お父さんになったら部屋にサーヴァントが来るようになったんだが 作:きりがる
あの後、復活したアストルフォとなんとか共闘してキメラを消すことに成功した。決め手は巨大猫じゃらしとボール、それにねこまんまだった。危なかった…完全に猫ですね、あいつ。
それらに夢中になってる間にアストルフォが機械を操作して消すことに成功。いやぁ、俺のミスとはいえ死ぬかと思った。つい、スキルを使うのも忘れてたくらいハチャメチャだった。ちなみに、レベルが5上がった模様。
キメラとのドキッ!命をかけたじゃれ合い戦闘!~ぽろりもあるよ~によりなんだかんだ負傷した俺は、アストルフォを引き連れて…いや、アストルフォに引っ張られて半ば無理矢理に医務室へと連れて行かれている。
あのぬこの爪は痛かった…引っ込めてくれないと遊んでやらないんだからね!
んで、既に治癒魔法により傷は治癒しているというのに聞かないのだ。
それほどまでに俺の身を案じてくれているのだろうが、無傷なのに血まみれの状態で医務室に行っても怪しまれるだけなので困る。どこかいいところでアストルフォに適当な理由でも付けて別れようとは思ってはいるんだが……。
「ほらほら、早く! 見えない所にダメージが残ってたら大変じゃん!」
「内部も治癒するし、スキルによる自己再生能力もあるから問題ないんだが…何も分からずに即死級、用意なしの即死攻撃くらわない限り、四肢欠損位なら戻るぞ」
「なにそれ凄い治癒能力!? もしかして…頭とかも生えてくる?」
「生えるが?」
「怖いよ!? 亜人かな!?」
試したことないけど、予め術式を内部で展開させて置いておけば、首が飛んだときに発動して生えてくるだろう。とは言え、何も分からずに首が飛べば危ういが…人間、首チョンパされても数秒の間は意識があるらしい。斬首された人間の頭部に、切り離されたとしても意識は残っているのかという実験もあったらしく、意識は残っていたそうだ。諸説あり。そこらへんは英霊召喚して聞いてくれ。
逆に首が切られた鶏の身体が生き続けたっていうのは有名だろう。あれも面白いものだとは思う。額を射抜かれたのに月を目掛けてどこまでも飛んでいったミネルヴァ先輩も同じなのだろうか。
って、今はその話はいいんだ。俺は部屋に戻って着替えたいんだが、もう医務室も目と鼻の先…とまでは言わないが、これからの道は人通りも多くなるし、他のサーヴァントもいるだろうから、ここらへんで撤退させてもらおう。
「なあ、アストルフォ。やっぱ医務室は止めておく」
「なんで? あんなに怪我したんだから…」
「今は傷は治ってるだろう? それに、こんな格好で行けば逆に何かあったんじゃないかと思われるって。敵襲でもあったんじゃないかと…余計な騒ぎを起こさないためにも部屋で着替えさせてくれ」
敵襲というか茶番と猫パンチのせいだけど。
ジャックの事件については内緒だぞ。その時はアストルフォも召喚されてなかったから黙っておこう。
「そう、だね…うん、わかったよ。今回はアルンの言う通りにするけど……」
「けど?」
「今度、アルンがどこか怪我したら絶対に連れて行くからね! 大丈夫だと分かってても心配なんだから!」
「……わかったわかった。ほら、お前も自分の部屋でシャワーでも浴びてこい。俺に抱きついたから血に濡れてるぞ」
「おっと、それもそうだね! これは着替えたほうが良さそうだ。じゃあね、アルン!」
「はいよ」
笑顔を浮かべながら小走りで自分の部屋の方向だろう通路を小走りで駆けていくアストルフォに、ホッと一息。アイツ相手にはなんだかんだ何言ってるのかわからない感がいつもあるのだが、いい子なのですんなり聞いてくれるのは有り難いものだ。理性蒸発してるせいかもしれないが、いいとしよう。
少しして、アストルフォにも帰ってもらったし、誰かと遭遇してしまう前に俺も部屋に帰ろうとアストルフォが消えて少ししてから振り返ると、そこには一人の美少女が立っていた。
薄い桃色の髪を持つ美しい少女であり、スタイルもよく、腰に刀を帯刀している。鍛え抜かれた脚はスラリと長く、それでいて女性らしさを失わない見惚れるような脚線美も備えており、白い衣装を押し上げる胸は決して小さくはなく寧ろデカい。
というかなんでそんなエロい恰好なのだろうか。露出が多いと言うか、それ脚大胆にも見せてるし太腿眩しいし、肩と脇出てるし、なにそれなにか履いてるの?
だが……彼女はその胸元と口元を真っ赤に染めているのだ。濃い血の匂いに自身の血で染めた身体…それが、振り返って一発である。
つまり、吃驚。
「「ぎゃー! 血塗れの変態だーっ!!?」」
「コフッ!?」
「吐血した!? 変態だーッ!」
「すみませんッ! でも変態はやっぱり酷くないですかッ!?」
互いに叫んだと思ったら突然の美少女の吐血に強襲される。がっつり口から吐き出された血は既にボロボロだった俺の身体を更に血の色に染める。最悪である。
見るからにサーヴァントだろうし、この吐血から医務室にでも向かおうとしていたんだろうが、俺が立っていたから気になったのかもしれない。
だが、吐血して倒れた彼女は俺にとっては都合がいい。血をぶちまけられて冷静になった俺は、このまま彼女を放置して自室に向かって歩き出した。
「えっ!? まさか倒れた人を放置ですか!?」
「大丈夫大丈夫。吐血して歩いてこれたんだから、もう一回くらい歩いていけるだろ」
「起き上がれるまでが時間かかるんですけど!?」
「いや、俺は医務室行きたくないし…早くシャワー浴びたいし。汚いし。そこでしばらく寝てたら落ち着くのでは?」
「くっ…布団代わりの羽織を忘れてきて…って、そうじゃないです! 血を吐いたのはすみませんでした……でも! 目の前で美少女剣士が倒れたのであれば、そっと抱きとめてくれるのが男子というものでは!?」
「面倒事は御免こうむる」
「酷い…助けて下さいよー!」
「お前実は元気だろ…」
倒れた状態で俺に向かって拳を振りながら叫んでいる彼女はどう見ても元気である。なんか、こう、目の前の相手は気が抜けるというか…接しやすいと言うか、いつもの俺のように接してしまっているのが不思議だった。
『鑑定結果が出ましたので簡潔に御教え致します。カルデアにて初期より召喚された主力メンバーの一人、新選組一番隊隊長、沖田総司ですね…どうやらスキルに病弱:Aがついているようで、生前は肺結核にかかっていたためそれが原因かと』
なるほど…体調悪くなるのはそういうこと…つか、女だったのか。でも俺の中の沖田は沖田総悟なんだけど。ドSの方なんだけど。
『どうも今日はいつもより体調が悪いらしく、ああ見えて身体が動かせないレベルには辛いようです』
叫ぶほど元気はあるように見えるが、それは虚勢であり、隠していると……ふむ、よく見れば身体から力は抜けているし、顔にも無理やり表情を作るために力を入れているのか筋の僅かな痙攣が見て取れる。
まぁ、俺のせいで二回目の吐血をさせてしまったわけだし、今回だけだ。
ぬこ戦で使用して無理やり引きずられたのでしまっていなかった景光に腕を置きながら、はぁ…とため息を吐いて沖田総司に近寄っていく。お気に入りの一本だし、今回は結構使ったから手入れしておきたいのだ。
「おお? まさか、助けていただけるので…?」
ごろんと沖田総司を仰向けにし、肩と太ももに手を回して持ち上げる。見た目通り軽い彼女は何の抵抗もなく持ち上げることが出来た。別に医務室に向かってもいいが俺も巻き込まれそうで嫌なので、俺の部屋で無理やり(魔法)寝かせてその間に魔法スキルで治し、起きたら追い出す。その間にシャワーでも浴びればいいだろう。
流石に無断で抱き上げたために沖田総司は少しばかり頬を赤らめながら動揺しているが、身体に力は入っていないため全体重は俺の腕の中にかけられている。そのまま大人しくしててくれ。
「あ、あの…? いきなりお姫様抱っこは流石の沖田さんも恥ずかしいかなぁ…なんて…。助けていただけるのは有り難いんですが、これはちょっと…」
「うるせぇな…無理しているのはわかっている。だからもう喋んな。今は大人しく全てを預けてろ」
余計なことに時間を取って別のサーヴァントと鉢あっても嫌なので、周りを警戒しつつも少しだけ顎を下げて下を見るようにそう告げる。 むやみに動かずに全て体重を預けてもらわないと抱きにくいしね。変にガチガチだと抱えにくい。
『……言葉が少々足らなかったと思います』
何が? 全部言ったやん。
沖田総司も理解してくれたのか、俯きながら身体を小さくして大人しくしてくれた。たまに視線を感じるがどこまで行くのか不安で気になるからだろう。
やがて俺の部屋についたのでそのまま中に入ってベッドに向かう。しまった、ゲームとか片付けてなかったな…あとで片付けておくか。
俺のベッドにゆっくりと沖田総司を寝かせ、彼女の刀をベッド脇に立て掛けるついでに俺の景光を立てかけ、それから布団でもかけようと思ったが…血で濡れた胸元を見て少し止まる。胸と口周りを綺麗にしてからの方が寝やすいだろう。胸元は浄化魔法で綺麗にすることにした。
沖田の目を手で隠し、胸に触れないように手を翳して発動すれば、白い光が血を全て消し去っていく。これくらいなら魔術レベルであるだろうし問題ないに違いない。
次いで、アイテムボックスからおしぼりを取り出して、顔を拭く。
「少し触れるぞ」
「え…んむ……あの…それくらい、自分で……」
「俺の方が早いし、待つの面倒だ…というか、どうせ動けなくね?」
「それは…そうですが……」
出来るだけ素早く丁寧に優しく頬と口、首を拭いていき、唇の端の拭き取れていなかった乾いた血を親指で軽く擦るようにして取る。柔らかでしっとりとした感触が指腹に感じ取れるが、もはや介護なのでササッと終わらせたのだが、彼女にしては好き勝手されるのが恥ずかしいのか顔が赤い。青白いよりましか。
すべて終わってから布団を肩までかけて、終了。あとは寝てくれ。それですべて終わる。
「よし、あとは寝てくれ。さっさと寝て、さっさと元気になって出ていってくれ」
「は、はい、ありがとうございます……あの、新しく召喚されたサーヴァントですか?」
「は? いや、普通の一般職員だが…」
「ですが、刀とかその怪我とか…」
「あー…ちょっとでかい猫に襲われてただけだから気にしないでくれ。というか、早く寝ろ」
「猫なのに血まみれ!? じゃ、じゃあ最後に、お名前を教えていただけますか? あ、私は沖田総司です」
「アルン・ソルシエ。アルンでいい」
それを最後に着替えを持ってシャワールームへと向かい、血塗れの服を捨てて体を洗うために室内へと入る。現在、色々と厄介な状況のカルデアでは節電やら節水を心がけているので、水をドバドバ使おうものなら何言われるかわかったものではない。事故のせいで管理する人が少なくなったのよね…。今は俺の仕事。あと少しで直るのでそこまでいけば使い放題。
なので、俺は水属性魔法によりお湯を頭上からドバドバかけているという反則技を使う。皆も魔術でどうにかすればいいのに、応用が利かないというかそっちまで頭がまわらないのかね? 変なプライド持ってるし。
ジャババーと容赦なくお湯を生成して贅沢を楽しんだあとに出て、パパっとタオルで体を拭いてから服を着る。しかし、長い髪は乾くまでも時間が掛かるし、濡れたままだと服も濡れてしまうしでいいことない。そろそろ切ろうかとは思うけども、この髪はジャックのお気に入りなので切ると悲しむ。仕方ないので風呂上がりはポニテで妥協しているのだ。
部屋に戻ればどうやら沖田総司は既に寝ており、寝息すら聞こえないほど静かだったため死んでんじゃね?とは思ったものの、治癒魔法をかけるために近寄ると、生きてたっぽい。流石に死ぬことはないか。
さて、やることやったし、風呂も入ってさっぱりしたし、仕事もスキルフル活用で死ぬ気で済ませたし……いい時間なのでゆっくりとゲームするしかないな!
ソファーに沈み込んでマダオと化し、寝てるやつがいるのでイヤホン派の俺は高級イヤホンを装着して大音量でゲームを始める。慣らしで音ゲーから始まり、RPGで繋げ、ホラゲーで終わる。育成やクラフト系はのんびりしたいときに行うのだが、今はホラーな気分であり、バイオな気分なのでファミパンおじさんに立ち向かいに行くのだ。
二周目故にサクサクプレイではあるが、やっぱ一周目とは違った感じでやりたいじゃん? 既に内容を知っている身としては、その余裕から別の方法で楽しんでみたいという思いもある。狩りゲーみたいに武器を変えたり装備をアレンジしたりと別の楽しめる要素もあるが、それでもやはり狩り慣れたモンスターというのは何度もやると飽きてくる。
とはいえ、これは人それぞれだろう。延々と狩り続けられる人もいれば、俺のように何度かプレイして把握してしまうと飽きてしまう人もいる。ゲームなんて楽しみ方と楽しむ要素は人によって違う。それがいいのだ。だからゲーム実況は実況者によって楽しめる。
イヤホンから漏れているのではないかというほどの大音量で戦いながら、がんがんと弾薬を消費していく。やはりショットガンは強いと思いました。まる。
割と弾薬とか回復アイテムとか渋って溜めていくタイプであるので、終わり際には結構余らせてしまうのだ。過去のバイオシリーズでもハンドガンの弾を拾いまくっていたら多くなったので、ハンドガン縛りとまでは行かないが、ボスのために強力な武器を残していたら、ボスもハンドガンと他の少量の武器で倒し、集めて残していた強力な武器は余らせてしまう…分かってくれるだろうか。
ナイフで殺せるならナイフで殺して弾薬節約しようというタイプ。だから、今回はがっつり使っていこうと思ったため、弾切れするんじゃないかと言うくらい使いまくる。
思ったよりも…いや、思ったとおりに楽しいでござる。連射の勢いで敵に撃ち、近ければショットガンをブッパする。たのちぃ…。
抑え込まないって素敵なのね。わかるわ。
「あっ、そこアイテム取り逃してますよ!」
「おっと、マジだ。一周目でも気づかなかったわ…」
「ふふーん、私にかかればどうということはないです! さぁ、派手にぶっ放して吹き飛ばしてください!」
「任せな。今の俺に、自重という文字はないんだよ」
「きゃー! カッコいいー! そこ! やった、当たりましたよ!」
「当然……………ん?」
既に深夜も回り数時間もプレイしているが、俺はいつの間に誰かと会話をしながらプレイしていたのだろうか…誰と喋ってた?
戦闘中なので目を離すわけにもいかないが、一瞬であれば問題ないのでちらりと横目で見たところ、俺の隣にはいつの間に起きたのか、沖田総司が後方から抱きつくように頬が触れる距離で片方のイヤホンをして、腕を振り回して画面を見ていた。
なんということだ…マジで気づかなかった。そう言えば驚かし要素のあるイベントでびくりと抱きついてきたり、普通に話しかけて答えていたし、意識して気づいた彼女から漂う甘い香りもサラサラの髪も、男性ではありえない頬の感触も………普通は気づくだろうことなのに、余りにも自然に入ってきて見るだけとは言え一緒にプレイしていたので、違和感を覚えなかった。
自然に溶け込んでくるとは……これが、サーヴァント……ッ!!!
家族増加攻撃。尚、家族とはジャック達含むアルンファミリーの模様。
アルンの部屋に通う奴らはどこかで見えないファミパンを食らっているとか。
後書きはついにネタ切れ。
これ書いてるの仕事終わりの丑三つ時だからね。是非もないよネ。