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眼下に広がるのは盤上の世界「ディスボード」。
先ほどまで少女の相手をしていた唯一神は、そこからの景色を眺めながら一人でため息をついた。
最後の最後まで、その少女の思い通りになってしまった展開に感心し、ある種、満足さえしていた。
しかし、どんなに彼が納得しようと、結果としては彼が筆ペンを走らせていた物語が、
それは、彼女のがたった一つ、この「ディスボード」に残したものであり、唯一神のみが知る、正真正銘の「
「まさか」
誰に語る訳でも無く、まるで自分の中で整理するために呟かれたその言葉は、彼以外の耳には届かない。
「最後の要求までも、カイは考えていたのかな?」
残されたチェス盤の盤上は、本来であれば先手の負けに等しいとされる「
引き分けとなった勝負の扱いは、勝負をしていた本人達による話し合いによるが、今回の勝負に関しては相談の必要すら無かった。
何故かと聞かれれば、これまでのカイの勝ち方や要求を踏まえると見えてくる。とテトは答えるだろう。
つまり、
「勝っても負けても目的が達成できるようにする……いや、相手に有利な要求をする――か」
負けた方が自分の利が大きいと判断させて負けさせるような誘導をしてきた彼女は、今回も、唯一神相手にやってのけたのだ。
敗北を受け入れて、けれどもこちらの要求も通す、そんな選択肢をテトへと投げかけたのだ。
「『
素直に負けを認め、勝っても負けてもテトの要求に等しい状況になってしまう勝負となった先のチェスの結果は、先述したとおりに引き分けであり――。
互いの要求を「この世界の皆からカイに関する記憶を消した上で、元の世界へと強制送還」と混ぜた要求に変え……彼女は、彼女の望みであるソレを――受け入れた。
「この世界に来ることを望んだ彼女の最後の願いは、この世界に居なかった事にして元の世界に戻る……どんな思いで、どんな覚悟で、受け入れたのかな」
純粋な興味も、それに応えうる存在は、もうこの世界には居ない。
しばらく景色を眺めていたテトは、何やらアイドルがどうだと騒ぐ帆楼や『
神話には至らなかった、新たな「誰にも語られない物語」を胸に――。
■■■
「書けたぁっ!!」
パソコンの前で大きく伸びをする少女。
折角のネタを友人に煽られ、面白いと言わせる、と奮起した彼女の頬には、もう涙の後は無い。
好きなキャラと、ようやくイチャつけたのに。
好きな作品の世界で、ようやく居場所を作ったのに。
好きなことを、好きなだけ出来ていたのに。
それらを手放すことはそう容易ではなかったが、それでも彼女は
――いや、許せなかった。
一ファンとして、自分が好きな物語の渦中にいることに。
渦中に居るせいで、自分以外がどう思っているのか、考えが、行動が、読めないのが我慢出来なかった。
故に……戻った。元の世界へ。
震えるほどに嫌だったし、せめて自分が「向こう」の世界へ居た証として、プラムにキスマークだって首筋に付けさせた。
誰にも分からぬ葛藤は、それでも彼女を止めるには足りなかった。
「書けたよー。うん。そうそう。――あー、二次創作許してるサイトってどこがあるっけ?」
書けたことをどうやら煽ってきた友人に伝えたらしい。
そうすると返って来たのは「面白いならネットで公開して他の人の反応も見れば?」という言葉だったらしく、二次創作の投稿に緩いサイトを探すこと少し。
どうやら見つけたらしく、彼女は嬉々として友人に伝える。
「うん。今投稿するー。……んとねー、『ハーメルン』ってサイトー」
カチカチとマウスを操作する音や、キーボードで文字を打ち込む音が続く。
「作品名はねー……」
そこで皆夢は少しだけ考えて――、
「あ、『blank page』なんてどうかな?」
そう、口にした。
ここまでお付き合い頂き、本当に、本当にありがとうございます。
元々こう長くなる予定は無かったんですが、ここまで書けたのも偏に読者の皆様のおかげです。重ね重ねありがとうございました。
ノゲラの最新刊が出るまでの暇潰しに、少しでもお役に立てたのならば作者冥利に尽きると言うものです。
さて、もう特に書くことは無くなってきたので今後の予定だけ。
完全に未定です。
ひょっとするともうハーメルン様では書かないかも知れません。
が、未定ですので本当にどうなるか分かりません。
もしどこかでご縁がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。
読んでてここ分からなかったぞハゲ! なんて部分有りましたら気軽に感想でもメッセージででも聞いて下さい。
活動報告なんかでまとめて答えると思います。
それでは、またどこかでお目にかかる日まで、皆様お元気で。