IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
キャノンボール・ファストは、結局IS学園施設の倒壊によって決着をつけることはできなかった。戦闘の余波によってかなりの被害が出ており、学校が再開されるには数ヶ月はかかるとされ、生徒たちはリモート授業のカリキュラムに変更された。IS学園の寮は比較的被害が少なかったためである。
そして、IS学園にて一夏と交友関係を持ったメンバーが今現在どこにいるかと言うと……。
「えー。では遅ればせながら、織斑一夏の誕生日を祝いまして、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
レストランカフェ『nascita』にて、一夏や惣万が作った料理に舌鼓をうっていた。それぞれが晴れやかな表情で、不安で暗雲立ち込める未来がないかのように。
「はぁ……」
「ん?どうしたんすか」
「いや、こんなのんびりしてていいのかねぇ……、一夏に変なことが起きたっつーのに」
「そんなこと言われましてもカシラ、彼元気そうですよ?」
「いまも箒ちゃんと幸せそーにね?」
三羽烏らに指をさされる一夏は、病み上がりの状態でありながら幼馴染の箒と鈴や御手洗数馬、そして病棟から退院した五反田弾たちとの昔話に花を咲かせていた。
「……どうだか。本当に楽しいなら良いんだが。周りに合わせてカラ元気ってこともあるだろ」
喉元に引っ掛かる言い方をしたシャルル。彼もまた、心の底に拭いきれない黒いものを抱えているからだ。
「ま、今はとりあえず明るく振舞って楽しまなきゃな…――――。あ、くーたぁぁん!お願いがあるんだけどさ~♡」
「うっさいグリス‼ほらラウラ寄越しますからお世話よろしくお願いいたしますね‼」
「おぉ嫁!見てみろ、姉さんに今日の為選んでもらった双子コーデだ!どうだ似合うか?」
「あーまぁ、似合ってんじゃねぇか?……あ、お前これ食うか?」
「む?なんだこれは」
「カスレ。フランスの鍋みたいなもんだ。俺が作った。くーたんにも持ってけ。Bon Appétit」
「おぉ……」
しれっと厨房を借りていたらしい。そして本場仕込みのフランス料理は、一夏や惣万すら舌を巻くレベルの完成度だった。シャルル、あなたは一体どれだけのチートなんだろうか。
「おや?というか、布仏さんはどちらにおられまして?」
「更識かん無と一緒に刀奈や虚の世話をやいてるわよー」
わいわいがやがや。その一言に尽きる暖かな光景がそこにはあった。一方、因幡野戦兎と織斑千冬はカウンター席にて子供たちの和気藹々とした様子を眺めている。ちびちびとエスプレッソコーヒーを舐めるように飲みながら、二人は以前から疑問に思っていたことを思案している。
「皆、あれだけのことがあった後なのに、前を向けるだけの強さがあるよね。凄いなぁ」
「…――――人間は慣れる生き物だ。立て続けに様々な出来事が降りかかれば耐性もつくだろう」
「そうだよねー。……記憶喪失だから分からないんだけど、人間って一年でこんなにトラブル舞い込むわけ?」
「そんなバカな話があるか。これは多すぎだ。向こう側はどうやってこちらの内情を知っているのやら…――――」
苦みの強いカップの中身を飲み干すと、千冬は不機嫌そうに眉をひそめた。戦兎もその声に顔を曇らせる。お互い視線を交えると、示し合わせたように大きくため息を一つ吐いた。
「どうした?あ、コーヒー不味かったか?」
「あ、マスター。いやそんなことないよ?…――――ん、でもちょっと味違ったね」
「そうだな、お前らしくもない。風味もいろいろとバラバラだ、お前じゃないヤツに淹れさせたのか?」
一瞬面食らったらしい。惣万は視線を泳がすと、困ったように笑いながら頬を掻く。
「あ、分かっちまった?いやー実はさ、店に暫く“戻れない”かもしれないから、他のアルバイトの子に試しに淹れさせてみたわけよ。途中までは俺が手伝ったんだけどな」
戦兎が飲みかけのカップを奪い取り、一口飲むと肩をすくめる。
「お前ら常連の“目”は誤魔化せねぇか」
「…そうだよ、俺ってばマスターのことよく知ってるし!」
「…――――そういう場合、正しくは“目”ではなく“舌”だろう」
オルゴールが内蔵されたコーヒーミルを挽く惣万に、努めて明るく言う戦兎。店内にベートーヴェンの第九のメロディが流れる中、ぼそりと千冬が冷静な突っ込みを入れた。そして呆れたのか、どこか悲し気にそっぽを向く。悪い悪いと言いながら、彼は戦兎に新しいコーヒーを入れたカップを渡した。
ちょっと残念そうにする戦兎に、じっとりした視線を向ける千冬。いつも通りの光景が、そこにあった。
「んじゃ、俺は追加の料理を作るが、最後に食っておきたいものあるか?」
「あ、じゃあオレ砂糖ドカ入れ卵焼き!」
「私はそうだな、ビールに合うツマミを幾らか」
「へいへい、受け堪りましたよっと……、お前らも一夏と箒のとこ行ってやれ。折角の誕生日だ、昔みたいに兄弟姉妹仲良くさ」
厨房の奥に引っ込み、姿が見えない彼が優しく言った。
「そうだねぇ…、あ、箒ちゃん!卵焼き食べる?マスターが篠ノ之家直伝のヤツ作ってくれるって!」
「惣万も早く来い。昔みたいにといったら、お前もいないとだろう?」
そういって千冬と戦兎は立ち上がる。彼の答えを聞くより早く、彼女たちは先へと歩いていった。
時間は刻々と巡り続ける。誰もそれを留めることはできやしない。例え神や悪魔であっても、その代価は何時か、どこかで払うことになる。
かつて美しいものを知ろうとした
それが時であり、愛であり、別れである。未来永劫変わることないものなどありはしない。
嗚呼、誰もが過去に戻れない。
「ふぅー食った食った。流石に食べ過ぎたか……?」
「遅ればせながらだが、本当に誕生日おめでとう。一夏」
「おう、ありがとな。そう言えば弾と蘭と数馬は更識姉妹と帰ったけど、こいつらもしかして泊まるのか……?」
一夏と箒がフロアを見れば、雑魚寝している少女たちが目に飛び込んでくる。セシリアは「パンツが、パンツが……」とうなされているし、シャルルは頬にクロエの肘鉄を入れられ、覆い被さるようにラウラが抱き着いている。
三羽烏は壁にもたれかかったり、天井からぶら下がったりと自由過ぎる寝相を披露していた。
「まったく、酔っ払いじゃないんだから……あれ、一夏と箒はまだ起きてたの?」
鈴が彼女らにタオルケットをかけて回り、甲斐甲斐しく世話をしている。そんなのだから姉御とか呼ばれるんだよ、と二人は突っ込まずにいられなかった。
「あぁ、私は一応主催者だしな。それにしても保護者のあの三人はどこに行ったのやら」
「そういえば、そうだな……地下室か?」
薄暗い部屋に足音が響く。その人物は気配を隠す素振りも見せず、迷いなく歩を進めている。
“彼”の視線が一点で留まった。ハンダゴテや顕微鏡が散らばった机の上に、アタッシュケースが鍵をかけられ置かれている。
彼はケースに近づき手をかざす。それだけでダイヤル式のロックが自動で動き、解除された。
「…――――」
満足げな笑みを浮かべる男。その中にあるものを手に入れる為、彼はケースを開いた。
「お探しのものはこれ?」
不意に背後から声がかかる。
「ビルドドライバーとソックリだけど、何でこれが一夏の身体から出てきたのかな?理由、知ってるんじゃない?」
冷静で理知的な声。あらゆる温かみを排除し、情を無くした表情で、“彼”にとって娘といっても過言ではない女科学者が立っていた。
「答えて欲しいな――――『石動惣万』」
「――――戦兎か。それを聞いてどうすんだ?」
空っぽのアタッシュケースを机から放り投げ、このカフェのオーナー、石動惣万は小首を傾げる。しかし、戦兎は先程の穏やかな顔はどこへ行ったのか、ただ淡々とした挙動で腰にビルドドライバーを巻きつけた。
「…――――戦兎の質問が聞こえなかったのか。答えろ。何故だ?」
「……なんだ、お前もかよ」
そこに、もう一つ人影が増えた。日本刀を構えた彼女もまた、鋭い視線を眼前の惣万へ向けている。
「全く、普段のオレだったら真っ先に『今の超能力なに⁉』って聞きたいところなんだけどさ。今、状況が状況だから」
「戦兎、そもそも俺が敵っていう証拠はあるのか?俺もクロエのように不思議な力を持っているだけなのかもしれないぞ」
「いいや、それはない」
千冬と戦兎、彼にとって最も縁深い二人が彼に真実を求めている。
「ほぉ?」
「ブラッドスタークの動きは、お前の身体のクセと共通点が多かった。今思えば、小さな疑念は初めからあったのだが…――――、確信に変わったのは先の戦いだ。お前は、サンタクロースとケーキのベストマッチフォームを知らなかったな」
「……――――なぁるほどー、スタークか誰か確かめるために、皆に内緒で最後のベストマッチをクロエに浄化させていたのかぁ」
先程までの、団らんの場にいた三人はいなかった。
「どうなんだよ、マスター…いや、石動惣万」
戦兎と千冬がにじり寄る。認めたくない真実へ。
「…――――お見事」
彼女らの耳に、冷淡な声が聞こえた。
「予想の通りだ。お前らならこの真実にたどり着けるって信じていたよ」
「…――――そうだね。信じたくは、無かったよ」
「あぁ。あれほど、…――――信じていたのにな」
「そりゃどうも。世界的な幼馴染二人にそう言われると嬉しい――ね、ッと!」
マズルフラッシュが熾る。少年兵時代から磨かれ抜かれた早撃ちは、人類最強格の二人が反応するよりも早く、戦兎の手元の道具を撃ち弾いた。
「ぐっ…!」
「悪いんだが……、こっちも計画が前倒しになった。まぁ想定の範囲内だが」
「トランスチームガン…!やっぱり、アンタが……!」
「ブラッドスターク、か……」
銀と黒の拳銃が惣万の手の中で鈍く輝く。彼は銃口をぴったり二人に突き詰めて、油断なく目を細めている。
「よしっと。……じゃ、これは返してもらおう。元々俺のものだ」
白い床に転がった傷一つない“赤いドライバー”をゆっくりと拾い上げる惣万。ところが、彼は困ったような笑顔を浮かべ、戦兎と千冬に猫なで声で頭を下げる。戦いたくないとでも言うように。
「…――――なぁ、ところでよ。上じゃまだお祝いムードなんだしさ。ここは見逃してくんない?ほら、一夏たちも俺が裏切り者だとか伝え辛いだろ?」
「…――――は?」
「このとーっり!…な、頼むよ~?」
「何言ってんだ?…そんなこと、させる訳ないだろ」
二人の女は顔を歪め、瞳の奥には怒りと、ほんの少しの悲しみが宿る。本当ならば彼の言う通り、戦いたくはない。見逃せるものなら見逃したい。本当に、彼女らにとって大切な男だったから…――――。
「…――――はぁヤダヤダ。俺ってば平和主義者なのに~」
「お前はファウストとして活動してきたのだろう…――――、お前にその言葉を使う資格はない!」
「…――――ま。それが当然だわな」
彼は万感の思いを込め…――――押し殺した声で、人としての最期の言葉を吐き出した。
――――今までありがとう。楽しかったよ
「…戦うってのなら別に良いぜ。相手になってやる」
「望むところだ…、そのドライバーのデータもとらなきゃだしね…!」
彼の縦に裂けた瞳孔が、兎と戦乙女を締め付けるかのように見つめていた。嘲るように、彼は丁寧に腰を折る。
「さてさてそれでは、これより始まりますのはファウスト戯曲の第二幕。グレートヒェンの破滅によって世界と時代は遷り変わる。なれば、演者である俺もお色直しってやつが必要だろ?」
彼はぺろりと赤と金のドライバーを一嘗めした。その挙動は蛇のように無機質で、緩慢さの中におぞましいものが潜んでいる。そこにもはや
「そのドライバー、一体何なんだ…」
「見てれば分かるさ」
千冬の疑問を受けて、惣万の手の中で千紫万紅のバックルが妖しく光を放つ。長き時を経て持ち主の元へと戻ってきたを狂喜するが如く。
彼は、仮面ライダーのベルトがあるべき場所へとドライバーを構えた。
石動惣万は、赤と金のバックル――『エボルドライバー』を丹田に押し付け、ベルト『EVバインド』を展開し腰に巻いた。
そして、彼は流れるような動作で二本のボトル――エボルボトルを手の平で精製し、ドライバーのスリット――EVボトルスロットに差し込む。
今、血に塗れた毒蛇は無限の蒼穹へと駆け上がる。その身を呑み込む進化の果てに、彼は一体何を得るのだろうか。
惣万がハンドルに手を掛ける。
彼がハンドルレバーを回転させ第九のメロディを奏でると、そのベルトは問い質す。
惣万は高らかに歌い上げる。破滅の序曲を。その言葉を。
星雲の煙幕が満ちる。青き星が今、赫に染まらん。
深遠たる闇光が、暗黒より現れ出ずる。邪悪に染まりし黄金が、蒙昧の嘘に遮られた人類の目を啓かせる。
あぁ、誰が思うだろうか。何よりも愛を願う者たちへ、絶望は逆しまに破滅を導く。
王蛇が今、破壊の産声を上げる。
『EVライドビルダー』が空間に展開され、彼の前後に星雲に包まれた装甲が形成、石動惣万は絢爛たる邪王の外殻を装着した。星々が、絶望の声を振り絞る。
星喰らいの侵略者が今、再びの誕生を経て大地に立つ。穏やかな彼とはあまりにもかけ離れたその姿、まさに破滅の箱を与えた悪辣なる魔王。
下等種を嘲笑う声が響く。全てのものを哄笑するように。己が力を誇示するように。
「なんだ、それ…」
「……お前にしては、悪趣味だな」
鋭い赤い目。黄金の装飾。額のアストラーベや肩のジャイロ。所々に差し込まれた暗い青が色彩を蝕むように毒々しい。宇宙に関する部品を一つにまとめ上げ、乱雑とさせた姿はまるで…石動惣万の破滅願望が結晶しているようで痛ましい。
その姿は、本当に
戯曲ファウスト 第一部 書斎
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部