IS EVOL A KAMEN RIDER? 無限の成層圏のウロボロス SI-N   作:サルミアッキ

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戦兎「強大な力を秘めたパンドラボックスを巡って、亡国機業とIS学園との戦いが勃発した。俺たち仮面ライダーは学園を守るためブロス率いる亡国機業のIS軍団と戦うが、新たな仮面ライダーの登場に劣勢を強いられる」
千冬「そして、紫のライダーの正体が発覚する。変身していたのは亡国機業に所属する『織斑マドカ』を名乗る少女、エム。彼女は一夏に向かい意味ありげに言葉を投げかけるのだった……」
一夏「なあ、ところでよ。マドカってかなり身長低いけど仮面ライダーになると俺の背丈追い越してるよな」
戦兎「…それが?」
一夏「無理やり伸びてんだったら関節とか痛くねぇのかなぁ?」
千冬「気になるところ、そこか?」
戦兎「そこは設定集見て!なんかナノマシンうんぬんかんぬん書いてあったから!とりあえずお待たせしました、八十話どうぞー」
一夏「お待たせしましたって…ん?」
千冬「ひっさびさだからな、このノリで良いのかわからん」



第八十話 『ローグと呼ばれた少女』

 異様な光景だった。塵が舞うIS学園の一角で、同じ顔の二人が向かい合う。

 

「マドカ…!どうしてお前が、仮面ライダーに…‼」

「這い上がって来た、……地獄からな。私は全てをかなぐり捨てた。ただ自分だけの強さを求めて……」

 

 地面に転がされた人々の呻き声も耳に入らない。織斑千冬は織斑マドカへ、罪悪に歪んだ険しい表情を向けていた。

 

「一夏は関係ないだろう……!お前が恨むべきは私だ!復讐をするなら私だけにしろ‼」

「復讐?……復讐か。そんな考えはとうに捨てた」

「なに?」

 

 彼女は感情が抜け落ちた顔で、淡々と言葉を続ける。空虚な眼が、小さな手に収まった紫色のフルボトルを捉えていた。

 

「私がライダーになれたのは、世に望まれない生命(いのち)である『織斑』をこの世から消し去る、その思い……ただ一つ」

 

 その言葉には諦観さえも感じられない。その代わりに黒く、強大で、恐ろしい闇が蠢いていた。

 

「……、私たちには心がある…。意思がある。マドカ、お前にだって…」

「詭弁だな。嘘を重ね続け、理想以外から目を逸らす…。お前達には分からない…、私たちが背負った罪過を…」

 

【クロコダイルインローグ!】

 

 マドカは…———否、『仮面ライダーローグ』は、妙に規則正しい歩調で眼前の『姉』へ近づいていく。

 

「『織斑』は存在してはならない。だから殺す。全て殺す。お前達に、私の信念は打ち砕けない…」

 

【クラックアップフィニッシュ!】

 

「…――――大義の為の犠牲となれ」

 

 

 紫炎が周囲を焼き焦がし、空間が罅割れていく。そしてブリュンヒルデに迫り来るのは大鰐の顎。

 

 

「くッ……」

 

【Cobra!FIRE!】

 

 スチームブレードを振り抜き、殺意に満ちた攻撃を背後へと吹き飛ばした千冬。コブラのマスクと、ワニの仮面の中に潜む視線が交錯する。

 

「お前も、『織斑』だろうが…!」

「そうだ、『織斑』は全て殺す。故に最後に消える『織斑』が私。ただ、それだけのこと」

 

 トランスチームガンとネビュラスチームガンを突き付け合い、互いにけん制し合うローグとスターク。しかしながらも、マドカは静かに語り続けていた。

 

「織斑千冬。お前もまるで真実を知らない。我々が生まれた本当の理由をな」

「な、に…?」

 

 ローグがクロコダイルクラックフルボトルを引き抜き、銃にセットしようとしたところで、眩い閃光弾が上空へと打ち上げられた。

 興覚めだというように、ローグはだらりと手を下げる。

 

「亡国機業の目標は達成されたか……」

「ま、待ちやが…!」

 

 ローグは学園から背を向けた。這いつくばっていた一夏が、口から血を零しながらも追い縋ろうとするも、身体への甚大なダメージがそれを許さない。

 

「慌てるな、織斑一夏。私たちが決着をつける場所は、ここじゃない…」

「ッ…」

 

 黒煙に紛れ退去するローグの青い瞳は、真っ直ぐに一夏と千冬のことを見据えていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ。あいつ、何を知ってんだ?いや、そもそも千冬姉、俺に言ってないこと……あるよな?」

 

 治療室に搬送される最中、一夏は聞いた。沈痛な面持ちで傍にいる千冬は、目を合わせようともしない。

 

「俺たち家族って……『織斑』って、なんだ……?」

 

 すでに、意識が朧げになっていく。姉の表情も霞がかって見ることができない。だが、それでも……。

 

「……お前の家族は、私だけだ……」

 

 あの強い姉が、泣いているように見えた。

 

「答えに、なってねぇよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————同時刻。亡国機業、ダウンフォール部隊執務室。

 

 安っぽいパイプ椅子が悲鳴を上げるのにも構わず、浦賀累はだらしなく椅子の背にもたれかかり、報告書を読んでいた。

 

「ふぅん?なるほど、な」

「……オータムからの定時報告か」

 

 暗がりからマントを羽織った少女が現れた。足元では汚れたコンクリートタイルの上を、ゴキブリやカマドウマが横切る。それも構わず、紙屑やよく分からない肉片を踏み潰し浦賀はマドカに歩み寄る。

 

「……帰ってきたか、エム。だが、余計な詮索はするな」

「……心配せずとも、『織斑』は全て殺す。それ以外は好きにしろ……」

「ふ、どうやら吹っ切れたようだな。亡国機業ナンバーワンの狂犬が、こうも従順になるとは」

 

 腐りきったドブ沼のような目が、罅割れた心を映し出す。マドカは思い出していた。なぜ私はここにいるのかを。

 

 

 

 

 

■■■■

 

 

 お前は愛されていない。

 

「黙れ…――――」

 

 世界に愛されていない。

 

「黙れ…――――」

 

 終わりのない憎しみしかない。約束された未来などない。

 

「黙れ…――――ッッッ‼」

 

 希望などない。絶望しかない。

 

「だから、強く…――――あるんだ…!私は…ッ‼」

 

 

 

 

 

 

 そう思って生きてきた。頼れるものなど、自分以外に存在しない。だれも助けてくれない。だれも私を見ていない。だから、力が必要だ。私の命の価値、生まれ、尊厳、全てを覆すことができる絶対な力が。

 それを手に入れる為ならば、私は何だってする。そう、なんだって。今までもそうしてきた。これからも、ずっと、ずっと……。

 私はお前らの創ったルールに縛られない。上位種を気取る人間ども、お前らを私の上から引きずり降ろす為ならば、悪魔にだって魂を売ろう。悪魔ども、私に力を寄こせ。

 

 嗚呼、力が欲しい。金でも、銃でも、インフィニット・ストラトスでも、そして仮面ライダーであろうとも。理不尽をねじ伏せる力が欲しい!

 

 あの蝙蝠に頭を下げ、私は仮面ライダーになった。……なるはずだった。

 

 

 

 

「何故だ……、何故だ……、何故だぁァァァァァァ‼何故私では駄目なんだ⁉何が不満なんだ‼出せ‼ここから私を出せェェェ‼」

 

 待っていたのは、地獄の日々。かつての頃と何も変わらない屈辱と羞恥入り混じる闇の中。

 

「黙れ!……食事の時間だ、屑ども」

「……ッ」

 

 目の前で腐りかかった残飯の盆が覆される。

 

「だれが座って食って良いと言った?お前らは畜生以下のゴミだ、人間らしく振舞っているんじゃない。這い蹲って地面を舐めろ」

「がッ⁉うぐぅッ……ぬぅぅぁああああッ‼」

 

 頭を無理やり踏みつけられ、私は犬のように貪るしかなかった。

 

「可哀想になァ…餓鬼がこんなところに来るなんて」

「お前、愛されてないんだってぇ?ならせめてもの慰めだ、ウチらがお前を愛してやるよ……憎たらしいくらい可愛い顔してるしなぁ」

「ほーら大人しくしろって、今日もやさしくシてやるからさ」

「う、がぁぁぁぁぁァァァァァァァァァ‼あああああああああああああああああああああああ!!!ああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!」

 

 亡国機業に入る前と、何も変わらない。蹴られ、殴られ、女たちに嬲られる。『織斑』である私に、人権などなかった。なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ふざけるな。

 ならば何故?織斑千冬はISという兵器を上手く使えるというだけで賞賛される?ならば何故?織斑一夏は同じ『織斑』であるにも関わらず何も知らない?

 

 収容所の中で、怪物相手に拳をふるう。来る日も来る日も化け物を殺した。怒りに任せて、憎しみに任せて、血だらけになりながら生身で戦い続けた。

 

「…――――死ね、死ねッ、死ねェェェェェェェェェッッッッ‼ゥぐ、ぅぅぅァァァァァァァァ‼」

 

 ふざけるな。何故、私が……私だけが。『織斑』であるのに、お前らは。

 

「えげつないッスね先輩…――――あのネビュラヘルブロスたちの素体、『織斑マドカ』にもなれなかった『モザイカ』らしいじゃないッスか」

 

 ふざけるな。もう、何も聞こえない。誰かがナニカ言っテいるガ、分かラない。思考が怪物にナってイく。そうイエば、ドウシテ私は、コンナことヲ?私ノ生きル意味っテ、なンだっケ……。

 

「浦賀累ってのは、どうにもそういう(・・・・)ヤツらしい。いやまぁ、分かり切ってただろフォルテ?」

「えぇハイ……人間性がアレってのは知っております、それにしても……」

「あぁ。同一存在だからか、撃破されたブロスの成分がマドカに吸収されているよな、アレ」

 

 フざケるな。ふザケるな。

 

「それが…何かマズいんスか?」

「ハザードレベルが急上昇するとか、それ以前の話だ。見たところあの成分、感情に作用するシステム(あのベルト)を経由しているだろ」

 

 フザケるナ。ふザケルな。フざケルナ。フザケルナ。フザケルナ。

 

「『死の瞬間の感情を何百回も追体験する』のは、いくらアイツでも壊れちまうんじゃねぇか?」

 

 ワタシタチハ、デキソコナイ。フザケルナ。ソレデモワタシタチハ、イキテイタイ。オリムラダケド、ニンゲントシテイキテイタイ。イキタカッタ。フザケルナ。イキタイ。シニタクナイ。ドウシテアナタタチダケ。フザケルナ。オナジナノニ。ワタシタチハ、コンナコトノタメニツクラレタンジャナイ。ドウシテ。ウマレテコナケレバ。クルシイ。ヤダ。ソンナノズルイ。オマエタチニンゲンハ。ワタシタチニ、イミヲクダサイ。ゴメンナサイ。フザケルナ。

 

 

 ……—————闇ガ、罅割れた/オネガイシマス。タスケテクダサイ。

 

「うがぁぁぁぁぁァァァァァァァァァ‼あああああああああああああああああああああああ!!!ああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 そうだった、ここは薄暗い部屋だった/アァ、ヤットオワル。クルシカッタ。

 

『失敗、か。……どうした?お前の追い求めていた“自分だけの強さ”とはそんなものか?……当てが外れたな、始末しろ』

 

 窓から月の光が見えた/……ワタシハ。

 

『んん?』

 

 目の前には、一匹の蛇。手には、一本のフルボトル/……。

 

「……――――変、身…」

 

【割れる!食われる!砕け散る!】

 

 心に聳えていた隔たりが割れた。戦い、同胞の命を食らい続けた。今までの矜持が砕け散った。

 

【クロコダイルインローグ!オォォラァァァ!キャァァァァァァァァッッッ‼】

 

「うぉああああああああああああああァァァァァァァァッッッ‼ヴウヴウウウウウウウ…‼ギぃッ、ヴアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 

 そして私は……。

 

『遂に……、覚醒したかァァァァァァァァァァァァ‼』

「私はァァァ…――――‼」

 

【クラックアップフィニッシュ!】

 

「ロォォォォォォグだぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァ‼」

『ふ。はは…ははははははははははははははははははははははははははははははァァァ‼』

「ヴォォォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ‼仮面ライダァァァァ…――――ローグだァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ‼がぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァ‼」

 

 

■■■■

 

 

「……ーい。エム、エムゥ?聞いているのか、エム?」

「……聞いているとも」

「ならいい。それとエム。収容所の人間どもの殺処分は完了したな?」

 

 顔を上げたマドカに近づき、釘を刺す浦賀。息がかかり、マドカの伸びた髪が揺れる。

 

「あぁ。……面倒だったがな」

「そうか、それは良かった」

「……失礼する」

 

 その目が雄弁に物語る。

 

————私はお前たちを……『織斑』を許さない。私が『織斑』マドカなら、私も許さない。『織斑』は殺す。私の家族全てを、殺す。

 

 

 

 

 

「……それでも分かってないようだな。織斑マドカは『織斑』どもを殺せない。いつ気づくことになるのやら。愚かだな」

 

 マドカが立ち去った部屋で浦賀は独り言ちる。心底見下した態度で鼻を鳴らすと、気分を切り替えるように努めて明るい声を出した。

 

「さて、では私も動かねばな。ハザードトリガーの複製も完了した。あとは篠ノ之束……いや、因幡野戦兎との戦闘データを頂戴するとしよう」

 

【ハザードオン!】

 




 各方面、空気悪いし曇りまくってる……。

今後の進め方の優先事項

  • 瞬瞬必生(本編のみを突っ走れ)
  • 夏未完(消え失せた夏休み編の復旧)
  • ちょいちょい見にくい部分を修正と推敲
  • 全部

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