ロックマンゼロ ~紅き英雄の帰還と再び動き出す因縁~ 作:M・M
もう最近の更新が1ヶ月ペースになっていてごめんなさい(汗)
自分の体調と学校等の都合によっては早くなる……かも知れません、まぁとにかく頑張って書いていきます。
物語もようやく中盤程になる頃でしょうか、この話で今の章はおしまいです。
そして遂に彼が帰って来る……
では、どうぞ。
ゼロ達4人が戦っている一方、ガーディアンベース。1部の人材が物資を伴って宇宙へ上がろうとしていた。
そして、その中には……
プレリー「もう迎撃は来ないと思うけど、本当に行くのね?」
シエル「まだ体調は万全じゃないでしょう?」
プレリーとシエルから心配されているのは宇宙に上がる前の戦いにおいてバイルの策略において酷く心を病んでしまったゼロと同じレプリロイドの少年、グレイであった。
グレイ「確かに本調子とまではいかないけど、皆だって厳しい状況下で戦ってるんだ。僕1人だけ見とくなんて出来ない」
自分だってロックマンなんだ、足手纏いにはならない……という意志があった。
シエル「分かったわ。まだ皆中で戦っているだろうから助けてあげて」
グレイ「勿論だよ」
プレリー「絶対無理しないで。皆でちゃんと帰って来るのよ」
グレイ「……了解!」
グレイはそう言うと小型シャトルのエンジンを点火し、勢い良く宇宙へと飛び出していった。
プレリー「皆、大丈夫かな……」
シエル「大丈夫よ……ゼロ達なら、きっと」
そう話しているとガーディアンの隊員から自分達を呼ぶ声がした。
プレリー「私達も行こう、お姉ちゃん」
シエル「えぇ」
シエル達も宇宙へ上がる準備が出来次第ゼロ達の元へと行くのである。
また一方この宇宙の何処か……
バイル「マグネ・ヒャクレッガーにダーク・ネクロバット、どちらも
レヴィ「そんな呑気で良いの?あの子達にあそこを奪われたら面倒じゃない?」
バイル「奴等が初めからあそこを狙っているのは知っている。勿論渡すつもり等さらさらないが」
レヴィ「……今回も爆発オチって訳ね?」
バイル「そうとも限らんぞ?」
レヴィ「……?」
バイル「逃げられ無い様に大量にイレギュラー共を用意済みだ。最初に奴等が戦っていた戦力はあくまで一軍であったという事だよ。そろそろ基地の爆発が自動で始まる……奴等は逃げられまい。この手で直接奴等を始末出来ないのは残念だがな……ハッハッハッ!」
高笑い、の様な音を出すバイルの名を冠した機械を見て四天王は不穏な気持ちを抱いた。
何となくバイルの目論見に気付いて来たのだ。
ハル(……間違いないな。この男はやはり奴、ゼロとの直接対決を望んでいる。それなりに殺す気ではあるのだろうがやはり本気では無い)
レヴィ(あの子達を本気で始末するのであればやりようは幾らでもある筈だし、今回だって新型を送り込んだり罠だらけにしたのは良いけど)
ファン(殺すには至るか……否。奴等の肩を持つつもり等無いが、不十分だ)
ファ(最後に爆発するかどうか知らねぇが、どうせ失敗しそうな気がするぜ。いや……この野郎は恐らくどっかで奴等の脱出の成功を望んでいる)
あの脳筋(byハルピュイア)のファーブニルでさえ勘づく物がある事からしても大分怪しまれているが、果たしてバイルの真意とは一体何なのか。
場面はゼロ達に戻る。
何とか合流地点である中央制御室にやって来た4人であるが、
ゼロ「……さて、ここからだが」
ヴァン「第2の任務、奪還って訳ですけども」
エール「ごめん、私あまり余裕は無い」
アッシュも自分も、といった風に頷いた。
ゼロ(ヴァンはまたしても、負傷しているエールとアッシュの2人に戦う余裕は無さそうだ。もしイレギュラー共との戦闘になれば出来る限り2人には後方支援、もし状況が厳しければ撤退を優先した方が良さそうか)
時には逃げるのも大事である。
アッシュ「でも、奪還って具体的に何すれば?」
ゼロ「この基地の機能、防衛施設や警備システム等を落とす。シエル達が無事にコチラに来れる様にすれば良い」
エール「それってもしかするとこの中央制御室で出来るんじゃない?」
ゼロ「……ヴァン、出来そうか?」
ヴァン「やってみます」
ヴァンはゆっくりと機械を動かし始めた。
何も分からない、という訳では無いがゼロとエールとアッシュは機械にそこまで強くない。こういう時は1番ヴァンが頼りになる。
アッシュ(どうしても機械系となるとヴァンに任せきりになっちゃうわね。こういう時、アイツが居てくれたらな……)
そのアイツは今は昏睡状態。彼はそのままシエル達と共に宇宙へ上がるのだろうか?
ゼロ(アッシュ……)
こういった事に関する勘に鋭いゼロはアッシュが恐らくグレイの事を考えているであろう事を見抜いていた。
シエルから昏睡状態からは目覚めたとは聞いたが出撃前であった為に実際会えた訳では無く確認は出来ていない。あの時少し無理してでも会いに行くべきであったか、と思うゼロ。
と、ここでヴァンが手を止めた。
ヴァン「……すいません。防衛システムの方がかなり厳重なロックが掛けられているみたいです」
ゼロ「やはりか。気にするな、想定済みだ」
ヴァン「シエルさんなら何とか出来るんだろうけど……あぁ、でもとりあえず警備システムは大体外せました」
エール「それだけでもお手柄だって」
アッシュ「そうそう。アタシ達この手の物に関してはちんぷんかんぷんだもん」
ゼロ「よくやった。防衛システムに関しては……直接停止させるしかない。最悪破壊しよう」
その言葉に3人とも頷いた。
まだ基地内に敵は残っているがまずはシエル達の為に外の安全を確保する必要がある。
ゼロ(これも一筋縄ではいかないだろうが……)
防衛システムは良くある自動砲台である。ただ数が多い、それだけ。だがシンプルかつ非常に難易度の高い物となっておりそれが悩ましい。
ヴァン「せめて防衛システムが何処にあるかだけでも知れたらかなり楽だったんだろうけど……力不足ですいません」
ゼロ「だから自分を責めるな。警備システムを解いてくれただけでも俺達全員かなり楽になった。お前は良くやってくれた」
ヴァン「ゼロさん……」
負傷している2人の為にも戦闘はあまりしたく無かった。少なくとも何処を通っても雑魚が湧いてくるという事態は回避出来る。雑魚戦で消耗を抑えられるのと抑えられないのとでは全く違うのでそれだけでもとても助かるのだ。
ゼロ「今俺達が居るこの中央制御室は2階にある訳だが、恐らく防衛システムの殆どは1階から外に出た場所にあるだろう」
エール「確かに突入する時に滅茶苦茶集中砲火受けてましたけどその撃って来ていた砲台は私達のシャトルが入って来たカタパルトの周りにありましたね」
アッシュ「確か上下に渡って結構な数が付いてたわね。アレを止めなきゃいけないのかぁ……地図からして私達のカタパルトととは反対側にも同じ様にカタパルトがあるから防衛システムはこの基地の外側全体に渡ってあると見て良さそうね」
ヴァン「2人とも良く見てたな……俺慌て過ぎてて全然見てなかったよ」
ゼロ「別にシステム全てを止めなくてもシエル達が入って来る側のやつを止めれば良い。寧ろこれからここを拠点とする事を考えるなら出来る限り破壊する量も最低限に抑えたい所だ」
エール「確かに」
ゼロ「とりあえず1階に移動するぞ」
4人とも軽く移動。
始めの場所に戻ってきた4人。
ゼロ「さて、問題はここからだ」
いざ自動砲台をさっさと破壊しようと飛び出しても蜂の巣になるだけである。
ゼロ(シャトルで突入する時もそうだったがかなりの弾幕だった……特段あの砲台達が優秀という訳では無いが、とにかく数が多い)
少しでも止まっていれば集中砲火を喰らうだろう。常に止まらず動き回り破壊していかなければならない。
ヴァン「厳しいですね」
ヴァンがまるで自分の考えを読んだかの様にそう言った。
ゼロ「あぁ、かなりな」
複数人で出れば砲撃は分散するであろうがそうすると何がどうなっているのか分からない上に常に味方の位置も確認しながら動き、砲撃を避け、破壊しなければならない。出来ない訳では無いが正直そこまでの余裕があるだろうか。
ゼロ(ここは、俺がやるしかないな)
いつもならここはアッシュに頼んでいたかも知れない。彼女のトランスならそもそも防衛システムに見付からずに楽にやれる方法もあったであろう、だが彼女は今負傷しておりトランスも上手く扱えないし、無理をさせる訳にもいかない。
エールは同様の理由、自分とヴァンは負傷こそしているもののまだ動ける。
我が身を捨てる等という考えでは無く、自分がやる方が適任だろうと思ったからだ。
ゼロ「俺がやろう」
ヴァン「ゼロさん1人で!?」
アッシュ「て言うかやれるの……?」
ゼロ「俺とイカロスフォームであれば宇宙空間でも飛ぶ事は出来る。ただ長い時間は飛べないから短時間で終わらせなければならんが」
エール「で、でも流石に危険じゃ……」
ゼロ「エールとアッシュは流石に厳しいだろう」
ヴァン「2人はまだ分かるけど……せめて俺も出ます!2人ならまだ半分位に分ければ味方の位置で混乱する事も無い筈です」
賢い奴だ、とゼロは思った。味方の位置の話等していないのに……まるで俺が考えている事が読めているのでは無いかと疑う位だ。
ゼロ(いや、ヴァンなら気付くか……)
確かにヴァンの言う事は正論だし2人なら俺も楽になるだろうが、
ゼロ「……ヴァン、すまんがここは行かせてくれ。何も無茶するつもりは無い。捨て身で行く訳でも無いし、十分成功させる自信はある」
ヴァン「…………分かりました」
思う所はあったであろうが、何とか納得してくれた様だ。申し訳ない気分ではあるがここはこうした方がきっと良いだろう。
ゼロ「俺が行った後に誰かプレリー達に連絡して状況と現在地までの誘導を頼む」
ヴァン「それは俺がやります、任せて下さい」
ゼロ「助かる。さて、行くか……
セットアップ、イカロス」
いつものゼットセイバーと同じ色の美しい翡翠色のアーマーに身を包み翼を広げる。
ゼロ(最悪3人に援護を頼む事になってしまうかも知れないが……今は自分を信じよう。シエルがくれたこの力ならきっと、やれる)
そして3人が見守る中勢い良く羽ばたいていった。地上の、重力がある中での飛行とまた全然違う宇宙空間での動きに初めこそ苦しんだものの思ったよりか簡単に慣れる事が出来た。
ゼロの姿が見えるや否や集中砲火を始める自動砲台達。ゼロはここで急な空中旋回で翻弄しながらバスターに剣閃を飛ばして次々と破壊していく。
ヴァン「ゼロさん……凄い」
エール「元々ゼロさんって順応性高いとは思ってたけどまさかあそこまで出来るとは」
アッシュ「……ゼロさんの順応性が高いのも正解だと思うけどシステムにも助けられてると思う。と言うかイカロスフォームって確か元々宇宙空間での動きも前提に作られてるんじゃなかった?」
エール「そうだったっけ?」
ヴァン「ごめん、俺も覚えてない。けど大方アッシュの言う通りなんじゃないかな」
アッシュの時折見せる深い洞察力、もとい勘には度々驚かされる。
ゼロ(シエルは宇宙空間でのこの様な動きも行う事を予想して作ったというのか)
流石はシエル。天才だ、等と惚気けている場合では無い。そこそこ破壊したとは言えまだまだ砲撃は続く。先程も3人に言ったがあまり時間の猶予は無い。一気に加速して速く終わらさせて貰おう。
ヴァン「ッ、速い……」
エール「目で追えないわね」
凄まじい速さで宇宙を駆けるその姿は正しく蒼き閃光。必死に砲撃が撃たれるものの全く追いついておらず瞬く間に破壊されていく。
アッシュ「まるで流星みたいね……」
3人が感嘆の声を抑えられない程の芸当を、ゼロは僅か数秒で成し遂げた。
最低限よりほんの少し多めに破壊してしまったかも知れないがしっかり片面側の自動砲台は全て破壊しひとまずの安心は確保出来たのだ。
帰って来たゼロに駆け寄る3人。
ヴァン「大丈夫ですか?」
ゼロ「あぁ、問題無い。掠りもしなかったな」
アッシュ「そりゃあんだけ速けりゃ当てようにも当てられませんって」
エール「すみません、いつも危険な仕事はゼロさんばっかりに任せてしまって」
ゼロ「それは全員お相子だろう。別に俺1人に負担が集中している等とは思わん……それに別にお前達が怪我をしているからとかでは無い、いつであろうとこういう役目がこなせる様に俺が居るのだから。こういう仕事は任せておけ」
3人(カッコイイ……!!!)
ゼロ「それで、プレリー達は?」
ヴァン「それなりに近付いてきてるみたいです。また向こうから連絡を入れるって」
ゼロ「そうか」
エール「じゃあ、これで……」
アッシュ「ひとまず任務完了?」
ゼロ「……あぁ。とりあえずはな」
エール「やった!」
ヴァン「流石に疲れたな……」
アッシュ「アタシもよ……」
ゼロ(俺も皆も大分消耗は激しいが、無事生きてる。何とか、なったか……)
ふぅ、とゼロも安堵の息をついた。
……だが、残念ながら彼等に安堵の時間が訪れる事は無かった。
突如鳴り響く警報。
ヴァンが警備システムは何とかしてくれたし自分達には反応しない筈なので、これは別の存在がやって来たという事になる。
ゼロ「何だ!?」
ヴァン「ッ、ここから北側……丁度こっち側のカタパルトに向かって大量のイレギュラー反応があるってプレリーから連絡!」
ゼロ「チッ……やはり終わるにはまだ早いか」
アッシュ「どうすんの!?かなり量多いんじゃないの!?」
ヴァン「クッ、初めから仕組まれていたんだ……俺達が自動砲台を破壊した事によって向こうからもイレギュラーを送り込む事が出来るようにしてしまったんだ」
エール「思えば流石に上手く行き過ぎな気はしたけどまさかこんな事になるなんて……」
ゼロ「…………」
ヴァン「ゼロさん……?」
ゼロ(…………落ち着け。確かにかなり危険な状況だ、数がどれ位かは分からないが少なくはないだろう。そしてまたあの新型達を相手する事になると今の俺達の消耗具合では厳しい所がある)
ゼロの意見を聞きたかったが珍しく焦った表情をしているが何かを深く考え込んでいる事が分かったヴァンは黙っておく事にした。
ゼロ(最悪何とか耐えてガーディアンベースと合流すれば逃げる事は出来るだろう。だがそれではこの基地を諦めるという事だ。プレリーは自分達の無事を最優先にしろと言ったが、もしここで逃げ帰れば……)
今後の作戦は元々難しかったものが更に難しくなっていくだろう。何としてでも奪還任務を遂行したい気持ちはあったが、
ゼロ(……この隊を束ねる者としてそれは失格だ。奪還任務を遂行するという事はただでさえ疲労している3人に更に無理をさせる訳にはいかん)
ここは耐えよう。1人でも欠けずに帰るのが俺達の最大の任務だという事を忘れてはいけない……。
ゼロ「ヴァン、すぐにガーディアンに今の状況を説明しろ。ガーディアンと合流出来次第ここを脱出する」
ヴァン「え、脱出って……」
ゼロ「俺達全員かなり消耗している。ここにやって来る奴等を全員相手して殲滅出来る程の余裕があるか?」
エール&アッシュ「…………」
ヴァン「……そう、ですね。すぐに伝えます」
何かを言いかけたヴァンであるが、ゼロの複雑な表情とエールとアッシュを一目見るなりそう言った。どうやらゼロの考えている事を分かってくれたのだろう。
ゼロ「エール、アッシュ、戦えるか?」
アッシュ「近接はちょいしんどいけど遠距離なら。トランスもまだやれる」
ゼロ「それで構わない。エールも狙撃は出来るか?」
エール「……大分命中精度は落ちますがフレア・ランチャーはまだまだやれます」
ゼロ「的は大きいからお前なら問題無いだろう。ヴァンと俺もなるべく来させない様に牽制。エールとアッシュの取りこぼしの始末だ」
2人「了解!」
ヴァンは通話中だったがちゃんと聞いていた様で頷いていた。
ゼロ(タイタスフォームがあればもう少し作戦が立てやすかったんだが……)
使い切ってしまった物はしょうがない、と割り切る事した。今は自分に出来る事をやろう。
すると、
ヴァン「ゼロさん、艦長が代わってと」
そう言って自分のGATを差し出すヴァン。
ゼロ「分かった」
それを受け取り応答する。
ゼロ「通話を代わった。どうした」
プレリー「そちらの状況は理解したわ。全速力でそちらに向かってる」
ゼロ「了解だ。俺達は無理ない程度に時間を稼ぐ。何とかしてみせる」
プレリー「分かったわ。それと、多分……」
ゼロ「ん?」
プレリー「先行しているグレイがそろそろそちらに着く筈よ」
少し間が空いて、
ゼロ「分かった。3人には何とか俺が説明しよう……困惑してしまうかも知れないが」
プレリー「お願いね……」
そして通話を切りヴァンにGATを返す。
ゼロ「やる事はさっき言った通りだ。この状況、各自の消耗具合も厳しいだろうが何としてでも切り抜けるぞ……誰1人として欠ける事は許さん」
3人「……了解!」
ゼロ「それと、こんな時に言う事では無いのだが……皆に大事な話がある」
ヴァン「大事な……?」
ゼロ「実は……「ゼロさん!」どうした!?」
アッシュ「大事な話をする所申しわけないけどコチラに高速で向かってくる反応があるわよ!」
ゼロ「……来たか。説明する暇は無かったな」
エール「えっ?」
ゼロ「安心しろ、味方だ」
アッシュ「味方!?」
ゼロ「離れていた方が良いぞ」
皆が驚いている内にもその反応はすぐ近くに接近、そして自分達のすぐ目の前に現れた。
味方とは言われたものの警戒腰な3人。
そして、小型シャトルから現れたのは…………
???「何とか間に合ったか!」
ヴァン「えっ…………」
エール「嘘……」
アッシュ「グ、グレイ……?」
グレイ「皆、長い間ごめん」
ゼロ「……もう、大丈夫なのか?」
グレイ「はい。ご心配をお掛けしました」
ヴァン「ゼロさん、大事な話って……」
ゼロ「あぁ。グレイの事だ」
グレイ「その感じだとゼロさんにはボクの話は伝わっていたみたいですね」
ゼロ「すまん。この作戦前にお前達に話そうかと思ったんだが」
エール「……大丈夫ですよ、流石にグレイが来た事には驚きましたけど」
アッシュ「アンタ、いつ目覚めたのよ!何で何も言わなかったの!?」
グレイ「落ち着けって!ちゃんと話すから。それよりも今はこんな事してる場合じゃないだろ」
アッシュ「わ、分かったわよ……」
ゼロ「……グレイの言う通りだ。気になる事はあるだろうが今は目の前の状況を何とかするぞ」
4人「了解!」
状況が状況なだけにそんな余裕は無いのではあるが、4人揃った返事が懐かしく思え、何と言うか嬉しかった。ようやくか、と。
ゼロ「グレイ、何とかガーディアンベースが来るまでの時間を俺達で稼ぐ。そして向こうと合流した後脱出する、それが今の俺達の作戦だ」
グレイ「え、でもそれだとこの基地を諦めるって事ですか?」
ゼロ「悔しいが、俺達の消耗具合ではここに来る敵の対処は厳しいと判断した」
グレイ(あ、そうか……ゼロさん達皆沢山戦った後なんだもんな)
ゼロの言葉を聞いて考え込むグレイ。
グレイ「……ゼロさん、大丈夫です」
ゼロ「……?何が大丈夫なんだ?」
グレイ「要は敵がここに来る前に、輸送されている敵戦力を全部殲滅すれば良いんですよね?」
ゼロ「…………あ、あぁ」
彼らしくない発言にかなり動揺を隠せないゼロ、そして他3人もかなり驚いていた。
グレイ「任せて下さい。僕1人でやれます」
ゼロ「!」
そう言ってグレイは逆方向へと振り向いて、
グレイ「トランスオン!」
トランスが完了した時、ゼロは酷く既視感を覚えた。と言うのも、
青を基調としたずんぐりとしたアーマー。ヘッド、フット、アーム。
既視感とは言ったがそっくりという訳でも無く、違う所も多々あるのものの……
ゼロ(エックス……)
かつての戦友が使っていたアーマーの1つ、フォースアーマーに似ていた。
アッシュ「グレイ、そのトランスは?」
グレイ「僕の中ではトランスって扱いでやってるけど……トランスとは違うかな」
アッシュ「じゃあ何なのよ?」
グレイ「見てれば分かるって。分からなくても後で説明するから」
むぅ、といった顔をしたアッシュだが、今はそんな悠長に話している場合では無い事からそれ以上彼に話すのは諦めた。
ゼロ「グレイ、お前の実力を信じていない訳では無いが……本当にやれるのか?」
グレイ「実戦で使うのはこれで初めてですね」
ヴァン(初めてなのか……)
ゼロ「……頼むぞ」
グレイ「勿論です」
エール「敵戦力がすぐそこまで来てますね。もうそろそろ見えて来る筈」
皆が見守る中、
グレイ(大丈夫だ、ほんの数回しか行っていないけどテストでは上手くいった。やれる筈)
傷付いている皆の為、そして今までずっと自分が居なかった分の負担を掛けてしまった事への謝罪も込めて、ここは何としてでも成し遂げたい。
グレイ(流石に僕の一撃で葬れる程数は少なくない。後に散らばる事も考えて、まずは……!)
「メガエレキパルス!」
アームが大きく変化してバスターの状態から巨大なメガホンの様な形になり、肉眼で見れた物では無かったがそこから何かを放った様だ。
ヴァン「グレイ、今のは?」
グレイ「簡単に言えばとても強力な電磁波を拡散させました。それも機械が触れれば誤作動を引き起こす程の」
エール「わっ!」
フレア・ランチャーのスコープを覗いていたエールが驚いた声を上げた。
アッシュ「どうしたの?」
エール「輸送機と輸送機同士がぶつかって爆散してる。誤作動っていうのはそういう事なのね」
グレイ「とは言えこれで全滅させられる程数は少なくないので……次は直接攻撃を撃ち込みます」
そう言って、
グレイ「とっておきの兵器でやってやりますよ、見てて下さいねッ!」
今度はグレイが両腕を合わせると、何と両腕のアームパーツが合体し変形した。
これにはゼロも含め全員が驚きを隠せなかった。
グレイ「これで一気に決めてやる……喰らえッ!
両腕が合体した事により追加された重力制御装置で造り出した超高重力結界を着弾地点を中心に広げ、取り込まれた目標を押し潰すとても強力な武器だ。重力という事はゼロのタイタスフォームに使われている技術を応用したのであろう。
放たれた一撃は肉眼のゼロ達がはっきりと視認出来る程巨大な空間を作り出し、エールによると次々と吸い込まれていき為す術も無く破壊されていくとの事。
そして遂には、
エール「え……反応、無くなっちゃった」
ヴァン「本当だ、全部……倒したのか」
アッシュ「か、かなり規格外な強さね……」
ゼロ「…………」
3人は未だに動揺を隠し切れず、ゼロも今見ている物が現実かどうか疑いたくなる位に驚いていた。
一方、送り込んだ戦力が突如壊滅したバイルも流石に驚いた。
バイル「何だと!?」
レヴィ「な、何なの!?今のは……」
ハル「……その場にあったものが全て無くなった。あれは正にブラックホールだな」
ファ「冷静に分析してんじゃねェよ!あんなの見た事も無いぜ!?」
ファン「アレに取り込まれれば……何であろうと生存確率は限りなく低い」
バイル「まさか……あの小娘、ワシがどれだけ研究しても解析出来なかったLOTの技術を確立したというのか!?有り得ん!」
LOT、ロスト・オーバーテクノロジーの略。
今よりも昔の先人達が作り上げた、作り上げようとした過去の遺産である。しかし完成はせずに不良品、もしくは凄まじい事故等を引き起こして封印された物等がそれに該当する。
重力を操るという事はLOTの中でもトップクラスの禁忌だったらしい。この研究中に沢山の犠牲者が出たというデータが残っていた。
だがシエルはそれを完成させてゼロ達の戦いを楽にしてくれている。ゼロのタイタスフォームでも強さは分かったが、この場に居る全員が今目の前で見た重力という物の凄まじさが脳裏に焼き付けられたであろう。
バイル(……流石にこれは想定外だ。奴等をおびき寄せる為のエサをまんまと奪われただけで無く脅威になりうる戦力が現れるとは)
もう四天王にも殆どバレている様なものであるが、やはりバイルの今までの行動は全て直接ゼロをこの手で始末したいが為に彼等が死なない様に戦力を調節していた。正直ガーディアンを本気で潰そうと思えば特に問題無く潰す事が出来たのであろうが、無駄な拘りが今こうして裏目に出てしまったのである。
ハル「……どうするんだ?」
バイル「フン、あの場所位くれてやる……どうせ奴等は我々の位置を特定出来ていない上にこの場所に来るまでなはあの宇宙ステーションの規模の大きさの要塞が無数に点在している。例え宇宙に上がれたからと言えどガーディアンにそれ等をどうにか出来る戦力は無い」
レヴィ「とか言って、どうせ全部乗っ取られそうだけど」
バイル「何か言ったか?」
レヴィ「……何でも無いわ」
ファン「それより、何故ナンバーズを集結させない?まだ大量に控えているのだろう?」
バイル「奴等も各地に散らばっている。ロックマン共に負けるのならまたしてもただの雑魚兵達に基地を奪われる訳にはいかん」
ファン(……まぁそれは正しい判断ではあるが)
バイル「それに、最近のロックマン共の強化具合からしても普通のナンバーズでは歯が立たん。奴等を苦しめるにはより強力な改造を施す必要が有る……安心しろ、戦力が途切れる事は無い。そこ等の雑魚兵にならイレギュラー共で問題無し、ナンバーズもまだまだ居る」
ファ(その過信が今回みてェな失態に繋がらなきゃ良いけどな)
あのファーブニルに心配されているあたり、ファーブニルを含め四天王は大分バイルに対しての信用が欠けてきている様だ。
ハル(間違いないな。紅き英雄に復讐をする、ただそれだけの為に数多のチャンスを無駄にしてきた。戦局はかなり向こうに傾き掛けている……紅き英雄も、ガーディアンも敵だ。だがこのままこの男について行って良いのだろうか。
私達を復活させてくれた、という事でずっと何も言わずにこの男の言う事を聞いてきたが、このままこの男の方針に付き合うといつか取り返しのつかない状況を作り出すかも知れない)
どうやらハルピュイアはハルピュイアなりに思う所がある様だ。
果たしてバイルと四天王、彼等の行く末は……
戦いは、新たな状況を迎えようとしていた。
ずっとおねんねしていたグレイ君が遂に帰ってきてようやくロックマンチームが揃いましたね。
彼がどうなっているかについての詳しい説明は次の話の最初で行います、この話で分かるだけでもかなり変わっちゃってますが。
この話を書き上げるまでの1ヶ月で色んな事がありましたが、特に台風の影響を受けてしまった方々が心配ですね。一刻も早い復旧と皆様の無事を願います。
最後はリアルの話になっちゃいましたが後書きはこの辺で。
それでは次の話でお会いしましょう( ᵕᴗᵕ )