され、黒い一機の戦闘機の様な姿となった。

 

「変形した!?」

 

 目の前で行われた変形に驚いた箒。黒い機体はスラスターへエネルギーを収束させ、推進の為の出力を高めていく。

 

「ではな戦友、箒!」

 

 その言葉と同時に機体は黒い点となって見えなくなった。その場に熱風を撒き散らして、忽然と消える。

 

「オイオイ、二重瞬時加速状態位の飛行速度を維持してるぞラウラの奴…」

「ハンググライダー……いや、形は似ているがそんな生易しいものでは無い。もはやロケットの速度だな」

「あ、ラウラさんが行ってしまいましたわ!」

「ちぇっ、アンタとヤり合うのも良いんだけど本分こっちだったかしら……しらけるわね……ん?」

 

 …その時、彼らはラウラの目が怪しく輝くように見えた………。

 

「行くぞっ、ミサイルコンテナ展開、&第一弾発射!」

 

 号令と同時に…黒い鍵(シュヴァルツェア・シュルッセル)のテールブースターユニットコンテナのハッチ部分が、開いた。そして、青空へと打ち上げられる何十もの白い煙……。生徒たちが見てみれば、その煙の先には、何個もの円柱が分裂してこちらへ殺到している。

 

「えっ、ちょ……まっ――――!?」

 

 つまり、ミサイルである。

 

―ドッガァァァァン‼―

 

 爆発と共に視界がゼロになるラウラを追尾する一年生たち……。だが、ラウラは首を背後へと向け続けていた……。

 

「どぁっしゃあ!後ろのミサイルブッパに気を付けてたのに前からもかよ‼」

 

 煙の中から次々と出てくるISたち。剣で煙を切り刻んだ者たち、空気砲で視界を開いた者、その空気圧を利用し飛び出してきた者たち、身体を水の膜で覆った者……皆中々に食らいついている。

 

「さて……やはりその程度では落ちないか」

 

 当たり前のように攻撃をかわして出てきた全員に、ラウラは嬉しいげな微笑みで言う。言葉と感情は矛盾しているが、それが今の環境である。ダチと高め合えるライバル関係にあるのだ。特に箒には負けられない…愛する嫁者同士なのだからな(ドヤァ)‼

 

「舐めるなよラウラ!個人的な恨みで申し訳ないが、私は兎属性の人間に負ける事だけは許せんのだ‼」

「そんなー……(´・ω・`)」

 

 一方の箒は結構な形相になっている。頭にでっかいシャープマークが見えるのは気のせいでは無いのだろう。……因みに、モッピーは織斑ティッピーが入り浸るレストランカフェでのパーティーで、押しであるヴェァァ(宇佐美に非ず)なネトドルのウサミミコスプレを見ても心がピョンピョンしなかったらしい。おのれエボル兎(天災)。……あまり(ネタ要素が)強い言葉を使うなよ、(頭が)弱く見えるぞbyラビットハウスnascitaのマスター。

 

「何故に篠ノ之流剣術には『飛んでくる火縄銃の弾を斬る』なんて技があるのか……、まぁ今更か」

 

 ちなみに実際の現実でも居合切りで銃弾を切れるということは証明されている……うん、それをやろうとは思わないけども。

 

「日本人って変なところで凝り性ですわよね……だから達人が産まれやすい国なのでしょうか?」

「ダブルタップでミサイルぶっ壊してるアンタが言う?」

 

 手刀で弾道を逸らし誘爆させている鈴と、レーザーピストルで破片もろとも撃ち落とし被弾を避けることに余念が無いセシリア……色々と似た者同士であるみたいだねアンタら。

 

「……ここで山嵐したら面白くない?」

「うわー、えげつないよかんちゃーん……」

 

 一方最後尾に陣取り戦況を伺い続けている主人と付き人。色々と読めない二人が背後にいるという事が前の人間達に結構なプレッシャーを与えていた……。

 

 

 

 その時である。学園の方向から、一閃の光が上空へと立ち上った……そして。

 

 

―ドッガァァァァァァンンン‼―

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 学園が、爆炎に包まれた……。

 

 

 

 

???side

 

 時は少し巻き戻りましてッと!

 

『おぉっと!ラウラ・ボーデヴィッヒ選手、バックパックから大量のミサイルが発射されたぁ‼コレには他の代表候補生達はなすすべが……なんとなんと無事だぁ‼学生であるにも関わらずなんという身体能力、判断力だ‼私驚いてしまいました……!』

 

 ……やれやれ。この茶番ももう飽きてきたなぁ……。じゃあそろそろ行動開始かねぇ?この万年筆の、キャップのここを……。よっ、ポチっと。

 

 

―ドッガァァァァァァンンン‼―

 

「「「!!!?」」」

 

 よしよし!世界最強も裏の学園長も部屋の中から出てきた出てきた…。重役とか生徒達を避難させなきゃマズいよなぁ?

 

「一体何が起きた!?」

「それが……突然小型ISが量子状態から実体化!IS学園施設各所で破壊活動を行っている模様です‼」

 

 うん、これぐらいで驚いてもらっちゃ困るな?戦場では何時の間にか地雷が敷き詰められてるなんて事当たり前、さぁ頑張れ女の子、これくらいの事日常茶飯事になるんだからさぁ!

 

「……!戦兎が防衛のシステムを強化していたはずだというのに、奴らはその上を行くとでも言いたいのか……!ッ、兎に角避難指示を出せ!」

 

 ……、ま。惣万が言うには宇佐美にとってはISコアの反応を消す事位造作もないらしいけど……。

 

(IS創造主の戦兎でも感知できないステルスとか……。元情報処理兵としては敵じゃなくて良かったわホンット)

 

「生徒達も観客の皆さんも慌てずに、冷静に退出を願います‼」

 

 そう言って黒煙の中乳を揺らして生徒を逃がす山田…とか言った先生。いい子ちゃん先生はそのまま頑張ってろよ?丁度良い混乱だ。

 

(とっととMを回収してっと……)

 

 この混乱じゃ、俺一人いなくても気付かれないだろうしなあ……、ふふは。

 

 

 

 

 さあ、神に祈る間を与えよう、懺悔しろよ咎人(子羊)さん?……『聖なる黒嵐蟷螂(サンタ・テレサ)』――――。

 

 

 

 

箒side

 

「っ後方から敵機接近‼レースは中止だ一夏‼」

 

 だが、一夏はその知らせを聞いても上に向けたままで…何をしている……ッ‼

 

「……いや、俺の方にも来たぞ、見てみろ」

 

 ……!あれは……間違いない!あのシルエットは……‼

 

『久しぶりだな、織斑一夏』

 

 先の学園祭にやって来たどす黒い翼のISが、私達を見下ろしていた……。

 

「お前が黒式とか言うISの操縦者か」

『アルマゲドンだ』

「うるせぇ、どうでもいいそんなもん」

 

 アルマゲドンといったISの操縦者、……ヤツはかなりの手練れだ。この中で一夏が単一仕様能力を使って何とか勝てる位の存在だが……。

 

「戦えってか?」

『そうだ……コレを賭けてな』

「!お前、それ……!」

 

 あれは、戦兎さんが研究していたオーパーツ…?

 

『そうだ、これはパンドラボックス。あのいけ好かないスタークの持ち物だ』

「ファウストの仲間のお前が……なんで……!」

『勘違いするな、私は私の為に戦っているだけの事。あんな男の思惑など知った事か』

 

 ……成程、組織も一枚岩ではない、という事か。

 

「…………、分かった。但しこいつ等には手を出すな。全員を巻き込んで戦うっつーなら、俺はテメェとは戦わねぇ」

『ほう、随分と舐めているな。良い度胸だ』

「舐めているのはどっちだ?全員でかかっても勝てないとでも思ってんのかテメェ」

 

 その途端、一夏の瞳が黒と金に染まった。

 まただ。また一夏がどこか遠くに行ってしまう気がする。何だ?この胸騒ぎは……。

 

『違うさ、他の人間を殺しても無駄なのだ……!ここで絶望を与えるのは、お前一人……ここで私が殺すのはお前一人!そうすれば私は、永遠に“私”になれる‼』

 

 !なっ……速い!学園祭の時よりも、はるかに速い……‼

 

「ごっ……!いってぇッ、なッ‼」

 

 刹那の攻防とはこういうことを言うのだろうか。瞬きの間に二人の間に火花が飛び散り、何度も轟音が周囲に響く。

 

『……ハッ、それはすまない、この程度だとは思っていなくてな。本気を出せ、織斑一夏!』

「殴られて何余裕ブッコいてんだ、オラァ‼」

 

 その瞬間、二人の姿は吹き飛び、見えなくなった。

 

「一夏…、…!」

 

 どうやら、手助けする暇もないらしい。私の背後に、『何か』がいる。

 

「……何者ですの」

「また全身装甲(フルスキン)?……平和利用する気、ゼロね」

 

 ラウラや鈴がすでに臨戦態勢に入っている……。それに続く形で私も剣を抜いた。

 

『偽善者の皆さん、こんにちは。綺麗事で戦い、本当の争いを世界の裏側に放り投げる子供たち……少し、お話しませんか?』

 

 四枚の翅を動かし、緑色の全身装甲のISは、耳障りな羽音を響かせる。血管の様に浮き出たオレンジ色のエネルギーラインは、恐らく私の機体と同じシステムによって動かされているのだろう。だが、不気味極まりない……。

 

「……、偽善者……ですか」

『えぇ、その通り。こんな言葉がありますねぇ……やらない善よりもやる偽善……だとか』

 

 ……優しげな声でそう言った人は、掲げた親指を……下に向けた。

 

『ハッ♪糞喰らえです。救えない人間、救ってはいけない人間等はすぐ傍にいるというのに……世界に必要なのは本当に助けだとでも?』

 

 其処に住まう彼女は、声高らかに主張する。私だけでなく、セシリアや鈴が偽善者であると……。

 

『必要なのは悪ですよ。絶対的な、偽悪です』

 

 世界に必要なのは悪……偽りの悪が世界には欠けていると。

 

「アンタね……ッ、セシリア?」

 

 ……?セシリアの様子が変だ。どうしたのだ?

 

「……『正義』が間違いではない、なんてことがまかり通る訳が無いのは知っています。無論、偽善で街一つを壊滅させてしまった人間もいることですし……」

 

 ……一体どうしたというのだ、セシリア……?

 

『ほっほう、中々良い眼をしてますね……セシリア・オルコット』

 

 

 

―理不尽が罷り通る事を受け入れた、無欲で乾いた眼です―

 

 

 

『この世には、仮面ライダーなどと言う偽善者共が多すぎる……そう思いませんか?』

 

 ごくり、と誰かが唾液を飲む音が聞こえた。そんな中……セシリアは、短いようで長い時間を空けた。そして、息を一呼吸するまでの空白の後……。

 

「……ですが、目の前の殺戮に目を伏せろ、とでも?」

 

 空っぽな眼で、無欲な彼女は、心の底にある核を絞り出す事が出来た様だった……。

 

『……ふ』

 

 目の前の蟷螂の様なISはピクリと動いた…………全く、一体何だというのだ?

 

『フッハハハハハ!それが何ですか(・・・・・・・)?それこそが偽善!』

 

 その人物はその答えを笑い、偽悪の反対の偽善だと告げると、人差し指と中指をピッタリとつけたまま、セシリアを指差した。

 

『“自分が背負える以上の痛み”を知った程度で、“愛と平和の為に”などと言う資格があるとでも?そんな言葉を言って良いのは、世界全てを敵に回した人間だけですよ?』

 

 偽悪者はその言葉を言うと指を元に戻して腰にその手を添えた。……この女、何様のつもりだ……‼私達の事を、貴様の物差しで推し量るというのか……!それが驕りだ。篠ノ之束と同じ、一方的な押し付けでしかない……‼

 

「……成程、貴女の心の底にあるものは解りました。これ以上聞いても堂々巡り、ですわね。では、質問を変えましょう」

 

 

 ……、セシリア?

 

 

「……学校を爆破したのは……貴女ですか?」

「っ!」

 

 私は……その時のセシリアの眼が……、とても怖ろしく感じてしまった。まるで、少年兵の様に窶れ、希望すらない死んだ魚の様だった……。

 

『えぇ、その通り』

「「「「「!!!」」」」」

 

 急に、目の前の女の殺気が高まった……‼一体何が起こるというのか……!?

 

『この生成された小型IS、“アポリオン”の力でね』

 

 その途端、彼女のISのテールブースターから、ISコアが生成射出され(・・・・・・)、数十匹の蟲型ISが空を飛び回り始めた。

 

「「「「「!!!?」」」」」

「あ、有り得ん!ISコアをその武装で創り出し、一瞬で無人機へと組み替えるだと!?現行技術でそんなことができるというのか!!?」

 

 思わず叫んでしまった私だが、次の一言でぐうの音も出なくなった……。

 

『宇佐美幻って子を、この世界の常識に当て嵌めない方がいいんじゃない?』

「……、ッッ!」

 

 っ、確かに……そうだったな……‼ブラッド・ストラトスやライダーシステムを熟知し創り上げた一人が、この程度の事ができないと考えていた私は甘かった……‼

 

「でもこの虫のIS……武装も何もないんだけど……」

『この子達の力は、全てを貫く刃の力でも、全てを狙い撃つ射撃の力でも、全てを打ち砕く戦闘技量でもありません……』

 

 簪の言葉に反応した蟷螂のIS。そして、次の言葉を呟いた。

 

『40㎞』

「……は?」

『何のことだと思います?』

 

 ……どこかの死神漫画の蛇の言葉か?……おっと、私も惣万さんや一夏に毒されてきたな……。

 

「……分かんないわよ、とっとと教えなさいよ」

 

 目の前の人間を睨みつけ、ファイティングポーズを取った鈴が喧嘩っ早く尋ねる。……だが、私たちは次の瞬間絶望的な答えを知ることになった……。

 

『……このISたち“アポリオン”が、瞬時加速を使用せずに、“一秒間に進む距離”ですよ』

「「「「「はっ!!!?」」」」」

 

『そして、その速度を利用し無限に創られるISコアを用いた自爆特攻がどんなものか……身を以て知ってもらいましょう……』

「ッッッッッッ総員退避ッッッ!!!!!!!」

 

―ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

 

 

 ………………、ぐぅ……!

 

「箒……生きてる……?」

「こんなところで、死んでたまるか……」

「はっ……上等ね……!」

 

 各々防御能力を使用して助かったようだな……。鈴の龍咆のシールドポッドがスライドし、桃色の光が私ごと周囲を覆っていた。コレが戦兎さんが装備させてくれた武装、か……。

 

「あれ……どうしようかしら……、近づこうとこれじゃあね……」

 

 マッハを超えて飛んできた蟲型ISアポリオンが粉微塵になって私たちの周囲に落ちていた。

 

「私の単一仕様能力を使えば……何とか……、っ!」

 

―ドッガァァァァン‼―

 

「今度は何!?」

「一夏の方向だ……!何が起きている……?」

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

 くっそ……コイツ!やっぱり強い……!

 

「オイお前!何で俺を狙う!?」

『貴様を殺す事は、私が生きる事と同義だ』

「訳分かんねぇよ……」

 

 駄目か……話通じないタイプの悪人か……?

 

「っち!鬱陶しい‼」

『…』

 

 俺は片腕の『刹羅』を展開し、一方のブラック・テイルは剣が可変し銃身が現れた……。そして、白と黒の光が俺の目に入り込んだ。

 

―ドォォォォォォォォンッッッ‼―

 

 白と黒のエネルギーが拮抗し合い、吹き飛んでいく。その時だ、ドクン、……と妙な感覚に襲われる。じわじわと目元が熱くなる……。あぁ、これ……目の色(・・・)変わったな(・・・・・)

 

「ピンチになると目が覚めんのか、随分適当な相棒だなオイ!」

 

 なぁ、ISの中の、真っ白な俺(白式)様よ?その途端、周囲のエネルギーが俺の刀に集まってきた……。やれってか?……いいだろ、乗ってやる!

 

「ハァァァァァァァァァァ‼」

『ふん……』

 

―ズバァァッ!!―

 

 うっそだろ……すっげぇな、今のかなり渾身の一撃だったんだが!

 

「切裂きやがったコイツ……!」

『ペラペラ無駄口の多い男だ。……夕凪燈夜』

 

 って、あれはマズい!なんだか知らんがヤバい‼どす黒いモンがブレードに集まりだしてやがる‼

 

『喰らえ』

「くっっ……‼」

 

 

 

―ドッガァァァァン‼―

 

 

 ぶっはぁ……‼今のをもろ受けたら死んでたんじゃねぇか……!?

 

『……成程、零落極夜を周囲に発生させて防御したか。だが、無意味だ』

 

【Bat…B-Bat…Fire!】

 

 なに?今度は何だよ⁉

 

「蝙蝠の羽……?」

『累乗移行……完了』

 

 ビット兵器がエネルギーウィングに接続されて……ナイトローグみたいな翅が四枚も……ん?そういや、戦兎さん言ってたな……。

 

(……倉持技研で宇佐美じゃないローグと戦った……。ヤツは、今の君達よりもはるかに強い。まるで、戦いの為に生まれてきた存在みたいだった……)

 

「まさかお前……二人目のナイトローグの変身者!」

『そんなことを聞いて、何になる……』

 

 ……‼消えた……、って違う!!!?後ろ……ッ‼

 

「がはァっ!!!?」

 

 嘘だろ……、ハイパーセンサーが反応できない速度で、吹き飛ばされた……!!!?

 

『お前の力や技が、いくら織斑千冬に近づこうとも…私には勝てない』

 

 !!!?いつの間に後ろに……、ガァ!!!?ぎ、ぅ……。

 

『……何故剣を離さない。何故戦おうとする。無駄だという事が分からんのか』

「無駄だって事で、俺が諦めるとでも思ってんのか…!」

 

 ぐっ……こんな子供に、首を掴まれて持ちあげられるなんて、無様だな俺?…けどな。

 

『知らんな…だが、弱者に戦う理由など無い。弱い貴様の行いなど、全てが無意味だ』

 

 ……、無意味……。無意味……ね……。

 

「はっは…」

『……む?』

「…はッ、随分と舐めた口利いてんじゃねーかクソガキ」

 

 意味が無いなんてことは知ってるよぉ…!けどな、理由が無いなんてこたぁねぇんだよ……!!

 

「この世は理不尽だらけだクソッタレ……!俺に千冬姉程の力がねぇ事なんて知ってんだよ」

 

 ……でもよ……。

 

「でもよ……仲間が、いるんだよ……‼」

『仲間……、はっ。下らん。感情や力を共有する等、気休めにもならん。恐怖や無力感から逃れるための偽りだ、そしてその調和を乱すのも人間の性だ』

「……お前は、虚しいヤツだな」

『ぅん?……何だその眼は。見下しているのか』

 

 見下してる訳ねぇだろ……、見下せねぇよ。その辛さは、俺も知ってるんだよ。

 

「その為に、力を振るうヤツもいんだよ……俺、どうにも根本がバカなもんでな」

 

 だから、無意味でも信じてくれた人の為に、意味を持たせたいと思ってんだよ…‼

 

『ッ‼貴様らは……いつもそうだ。必ずどこかで、私の様に背負うモノが無い人間に負けられないと思っている……!勝つことができると考えている、私より強いと驕っている‼』

「勝てるなんて思って戦っているわけじゃねぇ……強いなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇ」

 

 ……お前がどんな顔してんのかは分かんねぇ‼けど、そのマスクの下で怒り、寂しんでいる表情なのは解る、そんな顔で……驕るもクソもねぇんだよ‼

 

「勝たなきゃなんねぇから、強くならなきゃなんねぇから戦うんだよ‼」

『戯言だ‼』

 

 っ、ドツボを突いたらしい……どうにも俺も言い過ぎた、キレちまったみたいだな……‼

 

『背負うモノが無い故に、私は強者であれた‼その私を否定する貴様らが……気に喰わないんだよ‼』

「気に喰わない……だと……?ハッ、ボッチで寂しかったってか!」

『仲間など関係ない‼私を無意味だと……利用価値でしか見なかった奴らは全員殺してきた‼なら次は意味があり利用価値があるものを殺す‼それが終われば私を支配しようとする存在を殺す‼殺す、殺す‼コロシテヤル!!!!!!!』

 

 ………………。

 

「……お前の闇の底は知らねぇ……」

 

 けどな……。

 

「だが‼ソレではいそうですかって殺されてやる程、俺の命は安くねぇんだよォォォォォ!!!!!!!」

『ゥ織斑ァァァァ‼ィ一夏ァァァァァァァァ!!!!!!!』

 

 これで……終わりだ……!!!!!!!

 

 

 

―ガッギィィィィィィィィィィ……ンッ!!!!!!!―

 

 

 

『「ハァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」』

 

 

 

―………………バキッ―

 

「……!!!?」

 

 雪片が、折れた……!!!?

 

『っ……フハハッッ!!終わりだ‼死ね!!!織斑一夏!!!!!!!』

 

 

 

―……………………ドシュッ―

 

 

 

 その時……俺が感じる五つの感覚が、途絶えた。

 

 

「…………ぁ……?」

 

 胸に、剣が突き刺さっている……。

 

「……いち、か……?」

 

 空中を舞う血の飛沫に、俺の頭に突き刺さる短剣(・・・・・・・)が映り込んでいた……。

 

 

 

 

「いちかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 …………ほう、き……?

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

 

 ………………みん、な……?

 

「一夏さん!?…そんな……」

「うそ…でしょ……?」

「……、っ……(致命傷だ……生きているわけが……無い……‼)おのれ……‼」

「……本音。今すぐ離脱して…!」

「っ……でも……!」

「いいから早く‼織斑先生が来るまでの時間位なら何とかするから‼」

「ダメ!かんちゃんも死んじゃうよ‼」

 

 

 ……聞こえる。脳が吹き飛ばされ、耳の機能など、無くなったはずなのに……心の中に皆の声が……。

 

「あ……あぁ……あぁぁぁ………………」

『……次は…向こう側で遊んでいる奴らを殺すか。そうすれば、織斑千冬も出てくるだろう……フフフ』

 

 

 呼んでるんだ……答えなければならねぇのに……。

 

 動かないんだ……立たなければなんねぇのに……。

 

 見えないんだ……敵を見ていなきゃなんねぇのに……。

 

 ……でも……俺の、人間の限界……なのか……。

 

 

 

「……っは……、はっ……はぁっ……なんで……どうして……。どうしてだ……、一夏……」

 

 

 

 ……箒……?

 

 

 

「私から離れていかないで……。……た……」

 

 

 

 

「助けてくれ……誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

 

 

 ……………………………………、声が、聞こえた……。

 

 動かなければ……、助けなければ……。

 

 みんなは……俺が…。

 

 

 

 

 

 

 俺 ガ 、 護 ル 。

 

 

 

 

 

【……オーバーオーバー・ザ・ジェネレーション‼】

 

 

 

 

 

箒side

 

 一夏なら、どこかで大丈夫だと思っていた。一夏なら……強くなってくれると思っていた。そんな事を思う一方で、私は自分の心の底の甘えを見ないふりをしていた……。年相応の、ただの女でしかない部分が、冷静を保っていられない……。

 

 どうしよう……私が今やれることは、何だ……?思いつかない……、どうしたらいい?

 

 ねぇ、誰か……助けて……?戦兎さんも間に合わない、千冬さんも間に合わない……あの女にも頭を下げたって良いけど、いやしない……?なぁ、どうしたらいい……ねぇ一夏……!私は……どうすれば……?

 

 

 だから、言ってしまったのだろうか……、私は、誰かに甘えてしまった。

 

 

 

「助けてくれ……誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

 

 それが、弱さだと気が付いても、なお……縋り付いてしまったからだろうか。パンドラの箱を開けてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

 

 一夏が、死んだ。その場にいた人間達の頭の中が真っ白になる。寒い……寒い。想い人が、幼馴染が、戦友が。仲間の命が奪われてしまった。

 

『……――――――――‼』

 

 声にならない叫びを上げる者。思わず眩暈がしてしまう者。鬼の形相で仇を討とうとする者……。その場は一触即発の事態であった。

 

 ブラック・テイルの操縦者は歓喜していた。間違いなく死んだ……そう、その筈だった。

 

 

 

― ド ォ ン !!!!!!! ―

 

 

 

 

 それは……突然に起こった。

 

「……!!!?」

 

 

【……オーバーオーバー・ザ・ジェネレーション‼】

 

 白式・刹羅から……そんな声が聞こえた。虚ろな瞳で首を垂れていた箒の傍の、一夏の亡骸から波動が広がる。

 

【Ready go‼】

 

―シュゥゥゥ………―

 

 涙で濡れた顔で、恋人はソレ(・・)に向かって振り返る。

 

「…!!!?」

 

―ウゥゥゥゥゥゥゥゥ…―

 

 地の底から響くような呻きだった。

 

「…………!」

 

―ウゥゥァァァァァ…………………―

 

 あらゆる人間は絶句する。全ての人類は嫌悪する。その姿も、その力も害悪そのものであると本能で察知した。

 

「………、…」

 

 ドロドロと赤黒い粘液が溢れ出し、一夏だったモノの腹部には、「赤と金のビルドドライバー」が形創られた。

 

【フィーバーフロー‼】

 

 白銀の歯車が回り、死体を青白い液体へと分解すると……それが凝固し、一匹の怪物を生み出した。

 

『………………ォァ………………』

 

 金色の瞳が、無限の成層圏へと向けられた。そして、刹那……。

 

 

 

『オァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!』

 

 

 

 この世に生を受けたソレは、けたたましい産声を上げる。咆哮。絶叫。そして倒壊。その叫びのみで、キャノンボール・ファストのサーキットは崩壊(・・)した。

 

「…………い…ち、か?」

 

 箒が、ぐしょ濡れの呆けた顔で『ソレ』を見つめる。そこには、白き孔が開いていた。虹色の血液が通う蛇がいた。……最早その姿となった彼に、物理法則など通用しない。

 

『……スマッシュか?』

 

 Mがそう呟くのも無理はない。仮面ライダーにも、ISにも見えない有機的な外見となっていた織斑一夏。巨大な手甲と身体の各所に見える触手状の突起物……ベルトの下から伸びる前掛け。寒色と暖色のラインが身体中に張り巡らされた、最早人間とは言い難い異形の存在……。

 

『…いいや、それを抜きにしても生きているはずはない。夕凪燈夜で刹羅の生体再生能力を初期化したはずだ……』

 

 そう、彼は間違いなく死んだのだ。復活の手段はあるはずがない。

 

『“脳”と“肺”と“心臓”を潰した、なのに何故…?』

 

 だというのに、Mの前には『織斑一夏』が立っていた。しかし、この存在は自分が殺したかった『織斑』であるなどと言えるのだろうか……?

 

『……誰だ、貴様は』

 

 だが、怪物からその答えは返ってくることなど、なかった。白い異形は手甲『エボルティグラスパー』を胸の前で交差させると、金色の目と両肩の『エボルティヴォイダー』が輝き出す……。そして、彼の前方に孔が開いた。

 

 

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!』

『なっ……!?』

 

 

 

 ホワイトホールから発生した、『この世と逆位相のエネルギー』が視界に映るモノ全てを飲み込んだ……。

 

 

 

???side

 

『……成程。アレが究極態を超える人間独自の力……“エボルト超越態”か』

 

 白いコブラにも、エイリアンにも見える異合な化け物、それを見て彼女はにたりと笑う。『666』と刻まれた赤い瞳で原作すら超えた存在を眺め続けていた……。

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

 

 

「とぉりゃぁ‼いよっしゃ!ひっさびさに戦えてるぜ‼」

「こんな時にカシラは何処に行ってしまわれたのでしょう……ハァッ‼」

「はいはい、皆こっちこっち!焦らないでね!」

 

 キャッスル、スタッグ、オウルのハードスマッシュが人間を護りながら小型のISを撃破していく。その傍らで、避難誘導をしていたクロエの頭の中に、………………突然痛みが走った。

 

 

 

―ずきっ……―

 

「うっ……?」

 

そ の 時 、 不 思 議 な 事 が 起 こ っ た  。

 

「……っ、ん?」

 

 立ち眩みが起き、両手が砂地へと付いた……、そして、彼女は『おや?』と思う。さっきまで、私はIS学園の廊下にいたはずだ……。

 

「え……っえ、えぇ……えぇぇぇぇ!?何処ココォ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げ、天を煽ぐクロエ。真っ赤な空に、赤い砂漠……。空の向こうに瞬く星々……そして、地球(・・)があった。

 

『煩いぞ、小娘』

「!?」

 

 凛とした声が響き、彼女は後ろを振り返る。そこには……豪奢な王座があった。そこには一人の女性が腰かけていた。

 

 

 

「ぁ、……………………綺麗……」

 

 クロエは、その人物を見て呟いた。白い上品なヴェールに、細かな銀の刺繍。それと対比するかのように美しい黄金の髪には、虹色に反射する透明なメッシュが入っている。碧緑の瞳は宝石の様であり、肘をついた左手首にはクロエと同じバングルが付いている。そして、何よりも整った顔立ちは、地球では目にかかれない美しい比率を保っていた。

 

『何を当たり前の事を。私はその様な世辞など聞き飽きている…まぁ悪い気はせんがな』

 

 変わらず謎の場所に唯一ある玉座に深く座った女性。ただ、まんざらではない様子だった。

 

「……女王様みたい、ですね……」

『……ほう。“みたい”、だと?』

「……ッ!!!?」

 

 その瞬間、その場の空気が、いいや、存在そのものがクロエに向かって押し当てられる。何もない空間のはずなのに何億もの視線にさらされている様な力を感じ……クロエは思わず首を垂れた。

 

 

『思ったことを直ぐに言葉に出すな、口を慎め不敬者』

「ぅッ…申し訳ございませ……『……と言いたいところだが』…へ?」

『久々に“出て来れた”のだ…許す。この私に何か聞きたいことがあろう?言ってみるが良い』

 

 恐る恐る視線だけを金髪の女性へ向ければ、彼女の碧眼が優しくクロエを見ていた。

 

「えーっと……では貴女様は……誰なんですか?」

『……ふむ、良かろう。面を上げよ』

 

 その途端、彼女の手に『光子の杖』と、『赤い剣身のサーベル』が現れる。

 

『クロエ・クロニクル……。長年私をその体に宿してくれた事、礼を言う』

 

 そして、厳かな光に包まれた彼女は、昔を懐かしむように、ゆっくりと口を開いた……。

 

『我こそは“王の石(キングストーン)”の継承者。ナージュの民を統べた者。五万年の平安の上に座した創世王……』

 

 

 

 

 

 

―我が名はベルナージュ。火星の、女王だ―




ファウストデータファイル

エボルト超越態
身長: 203.9cm
体重: 148.2kg
初期ハザードレベル:XX
IS(疑似トリガーシンクロ)適性:XX

特色/力:異空間『ダークネビュラ』を用いた外宇宙へのワープドライブ、ホワイトホールを利用した攻撃、接続した異世界のエネルギー吸収能力強化と進化。

 エボルト究極態やISの上位互換。そkaかoknumsf5-@.sk■w@■■■■――――……(以下文字化けして解読不能)。



聖なる黒嵐蟷螂(サンタ・テレサ)

 宇佐美が亡国機業に提供した第4世代機。企画段階ではMへ提供するISの候補の一つだった。しかし、彼女は黒式を使用する事となった為、元少年兵キーサの専用機となった経緯を持つ。ダークグリーンにオレンジのエネルギーラインが血管のように浮き出る機体で、蟷螂を思わせる全身装甲。IS操縦が不得意なキーサへの配慮でサポートアシスト機能が充実しており、逃走や撤退時において十分な戦場離脱性能を発揮する。
 宇佐美が創ったロストタイムクリスタル製ISコアを核にしているが、それとは別に武装にもISコアが使用されている。シュトルムが考え出した理論を基に造られた特殊合金『ネビュラカーボン』を用いた機体。但し戦兎が造った試験機とは違い、こちらは完成に近い性能を誇る。体内に流れるネビュラガスが血液の様な役割を果たし、エネルギー効率が試験運用機より60%程向上している。
 待機状態はエメラルドグリーンの万年筆。モデルはトレーディングカードゲームBSの『黒蟲魔王ディアボリカ・マンティス』&『風の四魔卿ヴァンディール』らしく、怪物然とした機体となっている。尚、名前の由来は『BLEACH』のノイトラ・ジルガの帰刃『聖哭蟷螂』から。


武装
・イガリマ
 エネルギー刃が巨大な鎌。この武装にもISコアが使用されている。柄などの部分に配置されたクリスタル部分が展開装甲とハイパーセンサーとなっており、相手の攻撃に対して0.015秒以内に常に50~60度になるよう位置を移動させることができる。つまりオートガードをしてくれる鎌型IS。

・ザババ・ニトゥ
 両腕に装備された鋸状の高振動ソードブレイカー。変形し鋏の様な切断兵装にもなる。

・シュルシャガナ
 下半身の四脚に隠されたエネルギー状の丸鋸。逃走時の車輪にもなるが、滅多に使わない。

・シェオール
 巨大なカマキリの腹部型ISコア内蔵バックパック。ISコア増殖生成装置であり、ISコアを搭載した簡易量産ISを半永久的に生み出す。一度に孵化させることができる数は200機ほど。

・アポリオン
 シェオールより生成される1mにも満たない第4世代無人機。全体的には角がランス状になったカブトムシで、前脚がカマキリ、翅がトンボ、後脚がバッタの様なデザインの小型甲虫機体。武装も頭部のサーベル以外は存在せず、戦闘能力は無いに等しい。しかし、この端末の使用目的は「発生するエネルギー全てをISコアごと自壊(オーバーロード)させて超加速し追尾弾と化す」特攻であるため何ら問題はない。瞬時加速(イグニッション・ブースト)未使用の場合でも最高速度は秒速(・・)40㎞に迫り、絶対防御をものともしない衝撃を持つ。特殊なISコアを湯水のように破壊する事でISコア・ネットワークにも損傷を与えることができる。だが、何より恐ろしいのは一度に200機生成されるという数の暴力であり、自爆特攻を目的とした波状砲撃は最早悪夢である。モデルは『ダーク・マッハジー』。

単一仕様能力
・『エンプーサ』
 サンタ・テレサが保持、及び生成したISコアの数の分だけ攻撃性能、防御性能、飛行性能、PIC性能が倍化していく。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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