お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが   作:きりがる

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 ご都合主義警報。

 どうしても…というほどでもないが、欲しかったのだ。入れたかったのだ。ヒロイン枠に。

 だから無理やり入れてみた。

 んで、静謐ちゃんの修正はあまりしてないけどこれでいきます。


02 曲がり角、ぶつかり合うは運命の仕業

 

 

 マスターちゃんとやらがどこぞの特異点をクリアしたらしい。カルデア内は喜びに大騒ぎであり、こちらの仕事も今日は休みとなった。

 

 ここぞとばかりに自室に篭ってゲーム三昧である。

 恐らく、ジャックはクリアおめでとうパーティーに参加しているだろうし、今回は何かしらの活躍をしたと聞いたので抜けることは出来ないだろう。

 

 久しぶりの休み。久しぶりのゲーム三昧。

 

 ワインを煽りながらゲームをする幸せである。酒には強いので長くゲームできるのは嬉しい。

 

 ふんふんとBGMに乗りながら鼻歌を歌っていると、来客を告げるコールが鳴る。

 酒も入って気分のいい状態で、はいはいと来客に応じると、そこにはいつだかにぶつかった褐色美少女が居た。

 

「こ、この前の……」

 

「は、はい……あの、少しお話したいことが……」

 

 あの、の時点で俺は土下座である。日本ではこれが最上級の謝罪の仕方らしいし、こうするしかないのだ。日本万歳。俺はもはや日本人と言えるほど大好きだぞ? 日本の文化は素晴らしい。アニメ漫画はいい文明。

 

「この前は申し訳ありませんでした。急いでいたとは言え、ただの一言で済ませるなど…御身が望まれるのでしたら如何様にも…」

 

「あ、頭を上げてください! わ、私は気にしませんし、そういったのは苦手なので…その、貴方のいつものような姿をお願いします…」

 

「そ、そうですか? でしたら…はい…」

 

 内心ガクブルで立ち上がり、敬語を止めてみるが本当に大丈夫そうなので普通に話してみる。これでも俺は普通の人間であり、サーヴァントに敵うわけないので下手に出るしかないのだ。ジャックが例外なの。

 

 もしもサーヴァントが暴れてみろ。カルデアの職員で対抗できる人間なんて誰ひとり居ないだろう。一夜で全滅である。

 

 静謐のハサンと名乗る美少女を部屋に招き入れ、椅子に座らせる。その際に持っていたバスケットも机の上においていた。

 ジャック同様に露出の多い暗殺者少女にドキドキしながら俺はベッドに座って話を聞くことにする。

 

「んで、俺に何の用があったんだ?」

 

「えっと…その前にアルンさんに聞いて欲しい話があるのですが…」

 

 どうぞと話を促してみれば、それはこの少女の話だった。静謐のハサン…静謐はなんとその体全てが毒だという。普通の人間が触れれば速攻で死ぬし、サーヴァントといえども無事では済まない。キス(宝具)でもされれば死ぬって話だった。

 

 もう、全身が毒と聞いたときから俺の顔は毒でも飲んだのではないかと言うほど真っ青だったことだろう。

 俺のその顔を見て、静謐も涙目で謝り倒しながら震えていたが、俺は死んでいないので問題ない。

 

 そうじゃないんだ……。

 

 俺が無事だったのはスキルのおかげである。静謐もこのことを聞きに来たのだろうが…もしも今の話、誰かに聞かれでもしてみろ。絶対に面倒なことになるのは目に見えている!

 

「お、落ち着け…俺は死んでないから問題ない。お前が毒だから恐れているわけじゃないんだよ」

 

「そ、そうなんですか…?」

 

「ああ。そのだな…この話、まだ誰にもしてないか?」

 

「はい。確かめてからにしようと思っていました」

 

「よし、ナイスだ! いいか、この話は誰にもしないでくれ。絶対に面倒なことになるから、誰にも話さないでくれ! そうすれば、ある程度の願いを聞き届けてやる。いやマジで頼む。いいか、ダヴィンチちゃんとかに絶対に話すんじゃないぞ!?」

 

「は、はい……!」

 

 華奢な肩を掴んでガクガクと揺さぶりながら頼み込む。褐色の肌を赤く染めているが、それどころじゃない。本気で頼んでいるのだ。

 もしバレてしまった場合、俺は記憶消去のスキルを得るために、誰かを犠牲にしなくてはならない。犠牲者の後頭部はとんでもないたんこぶができることだろう。

 

「よし、信じるぞ? さて…なんでも言ってみろ。金塊か? 宝石か? ある程度なら錬成してやれるが、地位や名誉、権力とかは無理だかんな」

 

「い、いえ、流石にそこまでのものは……で、では、アルンさんがよろしいのであれば…」

 

 錬成のスキルで金塊でも錬成出来るし、鋼の錬金術師のようにいくらでも錬金してやるが、拒否られた。じゃあ怪しい薬でも造ろうか? 既に作ったことあるし。

 

 相手はサーヴァント…何を言われるんだと身構えていると、彼女の口から出てきたのは意外なことだった。

 

「私に…触れてくれませんか!?」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

「ん~」

 

 喉の奥から出したような艶めかしい声音にゾクゾクしながら、俺は理性をフル活用して耐え続ける。俺ガイルという小説を読んだときにみた呼称をスキル名にしてみたのだが、今が使うときだろう。

 

『学生時代はぼっちを極めていましたからね。スキル理性の化物を発動します』

 

 可能性の獣というスキル名もあったりする。

 

 意図的なまでに女性らしさに満ち溢れた肢体でしなだれかかってくる彼女を抱きしめて頭から背中までを撫でる。

 最初は触れてくれという願いにとても危ないものを感じたが、彼女の今までの話を思い出し、こういった触れ合いを渇望していたということを思い出した。

 

 自分に触れても死なず、微笑みを浮かべてくれる誰か。いつ微笑んだのかは知らんが、この相手は俺だったのだろうか。流石にマスターたる人物に容易に触れるのは憚られたのか、触れるようなことは一切してこなかったらしい。

 

 ぶっちゃけ、死なない相手なら誰でも良かったのでは? 俺じゃなくてもきっと、探せば居るのではないだろうか。それこそサーヴァントの中とかに。それに召喚してくれたマスターちゃんに忠誠を誓っているのでは?

 

 もはや言いたいことは数々あるが、どうせ今日だけだと言い聞かせ、一言で言えばエロいこの体を堪能しちゃおうとアルコールの入った頭で邪なことを考えつつ抱きしめて撫でることにした。もうこんな機会来ないだろうしな。

 

 滑らかな肌を滑るように撫で、背中を俺の指が滑る度に静謐はビクリビクリと小さく震えて反応する。ちょっと猫っぽいかもしれない。きっと、理性の化物がなければ既に襲っているだろう。

 

 机の上に置かれていた、静謐が持ってきたバスケットの中に入っていた大皿。そこにはパーティーで出されていただろう料理が乗っていた。

 どうやら手ぶらで来るのも悪いと思ったのか、静謐が持ってきていたバスケットの中にはこっそりと選んできた料理を入れていたっぽい。それを食べるが、美味い。ま、まぁ? 俺が作ったほうが美味いけど…? 俺の料理スキルは様々な補正もあるから最強だ。

 

 エビフライを咥えてサクリと噛みながら、口だけで食べ進める。行儀悪いが仕方ない。ポッキーみたいに食べていけば、突然静謐が顔をあげる。頬を染めて、何やら覚悟を決めてから口を開ける。

 

 小さく開いた口の中に覗く赤い舌先が艶めかしい。そして、まるでキスでもするかのように近づいてきたと思えば、俺の咥えているエビフライの反対側…つまり尻尾からパクリと咥え込んだ。

 

 そのことに俺は固まってしまう。なにせ…ちょっとした勢いがあったのと、残り三分の一もない長さのエビフライ。よって、静謐の唇は俺の唇に確りと触れ、吸い付いており、エビフライなんて姿かたちも見えなくなってしまった。

 

 首に回される腕と誘うかのような目。少しして離れると、ちゅっと小さなリップ音が鳴り響く。

 

『スキル毒性物質耐性を取得及び発動しました。これで安心ですね』

 

 ……………マジなのか。静謐にとっては敵にキスするほどだし、そこまで深く考えるものではないのかも知れないが、俺にとってはファーストキスなのだ。

 それに、嬉しいからって流石にすぐこんなことするものなのだろうか。スキルを取得したことさえも頭に入ってこない程、びっくりした。

 

 もしかしたら、現状で触れることの出来る俺を手放したくないがためにキスをして離れなくさせることが目的なのでは…? 

 

 焦りの中でも冷静な部分が様々な可能性を考えるが………静謐の恥ずかしそうに顔を首筋に埋めてくる姿を見たら、何も言えなくなった。

 

 ………………暫くは様子見だな。俺から会いに行くことなんてないけども。

 

 皿に乗っていた料理も二人で食べきり、時間的も夜遅い時間帯である。そろそろ誰も彼もが休むために寝る時間だと言うのに、俺と静謐にとってはこれからだ。

 

 別にいやらしいことをするわけではない。ただ単純に、俺たちのゲームはまだまだこれからだ!ということである。

 

 触れてほしいと言われて暫くはこうして触れていたのだが、元々俺はゲームをしていたため、テレビの画面はずっと自キャラが走っている体勢で停止していた。食事も触れることについてもある程度落ち着いてきたため、静謐を乗せたままコントローラーを手に取って続きを始めた。

 

 それに興味を示したのか、それとも俺がしているから興味を持ったのか…説明と操作を教えてみれば、あっという間に覚えてしまったのはサーヴァントスペックだからだろうか。暗殺者として手先も器用だったことから、練習しているときのボタン操作は滑らかに行われ、中々に上手いものであった。

 

 だいたいのことが行えるとあれば、ゲームだから対戦なり協力プレイなり、一緒に楽しむしかないよね? ということで、現在、俺達は協力プレイでゲームを進めているわけだ。

 

「アルンさん…フレンドリーファイアって有効なんですか?」

 

「おっといけね、消すの忘れてたぜ。悪い悪い、てへぺろっ」

 

「愛おしいので許します……とでも言うと思いましたか? 仕返しです!」

 

「ちょっ、ボス目前で何して!?」

 

 うっかりさんの俺に思いっきりマシンガンを乱射してくる静謐に、俺は為す術なく死んでしまった。おいおい、ここまで来るの大変だったろうに何しちゃってくれてんの?この子。

 

 笑いながら謝ってくる静謐にぐりぐりと頭をドリりながら説教である。頭をゴリゴリされているのに、それでも嬉しそうに笑っている静謐。Mじゃないだろうか。

 

『スキル毒性物質完全耐性に昇華しました。これよりこのスキルを常時発動しますが、よろしいですか?』

 

 おう。

 突如、ナビさんの声が聞こえてきて、新しいスキルを得たとのことだった。全状態異常耐性というスキルは、あらゆる状態異常に耐性があるだけで完全に無効化するものではない。過剰に受けると状態異常にはなる。

 

 長い時間、静謐に触っていた俺だが、その間に毒のみの耐性スキルは取得、発動していたのだが、これで完全に毒に対する耐性が出来たということだ。

 これより、俺はあらゆる毒に対して、何をされても毒状態にならない。唇の触れるだけのキスなのに猛毒だったあれも、深くしても何ら問題はない。することないかもだけど。

 

「……? どうされました?」

 

「いや、たった今、俺が毒に対する完全な耐性を得たんだが、これであらゆる毒は俺には効かねぇってことだ」

 

「ッ!? そ、それでは、完全な、ね、粘膜接触でも…し、死なないんですか…?」

 

「そうじゃねえの? 致死率100%の毒飲んでも死なんのだろ。あれ? 人間やめましたに一歩足踏み入れてね?」

 

 一歩どころではないのだが、それでも既に人外の域ではないだろうか。

 スキルのいいところはレベルを上げていなくてもスキルを得られるところである。更に魔力も消費しないしな。消費するのは魔法スキルだけだ。

 

 レベルを上げる方法…それはゲームのように戦闘によってしか得られない。つまり、モンスターを倒したり、誰かと戦えば得られるのだが…如何せん、そんな機会はなかった俺のレベルは未だ10程度。

 

 これは筋力や敏捷に表すと、アスリートよりも少しばかり抜きん出ている程度のことだ。サーヴァントの足元にも及ばない。

 

 しかし、ここにスキルや魔法を使用して上げに上げると、一応、バリバリ戦闘をしないサーヴァントくらいには上げることが可能となる。多分、それくらいになると思う。タブンネ。

 

 静謐と戦うと? 毒は効かなくても暗殺技術諸々で殺されると思われ。

 

 どれだけ最強のスキルを使用しようと元が低かったらアシストされても俺が保たねえからな。

 

 俺がそんなことを考えていると、先程から静かになりずっと体を震わせていた静謐がいきなり飛び込んできて押し倒された。

 

 この子、相手がマスターじゃなくて遠慮もいらない相手だからって懐き過ぎじゃないだろうか。どれだけ渇望していたのだろうか。

 

 俺に馬乗りになって顔を覗き込んでくる。その表情は熱く、蕩けて、妖艶で…

 

「出会ったばかりなのに……曲がり角でぶつかった関係なのに……これが、運命……」

 

「い、いや待て、そんなギャルゲーのような運命はない…!」

 

 ないよね? 俺、主人公なんてガラじゃないもんね!? 主人公はマスターちゃんだろう!?

 

「いいえ、これは…私と貴方の………」

 

 段々と近づいてくる顔。毒の吐息を熱く吐き出しながら、下半身を強く押し付けて俺の体を固定する。

 

 もういろいろとヤバイ…だが待て、俺にはスキルや魔法が……

 

 

 ―――――抵抗できたかどうかは、ご想像におまかせしよう。

 

 

 

 

 




 ―――――抵抗できたかどうかは、ご想像におまかせしよう。

 
 分かりきったことである。

 分かりきったことである。(二度目)







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