IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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ショコラデ?「前回の三つの出来事。ファウストにはまた新たなキャラクターが登場予定。亡国機業のダウンフォール部隊には、篠ノ之束の遺伝子データを改良し製作されたクローンが。それと私の裏切りが戦兎と千冬は想定以上に精神にキてるようです、以上」
オータム「いや、お前誰?」
ショコラデ?「ん?つれないねぇ。原作ならお前が変装するポジションのキャラだったのに…」
オータム「あー分かった。その言い草でめっちゃ分かった。つかなに?女装癖あんのお前?」
ショコラデ?「似合うだろ?つか餓鬼の頃需要ありまくってイロイロやったら、身体がこんなふうになったのかも?」
オータム「あぁ、それは分かる。自然に癖で出ちまうよな。私は男役だった…今もだが」
マドカ「?」
シュトルム「はぁぁぁいこの話題色々と危険なので終了ゥゥゥ‼というかアンタらも何の話しているんですか‼」
チョコ秋「「昔したお遊戯会」」
シュトルム「嘘こけそんな同窓会的なテンションでされてたまるか‼」
ブリッツ「…よしよ~し」
オータム「おい、何で私らの頭撫でてくんだお前?ちょ…、やめろ餓鬼じゃねぇんだよ私!」
ショコラデ?「えー…、取り敢えず七十八話、どうぞ」ナデナデナデナデナデ
マドカ「むぅ…、そんなことより私の出番はまだか!」



第七十八話 『いずれ絶望という名の宇宙(やみ)

 気が付いた時に『漠然とした自我がある』というのは、吐き気がするほどに気持ちが悪い。記憶を無理矢理植え込まれた人形のような…――――、はたまた全く知らない別の世界に急に引っ張ってこられたかのような、極めて異質で歪なそんな感覚。

 

 私は目が覚めた時、感じたことと言えばまさにそれだった。『ほとんどのことを忘れていた』というのに、自分が人間とは違うのは分かっていた。

 覚えていたのは、自分がどこかの研究所から逃げたしてきたこと。そしてこの身体が人為的に創られていることと、同族とも言える『存在たち』がいることだった。

 

(気持ちが悪い…)

 

 人間とは違う視点を持ってしまったからか、嫌なものばかり見えた。自分と人間とを比べて、互いの汚いものが、清いものを汚していく。生きたいと思う純粋な心さえ、犯していく。

 

 ただ、それでも、身体は生きたいと渇望し続けた。人工物であるというのに、命の真似事は一端に再現されていた。そうだ、私は…――――人ならざるものである『織斑千冬』は、間違いなくこの世界にあってはならなかった。

 死ぬべきだった。命ですらない自分は、消えてしまえばよかった。だけれど、…――――、『もの』であるはずの肉体は死ぬのを怖がっていた。

 

「どうして、私にこんな機能を付けた…。私はこんな事なら、産まれたくは無かった…!」

 

 その日その日の食べ物を得ることにも苦労していた。この身体は早熟で、十代後半でも通用する風体だったことが功を奏した。年齢を詐称し、幾つもの土木工事の現場を掛け持ちし、日々の糧をなんとか得ることができていた。

 ただ、身体のスペックは常人以上だったとしても、その頃私自身の技術は身体に追いついていなかった。

 

「おいお前ッ!邪魔するならすっこんでろ!」

「っ…すみません」

「ったく…!半人前にもならねえのに現場出てくんなよなぁ…」

 

 だが、自分が生きていくには、コレしかない。記憶が無いにしても、この身体がバレてしまえば私は生きてはいけない。せめて、せめて人間としてひっそりと生きていきたい…。

 

「ちふゆねー?おかえりー?」

「…」

 

 人間たちが寝静まった時の刻。小さな汚い部屋の中で起きていた同系列機の一夏が、駆け寄って来る。

 

「あの、ね?」

「…――――、なんだ」

 

 なにも知らない。苦労も知らない。背負わされた罪過の炎(クロスオブファイア)に身を焦がすことも無い。そんな一夏がその当時は羨ましくて、妬ましくて、悔しかった。嫌いになれれば良かった…なんて、弱いことを考えたりもした。

 

「ごはん、できてるよ?」

「…――――」

 

 

 だけど、なあ…――――。私は、お姉ちゃんなんだ。この世でたった一人の、本当の意味での一夏の姉なんだ。

 だから、守らないと。既に汚れている自分は二の次にしてでも、穢れを知らない一夏だけは、このままでいさせないと…――――。

 

 

 

 

「おいおい、大丈夫か?」

 

 『本当に、それで良いのか?』…――――そう言われた気がした。目の前では、蛇のように縦に裂けた黒目が私の心の中を見透かしている…――――そんな居心地の悪さがあった。

 

「お前だけの身体じゃないんだろ。もっと自分を大事にしろよ?」

「…それは、お前もだろう」

「あぁー…、まぁそう言われるわな。でも分かるだろ?その生き方を“変えられない”ってことくらい」

「なら、私もお前に言われる筋合いはないだろうが」

「ま、そうなんだがよ。…――――少しぐらいは、融通が利くようにはなって来ただろ?俺も、お前も。随分と柔らかくなった、今の方がずっと楽しそうだ」

 

 

 

「…――――ふん」

 

 これは、かつての記憶。私を慰めてくれた在りし日の一幕。一夏と、従弟と、箒と、■と、惣万がいて…。

 

 …、惣万…?

 

 

 

 

 

 

 

「…――――、千冬姉?どうしたんだよ帰ってくるなり酒飲みまくって…。つか、昨日戦兎とどこ行ってたんだ?」

「あ、…、今、何時だ…?」

 

 酷く重い頭を振って、織斑千冬は目を覚ます。喫茶店nascitaの窓には、いつもと変わらず櫟の樹が覗いていた。

 

「もう一日経ってるぞ、ったく…、ぁ?」

「…――――どう、した」

 

 かちゃん…――――コップが織斑一夏の手から落ちた。有り得ないものを見た、そんな表情で、彼は感情の追い付かない声で問いかける。

 

「…千冬姉。何で泣いてんだ?」

 

 形の良いアーモンド形の目から、温もりが流れ堕ちている。指摘されてようやく気付く、織斑千冬は自分が何を思っていたのかを。

 

「ぁあ…懐かしい、昔の夢を見ていたよ…。すまない、シャワーを浴びてくる、から…」

「え、お、おぅ…」

 

 

 

 記憶が途切れる。気付けば織斑千冬は浴室の中で白い煙に包まれていた。射干玉の髪から裸の足まで温水が流れて堕ちていく。昨日の冷たい雨と同じ様に。

 目の前の鏡に問いかける。映った女としての身体の奥にあるのは、本当に人間の心なのか。悲しむことも、苦しむことも、ただ人の心を完璧に真似ただけのものではないのかと。

 だから、例え自分が“ともだち”に裏切られたとしても、この苦しみというものは、虚像にしかならないのではないのか…――――?

 

「あぁ、まるで悪い酒だ。頭が痛いな…」

 

 膝を折り、裸のまま座り込む。ざぁざぁと冷たい雨に打たれているように、彼女の顔色は青白いままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏の誕生日パーティーが終わって翌日。本来ならばイツメンで遊びに行く予定のところ、戦兎が皆に向かってこう言った。

 

「あ、皆ー…。ショッピングとかは一旦中止ね。誕生日でおめでたい一夏には悪いけど」

 

 その言う戦兎の方を振り向くと、眼元が腫れており、何時もの明るさが彼女からは感じられなかった。

 

 だけど、それでも信じられなかった。彼女らしくない姿、今朝の世界最強(ブリュンヒルデ)の様子…――――居なくなってしまった“あの人”。

 今の状況は、これから話す事をこれ以上ないほど証明しているのに。

 

「……昨日何かあったのか?千冬姉も気が沈んでるみたいだしよ」

「うん、ファウストの尻尾掴んだっていうか…――――マスターがブラッドスタークだった」

「「「「…――――、は?」」」」

 

 誕生日の悪趣味な冗談(ドッキリ)なんだと、信じたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 険しい顔立ちで、冷蔵庫の奥の秘密基地に皆は集まる。人数が人数なだけに少々手狭に感じるが、戦兎が前もって実験器具を片付けていた為、充分なスペースを確保できている。

 

「…――――とまあ、昨日はそんな事があり完膚なきまでに負けました、チャンチャン。だから今、石動惣万はいないってワケ」

「そんな……」

「嘘でしょう千冬さん…!」

「…証拠はある。これは石動惣万が所持していた『トランスチームガン』と、『コブラフルボトル』だ」

 

 昨日起きたことの説明が終わると、手前の机に、石動惣万(ファウスト)から奪った物が置かれた。数々の人間を不幸にしてきたテクノロジーの産物が鈍い色を反射して光っている。

 

「ビルドのシグナルに記録されてた映像データともバッチリ合致したよ。正しくスモーキングガンだね…」

「つまり、奴こそがブラッドスタークだ」

 

 そう、戦兎の説明を断ち切るように千冬は結論づけた。

 

「ど、どういうことですか!あの人が、そんな…!だってあの人は優しかったじゃないですか!誰にだって笑いかけてくれて、傍に寄り添ってくれて、それで戦兎さんだってクロエだって…!」

 

 ショックが大き過ぎて半ば叫び声になっている箒。彼女も一夏と同じく、古くから石動惣万と親しくしてきた人間の一人であったのだから、混乱するのも無理はないだろう。

 だが、それ以上に深い関りを持っていた人間の口から、冷たく淡泊な声が漏れた。

 

「戦兎と千冬姉が言うんだ。ホントのことだったんだよな…?」

「…――――一夏…」

「だけどな。それでも、俺は自分の目で見なきゃ納得できねぇ…」

 

 そう言った一夏の手は…強く握りしめたせいか、真っ赤な血が流れていた。その手を見つめつつ、戦兎は意を決して、石動が変身した姿を全員に見せる。

 

「奴は新しい力を手に入れた。『仮面ライダー』の力を…」

 

 …――――最悪(災厄)とも言える力の差を。

 

「どうして、こんなことに…」

「…この話、クロエにもすんのか?」

「ッ…」

 

 一夏は、石動惣万の義娘(クロエ・クロニクル)の存在をあげると、戦兎は思わず声を詰まらせた。

 

「…む?その姉さんは、今どこにいるんだ?」

「こんな時だってのに、どこ行ってんのよあのネットアイドル…ん?」

 

 その時、彼女らが持つISに通信が入る。

 

「これは、ISのプライベートチャネル…?」

『よぉ。IS学園の代表候補生の一年生、全員揃ってるな』

「「「⁉」」」

 

 昨夜の事を何とも思っていない、あっけらかんとした声で、惣万は語る(騙る)

 

『いやぁ、今な?ちょっとレゾナンス近くにいるんだが…』

『(お義父さん!タピオカカフェオレ飲みたいです!)』

『あ、ちょ…――――クロエ引っ張るんじゃねぇよッ、つーかネットアイドルがこんなところにいたら騒ぎになんだろ!お前可愛いんだから少しは自覚しろってぇの。ただでさえファウストに狙われるんだから、誘拐事件とか起きたらお義父さん悲しくて泣けてくるぞ』

『(む…、むぅ、今褒めました…?)』

『…まぁ、と言う訳だ。一足先に遊びに来てるから、皆も早くしてくれよー?そうだな、お前らに預けてあった“おもちゃ箱”も持って来てくれ、クロエも喜ぶだろうしな』

 

 それは、言外にクロエを人質に取ったということ。そして、何を思ったのかIS代表候補生たちの身柄とおもちゃ箱(パンドラボックス)を要求していることだった。思わず空気が張り詰める。

 

『ハッハッハ、そう気張るなって。詳しい話はこっちに着たら教えてやるよ、いぃ~ちかぁ。んじゃあ…Cia~o?』

「ッ!」

 

 そして、己の正体がブラットスターク(因縁)だと答え合わせをし、通信は終わった。漸く一夏は、いや、織斑の二人(・・・・・)は騙されていた事を実感した。

 

「…――――、分かっただろう。これがあいつの本性だ…」

「オレたちが、止めないといけないんだ。どうしてこんな事になったのか、確かめないと…、ん?」

 

 喫茶料理店への階段を登ろうとした戦兎は、秘密基地の入り口の冷蔵庫のドアが開いているのが目に入った。そして、その視線の先には、バツが悪そうにしているバイトの女性…巻紙礼子が立っている。

 

「あー…私は何も聞かなかった、そんじゃ」

「待てい巻紙!」

「何すんだよ天才バカ!」

「確か運転免許証持ってたよね!レゾナンスに生徒たち送って!」

「記憶喪失でも免許取れるだろうが!お前持ってねぇの⁉」

「バイクしかないんだよオレ!」

 

 『一夏達と出会う前まではずっと一人で仮面ライダー()ってたからな』と言う、ある意味悲しい哀しい(ロンリーロンリー)宣言が響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…――――、よぉ。早かったな」

「あれ、皆さんどうしたんですか?怖い顔して」

 

 鬼気迫る表情でやって来たIS学園の生徒たちに、クロエは思わずたじろぎ小首を傾げる。だが、戦兎が説明をしている暇はない。

 

「…クロエ。“そいつ”から離れろ」

「…――――、え?」

 

 クロエの背後を取っていた惣万の手には、赤々と燃え滾る光弾が生まれていた。

 

「早く離れろッ‼」

「うわぁ⁉」

 

【フルバレット!】

 

 間一髪。ホークガトリンガーから放たれた全弾は石動惣万に激突し、彼の身体をボロ雑巾のように吹き飛ばす。

 

「え…?なに、が…?」

「っ!駄目か…‼」

「酷いねぇ。ISが無ければ即死だったぜ?」

 

 コーヒーショップの壁をぶち抜いた攻撃も意に介さず、石動惣万の身体には怪我一つ無かった。彼は粉煙揺蕩う大穴の向こうから、埃を掃いながらしっかりした足取りで歩いてきた。

 

「お前が“人間”だったらな…。それに、クロエを躊躇いなく攻撃したお前に、もう同情の余地はない…」

 

 日本刀の如き千冬の鋭い視線もそよ風のようにいなし、底知れない笑顔で一夏たちを見た惣万。彼の碧だった瞳は、今や血のようにどす朱く輝いている。

 “それ”にはもう、人間らしい温もりなど、一切感じることができなかった。

 

「…――――、その笑みが答えだってのか…?どーなんだよッ‼答えろッ‼」

 

 裏切りの事実を知らされていたとは言え、兄貴分のあまりの豹変ぶりに狼狽し、叫び声をあげる一夏。その声は悲壮そのものだった。

 

「ん?どーした一夏。何キレてんだ?」

「そいつは…――――、クロエはアンタの義娘だろうが!戦兎だってそうだ、アンタ自分のこと育ての親っつってたよな!親が…子ども殺すのかよ!なぁ惣万にぃ‼」

 

 だが…――――。

 

「あー…――――、ははっ。親のいないお前には分からねぇよなぁ」

「ッ…」

 

 返って来たのは嘲りだった。一夏と千冬を、人間として扱っていない存在の目だった。

 

「そうだなぁ…。お前創るのに苦労したんだぜ?戦兎」

 

 惣万は喋りながらその顔を、青空の向こう側(成層圏がある上空)へと向ける。

 

「俺が歪めた(創った)。だからなぁ…――――、壊すんだよ」

「惣万、にぃ…アンタ…」

「世界の結末は既に決まっている。地球は終わる、この俺の力でな」

 

 惣万は胸元のボタンをはずし、シャツの中に入っていた朱いネックレストップを宙へと晒した。

 ――――赤黒い粒子が迸る。彼に相応しい、生命を醜く散華させる兵器が身体に吸着されていく。

 

「それは、デュノア社の第三世代機…『コスモス』⁉」

 

 その姿に、シャルルが気付く。それが、自身と関り深いところから持ち出されたことを。宇宙の名を冠するISが、今血に染まる。

 

「何で、ISを使えるんですの…?」

「んん?不思議なことを言うな。そこの一夏も男でISを使えてるだろう?もう女性だけの兵器だとは言えなくなったわけだ」

「や、別に女尊男卑主義者じゃないんだけど?あたしたち…」

 

 最悪の展開を予期した千冬は現状で浮かぶ最適解…――――一夏の首をつかみ自分の方へと引っ張った。

 

「一夏!お前のISを貸せ!」

「え、あ…でもこれ専用機で千冬姉じゃ…」

「早くしろ‼」

 

 戸惑う一夏の手から、彼女は半ば強引にISの待機状態である『ホワイトリガー』をつかみ取り、そのスイッチに指を掛ける。

 

【オーバー・ザ・ジェネレーション!】

 

 その音声をともに、一夏専用であるはずのそれは、千冬の身体に合せて装着された。白と黒の装甲の桜色のエネルギーラインが肥大し、血管のように広がり出す。

 …――――一瞬千冬の目が桃色に光り、周囲の物質が衝撃波によって塵に帰った。

 

「…ほぉ?世界最強と戦えるとは光栄だな、手合わせ願おう」

「…ほざけ」

 

 軽妙な口調の惣万に対し、千冬は感情を吐き捨てるように一本のブレードを取り出して構えるだけだった。

 

「どうやら、白式の中にいる白騎士を無理矢理呼び起こしたようだな。だが…、お前では『零落白夜』しか使えない」

「貴様にはそれで十分だ…!」

 

 …――――両者は超音速でレゾナンスの上空へと飛び去った。数秒で大気圏近くまで到達すると、惣万は片手から赤黒い波動を白式へと放つ。

 だが、それを剣に絡めとり一閃する世界最強。互いに攻撃を放ちながら回避をする様子は、まるで死の舞踏のよう。

 赤いIS『コスモス』は縦横無尽にビームを放ち、そのエネルギーを固体化することで白式を雁字搦めに縛り上げた。だが…――――。

 

「鬱陶しい!」

 

 白式の左腕ガントレットから、黒い波動が放たれた。自由を奪っていた血の色をしたチェーンが木端微塵に砕け散る。自由になった腕で、天に向かって武器を掲げる世界最強。

 雪片から放出されたエネルギーは巨大な剣として復元され、彼女の挙動と連動し音速で振るわれた。

 

「うおぉぉぉっっっ⁉」

 

 惣万は地面に叩きつけられる。

 

「ぐぅっ…、っとぉ…流石にビギナーズラックとはいかないか。ごくろーさん、『コスモス』」

「これで詰みだな。お前のおふざけは、ここで終わりだ!」

「いいや?遊びの時間は終わらない…」

 

 コスモスが先の一撃でシールドエネルギーが全損し待機状態へと戻るが、動く片手で紅い一条の光を空へと放つ惣万。

 その光は青空を瞬く間に侵食し、鈍色罹った極光がヴェールとなって蒼穹に棚引く。

 

「なんだ、あれは…」

「オーロラ?」

「すっごい、毒々しい…」

 

 周囲の人間がその光景に目を逸らされた僅かな隙に、惣万の肉体から異様な力が放たれ、白い騎士を大きく後退させる。

 

「ッち!」

 

 突然の衝撃を食らったにもかかわらず、千冬は機体コントロールし、僅かにバランスを崩す程度に済んだが、惣万は既に『準備』を終えていた。

 

「改めて自己紹介ってやつだ」

 

 石動惣万の身体が、人からスマッシュ(人が想像しうる怪物)…――――否、得体の知れない何か(人の想像すら及ばない生命体)に変わって行く。

 

「な…ッ?」

「人じゃ…無かったの?」

「やっぱり、かよ…」

 

 朱い身体から、縮退する天体の底知れぬ闇が溢れ出す。暗黒の中にて、黄金の四つの瞳が見開かれた。

 闇が、晴れる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うわ…なにそれ。気持ち悪っ…」

「ははは。そうだよな鈴ちゃん、正直なやつは嫌いじゃねぇ。さて、改めまして…――――」

 

 まるでコブラと甲殻類を融合させた歪な怪人。てらてらと滑り、毒々しい緑の発光器官が、脈動に伴い点灯する。全身各部から飛び出た触手がうぞうぞと空間の中をのたくっていた。

 朱と桃に彩られた毒蛇が、慇懃無礼に首を垂れる。

 

「俺の名は『エボルト』。あらゆる星を吸収して自らのエネルギーに変える地球外生命体だ。この星を滅ぼして、俺の一部にする」

 

 彼は、そう簡潔に自身の正体を晒した。

 

「エボルト…?」

 

 その言葉に戦兎は反応を示したが、最早彼らの怨敵となった怪物は語り続ける。

 

「ほぉら、少しくらい喜んだらどうだ篠ノ之束?ISなんて玩具を創って、理解の及ばないものを宙の果てに求めたお前だ。異星人とのファーストコンタクトだぞ」

「ッ…オレは、因幡野戦兎だ!」

「あぁ、そうだった…お前は俺に創られた偽りの人間だったなぁ?…――――『誰かさん』たちと同じで」

 

 その誰かさんがいる方向を、エボルトは特殊な知覚で感じ取りながら、一定の距離感…――――戦闘における自身の間合いを抜け目なく維持し続けている。

 

「そんなことはどうでもいい‼」

「…おっと食い気味だな、千冬おねーちゃん?」

「貴様…、何故私たちを呼び寄せた?お前は何をしようとしている‼」

「ぉ?――――ぅふふ、…ハハハハハ‼…――――決まってるだろ?」

 

 『蛇』は千冬に四つの目を向けると、片手を頭に当てて嘲笑し始めた。心の底から愉快だとでもいうように。

 

「お前たち人間の下らない感情を傍で見て、本当に楽しませてもらった。そこで是非ともお礼がしたくてねぇ…。お前たちには出血大サービスだ」

 

 朱い両手を不気味な光で輝かせながら、空の彼方に生み出した汚らわしいオーロラに向ける。

 

「俺の創る『新世界』の扉を少しだけ開けてやろう…」

「…『新世界』だと?」

 

 千冬が疑問の声を上げたその時、空間が歪んだ。周囲の風景が引き延ばされたように彼方へ引っ張られていく。黒い世界の中に銀色の光が瞬き、また消えていくその様子は、ずっと見ていると気がおかしくなりそうだった。

 永遠にも思えた次元のトンネルを数秒で通り過ぎた一夏たち。だが、その目の前に広がる景色に目を疑う。

 

「ここは…⁉」

 

 一夏達の体にはISやライダーシステムによる変身が自動的に発動していた。しかし、彼女らにとってはそれどころではない。

 目の前には岩石が生き物のように蠢き、空には無機物のリングが幾重にも重なり浮遊している。そして…“ここ”では空は緑色に輝き、幾つもの太陽が青い光を放っている。

 ISが指し示す座標は、太陽系の遥か外に位置していた。

 

「もしかして、ここって…――――別の…星…?」

 

 白昼夢を見たか、狐に化かされたかといった方がまだ現実的だったかもしれない。だが、“ここ”が先程いたレゾナンスとは全く異なる場所であることを、持ち主の危機に対処したシステムが如実に証明している。

 

「そう、ここは…――――お前らが『ベテルギウス』と呼ぶ星を公転する惑星の一つ」

 

 朱い蛇が嗤う。

 

「ほぉ、それにしても…そのインフィニット・ストラトスという兵器、本当に宇宙活動用の機能もあった訳だ。下等な生命体が創った不細工な玩具にしては中々だな。机上の空論とは言え、他の惑星でも体力を維持できているとは…。いやいや面白いなぁ」

 

 蒼穹を渡る蛇は滑稽そうに、インフィニット・ストラトスに向けて淡々と拍手を送る。

 

「だが、もっと面白いものを見せてやる…――――It’s showtime‼」

 

 天災が作り上げた兵器の性能に敬意を払ったのか、はたまた何か別の思惑があるのか。心の奥を見せることなく、エボルトはパチンと指を鳴らした。その瞬間、煌々と輝くベテルギウスは、音すら立てずに崩壊を始める。

 

「…、うそ」

「ブラック、ホール…?」

 

 オリオン座の肩は、突如発生した黒い天体に破壊されていた。その事実に能が追いつかない仮面ライダー達を無視して、エボルトはつらつらと言葉を紡ぎ続ける。

 

「千冬、お前の質問に答えてやろう。こういうふうにあらゆる星を吸収し、そのエネルギーを使ってビッグバンを発生させる…そして生まれるのが、『新世界』だ」

 

 光が数秒で無くなり、暗黒に包まれる異惑星。その深淵で、エボルトの瞳と身体が爛々と光る。

 公転を保てなくなった星が天変地異を起こし始める中で、ISたちは動くことが出来ない。ヘビに睨まれたカエルのように、身が竦んで動けなかった。

 

「ビッグバン、だと…?そんなことをしてお前は…」

「ふふ、心配してくれるのか?だが、生憎俺はお前らみたいに命ってやつにとんと興味が無くてねぇ。宇宙と心中して無に還るなんて、『最低(さいっっっこぉ)』だろ?」

「…――――いや、何一つ理解できねぇよ…」

 

 クローズチャージは、箒のISに抱えられながら苦し気に、そして悲し気にそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほぉ、恒星を吸収して、全盛期の数パーセントほど力が向上したか?』

 

 

 誰かの声が、異世界に響いた。凛とした芯のある美しい声だった。その場にいた誰もが、その声の主を知っている。それは過去、あの大会の時起こった救いの手の持ち主。

 戦兎は声のする方向へとその複眼を向けた。

 

「…――――え、クロエ…?」

「…んん?」

 

 緑色の光に包まれたクロエがそこにいた。彼女は調和の取れた不思議な安心感を戦兎たちに抱かせ、先ほどまで目にしていたエボルトとは真逆の印象を与えている。

 エボルトはその状態になったクロエを見るや否や、大きく溜息を吐き、その名を呼んだ。

 

「…“ベルナージュ”か。久しぶり~…、でもないか」

『表だって会話するのは数万年ぶりだがな』

 

 その名前を告げた瞬間、二人の姿は消える。そして、周囲の大地や絶壁の倒壊が連鎖する。

 

「ッく、何だこれは⁉」

「高速移動で、戦闘しているのですか…?」

「ハイパーセンサーでも捉えられないってどういう…、…――――ぇ?」

 

 その人智を超えた戦闘能力に身を竦めるしかできない少女たち。

 だが、その場にいた人間が本当に目を疑ったのは、次の瞬間だった。瞬きの間に姿を消し、その次の瞬きで現れた二人。だが、圧倒的な力を持って星を破壊したエボルトは、ベルナージュにその体をボロボロにされ、彼女に首元を捕まれていたのだから。

 

「ぐぅ…っ、ははは、容赦ないねぇ?」

『この程度では貴様は死なぬだろう』

 

 ベルナージュの指摘の通り、エボルトはすぐさま身体を回復させていた。そして、その両手で首の拘束を外そうとクロエの黄金のバングルを強く握る。

 

「けど、お前も大分弱体化してるな?あの蜘蛛を殺した時の、一割の力も無いじゃねぇか?」

『その程度で、十分だ』

「がッ⁉」

 

 互いに弱体化を指摘するが、ベルナージュは拘束されていない方の腕に未知のエネルギーを集束し、エボルトの胴体をいともやすやすと貫いた。宇宙空間にエボルトの紅い体液が漂う。

 

「ぐぅッ…!」

『…、死にたくなければついてこい。人間ども』

 

 蚊帳の外にいた人間たちを緑色の光で包むと、ベルナージュは崩壊する星を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球の日本の上空に、金と緑色で縁取られたワームホールが開いた。そして、その中から甲高い絶叫が聞こえてくる。

 

「「「「「「ぅわぁぁぁぁぁぁぁああああああ⁉」」」」」」

 

 彼女らは派手に地面へ激突する。ISやライダーシステムに身体を守られているとは言え、不意打ちとばかりに転移させられては心臓に悪かったらしい。気の弱い面々は目を回していたり、目を白黒させていたりする。

 カフェnascitaから出てきた巻紙は、陥没した庭園と倒壊したコンクリートブロックを見て頬を引き攣らせていた。

 

「う、ぉ、いッ⁉どっから戻ってきたお前ら⁉」

「あ、巻紙さんすみませ~ん…」

「いや、まぁそれは良いけどよ…、IS展開しっぱなしは流石に邪魔なんだが。で、結局お前らレゾナンスからどこ行ってたんだ?」

「ちょっと、…別の惑星へ…」

「…は?」

 

 ぞろぞろと覚束ない足取りでカフェの中へ入っていくIS学園生徒たちの背中を、巻紙さんは呆気にとられた様子で眺めるしかできなかったのだった…――――。

 そんなこんなで、コズミックな衝撃の連発に落ち着いた一行は『発光を目のみに押さえたクロエ』とともに、地下の秘密基地へと戻っていた。そこには秘密を知ってしまった巻紙礼子もお邪魔していたりする。

 

「ところで…アンタだれだ?」

 

 周囲の疑問の声を代表するかのように一夏が訪ねると、クロエの中にいる人物が口を開いた。

 

『私はベルナージュ。火星の女王だ』

「…ラウラー?お前の姉ちゃん中二病?」

「いや、どう考えてもガチモンだよなコレ…」

「さすがくーたん、半端ねぇ…」

 

 自己紹介(?)に対し三者三様の返答を返す仮面ライダー達。それにしてもこのドルヲタ、相変わらずである。

 

「…どうぞ、コーヒーです。火星方面のお方の口に合うかどうかは分かりませんが…」

「火星方面ってどっちだよ…」

「上だよ」

 

  ベルナージュの手元へおずおずとカップを差し出す箒。それにしても戦兎のツッコミはある意味正しいが、もっとこう他に言うべきことがあるだろう…閑話休題(それは兎も角)

 受け取った黒い液体を女王は気品ある飲み方で口に含み、こう申された。

 

『…不味い。下がれ、小娘』

「…――――。小娘って言われた…」

「良かったじゃん」

 

 戦兎ェ…。

 

「つーか、ホントに火星人なのかよ?」

「失礼なこと言うんじゃないよ一夏。見たろ?俺達を約642.5光年先から一瞬でここまで連れてきてくださったんだよ」

「俺はくーたんが何者であろうと、一生添い遂げる自信があるッ‼」

「そーいう問題じゃないんだよねシャルルン」

「おい嫁。…おい嫁」

 

 一気にカオスになってしまう仮面ライダーの面々。ボケしかおらず、会話が全く進まない。

 

「それにしても、ホントどうしてテレポートなんて力が使えたんです女王様?ちょっと分析させてくださいませんか?」

「戦兎さん、今はんなこたぁどうでもいいだろうがよ。それより何で火星人が日本語話せてんだ?」

「いや、そっちの方がどうでもいいでしょーが」

「じゃあお前分かんのかよ」

「それはアレだよ…、…――――、…何でですか」

『10年住めば馬鹿でも分かる』

 

 女王は目の前の馬鹿(脳筋)馬鹿(ドルヲタ)の会話に、そう断言した。

 

「ほぉん…、馬鹿なんですか。アホの子火星人女王二重人格アイドル…アリかナシかで言えば…アリだな」

「止めろバカ、比喩表現だよ馬鹿。一夏の仲間見つけたみたいな顔してんじゃねぇ」

「あぁん?バカバカうるせぇよお前ら」

「お前じゃないよバ一夏」

「あ、そーなの?ワリィ…ってうぉい!」

「いやおめーらマジでうるせぇよ馬鹿ども‼聞けや話‼」

「「「…うっす巻紙さん」」」

(『お前の声が一番うるさい』…とかは言わん。教師の上げ足とるみたいなマネは流石に大人げないしな…)

 

 そんな千冬先生はコーヒーを啜って、面倒事にならないうちに席を立っていたりする。

 

「おら、何か聞けよ天才バカ」

「え、この流れで…?」

「とっとと聞いとけ。向こうも困ってんぞ」

「あー…じゃ、おほん。何でアンタ、石動惣万の…――――いや、エボルトのことを知ってる?」

『エボルトとは入魂の間柄でな。気が遠くなるほどの昔、我が星が滅んだ時に奇妙な因果が結ばれたようだ』

 

 巻紙礼子に尻を叩かれ口を開いた戦兎の質問に、律義に応えてくれるベルナージュ。なんだかんだで良い人らしい。

 

『かつて、世界を滅ぼす侵略者と、私は決死の覚悟で戦った…――――。その結果肉体を失い、今の私はこの腕輪に宿る魂でしかない。この魂もじきに消えるだろう。力も完全体となったエボルトと互角程度の力しか行使できんほどに弱体化した。まぁ、向こうも同じようなものだが。ところで…――――』

 

 今度は逆に、ベルナージュがIS学園の面々へと問う。金色に縁どられた緑の鋭い眼が、正鵠を射抜く。

 

『貴様()、何者だ』

 

 その言葉は真っ直ぐに、彼女の目の前にいた人物に注がれた。

 

「…?俺?」

『…――――』

 

 周りにいた箒や千冬、巻紙礼子の視線が集まる。彼は、その問いかけにゆっくりと答えた。

 

「俺は織斑一夏…――――です?」

『…そうか。お前達は、自分が本当は何者か、分かっていないのか』

 

 ぽつりと、意味深な言葉が静寂に滲む。それは悲しんでいるのか、安心しているのか、はたまた、何か懐かしいものを見るかのような…――――そんな感情が混ぜこぜになっていた。

 

『ならば、お前達が希望となる。それまで、私は眠るとしよう…』

「え…ちょっと待てよ、どういうことだオイ?」

 

 その途端ベルナージュの意識は失われた。クロエが地面へと投げ出され、彼女の身体は眠りに就く。

 

「…う、ヴェァァァァァァァァァ⁉くーたん⁉いいくらですかいくらですかぁッ⁉」

「では20万ユーロ頂きますわ」

「はい20万ユーロ♬」

「嫁と姉さんに何してるセシリア⁉」

 

 …――――相変わらずの金欠貴族と、重課金ドルヲタなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歯車が狂い出す。今まで支障なくカラカラぐるぐる廻っていた鉄の歯車が、誰かの涙で知らず知らずのうちに寂れ始める。繰る繰る、狂々、ズレていく。

 

(俺が、『何者か』だって…――――?)

 

 IS学園生徒らが倒れ込んだクロエを解放している間、一夏の心の中には、しこりのようなものが残り続けていた…――――。




シリアスな場面の裏で起きてたこと

「…む?その姉さんは、今どこにいるんだ?」
「こんな時だってのに、どこ行ってんのよあのネットアイドル…」
「…んだと鈴、くーたんがいつどこ行こうがなぁ、俺らには関係ねぇだろ!(…因みに毎週火・木曜日は焙煎した珈琲豆を取りに行くのがくーたんの日課ですボソッ)」
(すいませぇぇん織斑先生ぇ、傷心中なところ申し訳ないんですがここに変態ストーカーがいまァす!つーか冗談抜きにマジで気持ち悪いわ‼※超小声)
(くーたんチャンネルとかから逆算したんだよ、断じてそんなアイドルを貶めるような真似はしてねぇ‼※超小声)
(シリアスは貶めてるわよね!本編とか色々台無しになるから空気読んでェ⁉※超小声)

※不思議なことが起こり視点カットされました。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部
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