ロックマンゼロ ~紅き英雄の帰還と再び動き出す因縁~ 作:M・M
自語はともかくまた少し遅れ目ですみません、早い所新章へ移りたいので頑張りたい所です。
今回はエール編、ヴァンもエールも次回の主役であるアッシュも今までの戦いで成長したなと思わせる様な場面が。
では、どうぞ。
※アッシュ、エールもヴァン達と大体並行して進んでいます
エールが転送されて来たのはシロツメ。新艦の製造と聞きここの総司令のブルーからの連絡を受け、必要な部品の1つであるスラスターモジュールを受け取りに来たのだ。
エール「確か私が1人でこの場所に来たのは初めてかな?」
そんな事を言いながら総司令部の方に足を進める。そんな中思う事は……
エール(……復興が速い)
ここは以前イプシロンの襲撃によりかなりの被害を受けた都市だ。1部は最早建物の見る影もなく焼け野原になってしまっていた所もあったが、
エール「本当に頑張ってるんだね。私達も……頑張らないと」
こんな絶望する様な時代でも、毎日を強く生きている。少しずつではあるが都市の方も復興が進んでおり、その絶望と戦おうとしている自分達を強く勇気づけてくれた。
エール「おっと、急がないと」
ついゆっくり目になっていた足を急がせる。
~総司令部~
エール「ガーディアンベースよりエール、ただ今到着致しました」
ブルー「良く来てくれた、エール君」
ビシッと敬礼をするエールに対しブルーも敬礼をした。立場的に言うなら自分の方が下ではあるが、前にそれについて聞いた所「戦う君達の方が余程偉い立場だよ」と言われたのを覚えている。
エール「いつも私達に協力してくれてありがとうございます」
ブルー「今はこの星全体が協力しないとけない時だ、気にする事はない……早速だが君達に例の部品を渡そう」
エールが連れて来られたのは総司令部の地下にある立ち入り禁止の倉庫。
ブルー「ここだ」
倉庫にも番号が連れられており、何があるのか気になるが流石にそんな事は聞けない。
アッシュが自分の仕事を羨ましいと言ったが、確かに回収するだけの本当に簡単なお仕事。自分としても当然楽に終われるなら楽な方が良いが、
エール(……頑張ってる他の皆に申し訳ないな)
そんな事を思っていたエール。だが……
ブルー「……」
エール「どうかしたんですか?」
扉を開けたブルーが硬直しているのを不審に思い彼に尋ねてみる。
ブルー「……無い」
エール「無い?」
ブルー「スラスターモジュールが、無い!」
エール「えっ……」
慌てて中に入り辺りを見回すブルー。見回して何かが見つかる事は無かったが。
エール「……本来ならこの場所に?」
ブルー「あぁ、きっちりと保管してあった筈だ」
エール(……まぁ、そんな事だろうとは思った)
元々こんな楽にいけるとは考えていなかったし、深く落ち込んでいる彼ほど落胆はしなかった。
はぁ、とため息をついたエールも注意深く部屋全体を見回してみた。
エール(誰かが盗んだ事は間違いないだろうけど、倉庫はかなり厳重な警備がある以上堂々と盗みに入ったら普通気付かれるだろうし)
そして警備も反応せず強引に入られた形跡が無い事からして……
エール「考えられるなら、地中か……」
ブルー「地中?」
エールの呟きにブルーが反応する。
はい、と返事をしてエールはモデルHXに変身する。そして部屋中をゆっくりと歩き始めた。
ブルーが静かに見守る中、足音だけを立てながら地面を調べていたエールが止まる。
エール「……ここだ」
ブルー「……私には他の場所と何一つ変わらない様に見えるが?」
エール「見た目だけなら確かに分からないと思います。ですが……」
剣を出したエールは1度止まり、
エール「壊して良いですか?」
ブルー「……確証は?」
エール「あります」
ブルー「ならば、やってみてくれ」
迷いなく答えたエールにブルーもそう答える。
エール「せいっ!」
地面に軽く穴を開けると……
ブルー「何と、こんな事が……どうして気付いたんだ?」
エール「ここだけ微かに風を感じるからですよ」
モデルHだからこそ出来る芸当だった。
エールが破壊した所には深い穴が開いていた。試しに小石を落としてみたら音がしたのが随分遅かった事からずっと奥に続いている事が分かった。
エール「恐らく何処からか穴を掘ってこの下まで辿り着き、隠密にスラスターモジュールを盗んだのだと思われます」
ブルー「迂闊だったか……地面の下からやって来るとは思わなかった」
エール「普通は考え付きませんし大丈夫ですよ、ただこれからは保管場所とかにも注意した方が良さそうですね」
ブルー「うむ。今度の会議で皆に伝えよう……それで、どうする?」
エール「いつに盗まれたのかは分かりませんが、まだそこまで時間は経っていない筈です。当然追い掛けます」
ブルー「すまない……頼む」
エール「任せて下さい!」
そう言って彼女はその穴に飛び込んでいった。
ブルーはその後ろ姿を見届けて、警備に簡単に事情を説明すると1度倉庫を後にした。
~シロツメ 地中~
エール(さっきも確かめたけど、実際降りてみたらかなり深いな……)
モデルHXのまま、ホバーを使いながらゆっくり下降していく。今の所穴は一直線に続いているが、先は真っ暗な為に一気に下降すると激突の恐れがあるので時間を掛けて降りている。
小石を幾つか手に持っておき、一定時間につき落としていく。そうすれば反響音から地面との距離が分かるのだ。
それから少しして、
恐らく4個目となる小石を落とすと、コツンと音が響いたので地面がすぐ近くにあると理解し、壁をずり落ちながらGATのライトを下に向ける。
エール「よいしょっと、到着」
地面に立って、周りにライトを当ててみる。
エール(そこそこ狭い……となると相手は大体この穴のサイズかな?それとも何かの道具で穴を開けてるのならまだ分からないけど)
正面にライトを当てると奥に続いている。
エール(とにかく、進もう)
モタモタしている暇は無い。足元に気を付けながら走っていく。
片手にライトだと咄嗟の時に不安なのでここはモデルPに変化。モデルPなら暗闇でもある程度の地形が分かるし、敵の位置も確かめられる。
進む事数分……
エール(まだかな……?)
そう思っていたところ、突如明かりが見えた。
エール「眩しっ……!」
ゆっくりと明かりの方に向かうと、どうやら出口の様だ。穴から出てみると……
エール「ここは……?」
何やら巨大な機械が立ち並んでおり今も音を立てて稼働している。
エール(感じからして……地熱発電所かな)
ブルーから地下にその様な施設があるとは聞いていた。軍事国家として栄えたのを支えてきたのがこの発電所との事だったが……
エール(まさかこんな場所と繋がっていたとは)
思えば暗い穴の中を進んで来たが何となく進行方向が下向きになっていた事は気付いていた。
随分下まで潜ってきたものであるが、果たして犯人は誰なのか。
エール「隠れてないで出て来なさい」
エールの声に反応したのかどうかは分からないが、地中から小型、中型とも言えなくもない程の大きさのレプリロイドが一体出て来た。
エール(予想通りね。穴はあまり大きく無かったからこれ位の大きさだと思ったわ)
モデルZXになり
敵意を感じたのか相手もエールを警戒し、何と大きな音を立てながら変形した。
エール「!?」
小さいから動きが素早い……等と考えていたので流石に驚いた。
あの縦長いドリル体型は何処へやら、メキメキと体は大きくなり戦車の様な体型になった。
大きくとなると言うより、折り畳まれていた物が元に戻ったと言う方が正しいか。
エール「本当に凄いトランスフォームだね」
相手の砲台とエールのバスターが共に撃ち合ったのを合図に、お互い動き始めた。
エール(大きい見た目の割に思ったよりか機敏だし良く動く……壁とかは流石に進めないみたいだけど、地面を動く速さは中々)
相手のキャタピラが優秀な性能をしているのだろう。自分達が戦っているグラウンドは整地されていない為に凹凸が激しい上に下はマグマが近い為に深い穴に落ちると運が悪いとマグマが噴出する恐れもある。
きっちりとその様な穴を避けつつ、自分のバスターもしっかり回避している。
当然相手も反撃してくる。腕から発射されたガトリングガンを地形を利用して岩を壁にしたりして防ぎ、隙を見て自分も攻撃する。
エール(
あくまでもまだ様子見である。あまり時間は掛けたくないが、冷静に戦う。
岩に隠れていると、相手の胴体や肩や脚からミサイルが一斉発射された。流石にマズいと思いすぐに飛び出して避けようかと思ったが、
エール「……ダメッ!」
何かに気付いたかの様にミサイルの方に向かい、マグマブラスターを火炎放射器に組み立て放射、全弾爆散させた。
エール(さっきのは私が狙いじゃなかったんだ、ミサイルの軌道からして恐らく奥にある発電所の破壊が目的だった……気付けて良かった)
ここで改めて自分が戦っている
エール(状況は……かなり悪い)
ミサイルならまだ追撃すれば良いが、ガトリングガンを含めまだ他にある武装から巨大な発電所を守りながら戦うなど不可能に近い。
エール(だったら……)
以前ゼロに言われた事を思い出した。
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彼から近接の訓練を受けていた時の事だった。
訓練とはいえ容赦はしない、それが彼のスタイルであったのでヴァンはまだ頑張れていたものの訓練当初の私は手も足も出ないレベルであった。
ゼロ「エール、お前の常に慎重に戦うというスタイルは良いと思うし大事な事だ。だが慎重過ぎるというのも時に苦しめられる事もある」
エール「慎重過ぎる……」
ゼロ「……前にも言ったかも知れんが、ヴァンとエールは正反対までとは言わないが殆ど逆と言っても過言じゃない。ヴァンには逆にお前の慎重さを学んで欲しい場面が度々あるが」
エール「あはは……」
彼の境遇を考えて少し苦笑いをしてしまった。
ゼロ「だが逆にお前にはヴァンの様な……勢いが足りない所が多々見受けられる。特に近接戦闘にそれが顕著に出ているぞ」
エール「勢い、か……」
ゼロ「常に冷静に戦うのはとても大事な事であるが、時には自分の勘、流れの赴くままに戦ってみるという事も必要だ」
エール「……ハイ!」
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いつもの自分なら遠距離から牽制を続けるだろうが、今日は違った。
エール(だったら……やられるまえにやる!)
バスターを収め、セイバー片手に飛び出した。
突如の行動に少し動揺が見えたかの様な動きをした相手であるが、変わらずガトリングを放つ。
エール(このガトリングをギリギリまで引き付けて……今だッ!)
左右移動しながら近付いて、当たるギリギリの所で壁に向かって飛翔した。
相手もそれを追いガトリングの射軸を合わせるも、気が付けばエールはもうそこには居ない。
エール「ここだあぁぁぁぁ!!!」
丁度相手の空中、真上から剣を下に向けて落下。即座に壁を蹴りモデルHXになりエアダッシュ、相手の視界から消えたという訳である。
自分の近接技の中でもお得意のエナジーフィシャーという技である。
決まった、とそう思ったエールだが……
エール「キャッ!?」
突如の爆発に吹き飛ばされる。
自分の傷は軽傷であったが何があったかは分からない。起き上がって確認すると、相手側が壁に打ち付けられそこそこのダメージを受けていた。
エール(賢いわね……あの一撃を受けたら多分破壊されると思ったんだ、背中のバズーカ砲を至近距離の地面に打って距離を離した)
ダメージは免れなかったが、少なくともあの一撃で最後になるよりかは遥かにマシだろう。
とは言えかなりの損傷を受けた相手側はどうやら戦車体型がもう使えないと判断したのか、再び
エール「ごめんけど……させない!」
変形をさせまいとエールはすぐにバスターを撃ち込むが、相手は何と分離して空中でドッキングをしたのだった。
エール「くっ、今度は戦闘機!?」
かなりの速度で動き回る相手に少し平常心を乱されるも、すぐに考えを巡らせる。
エール(速いだけなら……)
フレア・ランチャーとマグマブラスターの両方を構え、常に相手を視界から外さない様にする。
だが流石に速いので当てずっぽうで当てられるものでも無く、数打ちゃ当たるとも言うが場所が場所だけにそれも出来ない。
エール(もし機械に当たってしまえばダメだし、あまり壁を壊し過ぎても多分後々に影響が出て来る。ここは出来るなら一撃で仕留めたい)
先程から妙な事に機銃を撃ってくる訳でも無く、ただ自分の周りをグルグルと旋回している。
何かを狙っているかの様にも見えるが……
エール(良く見たらそもそも武装が無い!?いや、そんな事は無いと思うけど……)
チラッと見えただけではあるが機銃らしき物はおろか、ミサイル等の武装も見当たらなかった。内部に含まれているというなら別だが、体が小さい戦闘機の内部にそんな一気に詰め込む事は実質不可能である。
エール(何が狙い……?)
そう考え込んでいると、
エール「!!!」
相手は猛スピードで急降下して来た。反射の勢いで回避に成功したものの、当たっていれば危なかっただろう。
そして一瞬だけだったが気が付いてしまった、相手の内部に大量の爆弾が仕込まれている事に。
エール(この戦闘機……特攻するつもりか!)
あの量の爆弾を乗せてもスピードがかなりの水準を保てているのは武装が無い為。どうやらこの形態は初めから最終手段として体当たりするつもりなのだろう。
エール(こうなれば相手はひたすら特攻を仕掛けてくるだろうな。こういう時アッシュ達のタイムボムみたいな武器があれば良いのだけど……)
少なくとも目測で当てるのは難しい。だからと言って降りてきた所を狙えば爆発に巻き込まれるだろう。となるとやはり空中で旋回している所を狙うしか無さそうだ。
だが少し考えてみると、
エール(そう言えばさっきの戦車形態の時もそうだったけど、多分相手側のAIが反応出来ないような行動をすれば……)
相手のAIが優秀なのは先程のわざとダメージを喰らった事からしても良く分かった。
だが機械だ。予測不可能な動きをすれば相手の中の行動パターンは崩れボロが出る筈。
エール「……」
ほんの少しだけ考えて、
エール「うん。やれる」
静かに、そう呟いた。
次相手が降りてきた所が勝負。
聞く、見る、感じる、全神経を集中させる。
……
………
…………
微かに変わる風の音。
エール(来たッ!)
これもまたギリギリまで引き付けてから高く飛んで、自分の下を相手が通り過ぎたのを確認してからフレア・ランチャーを構える……
エール「でやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
再び急降下を外して体勢を立て直そうとする相手側に向かって、フレア・ランチャーを後ろ向きに放ち爆発的な推進力を得たエールがセイバー片手に突撃。
為す術もなく反応出来ずに真っ二つにされ、大爆発を起こした。
エール「ッ……」
勢いを落とし着地する。自分も無傷という訳でも無いが、何とか無事撃破する事が出来た。
エール「かなりの荒業だったけど何とかなって良かった。それよりも……」
目的の物は何処だろうか。周りにはその様な物は無く、恐らく自分が戦った相手が隠したのか、あるいは……
エール(もし別の奴に持ち去られてしまったりしてたら大変……!)
あって欲しい、そう願いながらモデルLに変化する。そして不安に駆られながらもアイテムサーチングを開始すると……
丁度自分の居る辺りの地面の下に反応があった。それが何かまでは分からないが……。
エール(武器とか能力使って傷付けたりしたら大変だし……ここは少し大変だけど掘ろう)
幸いな事に土は柔らかく、手でもすぐに掘り当てる事が出来た。
エール「これだ!」
掘り当てた物は写真で見た物。今回の目的の物であるスラスターモジュールであった。
エール「傷とか入ってないかな……?とにかく早く持ち帰ろう」
~総司令部~
自分が入った場所に戻ってこればブルーを始め何人かの兵士が見張っていた。
ブルーは泥に傷だらけのエールを心配しながらもスラスターモジュールの安否を確認させる。
そして戻ってきたブルーに尋ねた。
エール「長官、スラスターモジュールは?」
ブルー「特に問題なく動く様だ。それよりもエール君、君の方こそ本当に大丈夫かね?」
エール「良かった!あ、私なら全然大丈夫ですよ。これ位大した事ありません」
ブルー「そ、そうか……」
エール「部品が無事で良かったです。そうじゃないと私が来た意味がありませんから」
ブルー「本当にご苦労だった。スラスターモジュールは既にガーディアンベースに送ってある、君も好きな時に帰ると良い」
エール「はい、ありがとうございます」
ブルー「礼を言うのはこちらだ。君達にはいつも辛い思いばかりさせているとプレリー艦長が言っていたが、私も正しくそう思う」
エール「……」
ブルー「我々も君達ガーディアンに最大限のサポートを惜しまい。頑張ってくれ、では無く共に頑張ろう」
エール「勿論です」
そう答え、握手を終えた後自分もガーディアンベースに帰還した。
ガーディアンベースに戻ると、既にヴァンとアッシュも帰還していた。
エール「私が1番最後か」
プレリー「お疲れ様。無事スラスターモジュールが回収出来たみたいね」
エール「色々大変だったけどね」
ヴァン「話は聞いたよ、盗まれてたみたいだな」
エール「えぇ、それを追って戦闘になって……とにかくスラスターモジュールが無事で良かった」
プレリー「私としては貴女が無事な事の方が余っ程重要よ」
心配そうに言うプレリーにエールは「プレリーは心配し過ぎだよ」と明るく返した。
エール「ヴァンとアッシュも回収出来たんだね」
ヴァン「とりあえずは」
アッシュ「アタシは大変だったわ……」
ヴァン「そっちは戦闘は無かったんだろ?俺なんか四天王が居たからな」
アッシュ「2人が戦って大変だったのは分かるけどアタシの所だって大変だったわよ。何と言うか、今までやってきた任務とは別次元の何かを感じたわ……」
エール「どんな感じだったか詳しく教えてよ」
アッシュ「勿論よ。本当に大変だったんだから」
ゼロ「次回に続く」
セリフが無いからどうにかしろと脅されたんで最後に一言だけメタ発言をして貰いました俺は悪くねぇ byM・M
今回エールが戦った相手の名前は次回に。戦車形態にドリル形態に戦闘機形態、書いててどっかのスーパーロボットみたいだなとか考えてました(ドリル形態は違うけどダイターンとかグルンガスト辺り?)
次回のアッシュ編はこの話の最後辺りでアッシュが言っていた通り大ボスは居ませんが、何やら別次元の苦労をするみたいですね。少し戦闘とは離れて書きたいと思います。
では、次の話でお会いしましょう(*^^*)/