IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N 作:サルミアッキ
箒「あのー戦兎さん。最近私たちの影薄くないですか?一夏といいクロエといい、何かとんでもない方向に行ってますし…」
戦兎「箒ちゃんはともかく、他の面々は元から薄いんじゃない?」
IS代表候補生「「「「そんなことないから⁉」」」」
惣万「サブキャラが滅茶苦茶いるからなぁ…。収拾つくのかなぁコレ?」
シャルル「げっ、宇宙人…。お前どの面下げてココに出てきてんだよ、くーたんショックで寝込んじゃったじゃねぇかよゴラア!三羽烏に看病してもらってっけど…――――って戦兎もショックで倒れたぁ⁉」
惣万「さて、それ以上に影が薄くなっちまったホウジョウ…――――じゃなかった、デンジャラスな嬢ちゃんが大活躍な第七十九話…どぞ~!」
ラウラ「(チベットスナウサギな視線)」
――――時が、少し過ぎ去って。IS学園キャノンボールファストから数週間経った後のことだった。
ここは北アメリカ大陸北西部、『
「き…緊急事態!緊急事態!|侵入者確認!6Dエリアに救援を…がァッ⁉」
真っ二つにへし折れるアサルトライフルの銃身。屈強な男たちの苦悶と悲鳴。厚底のバトルシューズの独唱。それらを奏でているのは、たった一人の少女だった。
「…………」
鉄の通路を独り歩く紫の人影。そう、侵入者はたった一人の少女しかいない。その人物の表情からは何の感情も伺い知れない。
【デンジャー…!】
「……変身」
地獄の底から響くような声で、少女は力を手にする言葉を口にする。周囲に、バンシィのような金切り音が放たれる。
紫の薬品に浸かった少女の姿が成人の体躯まで成長すると、液体はすぐに物質構成をはじめ、数秒で彼女の全身は鮮やかなパープルの装甲に包まれた。
「仮面ライダー⁉」
「こ…こいつ、まさか報告書にあった
黒いヘルメットに光る水色の瞳で周囲を睥睨する鰐のライダーは、スチームブレードとネビュラスチームガンを合体させ、ソレを構える。
【ライフルモード!】
「も、目的はなんだ⁉米軍にこれだけのことをしておいて、ただで済むと思うなよ!」
「…知らんな。私が背負う目的は『大義』のみ」
「な、なに⁉」
【デビルスチーム…!ファンキーショット!ギアリモコン!】
次の瞬間、紫のライダーの放った煙幕弾に次々と兵士たちが倒れていく。そして、郁子なるかな。ネビュラスチームガンのガスを受けた男たちの姿が、スマッシュハザードへと変化していく。
「………行け。この基地にあるISコアを回収しろ」
基地の中は瞬く間に、リモコンの能力で統率されたスマッシュハザードの群れに蹂躙されていく。それらを基地各所へと散開させると紫のライダーは一人、内部ディスプレイに送られてくるマップを基に通路を曲がり、下がり、進んでいった。
ひときわ大きな通路に出たところで、仮面ライダーの進路を阻むものがいた。
「………む?」
それに気づいた途端、通路の床が轟音を立てて崩れ落ちた。煙の中から現れた虎模様のISは、ライダーを上へと投げ飛ばし天井を破壊する。
さらに、吹き飛んだライダーを追いかけ両腕で抱え込むと、回転と落下の勢いを個別連続瞬時加速で上乗せし、鉄の廊下へと捻じ込んだ。
鼓膜が割れるほどの轟音が存在しない基地に響き渡る。濛々と煙と破片が舞い散る中、タイガーストライプのインフィニット・ストラトスがバックステップで飛び出した。その挙動からは敵への警戒が消えていない。
「………無傷か。堅物なのは口だけじゃないみたいだな」
煙幕の中から、水色の瞳がゆらりと動く。首の関節を数度鳴らすと、パープルのライダーは鋭い指先をISへと突きつけた。
「アメリカの第三世代型『ファング・クエイク』か」
「おう、そして国家代表イーリス・コーリングだ。……覚悟は良いか、亡国のファントムさんよ。言っておくが私はつえーぞ。殴殺される覚―――『その機体もいただく……大義のための、犠牲となれ』…っておい!」
仮面ライダーはスチームブレードを逆手持ちにすると、口上もお構いなしにイーリス・コーリングへと跳躍した。
「おいおい、お前映画とか見たことないやつかよ。ヒーローが口上述べてるときは出番待ちでぽつんと立ってるもんだろうが……よ!」
「………
【シャーク!チャージボトル!潰れな~い!】
国家代表の言葉を鼻で笑いながら、青いフルボトルをドライバーへと差し込む紫のライダー。
その姿が、水飛沫を立てて消え去った。
「マジかよ、地面に沈みやがった……!」
その不可思議な挙動に警戒し、空中に浮遊するイーリス。彼女の背後の壁が水面のように波立った。
「…そこだ、どわぁ⁉」
そこから飛び出したのはライダーではなく、巨大な一匹のメガロドンだった。天井や地面から次々と、牙を剥いて何匹もの鮫が跳躍し、ISのシールド・エネルギーを削っていく。
「くそっ…!」
「……私は『
攻撃を捌くファング・クエイクの傍に、いつの間にかならず者が立っていた。彼女は水色のベルトのレンチに手を掛ける。
【クラックアップフィニッシュ!】
名乗りと共に、大鰐の顎が虎を襲撃した。周囲に、女の恐怖に染まった悲鳴が広がっていく。
その日、『
◆
キャノンボールファストの修復がまだまだ進んでいないIS学園。しかし、地下は無事な施設が数多くある。屋上や空き教室から運び込んだ戦兎の研究機材が稼働する薄暗い部屋に、一夏たち仮面ライダーの関係者が集まっていた。
彼女らの顔は曇り切っている。理由は明確だった。先の石動惣万……否、地球外生命体『エボルト』の隔絶した能力を目の当たりにしたことが、希望の光を濁らせていく。
誰もがこう思っている。――――『あんな怪物に勝てるのか?そもそも、あれだけの力があるのに、何故すぐに地球を滅ぼさないのか?』
…――――理由は、分かっている。
……――――『いつでもお前らの星は滅ぼせる。だが、お前ら人間の無様をもっと見たくなってな?』
エボルトにそう見下され、告げられていることが先の出来事で実感した。怪物の口の中にいるかのような拭いきれない恐怖が、彼女らの心を覆い隠している。
机に向かっていた戦兎が振り返る。
「よっしベストマァァッチ!調整終了、やっぱりオレの発明品はさいっこーだな!…――――なんだみんな辛気臭いな、チョコ食う?」
明るい声と愛嬌が振り撒かれた。ついでに徳用100円チョコを載せたお盆が、戦兎の傍にいた箒に手渡される。
彼女は痛ましいものを見るように、戦兎から目を逸らした。
「で?なんで俺ら呼び出したんだ?」
「あ、そうそう。エボルトに対応する為に、………一夏、はいこれプレゼント」
一夏にプレゼントと称され渡される二つのデバイス。それは亡国機業のオータムに奪われたままになっていた『ビルドドライバー』と、オレンジ色をしたナックル型武装だった。
「……なんだこれ?」
「強化アイテムだよ。名付けて『クローズマグマナックル』。理論上、発生するパワーによって一撃で敵を戦闘不能にできる」
セシリアや鈴たちは興味深そうにそのブラスナックルを見る。だが、不満げに声を上げたのはラウラだった。
「…おい、嫁には無いのか?」
「あー…本当はグリスの強化アイテムも作ってたんだけどね。マスタ………おほんッ、エボルトに取られちゃったみたいで」
ごめんねー!と両手を合わせてシャルルに平謝りする戦兎なのだった。
「…別にどうでもいい、なにより俺はパワーアップの必要がねぇくらいには強ぇからな」
「お、おう…」
そんなことシャルルにとっては余計なことだったらしい。泰然自若にして傲岸不遜な台詞を、至極当然だと口にするさまは、最強の風格を漂わせている。
「だが問題は、こんなんでホントにあの化け物倒せんのかってこった」
「…とりあえず、エボルトがワープドライブとかブラックホール発生の行動を起こす前に撃破すれば何とかなる………はず」
「それ、無茶だろ。要求されるハードルかなり高くねぇか?」
呆れたように金髪を揺らすシャルルに追従し、一夏も相槌を打ちながら思ったことを口に出していた。
「うん。だけど近々それ用アイテムのお披露目になりそうだ。これで、スピードもパワーも従来のビルド、その数倍に跳ね上がる。……これを使えば『ハザードトリガー』を完全に制御できるはず」
その言葉に、驚愕を禁じ得ないIS代表候補生たち。戦兎は自分への戒めからか、今まで極力ハザードトリガーの使用を避けてきた。平和利用ができないデバイスとして扱ってきたそれを、彼女は戦闘に用いようとしている。
彼女の心境に何らかの変調があったのは、想像するには難くなかった。
「そのクローズマグマナックルも、オレの強化変身アイテムのシステム構築用に創ったものだしね。最新式の機能が追加されてるから一夏でもそこそこには戦えるよ」
「…おい。なんだよついでみたいな言い方。戦兎ばっかいいご身分だな、おい」
「当たり前だよ。オレってば天才だし?皆より成果出してますし?なら強くなるべき順番もオレが一番優遇されて然るべきだよねー?」
ふざけたように薄く笑う戦兎。だが、生徒たちは浮かない顔をやめない。やめられない。今の彼女が進んだ先にあるのは、破滅だとしか思えなかった。
(『アレ』完成させるには、オレの身体にベストマッチなフルボトルのデータサンプルを摂って…になるんだけど、フルボトルは一種類ずつしかないしなぁ。二つ目の同じフルボトルとか作れるのかな?いや、それよりもまず先に、このことだけは言っておかなきゃ…)
「あとあのブラックホール攻撃に対してだけは、対抗策があるよ」
「…ぇ?」
彼女は事もなげにそう言った。
「は、え…は⁉どういうこと⁉」
「白式の単一仕様能力の一つ、『零落白夜』だよ。理屈で言えばブラックホールも崩壊したエネルギーだしね。まぁ、あれってあらゆるエネルギーをゼロにする…ってだけじゃないみたいだけど。まだまだ引き出せてない力がありそうだ」
「…――――戦兎」
「まぁ、零落白夜のデメリットとしてシールド・エネルギーと引き換えにって制約はあるけどね。その問題の改良はまたおいおい…――――」
「戦兎!」
一人の叫び声で、天才の言葉が強制的に断ち切られた。
「…――――なにかな、『千冬』?」
「すこし、次の授業について意見が聞きたい。開発に熱中するのは良いが、
薄暗い開発室を後にする二人。ただそれだけだというのに彼女らの後ろ姿は、断罪の執行を待つ咎人を思わせた。
「…――――教官?」
「ぁん?どした銀髪。一夏まで…」
「…――――千冬姉、何かを怖がってるみたいだった…」
◆
女子トイレに、粘ついた湿っぽい音が漏れる。
「ぅ…げッ…、あ、ぁッッ、あ、おぇ、ッッッ…!う、ええっ、ェェェ…!」
「…お前、いつ休んだ?」
扉を挟んだ外で、千冬は『嘔吐を続ける戦兎』に声をかけた。
「石動惣万…いや、エボルトが正体を現した時から、一切寝てないだろう。ストレスによる睡眠障害か。そんなコンディションで戦えると思っているのか?」
「はは、手厳しーなーチッピーはぁ…。うっく、ォ…」
「………。………――――まぁ。分からないわけでは、ないが」
涙と恐怖からくる体調不良をお気楽な天才の仮面で隠し、それでも生徒たちを導こうという気概は尊いと千冬も思う。
だが、彼女の絶望も手に取るように分かってしまう。
「それと、一夏への先程の提案の件だが」
「えぶ…あぁ、零落白夜のこと………?」
「お前、エネルギー不足という問題をどう解決するつもりだった?」
涎を拭った戦兎が、消え入りそうな大きさで声を震わせた。
「………、
「………それは臨海学校の時、ファウストに組み込まれたものと同じだな?」
とても冷たい声が出る。
「でもあんな不完全な代物じゃ無いよ。ライダーシステムは感情によって出力が向上するテクノロジーだ。それをオレが考え出した理論に応用すれば、あのブラックホール攻撃も目じゃない。感情を他の要素と統合させたエネルギーである命ならば、莫大な作用を生むことは明白なんだよ」
「………。『一夏』にそんなことを、私が許すとでも?」
突き放つような言葉だった。
「思わないね…でもその口振り。もしオレがそのシステムを構築したら、代わりに千冬がするつもりなんでしょ?」
「………だとしたら?」
「君は絶対に死なせない。役目を果たすのは、オレだからな」
すりガラスの奥から差し込む光が、二人を照らしていた。
「おい。死に逃げるなと、言ったよな…?」
「それは君もだろ⁉……――――千冬、そこにある鏡見なよ、死にたそうな顔してるんじゃない?」
「…――――何を、馬鹿な」
薄暗いトイレの鏡に映り込む織斑千冬の顔は、人間ではないものに思えた。
「……随分前に、宇佐美にこんなこと言われたんだ。『科学の発展には多少の犠牲はやむを得ない。醜いものには蓋をして、科学は発展していった』。…――――今となって、アイツの言ってること、真理だって分かって来たよ」
永い間見続けていた夢が終わる。明けない白い夜が、零のまま落ちる。
「…ねぇ。どうすればいいんだよ。どうすれば、よかった?」
胃液と共に吐き出される、戦兎の腹の底に溜まった黒いもの。
「謝れば。許しを乞えば。皆を無償で愛せば。平和をもたらせば。幾つもの『大切』を踏みにじった苦しみから、逃げられると思ってた…。この罪過が薄まっていくと思ってたのに…――――ごめん。ごめんなさい、弱くて、ごめんなさい…。やだよ。やだよぉ…なんでオレってこんなことばっかり…。許して欲しかった…。終わりが見えないまま、『終わっても許されない』今のままなのは怖いよぉ…」
…千冬は天を仰いだ。長い黒髪が目元を覆う。
「……」
「…。ゴメン、取り乱した。……だからマスターは『裏切りっていう終わり』に教えてくれたのかも、ね…」
便器の中に堕ちる滂沱の涙。
「家族っていう絆が絶たれて、裏切られた人間がどんな苦痛を受けるのか。自分では対処できない未知の暴力を間近で見た人間がどんな恐怖を抱くのか…」
また、吐き気がする。気持ちが悪い。
「『つらかった。こわかった。でもなんとかしないと…どうにかしてあの怪物をとめないと』…――――こんなことしか考えられなかったもんなぁ。偉そうなこと言っといて、結局メッキが剝がれちゃえばオレってこんなもんだったんだなぁ。みんなオレにこんなこと思ってたんだ…。うっすいなぁ、情けないなぁ…」
逃げたくなる。死にたくなる。何度も決意したというのに、その信念が折れてしまいそうになる。
「千冬……やっぱりオレってさ、生きていちゃ駄目なんじゃないかなぁ」
「戦兎…、ッ‼」
どぉん……、と遠くで何かが弾け、悲鳴が上がった。緊急警報がけたたましく鳴り響く。
「…アラート?どうして…、!」
◆
IS学園の各施設が炎上し、警報がけたたましい叫びを上げている。『飄々とした顔』でやって来た戦兎の前には、一夏たちと対峙する敵を見つけた。
逃げ惑う生徒の人混みの中で、金髪と黒髪の二人が砕けたインフィニット・ストラトスの上に腰掛けていた。
「やっと来たか…、仮面ライダービルド」
「待ちくたびれたッスよ」
一人はダルそうに、もう一人は好戦的に正義の味方たちに視線を向ける。戦兎や千冬は教師という役職柄、彼女らの顔を知っていた。
「お前ら…、『イージス』のダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアのコンビだな。これは、どういうことだ…!」
「察しが悪いなぁ織斑先生。…こういうことだよ」
ダリル・ケイシー…否、レイン・ミューゼルはIS学園の制服の中に手を突っ込み、紫色に光る拳銃型デバイスを取り出した。
彼女らの手の中には、いつの間に持っていたのだろうか、白と蒼の歯車のついたカートリッジが握られている。
【ギアエンジン!ファンキー!】
【ギアリモコン!ファンキー!】
「「潤動」」
煙が更に充満すると同時に、炎が稲妻を散らし歯車へと変貌を遂げ、辺り一面を飛び交った。
歯車がISの残骸を粉々にすると同時に、彼女らの身体に覆い被さりパワードスーツを形成する。
【エンジン・ランニング・ギア】
【リモート・コントロール・ギア】
「おい、あれって…!」
「シュトルムとブリッツが使う、カイザーシステムだよな…」
その左右非対称の外見には見覚えがあった。彼らは、並行世界の帝王になろうとした赤と青の機械兵を思い出す。
「俺がエンジンブロスで、フォルテがリモコンブロスだ。どっちと相手したい?」
「………お前らに、IS学園は襲わせない!」
【【スクラッシュドライバー!】】
戦兎の言葉に合わせて、一夏とシャルルはドライバーを取り出し、腹部に押し当てた。
「そーかぁ、…二人まとめてか!」
レインが言うが早いが、フォルテは拳銃を振るい凶弾を放つ。
【ラビット!タンク!ベストマッチ!】
【ドラゴンゼリー!】
【ロボットゼリー!】
「「「変身!」」」
【ラビットタンク!イェーイ!】
【ドラゴンインクローズチャージ!】
【ロボットイングリス!】
ドライバーが形成するファクトリーがその弾丸を弾き飛ばし、成分を実体化させる装置が躍動し始めた。赤と青、銀と金の光が治まると、そこから現れるのは三人の戦士たち。
「はぁぁッ‼」
変身と同時にビルドはブロスの元へと走り出す。ビルドドライバーの強化型システムである二人に多くの情報………カイザーとブロスの相違点などを見つけて貰うためだった。クローズチャージとグリスは、ツインブレイカーで戦兎の戦いをサポートしている。
「お、っとと。流石は元・篠ノ之束。だが…」
「撃つッスよ~」
ラビットの成分による急接近からの連打にもエンジンブロスは対応し、スチームブレードや徒手空拳で防いていく。その隙をついて、リモコンブロスが銃の照準をビルドに寸分違わず合わせていた。
【エレキスチーム!】
【ファンキードライブ!ギアリモコン!】
二色の歯車がラビットタンクに激突した。
「う、おあぁぁぁッ!」
「「戦兎‼」」
「どうした?これがIS学園の実力か?」
手元に転がってきたロボットフルボトルを拾い、エンジンブロスは小馬鹿にしたように笑う。量産型クローンヘルブロスを対『世界最強』用にチューンした二機の兵器のスペックは段違いだった。
いいや、そもそもライダーシステムは感情によってスペックが変化する。今、彼女が攻撃を受け身体がボロボロになっているのは、本当にブロスの力が強大なためであるのだろうか…。
「まだ、まだ‼ビルド…アップっ!」
【スマホウルフ!イェーイ!】
戦兎は青と白の姿…スマホウルフフォームに変身すると、リモコンブロスの匂いや位置を徹底的にマークし、透明化などの様々な能力に対し備えるビルド。だが、その戦い方はどこか…――――弱々しい。
「戦兎のヤツ…長期戦はマズいな」
「あぁ、初手必殺で決めるぞシャルル」
【スクラップブレイク!】
【スクラップフィニッシュ!】
ビルドのぎこちない戦闘の様子と敵の性能が不明だという理由から、速攻という戦術に切り替えた二人。早々に必殺技を放つことを決め、彼らはレバーを押し倒した。
だが、ブロスたちは余裕のある態度を崩さない。
「よーしフォルテ、アレやるぞ」
「えぇ…アレッスかぁ?これでヤるの、まだ慣れてないんスけど。…――――ま、良いッスけど」
【冷蔵庫!】
フルボトルのキャップを合わせ、ネビュラスチームガンにセットするフォルテ。目前に迫るダブルライダーキックにも臆さず、引き金に指をかけた。
それに合わせてレイン・ミューゼルもギアエンジンの能力を使い、周囲の熱を超加速運動させる。
【フルボトル!ファンキーアタック!】
「「ハァァァァァァァァァァ‼」」
「「…
その言葉とともに氷壁が出現し、二人のライダーの攻撃を阻んだ。
その氷を割ってはならない。罅の間から灼熱が漏れ出始めた。物理運動を完全停止させた氷の牙城から、全ての分子を焼却させる業火が迸る。
「うぉあァァァッ⁉」
「が、ぐぅぅッ‼」
蹴りの勢いを止められたまま直に炎を浴びた二人は吹き飛ばされるが、ライダーたちをインフィニット・ストラトスが受け止める。
「一夏!シャルル!無事か‼」
戦兎のスマホウルフフォームの通信機能によって、箒たちは敵の攻撃の予測を伝えられていた。わずかの間に彼女らは、ライダーたちのカバーに回るよう立ち回っていたのだ。
彼女らのフォローのおかげか、的確な判断か…――――どちらにせよ凄まじい攻撃の余波だったが、ライダーの二人は変身解除もしていない。
「な、んとか…」
「身体無理矢理捻って避けたがイテェ…、明日筋肉痛かもな」
シャルルに至っては、冗談を言えるくらいには余裕があった。
「国家代表候補の一年どもか…――――良いだろう、この先輩様がISで胸貸してやる。フォルテ、おらよ」
「はいはい。先輩もお気を付けくださいッス」
エンジンブロスが投げたギアが、ネビュラスチームガンのスロットへ一直線に突き刺さる。すると、ダリル・ケイシーの身体から白と黒の装甲が外れ、煙と歯車となってリモコンブロスの元へと移動した。
黒い光子を発生させ、IS『
「あれは、やっぱりバイカイザーと同じ…!」
「…――――『ヘルブロス』、参上ッス」
白と蒼の装甲の奥で、赤い目が光った…――――気がした。
「戦力の一極化…いや、寧ろISとカイザーシステムのタッグとなると、より戦い方が複雑化するということか!」
「よそ見してていいのか軍人さんよ!」
ラウラの頬を紅蓮が掠める。その赤の濁流は、空を舞うインフィニット・ストラトスたちを狙うように広がった。
「炎での攻撃か…!」
「シンプルだけど、それゆえに厄介…!」
猟犬の如く追尾して来るホーミング式火炎弾。それを斬り捨て、ミサイルで相殺している箒と簪。
「さて、どうしましょうかねこの状況…」
「決まってんじゃない。炎を避けて、突っ込んで、殴る!」
「鈴さん。貴女の考える事って本当に…――――分かりやすくて好きですわよ!」
その瞬間、鈴とセシリアの姿が消えた。否、音速でヘルハウンドに接近し、加速度を載せたナイフと青龍刀での一撃を叩きこむつもりのようだ。
二人の回避不能の一撃が、その機体に到達する………はずだった。
「…――――うそでしょ」
その刃をヘルハウンドは掴みとっている。
「これもネビュラガスの恩恵だ。おっと、ドーピングだとか言うなよ?こっちはマジで
ネビュラガスを投与されたダリルの動体視力は、ハイパーセンサーを用いずとも、ISの挙動を認識可能な域まで到達していた。そして、彼女の肉体も同じ。その思考速度と同様に動かせるほどに成長を遂げている。
「お前らも覚悟しとけ。もうISは餓鬼の玩具なんかじゃなくなるぜ?こんなふうにな‼」
ヘルハウンドが突き上げた掌に、巨大な黒い太陽が生まれた。そして、その熱が解き放たれる。その埒外の力は、シールド・エネルギーの障壁を物理的に溶かすほどだった。
「「「「うわ、ァアアアアアアアアッッッ‼」」」」
「え、うお、ぉ…?
アップデートされた双頭の番犬の力は、その使い手に驚愕と、少しばかりの戦慄を抱かせた。
◆
ここはIS学園近くの森林地帯……ひっそりとした散歩用の小道。『健康と美容のために歩きましょう』と描かれた看板に倣うように、ゆっくりとした歩調で進む人物がいた。
ふと立ち止まると、着込んでいたコートの中から何かを取り出した。
【スクラッシュドライバー!】
そのドライバーは、小さい胴回りに合わせるように展開される。
ベルトがしっかり巻かれていることを帯『アジャストバインド』に触れて確認すると、裾から紫色のフルボトルを取り出して、そのキャップをひねった。
その言葉とともに、何かが迫っているような音声が響き、ひび割れたボトルが赤く光る。
ボトルを解析したベルトが成分の音を鳴らす。だが想定されていない成分なのか、けたたましい警戒音がドライバーから発せられる。依然続く『脅威が迫り来る音』と合わせ、ドライバーは危険な二重奏を奏でていた。
人影はその音をもう聞き飽きたとでもいうように、やる気の無い動作でレバーを押し倒す。
ビーカーに包まると同時に紫色のヴァリアブルゼリーが少女の体を薬品の中へと沈ませる。その体は紫の液体に染まりながら、大人の体格へと急成長を遂げた。ビーカー型変身装置の両脇に備えられたクラッシャーが勢い良くファクトリーを砕き、その成分を硬質化させパワードスーツを作り出す。
砕かれ、ひび割れた姿となったその人物は再び歩み始める。鬱蒼とした闇の先、煙と戦火振り撒かれた戦場へと、その身を進ませる。
例えインフィニット・ストラトスという翼を捥がれても、泥にまみれた地を這い蹲ることになったとしても、かの星を求め続ける。
二重奏が終わると同時に、日に照らされ見えたその姿は……紫の仮面ライダーだった。
◆
「うぐっ…!こいつ、マジで強いな…」
「これでケリを付けさせてもらうッス」
【ギアエンジン!】
仮面ライダーたちを独りで追い詰めるヘルブロス。彼女はスチームブレードを合体させたネビュラスチームガンを流れるような挙動で操作する。
「マズい…!」
銃口に収束されるエネルギーを見て、グリスはマスクの下で顔色を変えた。Gバトルモジュールによれば、その攻撃を受ければ仮面ライダーに変身していようともひとたまりもない計測結果が算出されている。
ロックフルボトルをドライバーへ乱雑に叩きつけ、一刻も早く起動させたグリス。
【ディスチャージボトル!潰れな~い!】
戦兎と一夏を守るため、ライフルの銃口を伸ばしたチェーンで雁字搦めに縛り上げ、『自身の方向』へとその銃口を寄せさせた。
「無駄ッスよ」
【アイススチーム!ファンキーショット!ギアエンジン!】
冷気に包まれたエネルギーの一撃が超伝導を引き起こし、グリスの硬質装甲の防御を紙屑のように突き破った。
「がぁ、ぁあぁッ‼」
「「シャルル‼」」
放電を引き起こし、彼の体から黄金のパワードスーツが消滅する。顔や腹部の皮膚は裂け、口からも多量に血が垂れていた。意識ははっきりしているが、戦闘に即座に復帰するのは無理であるのが見て取れる。
その時シャルルの周りにも、何体もの巨大な飛行物体が降って来た。
「うぉっと?あれまぁ……派手にやってるッスね」
「……み、皆!」
苦悶の声を上げる少女たち。インフィニット・ストラトスもボロボロに傷つき、辛うじて人型であるのが見て取れるだけだった。
周囲の生徒たちの悲鳴は収まらない。IS学園の倒壊は止まらない。戦場で奏でられる悪趣味な音楽を背景に、日が翳った空から一匹の獄犬が降り立った。
「先輩の方も、終わったみたいッスね」
「おう、よゆーよゆー。あとはトドメを刺すだけだ」
「てめぇら…よくも!…――――ッ⁉」
世界が罅割れる音がした。
空気が重くのしかかり、絹を裂く悲鳴を伴って紫の闇が広がっていく。それは、一つの人影を創り上げた。
黒いヘルメットの中で爛々と輝く水色の目、刺々しい紫をした装甲。そして、各部の白いひび割れ。悪に堕ちた戦士を思わせるパワードスーツの腹部には、彼らが良く知るデバイス――――『スクラッシュドライバー』がセットされていた。
「なんだ、あいつ…?」
「亡国機業の『仮面ライダー』ッスよ」
ヘルブロスとヘルハウンドの展開を解いた二人が、紫色の仮面ライダーの背後へと移動する。
「亡国機業の…⁉」
「俺達の出番はここまでだ。――――運が良ければまた会おう」
フォルテがネビュラスチームガンから黒煙を撒き散らし、ブロスの二人は忽然と消え去った。IS学園の最大戦力たちと互角の彼女らが撤退しても、ワニのライダーは泰然自若とした様子を崩さない。
「俺達は一人で十分だってか?上等じゃねぇか…」
「…。行くぞ一夏…!」
【ラビットタンクスパークリング!】
戦闘不能になった生徒たちを庇いながら、紫の戦士へ突撃する二人。だが亡国機業の刺客は、自然体のままその拳を受け入れた。
砲弾が鋼の城壁に撃ち込まれたかのような轟音が響く。
黒い胸部装甲にパイルバンカーとドリルが接触している。だが、ただそれだけだった。
「堅ッ…――――!」
「どういうことだ、全然効かねぇ…⁉」
彼らの困惑をよそに、悪党の反撃が開始される。鋭い爪を持つグローブが、戦兎たちのボディスーツを穿ち火花が弾ける。あまりにも堅い拳が、装甲を超えて衝撃を伝播させる。
ビルドが巨悪の前に、片膝をついた。
「がッ⁉」
「…――――」
蹲る戦兎を尻目に、鰐のライダーはネビュラスチームガンにドライバーのボトルを差し込んだ。銃口に禍々しい紫煙が集う。
「ッは…!や、ば…」
そして放たれる牙の一撃。因幡の白兎の力を鰐の顎が噛み砕き、女の悲鳴にも似た炸裂音がビルドを覆った。
「う、わァァァァァァァァァァ⁉」
鰐の口に挟まれたまま、遠方へと飛ばされる戦兎。爆炎と共に、彼女もシャルルと同じように、倒壊した建物と共に倒れ込む。
「戦兎!野郎…‼」
【スクラップブレイク!】
スマホウルフフォームへの変身アイテムを拾い上げる紫のライダー。それに向かって、一夏は敵討ちだとばかりに駆けだしていた。
「ハァァァァァァァァァァ!」
「……」
【ボトルバーン!】
蒼炎を放つクローズマグマナックルが鰐の顔があしらわれた胸部装甲に激突する。紫の戦士は仁王立ちのまま、クローズチャージと共に地を滑った。
砂利と土煙を巻き上げながら、かのライダーはベルトのレンチを押し下げると、紫の脚に鰐の幻影が纏わりついた。亡国機業の怪物が跳躍し、顎が龍に喰らいつく。
「なッ⁉」
デスロールによって縦横無尽に振り回されるクローズチャージ。牙が白銀の装甲に突き立てられ、火花を散らす。
そして…――――、オーバーヘッドで吹き飛ばされる。
鰐型のエネルギーが通った軌道も一夏が叩きつけられた壁も、一瞬の後…――――すべてを崩壊させるほどの大爆発に巻き込まれた。
「…――――うぐッ…!」
全身が炎に包まれていたクローズチャージの変身が解除され、血塗れになった織斑一夏が倒れ込む。
彼が崩れ落ちた地面も、その背後にあるIS学園も酷い有り様だった。燎原の火がそこかしこで燻っている。
「IS学園が…!アタシたちの、学校が…」
「これが、戦争だとでも言うのですか…――――?無抵抗の人間を襲うことのどこが戦争のルールなのです…!」
おぼつかない足取りで立ち上がる代表候補生たち。その視線の先に薫る煙の中で、悠然と立っている紫色の仮面ライダー。亡国機業のファントム。
「…仮面ライダー、は…希望を守るヒーローなの…!貴女みたいな、…仮面ライダーなんて、許されない…!」
「…――――貴様、何者だ…!」
何を思ったか、『彼女』はドライバーにセットされていた紫色のフルボトルを無造作に抜き取った。
黒と紫色の装甲が、『クロコダイルクラックフルボトル』に吸収されていく。
「……――――また会えたな。織斑一夏」
黒いコートと、乱れた髪が風に揺れる。織斑千冬によく似た少女が、底知れぬ闇を湛えた眼で『彼女の兄』を眺めていた。
「織斑、マドカ……!」
戦兎「もしブラックホールで地球が消えるなら、命と引き換えにする強化システムで零落白夜使ってオレが死にます(意訳)」
千冬「そんなこと絶対許さん。私が代わりになる(意訳)」
惣万「俺を倒すために自分を犠牲にするのに躊躇ゼロとか、どいつもこいつも愛が重すぎる…。誰に似たんだこいつら」
ファウスト組「「「………、え…?」」」
今後の進め方の優先事項
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瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
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夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
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ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
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全部