お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが 作:きりがる
一応、それっぽいことを追加と修正をしておきましたので、一話だけでもどうぞ。
そして問題の3話。これでいきます。転移?なにそれ美味しいの?精神で突っ走りました。
マスターちゃんのところはまあいいかなって。
この頃、少しおかしいサーヴァントが二人いる。
片や正体はかなり危ないのに子供らしさ溢れる少女と、片や全身が毒でありいつも身を引いて自分から近づいてこようとしない褐色肌の暗殺少女。
そう、私の仲間であるジャックちゃんと静謐ちゃんの様子がおかしいのだ。
ことの始まりはジャックちゃん失踪事件。またの名をジャックちゃんにお父さん出来ちゃった事件である。これは由々しき事態だ。
だって、そういうことでしょう?
私がお母さんであり、もう一人がお父さんということは、それは、その、私達はジャックちゃんにとっては夫婦であり…結婚を……
そこまで考えて頭を振って思考を飛ばす。冷静に考えるのよ、藤丸立香! いいか? 相手は名前も顔も知らないのだから、恥ずかしがる必要なんてない。寧ろ、でっぷり太ったおっさんとかだったらどうする? 居ないけど。
……そいつ、殺すか。
絶対にジャックちゃんを怪しいことで手篭めにしたに違いないだろう。殺すしかない。我がサーヴァント全投入してでも消し飛ばすしかない。おっさんのR-18なんて許しはしない。催眠か?ルルブレ(貫通)するしかないのか!?
再度、頭を振って冷静になる。
次は静謐ちゃんである。
静謐ちゃんはそのスタイルから偵察や暗殺を得意としており、ゴリ押しで攻める強キャラサーヴァントとは違ってとても冷静に仕事をこなしてくれる、とってもいい子だ。
ついでに身体面のスタイルでも、女の私から見ても羨ましいほどに綺麗であり、均整が取れており、実にえっちぃ体をしている。褐色肌にその体はとてもエロいですありがとうございます。マシュのマシュマロボディとはまた違った良さがある。
しかし、その全身、髪から爪に至るまで全てが毒であり、人間が触れたら確実に死ぬだろう猛毒。
そういった過去もあるらしく、自分から誰かに近付こうとはしていないように見られる。話しかければ返してくれるんだけども…。
さて、こうして二人のことを紹介したが、この二人の様子がおかしいのだ。
別に体調が悪いわけではない、むしろ絶好調?かもしれない。
でもでも! あの好奇心旺盛で子供っぽくてお母さんお母さんと可愛かったジャックちゃんが! 今は前のようにお母さんと言ってくっついてきたりしないの!
お父さんが出来てから、もうお父さんのことばかりなのか思い出しては笑顔を見せると言った感じである。なのに、お父さんのことについては何一つ教えてくれない。こっそりついていこうかと思ったけども、いつの間にか消えている。監視カメラにも映らない。
謎である。
更に、最近はお菓子も作れるようになっており、紅茶も淹れられるようになっている。その腕はあのカルデアのおかんほどではないが、彼が唸るほどなの。とても美味しかったです。
戦い方もおかしいし…誰なの? ナイフを使ったCQCを教えた人。音がドドッドッ!ってなってたんだけど。伝説の傭兵さんなの? 弟子入りしたの?
次いで静謐ちゃん。
この子もやべぇよ、やべぇんだよ…ゲフン。
何がヤバイってめっちゃエロくなった。ふとした拍子にとんでもない色気を無自覚に振りまき、男性陣が反応するくらいヤバイ。ちなみに私も顔を覆って後退りするくらいにはやばかった。
なんか知らないけど肌艶いいし、たまに笑顔になるし、両頬を抑えていやんいやんとくねくねするし。
恋する乙女?
うっそだろ、おい。
聞いても教えてくれないのぉ!! うわーん!
というわけである。
今、カルデアはそのことでざわついているのだ。
あ、ジャックちゃんがまたどこかにいこうとし……また消えたぁ!
はぁ…と1つ溜息をつく。
こんな感じなのだが二人は幸せそうなので問題ないとは思ってるけど、どこかやるせないのだ。この二人に愛される二人の男性は本当に幸せものだろう。お、お父さんが私の旦那さんになるかは別として、ね?
あ、それとダヴィンチちゃんも最近楽しそうなんだけどどうしたんだろう? いつもどこか見えていた疲れも消えているようだし、面白いことでもあったのかな?
何してるんだろう。
◇ ◇ ◇
何してるんだろう……。
俺は今、仕事である雑用をこなしながらそんなことを思っている。
先程、カルデア内の掃除を終わらせ、破損場所の対応を行い、今現在は自分の書類を片付けているところである。
スキル速読とスキル速筆を使用して百枚以上はある書類を一枚一秒のペースで終わらせているのだが、そんな俺をずっとストーカーのように見てくる人が一人。いや、サーヴァントが一体。
「むむむ…一枚一秒のペース…。魔術の使用痕跡もなしに、正確に長文や多々ある項目を書き記すなんて……やるじゃないか」
そう、ダヴィンチちゃんである。数多の逸話を残している、自分がモナリザになっちゃうまさしく正真正銘のヤベー奴。
柱の陰に隠れて今日一日ずっと俺のことを見ているが、それで隠れているつもりなのだろうか。何もしなくても視線だけで気づけたんだけど。ブツブツ喋れば更にわかるんだけど。周りの職員に大注目されている時点で既に隠れられていないということを気づいてはいないのか。しかし、誰も何も言わないとこを見るに、視察とでも言っているのかもしれない。
ここではめったに見ることのないダヴィンチちゃんに誰もが視線を奪われ、仕事が進んでいない。進んでいるのは俺だけじゃないの? つか、俺のこと見過ぎ! なんなの? 好きなの? 知ってるよ? 中身おっさんだということを!
でも、俺的にはTSキャラは全然ありなのでオールオッケーなのだ。
って、違う。問題なのは選りにも選って面倒くさい相手に目をつけられたことだ。
内心ドキドキしながら書類を終わらせると、丁度そこに上司である銀髪グラマラスな女性がやってくる。手にあるのは一台のパソコン。この仕事場で使われているものではないのでプライベートのものだろう。
「アルンくん、お疲れ様。仕事はどうかしら?」
「お疲れ様です、エルナさん。今、急ぎの書類仕事が終わったところです。時間も時間ですし、残りは持って帰って済ませます」
「それならちょうど良かったわ。このパソコンの調子が悪くて…直せるかしら? お礼はするから」
手渡された白色のパソコン。
このエルナさん、何かと俺のことを構ってくるけども優しい上司である。自分の仕事が終われば俺の仕事を手伝ってくれたり、忙しいときに仕事を俺に持ってきてはお礼だと言って色々してくれる。この間はエルナさんの部屋で二人で酒を飲んだ。
ただ、酔うととてつもなくエロいので勘弁して欲しい。上司襲ったらどうなると思う? 絶対にヤバイ。
さて、パソコンだがスキルでどうにでもなるのだが改造でもしようか。流石にそれは失礼か。
まずは電源でも付けてみようとしたところで、隣に座って密着してくるエルナさん……の向こうであるダヴィンチちゃんの声が聞こえてくる。
「むっ…私のアルン君に近づくなんて……」
聞きようによっては彼女が彼氏に近づいた女に対して言うような台詞だが、俺には隠された言葉が聞こえてくる。
「むっ…私の(観察対象である)アルン君に近づくなんて……」
恐ろしいものである。
そうとも知らずに、電源がつかないのでばらしてみようと弄りだす俺の横のエルナさんは何やら不機嫌そうに話しかけてくる。
「ねぇ…今日はどうしたの? あの人、色んな部署を視察しているとか伝えてきたのに、アルンくんのことずっと見てるんだけど…もしかして……」
「いやいや、ないです絶対に。俺だっていきなりあんなことされて迷惑してるんですってば。なんの接点もないのにいきなりっすよ? わけわからんです」
「そうなの……私が追い払いましょうか? 塩ある? 拳大の角ばった岩塩なら尚いいわ」
「アンタ死ぬぞ」
「叩き込むのは顔面がいいわよね」
「アンタ死ぬぞ!」
サーヴァント相手に何するつもりだ。
立ち上がろうとしていたエルナさんを押さえつけるように腕を引っ張って座らせておく。周りが騒がしくなったが何なのだろうか。
『スキル鑑定を発動します。問題点を抽出中…完了。スキル機械技師を発動します。細部損傷他、バッテリーの中度の摩耗を確認。代わりに疑似S2機関を搭載しますか?』
ちょい待てなんてものを搭載しようとしてるんだ。本家に似たものだからって半永久的に可動し続けるNPCとかいらんだろ。却下だ却下。
ナビさんがとんでもないものを搭載しようと提案してきたが流石に却下して、ため息をつきながら速攻で修理を済ませる。疑似S2機関は魔法とスキルがあったから作り出せたものであり、現在はアイテムボックスに収納されているが出す予定はない。
勿論、その他にもアニメとかに出てきた道具とかアイテムは作れるものは試しに造りまくってみた。夢だよな。ロマンだもんな。な?
「はい、出来ましたよ」
「わお、僅か五分足らずで直すなんて、流石ね。お礼はまた今度、私の部屋で」
「はいはい」
最後に俺の頬にキスをしてから去っていく。この一連の流れに男性陣からの殺気がものすごいがあの人はいつもこれなので仕方ないだろう。俺のところはそうでもないが、国外ではキスが挨拶というところもあるのだし、俺だけじゃないのではないだろうか。
さて、部屋に戻って残りの仕事をササッと済ませるか。ダヴィンチちゃん、どうやって撒こうかね。煙幕で逃げ切れるのだろうか。この前みたいに縮地でも使ったら…更に目をつけられるだろう。これはもう話を聞くしかないのでは?
書類に視線を落としながら歩く。コツコツと俺の靴が音を鳴らすが、背後からついてくるダヴィンチちゃんは音を鳴らさずにスニーキングでついてくる。
このまま部屋までついてこられて、もしもジャックがいて遭遇したら不味いと気づいた俺は、ここでケリを付けることにした。要は俺から話しかければいいのだろう?
スキル気配察知によってダヴィンチちゃんがどこに居るのかは把握しているので、振り向いて真っ直ぐにダヴィンチちゃんのもとに向かう。その顔は、何故か驚愕に染まっているが、まさかあの下手くそな尾行で気づいていないとでも思っていたのだろうか。
「これは、ダ・ヴィンチさんじゃないですか。奇遇ですね、ここらへんになにか用事でもあったんですか?」
「アルン・ソルシエ君……君、なんで私のことがわかるのかな?」
「いや、意味がわからないんですが…今日一日、付け回してましたよね?」
「そうさ、見てたのは認めよう。でも…仕事場を出てからは違うんだよね。気配を消す道具を少し前に作っていたのを思い出してね、試運転も兼ねてそれを使って尾行していた。サーヴァントでも中々見つけられないほどの出来にしていたはずなんだ。けど…君はずっと私をわかっていたように言ってるし、現に気づいていた。どうしてかな?」
そうダヴィンチちゃんに告げられ、表情には出していないが内心では驚愕のあまり、心臓が爆発四散するのではないかと言うほど焦っている。気配を消す魔道具? 仕事場では職員にも見られていたから使っていなかったのだろうが、出てからは使っていただと?
やっべ、気配察知のスキルを使っていたから俺はなんの違和感もなかったのか!
これは流石に想定外だ。だが、そのことをおくびにも出さずに話しかける。
「すみませんが、それ、本当に発動していたんですか? それよりも、今日は仕事中も含めてずっと見てましたよね…流石に気分がいいものではないのですが」
「おっと、それはごめんよ。どうしても君のことが気になってね。それと、話し方だけど君の本来の話し方で構わないよ。敬語は君には似合わないぜ?」
「あ、そう、それじゃあ遠慮なく。んで、何のようなの? ジャックちゃんだっけ? 見てないぞ」
今日のところは。と付け足しておこう。嘘は言ってない、嘘はな。
「いやいや、それはもういいのさ。アルン君に聞きたいことがあったんだよね。この前くれた珈琲とお菓子あるじゃない?」
「あげたっけ?」
「貰ったの。それで、それを食べたら身体の疲労という疲労が消えて、最高のパフォーマンスを出せる状態まで一瞬にして回復したんだけど…なにか魔術でも仕込んでいたのかな?」
そう言って探るように目だけ笑っていない笑みを浮かべて来るダヴィンチちゃんだが、魔術なんて使っていない。ちょっと、料理スキルが補正として勝手に付与しちゃうだけであってだな……。
「いや、俺はそんな魔術なんて使えないんだが…」
ファンタジーのような魔法は使えるけども。
「確かに、君の魔術回路は少なく、魔力も少ない。使える魔術も大したものはないのだけれど…」
この人、俺のことを貶すために来ているのか?
『今日はいい天気ですね。ソーラービームでも撃ちたい気分になります。おっと、ここにいい的がありますね。これはもうそういうことでは?』
どういうことだってばよ。やめなさいってばよ。
「さっきのことといい、掃除や書類仕事のときといい、君は他と比べると変わっているようだ。魔術ではない何かを持っているんじゃないかと疑っているんだよ……ねぇ、話してくれないかな?」
静かな威圧ははぐらかすことを許さないとでも言うかの如く。……周りの職員仲間にとっては既に慣れたものなので何も言われなくなったが、この人にとっては違ったのだろう。まぁ確かに普通とは違う、特殊であり特別っぽいのは認めよう。
だが…それがどうした?
こんなもの――――――――「慣れ」の一言で済むんだよ!!
ピシャーン!と背後で雷の音が聞こえた気がした。胸を張り、堂々とそう告げた俺にダヴィンチちゃんは唖然とする。
「仕事が早くて何が悪い。俺は俺の趣味であるゲームのために早く終わらせようとしているだけ。特殊の何が悪い。英語でいうとスペシャルだ。なんか優れてるっぽく聞こえるだろう?」
「ふっ……く、くっくっくっ……ハハハハハハッ! 確かに、それは格好いいよ、何かのスペシャリストみたいだ。いいね、スペシャルか……うんうん、君は実に面白い子だ。今までにないタイプじゃないか」
やっべ、俺の好きなキャラの真似したらターゲットロックされた気がする。俺がエリートぼっちで、相手は魔王なのだろうか。やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
これ以上ここに居るとヤバイと俺の中の何かが告げている。俺はそろそろここで帰らせてもらおう!
「はー…久しぶりにこんなに笑ったよ。いいねぇ、君はまた違った面白さがある。中々に興味深い…どうだい? もしよかったら、これから二人で食事でもしながら話をしないかい?」
「ほう…それはとても魅力的なお誘いだ。どこの高級料理店に連れて行ってくれんの? 拒否るけど。俺はわざわざ火の中に飛び込む虫にはなりたくない」
「おや、こんな美女を前にして火と言っちゃうんだ」
「綺麗な薔薇には棘があるように、綺麗な女性には謎と危険性が備わってると思ってるので」
「言うねぇ、君」
「そりゃどうも。それに、俺はこれから帰って残った書類を片付けてゲームをしなきゃならないので、今回は断るぜ」
そこそこ分厚い書類を掲げて見せれば、今回は諦めたような顔を見せるが、その目は俺のことを諦めているようには見えない。厄介な人に目をつけられた…まだ、決定的な証拠を押さえられていないので推測の域を出ていないし、今は職員も少ないので強硬手段に出るとどうなるのかはわかっているのだろう。
俺に対する興味を失ってくれればいいのだろうが……。
ダヴィンチちゃんを見てみれば、無意識だろうか…赤く、艶めかしい舌が肉厚な唇をちろりと舐めているのを見てしまい、ぞくりと背筋が震える。肉食獣に狙いをつけられた気分だ。
「そ、そういうことで、またの機会に…」
「うん、今回は諦めるとしよう。それじゃあ、また明日ね」
手を小さく振って背を向け、遠ざかっていくダヴィンチちゃん。
…………なんやて!? 明日!?
「やめろショッカー! ぶっ飛ばすぞぉ!」
「ハッハッハ! イー!とでも叫べばいいのかな? ほら、暴れないで一緒にご飯でも食べようぜ」
「イーッ!ヤダーッ!」
「……君がショッカーになるのか」
笑顔のダヴィンチちゃんに腕を絡められ引きずられる男性職員の姿が、食堂で確認されたとかなんとか。二人の関係が大いに噂された。
「(よし、なんとかなったか…ん…?)」
クルリ「とでも、言うと思ったかい? この程度、想定の範囲内だよォ!」
「お、オレのそばに近寄るなああーッ!!」
「アハッ!ハハハッ!ヒァハァハッ!」
とんでもない笑い方で爆走しながら職員を追いかける大天才の姿が目撃され、二人の関係が大いに、大いに、噂された。
――BAD END――